JP3804434B2 - サーモスタット装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の冷却水循環系に配備されるサーモスタット装置に関し、特に、冷却水温度に応じて駆動する感温部を備えたサーモスタットにより制御弁を開閉操作し、ラジエータから水ポンプ側に戻る冷却水の流れを制御するサーモスタット装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関は暖機後の運転時において、機関本体内部の燃焼室等から発散されてくる熱を冷却水循環系により外気中に放出し、あるいは、外壁より直接外気中に放出し、これによりエンジン本体内部の可動部間のすき間を適正値に保持し、適正な摺接状態を保って駆動する。この内燃機関の冷却水循環系はエンジン駆動の水ポンプにより冷却水を流動させ、サーモスタット装置により冷却水を主循環路、あるいは、低温循環路に沿って切換え流動させている。
主循環路は冷却水の放熱機能を発揮させるべく、シリンダブロックやシリンダヘッドに形成されたウォータジャケット内に冷却水を流入し、ここで加熱された冷却水をラジエータに導いて放熱し、再びウォータジャケット側に流入させている。一方、低温循環路は暖機促進を図るべく、ウォータジャケットの出口より流出する冷却水を再度短絡路を介しウォータジャケットに戻している。
【0003】
この冷却水循環系で使用されるサーモスタット装置は、冷却水を主循環路と低温循環路とに選択的に流動させるよう流路を切換える機能を備え、たとえば、特開平4−370318号公報に開示されるサーモスタット装置や、図9に示すものが提案されている。
図9に示すサーモスタット装置はケーシング100の内部にウォータジャケットwJよりラジエータ110側に冷却水を送水する送水路120と、送水路120より感温室150の流入口140及び流出口160を経由して延びるバイパス路130と、流出口160より冷却水を水ポンプ170側に戻す戻し路180と、感温室150に隣接され、ラジエータ110側からの戻り冷却水を感温室150内に適時に戻すサーモスタット190とを備える。
【0004】
更に、サーモスタット装置は感温室170にノズル210を差し込み装着し、このノズルには開閉弁220を介してパイプジョイント230の内部流路が連結さる。これによりラジエータ110側からの戻り冷却水を適時に感温室150に流入させ、感温部240を強制的に冷却してサーモスタット190の制御弁200を閉じ、サーモスタット190を通過するラジエータ110からの戻り冷却水を抑えて暖機を促進するという機能を発揮できる。
しかも、ラジエータでの放熱を促進する定常運転時に入ると開閉弁220を閉じて、感温部240をウォータジャケットwJからの冷却水で加熱し、制御弁200を開き、サーモスタット190を通過するラジエータ110からの戻り冷却水を増加させ、ラジエータ側での冷却水の放熱促進機能を発揮できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図9に示すサーモスタット装置では、暖機促進機能を発揮する場合に開閉弁220を開き、ノズル210からラジエータ110側の戻り冷却水を強制的に供給し、感温部240を強制冷却する場合は良いが、冷却水の放熱促進機能を発揮する場合、単に、開閉弁220を閉じたのみでは、感温部240周囲の冷却水の還流がスムーズに行えず、感温部240の加熱効率は低く、この点で切換え応答性が比較的低いものと成っている。このため、突発的な出力要求等があると開閉弁220を閉じて、感温部240をウォータジャケットwJよりの温水で速やかに加熱し、制御弁200を開き、サーモスタット190を通過するラジエータ110からの戻り冷却水を急増させ、ラジエータ側での放熱促進機能を速やかに発揮させることができず、サーモスタット装置の切換え制御の多様化を図る上でも改善が望まれている。
【0006】
