JP3801458B2 - トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真装置や静電印刷装置等の画像形成装置に用いられるトナーの製造方法の技術分野に属し、特に、少なくとも結着樹脂と着色剤とを混合した原材料混合物を溶融混練してマスターバッチを作製する第1混練工程と、第1混練工程で混練された混練物を希釈混練して希釈混練物を作製する第2混練工程とからなるトナーの製造方法の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置や静電印刷装置等の画像形成装置に用いられているトナーの製造方法として、粉砕法がある。また、この粉砕法によりトナーを製造する従来のトナーの製造方法として、少なくとも結着樹脂および着色剤を混合した原材料混合物を溶融混練する第1混練工程と、第1混練工程で混練された混練物を希釈混練する第2混練工程とからなるマスターバッチ法によるトナーの製造方法がある。
【0003】
このトナーの製造方法においては、第1混練工程で結着樹脂および各種着色剤等の原材料を混合するとともにこの混合物を混練機によって温度をかけながら圧縮力およびせん断力を付与することにより溶融混練し、その溶融混練物を冷却固化してマスターバッチを作製するとともにこのマスターバッチを粗粉砕し、次いで、第2混練工程で、第1混練工程で得られたマスターバッチの粗粉砕物に、前述の結着樹脂と同種または異種の結着樹脂と離型剤や電荷制御剤等の他の添加剤とを添加して希釈混合するとともに希釈混練し、次いでこの溶融混練物を冷却して固化するとともにこの固化物を粉砕装置によって適当な粒径に微粉砕し、更にこの微粉砕された微粉砕物を分級機によって分級してトナーがその性能を十分発揮できるように粒子径をそろえた後、適宜の外添剤をトナー粒子に付与してトナーを製造する方法である。
【0004】
ところで、トナーの性能に関する要素として、着色力、透過性、および帯電性があるが、これらは着色剤の選択や着色剤の含量によって左右されるが、こればかりではなく、トナー粒子内における着色剤の分散具合によっても大きく左右される。
【0005】
そこで、トナー粒子内における着色剤の分散をより向上させるトナーの製造方法が、例えば特許第2993624号公報および特許第3010326号公報等により提案されている。これらの特許公報に開示されているトナーの製造方法は、前述の第1混練工程において連続式2本ロール型混練機を用いている。すなわち、これらのトナーの製造方法では、連続式2本ロール型混練機の2本のロールの一端側に投入された原材料が2本のロール間の間隙部で温度をかけられながら、急激な圧縮力およびせん断力が与えられることで発熱して溶融し、ロール表面に付着する。そして、この溶融混練物がロール表面に付着した状態でロール間隙部で圧縮、せん断を繰り返し受けて混練されながらロールの他端側の混練物排出部側へ移送され、この混練物排出部から排出される。
【0006】
これらの特許公報開示のトナーの製造方法では、連続式2本ロール型混練機のロール間隙部で結着樹脂および着色剤が圧縮、せん断を繰り返し受けることで従来の他の混練機に比べてより分散した状態となるので、得られるトナーは前述の性能をより確実に発揮することができるようになる。
【0007】
このような連続式2本ロール型混練機を用いた他のトナーの製造方法として、連続式2本ロール型混練機であるオープンロール型連続混練機を用いて、前述の第1および第2混練工程を一工程で行うことが、例えば特開2000−75543号公報あるいは特開2000−75548号公報により提案されている。これらの公開公報に開示されているトナーの製造方法では、オープンロール型連続混練機により、結着樹脂に着色剤や離型剤や電荷制御剤等の添加剤を添加した混練を一工程で一括して行っている。このオープンロール型連続混練機により、トナーのすべての混練物がロール間隙部で圧縮、せん断を繰り返し受けることで従来の他の混練機に比べて分散するので、得られるトナーは前述の性能をより確実に発揮することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、トナーの性能は、前述のような着色剤の分散具合のみならず、トナー粒子中の他の各種原材料の分散具合によっても左右される。しかも、粉砕法によるトナー製造方法では、トナー粒子中のこれらの原材料の分散状態は混合工程および混練工程によってほぼ決まる。
【0009】
しかしながら、前述の各特許公報に開示されているトナーの製造方法では、第1混練工程の溶融混練に連続式2本ロール型混練機を用いているため、着色剤の分散は向上できるものの、ワックス等の離型剤や電荷制御剤等の添加剤は効果的にかつ十分に、しかも均一に分散されない。このため、前述の各特許公報開示のトナーの製造方法で製造されたトナーでは前述の性能が十分に発揮されるとは必ずしも言えない。
【0010】
しかも、ワックスについては、その配合量が増加するにつれて分散が悪化するようになるので、製造時における粉砕性が悪化してしまうばかりでなく、感光体やトナー規制ブレード等におけるフィルミングの発生等の問題が生じてしまう。
【0011】
また、前述の各公開公報に開示されているトナーの製造方法では、結着樹脂、着色剤、およびワックス等の離型剤や電荷制御剤等の添加剤の各原材料を一括して混練しているので、各原材料の分散を効果的にかつ十分に分散することは難しい。
【0012】
