JP3804440B2 - シールドトンネル接続部の施工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、円形、矩形、または任意の断面形に構築され、主に電力、通信などのケーブル類を通す共同溝、あるいは地下鉄、地下道、上・下水道などとして利用されるシールドトンネルにおいて、先行して構築されたシールドトンネルの側部に後から構築されるシールドトンネルや立坑などを接続する際のシールドトンネル接続部の施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の地下鉄網、電信網さらには上・下水道網などのめざましい発達にともない、これらの目的で構築された既存のシールドトンネルの側部に後から構築されるシールドトンネルを接続したい場合がある。また、地下鉄用として構築されたシールドトンネルにおいて、駅舎を構築する必要からシールドトンネルを拡径したい場合がある。
【0003】
さらに、下水道用として構築されたシールドトンネルにおいて、地上から人が出入りするための人孔(マンホール)、さらには産業排水や生活排水などを排水するためのドロップシャフトその他の立坑を接続したい場合もある。
【0004】
このような場合、いずれの場合においても既存のシールドトンネルの側部に、覆工材(主にRCセグメント)を一部撤去して後から構築されるシールドトンネルや立坑を接続するための開口部を設ける必要があり、また開口部を設けるに際し、あらかじめシールドトンネルの接続部を補強する必要がある。
【0005】
これまで、このような接続部の施工方法としては、例えば図8(a)〜(e)に図示するように既存のシールドトンネルの接続部にRCセグメント10に代えて鋼製またはダクタイル製のセグメント11を組み込み、その内側に形鋼などからなる補強リング12と補強枠13を支保工として組み込んで接続部をあらかじめ補強し、その後、後から構築されるシールドトンネルや立坑を接続する部分のセグメント11を撤去して開口部ロを形成する方法が知られている。
【0006】
また、シールドトンネルを接続した後においては、シールドトンネルの断面方向においてセグメント相互が欠損状態にあるため、開口部ロの周囲を鉄骨または鉄筋コンクリートなどからなる補強工14によって大がかりな補強がなされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このため、特に接続部の施工に際して、先行施工あるいは既存のRCセグメント10が支持していた荷重および断面力を受け替えるための支保工を大量に必要とするだけでなく、支保工の設置にも非常に多くの人手を必要とし、しかも周辺工事としておこなう地盤改良などの補助工事も大規模化して工期の長期化、建設コストの大幅な向上を免れない等の課題があった。
【0008】
また、地下鉄のトンネル等として既に使用されているものについては、支保工による内側からの補強がきわめて困難か全くできない場合が多い。
この発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、支保工などの補強材が不要となり、施工の省力化、短縮化、さらにはコストダウンをも可能にしたシールドトンネル接続部の施工方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するための手段として、請求項1記載のシールドトンネル接続部の施工方法は、先行トンネルの側部に後行トンネルまたは立坑を接続する際のシールドトンネル接続部の施工方法において、先行トンネルの後行トンネルまたは立坑との接続部に主桁板とスキンプレートを備えた鋼製セグメントを一次覆工材として設置し、次に前記鋼製セグメントのスキンプレートを撤去して前記後行トンネルまたは立坑を接続するための開口部を形成し、その周囲に補強工を形成し、次に前記主桁板と継手板を撤去することを特徴とするものである。
【0010】
一般にシールドトンネルの覆工材としてRCセグメントが使用されることから、先行トンネルと後行トンネル(または立坑)を同時期に施工する場合、先行トンネルの接続部のみを鋼製またはダクタイル製のセグメントで一次覆工するのがよい。
【0011】
また、ここで使用される鋼製セグメントは、例えばトンネルの軸方向の両側部に主桁板を、この主桁板間に縦リブを、そしてトンネルの周方向の両端部に継手板を、さらにトンネルの地山側にスキンプレートをそれぞれ配置して、トンネルの周方向に沿って地山側に所定の曲率で弧状に湾曲する箱状に形成されたもので、継手板と縦リブは必要に応じて配置してよい。
