JP3806811B2 - 空調機器用の吊支用ブラケット装置 - Google Patents

空調機器用の吊支用ブラケット装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、天井裏空間で天井スラブから垂下された吊支軸に空調用吹出口、空調チャンバー、空調機等を吊支するための空調機器用の吊支用ブラケット装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建物の室内の空気を調和するため、近年、天井裏空間に空調機、空調チャンバー、空調用吹出口等を空調システムとしてユニット化して設置しながら、空調機器類の施工における人件費の削減、工期の短縮を図っているものである。また、空調チャンバー、空調用吹出口等の廻りにおいても省力化のための独創的な技術が急速に開発され、建築、設備工事における慢性的な熟練工の不足、作業者の高齢化等の種々の厳しい条件下にあって、例えば、フレキシブルダクトと空調チャンバー及び空調用吹出口等の接続を簡単に行う技術が開発され、さらに作業時間の短縮、能率化を図るための合理的な種々のシステム技術がうまれつつある。
【0003】
一方、天井裏空間において、空調用吹出口を設置する天井ボード等の基礎部分としての天井下地材の施工においては、例えば、下面に細長い開口を備えた線状吹出口を吊支ボルトに吊支するときに、図9に示す様に、線状吹出口側に設けたスライド式吊金具を上方へ引き出し、その逆L形部に設けた係止孔に吊支ボルトの下端を貫通させて二重ナットで固定して吊支している。そして、この線状吹出口の下面側で天井下地材を張設するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記吊支ボルトにスライド式吊金具を介して吊支された線状吹出口の下面側は、天井下地材の張設高さと略同一高さに配置されるために、天井下地材の張設作業の時に線状吹出口の開口部分が邪魔になって、天井下地材の張設作業を短時間で効率良く行えない欠点がある。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は機器本体に設けた軸体に吊支用ブラケットを取付けて機器本体を高位置に仮吊支する状態と、ブラケット部材を反転させて正規の取付状態で本吊支する状態とを選択できるようにし、天井下地材の施工時に高い位置に仮吊支した機器本体が邪魔になることがなく、天井下地材の施工を短時間で能率的に行え、また、ブラケット部材の取付け方向の切替えも非常に簡単で作業時間を大幅に短縮できる空調機器用の吊支用ブラケット装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、吊支軸34に垂下状に支持されるとともに、機器本体12に取り付けられた軸体18に係合保持されるブラケット部材20を含み、該ブラケット部材20は、縦長方向に長い長孔22を有し、軸体18は、長孔22の幅より大きなヘッド径のヘッド部14を有するとともに、ヘッド径より小さな軸径の軸部16を有しており、さらに、長孔22は、軸体18の軸部16は貫挿するがそのヘッド部14は貫挿できないように構成されており、長孔22の長手中間位置に、軸体18のヘッド部14を抜脱、挿入可能なように通過させる挿脱孔24が長孔22に連続して設けられている空調機器用の吊支用ブラケット装置10から構成される。
【0007】
また、ブラケット部材20は、機器本体12の吊り姿勢が吊支軸34に対して変更可能となるように機器本体12への取付姿勢を切替可能であり、該ブラケット部材20と機器本体12とが長孔22及び挿脱孔24を介して着脱自在に係合保持されてなることとしてもよい。
【0008】
また、ブラケット部材20は、長孔22が設けられた取付面としての竪壁44と、該堅壁44からL字状に折曲され吊支軸34が貫挿する折曲板48と、を含むこととしてもよい。
【0009】
また、長孔22は、複数個設けられたこととしてもよい。
【0010】
また、複数の長孔22は、並列して配置されてなることとしてもよい。
【0011】
また、複数の長孔22に設けられた挿脱孔24は、長孔22の長手方向の互いに位置ずれした位置に設けられてなることとしてもよい。
【0012】