更に、マスターバッチ法によるトナー製造方法では、第1混練工程と第2混練工程との2工程からなることから、第2混練工程において着色剤が再び凝集してしまうおそれが考えられる。このように着色剤が再凝集してしまうと、第2混練工程以降でこの着色剤を再度分散させることは困難である。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、第2混練工程時に着色剤の再凝集を防止するとともに、第2混練工程時に加えられる添加剤を含むすべての添加剤を、より効果的に、より十分に、しかもより均一に分散することができるトナーの製造方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、請求項1の発明のトナーの製造方法は、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有した原料混合物を溶融混練する第1混練工程と、該第1混練工程で得られた混練物と、少なくとも前記結着樹脂と同種または異種の結着樹脂と、少なくとも離型剤および電荷制御剤を含む添加剤とを加えて希釈混合し、該希釈混合物を溶融混練する第2混練工程とを有するトナーの製造方法において、前記第1、第2混練工程において、ともに同一のギャップ間距離を置いて配置された前ロールと後ロールとを備え、前記前ロールの回転数が前記後ロールの回転数より大きく設定されたオープンロールの連続式2本ロール型混練機を用いているとともに、 前記第1混練工程時の前記前ロールの混合物投入側の第1混練温度および前記第2混練工程時の前記前ロールの混合物投入側の第2混練温度を、第1混練温度 > 第2混練温度に設定しており、前記連続式2本ロール型混練機の前記前ロールの前記混合物投入側の設定温度TRfと混練物排出側の設定温度TRe(ともにロール内の媒体の設定温度)の関係が、TRf > TReであることを特徴とする。
【0015】
また、請求項2の発明は、前記連続式2本ロール型混練機の前記前ロールおよび前記後ロールのいずれのロール温度(ロール内の媒体の設定温度)も、混合物投入側と混練物排出側とについて、異なる温度設定が可能であることを特徴とする。
【0016】
更に、請求項3の発明は、前記第1混練工程で使用する結着樹脂が、非線形ポリエステル樹脂が主成分であることを特徴とする。
更に、請求項4の発明は、前記第2混練工程にて添加する離型剤が、融点100℃以下のワックスであることを特徴とする。
【0017】
【作用】
このように構成された本発明のトナーの製造方法においては、第1混練工程において連続式2本ロール型混練機により少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有した原料混合物が混練されて第1混練物であるマスターバッチが得られるとともに、このマスターバッチに、希釈用の結着樹脂、ワックス等の離型剤、電荷制御剤、およびその他の適宜の添加剤とが加えられて希釈混合され、この希釈混合物が第2混練工程において連続式2本ロール型混練機により希釈混練されるので、すべての添加剤がより効果的にかつより十分に、しかもより均一に分散される。また、第2混練工程でマスターバッチも連続式2本ロール型混練機によって一緒に混練されるが、マスターバッチ内の着色剤は第1混練工程で連続式2本ロール型混練機により一度溶融混練されて分散されているので、更に効果的かつ十分に分散されるようになる。
【0018】
こうして、本発明のトナーの製造方法においては、着色剤、ワックスや電荷制御剤等の添加剤が効果的にかつ十分に、しかも均一に分散できるので、トナーの性能に関する要素である、前述の着色力、透過性、および帯電性がいずれも効果的に向上したトナーが製造されるようになる。
【0019】
更に、第1、第2混練工程とも、オープンロール型連続式混練機が用いられることにより、混練機が開放系となって混練物が空冷されるので、各混練物の温度上昇が抑制され、混練物の粘度低下を極力抑えることが可能になる。これにより、特に、第2混練工程で加えられた希釈用樹脂と添加剤とに、それらの低温を維持しながら混練することで効果的にせん断力がかけられるので、カルナバワックスのような低融点ワックス等の低融点の添加剤が用いられても、その低融点添加剤の熱的ダメージが防止され、その物性値の変化が抑制されるとともに、高分散の実現が可能となる。
【0020】
したがって、所望の物性値のトナーの設計が容易になるとともに、低温定着やオイルレス定着に確実にかつ十分に対応可能となる。こうして、着色剤のみならず、離型剤や電荷制御剤等の添加剤の分散が優れたトナーが製造されるようになる。
【0021】
そして、このように添加剤の分散性がより高くなることによって、透明性、現像機内等での耐久性(耐フィルミング性等)を飛躍的に向上させることが可能となる。特に、低融点ワックス等の低融点の添加剤の配合量が増加されても、この添加剤の分散がより十分にかつより均一に行われるので、製造時での粉砕性が向上するとともに、感光体やトナー規制ブレード等におけるフィルミングの発生が抑制されるようになる。
【0022】
また、オープンロール型連続式混練機は、原料の投入口および取出口で最もせん断力がかかるため、混練を第1、第2混練工程の2段階にすることによって、一括混練より更なる高分散化が可能になる。
【0023】
更に、第2混練工程時の前ロールの混合物投入側の第2混練温度が第1混練工程時の前ロールの混合物投入側の第1混練温度より低くなるように設定しているので、第2混練時の混練物の粘度が高くなる。ところで、混練時のせん断力アップには、粘度アップによる効果がせん断速度(=ロール速度/ギャップ間距離)による効果よりも非常に高い。したがって、第2混練温度が第1混練温度以下に設定されることで、混練物にかけられるせん断力が効果的にアップにし、着色剤の再凝集が防止されるとともに、添加した離型剤や電荷制御剤等の分散性も高めることが可能となる。したがって、添加剤の高分散化が実現されることにより、透明性、現像器内等での耐久性(耐フィルミング性)、製造時の粉砕性等が向上するようになる。
また、このような「ロール温度の設定」によるせん断力のアップは他のファクターを制御することよりも簡便であり、かつ効果が最も大きい。
【0024】
また、前ロールの混練物排出側の設定温度TReが混合物投入側の設定温度TRfより低く設定される、これにより、混練物排出側で高いせん断力が混練物にかけられるようになり、着色剤や離型剤等の添加剤の分散向上がより効果的に達成されるとともに、結着樹脂の分子量の低分子量側への拡大や、強混練による混練応力の蓄積およびフィラー効果等による粘度の調整によって、定着特性の向上(より広い非オフセット域の確保)を可能にする。
【0025】
特に、請求項2の発明においては、前ロールおよび後ロールのいずれのロール温度(ロール内の媒体の設定温度)も、混合物投入側のロール温度(ロール内の媒体の設定温度)が混練物排出側のロール温度(ロール内の媒体の設定温度)と異なる温度に設定可能となる。これにより、せん断力が原料供給側と混練物排出側とで異なるように設定されることで、着色剤や離型剤等の添加剤の分散向上がより効果的に達成されるようになる。
