JP3806200B2 - プリプレグ及び積層板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板等の製造に用いられるプリプレグ、及びこのプリプレグで形成される積層板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来よりプリント配線板に使用される銅張積層板としては、ガラス布の基材にエポキシ樹脂を含浸してプリプレグを形成し、このプリプレグを積層して製造されるガラス布基材エポキシ樹脂銅張積層板が主流となっているが、最近では積層板の軽量化、低誘電率化、レーザー加工性の向上などの要望から、有機繊維を用いて基材を形成することが行なわれている。ここで使用される有機繊維としては、有機繊維の中でもとりわけ吸湿率が小さくほぼ0の全芳香族ポリエステル繊維が好ましく、このような吸湿率の小さい全芳香族ポリエステル繊維で基材を形成することによって、積層板(プリント配線板)の吸湿時の特性の劣化が少なくなるのである。
【0003】
そしてさらにプリント配線板の回路の精度に対する要求は著しく厳しくなっており、スルーホールなどの孔の小径化、回路パターンのファイン化などに対応することは必須となっている。従って積層板の基材には均一性が高いレベルで要求されており、このために繊維長が短く且つ繊維径が小さい繊維を用いて形成される地合いの良い不織布を基材として用いることが行なわれている。そして一般的に短繊維を用いた不織布を形成するにあたっては、湿式製法と呼ばれる方法が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし湿式製法で作成される不織布を基材とした場合、プリプレグを形成する際の樹脂含浸時における不織布の引張強度が問題となる。不織布の強度を確保するためには樹脂バインダーを増量して加熱重合させる方法が一般的であるが、不織布に含まれる樹脂バインダーの量が少ない場合、特に常態での引張強度が2.5kg/cm未満のような不織布の場合、不織布にかかる張力等による劣化が著しく、樹脂の連続含浸が行なえなくてプリプレグを製造することができないという問題があった。また樹脂含浸時の劣化を防ぐために樹脂バインダーの量を多くすると、樹脂バインダーの大きな吸湿性のために吸湿率の小さい全芳香族ポリエステル繊維を用いても不織布の吸湿率が大きくなり、従ってこの不織布を基材とした積層板(プリント配線板)の吸湿特性(吸湿時の高周波特性や吸湿時の耐熱性)が低くなるという問題があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、不織布に樹脂を連続含浸させることによって製造することができ、また吸湿特性の高い積層板を形成することができるプリプレグを提供することを目的とするものである。
本発明は、吸湿特性の高い積層板を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載のプリプレグは、全芳香族ポリエステル繊維で形成される不織布に樹脂を含浸させて得られ、レーザー加工により孔が形成される積層板を形成するプリプレグにおいて、繊維長が3〜12mmで繊維径が1〜10dpfの全芳香族ポリエステル繊維を全繊維量に対して90重量%以上含有させた不織布であって、引張強度が2.5kg/cm以上で、樹脂バインダー量が全体の15重量%以下である不織布を用いて成ることを特徴とするものである。
【0007】
また本発明の請求項2に記載のプリプレグは、請求項1の構成に加えて、p−ヒドロキシ安息香酸と2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸の共重合体で構成される全芳香族ポリエステル繊維を用いて不織布を形成して成ることを特徴とするものである。
また本発明の請求項3に記載のプリプレグは、請求項1又は2の構成に加えて、熱変形温度が異なる二種類以上の全芳香族ポリエステル繊維を用いると共に熱カレンダーを施して不織布を形成して成ることを特徴とするものである。
【0008】
また本発明の請求項4に記載のプリプレグは、請求項3の構成に加えて、熱変形温度の低い方の全芳香族ポリエステル繊維を全繊維量に対して30〜70重量%含有させて不織布を形成して成ることを特徴とするものである。
【0009】
また本発明の請求項5に記載のプリプレグは、請求項1乃至4のいずれかの構成に加えて、熱カレンダーの後に無圧下で加熱処理を施して不織布を形成して成ることを特徴とするものである。