また、長孔22には、該長孔22から分岐して逃げ孔56が連続して設けられ、この逃げ孔56に挿脱孔24が連設形成されてなることとしてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係る空調機器用の吊支用ブラケット装置では、機器本体に取付けられ、ヘッド部と軸部とを有する軸体と、該軸体のヘッド部と前記機器本体との間に挟装され、前記軸体に係合されるブラケット部材とを有し、該ブラケット部材は、前記軸体の軸部を貫通状に挿通させ得ると共に、前記ヘッド部のヘッド径よりも小さな幅の長孔を備え、前記長孔には、前記軸体のヘッド部が前記ブラケットの長孔から抜脱、挿入可能なように、該長孔に連続して形成された挿脱孔が設けられている。機器本体に取付けた軸体に対してブラケット部材の長孔を係合させて必要に応じて同軸体から着脱自在に取り扱える。そして、空調用吹出口、空調チャンバー、空調機その他の空調機器の天井スラブ等への取付作業の際に、ブラケット部材を機器本体から挿脱孔を利用して離脱、反転させてブラケット部材を機器本体の外面側の上方に吊支軸が配置される様に取付け、天井下地材等の施工時に高い位置に仮吊支させた機器本体が邪魔になることなく、作業を短時間で能率的に行える。前記軸体としては、例えば、軸部のヘッド部寄り位置に段部を有した段付ねじ或は段付ボルト等を使用し、これを機器本体の上面寄り位置に設けたねじ孔に締着させてブラケット部材の長孔を係合させる。また、軸体は通常のビスねじを用いてもよく、ブラケット部材の厚みだけの間隙を残して仮締めし、この間隙にブラケット部材の長孔を係合させてもよい。前記軸体の具体的な形状構造は、これらに限定されるものでなく、ヘッド部と軸部を有し、機器本体を吊支するブラケット部材を挿脱自在に係合し得るものであればよい。前記挿脱孔は、軸体のヘッド径よりわずかに大きな形状に形成され、軸体のヘッド部を離脱可能な円孔、四角孔、多角孔等に形成してもよい。
【0014】
また、前記長孔は、複数個が並列状に配置されてなることとしてもよい。長孔はブラケット部材の長手方向に向け開孔されている。この長孔は1個でもよいが、空調機器を吊支軸で安定して吊支するためには2個または3個等の複数の長孔を配置することが望ましい。
【0015】
また、前記挿脱孔は、前記長孔の中間位置に設けられてなることとしてもよい。機器本体の搬送、格納時には、ブラケット部材を長孔の上端(下端)側に軸体が位置するような状態で保持するだけで、ブラケット部材が挿脱孔から離脱することを防止でき、また、機器本体とブラケット部材や軸体をすぐに現場施工が行えるように係止した状態でまとめて管理でき、部品の管理が容易で、施工の能率性を向上させ得る。
【0016】
前記複数の長孔に設けられた挿脱孔は、前記長孔の長手方向に互いに位置ずれした位置に設けられてなることとしてもよい。ブラケット部材を傾動させて機器本体の各軸体に各長孔の挿脱孔を同時に係合させたときにのみ、ブラケット部材の機器本体への取付け、取り外しが可能となる。また、挿脱孔は長孔の長手方向に位置ずれして設けたものに限ることなく、複数の長孔の側辺側で同一方向へ離隔して位置ずれした位置に設けることとしてもよい。
【0017】
前記ブラケット部材の上部には、吊支係合部が取付けられてなることとしてもよい。天井スラブ等から垂下された吊支軸等にブラケット部材の吊支係合部を係着させ、このブラケット部材を介して機器本体を簡易に吊支できる。この吊支係合部は、前記長孔が設けられた取付面としての竪壁からL字状に折曲された折曲板を含み、この折曲板には、吊支軸を吊支する軸孔が開孔されている。この軸孔は、ブラケット部材の幅方向へ向かう長孔として形成されている。また、この軸孔は折曲板の側端から切欠して形成してもよく、これにより天井スラブから垂下させた吊支軸に対するブラケット部材の取付を容易に行える。
【0018】
また、前記長孔には、長孔から分岐して逃げ孔が連続して設けられ、この逃げ孔に前記挿脱孔が連設形成されてなることとしてもよい。挿脱孔は長孔から分岐した位置に開孔されているため、長孔内を移動する軸体は容易に離脱することがない。逃げ孔は、長孔に直角に交差したものに限ることなく、斜め上方、或は斜め下方へ向けて長孔から分岐させてもよい。
【0019】
【実施例】
