JP3804579B2 - 恒星センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工衛星に搭載され、恒星からの光に基づき、該人工衛星の姿勢制御に用いられる恒星の画像を生成する恒星センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
周知の通り、恒星センサは、人工衛星に搭載され、その三軸姿勢安定制御を行う上で必要な恒星の位置情報を取得するために用いられる。恒星センサは、その基本構成として、外部光源の光を集光する光学レンズ系と、この光学レンズ系から光を受光して画像を生成する二次元撮像素子とを有しており、恒星等の星の光を撮像素子に結像させて、画像を生成することが可能である。この画像からは恒星の位置情報が取得され、この位置情報に基づき、人工衛星の姿勢が制御される。
【0003】
ところで、恒星センサにおいては、測定対象とする恒星以外の光源からの光がセンサに入射し、測定データにノイズをもたらすことがある。これを抑制するために、従来では、筒状に形成され、光学レンズ系の前方側に配置されて、不要な光を遮る遮光部材(所謂バッフル)を設けることが知られている。かかる遮光部材は、例えば特開平5−213286号公報や特開平10−132556号公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる構成では、特に暗い恒星(例えば5等星)を測定対象とする場合、例えば5等星の5×1012倍の明るさを有する太陽光等の、明るい光源からのノイズ光を十分に抑制するには、遮光部材を前方側に延長するように大型化せざるを得ず、それにより、遮光部材の長さおよび体積が恒星センサの大部分を占めることになっていた。人工衛星に搭載される機器は小型であればあるほど望ましいが、恒星センサに関しては、従来、上記のような理由から小型化が困難であった。
【0005】
本発明は、上記のような従来のものの問題点を解決するためになされたものであり、不要な光に対する遮光性能を確保しつつ小型である恒星センサを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る恒星センサは、その前方側より入射される外部光源の光を集光する光学レンズ系と、上記光学レンズ系の前方側で該光学レンズ系の光軸を取り囲む壁部を有し、その前方側で開口する遮光部材と、上記光学レンズ系からの光を受光して画像を生成する撮像素子とを備え、人工衛星に搭載され、恒星からの光に基づき、該人工衛星の姿勢制御に用いられる恒星の画像を生成する恒星センサにおいて、上記光学レンズ系には、その光軸方向に対して所定α以上の角度でその前方側より入射する光を、後方側の内面にて全反射する集光レンズが設けられており、上記遮光部材の前方側開口部は、上記光学レンズ系の光軸方向に対して所定θ1(α<θ1)以上の角度で入射する光が上記遮光部材の内壁に直接入射されるように形成されており、かつ、上記遮光部材の壁部は上記光学レンズ系の光軸方向に対してαよりも大きい角度範囲に配置されているものである。
【0007】
また、本発明に係る恒星センサは、その前方側より入射される外部光源の光を集光する光学レンズ系と、上記光学レンズ系の前方側で該光学レンズ系の光軸を取り囲む壁部を有し、その前方側で開口する遮光部材と、上記光学レンズ系からの光を受光して画像を生成する撮像素子とを備え、人工衛星に搭載され、恒星からの光に基づき、該人工衛星の姿勢制御に用いられる恒星の画像を生成する恒星センサにおいて、上記光学レンズ系には、その光軸方向に対して所定α以上の角度でその前方側より入射する光を、後方側の内面にて全反射する集光レンズが設けられており、上記遮光部材は互いに隣接する前方側遮光部材および後方側遮光部材の複数段式の構造を有し、上記前方側遮光部材の前方側開口部は、上記光学レンズ系の光軸方向に対して所定θ2以上の角度でその前方側より入射する光が上記前方側または後方側遮光部材の内壁に直接入射されるように形成されており、かつ、上記前方側遮光部材は、上記光学レンズ系の光軸および方向に対して所定θ3(θ2<θ3)以上の角度でその前方側より入射する光を、その内壁面における所定回数内での反射によって、その前方側から遮光部材外部へ逃がす形状を有しており、上記後方側遮光部材の壁部は上記光学レンズ系の光軸方向に対してα(α>θ2)よりも大きい角度範囲に配置されているものである。
【0008】
さらに、上記集光レンズがほぼ半球形状を備えているものである。
【0009】
さらに、上記遮光部材の内壁面は、それが所定以上の光吸収率および正反射方向への光反射率をもつべく、光沢を有し暗色を帯びるように表面処理されているものである。
【0010】
さらに、上記集光レンズの後方側には、上記光学レンズ系の光軸を取り囲む壁部を備えた光減衰部材が設けられているものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、恒星センサにおける各構成の位置関係を記述する上で、外部光源に対して近い側を「前方側」といい、遠い側を「後方側」という。
【0012】
実施の形態1.
