JP3804918B2 - セラミック構造体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関から排出される排気ガス中のパティキュレート等を除去するフィルタとして用いられるセラミック構造体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車、バス、トラック等の車両や建設機械等の内燃機関から排出される排気ガス中に含有されるパティキュレートが環境や人体に害を及ぼすことが最近問題となっている。
この排気ガスを多孔質セラミックを通過させることにより、排気ガス中のパティキュレートを捕集して排気ガスを浄化するハニカムフィルタが種々提案されている。
【0003】
このようなハニカムフィルタは、通常、図1に示したセラミック構造体10のように、炭化珪素等からなる多孔質セラミック部材30が接着剤層14を介して複数個結束されてセラミックブロック15を構成し、このセラミックブロック15の周囲にシール材層13が形成されている。また、この多孔質セラミック部材30は、図2に示したように、長手方向に多数の貫通孔31が並設され、貫通孔31同士を隔てる隔壁33がフィルタとして機能するようになっている。
【0004】
即ち、多孔質セラミック部材30に形成された貫通孔31は、図2(b)に示したように、排気ガスの入り口側又は出口側の端部のいずれかが充填材32により目封じされ、一の貫通孔31に流入した排気ガスは、必ず貫通孔31を隔てる隔壁33を通過した後、他の貫通孔31から流出されるようになっている。
【0005】
排気ガス浄化装置では、このような構成のセラミック構造体10が内燃機関の排気通路に設置され、内燃機関より排出された排気ガス中のパティキュレートは、このセラミック構造体10を通過する際に隔壁33により捕捉され、排気ガスが浄化される。
【0006】
このようなセラミック構造体10を製造する際には、まず、原料であるセラミック粒子の他に溶剤やバインダー等を含む混合組成物を調製し、この混合組成物を用いて押出成形等を行いセラミック成形体を作製する。そして、このセラミック成形体に乾燥、脱脂、焼成の各処理を施すことで多孔質セラミック部材30を製造する。
【0007】
次に、この多孔質セラミック部材30を接着剤層14となる接着剤ペーストを介して複数個積層することによりセラミック積層体を組み上げ、乾燥後、所定形状に切削してセラミックブロック15を作製する。そして、このセラミックブロック15の外周部にシール材層13を形成することによりセラミック構造体10を製造していた。
【0008】
しかしながら、このような方法でセラミック構造体10を製造しようとすると、上記セラミック積層体の組み上げ工程において、多孔質セラミック部材30の側面に塗布した接着剤ペーストが多孔質セラミック部材30の端面部分にはみ出し、貫通孔31が形成されている部分に付着し、貫通孔31を塞いでしまうことがあった。
【0009】
このように上記接着剤ペーストが、貫通孔31を塞いでしまうと、貫通孔31は目詰まりとなり、セラミック構造体10のフィルタとしての機能が低下してしまう。
【0010】
そこで、このような接着剤ペーストによる貫通孔31の目詰まりを防止するために、上記セラミック積層体の組み上げ工程において、接着剤ペーストが多孔質セラミック部材30の端面にはみ出さないように、多孔質セラミック部材30の側面に塗布する接着剤ペーストの量及び位置を制御する必要があった。
【0011】
図4(a)は、接着剤ペーストの塗布量及び位置を制御して作製したセラミック構造体の端面近傍を模式的に示した部分拡大断面図である。
図4(a)に示したように、上記方法で作製したセラミック構造体には、接着剤層14が形成されていない溝状の接着剤層非形成部分16が存在しており、この接着剤層非形成部分16のセラミック構造体の端面からの深さは、1mmを超え10mm程度であった。従って、このようなセラミック構造体の端面では、多孔質セラミック部材30の端部が、接着剤層非形成部分16の深さ分だけ剥き出しの状態となっている。
【0012】
セラミック構造体の端面がこのような状態であると、セラミック構造体を移動や運搬の際の振動や衝突、及び、高圧水洗によりセラミック構造体の再生処理を行う際の水圧等に起因して、剥き出しの状態となっている多孔質セラミック部材の端部が欠けてしまうことがあった。
【0013】
このように、多孔質セラミック部材の端部に欠けが発生すると、充填材により塞がれているはずの部分に開口が形成されてしまい、そのため、セラミック構造体は、フィルタとしての機能を果たすことができない。また、この欠けた部分を起点として多孔質セラミック部材の他の部分にもクラックが伸展してしまうこともあった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、移動や運搬の際の振動や衝突、及び、高圧水洗により再生処理を行う際の水圧等によって多孔質セラミック部材の端部に欠けが発生することのない、耐久性に優れるセラミック構造体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミック構造体は、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された多孔質セラミック部材が接着剤層を介して複数個結束され、上記貫通孔を隔てる隔壁が粒子捕集用フィルタとして機能するように構成されたセラミック構造体であって、上記多孔質セラミック部材間の上記接着剤層が形成されていない部分の上記セラミック構造体の端面からの深さは、1mm以下であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のセラミック構造体の製造方法は、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された多孔質セラミック部材が接着剤層を介して複数個結束され、上記貫通孔を隔てる隔壁が粒子捕集用フィルタとして機能するように構成されたセラミック構造体の製造方法であって、