以下、添付図面に基づいて本発明の好適な実施例を説明する。図1、図2、図3には、本発明の実施例に係る空調機器用の吊支用ブラケット装置(以下、吊支用ブラケット装置と略する)10が示されている。図より明らかな様に、前記吊支用ブラケット装置10は、機器本体12に取付けられ、ヘッド部14と軸部16とを有する軸体18と、該軸体18のヘッド部14と前記機器本体12との間に挟装され、前記軸体18に係合されるブラケット部材20とを有している。該ブラケット部材20は、薄鋼板等の金属板を素材として略逆L形板に形成され、更に、前記軸体18の軸部16を貫通状に挿通させ得ると共に、前記ヘッド部14のヘッド径よりも小さな幅の長孔22を備えている。また、前記長孔22には、前記軸体18のヘッド部14が前記ブラケット部材20を長孔22から抜脱、挿入可能なように、該長孔22に連続して形成された挿脱孔24が設けられている。
【0020】
本実施例において、天井スラブ25の下面に吊支する機器本体12としては線状吹出口26を例示している。しかし、本発明の吊支用ブラケット装置10は線状吹出口26のみに限るものでなく、その他の空調チャンバー、空調機等の空調機器類の吊支用として使用し、これらの空調機器類を天井スラブ25に仮吊支させたときに、下方に張設予定の天井下地材までの間隔を十分取ることができ、天井下地材の施工を効率良く行えるものである。なお、天井下地材の施工性向上の他にも空調機器の吊支作業の際に仮に機器本体の位置を上下に動かしたいような要請がある適用例の場合にも効果的に用いることができる。線状吹出口26は、図5に示す様に、薄鋼板等の金属板を素材として略台形状の細長い中空の箱体28に形成され、その箱体28の下面には空調空気を吹出す細長い開口30を有し、また背面側にはダクト接続口32が設けられている。
【0021】
本発明の吊支用ブラケット装置10は、天井スラブ25に垂設した吊支軸34に線状吹出口26等の機器本体12をブラケット部材20を介して吊支するに際し、始めに機器本体12に設けた軸体18に長孔22が係止されているブラケット部材20を、前記長孔22に設けた挿脱孔24を利用して離脱し、反転させた後で再び機器本体12に係止させる。その状態で、機器本体12の外面側の上方位置に配置した吊支軸34に機器本体12に反転係止させたブラケット部材20を締着し、機器本体12を天井スラブ25に近づけて仮吊支する。これにより、機器本体12の下方の開口30に沿った状態で架設するTバー、このTバーと交差する横バー等の天井下地材36の施工時に、機器本体12が施工の邪魔になることなく、天井下地材36の施工を短時間で能率的に行えるようにするものである。
【0022】
即ち、図1、図2に示す様に、線状吹出口26の吊支側となる板面38の上端側の略中央位置には、図1に示す様なねじ孔40が開孔されている。また、軸体18の軸部16のヘッド部14寄り位置には、ブラケット部材20の厚みと対応した段部41を残してねじ孔40に螺合するねじ42が刻設されて該軸体18は段付ねじとして構成されている。これにより、ねじ孔40に軸体18のねじ42を螺着させてヘッド部14と板面38とにブラケット部材20を嵌合できる、段部41ぶんの筒部間隙が形成される。この間隙によりブラケット部材20を長孔22に沿って案内する。また、軸体18は通常のビスねじを用いてもよく、ブラケット部材20の厚みだけの間隙を残して仮締めし、この間隙にブラケット部材20の長孔22を係合させてもよい。前記軸体18の具体的な形状構造は、これらに限定されるものでなく、ヘッド部14と軸部16を有し、機器本体12を吊支するブラケット部材20を挿脱自在に係合し得るものであればよい。また、軸体18は、ヘッド部14が鍋頭状に形成された小ねじに形成されているが、これに限らず、六角形のヘッド部を有したボルトを使用してもよい。
【0023】
ブラケット部材20は、金属板で略L形状に形成されて機器本体12に対する取付面としての竪長板44を備えている。この竪長板44の長手方向に向けて前記長孔22が開孔され、この長孔22の中間位置に該長孔22に連続した挿脱孔24が開孔されている。
【0024】
従って、機器本体12に取付けた軸体18のヘッド部14寄りの段部41にブラケット部材20の長孔22を係合させ、更に、ヘッド部14に対して挿脱孔24を必要に応じて抜脱、または挿入してブラケット部材20を軸体18から着脱自在に取り扱いできる。例えば、空調用吹出口、空調チャンバー、空調機その他の空調機器の天井スラブ等への取付作業に際し、取付け用としてのブラケット部材20を挿脱孔24から離脱させて反転状に取り付け、これによって、機器本体12の外面側の上方に吊支軸34が配置される様に取付けて天井下地材から高位置に機器本体12を仮吊支し、天井下地材の施工作業後にブラケット部材20を再び反転させて正規の取り付け状態で本吊支できることとなり、天井下地材の施工時に機器本体が邪魔になることがなく、同天井下地材の施工を短時間で能率的に行える。