図1および図2は本発明の実施の形態1による恒星センサの要部を示す断面説明図である。恒星センサは、人工衛星に搭載され、恒星からの光に基づき、該人工衛星の姿勢制御に用いられる恒星の画像を生成するものであり、その基本構成として、その前方側より入射される外部光源の光を集光する光学レンズ系1と、該光学レンズ系1からの光を受光して画像を生成するCCD等の撮像素子4と、光学レンズ系1の前方側で該光学レンズ系1の光軸を取り囲む壁部50aを備え、その前方側で開口する遮光部材(以下、バッフルと言うこともある。)50とを有している。
【0013】
光学レンズ系1は、その最も前方側に配置され、その光軸S方向に対して所定α以上の角度でその前方側より入射する光を、後方側の内面にて全反射する集光レンズ2と、撮像素子4の前方側に配置され、同じ光軸Sを有する複数のレンズからなる結像レンズ系3とから構成されている。また、これら集光レンズ2および結像レンズ系3は、それらが共に同じ光軸Sを有するように位置決めされている。
【0014】
これら集光レンズ2と結像レンズ系3との間には、孔部5aと該孔部5aの周辺をなす平面部5bとを備えたアパーチャ部材5が設けられている。アパーチャ部材5は、集光レンズ2の後方側に隣接しつつ、その孔部5aの中心が光軸S上に位置するように配置され、集光レンズ2の後方側から出射する光を通過させる。
【0015】
この実施の形態1では、集光レンズ2が、例えば合成石英等のガラス材料から形成され、アパーチャ部材5に対向する後方側で平面をなしたほぼ半球形状を有している。集光レンズ2では、その光軸Sの方向に対して所定α以上の角度で入射された光が、後方側の内面で全反射される。すなわち、集光レンズ2では、光軸Sの方向に対して所定以下の角度で入射される光のみを、その後方側から出射可能とすることで、測定対象とする光源以外からの不要な光(例えば太陽光)を遮光するようになっている。
【0016】
以下、図3を基に集光レンズ2の作用について詳細に説明する。図3(a)および(b)は、それぞれ、集光レンズ2の光軸Sの方向に対して所定α以上の角度で入射する光線、および、集光レンズ2の光軸Sの方向に対して所定α未満の角度で入射する光線をあらわしている。ここで、集光レンズ2の前方面での光軸Sの方向に対する光線の入射角度をθ1 0とする。また、集光レンズ2の後方面の中心を点Pとする。集光レンズ2に入射した光線は、その集光レンズ2内に透過する。この光線は、点Pに向かうように、集光レンズ2の前方面に対して垂直に入射し、集光レンズ2内に透過する場合にも角度を変えない。そして、この実施の形態1では、集光レンズ2の後方面が平面をなしているため、集光レンズ2の後方側の内面における光線の入射角度θ20は、その前方側での光軸Sの方向に対する入射角度θ1 0と等しくなる(θ1 0=θ20)。なお、入射角度θ20は、より詳しくは、集光レンズ2の後方面に垂直である方向(すなわち光軸Sの方向)に対する光線の入射角度である。
【0017】
集光レンズ2のガラス材料として、例えば合成石英を用いた場合について考察する。合成石英の屈折率はn=1.46であり、全反射の臨界角αは、α=Arcsin(1/n)=43.3°である。つまり、集光レンズ2内で、後方側の内面に、43.3°以上の入射角で入射する光線は全反射される。その結果、図3(a)に示されるように、θ20>α(すなわちθ10>α)となる光線は、集光レンズ2の後方側から出射されず、アパーチャ部材5の孔部5aを通過することができない。これにより、恒星センサの視野角の範囲外の角度で入射する太陽光などの測定対象以外の光源からの光線を、遮光することができる。
【0018】
他方、集光レンズ2の前方面での光軸Sの方向に対する光線の入射角度θ10が全反射臨界角α未満である場合、図3(b)に示されるように、光線は、集光レンズ2の後方側から出射され、アパーチャ部材5の孔部5aを通過することができる。これにより、恒星センサの視野角の範囲内の角度で入射する恒星の光などの測定対象の光源からの光線を、集光レンズ2の後方側から出射させ、更に、結像レンズ系3へ入射させることができる。
【0019】
なお、上記図3では、集光レンズ2が半球形状を備えている場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば図4(a)〜(c)に示されるような形状であってもよく、要するにほぼ半球形状であればよい。図4(a)に示す集光レンズ2は、球の一片のような形状を有し、また、図4(b)に示す集光レンズ2は、釣鐘形状を有し、更に、図4(c)に示す集光レンズ2は、半球の両側の一部が切り欠かれてなるような形状を有している。かかる形状を備えた集光レンズを用いた場合にも、所定以下の角度で入射された光線のみを後方側から出射させることができる。この実施の形態1では、図4(a)に示した球の一片のような形状を有する集光レンズ2を用いており、ガラス材料として合成石英を用い、半径が30mm、中心厚が20mmである場合の全反射の臨界角αは、50°である。