また本発明の請求項6に記載のプリプレグは、請求項1乃至5のいずれかの構成に加えて、150〜280℃の温度で30〜150kg/cmの線圧で熱カレンダーを施し、この後、200〜320℃の温度で5〜30分間の無圧下で加熱処理を施して不織布を形成して成ることを特徴とするものである。
【0010】
また本発明の請求項7に記載のプリプレグは、請求項1乃至6のいずれかの構成に加えて、樹脂としてエポキシ樹脂を用いて成ることを特徴とするものである。
本発明の請求項8に記載の積層板は、請求項1乃至7のいずれかに記載のプリプレグと金属箔とを積層成形して成ることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
全芳香族ポリエステル繊維は、芳香族ポリエステル繊維のうち主鎖中に脂肪族炭化水素を有さないものであり、例えば芳香族ジカルボン酸と芳香族ヒドロキシカルボン酸の少なくとも一方と芳香族ジオールとを適宜組み合わせて重合させて得られるものを使用することができ、特にp−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸の共重合体、もしくはp−ヒドロキシ安息香酸とテレフタル酸と4,4’−ジヒドロキシビフェニルとの共重合体などが、低吸湿性、強度、電気絶縁性、耐熱性等の特性に優れており好ましい。
【0012】
この全芳香族ポリエステル繊維を用いて不織布を形成する一つの方法としては、熱カレンダーで熱変形する全芳香族ポリエステル繊維を少なくとも一種類用いて、熱変形温度が異なる複数種の全芳香族ポリエステル繊維を短くカットして混合し、この全芳香族ポリエステル繊維を水に分散してスラリーを調製し、これに樹脂バインダーを添加した後、進行する抄造ベルト等に連続的に抄造して乾燥することによってシート状の集合体を形成し、この後、集合体を一対のロール間に挟んで熱カレンダーを施すものである。熱カレンダーで熱変形する全芳香族ポリエステル繊維としては、熱変形温度が300℃以下のものを用いるのが好ましい。また樹脂バインダーとしては、水溶性の熱硬化性樹脂を用いることができ、水溶性メラミン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノール樹脂などを例示することができる。
【0013】
熱カレンダーで熱変形する全芳香族ポリエステル繊維は全芳香族ポリエステル繊維の全量に対して30〜70重量%含有させることができる。熱変形する全芳香族ポリエステル繊維の割合が30重量%未満であれば、樹脂バインダー的な役割を持たせる全芳香族ポリエステル繊維が少な過ぎて、不織布の引張強度が低下する恐れがある。また熱変形する全芳香族ポリエステル繊維の割合が70重量%を超えると、熱変形する全芳香族ポリエステル繊維が多過ぎて、プリプレグを形成する際の樹脂含浸性が著しく損なわれる恐れがある。
【0014】
また熱カレンダーの条件は全芳香族ポリエステル繊維の種類によって異なるが、温度は150〜280℃、線圧は30〜150kg/cm(あるいはkgf/cm)にするのが好ましく、これらの条件を調整することによって所望の密度及び厚みの不織布を得ることができる。上記熱カレンダー工程において、温度が低過ぎると、樹脂バインダーと全芳香族ポリエステル繊維の密着が十分に行なわれず、不織布の強度が低下する恐れがあり、また温度が高過ぎると、全芳香族ポリエステル繊維の変形が過度に行なわれ、プリプレグを形成する際の樹脂の含浸性が低下する恐れがある。さらに上記熱カレンダー工程において、圧力が低過ぎると、樹脂バインダーと全芳香族ポリエステル繊維の密着が十分に行なわれず、不織布の強度が低下する恐れがあり、また圧力が高過ぎると、全芳香族ポリエステル繊維の変形が著しく進行して、プリプレグを形成する際の樹脂の含浸性が低下する恐れがある。
【0015】
そして熱カレンダーで熱変形する全芳香族ポリエステル繊維を用いることによって、熱カレンダーで熱変形した全芳香族ポリエステル繊維に樹脂バインダー的な役割、つまり繊維を密着させる役割を持たせることができ、樹脂バインダー量を全体の2〜15重量%と低くしても常態での抄造方向の引張強度が2.5kg/cm(あるいはkgf/cm)以上の不織布を形成することができる。尚、引張強度は高ければ高いほど好ましいので上限は特に設定されないが、実用上、5.0kg/cmを超える引張強度は不要である。
