JP3802479B2 - 鋼板の板波探傷方法及びこの探傷方法を実施する鋼板の製造方法並びにこの製造方法によって製造された鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱延鋼板や冷延鋼板を板波超音波を用いて探傷する方法及びこの探傷方法を実施する鋼板の製造方法並びにこの製造方法によって製造された鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼板の表裏面及び内面に発生する傷は、品質保証の観点より、鋼板の製造工程(検査工程を含む)において検出し、除去等する必要がある。斯かる鋼板の探傷方法の一つとして、板波超音波を用いて鋼板を探傷する板波探傷方法が知られている。
【0003】
従来の板波探傷方法としては、圧電型探触子を用いる場合が多いが、当該探触子と鋼板との間に介在させる接触媒質として水や油が必要となる。従って、これらの接触媒質を使用できない鋼板(特定用途の冷延鋼板や、ユーザから油塗布を禁止されている鋼板等)には圧電型探触子を用いた板波探傷方法を適用することはできず、また、接触媒質の塗布のばらつきや、通板中の鋼板の振動、鋼板表面の粗さ等に起因して接触状態が安定せず、探傷が困難となる場合が生じていた。
【0004】
これに対し、接触媒質を必要とせず、探触子を鋼板に接触させずに探傷可能である電磁超音波を用いた板波探傷方法が提案されている。図2は電磁超音波を用いた板波探傷方法に使用する電磁超音波探触子の概略構成例を示す断面図である。図2に示すように、電磁超音波探触子1は、励磁用の電磁石11と、電磁石11の両磁極間に配置された送信コイル12及び受信コイル13とを備えている。斯かる構成を有する電磁超音波探触子1は、電磁石11によって生じる鋼板S表面に平行な磁界による磁歪と、送信コイル12に通電することによって生じる渦電流とによって鋼板Sに磁歪力を発生させ、当該磁歪力によって板波超音波を発生させる。発生した板波超音波は、鋼板Sを伝搬し、傷や鋼板Sのエッジによって反射され、当該反射波が受信コイル13で検出され、電気信号に変換される。このように、電磁超音波を用いた板波探傷方法によれば、板波の振動源及び受信源が鋼板Sの表面にあるため、圧電型探触子を用いる場合と異なり、接触媒質は不要で且つ接触させる必要も無く、安定した探傷が可能であるという利点を有する。
【0005】
ここで、板波超音波は、その探傷周波数(f)と板厚(d)との積(通常、f・d値と称される)を変数として位相速度が変化する性質を有し、当該位相速度の変化によって生じる速度分散という現象により、感度が低下(反射波が緩慢となり反射強度が低下)する場合がある。従って、板波超音波を用いて鋼板を探傷する場合には、位相速度の安定している板波モード、つまり、探傷周波数と鋼板の板厚との積に対する位相速度の変化率が小さくなるような板波モードを選択し、当該板波モードを用いて探傷を実施していた。
【0006】
しかしながら、圧電型探触子を用いた板波探傷方法の場合、超音波の広がりを考慮し、屈折角を種々設定することにより、前述したように板波モードを選択するが、当該屈折角のばらつきや不安定さに起因して、選択した板波モード以外の板波モードが発せられる場合がある。
【0007】
また、電磁超音波を用いた板波探傷方法の場合、原理的に、同じ探傷周波数であっても、それぞれ異なる群速度(板波超音波が実際に鋼板を伝搬する速度)を有する複数の板波モードが発振される。従って、電磁超音波を用いた板波探傷方法の場合、選択しようとする板波モードの感度を向上させ選択性を高めるべく、図3に示すように、送受信コイル12、13を板波超音波の探傷周波数と位相速度とによって決定されるピッチを有するようにジグザグ状に形成する工夫が施される場合がある(例えば、特許文献1参照)。より具体的には、図3に示すように、コイルピッチ(P)を探傷周波数(f)及び位相速度(V)によって、P=0.5・V/fで決定することにより、特定の板波モードの発振を優先させている。
【0008】
【特許文献1】
特許第2667016号公報
【0009】
しかしながら、斯かる送受信コイル形状の工夫を施したとしても、前述したように、選択した特定の板波モード以外の複数の板波モードが発振されることは回避できず、コイルピッチの整数倍の波長(V/f)を有する他の板波モードが発振されたり、或いは、コイルピッチの微小なばらつきに起因して他の板波モードが発振される場合がある。
