JP3803114B2 - カルボニレーションプロセスの間に形成される希薄水性流よりの酢酸の回収 - Google Patents

カルボニレーションプロセスの間に形成される希薄水性流よりの酢酸の回収 Download PDF

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発明の背景
本発明は、希薄水性流よりの酢酸の回収のための新規方法に関する。特に、本発明は、VIII族金属カルボニレーション(carbonylation)触媒の存在でメタノールまたは酢酸メチルを酢酸にカルボニレーション(カルボニル化とも称する)する間に形成された希薄水性流よりのこのような回収およびそれの精製に関する。さらに詳しくは、本発明は、希薄水性流より酢酸を分離し、例えば、VIII族金属触媒カルボニレーションプロセスによって形成される酢酸生成物よりアルカン不純物を除去するための酢酸精製において精製した水性流を使用するための新規方法に関する。
酢酸を合成するために現在使用されている方法のうち、商業的に最も有効な方法の1つは、1973年10月30日にPaulik et alに対して発行された米国特許3,769,329に教示されているようなメタノールを一酸化炭素で接触カルボニレーションする方法である。カルボニレーション触媒は、液体反応媒体に溶解または分散されるか、または、ハロゲン含有触媒促進剤、例えば、ヨウ化メチルとともに不活性固体に担持されたロジウムを含む。ロジウムは、多くのいずれかの形で反応システムに導入することができ、事実可能な場合には、活性触媒錯体内のロジウム部分の正確な性質を特定することは問題とされない。同様に、ハライド促進剤の性質は重要ではない。特許権者は、極めて多数の適した促進剤を開示しているが、その大部分は、有機ヨウ化物である。最も典型的で、有効には、反応は、一酸化炭素ガスが連続的にバブルされている液体反応媒体に溶解された触媒で行われる。
アルコールをロジウム触媒の存在でカルボニレーションしてそのアルコールよりも1個多い炭素原子を有するカルボン酸を製造するための従来法における改良は、1991年6月25日に発行された共通して譲渡された米国特許No.5,001,259および1985年11月21日に公開されたヨーロッパ特許出願161,874に開示されている。その中で開示されているように、酢酸は、酢酸メチル、メチルハライド、特に、ヨウ化メチルおよび触媒有効濃度で存在するロジウムを含む反応媒体中でメタノールより製造される。その中の発明は、主として、反応媒体中に、触媒有効量のロジウムとともに、少なくとも有限濃度の水、酢酸メチルおよびヨウ化メチルまたはその他の有機ヨウ化物として存在するヨーダイド含量を上回り、かつ、高い特定濃度のヨーダイドイオン濃度のヨウ化メチルを維持することによって、反応媒体中、(ほぼ14重量%または15重量%の水を維持する一般の工業的実施にもかかわらず)、極めて低い水濃度、すなわち、12重量%以下でさえ、驚くべきほど高レベルで触媒安定性およびカルボニレーション反応器の生産性を維持することができるという発見に帰する。ヨーダイドイオンは、単純塩として存在し、リチウムヨーダイドが好ましい。これら特許公報は、酢酸メチルとヨーダイド塩類との濃度が、特に、低い反応器水濃度において、メタノールをカルボニレーションして酢酸を生成する速度に影響を及ぼす有意なパラメータであることを教示している。比較的高濃度の酢酸メチルとヨーダイド塩とを使用することによって、液体反応媒体が約0.1重量%程の低い濃度で水を含有する、すなわち、単に“有限濃度”の水として広範に定義することができる時でさえ、驚くほどの触媒安定性と反応器生産性とを達成することができる。さらに、使用される反応媒体は、ロジウム触媒の安定性、すなわち、特に、酢酸生成物を回収するための蒸留が反応容器内に維持された環境中でロジウムに安定化効果を及ぼすリガンドである一酸化炭素を触媒より除去しやすいプロセスの生成物回収工程の間の触媒沈殿抵抗性を改良する。米国特許No.5,001,259は、本明細書で、参考のために引用する。
メタノールのカルボニレーションによって形成される酢酸は、従来の手段、例えば、一連の蒸留によって高純度の生成物に転化される。酢酸生成物を精製するための蒸留の間、少量の酢酸、有機ヨウ化物助触媒および酢酸メチルを含有する水性流が得られ、これは、カルボニレーション反応器にリサイクルされる。少なくとも酢酸の生成を増大させる限り、カルボニレーション反応器の含水率を12%より十分に低く低下させ、好ましくは、カルボニレーション反応器において3〜4重量%の水に近づけることが有益であるので、精製プロセスよりのこれら水性流のリサイクルは、反応器における水レベルの管理を不確実なものとする。新たで、かつ、より高価な供給物によって製造する必要のある必要とされる反応体とともに貴重な酢酸生成物が廃棄されるので、これら水性流を簡単に廃棄することは効率的ではない。
上記カルボニレーションによって形成される酢酸の精製の間、酢酸生成物よりの不純物の除去を助けるために水性流を使用することが知られている。かくして、低水分のカルボニレーション条件下において、このような条件下で製造される酢酸は、過マンガン酸塩時間(permanganate time)が不十分であることが見いだされている。酢酸の過マンガン酸塩時間をとりわけ低下させる不純物は、カルボニルおよび有機ヨウ化物である。1992年5月5日に公開されたEPO公開出願487,284においては、カルボニレーション反応混合物中の循環カルボニル含有および不飽和有機物の量を最小とし、酢酸のさらに容易な精製をもたらす方法が開示されている。このような方法によって、カルボニル不純物は、アミン化合物と反応させてオキシムを形成させ、このオキシムは、水を添加してオキシムを水相に抽出するかまたは溶媒和することを含む蒸留によって除去される。