上記多孔質セラミック部材の側面に、接着剤ペーストAを塗布し、上記接着剤ペーストAの上に他の多孔質セラミック部材を積層する工程を繰り返して、セラミック積層体を組み上げるセラミック積層体作製工程と、上記セラミック積層体の一部を切削し、セラミックブロックを作製するセラミックブロック作製工程と、上記多孔質セラミック部材間の接着剤層非形成部分に、接着剤が充填されていない接着剤未充填部分のセラミック構造体の端面からの深さが1mm以下となるように接着剤ペーストBを充填する接着剤ペースト充填工程と、上記セラミックブロックの外周部にシール材層を形成するシール材層形成工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセラミック構造体及びその製造方法について、図面に基づいて説明する。
【0018】
初めに、本発明のセラミック構造体について説明する。
本発明のセラミック構造体は、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された多孔質セラミック部材が接着剤層を介して複数個結束され、上記貫通孔を隔てる隔壁が粒子捕集用フィルタとして機能するように構成されたセラミック構造体であって、上記多孔質セラミック部材間の上記接着剤層が形成されていない部分(以下、接着剤未充填部分ともいう)の上記セラミック構造体の端面からの深さは、1mm以下であることを特徴とする。
【0019】
ここで、本発明のセラミック構造体の構造は、接着剤未充填部分の上記セラミック構造体の端面からの深さが1mm以下であるほかは、例えば、図1に示したセラミック構造体10と略同様のものを挙げることができる。この場合、上記多孔質セラミック部材の構造は、多孔質セラミック部材30と略同様である。なお、上記多孔質セラミック部材は、図示したような角柱形状のものに限定されず、例えば、楕円柱状や三角柱状等任意の形状であってよい。
【0020】
上記接着剤未充填部分のセラミック構造体の端面からの深さは1mm以下である。上記深さが、1mmを超えると、セラミック構造体の移動や運搬の際の振動や衝突、及び、高圧水洗によりセラミック構造体の再生処理を行う際の水圧等の負荷が多孔質セラミック部材の端部にかかった際、該端部に欠けが発生することがある。
【0021】
上記接着剤層を構成する材質としては特に限定されず、例えば、無機バインダー、有機バインダー、無機繊維及び無機粒子からなるもの等を挙げることができる。
【0022】
上記無機バインダーとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、シリカゾルが好ましい。
【0023】
上記有機バインダーとしては、例えば、親水性有機高分子が望ましく、特に多糖類が望ましい。具体的には、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらのなかでは、カルボキシメチルセルロースが好ましい。多孔質セラミック部材の組み上げ時の流動性を確保し、常温領域での優れた接着性を示すからである。
【0024】
上記無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナセラミックファイバー、ムライトファイバー、アルミナファイバー及びシリカファイバー等を挙げることができる。このような無機繊維は、無機バインダーや有機バインダー等と絡み合うことで、接着剤層の接着強度を向上させることができる。
【0025】
上記無機粒子としては、例えば、炭化物及び/又は窒化物の無機粒子が望ましく、例えば、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素等が挙げられる。これらの炭化物や窒化物は、熱伝導率が非常に大きく、接着剤層の熱伝導率の向上に大きく寄与する。
【0026】
また、接着剤層中には、無機バインダー、有機バインダー、無機繊維及び無機粒子のほかに、少量の水分や溶剤等を含んでいてもよいが、このような水分や溶剤等は、通常、接着剤ペーストを塗布した後の加熱等により殆ど飛散する。
【0027】
このような接着剤層は多孔質セラミック部材間に形成され、該多孔質セラミック部材同士を接着している。しかしながら、上記従来の技術において説明した通り、上記接着剤層は、多孔質セラミック部材の端部からはみ出すことがないように形成する必要がある。そのため、上記接着剤未充填部分のセラミック構造体の端面からの深さが1mm以下となるように、上記接着剤層を形成することは困難である。
従って、本発明のセラミック構造体において、上記接着剤層は、接着剤層Aと該接着剤層Aの外側に形成された接着剤層Bとから構成されていることが望ましい。確実に接着剤未充填部分のセラミック構造体の端面からの深さを1mm以下とすることができるからである。