【0016】
また上記全芳香族ポリエステル繊維を用いて不織布を形成する他の方法としては、全芳香族ポリエステル繊維を短くカットして水に分散してスラリーを調製し、これに樹脂バインダーを添加した後、進行する抄造ベルト等に連続的に抄造して乾燥することによってシート状の集合体を形成し、この後、集合体を一対のロール間に挟んで上記と同様の熱カレンダーを施し、この後さらに無圧下で加熱処理を集合体に施すものである。
【0017】
上記熱カレンダー後の加熱処理は、温度が200〜320℃、時間が5〜30分の無圧下で行なうことができる。温度が200℃よりも低くかったり時間が5分よりも短かったりすると、樹脂バインダーや全芳香族ポリエステル繊維の重合度を高めることができず、不織布の引張強度が小さくなる恐れがある、また温度が320℃よりも高かったり時間が30分よりも長かったりと、加熱処理に使うエネルギーが多くなったり生産性が低下したりして経済的に不利となる恐れがある。
【0018】
そして熱カレンダー後の加熱処理によって、集合体中の樹脂バインダーの重合度を高めることができると共に全芳香族ポリエステル繊維の重合度を高めて芳香族ポリエステル繊維の強度を大きくすることができ、樹脂バインダー量を全体の1〜15重量%と低くても常態での抄造方向の引張強度が2.5kg/cm以上の不織布を形成することができる。尚、引張強度は高ければ高いほど好ましいので上限は特に設定されないが、実用上、5.0kg/cmを超える引張強度は不要である。
【0019】
さらに上記全芳香族ポリエステル繊維を用いて不織布を形成する他の方法としては、上記二つの方法を併用したものであって、熱カレンダーで熱変形する全芳香族ポリエステル繊維を少なくとも一種類用いて、熱変形温度が異なる複数種の全芳香族ポリエステル繊維を短くカットして混合し、この全芳香族ポリエステル繊維を水に分散してスラリーを調製し、これに樹脂バインダーを添加した後、進行する抄造ベルト等に連続的に抄造して乾燥することによってシート状の集合体を形成し、この後、集合体を一対のロール間に挟んで熱カレンダーを施し、この後さらに無圧下で加熱処理を集合体に施すものである。温度条件等の製造条件は上記と同様に設定することができる。
【0020】
このように熱カレンダー後の加熱処理によって、集合体中の樹脂バインダーの重合度を高めることができると共に全芳香族ポリエステル繊維の重合度、特に熱変形温度の低い方の全芳香族ポリエステル繊維の重合度を高めてこの全芳香族ポリエステル繊維の強度を大きくすることができ、樹脂バインダー量が全体の1〜15重量%と低くても常態での抄造方向の引張強度が2.5kg/cm以上の不織布を形成することができる。尚、引張強度は高ければ高いほど好ましいので上限は特に設定されないが、実用上、5.0kg/cmを超える引張強度は不要である。
【0021】
また積層板を用いて多層の配線板を形成する場合、積層板にレーザー加工で孔を形成することがあるが、孔の形状は不織布の地合いに大きく影響される。そこで不織布には、繊維長が3〜12mmで繊維径が1〜10dpfの全芳香族ポリエステル繊維を90重量%以上含有させる。またこのような繊維長及び繊維径を有する全芳香族ポリエステル繊維のみで不織布を形成してもよく、従って上限は100重量%である。
【0022】
上記のように形成される不織布を基材としてこれに樹脂を含浸させることによって、プリプレグを形成することができる。樹脂としては熱硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を使用することができるが、安価で接着性が良好なエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。熱硬化性樹脂を用いてプリプレグを形成するにあたっては、熱硬化性樹脂を溶解させた樹脂ワニス中に不織布を通過させた後、縦型ドライヤー等の乾燥機に通して加熱乾燥工程を行い、この加熱で溶媒を除去すると共に熱硬化性樹脂をBステージ化するようにして行なうことができる。またプリプレグは、例えば樹脂ワニスを通過した直後の不織布を二本のロール間に通過させ、このロール間の間隙を任意に調整することによって所望の樹脂含有量に調整することができる。
【0023】
そして上記プリプレグは引張強度が2.5kg/cm以上の不織布を基材として用いるので、樹脂含浸時等のプリプレグの製造工程でかかる力で不織布が破損しないないようにすることができ、基材に熱硬化性樹脂を連続含浸させることによって製造することができるものである。