酢酸生成物よりの不純物の除去を含むもう1つの精製法は、粗製の酢酸生成物よりのアルカン類の除去を含む。アルカン類の形成は、プライス(Price)によって見いだされた。彼の発明は、米国特許4,102,922に記載され、特許請求されているが、触媒の除去後、アルカン類より反応の揮発成分をストリッピングすることによってアルカン類を除去することを含む。反応混合物は、生成物が気化され、触媒の残渣より取り出されるフラッシャーと称される圧力低下容器に搬送される。触媒は、反応器にリサイクルされる。ヨウ化メチル、水、酢酸およびアルカン類を含有するフラッシュされた生成物は、スプリッターに供給され、反応器に戻される酢酸および水を含有する1つの相と、本明細書で重質相と称する第2の相との少なくとも2つの液体相に分離される。アルカン類の除去を行うためには、ストリッピングガスとして一酸化炭素を使用して、スプリッター塔よりの重質相のスリップ流(slipstream)をストリップして、後者の蒸留より基底流としてアルカン類を除去する。
アルカン類がプライスの方法に従い除去されるが、従来技術の実施によっては通常廃棄される残渣よりの酢酸の回収を実現することができる予想外の利点を有する方法が、共通して譲渡された米国特許5,371,286に開示されている。この発明の好ましい実施態様においては、反応システムの水バランスが維持される低水分条件でアルカン類の除去を行う方法が提供される。
その中に開示されているように、メタノール、ジメチルエーテル、酢酸メチルまたはこれらの混合物のカルボニレーションは、VIII族金属のカルボニレーション触媒の存在において生ずる。このようなカルボニレーション化反応は、ハライド促進剤、例えば、米国特許3,769,329に開示されているような有機ハライドの存在で、あるいは、触媒溶液がVIII族金属触媒および有機ハライド促進剤のみならず追加のヨーダイド塩をも含有する前記米国特許No.5,011,259に開示されているような低水分条件下で一酸化炭素との触媒反応を含む。このような方法において、メタノール、ジメチルエーテル、酢酸メチルまたはこれらの混合物の供給物は、液相カルボニレーション反応器内でカルボニル化される。生成物の分離は、反応器の内容物を触媒溶液が基底流として取り出され、反応器にリサイクルされるフラッシャーに向かわせることによって達成され、他方、ヨウ化メチル、酢酸メチルおよび水とともに、大部分生成物酢酸を含むオーバーヘッドは、ヨウ化メチル−酢酸スプリッター塔に向かわせられる。スプリッター塔よりのオーバーヘッドは、主として、有機ヨウ化物類および酢酸メチルを含み、他方、スプリッター塔の基底流または側流からは、酢酸生成物が取り出され、これは、蒸留を終えることによって、通常、さらなる精製に向けられる。大半のアルカン類を含有するのは、オーバーヘッドの一部、重質相であり、これは、その中に開示されている発明の方法によって取り出される。かくして、スプリッター塔オーバーヘッドよりの重質相は、還流塔内で、約0.5〜約5の還流比で蒸留される。この還流塔よりのオーバーヘッドは、ヨウ化メチル、酢酸メチルおよびカルボニル不純物を含有し、取り出されて反応器に戻されるかまたはカルボニル不純物を除去するためにさらに処理される。この塔よりの残渣は、デカンターに通され、そこで、水を加えることによって相分離を生ずる。実質的に水と酢酸とである基底相は、反応器に戻される。実質的に全部アルカン類である上方相は、廃棄され、廃棄用の焼却炉等への供給物として使用することができる。米国特許出願No.052,429に開示された発明の好ましい実施態様においては、精製系統においてさらなる下流の酢酸乾燥塔よりのオーバーヘッドのスリップ流の添加によって相分離を生じさせる。乾燥塔オーバーヘッドは、先ず、蒸留して、水性基底液より酢酸メチルとヨウ化メチル留出物とを分離する。乾燥塔オーバーヘッドを蒸留することによって誘導される水性基底液は、相分離用の水とカルボニレーション反応システムにおける若干の水バランスとを供給するために使用される。
遺憾ながら、使用される乾燥塔オーバーヘッドよりのスリップ流は、酢酸メチルおよびヨウ化メチルを取り出すための蒸留の間、水性基底相に残留する20重量%以下の酢酸を含有することができる。この流よりの酢酸の取り出しは、水相よりのアルカン類の相分離にはるかに有効である。さらに、システム中に存在する水が多すぎると、水性流をパージして、それより酢酸生成物を有効に取り出すことができず、貴重な酢酸生成物が捨てられ、効率的ではない。水相より酢酸を分離する方法、例えば、蒸留または溶剤抽出によっては、蒸留プロセスのエネルギーコストの点でコスト有効的ではなく、溶剤抽出を使用する場合には、高い資本投下の必要がある。
したがって、特に、カルボニレーション反応器の水分濃度を約12重量%以下に維持するべき時に、カルボニレーションシステムにおける水レベルを制御する必要が存在する。
さらに、コスト有効的に水相より酢酸を分離するためにカルボニレーション分離精製プロセスにおいてその他の希薄酸水性流を処理する必要が存在する。例えば、ストリッパー塔よりの軽質相は、酢酸および水を含有し、これは、上記相分離を生ずるために使用することができ、酢酸および水が分離される。この時、水のリサイクルは、さらに容易に制御することができ、酢酸の随伴損失がない。
