JP3808136B2 - ブレーキ液圧制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用ブレーキ液圧制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用ブレーキ装置にあっては、ペダル操作によってマスターシリンダから発生した液圧に基づき、外部液圧源とホイールシリンダの間に設けられた液圧制御弁を作動し、前記マスターシリンダの圧力に比例した液圧を外部液圧源からホイールシリンダに作用させることが行われている。
【0003】
また、前記液圧制御弁を作動させる方式として、ブレーキペダルの操作によってマスターシリンダで発生した液圧を直接作用させて弁体を作動させる方式のほか、マスターシリンダで発生した液圧をセンサーで検出し、このセンサによる検出値に基づいて、弁体を作動させるためのソレノイドなどの駆動手段(アクチュエータ)の駆動電流を制御することにより弁体を作動させる方式がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、後者の方式の場合、車両用ブレーキの作動には高い信頼性が求められることから、前記液圧制御弁に用いられアクチュエータの動作が異常な場合であっても運転者の意図する制動力を確実に発揮し得るフェイルセーフ機能が必要とされる。具体的には、前記アクチュエータが動作不能となった場合にマスターシリンダの圧力に応じた制動液圧を発生させることができるとともに、前記アクチュエータが過剰に動作した場合であっても過剰な制動力を生じることなく、マスターシリンダの圧力に応じた制動力を得ることができる機能が必要とされる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、液圧制御弁を操作するためのアクチュエータが動作不能となった場合、あるいは、過剰に動作しようとする場合にブレーキ液圧制御系の動作を正常に維持することのできるフェイルセーフ機能を備えたブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願の第1発明は、ブレーキペダルの操作に基づき液圧を発生するマスターシリンダと、液圧を発生する外部液圧供給源と、この外部液圧供給源とホイールシリンダとの間に設けられ、前記マスターシリンダの液圧に応じて前記外部液圧供給源からホイールシリンダに作用する液圧を制御する液圧制御弁とを備えたブレーキ液圧制御装置であって、前記液圧制御弁は、シリンダ内に摺動自在に設けられたスプールと、シリンダ内の該スプールの摺動域に開口し、外部液圧供給源からブレーキ液が供給される供給ポートと、シリンダ内の該スプールの摺動域に開口し、ホイールシリンダ側に連通される出力ポートと、前記供給ポートと前記出力ポートとの連通を遮断するように、シリンダ内における他側に常時前記スプールを付勢する付勢手段と、前記供給ポートと前記出力ポートとの連通を確保するように、前記付勢手段に抗して、ソレノイドに供給された駆動電流に応じて、シリンダ内における一側に前記スプールを付勢するスプール駆動手段と、前記出力ポート、前記マスターシリンダ及び前記ホイールシリンダに接続され、前記ホイールシリンダに対して前記出力ポートまたは前記マスターシリンダとの連通を切り換える切換弁とを備え、該切換弁は、前記スプールの移動に連動する弁体(第1実施形態においける円環状のスプール31)が設けられ、前記ソレノイドに駆動電流が供給されて前記スプールが前記付勢手段に抗してシリンダ内における一側に移動した場合には、前記弁体が一方に位置して前記マスターシリンダと前記ホイールシリンダ側とを連通する油路を閉じかつ前記出力ポートと前記ホイールシリンダ側とを連通する油路を開くとともに、前記ソレノイドに駆動電流が供給されず前記スプールが前記付勢手段によってシリンダ内における他側にある場合には、前記弁体が前記スプールとともに他方に位置して前記マスターシリンダと前記ホイールシリンダ側とを連通する油路を開きかつ前記出力ポートと前記ホイールシリンダ側とを連通する油路を閉じることを特徴としている。
【0006】