【0020】
バッフル50は、ほぼラッパ状に形成されるものであり、光学レンズ系1の前方側にその光軸Sを取り囲む壁部50aを備え、その前方側で開口する。50bは前方側開口部である。また、バッフル50の内壁は黒塗りされている。この恒星センサでは、バッフル50による不要光の減衰および集光レンズ2による遮光からなる2段階の作用により、太陽光などの比較的明るい光源からの光を十分に減衰させることができる。
なお、この実施の形態1では、図1および図2に示すように、バッフル50の内壁面は、その傾斜が2段階になるように形成されている。
【0021】
集光レンズ2に直接に太陽光が入射されると、レンズ表面若しくはレンズ内部でのわずかな散乱光が恒星の画像に対するノイズとなることがある。これを防止すべく、図1に示すように、バッフル50の前方側開口部50bが、光軸Sの方向に対して所定θ1(α<θ1)以上の角度で入射する光が、バッフル50の内壁50aに直接入射するように、すなわち、集光レンズ2に直接入射できないように形成されている。この実施の形態1では、太陽光の除去範囲の仕様を、例えば60°以上に設定される。つまり、集光レンズ2の光軸Sに対する光線の角度が60°(=θ1)以上である場合に、集光レンズ2に直接入射できないように、前方側開口部50bの開口径および光軸Sに沿った方向における位置(バッフル長)が設定されている。
更に、バッフル50の内壁は黒塗りされているため、太陽光の大部分(好ましくは95%以上)の光量は吸収される。
【0022】
バッフル長Lbaffleとバッフル前面開口の半径Rbaffleの関係は、半径Rlensの半球レンズの場合には、下式(1)のような不等式で表される。
Lbaffle>Rbaffle/tanθ1+Rlens/tanθ1 (1)
仮に、Rlens=30mm、θ1=60°とすると、
Lbaffle>0.577・Rbaffle+17.3 (2)
である。
なお、上記関係式(1)は集光レンズ2が半球形状の場合にのみ成立するものであるが、例えば図4(a)〜(c)に示したような他の形状の場合にも同様な考えにより集光レンズ2に太陽光が直射しないようにバッフル50の前方側開口部50aを形成することができる。
【0023】
上記のように、バッフル50の前方側開口部50bが、光軸Sの方向に対して所定θ1(=60°)以上の角度で入射する光線が、バッフル50の内壁50aに直接入射するように、すなわち、集光レンズ2に直接入射できないように形成されている。しかしながら、例えば図2に示すように、バッフル50の前方側50bを規定する縁部(エッジ)に当たると、種々の角度の散乱光が少なからず生じる。
この実施の形態1では、これに対処すべく、図2に示すように、バッフル50の壁部50aは、光学レンズ系1の光軸S方向に対して集光レンズ2の全反射の臨界角であるαよりも大きい角度範囲に配置されている。なお、図2に示した球の一片のような形状を有する集光レンズ2の全反射の臨界角αは、上述したように、集光レンズ2のガラス材料として合成石英を用いた場合には、50°である。
【0024】
このように、この実施の形態1では、バッフル50の壁部50a(前方側開口部50bの縁部)は光学レンズ系1の光軸S方向に対して集光レンズ2の全反射の臨界角であるα(=50°)よりも大きい角度範囲に配置されているので、上記のようにエッジで散乱し集光レンズ2にその前方側から入射するほぼ全ての光の入射角はα(=50°)以上となり、後方側の内面で全反射される。
なお、図2ではバッフル50の前方側開口部50bのエッジでの散乱光について示しているが、エッジに限らずバッフル50の内壁面での散乱光についても同様のことが言える。
【0025】
上記のように、バッフル50の壁部50aは光学レンズ系1の光軸S方向に対して集光レンズ2の全反射の臨界角であるαよりも大きい角度範囲に配置されているので、エッジなどで散乱し集光レンズ2にその前方側から入射するほぼ全ての光の入射角はα(=50°)以上となり、後方側の内面で全反射される。しかし、例えばエッジでの散乱光のうち、図2において集光レンズ2の後方面の中心点Pよりも左側へ入射する光線の入射角は50°よりも小さい場合もあり、この光線は集光レンズ2後方側の内面で全反射されずにアパーチャ部材5を通過してしまう場合も考えられる。
