JP2875773B2 - 合成樹脂製オイルシールリング - Google Patents

合成樹脂製オイルシールリング

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JP2875773B2 JP7343287A JP34328795A JP2875773B2 JP 2875773 B2 JP2875773 B2 JP 2875773B2 JP 7343287 A JP7343287 A JP 7343287A JP 34328795 A JP34328795 A JP 34328795A JP 2875773 B2 JP2875773 B2 JP 2875773B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は合成樹脂製シールリン
グに関し、主としてトルクコンバータや油圧式クラッチ
などの自動変速機における作動油の密封に用いられる合
成樹脂製のオイルシールリングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】このようなシールリングとして、従来か
ら鋳鉄製シールリングやPTFE(四フッ化エチレン樹
脂)製シールリングなどが用いられ、最近は耐摩耗性、
オイルシール性の向上およびコスト低減のため射出成形
による合成樹脂製シールリングを用いることが検討され
ている。
【0003】上記のシールリングは、回転軸とシリンダ
間に装着され、両者の相対回転に伴って回転すると共
に、両者の軸方向への相対的移動に伴って相手部材と摺
動する。この場合、回転軸及びシリンダの振れ(偏心)
や振動があっても十分なシール性を有することが要求さ
れる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記のごとき合成樹脂
製オイルシールリングにおいて、これを射出成形する場
合、特に外径の大きなシールリングは周長が長いため、
材料を注入するゲートの位置によっては均一な寸法及び
均一な材料特性を得ることが難しい。
【0005】そこで、請求項1及び2に記載の発明は、
注入位置を工夫して、均一な寸法及び均一な材料特性を
有する合成樹脂製オイルシールリングを提供することを
目的とする。
【0006】また、請求項3及び4に記載の発明は、上
記のごとき合成樹脂製オイルシールリングの射出成形金
型を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、一部
に相い対向した分離部を有し、射出成形された合成樹脂
製オイルシールリングにおいて、該シールリングの全長
のほぼ中央に材料の注入位置を有する構成としたもので
ある。
【0008】上記構成のシールリングは、材料が注入位
置から両側に分かれて各切離し端に至る長さが実質的に
等しくなるので、全体的に均一な寸法及び均一な材料特
性を有する。
【0009】請求項2の発明は、上記の注入位置が中央
部両側の約±30°の位置に存在する構成としたもので
ある。この構成のシールリングは、分離部分を押し広げ
て相手部材のシール溝に組み付ける際、注入位置の部分
に応力が集中することを避けることができる。
【0010】請求項3の発明は、一部に相い対向した分
離部を有する合成樹脂製オイルシールリングの射出成形
金型において、金型内に材料を注入するためのゲートを
シールリングキャビティの全長のほぼ中央に設けた構成
としたものであり、請求項1のシールリングを射出成形
することができる。
【0011】請求項4の発明は、上記のゲートの位置
が、シールリングキャビティの中央部の両側の約±30
°の範囲に存在する構成としたものであり、前記請求項
2のシールリングを射出成形することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を説
明する。
【0013】前記シールリングの合い口部の開き量は、
合い口を閉じた状態より、1〜30°、好ましくは1〜
15°、特にステップカット形状のシールリングでは、
5〜30°、好ましくは5〜15°の範囲の量だけ開い
て射出成形すればよい。
【0014】また、合成樹脂としては、結着性耐熱樹脂