本願の第2発明は、ブレーキペダルの操作に基づき液圧を発生するマスターシリンダと、液圧を発生する外部液圧供給源と、この外部液圧供給源とホイールシリンダとの間に設けられ、前記マスターシリンダの液圧に応じて前記外部液圧供給源からホイールシリンダに作用する液圧を制御する液圧制御弁とを備えたブレーキ液圧制御装置であって、前記液圧制御弁は、シリンダ内に摺動自在に設けられたスプールと、シリンダ内の該スプールの摺動域に開口し、外部液圧供給源からブレーキ液が供給される供給ポートと、シリンダ内の該スプールの摺動域に開口し、ホイールシリンダ側に連通される出力ポートと、前記供給ポートと前記出力ポートとの連通を遮断するように、シリンダ内における他側に常時前記スプールを付勢する付勢手段と、前記供給ポートと前記出力ポートとの連通を確保するように、前記付勢手段に抗して、ソレノイドに供給された駆動電流に応じて、シリンダ内における一側に前記スプールを付勢するスプール駆動手段と、前記マスターシリンダと前記ホイールシリンダとに連通し、両者の連通・遮断を切り換える切換弁とを備え、該切換弁は、前記スプールの移動に連動する弁体(第2、第3実施形態におけるスプール73)が設けられ、前記ソレノイドに駆動電流が供給されない場合あるいは通常値の駆動電流が供給される場合には、前記弁体が一方に位置して前記マスターシリンダと前記ホイールシリンダ側とを連通する油路を開じるとともに、前記ソレノイドに過度の駆動電流が流れて前記スプールが前記付勢手段に抗してシリンダ内の一側に所定量以上に移動した場合には、前記弁体が前記スプールとともに他方へ位置して前記マスターシリンダと前記ホイールシリンダ側とを連通する油路を開くことを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1および図2は本発明の第1実施形態を示すものである。
まず、図1によりブレーキの液圧制御系全体の構成を説明する。
符号1はブレーキペダルであって、このブレーキペダル1を踏み込むことにより、マスターシリンダ2からPMなる液圧が発生し、この液圧PMが後述する液圧制御弁5のマスターシリンダ圧ポート5aに供給されるようになっている。
そして、このマスターシリンダ2から発生される液圧PMは、液圧センサ3によって検出され、その検出信号は液圧制御弁5の駆動を制御する制御装置100に供給されるようになっている。
なお、この制御装置100には、上記液圧センサ3の他、当該制御装置100によるアンチスキッド制御時やトラクションコントロール時の車両状況を検出するために、車輪速センサー4等が接続されている。
7はマスタシリンダ2で発生する液圧よりも高い液圧を発生する液圧源で、液圧ポンプ7a,リザーバ7b,および液圧ポンプ7aの出力系6に設けられて圧油を蓄えるアキュムレータ7cからなる。そして、その出力系6は液圧制御弁5の供給ポート5bに接続されている一方、リザーバ7bは同じく液圧制御弁5の戻しポート5cに接続されている。
ところで、この液圧制御弁5には、前述したマスターシリンダ2から供給される液圧と、液圧源7から供給される液圧とを制動油圧PSとして選択的に供給するための切換弁(フェールセーフ弁)9が設けられている。この切換弁9の出力ポート9bから出力される制動油圧PSは、油通路10を介して倍力装置11に供給されて所定の倍率で増圧され、この結果ホイールシリンダ圧PWとしてホイールシリンダ13に供給されるようになっている。
【0008】
次に、この切換弁9を備えた液圧制御弁5の構成について説明する。
液圧制御弁5のハウジング51内は、第1のシリンダ部となる小径のシリンダ部52と、このシリンダ部52に連続して形成され、第2のシリンダ部が形成される大径のシリンダ部53とからなる段付シリンダ形状となっている。
第1のシリンダ部となる小径のシリンダ部52には、中間部分が縮径されて連通室を形成するスプール15が、摺動自在に挿入されている。
そして、このスプール15の大径のシリンダ部53側と反対側の一端には、受圧面積A1のピストン17が設けられ、このピストン17は、シリンダ部52の一端側に設けられたバルブケース19に形成された孔部19aに、液密,摺動可能に挿入されている。
また、バルブケース19と前記スプール15の一端側との間には、ばね21が設けられており、このばね21は、図中スプール15を右方に押圧して、その中間部分の連通室とハウジング51に穿設された供給ポート5bとの連通を遮断し、ハウジンググ51に穿設された戻しポート5cとの連通を確保するようにスプール15を付勢している。
【0009】
また、このスプール15の他端には、受圧面積A4なるピストン23が設けられ、前記大径のシリンダ部53内の一端側の段部に支持固定されたバルブケース25の貫通孔25aに液密、摺動可能に挿通され、その先端は大径のシリンダ部53の他端側に形成されたマスタシリンダー室5dに臨んで、後述の比例ソノレイド27のプランジャー29に当接している。
そして、このプランジャ29の前進によりスプール15は図中左方へ押されるようになっている。
【0010】