【0026】
そこで、この実施の形態1では、アパーチャ部材5(以下、第1のアパーチャ部材という)に対向して、所定径の孔部45aを備えた第2のアパーチャ部材45が、結像レンズ系3の前方側に設けられている。また、第1のアパーチャ部材5と第2のアパーチャ部材45との間には、光学レンズ系1の光軸Sを取り囲む壁部47aを備えた光減衰部材(以下、ダンパー部材と言うこともある。)47が設けられている。この光減衰部材47は、その内壁が黒塗りされるもので、第1のアパーチャ部材5を通過した後に散乱する光を吸収減衰させる。
【0027】
この構成によれば、集光レンズ2の内部で全反射されない光線、すなわち、上述のような、αよりも小さい入射角度で集光レンズ2の後方側の内面に入射した光線についても、ある角度βよりも大きな入射角度であれば、光減衰部材47でその光線を吸収減衰させることが可能である。
この理由について、図5を基に説明する。
【0028】
図5(a)で示したように、集光レンズ2の前方側に入射する角度θ10と集光レンズ2の後方側の内面に入射する角度θ20とは、集光レンズ2が半球形状である場合にはθ10=θ20となる。集光レンズ2の後方面からの出射角θ30は、
sinθ30=n・sinθ20
から求まる。その入射角θ20と出射角θ30との関係をグラフにすると、集光レンズ2のガラス材料として合成石英(n=1.46)を使用した場合には、図6のようになる。すなわち、出射角θ30>入射角θ20であるので、θ10(≒θ20)が大きいほど、第2のアパーチャ部材45の外側へ光線が出射され、その光線を蹴ることができる。ここで、第2のアパーチャ部材45で光線を完全に蹴ることができる最小の集光レンズ2の前方面への入射角をβとする。第2のアパーチャ部材45で蹴られた光線は、ダンパー部材47の内壁にて吸収減衰される。このダンパー部材47の内壁は黒塗りされるので、光線は効率良く吸収減衰させることができる。なお、上記角度βは、第2のアパーチャ部材45の孔部45aの径、ダンパー部材47の光学レンズ系1の光軸S方向の長さなどを調整することにより、所望の値とすることができる。
【0029】
以上のように、この実施の形態1では、不要光線(太陽光などの測定対象以外の光源からの光線)をバッフル50によって減衰させ、バッフル50で減衰しきれなかった不要光線を集光レンズ2での全反射によって遮光させ、さらに、集光レンズ2で全反射しきれなかった不要光線をダンパー部材47によって吸収減衰させることが可能であるため、バッフル50を大型化することなく、小型で、角度θ1以上で入射する不要光線を全て遮光することが可能な恒星センサを得ることができる。
【0030】
なお、第2のアパーチャ部材45および光減衰部材47は必ずしも無くてもよく、その場合にも、集光レンズ2による遮光作用と共にバッフル50による十分な遮光性能を実現しつつ、バッフル50自体のサイズを従来のタイプに比べてより小型化することができる。したがって、小型で、角度θ1以上で入射する不要光に対する遮光性能に優れた恒星センサを得ることができる。
【0031】
実施の形態2.
図7〜図10は本発明の実施の形態2による恒星センサの要部を示す断面説明図であり、図7〜図9はそれぞれ光学レンズ系の光軸方向に対して50°、60°および70°の角度でその前方側より入射した光の前方側バッフルでの反射の様子を示し、図10は前方側バッフルと後方側バッフルとを連通する連通開口部を規定する縁部で生じた散乱光の様子を示している。
図7〜図10において、上記実施の形態1で説明したのと同様のものには同一符号を付しており、その説明を省略する。
【0032】
上記実施の形態1では、集光レンズ2の全反射の臨界角αが例えば50°であり、測定対象とする光源以外からの不要な光(太陽光など)の除去角(θ1)の仕様が例えば60°以上と除去角の仕様の方が大きかった。これに対して、この実施の形態2では、測定対象とする光源以外からの不要な光(太陽光など)の除去角(θ2)の仕様が例えば35°以上であり、集光レンズ2の全反射の臨界角α(50°)の方が大きい。
【0033】
以下では、主に、上記実施の形態1と異なる点について説明する。
この実施の形態2では、光学レンズ系1の前方側で光学レンズ系1の光軸Sを取り囲む壁部を備え、その前方側で開口するバッフルは、互いに隣接する前方側バッフル52および後方側バッフル51からなる2段式の構造を備えるもので、全体としてほぼラッパ状に形成され、光学レンズ系1の光軸Sを取り囲むように配置されている。52bは前方側バッフル52の前方側に形成された前方側開口部であり、51bは前方側バッフル52と後方側バッフル51とを連通する連通開口部である。
