JP3804933B2 - 基板処理装置および基板処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、純水による洗浄処理が終了した半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等(以下、単に「基板」と称する)の乾燥処理を行う基板処理技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基板の製造工程においては、フッ酸等の薬液による処理および純水による洗浄処理を順次行った後、純水から基板を引き出しつつイソプロピルアルコール(以下、「IPA」と称する)等の有機溶剤の蒸気を基板の周辺に供給して乾燥処理を行う基板処理装置が用いられている。特に、基板上に形成されるパターンの構造の複雑化、微細化が進展している近年においては、IPAの蒸気を供給しつつ純水から基板を引き揚げる引き揚げ乾燥方式が主流になりつつある。
【0003】
従来の引き揚げ乾燥方式の基板処理装置は、図10に示すように純水による洗浄処理を行う処理槽92を収容器90の内部に収容している。処理槽92における基板Wの洗浄処理終了後に、収容器90内に窒素ガスを供給しつつ基板Wを昇降機構93によって処理槽92から引き揚げてから、図10中矢印FI9に示すように、供給ノズル91からIPA蒸気を吐出する。これにより、収容器90内がIPA蒸気で満たされて、基板WにIPAが凝縮し、それが乾燥することにより、基板の乾燥処理が行われることとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の引き揚げ乾燥方式の基板処理装置においては、収容器90内全体にIPA蒸気を供給することが必要であり、比較的多量のIPAを使用することとなる。
【0005】
このIPAは、そのまま外部に排出したのでは環境に負荷を与えるため、所定の廃棄処理を施して環境に対して無害化する必要がある。かかる廃棄処理は相当の費用を要するものであり、このことが基板処理のコストアップの要因となっている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板処理において有機溶剤を使用しない、または有機溶剤の使用量を削減できる基板処理技術を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、純水による洗浄処理が終了した基板の乾燥処理を行う基板処理装置であって、純水を貯留し、前記純水中に基板を浸漬して洗浄処理を行う処理槽と、前記処理槽を収容する収容器と、前記処理槽内で前記基板を保持する保持手段と、不活性ガス供給源から供給される不活性ガスを加熱し、高温の不活性ガスを生成する加熱手段と、前記保持手段により前記処理槽内で前記基板を保持しつつ、前記処理槽に貯留された純水を排水する排水手段と、前記収容器内において、略水平方向に高温の不活性ガスを吐出し、前記処理槽の開口部を覆う不活性ガスの気流域を形成する不活性ガス気流域形成手段と、前記排水手段により排水された前記処理槽において前記保持手段により前記基板を保持しつつ、前記加熱手段により不活性ガスを加熱して生成された高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させる流入手段と、前記流入手段による処理槽内への不活性ガスの流入後に、前記処理槽から洗浄処理が終了した基板を引き揚げる引き揚げ手段とを備え、前記流入手段は、前記排水手段により前記純水を排水しつつ、前記高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させるとともに、前記引き揚げ手段により基板を引き揚げる際に、前記不活性ガスの気流域を通過させる。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板処理装置において、前記流入手段は、前記処理槽における開口部の近傍に設けられ、前記開口部に向けて高温の不活性ガスを吐出する吐出部を有する。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る基板処理装置において、前記流入手段により高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させる際に、前記収容器内を減圧する減圧手段をさらに備える。