これに対し、大径のシリンダ部53内には、前述したように一端側の段部にバルブケース25が支持固定されている。バルブケース25の一側すなわち段部側の面には環状溝25bが形成され、その環状溝25bの径方向内側の柱状部分の端面は、径方向外側の縁部の端面に対して軸方向に凹んで形成されており、その中央には前記ピストン23が貫通する貫通孔25aが穿設されている。
そして、バルブケース25の環状溝25bには、スプール15の他端と係合可能な円環状のスプール31が、環状溝25b内を液密,摺動自在に挿通されている。この円環状のスプール31と前記バルブケース25との間には、前記ばね21よりも小さいばね定数を有するばね33が設けられており、円環状のスプール31を図中左方、すなわち大径のシリンダ部53の一側に付勢するようになっている。
これにより、円環状のスプール31とバルブケース25の環状溝25bとによって形成される空間は油室35となり、また、円環状のスプール31のピストン23が挿通された孔を介して連通された、スプール15の他側とバルブケース25の一側との間の空間は、油室36となっている。
さらに、前記円環状のスプール31には、その内部に連通路37がスプール15の軸方向と平行に設けられており、また、スプール31の一側端面には径方向に延びる溝39が形成されている。この連通路37によって、ハウジング51に形成された連通路41を介して、油室35が戻しポート5cに接続されているとともに、溝39によって、油室36も同様に連通路41を介して戻しポート5cに接続され、油室35,36は常時一定圧力(大気圧)に保たれている。
加えて、前記円環状のスプール31の内周および外周面には、溝43および溝45がそれぞれ形成され、これらの溝43,溝45は、前記円環状のスプール31の径方向に延びる連通孔47によって互いに連通されている。
なお、前記連通路41は、さらにハウジング51に形成されたポート5gにも接続されていて、小径のシリンダ部52内におけるスプール15の一側とバルブケース19との間に形成される油室40を戻しポート5cに接続し、油室40をも常時一定圧力(大気圧)に保っている。
【0011】
前記バルブケース25には、その環状溝25bの径方向外側の縁部に、ポート9a,9bが設けられていて、このうちポート9aは連通路49によって出力ポート5eと連通されている。また、ポート9bは、前述した倍力装置11に接続されるとともに、前述したバルブケース19の孔部19aにも、ハウジング51に形成されたポート5fを介して連通されている。
さらに、前記バルブケース25には、その環状溝25bの径方向内側の柱状部分には連通路9eが形成されている。そして、この連通路9eの一側はバルブケース25の他側に形成されたマスタシリンダ圧室5dに開口しポート9cとなっているとともに、他側は環状溝25bに面して径方向に開口しポート9dとなっている。
そして、ポート9a,9b,9dは、環状溝25b内を移動する円環状のスプール31に対し、スプール31の溝43がポート9a及びポート9bと対向状態にあり、ポート9aとポート9bが溝43を介して連通状態にあるときは、ポート9dはスプール31の溝45と対向せず、また、スプール31の溝45がポート9dと対向状態にあり、ポート9dが溝45,連通孔47,および溝43を介してポート9bと連通状態にあるときには、ポート9aはスプール31の溝43と対向しないように配置されている。
これにより、上述したバルブケース25,スプール31,ばね33等により、切換弁9が構成されている。
【0012】
また、比例ソレノイド27とバルブケース25との間には、マスタシリンダ圧室5dが形成されている。このマスタシリンダ圧室5dは、ポート52を介してマスタシリンダ2と接続され、マスタシリンダ圧室5d内は、常にブレーキペダル1の操作に応じたマスタシリンダ2の液圧PMに保たれるようになっている。
そして、比例ソレノイド27は、制御部100からの制御信号により操作されてプランジャー29を駆動するようになっている。
これに対し、制御部100は、液圧センサ3によって検出されたマスタシリンダ2の液圧に応じて前記比例ソレノイド27を励磁すべく、制御信号を供給するとともに、車輪速センサ4等から供給されるデータに基づいて、アンチスキッド動作やトラクションコントロールを行わせるべく、比例ソレノイド27へ制御信号を供給するようになっている。
【0013】
上記構成の液圧制御弁の動作を説明する。