なお、この実施の形態2では、図7〜図10に示すように、前方側バッフル52および後方側バッフル51の内壁面は、それぞれその傾斜が2段階になるように形成されている。
【0034】
集光レンズ2に直接に太陽光が入射されると、レンズ表面若しくはレンズ内部でのわずかな散乱光が恒星の画像に対するノイズとなることがある。これを防止すべく、前方側バッフル52に形成された前方側開口部52bの開口径および光軸Sに沿った方向における位置は、光軸Sの方向に対して所定θ2以上の角度でその前方側より入射する光が、前方側バッフル52または後方側バッフル51の内壁に直接入射(最初に入射)されるように、すなわち、集光レンズ2に対して直接に入射できないように設定されている。この実施の形態2では、太陽光の除去範囲の仕様を、例えば35°以上に設定される。つまり、集光レンズ2の光軸Sに対する入射光線の角度が35°(=θ2)以上である場合に、集光レンズ2に直接入射できないように、前方側バッフル52の前方側開口部52bが形成されている。
【0035】
さらに、前方側バッフル52の内壁面および後方側バッフル51の内壁面は、それぞれが所定以上の光吸収率および正反射方向への光反射率をもつべく、光沢を有し暗色を帯びるように表面処理されるものであり、この実施の形態2では、それらの内壁面に光沢の有る黒色塗料が塗布されている。このような黒色塗料としては、例えば、ロード社Aeroglaze Z302を用いることができる。なお、前方側バッフル52の内壁面および後方側バッフル51の内壁面における光吸収率は90%以上であるのが望ましく、正反射方向への反射を含まない光反射率が4%以下となるのが望ましい。
【0036】
続いて、光沢の有る黒色塗料が塗布されたバッフル51、52の内壁面についての特性(光吸収性および光反射率)に関して、光沢のない黒色塗料のみが塗布されたバッフル92の内壁面についての特性と比較しながら検討する。図11(a)および(b)は、それぞれ、光沢のない黒色塗料および光沢の有る黒色塗料が塗布されたバッフルの内壁面に光が入射した様子を示す説明図である。
【0037】
図11(a)から分かるように、光沢のない黒色塗料のみが塗布されたバッフル92の内壁面に入射した光は、その内壁面で反射されると、各方向に散乱する傾向にある。他方、図3(b)から分かるように、光沢の有る黒色塗料が塗布された後方側および前方側バッフル51、52の内壁面に入射した光は、その内壁面で反射される場合に、正反射方向に反射される傾向にある。
このように、光沢の有る黒色塗料が塗布されたバッフル51、52の内壁面で反射光の散乱成分が少ないことから、予期しない散乱光の光学レンズ系1への入射を抑制することができ、不要な光に対する優れた遮光性が得られる。
【0038】
なお、上記実施の形態1においても、バッフル50の内壁面に光沢の有る黒色塗料を塗布してもよい。
【0039】
また、この実施の形態2では、前方側バッフル52は、光学レンズ系1の光軸Sの方向に対して所定θ3(θ2<θ3)以上の角度でその前方側より入射する光を、その内壁面における所定回数内での反射によって、その前方側からバッフル外部へ逃がす形状を有している。一例として、図7〜図9に、θ3=50°である場合に、光学レンズ系1の光軸Sの方向に対して50°、60°、および70°の角度でその前方側より入射した光の前方側バッフル52での反射の様子を示す。図7〜図9より、光学レンズ系1の光軸Sの方向に対して50°、60°、および70°の角度でその前方側より入射したそれぞれの光を、1〜3回の反射によって、その前方側から前方側バッフル52外部へ逃がしていることが分かる。このような機能を有する前方側バッフル52の形状(内壁面の傾斜角度や前方側開口部52bの大きさなど)は、例えばコンピュータによる光追跡シミュレーションにより反射方向を計算し、最適化することにより求められる。
【0040】
上記のように、前方側バッフル52は、光学レンズ系1の光軸Sの方向に対して所定θ3(例えば50°)以上の角度でその前方側より入射する光を、その内壁面における所定回数内での反射によって、その前方側からバッフル外部へ逃がす形状を有しており、さらに、前方側バッフル52の前方側開口部52bが、光軸Sの方向に対して所定θ2(例えば35°)以上の角度で入射する光線が、バッフル50の内壁に直接入射するように、すなわち、集光レンズ2に直接入射できないように形成されている。しかしながら、たとえバッフル51、52の内壁面を光沢の有る黒色塗料を塗布して表面処理していても、例えば図10に示すように、前方側バッフル52と後方側バッフル51とを連通する連通開口部51bを規定する縁部(エッジ)に当たると、種々の角度の散乱光が生じることがある。