本発明は、上述の課題に基づき、感温部加熱用と、冷却用の各冷却水を選択的に切換え供給することでサーモスタットの制御弁の閉鎖、開放作動を応答性良く行え、切換え制御の多様化をも図れるサーモスタット装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1の発明では、内燃機関の冷却循環経路に設けられラジエータを経由する冷却液の流量を制御する制御弁と、冷却液の温度により上記制御弁を開閉させる感温部と、を備えたサーモスタット装置において、上記ラジエータから排出された冷却液を導入する第1導入通路と、上記内燃機関から排出された冷却液を導入する第2導入通路と、上記第1、第2導入通路により導入された冷却液のそれぞれの流量を制御する流量制御弁と、上記流量制御弁により制御された冷却液を上記感温部に供給する制御冷却液通路と、上記流量制御弁を制御するコントローラとを備え、上記コントローラは、上記内燃機関が所定の低回転低負荷域であると、上記第1導入通路を通してラジエータからの戻り冷却水を感温部に供給して上記制御弁を閉弁位置に保持し、高回転高負荷域であると、ウォータジヤケットからの冷却水を感温部に供給して上記制御弁を開保持し、しかも、暖機促進モードへの切換え指示があると、低回転低負荷域のしきい値を高くして暖機促進モードでの運転域を拡大して制御することを特徴とする。
ここでは内燃機関の冷却循環経路から感温部室内に流入した冷却液の流れとは別に、第1導入通路によりラジエータから排出された冷却液を、第2導入通路により上記内燃機関から排出された冷却液をそれぞれ流量制御弁で流量制御し、その上で制御された冷却液を上記感温部に供給する。このため、ラジエータからの冷却液と内燃機関からの冷却液の流量を容易に調整し、この制御冷却液を感温部に当て、効率良く感温部の温度を調整し、制御弁の開度の自由度が向上し、細かい冷却液温度設定が可能となる。しかも、制御冷却液が感温部を強制的に冷却、加熱するといった温度切換えを短時間でできるので、制御弁を応答性良く開閉でき、エンジンの出力,要求等が突発的に変化しても、容易に対応できる。
【0008】
好ましくは、上記内燃機関からの冷却液が上記感温部を収容する感温部室の流入口から流出口に流動するように形成され、上記感温部周囲に流速低下領域を確保し、同流速低下領域に上記制御冷却液通路より冷却液を供給するようにしてもよい。この場合、感温部周囲の流速低下領域に供給された冷却液が感温部を効率良く加熱冷却でき、切換え応答性が向上する。
好ましくは、上記感温部室の流入口から流出口に流動する冷却水の主流路より上記感温部が外れるように偏移するよう形成して上記流速低下領域を形成しても良い。この場合、特に、冷却液による感温部の冷却を効果的に行え、制御弁を応答性良く開閉できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1、図2には本発明の一実施形態としてのサーモスタット装置1を示した。このサーモスタット装置1は図示しない自動車に搭載された水冷式のエンジン2に設けられている。エンジン2はそのエンジン本体201内部にウォータジャケット3を形成し、エンジン本体の外端部の近傍にラジエータ4を配し、両者は後述の冷却循環経路により連結されている。エンジン2に配設された冷却循環経路は定常運転時に冷却水が流動する主循環路C1(図示せず)と暖機時に冷却水が流動する低温循環路C2(図示せず)とから成り、両循環路はサーモスタット装置1で切換えできる。
【0010】
エンジン2はそのエンジン本体201の一側壁部にサーモスタット装置1のケーシング5が一体的に取り付けられ、その近傍には水ポンプ6が配設されている。水ポンプ6は図示しないベルト式回転伝達系を介しエンジン回転力を受け、吸入口601より吸入し、吐出口602よりウォータジャケット3内に冷却水を吐出するように形成されている。