【0026】
更に、請求項3の発明においては、第1混練工程時に非線形ポリエステルが使用される。このように非線形ポリエステルを使用することにより、第1混練工程時に混練物に高いせん断力をかけることが可能となり、着色剤の高分散が実現されるようになる。
【0027】
更に、請求項4の発明においては、第2混練工程にて融点100℃以下のワックスが離型剤として添加されるようになる。これにより、添加剤の分散向上により耐久性が確保された上で、定着特性(低温定着およびオイルレス定着)の向上、グロス設計の両立が可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係るトナーの製造方法の実施の形態の一例を示すフローを示す図である。
この例のトナーの製造方法では、後述するように第1、第2混練工程でそれぞれ連続式2本ロール型混練機を用いているが、各製造工程で使用される他の設備はいずれも従来のトナー製造方法で使用されている公知の設備を用いることができる。以下、この例のトナーの製造方法について具体的に説明する。
【0029】
図1に示すように、この例のトナーの製造方法では、ステップS1で原料混合工程が行われる。この原料混合工程では、後述する混練機に投入する投入材料のための原料混合物が作製される。投入材料としては、結着樹脂(1)、着色剤、およびその他の材料が用いられる。
【0030】
原料混合物の結着樹脂(1)、着色剤、および他の原料は、例えば、前述の各特許公報および各公開公報に記載されているものを始め、従来のトナー製造方法に用いられている公知の結着樹脂、着色剤、および他の原料と同じものを用いることができる。その場合、結着樹脂(1)は単一の樹脂でもよいし、あるいは複数の樹脂の組合でもよい。特に、第1混練に使用する結着樹脂(1)としては、非線形の樹脂が高いせん断力をかけることができることから好ましく、特に非線形ポリエステルが最適である。そして、結着樹脂(1)と着色剤とは所定の割合(例えば、結着樹脂(1):着色剤=7:3)に設定されている。
【0031】
次に、ステップS2で連続式2本ロール型混練機を用いて混練工程(第1混練工程)が行われる。この第1混練工程では、少なくとも結着樹脂(1)および着色剤を含む原料を混合した原料混合物を溶融混練することにより、第1混練物(マスターバッチ)が作製される。図2(a)および(b)に示すように、連続式2本ロール型混練機1は、互いに所定のギャップ間距離を置いて配置された前ロール2と後ロール3とを備え、両ロール2,3が外部に露出したオープンロールに形成される。そして、両ロール2,3の図において左端部に、図示しないフィーダーによって原料混合物が投入される原料混合物投入部1aが設けられているとともに、前ロール2の右端部に第1混練物(マスターバッチ)排出部1bが設けられている。
【0032】
前ロール2は、その内部が中空状になっているとともに、この内部がその軸方向中央で原料混合物投入部1a側の左側内部室2aと第1混練物排出部1b側の右側内部室2bとに区画されている。そして、左側内部室2a内に加熱された油、蒸気、温水などの熱媒体が循環しながら導入されることで、この左側内部室2aに対応する前ロール2の表面に付着した原料混合物をこの熱媒体によって設定温度で加熱できるようになっている。また、右側内部室2b内に冷却水等の冷媒体が循環しながら導入されることで、この右側内部室2bに対応する前ロール2の表面に付着した混練物はこの媒体によって温度調節され固化するようになっている。
【0033】
一方、後ロール3も、その内部が中空状になっているとともに、この内部がその軸方向中央で原料混合物投入部1a側(供給側)の左側内部室3aと第1混練物排出部1b側(排出側)の右側内部室3bとに区画されている。そして、左、右側内部室3a,3b内にそれぞれチラー水等の温度調節用冷媒体が循環しながら導入されることで、混練時の混練物の混練温度が調節されるようになっている。すなわち、ロール温度設定は前、後ロール2,3のそれぞれの供給側と排出側とでそれぞれ2分割で行われ、結局、4ヶ所のロール温度が設定可能となっている。
なお、後ロール3は2つの室に区画されずに単一の室に形成して、この室にチラー水等の温度調節用媒体を循環しながら導入するようにすることもできる。
【0034】
また、この例の連続式2本ロール型混練機1では、図示しないが、両ロール2,3のうち、少なくとも後ロール3の表面に混練物を第1混練物排出部1bの方へ移送するための螺旋溝等の移送用溝が形成されている。もちろん、場合によってはこの移送用溝は両ロール2,3のいずれにも設けることもできるし、また必ずしも設ける必要もない。
【0035】
このように構成された連続式2本ロール型混練機1においては、前、後ロール2,3を図2(b)に矢印で示す方向に回転させる。その場合、前ロール2の回転数が後ロール3の回転数より大きく設定されている。また、前ロール2の左、右側内部室2a,2b内にそれぞれ熱媒体を循環導入するとともに、後ロール3の左、右側内部室3a,3b内に温度調節用媒体を循環導入することで、前、後ロール2,3の各原料投入(供給)側(各左側内部室2a,3a部分)の温度および前、後ロール2,3の各第1混練物排出側(各右側内部室2b,3b側部分)の温度をそれぞれの設定温度に設定する。
【0036】
その場合、前ロール2の第1混練物排出側の設定温度TReが前ロール2の原料投入(供給)側の設定温度TRfより低くなるように設定されている(TRf>TRe)。また、前ロール2の両側の設定温度がいずれも後ロール3の両側の設定温度より高くなるように設定される。この状態で、原料混合物投入部1aから前述の原料混合物を投入する。
【0037】
すると、この原料混合物は、後ロール3の原料供給側の設定温度で温度調節つつ前ロール2の原料供給側の設定温度で加熱されながら、両ロール2,3の回転に伴って混練されるとともにこの混練物が両ロール2,3間の間隙部で圧縮力およびせん断力が与えられて発熱することで溶融して前ロール2のロール表面に付着する。特に、原料混合物投入部1a付近では、この原料混合物投入部1aから投入された原料混合物が比較的低温であるため、この原料混合物に比較的大きなせん断力が付与される。そして、原料混合物はロール表面に付着した状態でロール間隙部において繰り返し圧縮、せん断を受けて溶融混練されながら前ロール2の他端側の第1混練物排出部1bの方へ移送される。このとき、溶融混練されながら移送される溶融混練物は空冷されるので、高温になることはない。