【0041】
この実施の形態2では、これに対処すべく、後方側バッフル51の壁部51a(連通開口部51bを規定する縁部も含まれる。)は光学レンズ系1の光軸S方向に対して集光レンズ2の全反射の臨界角であるα(α>θ2)よりも大きい角度範囲に配置されている。なお、図7〜図10に示した球の一片のような形状を有する集光レンズ2の全反射の臨界角αは、実施の形態1で述べたように、集光レンズ2のガラス材料として例えば合成石英を用いた場合には、50°である。また、θ2(測定対象とする光源以外からの不要な光の除去角)の仕様は、例えば35°である。
【0042】
このように、この実施の形態2では、後方側バッフル51の壁部51a(連通開口部51bを規定する縁部を含む。)は光学レンズ系1の光軸S方向に対して集光レンズ2の全反射の臨界角であるα(=50°)よりも大きい角度範囲に配置されているので、上記のように縁部(エッジ)で散乱し集光レンズ2にその前方側から入射するほぼ全ての光の入射角は、α(=50°)以上となり、後方側の内面で全反射される。
なお、図10では連通開口部51bを規定するエッジでの散乱光について示しているが、エッジに限らず後方側バッフル51の内壁面での散乱光についても同様のことが言える。
【0043】
上記のように、後方側バッフル51の壁部51a(連通開口部51bを規定する縁部を含む。)は光学レンズ系1の光軸S方向に対して集光レンズ2の全反射の臨界角であるαよりも大きい角度範囲に配置されているので、エッジなどで散乱し集光レンズ2にその前方側から入射するほぼ全ての光の入射角はα(=50°)以上となり、後方側の内面で全反射される。しかし、例えばエッジでの散乱光のうち図10において集光レンズ2の後方面の中心点Pよりも左側へ入射する光線の入射角は50°よりも小さい場合もあり、この光線は集光レンズ2後方側の内面で全反射されずに第1のアパーチャ部材5を通過してしまう場合も考えられる。
【0044】
そこで、この実施の形態2では、上記実施の形態1の場合と同様に、第1のアパーチャ部材5に対向して、所定径の孔部45aを備えた第2のアパーチャ部材45が、結像レンズ系3の前方側に設けられている。また、第1のアパーチャ部材5と第2のアパーチャ部材45との間には、光学レンズ系1の光軸Sを取り囲む壁部47aを備えた光減衰部材47が設けられている。この光減衰部材47は、その内壁が黒塗りされるもので、第1のアパーチャ部材5を通過した後に散乱する光を吸収減衰させる。
【0045】
この構成によれば、集光レンズ2の内部で全反射されない光線、すなわち、上述のような、αよりも小さい入射角度で集光レンズ2の後方側の内面に入射した光線についても、光減衰部材47でその光線を吸収減衰させることが可能である。
この理由は、上記実施の形態1で述べた通りである。
【0046】
以上のように、この実施の形態2では、不要光線(太陽光などの測定対象以外の光源からの光線)をバッフル51、52によって減衰させ、バッフル51、52で減衰しきれなかった不要光線を集光レンズ2での全反射によって遮光させ、さらに、集光レンズ2で全反射しきれなかった光線をダンパー部材47によって吸収減衰させることが可能であるため、バッフル51、52を大型化することなく、小型で、角度θ2以上で入射する不要光線を全て遮光することが可能な恒星センサを得ることができる。
【0047】
なお、第2のアパーチャ部材45および光減衰部材47は必ずしも無くてもよく、その場合にも、集光レンズ2による遮光作用と共にバッフル51、52による十分な遮光性能を実現しつつ、バッフル51、52自体のサイズを従来のタイプに比べてより小型化することができる。したがって、小型で、角度θ2以上で入射する不要光に対する遮光性能に優れた恒星センサを得ることができる。
【0048】
さらに、バッフルを互いに隣接する前方側バッフル52および後方側バッフル51の複数段式としているので、集光レンズ2を使う場合のバッフルの設計方針が明確になり、集光レンズ2の全反射遮光効果をより有効に利用できる遮光設計が容易となる。
