JP3800464B2 - 電磁駆動型角速度センサ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は物体の角速度を検出するための角速度センサ、特に電磁駆動型角速度センサとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、角速度センサとしては、例えば図12及び図13に示すような構成の角速度センサが知られている。
先ず、図12に示す角速度センサ1は電磁駆動・圧抵抗検出型の角速度センサであって、図12(A)に示すように、ベース2上に順次に載置されたガラス基板3,シリコン基板4,ガラス基板5及び永久磁石6とから構成されている。
ここで、上記シリコン基板4は、図12(B)に示すように、水平面内にて互いに平行に並ぶように形成された二つの振動子4a,4bを備えており、これらの振動子4a,4bは、それぞれ両端が二本の細い棒状の連結部4cを介して外枠部分4dに対して連結されている。
さらに、これらの連結部4cのうち、内側の連結部4cは、その表面に形成された検出用のピエゾ抵抗4eを備えている。なお、図12(B)においてz軸が検出振動の方向であり、x軸が駆動振動の方向である。
【0003】
このような構成の角速度センサ1によれば、振動子4a,4bに対して、図12(B)にて矢印Iで示すように、駆動電流が流されて、振動子4a,4bが電磁駆動される状態にて振動子4a,4bが角速度を受けて振動したとき、このz軸方向の縦振動によって上記連結部4cに加わる応力により、この連結部4cの表面に形成されたピエゾ抵抗4eの抵抗値が変化する。この抵抗値の変化が、例えば電流値の変化として計測,処理されることにより、振動子4a,4bに加わる角速度が検出される。
【0004】
また、図13に示す角速度センサ7は、静電駆動・容量検出型角速度センサであって、一対の互いに平行になるように配設されたガラス基板7a,7bと、これらガラス基板7a,7bの間に配設された振動子8とから構成されており、三層構造になっている。
この角速度センサ7は、図示のように、内側に水平方向に延び且つ両端が外枠部分8aに支持された角速度検出用ビームのトーションバー8bと、このトーションバー8bの中央から互いに交差して斜めに延びる駆動用ビームの2本の片持ち梁8cの両端に支持された重り8d,8eとから振動子8が構成され、これらの振動子の重りの上下面に電極が形成されている。
ここで、振動子の重り8dは、上記トーションバー8bの一側に位置し、また振動子の重り8eは、他側に位置するように、配設されている。
これに対して、上記ガラス基板7a,7bは、その互いに対向する内面に上記振動子の重り8dに対向する静電駆動用電極7c,7d及び静電駆動モニタ用電極9a,9bと上記振動子の重り8eに対向する容量検出用電極7e,7fとを備えている。
【0005】
このような構成の角速度センサ7によれば、振動子の重り8dは、図示しない電源から供給される駆動電圧が静電駆動用電極に印加され、静電力により駆動振動する。このとき、片持ち梁8cの反対側に支持された振動子の重り8eも同様に振動することになる。この状態にて、振動子が角速度を受けて振動したとき、振動子の重り8eと容量検出用電極7e,7fとの間の距離が変動して、これらの間の容量が変化する。この容量変化が、適宜に計測、処理されることにより振動子の角速度が検出される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように構成された角速度センサ1,7においては、それぞれ以下のような解決すべき課題がある。
即ち、角速度センサ1においては、二つの振動子4a,4bを支持する連結部4cの表面にピエゾ抵抗4eが形成されていると共に、ガラス基板3,シリコン基板4,ガラス基板5及び永久磁石6の四層構造であって構造が複雑になり、製造コストが高くなってしまうということがあった。
また、振動子4a,4bの駆動振動と検出すべき角速度に基づく検出振動の振動モードが異なることから、これらの振動の共振周波数の調整作業が必要となり、コストが高くなってしまう。
【0007】
これに対して、図13に示した角速度センサ7においては、振動子の重り8dが静電駆動されるので外部素子が不要であるが、大きな駆動電圧を印加すると、振動子の重り8dの構造的なアンバランスの影響が大きくなって、振動子の重り8d,8eが対向する駆動電極に衝突してしまうので、このような衝突を回避するためにその駆動振幅が小さくなっており、従って角速度の検出精度が低いという解決すべき課題があった。