本発明者らは、反応器内の水の濃度が12重量%未満の範囲に低下するにつれて、精製プロセス内に希酸水性流を処理して、水とともに酢酸生成物の廃棄を避けるために、希薄水性溶液より酢酸を分離し、酢酸生成物の精製の間にリサイクルされるかまたは効率的に使用することのできるさらに制御された精製水性流を生じさせるさらなる必要が存在することを見いだした。
発明の概要
本発明の方法は、VIII族金属カルボニレーション触媒の存在でのメタノール、ジメチルエーテル、酢酸メチルまたはこれらの混合物のカルボニレーションの間に形成される希酢酸水性流の処理、および、特に、水相より酢酸を効率的、かつ、コスト有効的に分離するためのこのような流の処理に係る。水相よりの酢酸の分離は、例えば、EPO公開出願487,284に記載されたようなカルボニル類の除去および/または米国特許5,371,286に記載されたアルカン類の除去のために酢酸の精製において水相を使用可能とする。また、重要なことに、さてその中に比較的少量の酢酸を含まない水性流は、必要に応じてリサイクルすることができ、貴重な生成物が廃棄されることなく、パージされかくして、カルボニレーションプロセス全体を通して含水率を制御する改良法を提供する。これは、カルボニレーション反応器内の含水率が、例えば、12重量%以下、さらには、5重量%以下に著しく減少する場合に特に有効である。反応体、助触媒および酢酸を含有する水性流をリサイクルする以前の方法は、反応器の原材料に水を添加することであった。これらの流は、水性流中の貴重な出発物質および酢酸生成物を廃棄するコストゆえに容易に廃棄することができない。
かくして、本発明に従えば、酢酸精製プロセスよりの希薄酸水性流、例えば、スプリッター塔よりの希酸軽質相および/または酢酸乾燥塔のオーバーヘッドよりの少なくともスリップ流、および、水および少量の酢酸、ヨウ化メチルおよび酢酸メチルを含有するものは、メタノールを酢酸と反応させて、低沸点の酢酸メチルおよび水を形成する条件下でメタノールの添加によって処理され、酢酸メチル、ヨウ化メチルおよび未反応のメタノールは、蒸留によって水相より分離される。
乾燥塔オーバーヘッドの処理は、酸触媒の存在における触媒蒸留によって達成される。触媒蒸留ユニットの触媒領域には、乾燥塔よりのオーバーヘッドおよびメタノールが供給される。形成された酢酸メチルは、そのユニットよりの留出物として取り出され、精製される水相は、そのユニットよりの基底生成物として取り出される。乾燥塔オーバーヘッドの酢酸の少なくとも約90%が酢酸メチルに転化され、留出物として取り出され、これは、ついで、カルボニレーションプロセスにリサイクルされる。基底水相は、前述したように、酢酸生成物よりのアルカン類および/またはカルボニル類の分離を助けるために使用することができる。水バランス用に、所望とあらば、基底水相の一部は、貴重な随伴物を廃棄することなく、パージすることができる。また、酢酸よりのアルカン類および/またはカルボニル類の相分離の間の抽出効率は、実質的に改良され、廃棄物の体積を減少させる。
発明の詳細な説明
本発明に従い希酢酸水性流を処理するための方法は、カルボニレーションによって形成された純粋な酢酸生成物を回収するための精製方法に関連して説明することができる。特に、酢酸生成物よりのアルカン類の分離は、本発明の処理法をその中に有効に包含させることができる。
本発明の精製方法は、メタノール、ジメチルエーテル、酢酸メチルおよびそれらの混合物をVIII族の金属触媒、例えば、ロジウムと、ヨーダイド促進剤との存在で酢酸にカルボニル化するために使用されるいずれの方法においても有効である。特に有効な方法は、前述の米国特許No.5,001,259に例示されたメタノールの酢酸への低水分ロジウム触媒カルボニレーションである。概して、触媒システムのロジウム成分は、このような化合物のリガンドの少なくとも1つを与えるハロゲン成分を有するロジウムの配位化合物の形で存在すると考えられる。ロジウムとハロゲンとの配位に加えて、一酸化炭素リガンドがロジウムとの配位化合物または錯体を形成すると考えることもできる。触媒システムのロジウム成分は、ロジウムがロジウム金属、ロジウム塩類および酸化物、有機ロジウム化合物、ロジウムの配位化合物等の形であるロジウムを反応域に導入することによって生じさせることができる。
触媒システムのハロゲン含有促進成分は、有機ハライドを含むハロゲン化合物からなる。かくして、アルキル、アリールおよび置換アルキルまたはアリールハライド類を使用することができる。好ましくは、ハライド促進剤は、アルキル部分がカルボニル化される供給アルコールのアルキル部分に対応するアルキルハライドの形で存在する。かくして、メタノールの酢酸へのカルボニレーションにおいて、ハライド促進剤は、メチルハライド、さらに好ましくは、ヨウ化メチルを含む。
使用される液体反応媒体としては、触媒システムと相溶性の溶剤が挙げられ、純粋なアルコール類またはアルコール原料の混合物および/または所望されるカルボン酸および/またはこれら2つの化合物のエステル類が挙げられる。低水分カルボニレーションプロセス用の溶剤および液体反応媒体は、カルボン酸生成物を含む。かくして、メタノールの酢酸へのカルボニレーションにおいて、好ましい溶剤は酢酸である。
本発明に記載するタイプのロジウム触媒カルボニレーション反応において、水の添加は、反応速度に有効に作用する(米国特許No.3,769,329)。かくして、商業的な運転は、少なくとも14重量%の水分濃度で実施される(EP 055618)。したがって、このような高レベルの水分濃度で得られる反応速度に実質的に等しいかそれ以上の反応速度が14重量%以下および0.1重量%ほどの低い水分濃度で達成することができることは全く予想だにし得なかったことである。