として例えばポリフェニレンサルファイド樹脂(PP
S)等のポリアリーレンサルファイド系樹脂(PA
S)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリアミド
イミド樹脂(PAI)、熱可塑性ポリイミド樹脂(TP
I)等の熱可塑性ポリイミド系樹脂、全芳香族ポリエス
テル樹脂(OBP,LCP)等の芳香族系ポリエステル
樹脂、4−6ポリアミド樹脂(46PA)等のポリアミ
ド系樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)等のポ
リシアノアリールエーテル系樹脂、そしてポリエーテル
エーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルケトン
樹脂(PEK)、ポリエーテルケトンケトン樹脂(PE
KK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン樹脂
(PEKEKK)、ポリアリールエーテルケトン樹脂
(PEAK)等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂等が
挙げられ、熱処理により機械的強度、寸法安定性等を向
上できる結晶性の射出成形可能な熱可塑性樹脂が好まし
い。このような結着性樹脂は、例えばJIS K 72
10の測定法により、剪断速度が102 〜104 (se
-1)の時に溶融粘度が103 〜105 となる結着性樹
脂が射出成形に優れる。前記結着性樹脂は、30〜88
重量%の、好ましくは50〜80重量%として、成形体
の全組成分中の50重量%よりも下回らないようにする
ほうがよい。結着性合成樹脂成分が少なすぎると結着性
が低下して成形体として成立しにくく、多すぎると補強
繊維や固体潤滑材が減りすぎ、補強効果と潤滑特性に期
待できない。
【0015】また、代表的な固体潤滑材であるフルオロ
カーボン系樹脂として、例えばテトラフルオロエチレン
系フルオロカーボン樹脂があり、これは上記のPTFE
以外に、 ・テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキル(メ
チル,エチル,プロピル)ビニルエーテル共重合体(P
FA) ・テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン
共重合体(FEP) ・テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン
−パーフルオロオレフィン(アルキル,プロピル)ビニ
ルエーテル三元共重合体(EPE) ・エチレン−テトラフルオロエチレン交互共重合体(E
TFE) 等が挙げられる。テトラフルオロエチレン系フルオロカ
ーボン樹脂は、骨格に(CF2 −CF2 )(テトラフル
オロカーボン)を分子構造中に有するため、C−F間の
強固な結合により、耐熱性、低摩擦係数に優れる。これ
らの中でも、PTFE、PFA、FEP等のパーフルオ
ロ系テトラフルオロカーボン樹脂は、骨格である炭素原
子の周囲を全てフッ素原子、あるいは微量の酸素原子を
介して、取り囲まれC−F間の強固な結合と、炭素骨格
の周囲がフッ素で守られるので、より耐熱性、低摩擦係
数、潤滑性に優れ、また非粘着性、耐薬品性等の諸特性
にも優れるので、油中のコンタミ(ゴミ等)がシールリ
ング表面に付着しにくくなり、異物の付着による摺動面
の摩耗が少なくなることが期待でき、耐油性にも優れた
シールリングとなる。また、PTFEは、溶融粘度が3
40〜380℃でも1011〜1012ポイズと高く、流動
しづらいので、高温油中で摺動するシールリング材の高
温用潤滑材として好適である。尚、フルオロカーボン系
樹脂の平均粒径は、1〜100μm、好ましくは10〜
70μmであればよい。平均粒径が小さすぎると凝集し
分散性に劣り、大きすぎると組成物中内でやはり均一な
分散性に期待できない。このようなフルオロカーボン径
樹脂は、2〜25重量%、好ましくは、5〜20重量%
であればよい。フルオロカーボン系樹脂が少なすぎると
低摩擦特性等の潤滑特性と射出金型から成形体を抜き取
る時の離型性に期待できず、多すぎると機械的強度特性