【0025】
実施例において、ブラケット部材20の長板状に形成された竪壁板44には、その長手方向に2個の長孔22が並列状に開孔されている。そして、機器本体12の板面38側に設けた2個の軸体18、18に前記長孔22、22が係合されている。この様に、例えば、複数個の軸体18を予め機器本体12に取り付け、これらの軸体18に係合する複数個の長孔22をブラケット部材20に設けることにより、ブラケット部材20と機器本体12との取付位置を確実に設定して吊支ボルト等の吊支軸34による吊支を安定して行なわせ得る。また、機器本体12に取り付けたブラケット部材20の上下方向の移動が複数の長孔22により案内されて左右方向のぶれをなくすることができる。
【0026】
また、前記長孔22は、2ないし3個等の複数個を設けることに限ることなく、例えば、ブラケット部材20に1個の長孔22を開孔して機器本体12側の軸体18と係合させてもよい。この場合には、機器本体12の吊りボルト等の吊支軸34による吊支に不安定な要素を含むが、ブラケット部材20の反転取付により機器本体12が邪魔にならない上方位置に吊支して天井下地材等の施工を効率良く行える。
【0027】
図1、図3、図4に示す様に、前記挿脱孔24は、軸体18のヘッド部14のヘッド径より僅かに大きな径を備えた孔に形成され、この挿脱孔24は長孔22の中間位置に設けられている。従って、機器本体12の搬送、格納時には、ブラケット部材20を長孔22の上端(下端)側に軸体18が位置するような状態で保持するだけで、ブラケット部材20が挿脱孔24から離脱することを防止できる。また、各機器本体12と取付用のブラケット部材20や軸体18をすぐに現場施工が行えるように係止した状態でまとめて管理でき、部品の管理が容易である。
【0028】
また、複数の長孔22は、例えば、図1、図3に示す様に、並列に設けられた2個の長孔22、22では、各長孔22、22に設けた挿脱孔24、24は、長孔22の長手方向に互いに位置ずれした位置に設けられている。これにより、ブラケット部材20を傾動させて機器本体12に水平に配置した各軸体18に各長孔22、22の挿脱孔24、24を同時に係合させたときにのみ、ブラケット部材20と機器本体12との取付け、取り外しが可能となる。そして、ブラケット部材20の複数の長孔22を各軸体18に係合させて上下移動させても、いずれかの軸体18に長孔22が係合保持されて機器本体からブラケット部材が離脱することなく、搬送、格納時の部品管理が楽であるとともに、施工中等における機器本体等の離脱落下を確実に防止できる。また、例えば、3個の長孔22が並列されている場合にも、機器本体12の板面38に各軸体18を水平方向に配置させ、ブラケット部材20の3個の長孔22に連通された挿脱孔24は、例えば、斜め上り状、又は斜め下がり状に配置してブラケット部材20を傾動させたときにのみ、各軸体18の各ヘッド部14と各長孔22の各挿脱孔24の位置が相互に一致し、係合が解かれて抜脱可能となり、取り外せるからブラケット部材20の機器本体12への取付け、取り外しが可能となる。
【0029】
図1、図2に示す様に、ブラケット部材20の上部には、吊支係合部46が取付けられている。この吊支係合部46は、前記長孔22が設けられた取付面としての竪壁板44から逆L形状に折曲された折曲板48を含む。この折曲板48には、その略中央位置にブラケット部材20の幅方向へ向け、前記天井スラブ25等から垂下させた吊支軸34に対する軸孔50が開孔されている。この吊支軸34の下端側に設けた螺子部52を軸孔50の上面から貫通させ、折曲板48の上下面側で螺子部52にナット54、54を締着させて吊支軸34にブラケット部材20を固定する。また、軸孔50はブラケット部材20の幅方向へ向け開孔したものに限ることなく、ブラケット部材20の長手方向へ向け開孔してもよい。
【0030】