【0028】
図4(b)は、上記接着剤層Bが形成された本発明のセラミック構造体の端面近傍を模式的に示した部分拡大断面図であり、12は、接着剤層Aの外側に、後述する方法により、新たに充填された接着剤層Bを示している。
即ち、この場合における接着剤未充填部分11とは、図4(a)に示した接着剤層非形成部分16に、接着剤層Bとなる接着剤ペーストを充填して接着剤層Bを形成した際、上記接着剤ペーストが充填されなかった部分を指す。
【0029】
接着剤層Bは、上述したような、無機バインダー、有機バインダー、無機繊維及び無機粒子からなる接着剤層(接着剤層A)と同様の組成のものであってもよいが、無機バインダー、有機バインダー及び無機粒子を含んでいるものであることが望ましい。接着剤層Bの熱伝導率が優れたものとなり、ヒーター等の加熱によりセラミック構造体の再生処理を行う際、セラミック構造体の端面の均熱性を向上させることができ、セラミック構造体の再生率を向上させることができるからである。
【0030】
なお、無機バインダー、有機バインダー及び無機粒子を含んでいる接着剤層Bの熱伝導率が、無機バインダー、有機バインダー、無機繊維及び無機粒子からなる接着剤層Aの熱伝導率よりも優れたものとなる理由については、後述する本発明のセラミック構造体の製造方法において説明する。
【0031】
上記接着剤層Bに含まれる無機バインダー、有機バインダー及び無機粒子の具体例としては、上記接着剤層において説明したものと同様のものを挙げることができる。
【0032】
接着剤層Bは、セラミック構造体の端面から若干盛り上がっていてもよく、この場合には、接着剤未充填部分は存在しないことになる。この場合、セラミック構造体の端面から接着剤充填層の端面までの高さは、0.5mm以内であることが望ましい。上記高さが0.5mmを超えると、接着剤層Bを形成する際に、該接着剤層Bとなる接着剤ペーストが多孔質セラミック部材の貫通孔の内部にはみ出し、貫通孔が目詰まりとなる場合がある。また、後述するが、多孔質セラミック部材の端面にマスキング材を貼り付けてセラミック構造体を製造する場合、上記マスキング材を剥離することが困難となる。
【0033】
本発明のセラミック構造体を構成する多孔質セラミック部材の材質は特に限定されず、種々のセラミックが挙げられるが、これらのなかでは、耐熱性が大きく、機械的特性に優れ、かつ、熱伝導率も大きい炭化珪素が好ましい。
【0034】
上記多孔質セラミック部材は、平均粒径が2〜150μmのセラミック結晶からなるものであることが望ましく、10〜70μmがより望ましい。上記セラミック結晶の平均粒径が2μm未満であると、多孔質セラミック部材の内部に存在する気孔の気孔径が小さくなりすぎ、直ぐに目詰まりを起こすため、フィルタとして機能することが困難となる。一方、上記セラミック結晶の平均粒径が150μmを超えると、その内部に存在する気孔の気孔径が大きくなりすぎ、多孔質セラミック部材の強度が低下してしまうおそれがある。また、所定の割合の開放気孔を有し、平均粒径が150μmを超えるようなセラミック結晶を有する多孔質セラミック部材を製造すること自体が余り容易でない。
また、このような多孔質セラミック部材の平均気孔径は1〜40μmであることが望ましい。
【0035】
また、本発明のセラミック構造体の外周部にはシール材層が形成されている。上記シール材層を構成する材料も特に限定されるものではないが、無機繊維、無機バインダー等の耐熱性の材料を含むものが好ましい。シール材層は、上述した接着剤層Aと同じ材料により構成されていてもよい。
また、本発明のセラミック構造体の形状は特に限定されず、円柱形状でも角柱形状でも構わないが、通常、図1に示したように円柱形状のものがよく用いられている。
【0036】
上述の通り、本発明のセラミック構造体は、接着剤未充填部分の上記セラミック構造体の端面からの深さが1mm以下であるので、セラミック構造体の端面において、多孔質セラミック部材と接着剤層とは略同一面を形成している。
従って、上記接着剤層は多孔質セラミック部材の端部を補強する効果を有し、本発明のセラミック構造体は、移動や運搬の際の振動や衝突、及び、高圧水洗により再生処理を行う際の水圧等により、多孔質セラミック部材の端部に強い負荷がかかった場合であっても、多孔質セラミック部材の端部に欠けが発生することがなく、耐久性に優れたものとなる。
【0037】
次に、本発明のセラミック構造体の製造方法について説明する。
本発明のセラミック構造体の製造方法は、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された多孔質セラミック部材が接着剤層を介して複数個結束され、上記貫通孔を隔てる隔壁が粒子捕集用フィルタとして機能するように構成されたセラミック構造体の製造方法であって、
上記多孔質セラミック部材の側面に、接着剤ペーストAを塗布し、上記接着剤ペーストAの上に他の多孔質セラミック部材を積層する工程を繰り返して、セラミック積層体を組み上げるセラミック積層体作製工程と、上記セラミック積層体の一部を切削し、セラミックブロックを作製するセラミックブロック作製工程と、上記多孔質セラミック部材間の接着剤層非形成部分に、接着剤が充填されていない接着剤未充填部分のセラミック構造体の端面からの深さが1mm以下となるように接着剤ペーストBを充填する接着剤ペースト充填工程と、上記セラミックブロックの外周部にシール材層を形成するシール材層形成工程とを含むことを特徴とする。