【0010】
以上に説明したように、圧電型探触子を用いる場合でも、電磁超音波を用いる場合でも、選択した特定の板波モード以外の他の板波モードが発振される場合がある。特に、選択した特定の板波モードより速い群速度を有する他の板波モードが発振される場合には、当該他の板波モードの鋼板での伝搬速度が速いため、前記選択した板波モードによる傷からの反射波と、前記他の板波モードによる鋼板エッジからの反射波とが重なり合って、両者の識別が困難となったり、鋼板エッジからの反射波が複数の板波モード分だけ重なり合うために探傷不能領域が増加したりして、高精度に探傷できない場合が生じるという問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、板波超音波を用いて高精度に探傷し得る方法及びこの探傷方法を実施する鋼板の製造方法並びにこの製造方法によって製造された鋼板を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者らは、前記課題を解決するべく、鋭意検討した結果、探傷周波数と鋼板の板厚との積を変数として板波超音波の群速度が変化する性質を利用し、まず群速度が最大乃至これに準ずる板波モードを選択するようにすれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0013】
すなわち、本発明は、請求項1に記載の如く、板波超音波を用いて鋼板を探傷する方法であって、板波超音波の探傷周波数を設定する第1ステップと、前記探傷周波数及び鋼板の板厚の積と板波超音波の群速度との関係に基づき、前記群速度が最大となる板波モードを選択する第2ステップと、前記探傷周波数及び鋼板の板厚の積と板波超音波の位相速度との関係に基づき、前記板波モードについての位相速度を算出する第3ステップと、前記探傷周波数及び鋼板の板厚の積に対する前記算出した位相速度の変化率が予め設定した値より小さいか否かを判断する第4ステップと、前記位相速度の変化率が予め設定した値より小さい場合には、前記設定した探傷周波数及び前記選択した板波モードで探傷する第5ステップとを含み、前記位相速度の変化率が予め設定した値以上の場合には、前記設定した板波超音波の探傷周波数を他の探傷周波数に設定し直して、前記第2ステップから前記第5ステップまでを繰り返し、さらに前記設定し直した他の探傷周波数に基づいて算出した位相速度の変化率が予め設定した値以上の場合には、当該探傷周波数及び鋼板の板厚の積と板波超音波の群速度との関係に基づき、前記群速度が次に大きい板波モードを選択して、前記第3ステップから前記第5ステップまでを繰り返すことを特徴とする鋼板の板波探傷方法を提供するものである。
【0014】
請求項1に係る発明によれば、第1ステップで探傷周波数を設定した後、第2ステップで当該探傷周波数と鋼板の板厚とから、群速度が最大となる板波モードを選択する。次に、第3ステップで当該選択した板波モードについての位相速度を算出し、第4ステップで当該算出した位相速度が安定しているか否か、つまり、その変化率が所定値より小さいか否かを判断する。当該判断の結果、位相速度の変化率が所定値より小さい場合には、第5ステップで前記設定した探傷周波数及び前記選択した板波モードで探傷することになる。換言すれば、まず群速度が最大となる板波モードを選択し、当該選択した板波モードについての位相速度が安定している場合に限って、当該選択した板波モードで探傷することになる。従って、選択した特定の板波モードより速い群速度を有する他の板波モードが発振されることなく、従来のように当該他の板波モードが発振されることによる探傷精度の悪化を回避することができると共に、位相速度が安定している場合に限って、選択した板波モードで探傷するため、速度分散による感度低下を招くこともなく、高精度に探傷可能である。なお、前記判断の結果、位相速度が安定していない場合、つまり、位相速度の変化率が所定値以上の場合には、探傷周波数を他の探傷周波数に設定し直して、群速度が最大となる板波モードの選択、選択した板波モードについての位相速度の算出、及び、位相速度の変化率が所定値より小さいか否かの判断が繰り返されることになる。さらに、前記設定し直した他の探傷周波数に基づいて算出した位相速度の変化率も予め設定した値以上になる場合には、当該探傷周波数及び鋼板の板厚の積と板波超音波の群速度との関係に基づき、前記群速度が次に大きい板波モードを選択して、選択した板波モードについての位相速度の算出、及び、位相速度の変化率が所定値より小さいか否かの判断が繰り返されることになる。