と射出成形性が低下する。
【0016】カーボン系ファイバとしては、ピッチ系、
ポリアクリロニトリル系(PAN系)、カーボン質等が
挙げられ、これらの平均繊維径は、好ましくは、5〜1
5μm平均繊維長10〜1000μm、好ましくは10
〜500μmであればよい。平均繊維径、繊維長とも小
さすぎたり短すぎたり、また繊維配合量が少なすぎたり
すると、補強効果が期待できず、太すぎたり長すぎた
り、また、繊維配合量が多すぎたりするとピストン、シ
リンダ等の相手材を傷つけ、また射出成形性も低下す
る。カーボン系ファイバの配合量は、前記フルオロカー
ボン系樹脂と同程度配合すればよい。
【0017】カーボン系ファイバのなかでも、ピッチ系
カーボンファイバは適度な強度、弾性率を有するので、
機械的補強効果を向上しつつ、また適度な硬度特性も備
えるので、ピストン、シリンダ等の相手材を傷つけにく
く、好ましい。
【0018】なお、カーボン系ファイバと前記樹脂との
密着性を高めるため繊維表面をシラン系カップリング剤
等により表面処理を施してもよい。
【0019】また、これら以外に、タルク、マイカ、炭
酸カルシウム等のカルシウム化合物、二硫化モリブデン
等のモリブデン化合物、二硫化タングステン等のタング
ステン化合物等の無機系潤滑剤等を10〜40重量%、
好ましくは、10〜30重量%配合してもよい。尚、こ
れらの潤滑剤の平均粒径は、前記フルオロカーボン系樹
脂と同等程度であればよい。
【0020】無機系潤滑剤が少なすぎると、ピストン、
シリンダ等の相手材を摩耗させることも考えられ、多す
ぎると機械的強度が低下し、射出成形性も低下する。
【0021】また、シールリングあるいは射出成形金型
のシールリングキャビティ部の少なくとも一方の表面部
分で、例えば、シールリングとピストン、シリンダ等の
摩擦するような回転摺動部分、具体的には、ピストンの
溝側面と互いに回転摺動するシールリングの側面、およ
びシリンダ内周面と互いに摺動するシールリングの円環
部外周面や、また、射出成形金型からのシールリングの
離型性のために、シールリングの円環部内・外周面の表
面形状、表面粗さは小さいほうがよい。
【0022】このような表面形状、粗さは例えば、Rm
ax(最大粗さ)、Ra(算術平均粗さ)、Rz(十点
平均粗さ)等のJISで定義された評価法によって測定
され、3〜25μm以下であり、10μm以下が好まし
く、3.2μm以下がより好ましい。なぜなら表面粗さ
が前記値を越えると、摺動面に傷が多く付くようにな
り、これは摩耗の原因となると考えられる。また、射出
成形金型からシールリングの型離れ性が劣ることにもな
り、効率的でなく歩留りも低下する。表面形状、粗さの
下限値は、射出成形用金型のキャビティ面や、また、シ
ールリング面の精密切削加工時等の効率性も考慮して、
0.1μm以上、あるいは1μm以上であればよい。
【0023】尚、射出金型表面の仕上げ加工などの工程
に長時間を要するので、効率的でないことや樹脂材の転
移膜の形成に影響される可能性もあるため、摩耗に影響
されないような仕様や条件であれば、3〜8μm程度の
範囲以下としても良いとも推定される。
【0024】また、本発明のシールリングの相手材は仕
様により、ピストン、シリンダともADC12等のアル
ミニウム鋳物合金等の軟質材でも使用できるが、S45
C、SCM420H等の炭素鋼、FCD45等の球状黒
鉛鋳鉄等であってもよく、これらは、高周波焼入れ、浸
炭焼き入れ、窒化処理、軟質化処理等の表面効果処理を
施したものであってもよい。表面硬度は例えば、ロック
ウェル硬度によってHR C45〜65の範囲のものであ
ればよく、表面処理によりHR C55〜63やHR C5
8〜65のものに設定できる。これらの相手材は、加工
時の効率や、生産性、価格等で平均して総合的に優れる
鋳物系金属、その中でもADC系金属等の軽量鋳物金属
系合金等が好ましい。
【0025】そしてこれらの表面形状、粗さは、前述に
記載の程度とすれば、より好ましい摺動状態になると考
えられる。
【0026】また、図1、図2のようなシールリング側
面に潤滑溝等の溝を省略して、シールリング側面が平面
である場合は、摺動面には、潤滑油による潤滑効果が期
待できないので、炭素量0.2〜1.2%含有の炭素含