ブレーキペダル1を踏むと、マスターシリンダ2においてマスターシリンダ圧PM が発生し、液圧制御弁5に供給される。マスターシリンダ圧PM は、ポート5aを介してマスターシリンダ室5dに作用し、さらに、ピストン23の受圧面積A4 に作用して、スプール15を図中左方へ移動させるように、PM・A4なる力が作用する。このPM・A4なる力が作用してスプール15が図中左方へ移動すると、ポート5cが閉じてポート5bが開き、液圧源7のアキュームレータ7cに蓄えられた液圧が前記ポート5bから液圧制御弁5の内部を通じて出力ポート5eに出力され、さらに、油通路49、ポート9a、ポート9b、および油通路10を介して制御圧Ps が倍力装置に作用する。前記制御圧Ps は、ポート5fを介して前記スプール15の図1中左側のピストン17の受圧面積A1 にも作用し、スプール15を図1中右方向へPs・A1なる力で押す。
このとき、スプール15に作用する液圧のつりあい式は、ばね21の弾性力をF1 とすれば、 A1・Ps=A4・PM−F1 ……(1)式 となる。
【0014】
また、上記ブレーキペダル1の踏み込みによりマスタシリンダ圧PM が発生すると、液圧センサ53に検知された液圧PM に基づいて制御部100が比例ソレノイド27に通電してコイルを励磁する。これにより、励磁電流に比例した力Fs がプランジャー29に発生し、スプール15を図1中左へ移動させようとする。この結果、スプール15に作用する力のつりあいは、
A1・Ps=A4・PM−F1+Fs
となる。したがって、比例ソレノイド27の励磁電流の大きさに応じて、制御圧Ps 増減制御が行われる。そして、前記制御圧Ps は倍力装置11に供給され、この倍力装置11の倍力比αで加圧されたホイールシリンダ圧Pw が生じる。
以上のような動作に基づいて発生するホイールシリンダ圧PW は、下記の式によって与えられる。
PW=α/A1・(A4・PM−F1+FS) ……(2)式
【0015】
この(2)式に基づく制動液圧の特性は、図3に示すようになる。
すなわち、比例ソレノイド27の励磁電流の大きさが、ペダル1の踏み込みすなわちマスタシリンダ圧PM の値にかかわらず常に最大になっていると、マスタシリンダ圧PM の増加に伴い、同図破線(a)のようにホイールシリンダ圧PW は増加し、アキュムレータ7cに蓄えられた液圧に基づいて飽和するようになる。
これにより、ペダル1の踏み込みが行われていない、マスタシリンダ圧PM がゼロの状態であっても、比例ソレノイド27に励磁電流を流せばホイールシリンダ圧PW を発生させることができ、比例ソレノイド27の励磁電流を制御することにより、ホイールシリンダ圧PW をゼロから最大PW1までの間で任意に変化させることができる。
一方、比例ソレノイド27の励磁電流の大きさを、図中破線(a)で示した常時最大である場合に対して、ペダル1の踏み込みすなわちマスタシリンダ圧PM の変化に応じて変化させるようにした場合、同図中(b)のようにホイールシリンダ圧PW を増加させることができる。
また、比例ソレノイド27の励磁電流の大きさがマスタシリンダ圧PM の変化にかかわらず零になってしまった場合でも、同図中一点鎖線(c)のように、ホイールシリンダ圧Pw の特性はマスタシリンダ圧PM のみを倍力装置11の倍力比αで増圧した特性が得られることとなる。
したがって、通常の制動操作の際、同図中の実線(b)で示した特性になるように、ペダル1の踏み込みすなわちマスタシリンダ圧PM の大きさに応じて比例電流の大きさを制御部100によって制御するようにしておけば、ホイールシリンダ圧PW は、前記(2)式のマスタシリンダ圧PM 、及びプランジャー29の押圧力FS を変数として制動圧PS を、倍力装置11の倍力比αで加圧した値として得られるようになる。
【0016】
イ.通常の制動操作の場合
ブレーキペダル1を操作していない場合は、制御部100からは比例ソレノイド27へ励磁電流が流れない。
したがって、比例ソレノイド27のプランジャー29には励磁電流に比例した力FS が発生しないので、液圧制御弁5のスプール15は、ばね21の付勢力がばね33の付勢力に勝っていることによって、図1右方に押されている状態にある。
すなわち、スプール15は円環状のスプール31の端面に当接してこれを図1右方に押しており、円環状のスプール31は、ばね33を押し縮めつつ右方へ移動している状態にある。
この結果、油通路10は出力ポート5eとの接続が断たれるとともに、マスタシリンダ圧室5dとポート9bとが、連通路9eを介して、ポート9c〜ポート9d〜溝45〜連通孔47〜溝43を介して連通された状態となっている。
そして、ブレーキペダル1を操作すると、比例ソレノイド27には励磁電流が流れ、そのプランジャー29には励磁電流に比例した力FS が発生し、スプール15を図1左方に押し始める。
これにより、液圧制御弁5のスプール15はばね21の付勢力に抗して図1左方に移動し、これに伴い円環状スプール31も、ばね33の付勢力によって図1、2に示したように図中左方へ移動する。