【0015】
本発明は、請求項2に記載の如く、前記板波超音波として電磁超音波を用いる場合に特に有用である。
【0016】
また、本発明は、請求項3に記載の如く、鋼板の板厚をd(mm)とし、板波超音波の探傷周波数をf(MHz)とした場合に、f・d≦2であればS0モードで、2<f・d≦3.5であればA0モードで、3.5<f・d≦5.5であればS1モードで、6.5<f・d≦7.5ではS2モードで、それぞれ探傷することにより、群速度が最大乃至これに準ずる板波モードを選択可能であると共に、当該板波モードの位相速度が安定した状態で探傷することが可能である。
【0017】
なお、本発明は、請求項4に記載の如く、製造工程内において、前記板波探傷方法を実施することを特徴とする鋼板の製造方法として、また、請求項5に記載の如く、前記製造方法によって製造されることを特徴とする鋼板としても提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る板波探傷方法を実施するための電磁超音波を用いた板波探傷装置の概略構成を示す模式図である。図4に示すように、板波探傷装置10は、電磁超音波探触子1と、当該探触子1に接続された探傷器2とを備えている。
【0019】
電磁超音波探触子1は、図2に示すように、両磁極が鋼板Sと対向配置された励磁用の電磁石11と、電磁石11の両磁極間に配置された送信コイル12及び受信コイル13とを備えている。図3に示すように、送信コイル12及び受信コイル13は、ジグザグ状に形成されており、その素線間ピッチPは、送信しようとする板波超音波の波長(V/f、V:位相速度、f:探傷周波数)の1/2に設定されている。
【0020】
探傷器2は、電磁超音波探触子1の電磁石11や送信コイル12を通電したり、受信コイル13で受信した受信波形をモニタ表示等するように構成されている。
【0021】
以上に説明した構成を有する板波探傷装置10において、電磁石11に通電することより鋼板S表面に平行な磁界による磁歪を生じさせる一方、送信コイル12に通電することによって渦電流を生じさせて、鋼板Sに磁歪力を発生させ、当該磁歪力によって板波超音波を発生させる。発生した板波超音波Wは、鋼板Sを伝搬し、傷Dや鋼板SのエッジEによって反射され(図4において、傷D及びエッジEからの反射波をそれぞれWd及びWeで示す)、当該反射波が受信コイル13で検出され、電気信号に変換される。電気信号に変換された反射波は、探傷器2にモニタ表示される。
【0022】
なお、本実施形態では、電磁超音波探触子1として、図2に示すように、鋼板Sの同一面側に、電磁石11、送信コイル12及び受信コイル13を配置する構成について説明したが、図5に示すように、電磁石11と、送信コイル12及び受信コイル13とを、鋼板Sの互いに反対面側にそれぞれ配置する構成を採用することも可能である。また、本実施形態では、励磁用の磁石として電磁石11を用いる構成について説明したが、永久磁石によって励磁する構成を採用することも可能である。
【0023】
以下、本実施形態に係る板波探傷方法の特徴部分について、より具体的に説明する。
【0024】
板波超音波は、その探傷周波数(f)と板厚(d)との積(通常、f・d値と称される)を変数として、群速度(図6)及び位相速度(図7)が変化する性質を有している。また、図6及び図7に示すように、同じf・d値であっても、複数の板波モード(S0、S1、S2、A0、A1、S0A0の各モード)が存在している。一般に、板波超音波を用いて鋼板Sを探傷する場合には、図7に示すように、位相速度が安定している(f・d値に対する位相速度の変化率が小さい)という観点から、S0A0モードを使用する場合が多い。
【0025】
しかしながら、前述した装置構成を有する板波探傷装置10によって、S0A0モードで探傷すると、他の板波モードからの反射波によって探傷精度が悪化するという問題がある。図8は、以下に示す条件で探傷した場合の探傷波形の例を示す。すなわち、
・探傷周波数(f):1MHz
・板波モード :S0A0モード
・位相速度(V) :約3000m/sec
・波長 :約3mm(送受信コイルピッチ1.5mm)
・板厚(d) :4.5mm(f・d値=4.5)
という条件である。