有鋼や炭素含有鋳物として表面硬度を前記の表面処理法
によって、前記硬度の範囲内とすれば、本発明のシール
リング材の相手摺動材としてより適当な組み合わせとな
ることも考えられる。シールリングの相手材硬度が低す
ぎると、相手材の摩耗の原因となり、高すぎるとシール
リング成形体の摩耗の原因となることが考えられる。
【0027】図1(a)、(b)に示した第1実施例の
オイルシールリング1は、一部に相い対向した合口2、
2を有し、この部分で分離されている。この分離部分は
射出成形時には、若干開いた状態でシールリングが形成
され、射出成形後、各合口2、2を相互に噛み合わせて
熱固定され、相手部材のシール溝に組付けるときは、そ
の合口2、2を押し広げる。
【0028】上記のシールリング1の全長のほぼ中央部
に材料を注入するための注入位置3が存在する。この注
入位置3は、通常射出成形時のゲート4の痕跡として残
るので、その位置を知ることができる。
【0029】上記のシールリング1の外径はφ70で、
全長は220mmである。注入位置が「ほぼ中央」と
は、シールリング1の全長の中央部であって±30°の
範囲内の位置をいう。
【0030】以下にシールリングの製造方法と評価結果
を述べる。
【0031】上記の合成樹脂製シールリング1を耐熱
性、機械的強度等に優れるポリエーテルケトン系樹脂の
一種のポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)を
主材料とし、50重量%未満とならないようにし、平均
繊維径5〜20μm、平均繊維長10〜500μmで適
度な強度、弾性率、硬度を有するピッチ系カーボンファ
イバ(CF)5〜25重量%、また、分散性をよくする
ため、摺動特性と離型性のよい平均粒径1〜100μ
m、好ましくは10〜70μmのポリテトラフルオロエ
チレン(PTFE)やタルク、マイカ、炭酸カルシウ
ム、二硫化モリブデン、二硫化タングステン等の、固体
潤滑材等5〜35重量%を充填材料として配合した原材
料を、ミキサーを用いて乾式混合し、さらに押出機にて
溶融押出して造粒し、これを射出成形機にて射出圧力8
0〜120MPaシリンダ温度320〜420℃、金型
温度160〜200℃の条件で、縦断面が略矩形状とな
るよう、外径70mm、幅2mm、肉厚2mmにそれぞ
れ定めて射出成形し、その後、180〜280℃の熱処
理を施し、寸法測定及び曲げ強度テストを行った。尚、
射出成形時に際して、射出圧力は、20〜200MPa
や50〜150MPaに調整し、シリンダ温度は、25
0〜450℃、ノズル付近は、300〜500℃、に温
調し、金型温度は、100〜200℃、キャビティ内は
平均して120〜200℃、に温調して射出成形した。
射出圧力が低すぎると充分な機械的強度を有する成形体
を得づらく、ボイドとヒケの発生原因にもなり、高すぎ
ると射出成形機や成形体に負荷をかけすぎ、ソリや型離
れ不良の原因となる。シリンダ温度が低すぎると熱可塑
性樹脂が充分に溶融せず、ショートショットの原因にも
なり、高すぎると樹脂材が熱分解し、過度な熱覆歴をも
つ樹脂材となり、ヤケの原因にもなる。
【0032】また、金型温度が低すぎるとショートショ
ットの原因にもなり、高すぎると冷却時の急冷によるヒ
ケや型離れ不良の原因となる。得られた結果を図4及び
図5に示す。
【0033】また、実施例に使用した材料は以下のとお
りである。
【0034】・PEEK(英国アイ・シー・アイ社製:
VICTREX−PEEK150P)50重量% ・CF(呉羽化学社製:クレハM207S 平均繊維径
14.5μm)20重量% ・PTFE(喜多村社製:300H)10重量% ・タルク(松村産業社製:クラウンタルク 平均粒径1
1μm)20重量% 尚、合成樹脂としては、他にポリフェニレンサルファイ
ド樹脂(PPS)、熱可塑性ポリイミド樹脂(TPI)
等が挙げられる。
【0035】また、実施例で使用のPEEK材からなる
成形品の各物性値は以下のとおりであった。
【0036】融点 330〜340℃(AST
M D−2117,DSC法) 熱変形温度 270〜290℃(ASTM D−648
(1.81MPa)) ガラス転移点 140〜150℃ 曲げ強度 120〜130MPa(ASTM D−