【0012】
また、鋼製セグメントは複数、接続部に先行トンネルの軸方向と周方向に互いに隣接させて設置し、かつ隣接する鋼製セグメントどうしは、継手ボルトなどで互いに接合する。
【0013】
請求項2記載のシールドトンネル接続部の施工方法は、請求項1記載のシールドトンネル接続部の施工方法において、鋼製セグメントは先行トンネルの周方向に連続するリング状に設置し、かつ開口部を除く部分の鋼製セグメント内に二次覆工材としてコンクリートを打設することを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1〜図7は、先行して構築された鋼製セグメント等からなるシールドトンネル(以下、「先行トンネル1」という)の側部に、後から構築されるシールドトンネル(以下「後行トンネル2」という)を接続する際の、先行トンネル1と後行トンネル2との接続部イの施工方法を示し、以下、施工方法を図に基づいて説明する。
【0015】
▲1▼ 最初に、先行トンネル1の後行トンネル2との接続部イの周囲に対して地盤改良を行う。この場合の地盤改良は、地山の崩落を未然に防止して接続部イの補強を安全に行うためのもので、例えば凍結工法や薬液注入工法など、これまで一般に行われている方法で行う。なお、地上からの開削が可能な場合には土留めおよび地盤改良を用いて接続部を掘り出す。
【0016】
▲2▼ 次に、地盤改良を行った接続部イの周囲の地盤を掘削する。この場合の掘削は、接続部イの施工に必要な最小限度の範囲にとどめるものとする。
【0017】
▲3▼ 先行トンネル1と後行トンネル2との接続位置において、先行トンネル1の後行トンネル2との接続部イを当初から鋼製セグメント4によって一次覆工するものとする。
また、既に施工済みの先行トンネルに新たなる計画で後行トンネルを接続する場合には、先行トンネル1の接続部イに設置されているRCセグメント3を撤去し、その後を鋼製セグメント4で一次覆工する。
この場合、RCセメント3の撤去と鋼製セグメント4による一次覆工は、原則として先行トンネル1の周方向に連続して行い、先行トンネル1の周方向に連続する鋼製セグメントリングを形成するものとするが、必ずしも先行トンネル1の周方向にリング状に連続して行う必要はなく、後行セグメント2を接続するために開口する部分についてのみ行ってもよい。
さらに、ここで使用する鋼製セグメント4としては、例えば図2に図示するようにトンネルの軸方向の両側部に主桁板4aを、この主桁板4a,4a間に縦リブ4bを、そしてトンネル1の周方向の両端部に継手板4cを、さらにトンネル1の地山側にスキンプレート4dをそれぞれ配置して、トンネルの周方向に沿って地山側に所定の曲率で弧状に湾曲する箱状に形成されたものを使用する。
また、鋼製セグメント4は複数、接続部イに先行トンネル1の軸方向と周方向に互いに隣接させて設置し、かつ隣接する鋼製セグメント4,4間の主桁板4aどうし、継手板4bどうしをそれぞれ継手ボルトなどで互いに締結する。
【0018】
▲4▼ 次に、後行セグメント2を接続するために開口する部分の、鋼製セグメント4のスキンプレート4dを剥がす。したがって、スキンプレート4dを剥がすことにより形成された開口部ロには、各鋼製セグメント4の主桁板4a、縦リブ4bおよび継手板4cのみが格子状に残る。
これにより開口部ロにおいては、鋼製セグメント4の主桁板4a、縦リブ4bおよび継手板4cだけで荷重および断面力に対して抵抗する。したがって、図8に図示するような仮設の補強材13を別途組み立て補強しなくてもすむように、これらの部材に作用する応力に応じて、施工時の開口部ロの設計を行うものとし、例えば主桁板4aなどに作用する応力が小さいときは、主桁板4aや縦リブ4bも部分的に撤去し、逆に作用応力が過大であるときは補鋼材を取り付ける等して主桁板4aなどの断面を増して補強するものとする。
また、鋼製セグメント4,4間および鋼製セグメントリング間を連結する継手ボルトについても、開口の完成後に、開口周辺に生じる増分の曲げモーメント、軸力、引張力およびせん断力に抵抗でき、かつ隣接するセグメントにそれらのせん断力を伝達できるように、必要に応じて継ぎボルトの材質や径を変える等して経済的で合理的な設計を図るものとする。
【0019】
▲5▼ 次に、開口部ロの内周を補強工5で補強する。この場合の補強工5はH形鋼などの鉄骨、鉄骨コンクリート、鉄筋コンクリート、あるいは鉄骨鉄筋コンクリートなどで後行トンネル2の径と同寸法の円形リング状、あるいは任意形状の構造上、必要な形状に構築するものとし、また鋼製セグメント4の主桁板4aおよび縦リブ4bと一体的に接合する。