【0026】
図8に示すように、S0A0モードで探傷すると、当該S0A0モードでの傷Dからの反射波Wd(S0A0)と、鋼板エッジEからの反射波We(SOA0)との間に、他の板波モード(図8に示す例ではS1モード)での鋼板エッジEからの反射波We(S1)が存在することになり、両反射波Wd(S0A0)及びWe(S1)の識別が困難であるため、実質的に探傷できないという問題がある。これは、図6に示すように、f・d値が4.5付近では、S0A0モードよりもS1モードの方が群速度が速いために生じる現象である。なお、図6に示すように、群速度が速い板波モードとしては、S2モードも挙げられるが、f・d値が4.5付近におけるS2モードの位相速度は、その変化率が著しく大きいため(図7)、速度分散によって感度が著しく低下し、また、発振そのものが困難であることから、探傷波形中で観察されることはない。また、S0A0モードの位相速度の整数倍になっていない(S2モードの波長はS0A0モードの波長の整数倍になっていない)(図7参照)ため、前記条件のピッチを有する送信コイルからは当該S2モードが発振されないという理由もある。
【0027】
以上に説明したように、f・d値4.5付近での位相速度が安定しているという観点のみから、S0A0モードを選択したのでは、探傷精度が悪化、ひいては探傷不能という事態が生じる。
【0028】
そこで、本実施形態に係る板波探傷方法では、図1に示すように、板波超音波の探傷周波数を設定(探傷周波数を設定することにより、被探傷材たる鋼板Sの板厚との積であるf・d値が決定される)した後(図1のS100)、まず最初に、f・d値と群速度との関係(図6)に基づき、群速度が最大となる板波モードを選択するようにしている(図1のS200)。次に、f・d値と位相速度との関係(図7)に基づき、前記選択した板波モードについての位相速度を算出し、当該算出した位相速度の前記f・d値に対する変化率が予め設定した値(本実施形態では、410[(m/sec)/(MHz・mm)])より小さいか否かを判断する(図1のS300)。そして、位相速度の変化率が前記予め設定した値より小さい場合には、前記設定した探傷周波数及び前記選択した板波モードで探傷する(図1のS400)構成を採用している。
【0029】
仮に、位相速度の変化率が予め設定した値以上の場合には、設定した板波超音波の探傷周波数を他の探傷周波数に設定し直し(これによりf・d値も変化することになる)た後(図1のS500)、前記と同様に、群速度が最大となる板波モードの選択(図1のS200)、選択した板波モードについての位相速度の算出、及び、位相速度の変化率が所定値より小さいか否かの判断(図1のS300)が繰り返される。なお、探傷周波数の設定変更に際しては、送信コイル12の通電周波数を変更すると共に、探傷周波数によって決定される送受信コイル12、13の素線間ピッチPも変更することになる。
【0030】
次に、前記設定し直した他の探傷周波数に基づいて算出した位相速度の変化率も予め設定した値以上となる場合には、当該探傷周波数及び鋼板の板厚の積と板波超音波の群速度との関係に基づき、前記群速度が最大に準ずる、つまり群速度が次に大きい板波モードを選択(図1のS600)して、選択した板波モードについての位相速度の算出、及び、位相速度の変化率が所定値より小さいか否かの判断(図1のS300)が繰り返される。なお、群速度が次に大きい板波モードを選択することにより、当該選択した板波モードよりも大きな群速度を有する板波モード(最大の群速度を有する板波モード)が存在することになるが、当該板波モードについての位相速度の変化率は大きいため、速度分散によって感度が著しく低下するか、或いは、発振そのものが困難であり、選択した板波モードによる探傷には実質上悪影響を及ぼさない。
【0031】
斯かる板波探傷方法によれば、選択した板波モードより速い群速度を有する他の板波モードが実質上発振されることなく、従来のように当該他の板波モードが発振されることによる探傷精度の悪化を回避することができると共に、位相速度が安定している場合に限って、選択した板波モードで探傷するため、速度分散による感度低下を招くこともなく、高精度に探傷可能である。
【0032】
図9は、本実施形態に係る板波探傷方法を用い、以下に示す条件で探傷した場合の探傷波形の例を示す。すなわち、
・探傷周波数(f):1MHz
・板波モード :S1モード