酢酸を製造するために最も有効なカルボニレーションプロセスに従えば、反応媒体に酢酸メチル、および、触媒促進剤として存在するヨーダイド、例えば、ヨウ化メチルまたはその他の有機ヨウ化物を上回るかそれ以上の追加のヨーダイドイオンを含ませることによって低水分濃度においてさえ、所望される反応速度が得られる。追加のヨーダイド促進剤は、ヨーダイド塩であり、リチウムヨーダイドが好ましい。低水分濃度下で、酢酸メチルおよびリチウムヨーダイドが比較的高濃度のこれら成分の各々が存在する時にのみ速度促進剤として作用し、これら両成分が同時に存在する時に促進が速いことが見いだされている。触媒を安定化させ、反応を促進するためには、2〜20重量%ほどの高いヨーダイドイオン濃度が有効である。これは、米国特許No.5,001,259の開示以前の従来技術においては認識されていなかった。好ましいカルボニレーション反応システムの反応媒体に使用されるリチウムヨーダイドの濃度は、この種の反応システムにおけるハライド塩の使用を扱うわずかばかりの従来技術と比較して極めて高いと考えられる。
メタノールの酢酸生成物へのカルボニレーション反応は、液相にあるメタノール供給物をロジウム触媒、ヨウ化メチル促進成分、酢酸メチル、および、追加の可溶性ヨーダイド塩促進剤を含有する液体反応媒体を通してバブルさせたガス状の一酸化炭素とカルボニレーション生成物を形成するのに適した温度および圧力条件下で緊密に接触させることによって行うことができる。概して、重要なのは、触媒システム中のヨーダイドイオン濃度であり、ヨーダイドに付随するカチオンではなく、ヨーダイドの所定のモル濃度において、カチオンの性質は、ヨーダイドの濃度効果ほど有意ではない。いずれの金属のヨーダイド塩またはいずれの有機カチオンのヨーダイド塩も、その塩がヨーダイドの所望のレベルを生ずるために十分なほど反応媒体に可溶性である限り使用することができる。ヨーダイド塩は、有機カチオンの第4級塩であってもよく、無機カチオンのヨーダイド塩でぁってもよい。好ましくは、それは、CRC Press,Cleveland,Ohioによって刊行された“Handbook of Chemistry and Physics”1975-76(56th edition)に記載されている周期律表のIa族およびIIa族の金属からなる群の構成因子のヨーダイド塩である。特に、アルカリ金属ヨーダイドが有効であり、リチウムヨーダイドが好ましい。本発明において最も有効な低水分カルボニレーションにおいて、有機ヨーダイド促進剤を上回るかそれ以上の追加のヨーダイドは、触媒溶液中に、約2〜約20重量%の量、好ましくは、5〜15重量%の量存在し、酢酸メチルは、約0.5〜約20重量%の量、好ましくは、2〜5重量%の量存在し、ヨウ化メチルは、約5〜20重量%の量、好ましくは、10〜16重量%の量、最も好ましくは、12〜15重量%の量存在する。ロジウム触媒は、200〜1,000ppmの量、好ましくは、300〜600ppmの量存在する。
カルボニレーションのための典型的な反応温度は、ほぼ150〜250℃であり、約180〜220℃の温度範囲が好ましい範囲である。反応器内の一酸化炭素分圧は、広範に変化させることができるが、典型的には、約2〜30気圧、好ましくは、約3〜10気圧である。副生物の分圧および含まれる液体の蒸気圧ゆえに、総反応器圧は、約15〜40気圧の範囲である。
メタノールの酢酸へのヨーダイド促進ロジウム触媒カルボニレーション用に使用することのできる典型的な反応および酢酸回収システムは、図1に示すが、液相カルボニレーション反応器10、フラッシャー12、ヨウ化メチル−酢酸スプリッター塔14および酢酸乾燥塔22を含む。カルボニレーション反応器10は、典型的には、その中に、反応液体内容物が一定レベルに自動的に維持される撹拌容器である。この反応器には、フラッシュメタノール、反応媒体中の水の少なくとも有限濃度を維持するために必要とされる十分な水、フラッシャー基底よりのリサイクル触媒溶液、リサイクルされたヨウ化メチルおよび酢酸メチル相、ならびに、ヨウ化メチル−酢酸スプリッター塔14のオーバーヘッドよりの酢酸水性液相が連続的に導入される。これとは別の蒸留システムも、それらが粗製の酢酸を回収し、触媒溶液、ヨウ化メチルおよび酢酸メチルを反応器にリサイクルするための手段を備えている限り使用することができる。好ましいプロセスにおいて、一酸化炭素は、内容物を撹拌するために使用される攪拌機の直下のカルボニレーション反応器10に連続的に導入される。ガス状の供給物は、当然のことながら、この手段によって反応液体を介して完全に分散される。ガス状の副生物の形成を防止し、所定の総反応器圧において設定された一酸化炭素分圧を維持するために、ガス状のパージ流が反応器より排気される。反応器の温度は、自動的に制御され、一酸化炭素供給物は、所望される総反応器圧を維持するのに十分な速度で導入される。
液体生成物は、カルボニレーション反応器10よりその中の一定レベルを維持するのに十分な速度で取り出され、導管11を経てフラッシャー12に導入される。フラッシャー12においては、触媒溶液が基底流13(主として、少量の酢酸メチル、ヨウ化メチルおよび水とともにロジウムおよびヨーダイド塩を含有する酢酸)として取り出され、他方、フラッシャーのオーバーヘッド15は、ヨウ化メチル、酢酸メチルおよび水とともに、大部分、生成物酢酸を含む。ガス状の副生物、例えば、メタン、水素および二酸化炭素とともに一酸化炭素の一部からなる流11の溶解ガスは、流15を介してフラッシャーを出て、スプリッター塔14に入り、そこからスプリッター塔オーバーヘッド受器35に入り、スプリッター塔オーバーヘッド受器35の頂部のベントを介してシステムより出る。ヨウ化メチル−酢酸スプリッターよりのオーバーヘッド20は、主として、ヨウ化メチルおよび酢酸メチルプラス若干の水、酢酸および揮発物を含み、通常、導管21を経てカルボニレーション反応器10にリサイクルされる。