【0015】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明に係る基板処理装置において、前記保持手段は、相互に間隔を隔てた複数の基板を一括して保持する。
【0016】
また、請求項5の発明は、純水を貯留可能な処理槽と、前記処理槽を収容する収容器とを有する基板処理装置を利用する基板処理方法であって、前記処理槽に貯留される純水中に基板を浸漬して洗浄処理を行う処理工程と、前記処理槽内で前記基板を保持しつつ前記処理槽に貯留された純水を排水する排水手段により排水された前記処理槽において前記基板を保持しつつ、不活性ガス供給源から供給される不活性ガスを加熱して生成された高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させる流入工程と、前記流入工程による処理槽内への不活性ガスの流入後に、前記処理槽から洗浄処理が終了した基板を引き揚げる引き揚げ工程とを備え、前記流入工程では、前記排水手段により前記純水を排水しつつ、前記高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させるとともに、前記引き揚げ工程で前記処理槽から基板を引き揚げる際に、前記収容器内において略水平方向に前記高温の不活性ガスを吐出して形成された、前記処理槽の開口部を覆う不活性ガスの気流域を通過させる。
【0018】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明に係る基板処理方法において、前記流入工程は、前記処理槽における開口部の近傍に設けられる吐出部から、前記開口部に向けて前記高温の不活性ガスを吐出する吐出工程を有する。
【0019】
また、請求項7の発明は、請求項5または請求項6の発明に係る基板処理方法において、前記流入工程は、前記高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させる際に、前記収容器内を減圧する減圧工程をさらに有する。
【0024】
また、請求項8の発明は、請求項5ないし請求項7のいずれかの発明に係る基板処理方法において、前記流入工程では、相互に間隔を隔てた複数の基板を一括して保持しつつ、前記高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させる。
【0025】
【発明の実施の形態】
<基板処理装置の要部構成>
図1は、本発明の実施形態に係る基板処理装置1の正面図である。また、図2は、図1のII−II位置から見た断面図である。なお、図1および以下の各図にはそれらの方向関係を明確にするため、XY平面を水平面としZ軸方向を鉛直方向とするXYZ直交座標系を適宜付している。
【0026】
この基板処理装置1は、純水による洗浄処理が終了した基板を乾燥させる装置であって、主として収容器10と、処理槽20と、昇降機構30と、第1供給ノズル40と、第2供給ノズル50とを備えている。
【0027】
処理槽20は、フッ酸等の薬液または純水(以下、これらを総称して「処理液」とする)を貯留して基板に順次表面処理を行う槽であり、収容器10の内部に収容されている。処理槽20の底部近傍には処理液吐出ノズル(図示省略)が配置されており、図外の処理液供給源からその処理液吐出ノズルを介して処理槽20内に処理液を供給することができる。この処理液は処理槽20の底部から供給されてオーバーフロー面、すなわち処理槽20の開口部20pから溢れ出る。また、処理槽20では、後述する排液バルブ48(図3参照)の開放によって処理槽20内に貯留された処理液を排出することも可能である。
【0028】
収容器10は、その内部に処理槽20、昇降機構30、第1供給ノズル40、第2供給ノズル50等を収容する筐体である。収容器10の上部11は、概念的に図示されたスライド式開閉機構12によって開閉可能とされている(以下の図2〜図9では、この開閉機構12を図示省略)。収容器10の上部11を開放した状態では、その開放部分から基板Wの搬出入を行うことができる。一方、収容器10の上部11を閉鎖した状態では、その内部を密閉空間とすることができる。
【0029】