【0038】
前ロール2のロール表面に付着した溶融混練物が前ロール2の右側内部室2bに対応するロール表面に来ると、この溶融混練物は、後ロール3の第1混練物排出側の設定温度で温度調節つつ前ロール2の第1混練物排出側の設定温度で調節されて固化する。このとき、第1混練物排出部1b付近でも、溶融混練物が比較的低温であるため、この溶融混練物に比較的大きなせん断力が付与される。前ロール2のロール表面に固化した溶融混練物は第1混練物排出部1bの位置に来ると、従来と同様に図示しないカッターでカットされて、第1混練物(マスターバッチ)として第1混練物排出部1bから排出される。
【0039】
次に、ステップS3で粗粉砕工程が行われる。この粗粉砕工程では、第1混練物排出部1bから排出された第1混練物(マスターバッチ)を粗粉砕して、第1混練物(マスターバッチ)粗砕物を作る。この粗粉砕工程は必要に応じて実行され、場合によっては省略される。次いで、ステップS4で希釈混合(調合)工程が行われる。この希釈混合工程では、後述する混練機に投入する投入材料のための希釈混合物が作製される。投入材料としては、希釈用の結着樹脂(2)、第1混練物(粗砕物)、離型剤、電荷制御剤(CCA)等の添加剤が用いられる。
【0040】
希釈混合物の結着樹脂(2)、離型剤、電荷制御剤等の添加剤は、例えば、前述の各特許公報および各公開公報に記載されているものを始め、従来のトナー製造方法に用いられている公知の結着樹脂、離型剤、電荷制御剤等の添加剤と同じものを用いることができる。このとき、結着樹脂(2)は前述の結着樹脂(1)と同種または異種のいずれの結着樹脂でもよく、また単一の樹脂でもよいし、あるいは複数の樹脂の組合でもよい。更に、離型剤は、単一の離型剤の材料でもよいし、あるいは複数の離型剤の材料の組合でもよいが、特に低融点ワックスが好ましく、なかでも融点100℃以下のワックスが最適である。更に、電荷制御剤も単一の電荷制御剤の材料でもよいし、あるいは複数の電荷制御剤の材料の組合でもよい
【0041】
次に、ステップS5で連続式2本ロール型混練機を用いて希釈混練(第2混練)工程が行われる。この第2混練工程では、結着樹脂○2、第1混練物、ワックス等の離型剤および電荷制御剤等の添加剤を混合した希釈混合物を溶融混練することにより、第2混練物(希釈混練物)が作製される。図3(a)および(b)に示すように、連続式2本ロール型混練機1′は、互いに所定のギャップ間距離を置いて配置された前ロール2′と後ロール3′とを備え、両ロール2′,3′が外部に露出したオープンロールに形成される。その場合、この第2混練工程における前ロール2′と後ロール3′との所定のギャップ間距離は、前述の第1混練工程における前ロール2と後ロール3とのギャップ間距離と同一に設定されている。
そして、両ロール2′,3′の図において左端部に第1混練物の希釈混合物投入(供給)部1′aが設けられているとともに、前ロール2′の右端部に第2混練物(希釈混練物)排出部1′bが設けられている。第1混練物の希釈混合物投入部1′aからは、図示しないフィーダーによって前述の第1混練物の希釈混合物、すなわち、第1混練物、結着樹脂○2、離型剤、電荷制御剤(CCA)、およびその他適宜の添加剤が投入されるようになっている。その場合、第1混練物と結着樹脂○2とは所定の割合(例えば、第1混練物:結着樹脂○2=2:10)に設定されている。
【0042】
この前ロール2′も、その内部が中空状になっているとともに、この内部がその軸方向中央で第1混練物の希釈混合物投入部1′a側の左側内部室2′aと第2混練物排出部1′b側の右側内部室2′bとに区画されている。そして、左側内部室2′a内に加熱された油、温水などの熱媒体が循環しながら導入されることで、この左側内部室2′aに対応する前ロール2′の表面に付着した希釈混合物をこの熱媒体によって設定温度で加熱できるようになっている。また、右側内部室2′b内に温度調節した油、水などの媒体が循環しながら導入されることで、この右側内部室2′bに対応する前ロール2′の表面に付着した混練物はこの媒体によって温度調節され固化するようになっている。
【0043】
一方、後ロール3′も、その内部が中空状になっているとともに、この内部がその軸方向中央で第1混練物の希釈混合物投入部1′a側の左側内部室3′aと第2混練物排出部1′b側の右側内部室3′bとに区画されている。そして、左、右側内部室3′a,3′b内にそれぞれチラー水等の温度調節用冷媒体が循環しながら導入されることで、混練時の混練物の混練温度が調節されるようになっている。
【0044】
なお、後ロール3′は2つの室に区画されずに単一の室に形成して、この室にチラー水等の温度調節用媒体を循環しながら導入するようにすることもできる。また、この例の連続式2本ロール型混練機1′では、図示しないが、両ロール2′,3′のうち、少なくとも後ロール3′の表面に混練物を希釈混練物排出部1′bの方へ移送するための螺旋溝等の移送用溝が形成されている。もちろん、場合によってはこの移送用溝は両ロール2′,3′のいずれにも設けることができるし、またいずれにも必ずしも設ける必要はない。
【0045】
このように構成された連続式2本ロール型混練機1′においては、前、後ロール2′,3′を図3(b)に矢印で示す方向に回転させる。その場合、前ロール2′の回転数が後ロール3′の回転数より大きく設定されている。また、前ロール2′の左、右側内部室2′a,2′b内にそれぞれ熱媒体を循環導入するとともに、後ロール3′の左、右側内部室3′a,3′b内に温度調節用媒体を循環導入することで、前、後ロール2′,3′の各希釈混合物投入(供給)側(各左側内部室2′a,3′a側部分)の温度および前、後ロール2′,3′の各第2混練物排出側(各右側内部室2′b,3′b側部分)の温度をそれぞれの設定温度に設定する。その場合、前ロール2′の第2混練物排出側の設定温度T′Reが前ロール2′の希釈混合物投入(供給)側の設定温度T′Rfより低くなるように設定されている(T′Rf>T′Re)。しかも、前ロール2′の第2混練物排出側の設定温度T′Reが、前述の第1混練工程における前ロール2の第1混練物排出側の設定温度TRe以下に設定されている。