ヨウ化メチル−酢酸スプリッター塔14の基底近くの側部より取り出される生成物酢酸(それは、また、基底流として取り出すこともできる)は、導管17を介して、例えば、蒸留によって水を取り出すための、最終精製用の乾燥塔22に向けられる。
Price,loc citのカルボニレーションプロセスに従えば、オーバーヘッド20に集積するアルカン不純物は、反応器におけるアルカン類の実質的な形成を防止するために、この流より除去され、かくして、酢酸生成物の質の改良を生ずる。Priceに従えば、アルカン除去は、流30よりの物質を一酸化炭素流でストリッピングすることによって達成される。このプロセスよりの残渣は、以下の比較実施例において示すように、冷却すると、2相に分離する。上層は、アルカン類およびアルキルヨーダイド類を含有し、他方、下層は、主として、酢酸、プロピオン酸および水を含有する。
本発明の方法に従いオーバーヘッド20が凝縮する時、それは、十分な水が存在する場合、典型的には、デカンター35内で2つの液相に分割される。重質相30は、主として、ヨウ化メチルプラス若干の酢酸メチルおよび酢酸ならびにアルカンおよびカルボニルの不純物を含む。軽質相32は、主として、水および酢酸プラス若干の酢酸メチルおよびカルボニル不純物を含む。ヨウ化メチル−酢酸スプリッターよりの重質相30は、流40として本発明に従う処理に賦されるかまたは流21としてリサイクルされる。
上記考察したように、我々は、流20をデカンター35内で重質相30と軽質相32とに分離すると、軽質相を触媒蒸留システム50に供給するために使用することを可能とし、還流比約0.5〜約5、好ましくは、約1〜約3で還流塔内で簡単な蒸留で蒸留するために使用することを可能とし、塔よりの基底流をデカンター45に通すことを可能とすることを見いだした。触媒蒸留塔50のストリッピング部分54よりデカンター45に水を加えると、通常は、2相に分離しない基底液が2相に分離し、この分離は、プライスの方法と比較して我々によって示されたよりも、上層に分配されるアルカン類が多いほど、下層水性液に分配される酸類が多いほど、促進される。この高められた分離は、さらに回収可能な酢酸を含有する下方水相を生ずる。この酢酸は、プライスの方法に従うシステムで失われる代わりに、極めて有益に本プロセスにリサイクルすることができる。
本発明の処理プロセスに従えば、分離のための水は、精製プロセスの種々の流より誘導することができ、さらに詳しくは、酢酸乾燥塔22またはスプリッター塔14より誘導することができる。本発明に従えば、乾燥塔22のオーバーヘッド26よりの少なくともスリップ流、および/またはスプリッター塔14よりの軽質相32は、主として、水、プラス若干の酢酸、ヨウ化メチルおよび酢酸メチルを含有し、メタノールと反応させ、酢酸を酢酸メチルと水とに転化し、ヨウ化メチル、酢酸メチルおよび未反応のメタノールを含む軽質有機成分は、水を残してプロセスにリサイクルされ、水は、ついで、塔40の基底の容器45内で分離を生ずるために使用される。乾燥塔22よりのオーバーヘッド26は、典型的には、5〜20重量%の酢酸を含有する。スプリッター塔14よりの軽質相は、典型的には、20〜30重量%の酢酸を含有する。前述の米国特許5,371,429に開示されたプロセスにおいて、オーバーヘッド26は、酢酸を含有する水相よりヨウ化メチルおよび酢酸メチルを除去するために蒸留される。分離においては、希酢酸水相が使用される。前述したように、高レベルの酢酸が存在する場合には、アルカン除去は、実質的に改良されない。同様に、水性流のパージは、酢酸が廃棄されるので、コスト的に非常に効率が悪い。図2に示したようなアルカン除去プロセスの第1の工程において、重質相流30は、アルカンおよびカルボニル不純物を含有し、還流塔40に入り、還流塔40では、流42および43を介して、還流比約1〜約50が維持される。オーバーヘッド流は、プロセスにリサイクルするか、または、例えば、同時継続出願我々のDocket c-7046またはEPO公開出願487,284の方法に従い、リサイクルする前に、カルボニル不純物を除去するためにさらに処理される。
流44の塔40よりの残渣は、デカンター45に入る。水性流46も、また、流44を介してデカンターに加えられ、残渣の2相への分離を生ずる。流47の上方有機相は、アルカン類を含有し、これは、環境的に健全なようにして廃棄され、流48の下方水相は、水と酢酸とを含有し、これは、反応器10、フラッシャー12、スプリッター塔14、乾燥塔22、または、デカンター35にリサイクルされる。
本発明に従えば、水相よりアルカン類を分離するためにデカンター45に向けられた水性流46の、全部ではないが、少なくとも若干は、乾燥塔22よりの水性オーバーヘッド26より誘導される。さて、図2を参照し、反応させ、(酢酸メチルとして)酢酸を水より分離するための乾燥塔オーバーヘッド26の処理をさらに詳細に説明することとする。オーバーヘッド26またはそれよりのスリップ流は、触媒蒸留ユニット50に向けられ、そこで、メタノール(MeOH)を添加すると、酢酸(HAc)は、酸触媒の存在でエステル化され、以下のように:
Figure 0003803114
酢酸メチル(MeAc)と水とを生ずる。