【0038】
本発明では、初めに、セラミック成形体を作製する。
この工程においては、セラミック粉末とバインダーと分散媒液とを混合して成形体作製用の混合組成物を調製した後、この混合組成物の押出成形を行うことにより、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたセラミック成形体を作製し、この後、この成形体を乾燥させることにより分散媒液を蒸発させ、セラミック粉末と樹脂とを含むセラミック成形体を作製する。
なお、このセラミック成形体には、少量の分散媒液が含まれていてもよい。
【0039】
このセラミック成形体の形状は、図2に示した多孔質セラミック部材30とほぼ同形状であるほか、楕円柱状や三角柱状等任意の形状であってもよい。
なお、本工程では、充填材32に相当する部分は空洞となっている。
【0040】
上記セラミック粉末としては、上述した本発明のセラミック構造体で説明した通り、種々のセラミックが挙げられるが、これらのなかでは、耐熱性が大きく、機械的特性に優れ、かつ、熱伝導率も大きい炭化珪素が好ましい。
また、上記セラミック粉末の粒径も特に限定されるものではないが、後の焼成工程で収縮の少ないものが好ましく、例えば、0.3〜50μm程度の平均粒径を有する粉末100重量部と0.1〜1.0μm程度の平均粒径を有する粉末5〜65重量部とを組み合わせたものが好ましい。
【0041】
上記バインダーとしては特に限定されず、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
上記バインダーの配合量は、通常、上記炭化珪素粉末100重量部に対して、1〜10重量部程度が好ましい。
【0042】
上記分散媒液としては特に限定されず、例えば、ベンゼン等の有機溶媒;メタノール等のアルコール、水等を挙げることができる。上記分散媒液は、上記樹脂の粘度が一定範囲内となるように、適量配合される。
【0043】
次に、封口工程として、作製されたセラミック成形体の上記貫通孔を充填ペーストにより封口パターン状に封口する工程を行う。
この際には、セラミック成形体の貫通孔に、封口パターン状に開孔が形成されたマスクを当接し、充填ペーストを上記マスクの開孔から上記貫通孔に侵入させることにより、充填ペーストで一部の貫通孔を封口する。
【0044】
上記充填ペーストとしては、セラミック成形体の製造の際に使用した混合組成物と同様のものか、又は、上記混合組成物にさらに分散媒を添加したものが好ましい。
【0045】
次に、脱脂工程として、上記工程により作製されたセラミック成形体中の樹脂等を熱分解する工程を行う。
この脱脂工程では、通常、上記セラミック成形体を脱脂用治具上に載置した後、脱脂炉に搬入し、酸素含有雰囲気下、400〜650℃に加熱する。
これにより、バインダー等の樹脂成分が揮散するとともに、分解、消失し、ほぼセラミック粉末のみが残留する。
【0046】
次に、焼成工程として、脱脂したセラミック成形体を、焼成用治具上に載置して焼成する工程を行う。
この焼成工程では、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、脱脂したセラミック成形体を2000〜2200℃で加熱し、セラミック粉末を焼結させることにより、図2に示したような、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状の多孔質セラミック部材を製造する。
【0047】
なお、脱脂工程から焼成工程に至る一連の工程では、焼成用治具上に上記セラミック成形体を載せ、そのまま、脱脂工程及び焼成工程を行うことが好ましい。脱脂工程及び焼成工程を効率的に行うことができ、また、載せ代え等において、セラミック成形体が傷つくのを防止することができるからである。
【0048】
次に、上記製造した多孔質セラミック部材の側面に、接着剤ペーストAを塗布し、上記接着剤ペーストAの上に他の多孔質セラミック部材積層する工程を繰り返して、セラミック積層体を組み上げるセラミック積層体作製工程を行う。
【0049】
上記接着剤ペーストAとしては、通常、接着強度及び耐熱性に優れ、また、比較的熱伝導率も良好な、上記本発明のセラミック構造体において説明した接着剤層Aと同様の組成からなるもの、即ち、無機バインダー、有機バインダー、無機繊維、及び、無機粒子等からなるものを使用する。
【0050】
このセラミック積層体作製工程においては、図5に示したように、断面がV字形状に構成された台60の上に載置した多孔質セラミック部材30の上側を向いた2つの側面30a、30bに上記接着剤ペーストAを、例えば、刷毛、スキージ、ロール等を用いて、多孔質セラミック部材30の両端部から1〜10mm程度の接着剤ペースト非形成部分を残して印刷し、所定の厚さの接着剤ペースト層61を形成する。
そして、この接着剤ペースト層61を形成してから、他の多孔質セラミック部材30を積層する工程を繰り返して行い、所定の大きさの角柱状のセラミック積層体を作製する。
【0051】
ここで、上記接着剤ペースト層非形成部分を残して接着剤ペースト層61を形成する理由は、上記接着剤ペーストAを多孔質セラミック部材30の端面ぎりぎりまで印刷すると、他の多孔質セラミック部材30を積層する工程で、上記接着剤ペーストAが多孔質セラミック部材30の端面にはみ出し、貫通孔を塞いでしまうからである。
【0052】