これにより、天井スラブ25等から垂下された吊支軸34等にブラケット部材20の吊支係合部46を係着させ、このブラケット部材20を介して機器本体12を簡易に吊支できる。また、ブラケット部材20は折曲板48を含むL字形状であり、したがって、折曲板48に軸孔50を形成させて吊支ボルト等の吊支軸34で吊支するときにこの折曲板48により空調機器の仮の移動が困難な状態をなくし、L字状のブラケット部材20による空調機器の吊支構造を確保しつつ、円滑かつ、高効率の天井下地材36の取り付け施工を実現させることが可能である。
【0031】
また、図7には、前記挿脱孔24の他の実施例が示されている。図において、ブラケット部材20の竪壁板44に設けた長孔22から分岐して逃げ孔56が連続して設けられ、この逃げ孔56に前記挿脱孔24が連設形成されている。即ち、2個の並列された長孔22、22の同一側の縁辺の同一高さ位置に略直角に交差され、かつ長孔22と同一幅を有した二つの逃げ孔56、56が設けられ、この逃げ孔56、56の端部に挿脱孔24が設けられている。この実施例においては、機器本体12の板面38に設けた軸体18、18を長孔22、22に係合させつつ吊支軸34に吊支させ、離脱、反転させるときには、ブラケット部材20の上下移動に連続して逃げ孔56、56の位置で横移動させ、軸体のヘッド部14、14から挿脱孔24、24を簡単に離脱させ、ブラケット部材20を反転させ、挿脱孔24、24に軸体18、18のヘッド部14、14を係合させた後で逃げ孔5656に沿って横移動させる。
【0032】
従って、挿脱孔24を形成するとしても、ブラケット部材20は、上下移動だけでは長孔22が軸体18から容易に離脱することがなく、機器本体12の搬送、格納時においてブラケット部材20の離脱、紛失を確実に防止できる。また、機器本体12の吊支時において軸体18がブラケット部材20の長孔22から離脱するのを確実に防止できる。また、前記逃げ孔56は、長孔22に対して直角方向に交差形成しているが、これに限ることなく、長孔の縁辺から斜め上方、或は斜め下方へ交差するように設けてもよい。
【0033】
次に、本発明の実施例に係る空調機器用の吊支用ブラケット装置10の作用を説明する。例えば、図1の一部拡大説明図に示す様に、線状吹出口26を構成する空調機器12においては、その中空箱体28の上面の略中央位置から正面等の板面38へ竪壁板44と、この竪壁板44からL字状に折曲された折曲板48からなる吊支係合部46を配置させ、板面38のねじ孔40、40に螺合させた軸体18、18に竪壁板44に開孔している長孔22、22を係合させ、ブラケット部材20が機器本体12から離脱、紛失しないように軸体18、18のヘッド部14、14で長孔22、22を係止して機器本体12を保管格納しておく。
【0034】
そこで、建物の空調工事の施工現場へ機器本体12を搬送し、天井スラブ25から垂下された吊支軸34に機器本体12を取付けて天井下地材36や天井板等の施工を行うために、図1に示す様に、機器本体12の上端側に配置させているブラケット部材20を、軸体18、18に係合している長孔22、22で案内しながら上昇させる。図1上で高い位置へ位置ずれしている左側の挿脱孔24が軸体18と嵌合した時点で、図4に示す様に、ブラケット部材20を反時計廻りに傾動させて挿脱孔24、24を軸体18、18のヘッド14、14から脱係して機器本体12からブラケット部材20を取り外す。この取り外したブラケット部材20の竪壁板44を平面視略180度回転させて機器本体12の外面側へ吊支係合部46を反転させ、再び挿脱孔24、24を軸体18、18のヘッド14、14へ挿入してブラケット部材20の長孔22、22を軸体18、18に係合させる。そこで、機器本体12の外面へ反転させた吊支係合部46の折曲板48の軸孔50に下方側のナット54を取り外した吊支軸34を上方から挿入させ、次に吊支軸34の下端に下方側のナット54を締め込んで吊支係合部46を上方へ押し上げる。このときに、図6に示す様に、長孔22、22の下端に軸体18、18が係止され、この上下ナット54、54で吊支係合部46を、図8に示す様に、天井スラブ25に近接した位置へ上昇させて吊支軸34に仮止めする。
【0035】