本発明の積層板は、上記のようにして得られたプリプレグを複数枚積層し、この片面あるいは両面に銅箔等の金属箔を重ねて加熱加圧して形成されるものである。この際の加熱加圧条件は、プリプレグの樹脂の種類によって異なるが、エポキシ樹脂の場合では例えば温度を170〜200℃前後、圧力を10〜50kg/cm2 、最高温度での保持時間を50〜120分にそれぞれ設定することができる。
【0024】
この積層板は、アラミド繊維よりも吸湿率の非常に小さい全芳香族ポリエステル繊維を用いると共に樹脂バインダー量を15重量%以下にして不織布を形成し、これに樹脂を含浸させてプリプレグを作成し、このプリプレグを積層して形成されているので、吸湿率を小さくすることができ、吸湿性、高周波特性、耐熱性が高い積層板やプリント配線板を形成することができるものである。アラミド繊維よりも吸湿率の非常に小さい全芳香族ポリエステル繊維で不織布を形成し、吸湿率を小さくすることができ、吸湿特性(吸湿時における耐熱性や高周波特性など)を高くすることができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳述する。
(実施例1)
株式会社クラレ製の全芳香族ポリエステル繊維「ベクトランHT」(p−ヒドロキシ安息香酸と2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸の共重合体で熱変形温度が320℃付近、繊維長5mm、繊維径5dpf)と、株式会社クラレ製の全芳香族ポリエステル繊維「ベクトランNT」(p−ヒドロキシ安息香酸と2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸の共重合体で熱変形温度が270℃付近、繊維長5mm、繊維径5dpf)を表1の割合で混合し、これを水に分散させると共に樹脂バインダーとして水溶性エポキシ樹脂を繊維に対して5重量%添加してスラリーを調製し、このスラリーを抄造してシート状の集合体を形成すると共に集合体を加熱乾燥し、この後、温度200℃、線圧100kg/cmの熱カレンダーを施して不織布を形成した。
【0026】
またクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、品番YDCN−220)を10重量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、品番YDB−500K)を3重量部、硬化剤としてジシアンジアミドを0.5重量部、硬化促進剤としてベンジルジメチルアミンを0.2重量部、溶剤としてメチルエチルケトンを50重量部それぞれ配合してエポキシ樹脂ワニスを調製した。
【0027】
次にこのエポキシ樹脂ワニスを上記不織布に連続塗工して含浸させ、160℃で7分間加熱することによって、樹脂含有量(樹脂量)が55重量%のプリプレグを得た。このプリプレグを8枚重ね合わせ、その両側にそれぞれ厚み35μmの銅箔を重ね、これを180℃、40kg/cm2 、90分の条件で加熱加圧成形することによって、厚み0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0028】
またレーザ加工性評価用として上記と同様の条件でプリプレグ1枚重ねの厚み0.1mmの両面銅張積層板を得た。
(実施例2)
ポリフェニレンオキサイド(日本GE株式会社製「ノリルPX9701」)を30重量部と、スチレン・ブタジエン・ブロックコポリマー(旭化成工業株式会社製「ソルプレンT406」を5重量部と、架橋性モノマーとしてトリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製「TAIC」)を35重量部と、反応開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂株式会社製「PH25B」)を1重量部とを配合し、これに溶剤としてトリクロロエチレンを70重量部添加して混合することによって、ポリフェニレンオキサイド樹脂ワニスを調製した。
【0029】
次にこのポリフェニレンオキサイド樹脂ワニスを実施例1と同様の不織布に連続塗工して含浸させ、実施例1と同様にして両面銅張積層板とレーザ加工性評価用の両面銅張積層板を得た。
(実施例3)