その際、特に補強工5を鉄骨で構築する場合は、溶接やボルト接合によって鋼製セグメント4の主桁板4aおよび縦リブ4bと一体的に接合し、補強工5を鉄骨鉄骨コンクリート、鉄筋コンクリート、あるいは鉄骨鉄筋コンクリートで構築する場合は、主桁板4aと縦リブ4bにスタッドジベル、スタッドボルト、平鋼などのシアコネクター(図省略)を多数突設して鋼製セグメント4の主桁板4aおよび縦リブ4bと一体的に接合する。
また、開口部ロを除く部分の鋼製セグメント4内に二次覆工材としてコンクリート6を所定の厚さに打設する。
【0020】
▲6▼ こうして開口部ロの内周の補強が完了したら、開口部ロの主桁板4a、縦リブ4bおよび継手板4cを撤去する。
なお、設計に際しては、鋼製セグメント4、鋼製セグメント4の主桁板4a、縦リブ4bおよび継手板4c、さらに継手ボルトと補強工5についても、それぞれ断面力の算定、応力度の照査を行うものとし、必要に応じて三次元のフレーム解析、あるいは三次元のFEM解析により、各部材を必要なグレードでモデル化して設計するものとする。
なお、上記説明は、先行トンネル1に後行トンネル2を接続する際の接続部の施工方法について行ったが、人孔やドロップシャフトその他の立坑を接続する場合、さらには地下鉄駅舎を構築するためにシールドトンネルを拡径する必要からシールドトンネルの側部に大々的に開口部を設ける場合でも、同様にして行うことができる。
【0021】
【発明の効果】
この発明は以上説明したとおりスキンプレートのみの撤去であり、補強した鋼製セグメントの主桁板、縦リブおよび継手板を残した状態で外力に抵抗できる構造のため、新たに仮設の支保工材を設置する必要がなく、施工の省力化、工期の大幅短縮化、さらに大幅なコストダウンが図れる等の効果がある。
【0022】
また、開口に伴う増分の断面力を継ぎボルトの補強などで隣接あるいは周辺のセグメントに伝達分散することにより、大がかりな開口部補強が不要になり、このため必要内空断面を保持するために、これまで必要とされた外寸法の割り増しが不要になる等の効果がある。
【0023】
また、これにより地盤改良などの補助工、周辺地山の掘削を少なくすることができ、施工の省力化、工期の大幅短縮化、さらに大幅なコストダウンが図れる等の効果がある。さらに、内側からの支保工による補強が不要なため、地下鉄のトンネル等として既に使用されているものについても行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】先行トンネルと後行トンネルとの接続部を示す斜視図である。
【図2】先行トンネルの接続部に一次覆工材として設置される鋼製セグメントの一部斜視図である。
【図3】RCセグメントで覆工された先行トンネルの一部を示し、(a)は断面図、(b)は側面図である。
【図4】鋼製セグメントで覆工された先行トンネルの接続部を示し、(a)は断面図、(b)は側面図である。
【図5】鋼製セグメントで覆工された先行トンネルの接続部を示し、(a)は断面図、(b)はスキンプレートが剥がされ、主桁板、縦リブ、継手板だけが残る部分の側面図である。
【図6】鋼製セグメントで覆工された先行トンネルの接続部を示し、(a)は断面図、(b)は主桁板と継手板を撤去する前の側面図である。
【図7】鋼製セグメントで覆工された先行トンネルの接続部を示し、(a)は断面図、(b)は側面図である。
【図8】(a)〜(e)は、接続部の施工方法の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 先行トンネル
2 後行トンネル(または立坑)
4 鋼製セグメント(鋼殻)
4a 主桁板
4b 縦リブ
4c 継手板
4a スキンプレート
5 補強工
6 コンクリート
Claims (2)
- 先行トンネルの側部に後行トンネルまたは立坑を接続する際のシールドトンネル接続部の施工方法において、先行トンネルの後行トンネルまたは立坑との接続部に主桁板とスキンプレートを備えた鋼製セグメントを一次覆工材として設置し、次に前記鋼製セグメントのスキンプレートを撤去して前記後行トンネルまたは立坑を接続するための開口部および補強工を形成し、次に前記主桁板および継手板を撤去することを特徴とするシールドトンネル接続部の施工方法。
- 鋼製セグメントは先行トンネルの周方向に連続するリング状に設置し、かつ開口部を除く部分の鋼製セグメント内に二次覆工材としてコンクリートを打設することを特徴とする請求項1記載のシールドトンネル接続部の施工方法。
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