エンジン2に設けられた主循環路C1はウォータジャケット3の出口301に連通しラジエータ4側に冷却水を送水する送水路r1と、ラジエータ4からの戻り冷却水をケーシング5内を通して水ポンプ6側に戻す上下側の戻し路r2,r3とで構成される。一方、低温循環路C2は送水路r1の一部とその送水路r1より分岐し、ケーシング5内で上側戻し路r2と合流するバイパス路r4(図2参照)と、その上側戻し路r2との合流部p(図2参照)より水ポンプ6側の下側戻し路r3とで構成されている。
【0011】
図1、図2に示すように、ケーシング5はその内部中央にサーモスタット7を収容する感温部室としての感温室8を形成し、一側部にウォータジャケット3の出口301とラジエータ4を連通する送水路r1を形成し、他側部に上側戻し路r2の一部を形成するパイプジョイント9を一体結合している。
ケーシング5内の送水路r1と感温室8は流入口11で連通する。感温室8の流入口11と反対側の端部近傍の側壁12には流出口13が形成されている。しかも、ケーシング5の流入口11と反対側の端部には弁座部14がフランジ状に外周側に突き出し形成されている。弁座部14にはサーモスタット7の取付け金具15が嵌着される。弁座部14はパイプジョイント9の連結フランジ部901と協動して取付け金具15の外周縁を環状シール16(図3(a),(b)参照)を介して挟圧し、図示しない締め付け手段で締め付け結合している。これにより、サーモスタット7を感温室8に確実に保持している。
【0012】
ケーシング5は感温室8の流出口13より斜め下方に向けて水ポンプ6に連通する下側戻し路r3を延出形成している。感温室8の流入口11より流出口13に達するバイパス路r4(図2参照)に沿って流動する冷却水と、サーモスタット7の開弁時に上側戻し路r2から感温室7内に流入する冷却水とは、感温室8の流出口13を合流部pとして合流し、同部より下側戻し路r3に沿って流下し、水ポンプ6に吸入される。
感温室8は概略円筒室状を成し、その感温室8の中心線L1に沿ってサーモスタット7が装着されている。
【0013】
図3(a)に示すように、サーモスタット7の取付け金具15は中央部に開口h(図3(a)では閉鎖状態にある)の形成された本体151とそれに一体結合されパイプジョイント9側に突き出す取付け基板152とを備え、取付け基板152の突端部に基軸17の先端を固着する。基軸17には可動軸18及び可動軸18と一体の感温部19が外嵌し、可動軸18の取付け金具15との対向部に第1制御弁21が一体結合される。更に、取付け金具15の感温室8の側面(図3(a)で右側)には突出し枠22が突出し状態で固着されている。
【0014】
図3(a)、(b)に示すように、突出し枠22は脚部221と環状部222を備える。環状部222は感温室8の流入口11側である上流側より流出口13側である下流側に向け内径が徐々に小さくなるテーパ状内周壁fが形成される。テーパ状内周壁fの内で、最も内径の小さな小径部は所定長さの短筒部gとして延出形成され、同短筒部gは環状すき間t1を介し感温部19の外周壁と対設されている。更に、突出し枠22の外周縁側には環状係止部iが形成され、環状係止部iと第1制御弁21の背面である感温室側面との間に第1バネ23が圧縮付勢状態で取り付けられている。
【0015】
可動軸18の突端である流入口11側の端部には、流入口11を閉鎖可能な形状の第2制御弁24が取り付けられる。第2制御弁24は貫通孔を形成され、同貫通孔には可動軸18の端部が嵌挿され、可動軸18の突端に外嵌されているスナップリング25に係止される。ここで、第2制御弁24には一端が感温部19に係合した第2バネ26が圧縮状態で装着され、これにより、第2制御弁24は常時スナップリング25に押し当てられ、適時に流入口11の開口縁に押し当てられた際に、弾性的に後退変位可能に支持されている。
【0016】