住友化学工業株式会社製の全芳香族ポリエステル繊維「エコノール」(p−ヒドロキシ安息香酸とテレフタル酸と4,4’−ジヒドロキシビフェニルとの共重合体で熱変形温度が300℃以上、繊維長5mm、繊維径5dpf)を水に分散させると共に樹脂バインダーとして水溶性エポキシ樹脂を繊維に対して12重量%添加してスラリーを調製し、このスラリーを抄造してシート状の集合体を形成すると共に集合体を加熱乾燥し、この後、温度200℃、線圧100kg/cmの熱カレンダーを施し、この後、無圧下で250℃、20分間の加熱処理を施して不織布を形成した。
【0030】
次にこの不織布と実施例1と同様のエポキシ樹脂ワニスを用いてプリプレグを実施例1と同様にして形成し、このプリプレグを用いて実施例1と同様にして両面銅張積層板とレーザ加工性評価用の両面銅張積層板を得た。
(実施例4)
全芳香族ポリエステル繊維「エコノール」の代わりに、実施例1に示す株式会社クラレ製の全芳香族ポリエステル繊維「ベクトランHT」を用いた以外は実施例3と同様にして両面銅張積層板とレーザ加工性評価用の両面銅張積層板を得た。
【0031】
(実施例5)
繊維長と樹脂バインダー量を表1のように変更した以外は実施例4と同様にして両面銅張積層板とレーザ加工性評価用の両面銅張積層板を得た。
(実施例6)
二種類の全芳香族ポリエステル繊維の配合割合と樹脂バインダー量を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして両面銅張積層板とレーザ加工性評価用の両面銅張積層板を得た。
【0032】
(実施例7)
実施例1と同様の二種類の全芳香族ポリエステル繊維を表1の割合で混合し、これを水に分散させると共に樹脂バインダーとして水溶性エポキシ樹脂を繊維に対して2重量%添加してスラリーを調製し、このスラリーを抄造してシート状の集合体を形成すると共に集合体を加熱乾燥し、この後、温度200℃、線圧100kg/cmの熱カレンダーを施し、この後、無圧下で250℃、20分間の加熱処理を施して不織布を形成した。
【0033】
次にこの不織布と実施例1と同様のエポキシ樹脂ワニスを用いてプリプレグを実施例1と同様にして形成し、このプリプレグを用いて実施例1と同様にして両面銅張積層板とレーザ加工性評価用の両面銅張積層板を得た。
(比較例1)
実施例1と同様の全芳香族ポリエステル繊維「ベクトランHT」を水に分散させると共に樹脂バインダーとして水溶性エポキシ樹脂を繊維に対して20重量%添加してスラリーを調製し、このスラリーを抄造してシート状の集合体を形成すると共に集合体を加熱乾燥し、この後、温度200℃、線圧100kg/cmの熱カレンダーを施して不織布を形成した。
【0035】
次にこの不織布と実施例1と同様のエポキシ樹脂ワニスを用いてプリプレグを実施例1と同様にして形成し、このプリプレグを用いて実施例1と同様にして両面銅張積層板とレーザ加工性評価用の両面銅張積層板を得た。
(比較例2)
全芳香族ポリエステル繊維の繊維長と繊維径及び樹脂バインダー量を表1のように変更した以外は比較例1と同様にして両面銅張積層板とレーザ加工性評価用の両面銅張積層板を得た。
【0036】
(比較例3)
樹脂バインダー量を表1のように変更した以外は比較例1と同様にして両面銅張積層板とレーザ加工性評価用の両面銅張積層板を得た。
【0037】
【表1】
【0038】
上記のようにして作成した不織布の引張強度を測定した。不織布の抄造方向に長く、長さ150mm、巾15mmのサンプルを作成し、島津製作所(株)製のオートグラフAGS−500Bを用いて、チャック間距離100mm、引張速度100mm/minの条件でサンプルの破断強度を測定した。尚、測定は常態及び樹脂ワニスの浸漬を想定してメチルエチルケトン浸漬後(MEKを注いだシャーレにサンプルの中間部分を3秒間浸漬)の二条件下で行った。
【0039】
また上記実施例1乃至7及び比較例1乃至3の積層板について以下の性能を測定・評価した。結果を表2に示す。
(1)吸湿率の測定
積層板の表面の銅をエッチングで除去した後、50mm×50mmにカットしてサンプルを形成し、50℃、24時間の乾燥を施した後のサンプルの重量を測定し、この後、60℃、95%の雰囲気下で96時間吸湿させ、その重量変化より吸湿率を測定した。
【0040】
(2)誘電特性(2GHz)の測定
ASTM−D3380に準拠し、積層板上にマイクロストリップラインを形成し、常態(20℃、65%の雰囲気下で96時間調湿後)及び吸湿処理(60℃、95%の雰囲気下で96時間処理)後の各データを測定した。測定には、HP社のネットワークアナライザー8510Bを用いた。