従って、ブラケット部材20の反転仮止めで吊支軸34に吊支された機器本体12は、その下面が、天井下地材36を架設する高さ位置より上方に間隔Kをおいて吊支できる結果、天井下地材36の施工時に機器本体12が邪魔になることがなく、同天井下地材36の施工を短時間で能率的に行える。また、ブラケット部材20の抜脱、挿入が自在であるから取付け方向の切替えが非常に簡単であり、作業時間短縮を実効化あらしめ得るという効果を奏することとなる。天井下地材36の取付施工が終了したら、ブラケット部材20の吊支係合部46を緩めて下降させ、再びブラケット部材20を反転させて、例えば、線状吹出口26においては、その下面開口30が吊支軸34の下方に設けた天井下地材36の吹出開口Fと近接して対向する様に、吊支軸34に対するブラケット部材20の吊支係合部46を調整して機器本体12の施工を終了するものである。
【0036】
上記実施例においては、線状吹出口26からなる空調機器の吊支用ブラケット装置について述べたが、本発明は上記実施例に限るものでなく、例えば、空調チャンバー、空調機、或はこれに関連した機器類の施工に利用し、天井裏空間を一つの空調ユニットシステムとしてシステム化する場合に寄与でき、空調設備施工における作業時間の短縮、施工の能率化、ひいては人件費の節減等を達成できることとなる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る空調機器用の吊支用ブラケット装置によれは、機器本体に取付けられ、ヘッド部と軸部とを有する軸体と、該軸体のヘッド部と前記機器本体との間に挟装され、前記軸体に係合されるブラケット部材とを有し、該ブラケット部材は、前記軸体の軸部を貫通状に挿通させ得ると共に、前記ヘッド部のヘッド径よりも小さな幅の長孔を備え、前記長孔には、前記軸体のヘッド部が前記ブラケット部材の長孔から抜脱、挿入可能なように、該長孔に連続して形成された挿脱孔が設けられてなることにより、機器本体に設けた軸体に対してブラケット部材を必要に応じて同軸体から着脱自在に取り扱えるから、例えば、空調用吹出口、空調チャンバー、空調機その他の空調機器の天井スラブ等への取付作業に際し、取りつけ用としてのブラケット部材を挿脱孔から離脱させて反転状に取り付け、これによって、機器本体の外面側の上方に吊支軸が配置される様に取付けでき、天井下地材から高位置に機器本体を仮吊支し、天井下地材の施工作業後に再び反転させて正規の取り付け状態で本吊支できる結果、天井下地材の施工時に機器本体が邪魔になることがなく、同天井下地材の施工を短時間で能率的に行える。また、ブラケット部材の抜脱、挿入が自在であるから取付け方向の切替えが非常に簡単であり、作業時間短縮を実効化あらしめ得るという効果を奏する。
【0038】
また、前記長孔は、複数個が並列状に配置されてなることにより、例えば軸体を予め機器本体に対して複数個取り付け、これに係合するブラケット部材の長孔を複数個設けることにより、ブラケット部材と機器本体との取付位置を確実に設定して吊りボルト等による吊支を安定して行なわせ得ると共に、機器本体に対するブラケット部材の上下方向の移動が複数の長孔により案内されて左右方向のぶれをなくすることができる。
【0039】
また、前記挿脱孔は、前記長孔の中間位置に設けられてなることにより、機器本体の搬送、格納時には、ブラケット部材を長孔の上端(下端)側に軸体が位置するような状態で保持するだけで、ブラケット部材が挿脱孔から離脱することを防止できるから、各機器本体と取付用のブラケット部材や軸体をすぐに現場施工が行えるように係止した状態でまとめて管理でき、部品の管理が容易であると共に、施工の高能率性の実効を担保し得る。
【0040】
また、前記複数の長孔に設けられた挿脱孔は、前記長孔の長手方向に互いに位置ずれした位置に設けられてなることにより、ブラケット部材を傾動させて機器本体の各軸体に各長孔の挿脱孔を同時に係合させたときにのみ、ブラケット部材の機器本体への取付け、取り外しが可能となり、ブラケット部材の複数の長孔を各軸体に係合させて上下移動させても、いずれかの軸体に長孔が係合保持されて機器本体からブラケット部材が離脱することなく、搬送、格納時の部品管理が楽であるとともに、施工中等における機器本体等の離脱落下を確実に防止できる。
【0041】
また、前記ブラケット部材の上部には、吊支係合部が取付けられてなることにより、天井スラブ等から垂下された吊支軸等にブラケット部材の吊支係合部を係着させ、このブラケット部材を介して機器本体を簡易に吊支できる。
【0042】