昇降機構30は、処理槽20に貯留されている処理液に一組の複数の基板W(ロット)を浸漬させる機構であり、保持手段および引き揚げ手段として機能する。昇降機構30は、リフター31と、リフターアーム32と、基板Wを保持する3本の保持棒33、34、35とを備えている。3本の保持棒33、34、35のそれぞれには基板Wの外縁部がはまり込んで基板Wを起立姿勢にて保持する複数の保持溝が所定間隔にてX方向に配列して設けられている。それぞれの保持溝は、切欠状の溝である。3本の保持棒33、34、35はリフターアーム32に固設され、リフターアーム32はリフター31によって鉛直方向(Z方向)に昇降可能に設けられている。
【0030】
このような構成により、昇降機構30は3本の保持棒33、34、35によってX方向に相互に平行に配列されて保持された複数の基板Wを処理槽20に貯留されている処理液に浸漬する位置(図1の実線位置)とその処理液から引き揚げた位置(図1の仮想線位置)との間で経路PTに沿って昇降させることができる。なお、リフター31には、リフターアーム32を昇降させる機構として、ボールネジを用いた送りネジ機構やプーリやベルトを用いたベルト機構など種々の公知の機構を採用することが可能である。また、昇降機構30を図1の仮想線位置に位置させるとともに、収容器10の上部11を開放することにより、装置外部の基板搬送ロボットと昇降機構30との間で基板Wの受け渡しを行うことができる。
【0031】
また、処理槽20の外部には、開口部20pの近傍に2本の第1供給ノズル40が設けられている。2本の第1供給ノズル40は、昇降機構30によって引き揚げられつつある複数の基板Wの両側の側方のそれぞれに設けられている。第1供給ノズル40のそれぞれは、X方向に沿って伸びる中空の管状部材であり、X方向に等間隔にて配列された複数の吐出孔41を備えている。複数の吐出孔41のそれぞれは、吐出方向を、オーバーフロー面と平行に向けるように形成されている。そして、第1供給ノズル40のそれぞれは、複数の吐出孔41から水平方向(Y方向)に向けて不活性ガスである窒素ガスまたはIPAの蒸気を吐出し、処理槽20の上方で窒素ガスまたはIPAの蒸気の雰囲気を形成することができる。
【0032】
さらに、収容器10の内部であって処理槽20の開口部20pの近傍、具体的には処理槽20の上端より外側上方に、吐出部として機能する2本の第2供給ノズル50が設けられている。また、2本の第2供給ノズル50は、それぞれ第1供給ノズル40の下方に設けられている。第2供給ノズル50のそれぞれは、X方向に沿って伸びる中空の管状部材であり、X方向に等間隔にて配列された複数の吐出孔51を備えている。複数の吐出孔51のそれぞれは、吐出方向を処理槽20の開口部20pに向けるように形成されている。そして、第2供給ノズル50のそれぞれは、複数の吐出孔51から処理槽20の開口部20pに向けて窒素ガスを吐出し、処理槽20内に当該窒素ガスを含む雰囲気を形成することができる。
【0033】
第1供給ノズル40および第2供給ノズル50には、収容器10外部の供給機構から、IPA蒸気や窒素ガス等を供給することができる。図3は、基板処理装置1の配管等の構成を示す模式図である。第1供給ノズル40は、IPA供給源42および窒素ガス供給源44と配管を介して接続されている。IPAバルブ43を開放することによって、IPA供給源42から第1供給ノズル40に低濃度のIPA蒸気を供給することができる。第1供給ノズル40に供給された低濃度のIPA蒸気は、複数の吐出孔41のそれぞれから水平方向に、基板Wの主面に平行な流れを形成して吐出される。なお、このとき、キャリアガスとしては、窒素ガスが使用されている。
【0034】
また、窒素ガスバルブ47を開放することによって、窒素ガス供給源44から第1供給ノズル40に窒素ガスを供給することができる。第1供給ノズル40に供給された窒素ガスは、複数の吐出孔41のそれぞれから水平方向に吐出される。
【0035】
窒素ガス供給源44から導かれる配管の経路途中にはヒータ45が設けられている。このヒータ45を作動させることによって、窒素ガス供給源44から第1供給ノズル40に供給する窒素ガスを加熱し、処理槽20内に貯留される純水の温度よりも高温の窒素ガスを生成できる。これにより、第1供給ノズル40の複数の吐出孔41から水平方向に、基板Wの主面に平行な流れを形成して高温の窒素ガスを吐出することができることとなる。
【0036】