【0041】
(3)吸湿耐熱性の評価
積層板の表面の銅をエッチングで除去した後、50mm×50mmにカットしてサンプルを形成し、煮沸水中での吸水処理を、なし、2時間、4時間で各々6サンプルずつ行い、この処理の後、サンプルを260℃の半田槽中に20秒間浸漬して膨れの発生の有無を確認した(表2中、膨れ無しを○で、膨れ有りを×でそれぞれ示した)。
【0042】
(4)レーザー加工性の評価
積層板の表面の銅をエッチングで除去した後、三菱電機製炭酸ガスレーザー加工機ML505GTを用いて、パルス幅50μsec、周波数500Hz、パルスエネルギー20mJ/パルスの加工条件で、150μmのレーザー孔を加工した。加工後、孔をレーザー光の入射側より光学顕微鏡にて観察した。形状(真円に近いか)及び繊維ケバの発生の有無について観察した。
【0043】
【表2】
【0044】
表1の実施例1乃至7と比較例1を対比すると、樹脂バインダー量の少ない実施例1乃至7であっても比較例1とほぼ同等の引張強度を有することが判る。つまり熱変形温度の低い全芳香族ポリエステル繊維のバインダー的な役割、及び熱カレンダー後の無圧下での加熱処理による樹脂バインダーと全芳香族ポリエステル繊維の重合度の向上によって、樹脂バインダーの低減させても不織布の強度が確保されると言える。一方、熱変形温度の低い全芳香族ポリエステル繊維を用いず、また熱カレンダー後の無圧下での加熱処理も施さないで樹脂バインダー量を低減させた比較例3では、引張強度が低すぎて樹脂ワニス通過時に破損等が発生し、連続塗工での樹脂浸漬を行うことができなかった。
【0045】
表2の実施例1乃至7と比較例1を対比すると、樹脂バインダー量の少ない実施例1乃至7は樹脂バインダー量の多い比較例1よりも、積層板の吸湿特性(Δε、吸湿率、吸湿耐熱性)が高いことが判る。また含浸樹脂として汎用のエポキシ樹脂は勿論使用可能であるが、樹脂を他の種類に変えることによって誘電特性や吸湿率等の性能を向上させる事が可能である。さらに実施例1乃至7と比較例2を対比すると判るように、繊維径や繊維長を小さくすることにより、不織布の地合をさらに向上させることができ、積層板としての加工性を向上させることができる。
【0046】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に記載の発明は、全芳香族ポリエステル繊維で形成される不織布に樹脂を含浸させて得られ、レーザー加工により孔が形成される積層板を形成するプリプレグにおいて、繊維長が3〜12mmで繊維径が1〜10dpfの全芳香族ポリエステル繊維を全繊維量に対して90重量%以上含有させた不織布であって、引張強度が2.5kg/cm以上で、樹脂バインダー量が全体の15重量%以下である不織布を用いたので、不織布の引張強度を2.5kg/cm以上にすることによって、不織布に樹脂を含浸させる際にかかる力で不織布が破損しないようにすることができ、不織布に樹脂を連続含浸させることによって製造することができるものであり、また不織布の樹脂バインダー量を15重量%以下にすることによって、樹脂バインダーによる吸湿を低減することができ、吸湿特性の高い積層板を形成することができるものである。また、繊維長が3〜12mmで繊維径が1〜10dpfの全芳香族ポリエステル繊維を全繊維量に対して90重量%以上含有させて不織布を形成することによって、不織布の地合を向上させることができ、レーザー加工による孔の形状を良好にすることができると共にケバの発生を防止することができるものである。
【0047】
また本発明の請求項2に記載の発明は、p−ヒドロキシ安息香酸と2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸の共重合体で構成される全芳香族液晶ポリエステル繊維を用いて不織布を形成したので、低吸湿性、強度、電気絶縁性、耐熱性等の特性を高くすることができる物である。
また本発明の請求項3に記載の発明は、熱変形温度が異なる二種類以上の全芳香族ポリエステル繊維を用いると共に熱カレンダーを施して不織布を形成したので、熱カレンダーで熱変形した全芳香族ポリエステル繊維に樹脂バインダー的な役割、つまり繊維を密着させる役割を持たせることができ、樹脂バインダー量が全体の15重量%以下で引張強度が2.5kg/cm以上の不織布を用いて形成することができるものである。