【0046】
また、前ロール2′の両側の設定温度がいずれも後ロール3′の両側の設定温度より高くなるように設定されている。
【0047】
また、第2混練工程における前ロール2′の混合物投入側の第2混練温度が第1混練工程における第1混練温度より低く設定されている(第1混練温度>第2混練温度)。これらの第1、第2混練温度は、それぞれ、前ロール2,2′の混合物投入側の設定温度(実際には、ロール内の媒体の設定温度)であり、特に、前ロール2,2′の混合物投入側の温度をこのように設定することが、後述する本発明の効果を得るために支配的になる。この状態で、第1混練物の希釈混合物投入部1′aから前述の第1混練物の希釈混合物を投入する。
【0048】
すると、この希釈混合物は、後ロール3′の希釈混合物供給側の設定温度で温度調節つつ前ロール2′の希釈混合物供給側の設定温度で加熱されながら、両ロール2′,3′の回転に伴って混練されるとともにこの混練物が両ロール2′,3′間の間隙部で圧縮力およびせん断力が与えられて発熱することで溶融して前ロール2′のロール表面に付着する。特に、希釈混合物投入部1′a付近では、この希釈混合物投入部1′aから投入された希釈混合物が比較的低温であるため、この希釈混合物に比較的大きなせん断力が付与される。そして、希釈混合物はロール表面に付着した状態でロール間隙部において繰り返し圧縮、せん断を受けて溶融混練されながら前ロール2′の他端側の第2混練物排出部1′bの方へ移送される。このとき、溶融混練されながら移送される溶融混練物は空冷されるので、高温になることはない。
【0049】
前ロール2′のロール表面に付着した溶融混練物が前ロール2′の右側内部室2′bに対応するロール表面に来ると、この溶融混練物は、後ロール3′の混練物排出側の設定温度で温度調節つつ前ロール2′の混練物排出側の設定温度で調節されて固化する。このとき、第2混練物排出部1′b付近でも、溶融混練物が比較的低温であるため、この溶融混練物に比較的大きなせん断力が付与される。前ロール2′のロール表面に固化した溶融混練物は第2混練物排出部1′bの位置に来ると、従来と同様に図示しないカッターでカットされて、第2混練物排出部1′bから排出される。
【0050】
これ以降は、従来の粉砕法によるトナー製造方法と同様に、ステップS6で粉砕装置によって適当な粒径に粉砕(微粉砕)し、この微粉砕された微粉砕物が、更にステップS7で分級機によって分級されてトナーがその性能を十分発揮できるように粒子径をそろえられた後、ステップS8でシリカ、酸化チタン等の適宜の外添剤がトナー粒子に添加される。その後、必要に応じて「篩い」を実施して、ステップS9でトナーが製品として製造される。
【0051】
この例のトナーの製造方法によれば、第1混練工程での連続式2本ロール型混練機1および第2混練工程での連続式2本ロール型混練機1′により2段で混練しているので、すべての添加剤を効果的にかつ十分に、しかも均一に分散できる。特に、着色剤は第1混練工程で連続式2本ロール型混練機1により一度溶融混練されて分散されているので、更に効果的かつ十分に分散できるようになる。
【0052】
こうして、着色剤、ワックス等の離型剤や電荷制御剤等の添加剤を効果的にかつ十分に、しかも均一に分散できるので、トナーの性能に関する要素である、前述の着色力、透過性、および帯電性がいずれも効果的に向上したトナーを製造できるようになる。
【0053】
更に、第1、第2混練工程とも、オープンロール型連続式混練機1,1′を用いて混練物を空冷することにより、各混練物の温度上昇を抑制でき、混練物の粘度低下を極力抑えることが可能になる。特に、第2混練工程で加えられた希釈用樹脂と添加剤とに、それらの低温を維持しながら混練することで効果的にせん断力をかけるようにしているので、カルナバワックスのような低融点ワックス等の低融点の添加剤を用いても、その低融点添加剤の熱的ダメージを防止でき、その物性値の変化を抑制できるとともに、高分散を実現できる。
【0054】
したがって、所望の物性値のトナーの設計が容易になるとともに、低温定着やオイルレス定着に確実にかつ十分に対応可能となる。こうして、着色剤のみならず、離型剤や電荷制御剤等の添加剤の分散が優れたトナーを製造できるようになる。
【0055】
そして、このように添加剤の分散性がより高くなることによって、透明性、現像機内等での耐久性(耐フィルミング性等)を飛躍的に向上できる。特に、低融点ワックス等の低融点の添加剤の配合量を増加しても、この添加剤の分散をより十分にかつより均一に行うことができるので、製造時での粉砕性を向上できるとともに、感光体やトナー規制ブレード等におけるフィルミングの発生を抑制できるようになる。
【0056】
また、オープンロール型連続式混練機は、原料の投入口および取出口で最もせん断力がかかるため、混練を第1、第2混練工程の2段階にすることによって、一括混練より更なる高分散化が可能になる。
【0057】
更に、第2混練工程における前ロール2′の混合物投入側の第2混練温度が第1混練工程における第1混練温度より低く設定されることで、第2混練時の混練物の粘度を高めることができる。そして、混練時のせん断力アップには、粘度アップによる効果がせん断速度(=ロール速度/ギャップ間距離)による効果よりも非常に高いので、第2混練温度を第1混練温度より低く設定することで、混練物にかけるせん断力を効果的にアップでき、着色剤の再凝集を防止できるとともに、添加した離型剤や電荷制御剤等の分散性も高めることが可能となる。したがって、添加剤の高分散化を実現できることにより、透明性、現像器内等での耐久性(耐フィルミング性)、製造時の粉砕性等を向上できるようになる。
また、このような「ロール温度の設定」によるせん断力のアップは他のファクターを制御することよりも簡便にでき、かつ最も大きい効果を得ることができる。
【0058】
更に、原料供給側のロール温度(ロール内の媒体の設定温度)が混練物排出側のロール温度(ロール内の媒体の設定温度)と異なる温度に設定可能となる。これにより、せん断力が原料供給側と混練物排出側とで異なるように設定されることで、着色剤や離型剤等の添加剤の分散向上をより効果的に達成できる。
【0059】