次に、このようにして作製したセラミック積層体を、例えば、50〜150℃、1時間の条件で加熱して接着剤ペースト層61を乾燥、硬化させ、上記セラミック積層体の端面から1〜10mm程度の深さの溝状の接着剤層非形成部分を有する接着剤層Aとした後、上記セラミック積層体の一部を切削し、上記セラミックブロックを作製するセラミックブロック作製工程を行う。
作製するセラミックブロックの形状は特に限定されるものではないが、通常、円柱形状である。
【0053】
上記セラミック積層体の一部を切削する方法としては特に限定されず、例えば、ダイヤモンドカッター等を用いて、上記セラミック積層体の外周部を切削する方法等を挙げることができる。
【0054】
次に、上記多孔質セラミック部材間の接着剤層非形成部分に、上記接着剤ペーストBを充填する接着剤ペースト充填工程を行う。
【0055】
上記接着剤ペーストBとしては、上記接着剤ペーストAと同様の組成からなるものであってもよいが、無機バインダー、有機バインダー及び無機粒子を含むペーストであることが望ましい。接着剤ペーストBがこのような組成であると、熱伝導率が特に優れたものとなり、製造するセラミック構造体の端面の均熱性を向上させることができ、ヒーター等によるセラミック構造体の再生処理の際、殆どセラミック構造体の端面に温度分布が発生することがなく、セラミック構造体の再生率を向上させることができるからである。
【0056】
ここで、上記無機バインダー、有機バインダー及び無機粒子を含む接着剤ペーストBの熱伝導率が、上記接着剤ペーストAの熱伝導率よりも優れたものとなる理由は、明確ではないが、以下の通りであると考えられる。
上述した通り、通常、接着剤ペーストAの組成は無機バインダー、有機バインダー、無機繊維及び無機粒子からなるペーストであり、接着剤ペーストBの組成との相違点は、無機繊維が含まれているか否かである。
【0057】
このような組成からなる接着剤ペーストAにおいて、上記無機繊維は、上記無機バインダー及び有機バインダーと絡み合って存在し、この絡み合いの効果により、接着剤ペーストAは、その接着強度が優れたものとなり、また、上記無機粒子が上記無機繊維の表面及び内部に介在することで、接着剤ペーストAは、その熱伝導率が比較的良好なものとなる。
【0058】
しかしながら、後述するが、この接着剤ペーストAは、多孔質セラミック部材間の接着剤層非形成部分に流し込むようにして充填するものであるため、充填の際の流動配向により、上記無機繊維は多孔質セラミック部材の側面に平行な方向に配向する。即ち、多孔質セラミック部材間を伝播する熱は、上記無機繊維の配向に垂直な方向に進行するため、配向した無機繊維が熱の進行を妨げるものと考えられる。
一方、上記無機バインダー、有機バインダー及び無機粒子を含む接着剤ペーストBは、上記無機繊維が含まれていないため、多孔質セラミック部材間を熱が極めて良好に伝播し、熱伝導率が特に優れたものとなると考えられる。
【0059】
なお、このような組成の接着剤ペーストBは、その組成中に無機繊維を含まないため、当然に、接着剤ペーストAに比べて多孔質セラミック部材同士を接着する接着力に劣るものとなる。しかしながら、多孔質セラミック部材間において、接着剤ペーストAは、多孔質セラミック部材間の両端部から数mmの僅かな部分に形成されているにすぎず、その他の大部分は、接着剤ペーストAが占めているため、多孔質セラミック部材同士の接着力は上記接着剤ペーストAが充分に確保し、接着強度が低下して製造するセラミック構造体に分解、破損等の問題が生じることはない。
【0060】
上記接着剤ペーストBを多孔質セラミック部材間の接着剤層非形成部分に充填する方法としては特に限定されず、例えば、充填部材を用いて接着剤ペーストBを上記接着剤層非形成部分に押し込むようにして充填する方法や、チューブ等に接着剤ペーストBを保持し、上記チューブの先端を上記接着剤層非形成部分に差し込み、接着剤層非形成部分に沿ってチューブを移動させながら充填する方法等を挙げることができる。
【0061】
また、この接着剤ペースト充填工程において、接着剤層非形成部分に接着剤ペーストBを充填する量は、上記接着剤層非形成部分のセラミックブロックの端面からの深さに合わせて適宜調整されるが、セラミックブロックの端面から充填した接着剤ペーストBの端面までの深さが1mm以下となるように調整する必要がある。セラミックブロックの端面から接着剤ペーストBの端面までの深さが1mmを超えると、製造されるセラミック構造体の移動や運搬の際の振動や衝突、及び、高圧水洗によりセラミック構造体の再生処理を行う際の水圧等により、多孔質セラミック部材の端部に欠けが発生してしまう。
【0062】
また、上記充填した接着剤ペーストBは、セラミックブロックの端面から若干盛り上がっていてもよく、この場合、セラミックブロックの端面から接着剤ペーストBの端面までの高さは、0.5mm以内であることが望ましい。上記高さが0.5mmを超えると、接着剤ペーストBが多孔質セラミック部材の貫通孔の内部にはみ出し、貫通孔が目詰まりとなる場合がある。また、後述するが、多孔質セラミック部材の端面にマスキング材を貼り付けてセラミック構造体を製造する場合、上記マスキング材を剥離することが困難となる。
【0063】
上記充填部材としては特に限定されず、様々な形態のものを挙げることができるが、例えば、図3に示したような、円柱状の芯材22の上下及び左右に板状のハネ部材21が、芯材22の長軸方向に平行に取り付けられた構造のものを挙げることができる。