【0048】
また本発明の請求項4に記載の発明は、熱変形温度が低い方の全芳香族ポリエステル繊維を全繊維量に対して30〜70重量%含有させると共に樹脂バインダー量を全体の2〜15重量%含有させて不織布を形成したので、熱カレンダーで熱変形した全芳香族ポリエステル繊維に樹脂バインダー的な役割、つまり繊維を密着させる役割を持たせることができ、樹脂バインダー量が全体の15重量%以下で引張強度が2.5kg/cm以上の不織布を用いて形成することができるものである。
【0050】
また本発明の請求項5に記載の発明は、熱カレンダーの後に無圧下で加熱処理を施して不織布を形成したので、樹脂バインダーの重合度を高めることができると共に全芳香族ポリエステル繊維の重合度を高めてこの全芳香族ポリエステル繊維の強度を大きくすることができ、樹脂バインダー量が全体の15重量%以下で引張強度が2.5kg/cm以上の不織布を用いて形成することができるものである。
【0051】
また本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかの構成に加えて、150〜280℃の温度で30〜150kg/cmの線圧で熱カレンダーを施し、この後、200〜320℃の温度で5〜30分間の無圧下で加熱処理を施して不織布を形成したので、樹脂バインダーの重合度を高めることができると共に全芳香族ポリエステル繊維の重合度を高めてこの全芳香族ポリエステル繊維の強度を大きくすることができ、樹脂バインダー量が全体の15重量%以下で引張強度が2.5kg/cm以上の不織布を用いて形成することができるものである。
【0052】
また本発明の請求項7に記載の発明は、樹脂としてエポキシ樹脂を用いたので、安価で接着性を良好にすることができるものである。
本発明の請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載のプリプレグと金属箔とを積層成形したので、全芳香族ポリエステル繊維を用いて樹脂バインダー量が全体の15重量%以下の不織布を基材として用いることによって、吸湿特性を高くすることができるものである。
Claims (8)
- 全芳香族ポリエステル繊維で形成される不織布に樹脂を含浸させて得られ、レーザー加工により孔が形成される積層板を形成するプリプレグにおいて、繊維長が3〜12mmで繊維径が1〜10dpfの全芳香族ポリエステル繊維を全繊維量に対して90重量%以上含有させた不織布であって、引張強度が2.5kg/cm以上で、樹脂バインダー量が全体の15重量%以下である不織布を用いて成ることを特徴とするプリプレグ。
- p−ヒドロキシ安息香酸と2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸の共重合体で構成される全芳香族液晶ポリエステル繊維を用いて不織布を形成して成ることを特徴とする請求項1に記載のプリプレグ。
- 熱変形温度が異なる二種類以上の全芳香族ポリエステル繊維を用いると共に熱カレンダーを施して不織布を形成して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリプレグ。
- 熱変形温度が低い方の全芳香族ポリエステル繊維を全繊維量に対して30〜70重量%含有させると共に樹脂バインダー量を全体の2〜15重量%含有させて不織布を形成して成ることを特徴とする請求項3に記載のプリプレグ。
- 熱カレンダーの後に無圧下で加熱処理を施して不織布を形成して成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプリプレグ。
- 150〜280℃の温度で30〜150kg/cmの線圧で熱カレンダーを施し、この後、200〜320℃の温度で5〜30分間の無圧下で加熱処理を施して不織布を形成して成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のプリプレグ。
- 樹脂としてエポキシ樹脂を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のプリプレグ。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載のプリプレグと金属箔とを積層して成ることを特徴とする積層板。
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