790) 曲げ弾性率 9000〜10000MPa(ASTM
D−790) 硬度(ロックウェル硬度) M75〜M80(ASTM
D−785) 尚、( )内は好ましい試験方法を表わすが、この測定
法に上限定されるものではない。
【0037】これらの組成物から成る成形体は、例えば
融点が280〜480℃、熱変形温度がASTM D−
648(1.81MPa)の条件下で230〜430
℃、また曲げ強度がASTM D−790の条件下で1
00〜300MPa、好ましくは110〜140MP
a、曲げ弾性率がASTM D−790の条件下で20
00〜20000MPa、好ましくは4000〜200
00MPa、硬度がASTM D−785(ロックウェ
ル硬度、Mスケール)にてM70〜120の範囲の成形
体であることが好ましい。
【0038】融点や熱変形温度が前記程度であれば、油
圧式クラッチの使用中で油温が例えば80〜180℃の
高温となって、シールリングが油圧式クラッチ用のピス
トンやシリンダ等の相手材と摺動して加熱されても、充
分な耐熱性が期待できる。また、曲げ強度、曲げ弾性率
が、前記程度であれば、この発明の構成と相互いに関連
してシールリングの欠損等を防ぐことが期待できる。
【0039】そして表面硬度が前記程度であれば、油圧
式クラッチの使用中で油圧が例えば0.5〜2.5MP
aとなって、シールリングが油圧式クラッチ用のピスト
ンやシリンダの油圧によって押し付けられても充分な耐
クリープ特性等の機械的特性を長期にわたって維持でき
ると考えられる。
【0040】アニール熱処理等の熱処理は、結着性耐熱
樹脂材のガラス転移点以上で成形体材料の融点未満の範
囲の温度で行うことが好ましく、具体的には、例えば本
実施例のように、ガラス転移点以上、熱変形温度よりも
5〜40℃高い温度以下にて、好ましくは10〜30℃
高い温度以下にて、さらに好ましくは、10〜20℃高
い温度以下の範囲で行えばよい。熱処理温度がガラス転
移点未満の低温では、結晶化されず、あるいは結晶化の
進行に多大の時間を要して効率が悪く、成形体のわずか
な歪みを除くことも難しくなり、寸法安定性も得られに
くい。熱処理温度が、融点以上や前記温度を越える温度
では、結着性耐熱樹脂が、溶融、または、著しく軟化す
るので、シールリング形状の成形体として成立しなかっ
たり、寸法精度を維持することが困難となる。
【0041】また、シールリングの摺動面およびその相
手金型面の表面形状、表面粗さは、最大粗さ(Rma
x)、算術平均粗さ(Ra)、十点平均粗さ(Rz)等
の評価法により、0.1〜25μm、好ましくは、1〜
10μm程度であれば摺動性と離型性に優れたものとな
る。
【0042】図2に第2実施例を示す。この場合はシー
ルリング1の全長の中央から若干ずらせた(±10°程
度)位置に材料注入位置3を有するものであり、材料の
組成、寸法形状は、第1実施例と同様である。
【0043】この場合は相手部材のシール溝に組付ける
際の応力が全長の中央に集中し、その中央から若干ずれ
た位置にある注入位置3に集中することが避けられる。
【0044】尚、応力集中をさけるため、シールリング
の全長のほぼ中央部両端の±1°の範囲をさけ、±1〜
±30°、好ましくは±3〜±30°、更に好ましくは
±10〜±30°の範囲に注入位置、またはゲート位置
を設けてもよい。また、注入位置、ゲート位置は、機械
的強度が弱くなるウエルド部分を無くすため、各図のよ
うに1ヶ所のみとすることが好ましい。
【0045】
【比較例】第1実施例と同じ組成、寸法、形状で、図3
に示すように、注入位置3をシールリング1の一方の合
口2近傍に定めて射出成形し、第1実施例と同時に寸法
測定及び曲げ強度テストを行った。得られた結果を前記
の図4及び図5に併記した。
【0046】この結果からわかるように、注入位置から
150mmを越すと強度が低下し、シールリングの側面
間部の幅寸法が減少することが認められた。実施例、比
較例ともに該幅寸法が若干減少しているが、これは、シ
ールリングの両側面に精密切削加工を施すことにより、
精度の高い表面形状、表面粗さ形状とすることができ
る。
【0047】なお、注入位置3において強度低下が認め