すなわち、窒素ガスバルブ47を閉鎖してIPAバルブ43を開放すれば第1供給ノズル40から処理槽20のオーバフロー面と平行に低濃度のIPA蒸気を供給することができ、逆にIPAバルブ43を閉鎖して窒素ガスバルブ47を開放すれば処理槽20のオーバーフロー面と平行に高温の窒素ガスを供給することができることとなる。
【0037】
第2供給ノズル50は、窒素ガス供給源44と配管を介して接続されている。窒素ガスバルブ46を開放することによって、窒素ガス供給源44から第2供給ノズル50に窒素ガスを供給することができる。第2供給ノズル50に供給された窒素ガスは、複数の吐出孔51のそれぞれから処理槽20の開口部20pに向けて、基板Wの主面に平行な流れを形成して吐出される。ここでは、加熱手段として機能するヒータ45を作動させることによって、高温の窒素ガスを処理槽20内に向けて供給できることとなる。
【0038】
また、処理槽20の底部と装置外の排液ラインとは配管を介して接続されており、その配管には排液バルブ48が介挿されている。この排液バルブ48を開放することによって、処理槽20内の処理液が排出されることとなる。
【0039】
収容器10内と装置外の排気ラインとは配管を介して接続されており、その配管には排気バルブ49と排気(減圧)ポンプAPが介挿されている。排気バルブ49を開放して排気ポンプAPを駆動させることによって、収容器10内の雰囲気が排気されることとなる。
【0040】
なお、図3に示すIPAバルブ43、窒素ガスバルブ46、47、ヒータ45、排液バルブ48、排気バルブ49および排気ポンプAPは、いずれも制御部60によってその動作が制御される。この制御部60および排液バルブ48が排水手段として機能することとなる。
【0041】
<基板処理装置1における乾燥処理>
図4は、基板処理装置1における基板処理の動作を説明するフローチャートである。また、図5から図8は、基板処理装置1における処理の様子を説明する図である。以下では、基板処理装置1の処理手順について図4から図8を参照しつつ説明する。
【0042】
上記の基板処理装置1において基板Wに処理を行うときは、まず、昇降機構30が図外の基板搬送ロボットから複数の基板Wを受け取る。そして、収容器10が密閉されるとともに、昇降機構30がX方向に相互に間隔を隔てて一括保持した複数の基板Wを降下させ、基板Wを処理槽20内に搬入するための開口部20pから処理槽20に貯留された純水中に浸漬させる(ステップS1)。この段階においては、処理槽20に純水が供給され続けており、処理槽20の上端のオーバーフロー面からは純水が溢れ出し続けている。処理槽20から溢れ出した純水は、処理槽20の上端部外側に設けられた回収部によって回収され、装置外の排液ラインに排出される。
【0043】
ステップS2では、基板の洗浄処理を行う。ここでは、処理槽20に貯留された純水に複数の基板Wを浸漬した状態を維持しつつ、処理槽20に薬液または純水を順次供給することによりエッチングや洗浄処理を予め定められた順序に従って進行させる(図5の状態)。この段階においても、処理槽20の上端から薬液または純水が溢れ出し続けており、溢れ出した処理液は上記の回収部によって回収される。
【0044】
そして、図5の状態においては、図5中矢印FN41に示すように第1供給ノズル40から高温の窒素ガスを水平方向に吐出するとともに、図5中矢印FN42に示すように第2供給ノズル50から処理槽20の開口部20pに向けて高温の窒素ガスを吐出する。これにより、収容器10の内部が窒素雰囲気となり、窒素雰囲気下で基板Wの処理が進行することとなる。
【0045】
基板Wに対する表面処理が進行すると、やがて最終の仕上洗浄処理に至る。本実施形態では、仕上洗浄処理も通常の洗浄処理と同じく、処理槽20に純水を貯留し、その純水中に複数の基板Wを浸漬することによって行われる。なお、最終の仕上洗浄処理の段階においても高温の窒素ガスの供給が行われており、第1供給ノズル40および第2供給ノズル50から高温の窒素ガスが吐出され、窒素雰囲気下にて仕上洗浄処理が行われる。
【0046】
ステップS3では、処理槽20から純水を排水しつつ、高温の窒素ガスを処理槽20に流入させる。すなわち、処理槽20内における基板Wの洗浄処理(ステップS2)が終了すると、図6に示すように、基板Wを処理槽20内に保持したまま、処理槽20内に貯留された純水を排水する。この際には、図6中矢印FN52に示すように第2供給ノズル50から処理槽20の開口部20pに向けて高温の窒素ガスを図5の処理時より供給量を増加させて吐出し、処理槽20内に高温の窒素ガスを流入させる。これにより、基板Wを乾燥するための処理が開始される。この処理槽20内への窒素ガスの流入により、基板Wの表面全体が窒素で覆われる。