なお、図3(a)は、上記充填部材の一例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、その正面図である。
【0064】
芯材22としては特に限定されず、例えば、樹脂、金属、セラミック、ゴム等からなるものを挙げることができ、また、その形状も円柱状に特に限定されず、角柱状のものであってもよい。
また、そのサイズも特に限定されず、セラミックブロックの大きさに合わせて適宜調整される。
【0065】
ハネ部材21は弾性体であることが望ましい。後で説明するが、充填部材20を用いて接着剤ペーストBを接着剤層非形成部分に充填する際に、セラミックブロック表面を傷つけないようにするためである。
また、ハネ部材21のサイズは特に限定されず、セラミックブロックの大きさに合わせて適宜調整され、また、その数も4つに限定されず、3つ以下であってもよく、5つ以上であってもよい。
【0066】
上記弾性体としては特に限定されず、例えば、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の合成ゴムやポリイソブチレン、ポリエチレン等のエラストマー、発泡ポリウレタン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等のプラスチック発泡体、その他、天然ゴム、スポンジゴム等を挙げることができる。
【0067】
このような充填部材20を用いて、接着剤層非形成部分に接着剤ペーストBを充填する方法としては、例えば、まず、一または二以上のハネ部材21の主面に接着剤ペーストBを保持させ、この接着剤ペーストBを保持したハネ部材21の長辺部分をセラミックブロックの端面に当接させる。そして、充填部材20を回転させ、セラミックブロックの端面にハネ部材21を擦り付けるようにしながら、ハネ部材21を接着剤層非形成部分に沿って移動させ、セラミックブロックの端面近傍に形成された接着剤層非形成部分に接着剤ペーストBを充填する方法を挙げることができる。
【0068】
ここで、上記セラミック積層体作製工程の前に、予め多孔質セラミック部材の両端面にマスキング材を貼り付けておき、上記接着剤ペースト充填工程において、セラミックブロックの端面に存在する上記マスキング材の上から、接着剤ペーストBを塗布し、接着剤層非形成部分に接着剤ペーストBを充填する方法が望ましい。多孔質セラミック部材の端面に接着剤ペーストBがはみ出した場合、はみ出した接着剤ペーストBが貫通孔を塞ぐことを確実に防止することができるからである。
【0069】
上記マスキング材としては特に限定されず、例えば、基材フィルム上に粘着剤を塗布したものを挙げることができる。
【0070】
上記基材フィルムとしては特に限定されず、例えば、紙、布、樹脂等からなるものを挙げることができるが、耐熱性に優れることから樹脂製の基材フィルムであることが望ましい。このような樹脂製の基材フィルムのなかでは、PETフィルムであることが最も望ましい。耐熱性及び耐久性に特に優れるからである。
【0071】
また、上記粘着剤としては特に限定されず、例えば、ポリイソブチレン、SBR、ブチルゴム、クロロプレンゴム等のゴム系粘着剤、その他、アクリル系粘着剤等を挙げることができる。
【0072】
次に、接着剤層非形成部分に接着剤ペーストBを充填したセラミックブロックの外周部にシール材層を形成するシール材層形成工程を行うことで、本発明のセラミック構造体の製造を終了する。
【0073】
上記シール材層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、回転手段を備えた支持部材を使用し、上記セラミックブロックをその回転軸方向に軸支、回転させ、上記シール材層となるシール材ペーストの塊を、回転しているセラミックブロックの外周部に付着させる。そして、板状部材等を用いてシール材ペーストを引き延ばし、シール材ペースト層を形成し、この後、例えば、120℃以上の温度で乾燥させることにより、水分を蒸発させることで、セラミックブロックの外周部にシール材層を形成する方法を挙げることができる。なお、このシール材ペースト層の乾燥工程において、前工程で接着剤層非形成部分に充填した接着剤ペーストBも同時に乾燥される。
【0074】
上記シール材ペーストとしては特に限定されず、例えば、上記接着剤ペーストAと同様の組成からなるペーストを挙げることができる。
【0075】
以上説明した本発明のセラミック構造体の製造方法の各工程を実施することで、接着剤未充填部分のセラミック構造体の端面からの深さが1mm以下であるセラミック構造体を製造することができる。
即ち、本発明のセラミック構造体の製造方法を用いることにより、移動や運搬の際の振動や衝突、及び、高圧水洗によりセラミック構造体の再生処理を行う際の水圧等により、セラミック構造体を構成する多孔質セラミック部材の端部に強い負荷がかかった場合であっても、上記端部に欠けが発生することがない、耐久性に優れたセラミック構造体を製造することができる。
【0076】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0077】
実施例1