サーモスタット7の感温部19は、内部の感温ワックスが冷却水により冷却されていると容積縮小状態にあり、基軸17と可動軸18の重合部分を大きく保ち、即ち、基軸17の取付け端近傍側にまで可動軸18先端が達し、第1制御弁21を閉弁位置A(図3(a)参照)に保持できる。ここで感温ワックスが暖機後の冷却水により加熱されると容積拡大し、基軸17と可動軸18の重合部分を低減し、即ち、基軸17の取付け端より離脱し、第1制御弁21を開弁位置C(図3(a)参照)側に移動できる。特に、第1制御弁21が最大変位時である切換位置Bに達すると、取付け金具15の開口hを全開でき、この際、第2制御弁24は流入口11の周縁部に押し当てられて、流入口11を閉鎖するB1位置に保持される。
【0017】
感温室8はその内部にサーモスタット7を同心的に配備し、流入口11bも同心的に開口している。これに対し、流出口13bは側壁12に形成され、感温室8の中心より偏移している。このため、流入口11より流出口13を経て下側戻し路r3に流入するといったバイパス路r4は感温室8の中央より偏移した位置を主流動路とし、感温室8の中央には冷却水の流動速度が低い流速低下領域Qが形成され、同部に感温部が配置されている。
【0018】
このような流速低下領域Qの感温部19の上流側部位には強制制御冷却液供給手段31のノズル27が配備されている。
強制制御冷却液供給手段31はラジエータから排出された冷却液を導入する第1導入路R1と,ウォータジャケット3からの冷却液を導入する第2導入路R2と、導入された冷却液のそれぞれの流量を制御する流量制御弁32と、冷却液を感温室8の感温部19に供給する制御冷却液通路R3と、流量制御弁32を制御するコントローラ33と、ウォータジャケット3からの冷却液の温度を検出してコントローラ33に出力する水温センサ34と備える。
【0019】
第1導入通路R1はパイプジョイント9に支持されたジョイントパイプp1及び湾曲パイプp2から成り、第2導入通路R2はケーシング5に支持されたジョイントパイプp1及び湾曲パイプp2から成り、制御冷却液通路R3はケーシング5の感温室対向部に支持されえたノズル27及び延長パイプp3から成る。 ここでノズル27は金属製のパイプ状部材であり、ケーシング5の側壁を外部より感温室8にまで貫通するように装着される。更に、図3(a)に示すように、第2制御弁24が流入口11の周縁部に押し当てられ閉鎖するB1位置に達した場合において、その時の感温部19の位置(2点鎖線で示すB2位置)より更に上流側(図3(a)において右側)にノズル27の噴孔271が位置するように形成されている。
【0020】
流量制御弁32は三方弁デューティ弁であり、図4に示すように、弁基枠321内にスプール弁323を備える。このスプール弁323はデューティ信号Dに応じてソレノイド322を介しデューティ作動するように形成される。スプール弁323の一端には戻しバネ324が配備され、これによりオフ時にスプール弁323のスプールaを全閉位置H1(図4に2点鎖線で示す位置)に保持し、ノズル27への冷却水供給を停止する。
【0021】
スプール弁323はデューティ比50%の場合に、スプールaを図4に実線で示す冷却モード位置H2に保持し、第1導入通路R1を開いてラジエータ4からの戻り冷却水(冷水)をノズル27を介し感温部19に供給し,第1制御弁21を強制的に閉鎖に保持する。スプール弁323はデューティ比100%の場合にスプールbを図4に2点鎖線で示す加熱モード位置H3に保持し、第2導入通路R2を開いてウォータジヤケット3、送水路r1からの冷却水(温水)をノズル27を介し感温部19に供給し,第1制御弁21を強制的に開く。なお、スプールbはデューティ比50%でH4位置に、0%でH5位置に保持される。
【0022】
コントローラ33は送水路r1の冷却水温度を水温センサ34で検出し、更に、図示しないエンジン回転数センサやアクセル開度センサにより検出したエンジン回転数Neや、負荷としてのアクセル開度θaを取り込み、これらの運転情報や図5の制御弁駆動マップM1に基づき、図6の制御ルーチンに沿って、流量制御弁32を切換え作動し、第1導入路R1と第2導入路R2からの冷却液を選択的に制御冷却液通路R3を介し感温部19に供給し、主循環路C1と低温循環路C2とを選択的に開放制御する。