【0047】
上記のように処理槽20内で基板Wを保持した状態で排水する、すなわち処理槽20内の界面(水面)を低下させることで基板Wを収容器10内の雰囲気に露出させる場合には、純水から基板Wを引き揚げることで基板を露出させる場合に対して、引き揚げに伴う基板Wの揺れ(振動)が発生することがないため、界面付近で生じうる基板へのパーティクルの再付着を効果的に防止できる。特に、雰囲気への基板Wの露出速度を上げたい場合には、基板Wを保持して排水する方法が有効となる。
【0048】
また、図6中矢印FN51に示すように第1供給ノズル40から高温の窒素ガスを略水平方向に吐出し、処理槽20の開口部20pを覆う窒素ガスの気流域RNを形成する。この窒素ガスの気流域RNは、第2供給ノズル50から供給される高温の窒素ガスを処理槽20内に封じ込めて、処理槽20内部と外部との熱交換を抑制するエアーカーテンのような役目を果たすこととなる。これにより、処理槽20内に流入した高温の窒素ガスによる乾燥処理が適切に行える。
【0049】
ステップS4では、排水された処理槽に高温の窒素ガスを流入させる。すなわち、処理槽20内の排水が終了した後も引き続き、図7に示すように第1供給ノズル40から吐出する高温の窒素ガス流FN61によって開口部20pを覆う窒素ガスの気流域RNを形成するとともに、第2供給ノズル50から高温の窒素ガス流FN62を吐出して処理槽20内に流入させる。これにより、収容器10より容積が小さい処理槽20内に高温の窒素ガスが流入するため、基板乾燥に用いる高温の窒素ガスの消費量を削減できるとともに、基板Wの乾燥が迅速に行えることとなる。また、この際には、乾燥条件を向上させるため、排気ポンプAPを駆動し、図7中矢印EXに示すように収容器10内の雰囲気を外部に排気して収容器10内を減圧する。
【0050】
ステップS6では、処理槽20から基板Wを引き揚げる。この際、昇降機構30を駆動し、複数の基板Wを処理槽20から引き揚げる。ここでは、図8に示すように、第1供給ノズル40および第2供給ノズル50からの高温の窒素ガスの吐出を止め、これに代わって第1供給ノズル40から低濃度のIPA蒸気を吐出し、処理槽20の開口部20の上方で略水平方向にIPA蒸気の気流域RIを形成する。そして、このIPA蒸気の気流域RIを通過させるように、基板Wを引き揚げる。
【0051】
これにより、引き揚げ経路PT(図1参照)の一部について形成されるIPA蒸気の気流域RIにおいて低濃度のIPA蒸気が基板Wに直接的に吹き付けられるため、基板Wの確実な乾燥に寄与できることとなる。この場合、混合気体でなく単一の気体つまりIPAのみが高温の窒素ガスにさらされていた基板Wに作用し、基板Wの表面全体がIPAで覆われることとなる。また、処理槽20内における基板Wの乾燥処理の後に、低濃度のIPA蒸気を効率よく基板Wに供給するため、IPA蒸気の消費量を削減できる。すなわち、収容器10内の一部のスペースに低濃度のIPA蒸気を重点的に供給するため、収容器10内全体に一定濃度のIPA蒸気を供給する従来の方法に比べて、IPAの消費量を著しく減少できることとなる。
【0052】
基板Wが低濃度のIPA蒸気の気流域RIを通過すると、第1供給ノズル40からのIPA蒸気の供給を停止する。
【0053】
その後、基板Wを昇降機構30によりさらに引き揚げ、基板Wが図1中の仮想線位置にまで到達した時点で、昇降機構30が停止し、基板Wの引き揚げが完了する。そして、基板Wが図1中の仮想線位置まで引き揚げられると、基板Wは基板搬送ロボットに渡されて一連の処理が終了する。
【0054】
以上の基板処理装置1の動作により、収容器10より容積の小さい処理槽20内で保持される基板Wに対して高温の窒素ガスを供給するとともに、IPA蒸気の気流域RIを通過させるように基板Wを引き揚げて基板Wに対して直接的にIPA蒸気を供給するため、環境に負荷を与えるIPAの使用量を削減して迅速な基板Wの乾燥処理が行える。
【0055】
なお、上述した処理手順に限らず、以下で説明する処理手順に従って基板処理を行っても良い。本処理手順では、上記のステップS1〜S4(図5〜図7参照)の処理の後に、ステップS5に対応する処理として図9に示す処理を行うこととなる。