反応において、本発明の方法に従えば、メタノールと酢酸とは、反応体の酢酸メチル生成物への高い転化率を達成するために十分な滞留時間を付与する1本の連続触媒蒸留ユニット50内で反応される。乾燥塔オーバーヘッド26内に容れられた90%以上の酢酸が酢酸メチルに転化されることが見いだされた。
メタノールと酢酸との酢酸メチルへの高い転化率は、反応体の向流と生成物の同時取り出しによって達成される。再度図2を参照すると、水、約5〜20重量%の酢酸および少量のヨウ化メチルおよび酢酸メチルを含有する乾燥塔オーバーヘッド26は、ユニット50に位置決めされた触媒領域52の頂部に供給され、他方、メタノールは、触媒領域52の基底に供給される。ユニット50全体の条件は、反応体が触媒領域52を向流的に流れ、反応して酢酸メチルと水とを形成するようにする。水よりも低沸点を有する酢酸メチルは、オーバーヘッドに留出され、カルボニレーションシステムに戻すことができる。形成される水の本体は、ユニット50を通して下方向に向かい、水性流62としてユニット52の基底より向かう残渣流を形成し、その全部または一部は、水性流46を形成することができる。
酢酸のメタノールによるエステル化は、酢酸メチルが加水分解されてメタノール反応体と酢酸反応体を生成することを含む逆反応が通常バッチ条件下で生ずる平衡反応である。メタノールを乾燥塔オーバーヘッド26、および/または、スプリッター塔軽質相32に収容された酢酸と連続的に反応させ、形成される酢酸メチルを留去することによって、反応は、酢酸メチルと水との形成へと推進され、ユニット50を放れる高純度の水性基底流を生ずる。
さて、触媒蒸留ユニット50とその中の条件のさらに詳細な説明を記すこととする。ユニットへの供給流28は、ユニットよりの種々の希酢酸流、特に、スプリッター塔デカンター35よりの軽質相を含む流32よりのスリップ流である流32a、流26よりのスリップ流である流26a、乾燥塔オーバーヘッド、および、乾燥塔オーバーヘッドとスプリッター塔デカンター35よりの軽質相の組み合わせよりのスリップ流27aを含む。触媒蒸留ユニット50は、酢酸反応体とメタノール反応体との間および酢酸反応体とメタノール反応体との間のユニットで触媒と緊密な接触を生ずるように構成され、運転される。使用される触媒は、好ましくは、強酸触媒である。好ましくは、触媒は、ユニット50内にトレーまたは充填物によって保持される固定床として固定の形で使用される。酸触媒は、好ましくは、スルホン酸基を含有するカチオン性イオン交換樹脂である。Amberlyst 15R、Amberlyst 35RおよびAmberlyst 36Rが、メタノールの乾燥塔オーバーヘッド26および/または軽質相流32に含有される酢酸との反応を触媒するのに特に有効であることが見いだされた。触媒の固定床は、触媒領域52を形成する。触媒を液体、例えば、硫酸として供給することも可能であるものの、アルカン分離に使用する前に水性基底流より触媒を分離することが必要である。好ましい固定床配置において、固定床触媒を保持するために公知のいずれのトレーまたは充填物仕様も、本発明の触媒蒸留ユニット50に使用するのに適用可能である。ユニット50内の固定床触媒を保持するための特に有効な手段は、Koch KatamaxR充填物である。
メタノール反応体は、進入流(ingress stream)28に含まれる酢酸についてほぼ化学量論量でユニット50に供給することができる。メタノール対酢酸モル比は、実質的に全ての酢酸が酢酸メチルに確実に転化されるように少なくとも1:1である必要がある。過剰のメタノールが好ましい。過剰のメタノールがユニット50より簡単に蒸留され、ユニット50のオーバーヘッドの導管60を経てカルボニレーション反応器10に反応器供給物として戻される限り供給される過剰のメタノールに特に上限はない。しかし、概して、メタノール対酢酸のモル比は、約1:1〜約10:1の範囲、好ましくは、約2:1〜5:1の範囲、最も好ましくは、約3:1〜5:1の範囲である必要がある。
ユニット50の触媒領域52の下方には、メタノールストリッピング部分54がある。ストリッピング部分54は、より低沸点の酢酸メチルおよびメタノールをユニット50の基底に落下するより高沸点の水および酢酸より分離するように運転される。ユニット50の基底ストリッピング部分54は、典型的には、メタノールを水より蒸留するように蒸気による圧力条件に関して適当な温度に加熱される。メタノールが上昇すると、この反応体は、触媒領域52および向流的に流れる酢酸と接触して反応し、酢酸メチルと水とを形成する。
ストリッピング部分54は、向流気−液接触に適合したいずれの従来の蒸留トレーを含んでもよく、例えば、シーブトレー、バルブキャップトレー、バルブトレー、トンネルキャップトレー等が挙げられる。また、ストリッピング部分54は、バールサドル、ラシヒリング、インターロックサドル、種々の構造の充填物等を含む不活性充填物を含んでもよい。蒸留トレーおよび充填物部分ともストリッピング部分54に使用することができる。