平均粒径10μmのα型炭化珪素粉末70重量部、平均粒径0.7μmのβ型炭化珪素粉末30重量部、メチルセルロース5重量部、分散剤4重量部、水20重量部を配合して均一に混合することにより、原料の混合組成物を調製した。この混合組成物を押出成形機に充填し、押出速度1000mm/minにてハニカム形状の炭化珪素成形体を作製した。この炭化珪素成形体は、図2に示した多孔質セラミック部材30とほぼ同様であり、その大きさは33mm×33mm×300mmで、貫通孔の数が31/cm2 で、隔壁の厚さが0.35mmであった。
【0078】
この炭化珪素成形体をマイクロ波や熱風による乾燥機を用いて乾燥させ、炭化珪素成形体乾燥体とし、この乾燥体に、上記混合組成物と同成分の充填剤ペーストを用いて、炭化珪素焼結体の貫通孔の所定箇所に充填剤を充填した後、450℃で脱脂し、さらに、2200℃で加熱焼成することで多孔質炭化珪素部材を製造した。
【0079】
次に、上記多孔質炭化珪素部材の両端面に、粘着剤として熱硬化性ゴム系粘着剤を塗布したPETフィルムからなるマスキング材(日東電工社製:No.315)を貼り付けた。
【0080】
次に、無機バインダーとしてシリカゾル(ゾル中のSiO2 の含有量:30重量%)18重量%、有機バインダーとしてカルボキシメチルセルロース4重量%、無機繊維としてシリカ−アルミナセラミックファイバー(ショット含有率3%、繊維長0.1〜100mm)36重量%、無機粒子として炭化珪素粒子24重量%、及び、水18重量%を混合、混練して接着剤ペーストを調製した。
【0081】
次に、製造した多孔質炭化珪素部材の側面に、端面から5mmの接着剤ペースト非形成部分を残して上記接着剤ペーストを塗布して接着剤層を形成し、この接着剤層の上に他の多孔質炭化珪素部材を積層した後、接着層の形成から多孔質炭化珪素部材の積層までの工程を繰り返して、縦4個、横4個の多孔質炭化珪素部材を組み上げた後、100℃、1時間で乾燥、硬化させ、セラミック積層体を作製した。
【0082】
そして、この作製したセラミック積層体をダイヤモンドカッターを用いて、直径143mmの円柱状に切削してセラミックブロックを作製した。
なお、このセラミックブロックの端面近傍に形成された接着剤層非形成部分の最大深さは、5mmであった。
【0083】
次に、上記セラミックブロックの端面に存在するマスキング材の上から上記接着剤層非形成部分に、図3に示した充填部材を用いて上記接着剤ペーストを充填した。
【0084】
そして、上記セラミックブロックの外周部に上記接着層と同じ組成からなるシール材ペースト層を形成し、上記シール材ペースト層の乾燥を行いシール材層とした後上記マスキング材を剥離することで、多孔質炭化珪素からなるセラミック構造体を製造した。
本実施例1に係るセラミック構造体の端面の接着剤未充填部分の最大深さは、1mmであった。
【0085】
実施例2
接着剤層非形成部分に、無機バインダーとしてシリカゾル(ゾル中のSiO2 の含有量:30重量%)25重量%、有機バインダーとしてカルボキシメチルセルロース5重量%、無機粒子として炭化珪素粒子45重量%、及び、水25重量%を混合、混練して調製した接着剤ペーストBを用いたほかは、実施例1と同様にしてセラミック構造体を製造した。
本実施例2に係るセラミック構造体の端面の接着剤未充填部分の最大深さは、1mmであった。
【0086】
比較例1
多孔質炭化珪素部材の端面にマスキング材を貼り付けず、この多孔質炭化珪素部材を組み上げる際に、接着剤ペーストを多孔質炭化珪素部材の略端面にまで塗布し、接着剤ペースト層を形成したほかは、実施例1と同様にして多孔質炭化珪素からなるセラミック構造体を製造した。
なお、比較例1に係るセラミック構造体の端面の接着剤未充填部分の最大深さは、2mmであった。
【0087】
比較例2
接着剤ペースト充填工程を行わなかったほかは、実施例1と同様にしてセラミック構造体を製造した。
なお、比較例2に係るセラミック構造体の端面の接着剤未充填部分の最大深さは、5mmであった。
【0088】
実施例1、2及び比較例1、2に係るセラミック構造体の端面に存在する貫通孔の目詰まりの有無、欠けの発生の有無、耐久性、及び、端面の均熱性について以下の方法により評価し、その結果を下記表1に示した。
【0089】
(1)目詰まりの有無
製造した各セラミック構造体の端面に存在する貫通孔に、目詰まりが発生しているか否かについて目視により確認した。
【0090】
(2)欠けの発生の有無
製造した各セラミック構造体の移動や運搬の際の振動や衝突で、セラミック構造体を構成する多孔質炭化珪素部材の端部の角部に欠けが発生しているか否かを目視により確認した。
【0091】
(3)耐久性の評価
製造した各セラミック構造体に、セラミック構造体の再生処理時に行う高圧水洗と同様の10MPaの水圧で水洗処理を施すことにより、各セラミック構造体を構成する多孔質炭化珪素部材の端部に欠けが発生するか否かを目視により確認した。
【0092】
(4)端面の均熱性の評価
製造した各セラミック構造体の端面をヒーターを用いて900℃まで加熱し、その端面における最高温度と最低温度とをサーモビュアにより測定し、温度分布が発生するか否かを確認した。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1及び2に係るセラミック構造体は、その端面に存在する貫通孔に目詰まりが発生することはなく、また、上記セラミック構造体を移動や運搬の際の振動や衝突、及び、高圧水洗処理時の水圧によって、多孔質炭化珪素部材に欠けが発生することのない耐久性に優れたものであった。