この結果、マスタシリンダ室5dと油路10との連通が遮断されるとともに、溝43を介してポート9aと9bとが連通され、油通路10は出力ポート5eとの接続が確保されるようになり、さらにこのときのスプール15の移動によってポート5cが閉じてポート5bが開き、油路10には液圧源7のアキュームレータ7cに蓄えられた液圧が出力されることになる。
すなわち、通常の制動操作の場合は、図3における実線(b)の特性となり、ペダル1の操作力に応じた制動力を液圧源7のアキュームレータ7cに蓄えられた液圧によって発生させることができる。
なお、ブレーキペダル1の操作を解除した場合は、比例ソレノイド27には励磁電流が流れなくなり、スプール15はばね21の付勢力により右方へ復帰移動するが、この場合、ポート5bが閉じてポート5cが開いた後、ポート9aとポート9bとの連通が円環状のスプール31によって遮断されるので、油路10に出力された液圧はポート5cを介してリザーバ7bに戻される。
【0017】
ロ.アンチスキッド動作時(ABS動作時)
急制動などによってスリップが生じて車輪がロックしそうになると、車輪速センサ4により、ロックによる急速な車輪速低下が検出される。この車輪速センサ4の検出信号により、制御部100がロック状態であると判断し、この判断に基づきABS動作を行わせるべく前記比例ソレノイド27を制御する。
すなわち、通常の制動操作におけるホイールシリンダ圧PW の特性として前記図3中の破線(b)で示した特性が得られるように比例ソレノイド27の励磁電流の大きさをマスタシリンダ圧PW の大きさに応じて設定しておくと、所定のペダル1の踏み込みすなわちマスタシリンダ圧PM の大きさに対して、前述の設定していた比例ソレノイド27の励磁電流を増減させることにより、ホイールシリンダ圧PW を図3中に破線(a)で示した特性まで増圧させることと、ホイールシリンダ圧PW を0まで減圧させることとが可能となり、通常の制動操作により発生するホイールシリンダ圧PW に対して、所定量だけホイールシリンダ圧PW の増圧及び減圧を行うことができ、ABS動作が行える。
【0018】
ハ.トラクションコントロール時(TRC時)
トラクションコントロール時においては、ペダル1が踏み込まていないので、マスタシリンダ圧PM の大きさは零であるが、通常の制動操作におけるホイールシリンダ圧PW の特性として前記図3中の破線(b)で示した特性が得られるように比例ソレノイド27の励磁電流の大きさをマスタシリンダ圧PM の大きさに応じて設定しておけば、車輪速センサ4により急速な車輪速の増加が検出されると、マスタシリンダ圧PM の大きさが零であるにもかかわらず、比例ソレノイド27に励磁電流を流すことにより、比例ソレノイド27が励磁されてスプール15が図1の左方に移動し、下記の式に基づくホイールシリンダ圧PW を生じさせることができる。
PW=α/A1・(FS−F1)……(3)式
したがって、マスタシリンダ圧PM の大きさが零の場合において、図3中の太線(d)の特性に示すようにホイールシリンダ圧PW1を増圧させることができるので、発進やコーナリングの際にもホイールシリンダ圧PW を適宜発生させて車体の挙動の安定化を図ることができる。
【0019】
ニ.失陥時
液圧センサ3、比例ソレノイド27等の故障によりホイールシリンダ圧PW の制御系に異常が生じた場合、ペダル1の踏み込みによるマスタシリンダ圧PM の発生にかかわらず、制御部51からは比例ソレノイド27へ励磁電流が流れなくなる。
この場合、通常の制動操作におけるペダル1の非操作時と同じく、比例ソレノイド27には励磁電流が流れないので、液圧制御弁5のスプール15は、ばね21によって図1右方に押されている状態にある。
すなわち、スプール15は円環状のスプール31の端面に当接してこれを図1右方へ押しており、円環状のスプール31はばね33を押し縮めつつ右方へ移動している状態にある。
この結果、図2において、比例ソレノイド27へ励磁電流が流れていたときに溝43を介して連通されていたポート9aと9bとが遮断されて、油通路10は出力ポート5eとの接続が断たれるとともに、マスタシリンダ圧室5dとポート9bとが、連通路9eを介して、ポート9c〜ポート9d〜溝43〜連通孔47〜溝43を介して連通された状態となっているため、マスタシリンダ圧PM がポート9bから油通路10を介して倍力装置11に直接作用するようになる。
したがって、マスタシリンダ圧PM とホイールシリンダ圧PW との関係は、下記の通りとなる。
PW =αPM ……(4)式