触媒蒸留ユニット50内の触媒領域52の上方の領域56は、別のように構成することもできる。1つの構成において、領域56は、好ましくは、還流モードで運転される精留部分であり、この中には、上記したように従来の蒸留トレーまたは充填物が、水より形成された酢酸メチルおよびその他の低沸点有機物、例えば、ヨウ化メチルおよびメタノールの分離を改良するようにその部分に組み込まれている。酢酸メチル、ヨウ化メチルおよび未反応のメタノールは、カルボニレーションプロセスにリサイクルするために、導管60を経て、ユニット50のオーバーヘッドに留出される。塔50内に残留する水は、塔を下降し、残渣流62の一部を形成する。精留部分は、還流させるか還流させずに運転することができる。ユニット50の領域56内の精留部分の使用は、任意であるが、ユニット50の頂部より留出される水の量を著しく減少させることが見いだされており、同様に、水性基底流内に残留する酢酸のパーセンテージを少なくする。他方、精留なしでは、導管60を経るユニット50よりの留出物内に含有される水の濃度が精留を使用する時よりも実質的に大きくなる。しかし、オーバーヘッド導管60内に留出する水の全体の物質流は、ユニット50に供給され、乾燥塔オーバーヘッド26または軽質相流32に存在する水の物質流よりも実質的に少ない。かくして、ユニット50よりの留出物が反応器10に全てリサイクルされる場合には、流60内に存在する水の物質流が流26または32の物質流よりも実質的に少なく、それによって、留出物60が約40重量%以下の水を含有してさえ、水をシステムよりパージする。
さて、ユニット50に供給された2重量%以下の酢酸を含有する基底または水性残渣流62は、全体の触媒メタノールカルボニレーションプロセスの種々の精製工程で有効に使用することができ、流62の全部または一部は、流64を通してパージされ、所望される場合には、カルボニレーション触媒水濃度を低下させることができる。
再度、図2を参照すると、水性残渣62の少なくとも一部は、流46を塔40よりの残渣である流44と合わせることによって、流46を介して、デカンター45に供給される。これとは別に、流46は、デカンター内での効率的な相分離を生ずるのに最も有益なデカンターの側部の点でデカンター45に直接導くことができる。またこれとは別に、流62よりの水は、流64で純粋な水としてシステムより取り出される。
外部からの水の代わりに、乾燥塔よりデカンター内にプロセス水を加える利点は、反応システムより結局取り出す必要のある水の量を最小とすることである。まさに重要なことは、カルボニレーションプロセス全体を循環する過剰量の水を制御および少なくするように、水性残渣流62をカルボニレーションシステムよりパージすることができることである。図2に示したように、水性基底流62は、導管64を通してパージすることができることである。さらに重要なことには、パージ流64は、実質的に純粋な水であり、廃棄される酢酸生成物は、極めて少ない。かくして、精製流に使用するのに乾燥塔オーバーヘッド26よりの水性相を使用し、貴重な反応体または生成物を廃棄することなくパージすることのできる実質的に純粋な水流を生じさせることによって、メタノール、酢酸メチルまたはジメチルエーテルを酢酸に転化するためのカルボニレーションプロセスの水管理がより良く制御される。これには、酢酸生成を増大させるように、カルボニレーション反応器内の含水率が最小とされることが特に重要である。カルボニレーション反応器10内の水レベルが12重量%以下、さらに重要なことには、5重量%以下に維持されるべき時、触媒蒸留ユニット50が提供する水管理システムがカルボニレーションプロセス全体の有益な一部となる。
スプリッター塔オーバーヘッド、特に、スプリッター塔オーバーヘッド20よりの重質ヨウ化メチル含有相からのアルカン類の除去に関して、水性残渣流62を説明したが、水性残渣62は、メタノール、酢酸メチルまたはジメチルエーテルの酢酸へのカルボニレーションの生成物の品質を改良するために開発されたその他の精製プロセスに使用することができることを理解するべきである。このような1つのプロセスは、EPO出願No.487,284に記載され、共通して譲渡された同時継続出願(我々の参照符号:C-7112)に記載されているような重質相よりのカルボニル化合物の除去を含む。これらプロセスの各々において、カルボニル化合物と反応してオキシムを形成するように、重質相にアミン塩が加えられる。水の添加は、カルボニレーションプロセスに戻すことのできる低沸点有機物質より分離するために、水相中でオキシムを溶媒和することを助ける。
さらに、処理すべき酢酸含有水性流を乾燥塔のオーバーヘッドおよびスプリッターよりの軽質相より得られるとして上記開示したが、本発明の触媒蒸留プロセスに従い処理することのできるカルボニレーションプロセスの間に形成されるその他の酢酸含有水性流も存在する。あらゆる場合において、本発明の方法は、酢酸を水性流より酢酸メチルとして回収し、水よりの酢酸の分離にかかるエネルギーコストを低減し、カルボニレーションプロセス全体を通しての含水率を制御するために使用することのできるより純粋な水性流を生成するのに有効である。当業者であれば、カルボニレーション反応よりの酢酸の分離および精製の間にこのような流を形成して実質的に乾燥した酢酸生成物を形成することは周知である。かくして、メタノール、酢酸メチルおよびジメチルエーテルの酢酸への触媒カルボニレーションの間またはその精製の間に形成され、50重量%以下の酢酸を含有するいずれの水性流も上記した触媒蒸留プロセスによって処理することができると考えられる。
比較実施例1
米国特許5,001,259の方法に従い作動する酢酸製造プラントのプライスの方式で運転されるアルカンストリッピング塔よりの残渣は、2相に分離することができた。相は、組成について分析し、その組成は、表Iで特記した以外は、重量パーセントとして表した。
Figure 0003803114
実施例1
上記したと同様の物質の試料を等体積の水と十分に混合し、層に分離した。層は、組成について分析し、その組成は、表IIに特記した以外は、重量パーセントとして表した。
Figure 0003803114