一方、比較例1に係るセラミック構造体は、該セラミック構造体を移動や運搬の際の振動や衝突、及び、高圧水洗処理時の水圧によって、多孔質炭化珪素部材に欠けが発生しない耐久性に優れたのものあったが、貫通孔に目詰まりが発生していたため、フィルタとしてのパティキュレートの捕集効率に劣るものであった。また、比較例2に係るセラミック構造体は、貫通孔に目詰まりは確認されることはなかったが、上記セラミック構造体を移動や運搬の際の振動や衝突、及び、高圧水洗処理時の水圧によって、多孔質炭化珪素部材に欠けが発生し、耐久性に劣るものであった。
【0095】
また、表1に示した通り、各セラミック構造体の端面を900℃まで加熱し、その端面における最高温度と最低温度との温度差を測定した結果、実施例2に係るセラミック構造体の端面における温度差は、25℃であり略均一に加熱されていたが、実施例1及び比較例1に係るセラミック構造体の端面における温度差は、50〜70℃であり、若干の温度分布が確認された。また、比較例2に係るセラミック構造体の端面における最高温度と最低温度との温度差は、100℃であり、はっきりと温度分布が確認された。
【0096】
【発明の効果】
以上、説明した通り、本発明のセラミック構造体は、接着剤未充填部分の上記セラミック構造体の端面からの深さは、1mm以下であるので、上記接着剤層は多孔質セラミック部材の端部を補強する効果を呈し、上記多孔質セラミック部材の端部に強い負荷がかかった場合であっても、上記端部に欠けが発生することのない、耐久性に優れたものとなる。
【0097】
また、本発明のセラミック構造体の製造方法は、上述した通りであるので、接着剤未充填部分のセラミック構造体の端面からの深さが1mm以下であるセラミック構造体を製造することができる。
即ち、本発明のセラミック構造体の製造方法を用いることにより、セラミック構造体を構成する多孔質セラミック部材の端部に強い負荷がかかった場合であっても、上記端部に欠けが発生することがない、耐久性に優れたセラミック構造体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】セラミック構造体の一実施形態を模式的に示した斜視図である。
【図2】(a)は、セラミック構造体を構成する多孔質セラミック部材を模式的に示した斜視図であり、(b)は、その接着剤未充填部分−接着剤未充填部分線断面図である。
【図3】(a)は、接着剤層非形成部分に接着剤ペーストを充填する際に使用する充填部材の一例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、その正面図である。
【図4】(a)は、従来のセラミック構造体の端面近傍を模式的に示した部分拡大断面図であり、(b)は、本発明のセラミック構造体の端面近傍を模式的に示した部分拡大断面図であ。
【図5】セラミック積層体を作製する様子を示した説明図である。
【符号の説明】
10 セラミック構造体
13 シール材層
14 接着剤層
15 セラミックブロック
16 接着剤未充填部分
20 充填部材
21 ハネ部
22 芯材
30 多孔質セラミック部材
31 貫通孔
32 充填材
33 隔壁
60 台
61 接着剤層
Claims (5)
- 多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された多孔質セラミック部材が接着剤層を介して複数個結束され、前記貫通孔を隔てる隔壁が粒子捕集用フィルタとして機能するように構成されたセラミック構造体であって、
前記多孔質セラミック部材間の前記接着剤層が形成されていない部分の前記セラミック構造体の端面からの深さは、1mm以下であることを特徴とするセラミック構造体。 - 接着剤層は、接着剤層Aと前記接着剤層Aの外側に形成された接着剤層Bとから構成され、前記接着剤層Bは、無機バインダー、有機バインダー及び無機粒子を含んでいる請求項1記載のセラミック構造体。
- 多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された多孔質セラミック部材が接着剤層を介して複数個結束され、前記貫通孔を隔てる隔壁が粒子捕集用フィルタとして機能するように構成されたセラミック構造体の製造方法であって、
前記多孔質セラミック部材の側面に、接着剤ペーストAを塗布し、前記接着剤ペーストAの上に他の多孔質セラミック部材を積層する工程を繰り返して、セラミック積層体を組み上げるセラミック積層体作製工程と、
前記セラミック積層体の一部を切削し、セラミックブロックを作製するセラミックブロック作製工程と、
前記多孔質セラミック部材間の接着剤層非形成部分に、接着剤が充填されていない接着剤未充填部分のセラミック構造体の端面からの深さが1mm以下となるように接着剤ペーストBを充填する接着剤ペースト充填工程と、
前記セラミックブロックの外周部にシール材層を形成するシール材層形成工程とを含むことを特徴とするセラミック構造体の製造方法。 - セラミック積層体作製工程の前に、予め多孔質セラミック部材の両端面にマスキング材を貼り付けておき、接着剤ペースト充填工程において、セラミックブロックの端面に存在する前記マスキング材の上から、接着剤ペーストBを塗布する請求項3記載のセラミック構造体の製造方法。
- 接着剤ペースト充填工程において、無機バインダー、有機バインダー及び無機粒子を含む接着剤ペーストBを用いる請求項3又は4記載のセラミック構造体の製造方法。
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