また、前記吊支係合部は、前記長孔が設けられた取付面としての竪壁からL字状に折曲された折曲板を含むことにより、ブラケット部材は折曲板を含むL字形状であり、したがって、折曲板に軸孔を形成させて吊支ボルト等で吊支するときにこの折曲板により空調機器の仮の移動が困難な状態をなくし、L字状のブラケット部材による空調機器の吊支構造を確保しつつ、円滑かつ、高効率の天井下地材の取り付け施工を実現させることが可能である。
【0043】
また、前記長孔には、長孔から分岐して逃げ孔が連続して設けられ、この逃げ孔に前記挿脱孔が連設形成されてなることにより、挿脱孔を形成するとしても、ブラケット部材は、上下移動だけでは長孔が軸体から容易に離脱することがなく、機器本体の搬送、格納時においてブラケット部材の離脱、紛失を確実に防止できる。また、機器本体の吊支時において軸体がブラケット部材の長孔から離脱するのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係る空調機器用の吊支用ブラケット装置を線状吹出口の上端側に密着配置させた状態の斜視説明図である。
【図2】 図1に示す空調機器用の吊支用ブラケット装置を介して吊支軸に線条吹出口を本吊支させた一部縦断説明図である。
【図3】 空調機器用の吊支用ブラケット装置を介して吊支軸に線条吹出口を本吊支させた正面図である。
【図4】 ブラケット部材を傾動させて長孔の挿脱孔を線状吹出口側の軸体に抜脱、または挿入させ状態を示した正面説明図である。
【図5】 空調機器用の吊支用ブラケット装置を介して吊支軸に線条吹出口を本吊支させた状態を示した斜視説明図である。
【図6】 ブラケット部材を軸体から離脱、反転させ、吊支軸が線状吹出口の外面上方に位置する様に仮吊支させた状態を示した斜視説明図である。
【図7】 空調機器用の吊支用ブラケット装置において、ブラケット部材に設けた長孔に逃げ孔を介して挿脱孔が設けられた状態を示した正面説明図である。
【図8】 本発明に係る空調機器用の吊支用ブラケット装置のブラケット部材を反転させて空調機器を天井スラブ側へ高く仮吊支させ状態の説明図である。
【図9】 従来の空調機器用の吊支用ブラケット装置で空調機器を本吊支させた状態の説明図である。
【符号の説明】
10 空調機器用の吊支用ブラケット装置
12 機器本体
14 ヘッド部
16 軸部
18 軸体
20 ブラケット部材
22 長孔
24 挿脱孔
25 天井スラブ
34 吊支軸
36 天井下地材
44 竪壁板
46 吊支係合部
48 折曲板
50 軸孔
56 逃げ孔
K 間隔
F 吹出開口

Claims (7)

  1. 吊支軸に垂下状に支持されるとともに、機器本体に取り付けられた軸体に係合保持されるブラケット部材を含み、
    該ブラケット部材は、縦長方向に長い長孔を有し、
    軸体は、長孔の幅より大きなヘッド径のヘッド部を有するとともに、ヘッド径より小さな軸径の軸部を有しており、
    さらに、長孔は、軸体の軸部は貫挿するがそのヘッド部は貫挿できないように構成されており、
    長孔の長手中間位置に、軸体のヘッド部を抜脱、挿入可能なように通過させる挿脱孔が長孔に連続して設けられている空調機器用の吊支用ブラケット装置。
  2. ブラケット部材は、機器本体の吊り姿勢が吊支軸に対して変更可能となるように機器本体への取付姿勢を切替可能であり、
    該ブラケット部材と機器本体とが長孔及び挿脱孔を介して着脱自在に係合保持されてなる請求項1記載の空調機器用の吊支用ブラケット装置。
  3. ブラケット部材は、長孔が設けられた取付面としての竪壁と、該堅壁からL字状に折曲され吊支軸が貫挿する折曲板と、を含む請求項1または2記載の空調機器用の吊支用ブラケット装置。
  4. 長孔は、複数個設けられた請求項1ないし3のいずれかに記載の空調機器用の吊支用ブラケット装置。
  5. 複数の長孔は、並列して配置されてなる請求項4記載の空調機器用の吊支用ブラケット装置。
  6. 複数の長孔に設けられた挿脱孔は、長孔の長手方向の互いに位置ずれした位置に設けられてなる請求項4または5記載の空調機器用の吊支用ブラケット装置。
  7. 長孔には、該長孔から分岐して逃げ孔が連続して設けられ、この逃げ孔に挿脱孔が連設形成されてなる請求項1ないし6のいずれかに記載の空調機器用の吊支用ブラケット装置。
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