【0056】
図9に示す処理においては、第1供給ノズル40から略水平方向に吐出する高温の窒素ガス流FN81によって処理槽20の開口部20pを覆う窒素ガスの気流域RNを形成するとともに、第2供給ノズル50から高温の窒素ガス流FN82を吐出して処理槽20内に流入させる動作を行う。そして、この高温の窒素ガスの気流域RNを通過させるように、昇降機構30を駆動して基板Wを引き揚げる。
【0057】
これにより、引き揚げ経路PT(図1参照)の一部について形成される高温の窒素ガスの気流域RNにおいて高温の窒素ガスが基板Wに直接的に吹き付けられるため、処理槽20内での乾燥処理後における基板Wの確実な乾燥に寄与できることとなる。
【0058】
以上で説明した図5ないし図7および図9に示す処理手順により、収容器10より容積の小さい処理槽20内で保持される基板Wに対して高温の窒素ガスを供給するとともに、高温の窒素ガスの気流域RNを通過させるように基板Wを引き揚げて基板Wに対して直接的に高温の窒素ガスを供給するため、環境に負荷を与えるIPAが不要となり、IPAの廃棄処理の問題が解消する。また、IPAを使用しないため、基板WにおけるIPAの残留を防止できるとともに、基板処理装置のコスト低減が図れる。
【0059】
<変形例>
・上記の実施形態については、高温の窒素ガスを収容器10内に供給するのは必須でなく、図4に示すステップS1またはステップS2で高温の二酸化炭素ガスの供給を開始するようにしても良い。すなわち、本発明における不活性ガスとは、反応性に乏しい気体を指し、広義に解釈すると二酸化炭素ガスも含まれることとなる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし請求項8の発明によれば、排水された処理槽において基板を保持しつつ、加熱された高温の不活性ガスを処理槽内に流入させるため、基板処理において有機溶剤を使用しない、または有機溶剤の使用量を削減できる。また、処理槽内で基板を保持しつつ純水を排水するため、基板に対するパーティクルの再付着を抑制できる。
【0061】
さらに、請求項1ないし請求項8の発明においては、純水を排水しつつ処理槽内に高温の不活性ガスを流入させるため、高温の不活性ガスによる基板乾燥が適切に開始できる。
【0062】
また、請求項2および請求項6の発明においては、処理槽における開口部の近傍に設けられる吐出部から開口部に向けて高温の不活性ガスを吐出するため、処理槽内に高温の不活性ガスを適切に流入できる。
【0063】
また、請求項3および請求項7の発明においては、高温の不活性ガスを処理槽内に流入させる際に収容器内を減圧するため、基板の乾燥条件を向上でき、その結果、さらに効率的な基板の乾燥処理を行うことができる。
【0064】
また、請求項1ないし請求項8の発明においては、略水平方向に高温の不活性ガスを吐出して処理槽の開口部を覆う不活性ガスの気流域を形成するため、この不活性ガスの気流域がエアーカーテンのような役目を果たし、処理槽内に流入した高温の不活性ガスによる基板乾燥が適切に行える。
【0065】
また、請求項1ないし請求項8の発明においては、基板を引き揚げる際に不活性ガスの気流域を通過させるため、基板の確実な乾燥に寄与できる。
【0068】
また、請求項4および請求項8の発明においては、相互に間隔を隔てた複数の基板を一括して保持するため、基板処理を効率的に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置1の正面図である。
【図2】図1のII−II位置から見た断面図である。
【図3】基板処理装置1の配管等の構成を示す模式図である。
【図4】基板処理装置1における基板処理の動作を説明するフローチャートである。
【図5】基板処理装置1における処理の様子を説明する図である。
【図6】基板処理装置1における処理の様子を説明する図である。
【図7】基板処理装置1における処理の様子を説明する図である。
【図8】基板処理装置1における処理の様子を説明する図である。
【図9】基板処理装置1における処理の様子を説明する図である。
【図10】従来例に係る基板乾燥処理の様子を説明する図である。
【符号の説明】
1 基板処理装置
10 収容器
20 処理槽
30 昇降機構
40 第1供給ノズル
50 第2供給ノズル
FN 高温の窒素ガス流
FI 低濃度のIPA蒸気流
RN 窒素ガスの気流域