られるが、機能上問題のないレベルである。
【0048】次に、図6は射出成形金型5の一部を示す
ものであり、前述のシールリング1を成形するためのキ
ャビティ6が形成され、その全長のほぼ中央にゲート4
を設けている。
【0049】上記のゲート4の位置は全長の中央から±
30°以内の範囲、好ましくは±10°程度の位置に選
定され、この金型5により前記第1実施例又は第2実施
例のシールリングの射出成形が行われる。
【0050】現在広く使われている各種色々な合い口形
状のなかで、ステップカット形状では、合い口部の油洩
れ量を少なくできるが、射出成形時の射出金型内の構造
は、図6のように、シール性を保つための互いに重なり
合う段付き部の突起部分のスペースを見込んだ量だけシ
ールリングの合い口部を開いた状態で射出成形する。そ
のため、その後の熱固定時での合い口を合わせる工程
や、ピストン、シリンダ等にシールリングを組み込む時
等のリング全長のほぼ中央部に繰り返してかかる応力集
中が注入位置にかかることをさけるためにも有用であ
る。またステップカット形状のような形状、特にもっと
複雑な形状、径方向、軸方向共に段状に切り欠かれた複
合ステップカット形状のような複雑な合い口形状のシー
ルリングは射出成形により容易に形成することができ
る。
【0051】このようなシールリングはリング外径が2
5mm以上、好ましくは30mm以上(上限値は特に限
定しないが200mm以下、好ましくは100mm以
下)でリング断面の肉厚、幅とも3mm以内、好ましく
は2.5mm以内、(下限値は特に限定しないが1mm
以上、好ましくは1.5mm以上)のような展開長さが
長く、肉厚、幅寸法とも小さい中径、大径のシールリン
グに好適である。前記の樹脂材料は例えばポリアセター
ルと異なり溶融粘度が高いので、このようなシールリン
グに本発明を適用することで、従来の問題を解決でき
る。
【0052】
【発明の効果】請求項1のシールリングは、その全長に
わたり均一な寸法、均一な強度が得られ、油圧や回転力
が加わっても、欠損や異常摩耗等がなく、振動、振れ等
があっても十分なシール性が得られる。
【0053】請求項2のシールリングは、相手材のリン
グ溝に組付けるべく合口を広げた際の応力はシールリン
グ全長の中央に集中し、注入位置の部分に集中すること
が避けられ、欠損等の問題を無くすることができる。
【0054】請求項3及び4の発明は、それぞれ請求項
1及びのオイルシールリングを射出成形によって製作す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) 第1実施例の平面図 (b) 第2実施例の一部拡大正面図
【図2】第2実施例の平面図
【図3】比較例の平面図
【図4】曲げ強度変化に関する試験結果図
【図5】幅寸法変化に関する試験結果図
【図6】射出成形装置の実施例の一部を示す横断平面図
【符号の説明】 1 オイルシールリング 2 合口 3 注入位置 4 ゲート 5 金型 6 キャビティ

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一部に相い対向した分離部を有し、射出
    成形された合成樹脂製オイルシールリングにおいて、該
    シールリングの全長のほぼ中央に材料の注入位置を有す
    ることを特徴とする合成樹脂製オイルシールリング。
  2. 【請求項2】 上記の注入位置が中央部両側の約±30
    °の位置に存在することを特徴とする請求項1に記載の
    合成樹脂製オイルシールリング。
  3. 【請求項3】 一部に相い対向した分離部を有する合成
    樹脂製オイルシールリングの射出成形金型において、金
    型内に材料を注入するためのゲートをシールリングキャ
    ビティの全長のほぼ中央に設けたことを特徴とする合成
    樹脂製オイルシールリングの射出成形金型。
  4. 【請求項4】 上記のゲートの位置が、シールリングキ
    ャビティの中央部の両側の約±30°の範囲に存在する
    ことを特徴とする請求項3に記載の合成樹脂オイルリン
    グの射出成形金型。
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