【0023】
以下、図6の制御ルーチンに沿ってサーモスタット装置1の駆動を説明する。コントローラ33はステップs1で水温Tw,エンジン回転数Ne、アクセル開度θaを取り込み、ステップs2で現在の水温が高水温値Twh(たとえば110℃)を上回る場合は、放熱運転時と判断し,サーモスタット全開の運転域と見徴し、ステップs3でデューティ比0%に保持し、この回の制御を終了する。なお、場合によりデューティ100%としても良い。
一方、高水温値Twhを上回らない場合、ステップs4に達し、暖機促進モード指示があるか否か判断し、無いとステップs5に達して通常しきい値Ne1,θa1を設定し、暖機促進モード指示があるとステップs6に達して、暖機促進しきい値Ne2(>Ne1),θa2(>θa1)を設定し(図6参照)ステップs7に進む。
【0024】
ステップs7では、エンジン回転数Neが今回のしきい値(設定値Ne1あるいはNe2)を上回るとステップs9に、そうでないとステップs8に進む。ステップs8ではアクセル開度開度θaが今回のしきい値(設定値θa1あるいはθa2)を上回るか判断し、上回るとステップs9にそうでないと、ステップs10に進む。
ステップs9では高回転高負荷域(図5のMlマップの高温モード域参照)であり、デューティ比100%で流量制御弁32を駆動し(図4参照)、第2導入通路R2を開き、ウォータジャケット3、送水路rlからの冷却水(温水)をノズル27を介し感温部19に供給し,第1制御弁21を強制的に開き、主循環路C1を開放し、放熱特性を向上させこの回の制御を終了させる。
【0025】
一方、ステップsl0では低回転低負荷域(図5のM1マップの低温モード域参照)あるいは暖機促進モード指示がある場合であり、デューティ比50%で流量制御弁32を駆動し(図4参照)、第1導入通路Rlを開き、ラジエータ4からの戻り冷却水(冷水)を上側戻し路r2,ノズル27を介し感温部19に供給し,第1制御弁21を強制的に閉弁位置Aに保持し、この回の制御を終了させる。
なお、低回転低負荷域あるいは暖機促進モードの場合は、デューティ比50%に固定すると、冷却水温が低下しすぎることがあるため、目標水温を固定し、この水温となるようにデューティ比をフィードバック制御してもよい。
【0026】
この場合、暖機促進モード指示が無い通常の運転域(しきい値Ne1,θa1が比較的低い場合)であれば、主循環路C1を閉じ、低温循環路C2が開き、これによりウォータジヤケット3の出口301の冷却水は送水路r1の一部、バイパス路r4、下側戻し路r3を経てウォータジャケット3に戻され、冷却水の暖機が促進されるが、しきい値Nel,θa1を上回る運転域に入る頻度が高く、暖機連転より放熱特性を向上させる運転域に切り替わる頻度が高い。
これに対し、暖機促進モードの運転域(しきい値Ne2,θa2が比較的高い場合〉であれば、同じく主循環路Clを閉じ、低温循環路C2が開き、これによりウォータジャケット3の出口301の冷却水は送水路r1の一部、バイパス路r4、下側戻し路r3を経てウォータジャケット3に戻され、冷却水の暖機が促進されるが、しきい値Ne2,θa2を上回る運転域に入る頻度が低く、放熱特性を向上させる運転域より暖機運転する頻度が高くなり、外気が低温気味での走行時のエンジン駆動を安定化でき、出力向上をはかりやすく成る。
【0027】