また、前方側バッフルの前方側開口部52bは、光学レンズ系1の光軸Sの方向に対して所定θ2以上の角度でその前方側より入射する光が、前方側または後方側バッフル52または51の内壁に直接入射され、集光レンズ2に直接入射できないように形成されており、かつ、前方側バッフル52は、光学レンズ系1の光軸Sの方向に対して所定θ3(θ2<θ3)以上の角度でその前方側より入射する光を、その内壁面における所定回数内での反射によって、その前方側からバッフル外部へ逃がす形状を有しており、しかも、後方側バッフル51の壁部51aは光学レンズ系1の光軸Sの方向に対してα(α>θ2)よりも大きい角度範囲に配置されているので、大型化することなく、角度θ2以上で入射する不要光に対する遮光性能に優れた恒星センサを得ることができる。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、その前方側より入射される外部光源の光を集光する光学レンズ系と、上記光学レンズ系の前方側で該光学レンズ系の光軸を取り囲む壁部を有し、その前方側で開口する遮光部材と、上記光学レンズ系からの光を受光して画像を生成する撮像素子とを備え、人工衛星に搭載され、恒星からの光に基づき、該人工衛星の姿勢制御に用いられる恒星の画像を生成する恒星センサにおいて、上記光学レンズ系には、その光軸方向に対して所定α以上の角度でその前方側より入射する光を、後方側の内面にて全反射する集光レンズが設けられており、上記遮光部材の前方側開口部は、上記光学レンズ系の光軸方向に対して所定θ1(α<θ1)以上の角度で入射する光が上記遮光部材の内壁に直接入射されるように形成されており、かつ、上記遮光部材の壁部は上記光学レンズ系の光軸方向に対してαよりも大きい角度範囲に配置されているので、小型で、光学レンズ系の光軸方向に対してθ1以上の角度で入射する不要光に対する遮光性能に優れた恒星センサを得ることができる。
【0050】
また、本発明によれば、その前方側より入射される外部光源の光を集光する光学レンズ系と、上記光学レンズ系の前方側で該光学レンズ系の光軸を取り囲む壁部を有し、その前方側で開口する遮光部材と、上記光学レンズ系からの光を受光して画像を生成する撮像素子とを備え、人工衛星に搭載され、恒星からの光に基づき、該人工衛星の姿勢制御に用いられる恒星の画像を生成する恒星センサにおいて、上記光学レンズ系には、その光軸方向に対して所定α以上の角度でその前方側より入射する光を、後方側の内面にて全反射する集光レンズが設けられており、上記遮光部材は互いに隣接する前方側遮光部材および後方側遮光部材の複数段式の構造を有し、上記前方側遮光部材の前方側開口部は、上記光学レンズ系の光軸方向に対して所定θ2以上の角度でその前方側より入射する光が上記前方側または後方側遮光部材の内壁に直接入射されるように形成されており、かつ、上記前方側遮光部材は、上記光学レンズ系の光軸および方向に対して所定θ3(θ2<θ3)以上の角度でその前方側より入射する光を、その内壁面における所定回数内での反射によって、その前方側から遮光部材外部へ逃がす形状を有しており、上記後方側遮光部材の壁部は上記光学レンズ系の光軸方向に対してα(α>θ2)よりも大きい角度範囲に配置されているので、小型で、光学レンズ系の光軸方向に対してθ2以上の角度で入射する不要光に対する遮光性能に優れた恒星センサを得ることができる。
【0051】
さらに、上記集光レンズがほぼ半球形状を備えているので、集光レンズの後方側の内面での光線の入射角度を、その前方面での光軸の方向に対する入射角度とほぼ等しくすることが可能で、光軸方向に対して所定以上の角度で入射する光を確実に全反射することができる。
【0052】
さらに、上記遮光部材の内壁面は、それが所定以上の光吸収率および正反射方向への光反射率をもつべく、光沢を有し暗色を帯びるように表面処理されているので、散乱光の発生を抑制することができ、不要な光に対する優れた遮光性が得られる。
【0053】
さらに、上記集光レンズの後方側には、上記光学レンズ系の光軸を取り囲む壁部を備えた光減衰部材が設けられているので、遮光部材および集光レンズによる遮光に加え、集光レンズを出射した後での不要光を減衰させることが可能であり、より大きな遮光性能をもつ恒星センサを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1による恒星センサの要部を示す断面説明図である。
【図2】 本発明の実施の形態1による恒星センサの要部を示す断面説明図である。
【図3】 図1の集光レンズの作用を説明する断面説明図であり、(a)は半球形状の集光レンズに対して光線が所定α以上の角度で入射する様子を示し、(b)は光線が所定α未満の角度で入射する様子を示している。
【図4】 本発明の実施の形態1で用いられるほぼ半球形状の集光レンズの一例を示す正面図である。
【図5】 図1の光減衰部材の作用を説明する断面説明図であり、(a)は光線が所定β以上の角度で入射する様子を示し、(b)は光線が所定β以下の角度で入射する様子を示す断面説明図である。
【図6】 図1の集光レンズにおける光線の入射角と出射角との対応関係を示すグラフである。