すなわち、マスタシリンダ圧PM とホイールシリンダ圧PW との間の関係は、図3における一点鎖線(c)の特性となり、比例ソレノイド27が作動することができない場合であっても、ペダル1の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
したがって、液圧センサ3、比例ソレノイド27等の故障によりホイールシリンダ圧PW の制御系に異常が生じ、ペダル1の操作にかかわらず比例ソレノイド27に励磁電流が流れないときであっても、マスタシリンダ圧PM を倍力装置11を介してホイールシリンダに直接作用させることができる。
さらに、前記比例ソレノイド27に異常な大電流が流れる失陥に備えて、比例ソレノイド27に過剰な励磁電流が流れた場合には比例ソレノイド27に対する励磁電流の供給を遮断する手段を設けておけば、このような場合でも、前述の比例ソレノイド27にペダル1の操作にかかわらず励磁電流が流れず動作不能の場合と同様に、マスタシリンダ圧PM を倍力装置11に直接作用させることができ、制動力を正常に保つことができる。
【0020】
図4は本発明の第2実施形態を示すものである。なお、図4において第1実施形態と共通の構成には同一符号を付し、説明を簡略化する。
この第2実施形態においても、マスターシリンダ圧PM に基づく比例ソレノイド27のプランジャー29による力とばね21の弾性力とのつりあいに基づきスプール15が図4の左右へ移動し、液圧源7から倍力装置11を介してホイールシリンダ13に作用する液圧が制御される。
【0021】
前記ばね21の一端は、ハウジング51’の内部シリンダ52’に固定されたバルブケース71の、溝内に収容されている。このバルブケース71の一端側の油室72には、スプール73が摺動自在に挿入されており、このスプール73の一端と液圧制御弁5の内壁との間にはばね75が設けられて前記スプール73を前記バルブケース71に接するように付勢している。前記スプール73は、軸線と平行な方向へ向かう連通孔77を有し、移動に伴い、この連通孔77を介して図中左右へ油が流通することができるようになっている。前記スプール73の外周には溝81が形成され、この溝81と前記連通孔77とは、プランジャー73の半径方向へ向かう連通孔79を介して連通されている。前記液圧制御弁5のハウジング51’には、ポート5hが形成されており、このポート5hは、前記スプール73が図中左方へ所定位置まで移動することにより前記溝81に連通され、さらに、前記液圧制御弁5内の油室へ連通されるようになっている。なお、前記ポート5hには、連通路83を介してマスターシリンダ圧PM が作用するようになっている。したがって前記スプール73はポート5hを開閉することにより、ポート5f〜5h間の連通を状態を開閉する開閉手段としての機能を果たすことになる。
【0022】
上記構成の液圧制御弁の動作を説明する。
イ.通常の制動動作の場合
ブレーキペダル1を操作していない場合は、制御部51から比例ソレノイド27へは励磁電流が流れない。
したがって、比例ソレノイド27のプランジャー29には励磁電流に比例した力FS が発生しないので、液圧制御弁5のスプール15は、ばね21の付勢によって、図4右方に押されている状態にある。
すなわち、スプール15はばね21の付勢によってソレノイド27のプランジャー29に接した状態とされ、一方、スプール73は、ピストン17と接していないので、ばね75に押されてバルブケース71に押し付けれた状態で停止している。
ブレーキペダル1を操作すると、マスタシリンダ2においてマスタシリンダ圧PM が発生し、この圧力が液圧制御弁5のポート5aおよび5hに供給される。このマスタシリンダ圧PM によってスプール15に作用する力は、ばね21によるばね力をF1 とし、スプール15の受圧面積をA4 とすれば、A4・PM−F1と表すことができる。
スプール15に前記A4・PM−F1 の力が作用すると、スプール15は図4の左方向へ移動してポート5bを開き、アキュームレータ圧がポート5b〜ポート5eを経由して油通路10へ作用する。そして、出力ポート5eの制動圧力PS によりスプール15を図4の右方へ動かそうとする力が作用する。この力は、制動圧力PS・PS となる。
この時スプール15に作用する力の釣合は、前記(1)式と同じく、
A1・PS=A4・PM−F1
となる。
前記マスターシリンダ圧PW の上昇に伴い、液圧センサ53の検出値に応じた電流によってよって比例ソレノイド27が励磁されると、励磁電流に比例した力FS がソレノイドプランジャ29に発生してスプール15を図4の左方へ押すようになる。
この時、スプール15に作用する力の釣合は、
A1・PS=A4・PM−F1+FS ……(5)式