また、前ロール2,2′の混練物排出側の設定温度TRe,T′Reが原料供給側の設定温度TRf,T′Rfより低く設定される、これにより、混練物排出側で高いせん断力が混練物にかけられるようになり、着色剤や離型剤等の添加剤の分散向上がより効果的に達成されるとともに、結着樹脂の分子量の低分子量側への拡大や、強混練による混練応力の蓄積およびフィラー効果等による粘度の調整によって、定着特性の向上(より広い非オフセット域の確保)を可能にする。
【0060】
更に、第1混練工程時に非線形ポリエステルを使用することにより、第1混練工程時に混練物に高いせん断力をかけることが可能となり、着色剤の高分散を実現できるようになる。
【0061】
更に、第2混練工程にて融点100℃以下のワックスが離型剤として添加されるようになる。これにより、添加剤の分散向上により耐久性を確保した上で、定着特性(低温定着およびオイルレス定着)の向上、グロス設計の両立が可能となる。
【0062】
次に、実際に本発明に属する実施例1ないし3と本発明に属さない比較例1とをそれぞれ作製し、それらの評価試験を行った。
まず、実施例1は、第1混練工程に用いた投入材料が、結着樹脂(1)としてビスフェノール/フタル酸系ポリエステル樹脂(非線形)70重量部、着色剤として銅フタロシアニン顔料30重量部である。また、第2混練工程に用いた投入材料が、結着樹脂(2)としてビスフェノール/フタル酸系ポリエステル樹脂100重量部、第1混練物(マスターバッチ)20重量部、荷電制御剤としてサリチル酸金属錯体2重量部、離型剤としてカルナバワックス6重量部である。更に、実施例1を作製する際に設定した第1および第2混練工程における連続式2本ロール型混練機1,1′のそれぞれの設定条件を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示すように、実施例1では、第1混練工程における連続式2本ロール型混練機1の前ロール2の原料供給側の温度を45℃、前ロール2の第1混練物排出側の温度を35℃、後ロール3の原料供給側の温度を20℃、後ロール3の第1混練物排出側の温度を20℃、前ロール2の回転数を60rpm、後ロール2の回転数を50rpm、およびロール間ギャップを0.2mm、第2混練工程における連続式2本ロール型混練機1′の前ロール2′の原料供給側の温度を40℃、前ロール2′の第2混練物排出側の温度を30℃、後ロール3′の原料供給側の温度を15℃、後ロール3′の第2混練物排出側の温度を15℃、前ロール2′の回転数を60rpm、後ロール2′の回転数を50rpm、およびロール間ギャップを0.2mmにそれぞれ設定した。
【0065】
また、参考例は、第1混練工程に用いた投入材料が、結着樹脂(1)としてビスフェノール/フタル酸系ポリエステル樹脂(線形)60重量部、着色剤として銅フタロシアニン顔料40重量部である。また、第2混練工程に用いた投入材料が、結着樹脂(2)としてビスフェノール/フタル酸系ポリエステル樹脂100重量部、第1混練物(マスターバッチ)15重量部、荷電制御剤としてサリチル酸金属錯体2重量部、離型剤としてカルナバワックス6重量部である。更に、参考例を作製する際に設定した第1および第2混練工程における連続式2本ロール型混練機1,1′のそれぞれの設定条件を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
表2に示すように、参考例では、第1混練工程における連続式2本ロール型混練機1の前ロール2の原料供給側の温度を40℃、前ロール2の第1混練物排出側の温度を30℃、後ロール3の原料供給側の温度を20℃、後ロール3の第1混練物排出側の温度を15℃、前ロール2の回転数を60rpm、後ロール2の回転数を50rpm、およびロール間ギャップを0.2mm、第2混練工程における連続式2本ロール型混練機1′の前ロール2′の原料供給側の温度を40℃、前ロール2′の第2混練物排出側の温度を30℃、後ロール3′の原料供給側の温度を15℃、後ロール3′の第2混練物排出側の温度を10℃、前ロール2′の回転数を60rpm、後ロール2′の回転数を50rpm、およびロール間ギャップを0.2mmにそれぞれ設定した。
【0068】
更に、実施例2は、第1混練工程に用いた投入材料が、結着樹脂(1)としてビスフェノール/フタル酸系ポリエステル樹脂(非線形)70重量部、着色剤として銅フタロシアニン顔料30重量部である。また、第2混練工程に用いた投入材料が、結着樹脂(2)としてビスフェノール/フタル酸系ポリエステル樹脂100重量部、第1混練物(マスターバッチ)20重量部、荷電制御剤としてサリチル酸金属錯体2重量部、離型剤としてポリオレフィンワックス(融点は約120℃)5重量部である。更に、実施例2を作製する際に設定した第1および第2混練工程における連続式2本ロール型混練機1,1′のそれぞれの設定条件を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3に示すように、実施例2では、第1混練工程における連続式2本ロール型混練機1の前ロール2の原料供給側の温度を45℃、前ロール2の第1混練物排出側の温度を35℃、後ロール3の原料供給側の温度を20℃、後ロール3の第1混練物排出側の温度を15℃、前ロール2の回転数を60rpm、後ロール2の回転数を50rpm、およびロール間ギャップを0.2mm、第2混練工程における連続式2本ロール型混練機1′の前ロール2′の原料供給側の温度を40℃、前ロール2′の第2混練物排出側の温度を30℃、後ロール3′の原料供給側の温度を15℃、後ロール3′の第2混練物排出側の温度を10℃、前ロール2′の回転数を60rpm、後ロール2′の回転数を50rpm、およびロール間ギャップを0.2mmにそれぞれ設定した。
【0071】
更に、比較例1は、第1混練工程に用いた投入材料が、結着樹脂(1)としてビスフェノール/フタル酸系ポリエステル樹脂(非線形)60重量部、着色剤として銅フタロシアニン顔料40重量部である。また、第2混練工程に用いる投入材料が、結着樹脂(2)としてビスフェノール/フタル酸系ポリエステル樹脂100重量部、第1混練物(マスターバッチ)15重量部、荷電制御剤としてサリチル酸金属錯体2重量部、離型剤としてカルナバワックス6重量部である。更に、比較例1を作製する際に設定した第1および第2混練工程における連続式2本ロール型混練機1,1′のそれぞれの設定条件を表4に示す。