このように、図1のサーモスタット装置1ではエンジンの運転域に応じて、即ち、低回転低負荷域では、デューティ比50%で流量制御弁32を駆動しラジエータ4からの戻り冷却水(冷水)を感温部19に供給し,第1制御弁21を強制的に閉弁位置Aに保持し、主循環路C1を閉じ、低温循環路C2を開き、暖機促進を図る。一方、高回転高負荷域では、デューティ比l00%で流量制御弁32を駆動し、ウォータジヤケット31、送水路r1からの冷却水(温水)を感温部19に供給し,第1制御弁21を強制的に開保持し、主循環路C1を聞き、低温循環路C2を閉じあるいは狭めラジエータ4での放熱促進を図る。しかも、図1のサーモスタット装置1では暖機促進モードへの切換え指示があると、低回転低負荷域の領域をエンジン回転数Ne2,アクセル開度θa2にまで拡大し、これにより暖機運転の頻度が高くなり、外気が低温気味での走行時でのエンジン駆動を安定化でき、出力向上をはかりやすく,切換え制御の多様化をも図れる。
【0028】
これら低回転低負荷の低温運転モード、高回転高負荷の高温運転モード、暖機促進モードの切換えにあたっては、流量制御弁32により第1第2導通路R1、R2を切換え、流速低下域Qの感温部19に効率良く,強制的に、送水路r1からの冷却水(温水)あるいは、ラジエータ4からの戻り冷却水(冷水)を供給して加熱冷却でき、応答性良く第1、第2制御弁21、24を開閉操作し、主循環路C1と低温循環路C2を選択的に開放切換えでき、制御応答性が優れる。
【0029】
上述のところで、流量制御弁32は図4に示すように、全閉位置H1(2点鎖線示す位置)と冷却モード位置H2(実線で示す位置)と加熱モード位置H3とに切り換えられ、第1、第2導入通路R1、R2を選択的に開放し、あるいは両導入通路R1、R2を閉鎖するよう構成されていたが、これに代えて、図7に示すような簡素化された流量制御弁32aを採用しても良い。
この流量制御弁32aは図4の流量制御弁32に代えてサーモスタット装置1に採用できるため、その他の重複説明を略す。流量制御弁32aは三方オンオフ弁であり、弁基枠321内にスプール弁323aを備え、このスプール弁323aはソレノイド322aを介しオンオフ作動する。スプール弁323aの一端には戻しバネ324aが配備される。
【0030】
以下、図8の制御ルーチンに治ってサーモスタット装置1aの駆動を説明する。
コントローラ33(図l参照)はステップalで水温Tw,エンジン回転数Ne、アクセル開度θaを取り込み、ステップa2で現在の水温が高水温値Twh(たとえば110℃)を上回る場合は、放熱運転時と判断し,サーモスタット全開の運転域と見倣し、ステップa3でオン出力で流量制御弁32を駆動してスプールaを加熱モード位置Hb〈図7の2点鎖線参照)に切換え、第2導入通路R2を開き、ウォータジャケット3、送水路rlからの冷却水(温水)をノズル27を介し感温部19に供給し,第1制御弁21を強制的に開き、主循環路C1を開放し、放熱特性を向上させこの回の制御を終了する。
【0031】
一方、高水温値Twh未満の場合、図6のステップs4〜s8の制御と同様の制御を行うため、ここでは同一ステップ番号を付し、重複説明を略す。この後、低回転低負荷域(Ne1,θa1以下の運転域)では、ステップa10に達し、ここで流量制御弁32aをオフ駆動し、ラジエータ4からの戻り冷却水(冷水)を第1導入通路R1を介し感温部19に供給し,第1制御弁21を強制的に閉弁位置Aに保持し、主循環路C1を閉じ、低温循環路C2を開き、暖機促進を図る。一方、高回転高負荷域(Ne1,θa1を上回る運転域)では、ステップa9に達し、ここで流量制御弁32をオン駆動し、ウォータジャケット3、送水路rlからの冷却水(温水)を第2導入通路R2を介し感温部19に供給し,第1制御弁21を強制的に開保持し、主循環路C1を開き、低温循環路C2を閉じあるいは狭め、ラジエータ4での放熱促進を図る。しかも、暖機促進モードヘの切換え指示があると、低回転低負荷域の領域をエンジン回転数Ne2,アクセル開度θa2にまで拡大し、これにより暖機運転の頻度が高くなり、外気が低温気味での走行時でのエンジン駆動を安定化でき、出力向上をはかれる。
【0032】