比較実施例2
従来技術に従う運転
米国特許4,102,922においてプライスによって記載された方式で運転される商業的な酢酸プラントより試料を取り、供給流およびストリッピング運転よりの残渣を分析した。結果は、以下の通りであった(表IIIにおいて、ppmとして特記しない限り、数字は、全て、重量%であった。)。
Figure 0003803114
塔40の還流運転
比較実施例2におけると同様の供給物を使用して、以下のように、塔40のシミュレーションを作動させた。
Figure 0003803114
供給物、オーバーヘッドおよび残渣を分析し、その結果を表IVに示した(特記しない限り、全ての成分は、重量%であった。)。
Figure 0003803114
実施例3
本実施例において、少量の酢酸を含有する水性流の触媒的な蒸留は、Rohm and Haasよりのマクロポーラスなスルホン酸樹脂触媒であるAmberlyst36Rの固定床を容れた2インチ実験室用の塔を使用して行った。この塔は、20トレーを容れた基底ストリッピング部分、触媒の固定床を容れた触媒部分および10トレーを容れた上方精留部分の3つの部分からなった。塔への供給物は、触媒固定床の頂部に向けられた20重量%の酢酸を含有する水性流を含んでいた。100%メタノールを含有する流を触媒固定床直下の塔に向かわせた。メタノール対酢酸のモル比は、4.3であった。塔よりの留出物をR/D比1.5で還流させた。塔は、大気圧で運転し、塔頂部の温度は、64℃であり、塔基底の温度は、103℃であった。酢酸水性流およびメタノール流の触媒蒸留塔への供給速度は、それぞれ、14.1g/分および6.55g/分であった。
触媒蒸留は、酢酸メチルとして98.9%の酢酸回収率を達成した。留出物は、以下のような組成を有した:35.6%酢酸メチル、3.2%水および60.1%メタノール(全て、重量%)。残渣流は、以下のような組成を有した:0.27%酢酸、98.3%H2O、<10ppmメタノールおよび<10ppm酢酸メチル(全て、重量%)。
実施例4
水性供給物が5%酢酸を含有し、還流比が1.25であり、メタノール対酢酸のモル比が4.3であり、頂部温度57および基底温度103で塔を運転した以外は、実施例3を繰り返した。酢酸水性液の供給速度は、14.35g/分であり、メタノールの供給速度は、1.64g/分であった。
触媒蒸留は、酢酸メチルとして96.7%の酢酸回収率を達成した。留出物は、39.1%酢酸メチル、60.4%メタノール、5.4%水の組成を有し、酢酸は有しなかった(全て、重量%)。残渣流は、0.152%酢酸、99.6%水、<10ppmメタノールおよび<10ppm酢酸メチル(全て、重量%)の組成を有した。
実施例5
本実施例において、触媒固定床上方の塔が触媒の上方の塔内で精留または還流を生じないように蒸留トレーを容れなかった以外は、実施例3に記載した実験室用の塔を使用した。触媒は、再度、Amberlyst 36Rであり、これは、実験室用の充填物とミックスした。水性供給物中の酢酸の量、メタノール対酢酸の比を変え、基底温度を幾分変化させて、8回の試験を行った。結果は、表Vに示す。塔内の基底温度が高いほど、残渣よりのメタノールの除去が改良され、オーバーヘッドの含水率も増加することが判明した。基底温度は、95〜105℃で変化させた。メタノール対酢酸のモル比は、2〜5.6で変化し、希酢酸供給物流は、酸濃度10.4%〜20.9%で変化させた。
塔に供給した水のうち、オーバーヘッドに行くパーセントは、質量基準で、22〜36%で変化させた。かくして、供給水の約64〜88%が基底から出て行き、他方、留出物中の含有酢酸含量の78〜98%が酢酸メチルとして回収された。
Figure 0003803114

Claims (8)

  1. メタノール、ジメチルエーテルまたは酢酸メチルからなる群より選択される1種以上の化合物を酢酸にカルボニレーションするための方法であり、
    さらにVIII族の金属カルボニレーション触媒、ヨウ化メチルおよび水を含有する反応媒体中で前記メタノール、ジメチルエーテルまたは酢酸メチルをカルボニル化して、酢酸と水とを含む反応生成物を形成し、
    前記反応生成物を、スプリッター塔により生成物酢酸と水性流とに分離し、前記生成物酢酸から乾燥塔により水を取り出すことにより、実質的に、乾燥酢酸と、5〜30重量%の酢酸を含有する1つ以上の水性流とに分離および精製する方法において、
    その改良が、乾燥塔またはスプリッター塔よりの前記水性流の少なくとも1つの少なくとも一部を、第2の触媒の存在下で、メタノールと反応させて酢酸メチルと水とを形成し、前記酢酸メチルを前記水より分離し、前記酢酸メチルを前記反応器にリサイクルすることを含む方法。
  2. 前記第2の触媒が酸触媒である、請求項1記載の方法。
  3. 前記酸触媒がスルホン酸基を含有するカチオン性交換樹脂を含む、請求項2記載の方法。
  4. 前記水性流が、前記水性流とメタノールとを前記第2の触媒と接触する間に、前記水性流をメタノールと向流的に接触させることによって反応させられる、請求項1記載の方法。
  5. 前記酢酸メチルより分離される前記水の少なくとも一部がパージされる、請求項1記載の方法。
  6. 前記反応媒体が有限量〜12重量%の水を含有する、請求項1記載の方法。
  7. 前記反応媒体が5重量%未満の水を含有する、請求項6記載の方法。
  8. 前記水性流中の前記酢酸濃度が5〜20重量%である、請求項1記載の方法。
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