【0072】
【表4】
【0073】
表4に示すように、比較例1では、第1混練工程における連続式2本ロール型混練機1の前ロール2の原料供給側の温度を45℃、前ロール2の第1混練物排出側の温度を35℃、後ロール3の原料供給側の温度を20℃、後ロール3の第1混練物排出側の温度を20℃、前ロール2の回転数を60rpm、後ロール2の回転数を50rpm、およびロール間ギャップを0.2mm、第2混練工程における連続式2本ロール型混練機1′の前ロール2′の原料供給側の温度を60℃、前ロール2′の第2混練物排出側の温度を50℃、後ロール3′の原料供給側の温度を20℃、後ロール3′の第2混練物排出側の温度を20℃、前ロール2′の回転数を60rpm、後ロール2′の回転数を50rpm、およびロール間ギャップを0.2mmにそれぞれ設定した。
【0074】
そして、前述のそれぞれの材料を用いて前述の設定条件下にそれぞれ設定された連続式2本ロール型混練機1,1′により、図1に示すトナー製造方法のフローにしたがって作製した実施例1ないし3、比較例1の各トナーについて評価試験を行った。このとき、連続式2本ロール型混練機1,1′のいずれのロール2,3;2′,3′も、外径が0.1mであり、有効ロール長が0.5mである。この評価試験の結果を表5に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
非オフセット域(温度域)は、次のようにして試験を行って確認した。すなわち、一成分系現像方式を採用した市販のレーザープリンタ(IBM4019)を用いて、未定着の画像サンプルを採取し、コニカ製レーザープリンタ(KL2010)の定着器(背面加熱方式で、定着ローラはPFAチューブ採用、ニップ通過時間60msec、オイルレス)にて、定着ローラの表面温度を変化(ローラ温度設定値:Max. 200℃)させながら、未定着の画像サンプルを通紙し、定着後のサンプルを観察し、オフセット発生の有無を判断し、発生していない領域(非オフセット域)を確認した。その場合、採取するサンプルのベタは付着量を0.40〜0.50mg/cm2に調整した。
非オフセット域は、図5に示すように実施例1では130〜200℃、参考例では135〜190℃、実施例2では140〜200℃、比較例1では160〜180℃であると確認した。
【0077】
また、透明性は、HAZE値を測定することで確認した。このHAZE値は、HAZE値=拡散透過率/全透過率で与えられ、各添加剤の分散がよいほど拡散透過率が小さくなるので、HAZE値も小さくなる。HAZE値の測定試験は、次のようにして行った。すなわち、トナー微量を2枚のスライドガラス間に挟み込み、ホットプレート上で溶融し徐冷後、HAZEメーター(日本電色工業株式会社製 MODEL1001DP)でHAZE値を測定した。このとき、サンプルの厚みは2枚のスライドガラスの厚み分を込みで、40±2μmに設定した。
透明性(HAZE値)は、図5に示すように実施例1では45.7、参考例では47.3、実施例2では47.8、比較例1では58.4であると確認した。
【0078】
更に、現像耐久性は、次のようにして試験を行って確認した。すなわち、現像器にトナーを100gセットした後、無補給でエージングを行い、部材へのフィルミングが発生するまでの時間を測定した、その場合、エージング時間をMax.4hrに設定し、この時間をクリアすれば、つまりこの時間までフィルミングが発生しなければ良好であると評価した。
【0079】
現像耐久性は、図5に示すように実施例1では4hr経過してもフィルミングが発生しなく、また、参考例でも4hr経過してもフィルミングが発生しなく、更に、実施例2でも4hr経過してもフィルミングが発生しなく、更に、比較例1では2hr経過までにフィルミングが発生した。
【0080】
更に、粉砕性(粉砕処理量[kg/h])は、次のようにして試験を行って確認した。すなわち、粉砕工程でI型ジェエトミルを使用して時間当たりの処理量[kg/h]を計測した。
粉砕性(粉砕処理量[kg/h])は、図5に示すように実施例1では約12kg/h、また、参考例では約11kg/h、更に、実施例2では約12kg/h、更に、比較例1では約7kg/hであると確認した。
【0081】
以上の評価試験結果から、総合評価として、本発明に属する実施例1は最良であるとともに、本発明に属する参考例および実施例2はともに良好であると判断したが、実施例2は粉砕性(粉砕処理量[kg/h])が実施例1と同じであり、粉砕性(粉砕処理量[kg/h])の観点からなすると参考例に比べて良好であった。また、本発明に属さない比較例1は不良であると判断した。このように、本発明によるトナー製造方法で作製したトナーは、前述の作用効果を得るとともに所期の目的を達成することが確認できた。
なお、本発明のトナー製造方法によって製造されるトナーは、モノクロトナーおよびカラートナーのいずれにも適用できるものである。
【0082】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のトナーの製造方法によれば、第1、第2混練工程においてともに連続式2本ロール型混練機を用いているので、着色剤およびすべての添加剤をより効果的にかつより十分に、しかもより均一に分散することができる。また、第1混練工程で連続式2本ロール型混練機により分散された着色剤を第2混練工程で連続式2本ロール型混練機により更に混練しているので、この着色剤を更に効果的かつ十分に分散できるようになる。
【0083】
こうして、本発明のトナーの製造方法によれば、着色剤、ワックスや電荷制御剤等の添加剤を効果的にかつ十分に、しかも均一に分散できるので、トナーの性能に関する要素である、前述の着色力、透過性、および帯電性をいずれも効果的に向上したトナーを製造できるようになる。
【0084】
更に、第1、第2混練工程とも、オープンロール型連続式混練機を用いることにより、混練物を空冷できるので、各混練物の温度上昇を抑制でき、混練物の粘度低下を極力抑えることが可能になる。これにより、特に、第2混練工程で加えられた希釈用樹脂と添加剤とに、それらの低温を維持しながら混練することで効果的にせん断力がかけられるので、カルナバワックスのような低融点ワックス等の低融点の添加剤を用いても、その低融点添加剤の熱的ダメージを防止でき、その物性値の変化を抑制できるとともに、高分散の実現が可能となる。