これら低温運転モード、高温運転モード、暖機促進モードの切換えにあたっては、流量制御弁32により第l第2導通路Rl、R2を切換え、流遠低下域Qの感温部19に効率良く,強制的に、送水路rlからの冷却水(温水)あるいは、ラジエータ4からの戻り冷却水(冷水)を供給.して加熱冷却でき、応答性良く第l、第2制御弁21、24を開開操作し、主循環路Clと低温循環路C2を選択的に開放切換えでき、制御応答性が優れる。
図1のサーモスタット装置1に図7に示すような流量制御弁32aを用いた場合も、図4の流量制御弁32を用いた場合と同様の作用効果が得られ、特に、構造の簡素化を図れる。
【0033】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、ラジエータからの冷却液と内燃機関からの冷却液の流量を容易に調整し、この制御冷却液を選択的に感温部に当て、効率良く感温部の温度を加熱冷却調整し、制御弁の開度の自由度が向上し、細かい冷却液温度設定が可能となる。しかも、制御冷却液が感温部を強制的に冷却、加熱するといった温度切換えを短時間でできるので、制御弁を応答性良く開閉でき、エンジンの出力,要求等が突発的に変化しても、容易に対応できる。
特に、低回転低負荷域では主循環路を閉じ、低温循環路を開き、暖機促進を図り、高回転高負荷域では、主循環路を開き、低温循環路を閉じあるいは狭めラジエータでの放熱促進を図り、暖機促進モードへの切換え指示があると、低回転低負荷域のしきい値を高くし暖機促進モードでの運転域を拡大して暖機運転の頻度を高め、走行時のエンジン駆動を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としてのサーモスタット装置が適用されたエンジンの冷却循環経路の概略平面図である。
【図2】図1のサーモスタット装置の拡大側断面図である。
【図3】図1のサーモスタット装置の要部を示し、(a)は図1のサーモスタット装置のサーモスタット部分の側断面図を、(b)サーモスタット部分の平断面図である。
【図4】図1のサーモスタット装置で用いる流量制御弁の拡大断面図である。
【図5】図1のサーモスタット装置のコントローラが用いる運転域マッブである。
【図6】図1のサーモスタット装置のコントローラが用いる制御ルーチンのフローチヤートである。
【図7】本発明の他の実施形態としてのサーモスタット装置で用いる流量制御弁の拡大断面図である。
【図8】図1のサーモスタット装置のコントローラが用いる制御ルーチンのフローチヤートである。
【図9】従来のサーモスタット装置の要部切欠拡大断面図である。
【符号の説明】
1 サーモスタット装置
2 エンジン
4 ラジエータ
8 感温部室
11 流入口
14 流出口
19 感温部
21 第1制御弁
27 ノズル
32 流量制御弁
C1 主循環路
C2 低温循環路
Q 流速低下領域
R1 第1導入通路
R2 第2導入通路
R3 制御冷却液通路
Claims (1)
- 内燃機関の冷却循環経路に設けられラジエータを経由する冷却液の流量を制御する制御弁と、冷却液の温度により上記制御弁を開閉させる感温部と、を備えたサーモスタット装置において、
上記ラジエータから排出された冷却液を導入する第1導入通路と、
上記内燃機関から排出された冷却液を導入する第2導入通路と、
上記第1、第2導入通路により導入された冷却液のそれぞれの流量を制御する流量制御弁と、
上記流量制御弁により制御された冷却液を上記感温部に供給する制御冷却液通路と、
上記流量制御弁を制御するコントローラとを備え、
上記コントローラは、上記内燃機関が所定の低回転低負荷域であると、上記第1導入通路を通してラジエータからの戻り冷却水を感温部に供給して上記制御弁を閉弁位置に保持し、高回転高負荷域であると、上記ウォータジヤケットからの冷却水を感温部に供給して上記制御弁を開保持し、しかも、暖機促進モードへの切換え指示があると、低回転低負荷域のしきい値を高くして暖機促進モードでの運転域を拡大して制御することを特徴とするサーモスタット装置。
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