・位相速度(V) :約5300m/sec
・波長 :約5.3mm(送受信コイルピッチ2.65mm)
・板厚(d) :4.5mm(f・d値=4.5)
という条件である。
【0033】
図9に示すように、f・d値が4.5付近において群速度が最大(図6参照)となると共に、位相速度も安定(図7参照)している板波モードであるS1モードで探傷すると、当該S1モードでの傷Dからの反射波Wd(S1)と、鋼板エッジEからの反射波We(S1)との間に、他の板波モードでの反射波が存在しないことになり、高精度に探傷可能である。
【0034】
他のf・d値に関しても、本実施形態に係る板波探傷方法を適用すれば、結局、f・d≦2であればS0モードで、2<f・d≦3.5であればA0モードで、3.5<f・d≦5.5であればS1モードで、6.5<f・d≦7.5ではS2モードで、それぞれ探傷することが最適であると言える。
【0035】
ここで、前述した探傷周波数は、探傷するべき傷の検出能と探傷周波数との関係を予め実験的に調査しておくことにより設定される。つまり、探傷周波数を高くすると、一般的に、傷の検出感度は高まる(小さい傷からの反射強度も大きくなる)ものの、鋼板Sにおける板波超音波の散乱が大きくなる等によりノイズが大きくなる。逆に、探傷周波数を低くすると、傷の検出感度は低くなるものの、ノイズも低下することになる。従って、傷の検出能の観点からは、想定される(検出目標とする)傷の大きさ等に応じて最適な探傷周波数が存在することになり、これを予め調査しておくことにより、適宜探傷周波数が設定される。
【0036】
例えば、板厚が4.5mmの鋼板Sを探傷する場合に、検出目標とする傷の検出能から1MHz程度の探傷周波数が必要であるならば、f・d値は4、5となり、前述のようにS1モードで探傷することになる。また、特に、貫通穴のような大きな傷を検出目標とする場合には、低周波数である200kHz程度の探傷周波数でも検出可能であり、この場合f・d値は0.9付近となるため、前述のようにS0モードで探傷することになる。
【0037】
また、板厚が6.0mmの鋼板Sを、探傷周波数1MHzで探傷する場合、f・d値は6となり、群速度が最大となる板波モードとしては、図6に示すように、S2モードが選択されることになる。しかしながら、S2モードにおいてf・d値=6の場合には、図7に示すように、位相速度の変化率が大きく、速度分散によって感度が低下するため、前述したように探傷周波数を設定変更(図1のS500)することになる。より具体的には、例えば、探傷周波数を750kHzに変更すると、f・d値=4.5となり、前述のように、板波モードとしてS1モードが選択されることになる。また、探傷周波数を1.25MHzに変更すると、f・d値=7.5となり、前述のように、板波モードとしてS2モードが選択されることになる。
【0038】
本実施形態に係る板波探傷方法によって決定される探傷周波数及び板波モードを鋼板Sの板厚d(mm)に関して整理すると、例えば、以下の条件で探傷することが考えられる。
(A)d≦2の場合、探傷周波数:1MHz、板波モード:S0モード(f・d≦2)
(B)2<d≦3.5の場合、探傷周波数:1MHz、板波モード:A0モード(2<f・d≦3.5)
(C)3.5<d≦5の場合、探傷周波数:1MHz、板波モード:S1モード(3.5<f・d≦5)
(D)5<d≦6の場合、探傷周波数:0.75MHz、板波モード:S1モード(3.75<f・d≦4.5)
【0039】
図10は、上記探傷条件に従い、1mm〜6mmの範囲内の板厚を有する鋼板Sの人工傷(貫通穴)を探傷した場合の傷検出能(S/N)評価結果を示す。図10に示すように、上記探傷条件((A)〜(D))に従って探傷することにより、一般的に自動探傷装置に必要とされているS/N>6を満足することが可能であった。なお、上記探傷条件では、板厚6mmまでの鋼板Sを探傷するべく、探傷周波数2種(1MHz、0.75MHz)、板波モード3種(S0、A0、S1)を用いているが、より小さい板厚範囲(例えば、板厚3.5mmまで)の鋼板Sを探傷する場合には、探傷周波数1種(1MHz)、板波モード2種(S0、A0)での探傷も可能である。また、探傷周波数をより細かく選択する(例えば、750kHz、850kHz、1MHz、1.25MHz、1.5MHzの5種)ことにより、傷の検出感度及び検出能を向上させることも可能である。
【0040】