RI IPA蒸気の気流域
W 基板
Claims (8)
- 純水による洗浄処理が終了した基板の乾燥処理を行う基板処理装置であって、
純水を貯留し、前記純水中に基板を浸漬して洗浄処理を行う処理槽と、
前記処理槽を収容する収容器と、
前記処理槽内で前記基板を保持する保持手段と、
不活性ガス供給源から供給される不活性ガスを加熱し、高温の不活性ガスを生成する加熱手段と、
前記保持手段により前記処理槽内で前記基板を保持しつつ、前記処理槽に貯留された純水を排水する排水手段と、
前記収容器内において、略水平方向に高温の不活性ガスを吐出し、前記処理槽の開口部を覆う不活性ガスの気流域を形成する不活性ガス気流域形成手段と、
前記排水手段により排水された前記処理槽において前記保持手段により前記基板を保持しつつ、前記加熱手段により不活性ガスを加熱して生成された高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させる流入手段と、
前記流入手段による処理槽内への不活性ガスの流入後に、前記処理槽から洗浄処理が終了した基板を引き揚げる引き揚げ手段と、
を備え、
前記流入手段は、前記排水手段により前記純水を排水しつつ、前記高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させるとともに、
前記引き揚げ手段により基板を引き揚げる際に、前記不活性ガスの気流域を通過させることを特徴とする基板処理装置。 - 請求項1に記載の基板処理装置において、
前記流入手段は、
前記処理槽における開口部の近傍に設けられ、前記開口部に向けて高温の不活性ガスを吐出する吐出部、
を有することを特徴とする基板処理装置。 - 請求項1または請求項2に記載の基板処理装置において、
前記流入手段により高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させる際に、前記収容器内を減圧する減圧手段、
をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記保持手段は、相互に間隔を隔てた複数の基板を一括して保持することを特徴とする基板処理装置。 - 純水を貯留可能な処理槽と、前記処理槽を収容する収容器とを有する基板処理装置を利用する基板処理方法であって、
前記処理槽に貯留される純水中に基板を浸漬して洗浄処理を行う処理工程と、
前記処理槽内で前記基板を保持しつつ前記処理槽に貯留された純水を排水する排水手段により排水された前記処理槽において前記基板を保持しつつ、不活性ガス供給源から供給される不活性ガスを加熱して生成された高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させる流入工程と、
前記流入工程による処理槽内への不活性ガスの流入後に、前記処理槽から洗浄処理が終了した基板を引き揚げる引き揚げ工程と、
を備え、
前記流入工程では、前記排水手段により前記純水を排水しつつ、前記高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させるとともに、
前記引き揚げ工程で前記処理槽から基板を引き揚げる際に、前記収容器内において略水平方向に前記高温の不活性ガスを吐出して形成された、前記処理槽の開口部を覆う不活性ガスの気流域を通過させることを特徴とする基板処理方法。 - 請求項5に記載の基板処理方法において、
前記流入工程は、
前記処理槽における開口部の近傍に設けられる吐出部から、前記開口部に向けて前記高温の不活性ガスを吐出する吐出工程、
を有することを特徴とする基板処理方法。 - 請求項5または請求項6に記載の基板処理方法において、
前記流入工程は、
前記高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させる際に、前記収容器内を減圧する減圧工程、
をさらに有することを特徴とする基板処理方法。 - 請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の基板処理方法において、
前記流入工程では、相互に間隔を隔てた複数の基板を一括して保持しつつ、前記高温の不活性ガスを前記処理槽内に流入させることを特徴とする基板処理方法。
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