となる。
したがって、比例ソレノイド27の励磁電流に応じて制動液圧PS が増減することになる。なお、この制動液圧PS は、前記第1実施形態の場合と同様に倍力装置11に作用し、ホイールシリンダ圧PW がホイールシリンダ13に供給されて制動力が発生する。
すなわち、前記第1実施形態における(2)式の関係が成立し、同じく、図3の実線(b)の関係にあるPW=α(A4・PM−F1+FS)なるホイールシリンダ圧PW が発生する。
【0023】
ロ.アンチスキッド動作時(ABS動作時)
急制動などによってスリップが生じて車輪がロックしそうになると、車輪速センサ4により、ロックによる急速な車輪速低下が検出される。この車輪速センサ4の検出信号により、制御部51がロック状態であると判断し、この判断に基づき、前記第1実施形態の場合と同様にABS動作を行わせるべく前記比例ソレノイド27を制御し、前記図3中の破線(a)で示した特性が得られる。
【0024】
ハ.トラクションコントロール時(TRC時)
トラクションコントロール時においては、ペダル1が踏み込まていないので、マスタシリンダ圧PM の大きさは零であるが、前記第1実施形態の場合と同様に、通常の制動操作におけるホイールシリンダ圧PW の特性として前記図3中の破線(b)で示した特性が得られるように比例ソレノイド27の励磁電流の大きさをマスタシリンダ圧PM の大きさに応じて設定しておけば、車輪速センサ4により急速な車輪速の増加が検出されると、マスタシリンダ圧PM の大きさが零であるにもかかわらず、比例ソレノイド27に励磁電流を流すことにより、比例ソレノイド27が励磁されてスプール15が図4の左方に移動し、上記第1実施形態の(3)式と同じ下記の式による力に基づき、ホイールシリンダ圧PW を生じさせることができる。
PW=α/A1・(FS−F1)
したがって、マスタシリンダ圧PM の大きさが零の場合において、図3中の太線(d)の特性に示すようにホイールシリンダ圧PW を増圧させることができるので、発進やコーナリングの際にもホイールシリンダ圧PW を適宜発生させて車体の挙動の安定化を図ることができる。
【0025】
ニ.フェイル時
比例ソレノイド27に運転者が意図しない過電流が流れた場合、この過電流によって比例ソレノイド27が作動してスプール15の先端のピストン17が図中左方向へ移動し、その先端がスプール73に接すると、これを押圧して左方向へ移動させる。これにより、溝81がポート5hと重なる位置に達すると、ポート5fとhとが溝81〜連通孔79〜連通孔77〜油室72を介して連通状態となる。また、出力ポート5eがスプール15の端面によって閉じられる。したがって、アキュームレータからの圧力は油通路10へは供給されず、マスターシリンダ圧PM が前記ポート5h〜溝81〜連通孔79〜ポート5fを介して油通路10に作用し、マスターシリンダ圧PW に基づく制動力が発生する。この場合、アキュームレータからの液圧による倍力作用は行われず、倍力装置11の倍力比のみに基づく倍力作用が得られる。
【0026】
図5は本発明の第3実施形態を示すものである。この第3実施形態は、第2実施形態から、マスターシリンダ圧室5dへマスターシリンダ圧PM を作用させる油圧経路を省略したものである。
この結果、スプール15に作用する力のつりあい式は、
A1・Ps=FS−F1 ……(5)’式 となる。
したがって、液圧センサ3に検出された液圧に基づいて比例ソレノイド27が発生する力に応じた制御圧PS が発生するから、実際にマスターシリンダ2に発生する液圧や、液圧制御弁5を構成する各部の受圧面積等にかかわらず、液圧センサ3、制御部100、および比例ソレノイド27からなる電気回路上の処理によって任意に倍力比を設定することができるという効果を奏する。
【0027】
なお、上記以外の点については、前記第2実施形態の場合と同様に通常の制動、ABS動作、TRC制御、および、フェイル時の動作が行われるのでその説明は省略する。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、外部液圧供給源とホイールシリンダとの間に液圧制御弁を設けてなるブレーキ液圧制御装置において、ソレノイドの動作不良によって外部液圧供給源から液圧が供給されない場合にマスターシリンダの液圧をホイールシリンダに直接作用させることにより、万一の失陥に際して制動力を確保することができる。また、万一、液圧制御弁を駆動するソレノイドが過剰に作動した場合であっては、外部液圧供給源とホイールシリンダとの間の液の流通を遮断しかつマスターシリンダとホイールシリンダとを連通させて、マスターシリンダの液圧に応じた制動力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の回路図。