なお、本実施形態では、本発明に係る板波探傷方法を電磁超音波を用いた板波探傷装置に適用する場合を例に挙げて説明したが、圧電型探触子を用いた板波探傷装置にも適用可能である。
【0041】
また、本発明に係る板波探傷方法を鋼板Sの製造工程内において実施することにより、検出した傷部をマーキングしたり、切断したりする他、スクラップ化や格下処理を施すことが可能であり、品質保証の点で信頼性に優れた鋼板を提供することができる。
【0042】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る板波探傷方法によれば、まず群速度が最大となる板波モードを選択し、当該選択した板波モードについての位相速度が安定している場合に限って、当該選択した板波モードで探傷することになる。従って、選択した特定の板波モードより速い群速度を有する他の板波モードが発振されることなく、従来のように当該他の板波モードが発振されることによる探傷精度の悪化を回避することができると共に、位相速度が安定している場合に限って、選択した板波モードで探傷するため、速度分散による感度低下を招くこともなく、高精度に探傷可能であるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る板波探傷方法の手順を示すフロー図である。
【図2】 図2は、電磁超音波を用いた板波探傷方法に使用する電磁超音波探触子の概略構成例を示す断面図である。
【図3】 図3は、送受信コイルの概略構成を示す図である。
【図4】 図4は、電磁超音波を用いた板波探傷装置の概略構成を示す模式図である。
【図5】 図5は、電磁超音波探触子の他の概略構成例を示す断面図である。
【図6】 図6は、f・d値と群速度との関係を示すグラフである。
【図7】 図7は、f・d値と位相速度との関係を示すグラフである。
【図8】 図8は、従来の板波探傷方法による探傷波形の例を示す。
【図9】 図9は、本発明に係る板波探傷方法による探傷波形の例を示す。
【図10】 図10は、本発明に係る板波探傷方法による傷検出能評価結果を示す。
【符号の説明】
1…電磁超音波探触子 2…探傷器 10…板波探傷装置
11…電磁石 12…送信コイル 13…受信コイル S…鋼板
Claims (5)
- 板波超音波を用いて鋼板を探傷する方法であって、
板波超音波の探傷周波数を設定する第1ステップと、
前記探傷周波数及び鋼板の板厚の積と板波超音波の群速度との関係に基づき、前記群速度が最大となる板波モードを選択する第2ステップと、
前記探傷周波数及び鋼板の板厚の積と板波超音波の位相速度との関係に基づき、前記板波モードについての位相速度を算出する第3ステップと、
前記探傷周波数及び鋼板の板厚の積に対する前記算出した位相速度の変化率が予め設定した値より小さいか否かを判断する第4ステップと、
前記位相速度の変化率が予め設定した値より小さい場合には、前記設定した探傷周波数及び前記選択した板波モードで探傷する第5ステップとを含み、
前記位相速度の変化率が予め設定した値以上の場合には、前記設定した板波超音波の探傷周波数を他の探傷周波数に設定し直して、前記第2ステップから前記第5ステップまでを繰り返し、
さらに前記設定し直した他の探傷周波数に基づいて算出した位相速度の変化率が予め設定した値以上の場合には、当該探傷周波数及び鋼板の板厚の積と板波超音波の群速度との関係に基づき、前記群速度が次に大きい板波モードを選択して、前記第3ステップから前記第5ステップまでを繰り返すことを特徴とする鋼板の板波探傷方法。 - 前記板波超音波として電磁超音波を用いることを特徴とする請求項1に記載の鋼板の板波探傷方法。
- 鋼板の板厚をd(mm)とし、板波超音波の探傷周波数をf(MHz)とした場合に、
f・d≦2であればS0モードで、2<f・d≦3.5であればA0モードで、3.5<f・d≦5.5であればS1モードで、6.5<f・d≦7.5ではS2モードで、それぞれ探傷することを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼板の板波探傷方法。 - 製造工程内において、請求項1から3のいずれかに記載の鋼板の板波探傷方法を実施することを特徴とする鋼板の製造方法。
- 請求項4に記載の鋼板の製造方法によって製造されることを特徴とする鋼板。
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