【図7】 本発明の実施の形態2による恒星センサの要部を示す断面説明図であり、θ3=50°である場合に、光学レンズ系の光軸方向に対して50°の角度でその前方側より入射した光の前方側バッフルでの反射の様子を示している。
【図8】 本発明の実施の形態2による恒星センサの要部を示す断面説明図であり、θ3=50°である場合に、光学レンズ系の光軸方向に対して60°の角度でその前方側より入射した光の前方側バッフルでの反射の様子を示している。
【図9】 本発明の実施の形態2による恒星センサの要部を示す断面説明図であり、θ3=50°である場合に、光学レンズ系の光軸方向に対して70°の角度でその前方側より入射した光の前方側バッフルでの反射の様子を示している。
【図10】 本発明の実施の形態2による恒星センサの要部を示す断面説明図であり、前方側バッフルと後方側バッフルとを連通する連通開口部を規定する縁部で生じた散乱光の様子を示している。
【図11】 本発明の実施の形態2による恒星センサで用いられるバッフルの作用を説明する図であり、(a)は光沢のない黒色塗料のみが塗布されたバッフルの内壁面に光が入射する様子を示し、(b)は光沢の有る黒色塗料が塗布されたバッフルの内壁面に光が入射する様子を示している。
【符号の説明】
1 光学レンズ系、2 ほぼ半球形状の集光レンズ、3 結像レンズ系、4 撮像素子、5 第1のアパーチャ部材、45 第2のアパーチャ部材、47 光減衰部材(ダンパー部材)、50 遮光部材(バッフル)、51 後方側遮光部材(後方側バッフル)、52 前方側遮光部材(前方側バッフル)、50a、51a、52a 壁部、50b、52b 前方側開口部、51b 連通開口部。
Claims (5)
- その前方側より入射される外部光源の光を集光する光学レンズ系と、
上記光学レンズ系の前方側で該光学レンズ系の光軸を取り囲む壁部を有し、その前方側で開口する遮光部材と、
上記光学レンズ系からの光を受光して画像を生成する撮像素子とを備え、
人工衛星に搭載され、恒星からの光に基づき、該人工衛星の姿勢制御に用いられる恒星の画像を生成する恒星センサにおいて、
上記光学レンズ系には、その光軸方向に対して所定α以上の角度でその前方側より入射する光を、後方側の内面にて全反射する集光レンズが設けられており、
上記遮光部材の前方側開口部は、上記光学レンズ系の光軸方向に対して所定θ1(α<θ1)以上の角度で入射する光が上記遮光部材の内壁に直接入射されるように形成されており、かつ、上記遮光部材の壁部は上記光学レンズ系の光軸方向に対してαよりも大きい角度範囲に配置されていることを特徴とする恒星センサ。 - その前方側より入射される外部光源の光を集光する光学レンズ系と、
上記光学レンズ系の前方側で該光学レンズ系の光軸を取り囲む壁部を有し、その前方側で開口する遮光部材と、
上記光学レンズ系からの光を受光して画像を生成する撮像素子とを備え、
人工衛星に搭載され、恒星からの光に基づき、該人工衛星の姿勢制御に用いられる恒星の画像を生成する恒星センサにおいて、
上記光学レンズ系には、その光軸方向に対して所定α以上の角度でその前方側より入射する光を、後方側の内面にて全反射する集光レンズが設けられており、
上記遮光部材は互いに隣接する前方側遮光部材および後方側遮光部材の複数段式の構造を有し、
上記前方側遮光部材の前方側開口部は、上記光学レンズ系の光軸方向に対して所定θ2以上の角度でその前方側より入射する光が上記前方側または後方側遮光部材の内壁に直接入射されるように形成されており、かつ、上記前方側遮光部材は、上記光学レンズ系の光軸および方向に対して所定θ3(θ2<θ3)以上の角度でその前方側より入射する光を、その内壁面における所定回数内での反射によって、その前方側から遮光部材外部へ逃がす形状を有しており、
上記後方側遮光部材の壁部は上記光学レンズ系の光軸方向に対してα(α>θ2)よりも大きい角度範囲に配置されていることを特徴とする恒星センサ。 - 上記集光レンズがほぼ半球形状を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の恒星センサ。
- 上記遮光部材の内壁面は、それが所定以上の光吸収率および正反射方向への光反射率をもつべく、光沢を有し暗色を帯びるように表面処理されていることを特徴とする請求項1または2記載の恒星センサ。
- 上記集光レンズの後方側には、上記光学レンズ系の光軸を取り囲む壁部を備えた光減衰部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の恒星センサ。
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