【0085】
したがって、所望の物性値のトナーの設計が容易になるとともに、低温定着やオイルレス定着に確実にかつ十分に対応可能となる。こうして、着色剤のみならず、離型剤や電荷制御剤等の添加剤の分散が優れたトナーを製造できるようになる。
【0086】
そして、このように添加剤の分散性をより高くできることによって、透明性、現像機内等での耐久性(耐フィルミング性等)を飛躍的に向上させることが可能となる。特に、低融点ワックス等の低融点の添加剤の配合量を増加しても、この添加剤の分散をより十分にかつより均一に行うことができるので、製造時での粉砕性を向上できるとともに、感光体やトナー規制ブレード等におけるフィルミングの発生を抑制できるようになる。
【0087】
また、オープンロール型連続式混練機は、原料の投入口および取出口で最もせん断力がかかるため、混練を第1、第2混練工程の2段階にすることによって、一括混練より更なる高分散化が可能になる。
【0088】
更に、第2混練工程時の前ロールの混合物投入側の第2混練温度が第1混練工程時の前ロールの混合物投入側の第1混練温度より低くなるように設定しているので、第2混練時の混練物の粘度を高くできる。したがって、混練物にかけるせん断力を効果的にアップでき、着色剤の再凝集を防止できるとともに、添加した離型剤や電荷制御剤等の添加剤の分散性を高めることが可能となる。したがって、添加剤の高分散化が実現されることにより、透明性、現像器内等での耐久性(耐フィルミング性)、製造時の粉砕性等を向上することができる。
また、このような「ロール温度の設定」によるせん断力のアップは他のファクターを制御することよりも簡便であり、かつ効果が最も大きい。
【0089】
また、請求項3の発明によれば、前ロールの混練物排出側の設定温度TReを混合物投入側の設定温度TRfより低く設定しているので、混練物排出側で高いせん断力を混練物にかけることができ、着色剤や離型剤等の添加剤の分散向上をより効果的に達成できるとともに、結着樹脂の分子量の低分子量側への拡大や、強混練による混練応力の蓄積およびフィラー効果等による粘度の調整によって、定着特性の向上(より広い非オフセット域の確保)を可能にする。
【0090】
特に、請求項2の発明によれば、前ロールおよび後ロールのいずれのロール温度(ロール内の媒体の設定温度)も、混合物投入側のロール温度(ロール内の媒体の設定温度)が混練物排出側のロール温度(ロール内の媒体の設定温度)と異なる温度に設定可能となる。これにより、せん断力が原料供給側と混練物排出側とで異なるように設定されることで、着色剤や離型剤等の添加剤の分散向上をより効果的に達成できるようになる。
【0091】
更に、請求項3の発明によれば、第1混練工程時に非線形ポリエステルを使用しているので、第1混練工程時に混練物に高いせん断力をかけることが可能となり、着色剤の高分散を実現できる。
【0092】
更に、請求項4の発明によれば、第2混練工程にて融点100℃以下のワックスを離型剤として添加しているので、添加剤の分散向上により耐久性を確保した上で、定着特性(低温定着およびオイルレス定着)の向上、グロス設計の両立が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るトナーの製造方法の実施の形態の一例を示すフローを示す図である。
【図2】 図1に示す本発明にトナーの製造方法の第1混練工程に使用される連続式2本ロール混練機の一例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図3】 図1に示す本発明にトナーの製造方法の第2混練工程に使用される連続式2本ロール混練機の一例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【符号の説明】
1,1′…連続式2本ロール混練機、1a,1′a…マスターバッチ粉砕物等投入部、1b,1′b…希釈混練物排出部、2,2′…前ロール、2a,2′a…左側内部室、2b,2′b…右側内部室、3,3′…後ロール、3a,3′a…左側内部室、3b,3′b…右側内部室
Claims (4)
- 少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有した原料混合物を溶融混練する第1混練工程と、該第1混練工程で得られた混練物と、少なくとも前記結着樹脂と同種または異種の結着樹脂と、少なくとも離型剤および電荷制御剤を含む添加剤とを加えて希釈混合し、該希釈混合物を溶融混練する第2混練工程とを有するトナーの製造方法において、
前記第1、第2混練工程において、ともに同一のギャップ間距離を置いて配置された前ロールと後ロールとを備え、前記前ロールの回転数が前記後ロールの回転数より大きく設定されたオープンロールの連続式2本ロール型混練機を用いているとともに、
前記第1混練工程時の前記前ロールの混合物投入側の第1混練温度および前記第2混練工程時の前記前ロールの混合物投入側の第2混練温度を、
第1混練温度 > 第2混練温度
に設定しており、
前記連続式2本ロール型混練機の前記前ロールの前記混合物投入側の設定温度T Rf と混練物排出側の設定温度T Re (ともにロール内の媒体の設定温度)の関係が、
T Rf > T Re
であることを特徴とするトナーの製造方法。 - 前記連続式2本ロール型混練機の前記前ロールおよび前記後ロールのいずれのロール温度(ロール内の媒体の設定温度)も、混合物投入側と混練物排出側とについて、異なる温度設定が可能であることを特徴とする請求項1記載のトナーの製造方法。
- 前記第1混練工程で使用する結着樹脂が、非線形ポリエステル樹脂が主成分であることを特徴とする請求項1または2記載のトナーの製造方法。
- 前記第2混練工程にて添加する離型剤が、融点100℃以下のワックスであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載のトナーの製造方法。
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