【図2】図1における液圧制御弁部分の断面図。
【図3】マスターシリンダ圧とホイールシリンダ圧との関係を示すグラフ。
【図4】第2実施形態の回路図。
【図5】第3実施形態の回路図。
【符号の説明】
1 ブレーキペダル 2 マスターシリンダ5 液圧制御弁 5a〜5c 5e ポート7 外部液圧源 9 フェイルセーフ弁11 倍力装置 13 ホイールシリンダ15 スプール 17 ピストン21 ばね 23 ピストン27 比例ソレノイド 29 プランジャー31 円環状のスプール (弁体)33 ばね51 制御蔵置 53 液圧センサ55 車輪速センサ 73 スプール(弁体)75 ばね
Claims (2)
- ブレーキペダルの操作に基づき液圧を発生するマスターシリンダと、
液圧を発生する外部液圧供給源と、
この外部液圧供給源とホイールシリンダとの間に設けられ、前記マスターシリンダの液圧に応じて前記外部液圧供給源からホイールシリンダに作用する液圧を制御する液圧制御弁とを備えたブレーキ液圧制御装置であって、
前記液圧制御弁は、
シリンダ内に摺動自在に設けられたスプールと、
シリンダ内の該スプールの摺動域に開口し、外部液圧供給源からブレーキ液が供給される供給ポートと、
シリンダ内の該スプールの摺動域に開口し、ホイールシリンダ側に連通される出力ポートと、
前記供給ポートと前記出力ポートとの連通を遮断するように、シリンダ内における他側に常時前記スプールを付勢する付勢手段と、
前記供給ポートと前記出力ポートとの連通を確保するように、前記付勢手段に抗して、ソレノイドに供給された駆動電流に応じて、シリンダ内における一側に前記スプールを付勢するスプール駆動手段と、
前記出力ポート、前記マスターシリンダ及び前記ホイールシリンダに接続され、前記ホイールシリンダに対して前記出力ポートまたは前記マスターシリンダとの連通を切り換える切換弁とを備え、
該切換弁は、前記スプールの移動に連動する弁体が設けられ、
前記ソレノイドに駆動電流が供給されて前記スプールが前記付勢手段に抗してシリンダ内における一側に移動した場合には、前記弁体が一方に位置して前記マスターシリンダと前記ホイールシリンダ側とを連通する油路を閉じかつ前記出力ポートと前記ホイールシリンダ側とを連通する油路を開くとともに、
前記ソレノイドに駆動電流が供給されず前記スプールが前記付勢手段によってシリンダ内における他側にある場合には、前記弁体が前記スプールとともに他方に位置して前記マスターシリンダと前記ホイールシリンダ側とを連通する油路を開きかつ前記出力ポートと前記ホイールシリンダ側とを連通する油路を閉じることを特徴とするブレーキ液圧制御装置。 - ブレーキペダルの操作に基づき液圧を発生するマスターシリンダと、
液圧を発生する外部液圧供給源と、
この外部液圧供給源とホイールシリンダとの間に設けられ、前記マスターシリンダの液圧に応じて前記外部液圧供給源からホイールシリンダに作用する液圧を制御する液圧制御弁とを備えたブレーキ液圧制御装置であって、
前記液圧制御弁は、
シリンダ内に摺動自在に設けられたスプールと、
シリンダ内の該スプールの摺動域に開口し、外部液圧供給源からブレーキ液が供給される供給ポートと、
シリンダ内の該スプールの摺動域に開口し、ホイールシリンダ側に連通される出力ポートと、
前記供給ポートと前記出力ポートとの連通を遮断するように、シリンダ内における他側に常時前記スプールを付勢する付勢手段と、
前記供給ポートと前記出力ポートとの連通を確保するように、前記付勢手段に抗して、ソレノイドに供給された駆動電流に応じて、シリンダ内における一側に前記スプールを付勢するスプール駆動手段と、
前記マスターシリンダと前記ホイールシリンダとに連通し、両者の連通・遮断を切り換える切換弁とを備え、
該切換弁は、前記スプールの移動に連動する弁体が設けられ、
前記ソレノイドに駆動電流が供給されない場合あるいは通常値の駆動電流が供給される場合には、前記弁体が一方に位置して前記マスターシリンダと前記ホイールシリンダ側とを連通する油路を開じるとともに、
前記ソレノイドに過度の駆動電流が流れて前記スプールが前記付勢手段に抗してシリンダ内の一側に所定量以上に移動した場合には、前記弁体が前記スプールとともに他方へ位置して前記マスターシリンダと前記ホイールシリンダ側とを連通する油路を開くことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
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