また、この角速度センサ7の場合も、角速度センサ1と同様に、振動子4a,4bの駆動振動と検出すべき角速度に基づく検出振動の共振周波数が異なることから、これらの共振周波数を合わせる調整作業が必要となり、コストが高くなってしまうという課題があった。
さらに、角速度センサ7全体は振動子の重り8eの振動を容量検出するようになっていることから、振動子の重り8eと容量検出用電極7e,7fとの間のギャップを狭くする必要があるので、空気ダンピングの影響を排除するため振動子を真空封止する必要があり、コストが高くなってしまうという課題があった。
【0008】
本発明は以上の点に鑑み、簡単な構成により、角速度が高精度で検出され得るようにした、電磁駆動型角速度センサ及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の電磁駆動型角速度センサのうちで請求項1記載の発明は、複数の電極配線を形成した対称性を有する重りと、重りを対称的位置にて弾性的に支持する複数のL字形状の支持ビームとを有する振動子と、重りに均一な磁界を作用する磁石と、振動子を上面側に有し、磁石を下面側に有する基板とを備え、重りが略正方形状であり、重りの各辺にて支持ビームのうち該辺に対して垂直に延びた部分が挿入されることで、振動子が中空に支持されており、一の支持ビームが上面に形成した電気配線と重りの電極配線とを一電気回路に形成した駆動振動用の支持ビームであり、他の支持ビームが上面に形成した電気配線と重りの電極配線とを一電気回路に形成した検出振動用の支持ビームであり、駆動振動用の支持ビームに電流を流すことにより振動子の重りにローレンツ力が作用して振動し、角速度の印加によりコリオリ力が作用して振動子の重りがローレンツ力による振動方向と直角方向に振動して発生する誘導起電力を検出振動用の支持ビームの両端で検出して角速度を検出することを特徴とする。
さらに請求項2記載の発明は上記構成に加え、駆動振動用の支持ビームの幅と、検出振動用の支持ビームの幅とを同じにして共振型で高感度を有するようにしたことを特徴とする。
また請求項3記載の発明は、検出振動用の支持ビームの幅に対して駆動振動用の支持ビームの幅を変えて、駆動振動と検出振動の振動周波数を調整したことを特徴とする。
さらに請求項4記載の発明は、ローレンツ力による駆動振動方向に対して対称な位置に一対の検出振動用の支持ビームを配設し、コリオリ力による検出振動方向に対して対称な位置に一対の前記駆動振動用の支持ビームを配設したことを特徴とする。
また請求項5記載の発明は、電磁駆動型角速度センサを大気中で使用することを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、駆動振動用の支持ビームに電流を流すと振動子の重りに流れる電流と磁石による磁界とに基づき、振動子の重りにローレンツ力が作用する。この結果、振動子は磁石の磁界と直角な水平方向に振動する。この状態から垂直軸方向に角速度が印加すると、振動子がコリオリ力によって角速度方向及び駆動方向と直角な水平方向に振動する。
したがって、この振動により、検出振動用の支持ビームに誘導起電力が発生し、この誘導起電力による電圧を計測し、この電圧に基づいて適宜な処理を行なうことにより、角速度が検出できる。
また駆動振動用の支持ビームの幅と検出振動用の幅を同じにすると、電磁駆動による振動方向と角速度により発生する振動(検出振動)は同じ振動モードであることから、その共振周波数が等しくなり、完全な共振型となる。さらに片方の支持ビームの幅を変えることにより振動周波数が変わる。
したがって、駆動振動と検出振動の振動周波数が一致するので感度が高くなり、しかも振動周波数を自由に調節でき、角速度センサの周波数特性を上げることができる。
さらに、振動子が電磁駆動により駆動振動を付与されることから駆動振幅が大きくなり、角速度が高精度で検出されることになると共に、空気ダンピングの影響を受けにくいことから振動子の真空封止が不要となり、コストが低減する。
【0011】
また本発明の電磁駆動型角速度センサの製造方法は、複数の電極配線を形成した対称性を有する重り及び該重りを対称的位置にて弾性的に支持する複数のL字形状の支持ビームとを有する振動子と、重りに均一な磁界を作用する磁石と、振動子を上面側に有し、磁石を下面側に有する基板とを備え、重りが略正方形状で、重りの各辺にて支持ビームのうち該辺に対して垂直に延びた部分を挿入することで、振動子を中空に支持しており、一の支持ビームを、上面に形成した電気配線と重りの電極配線とを一電気回路に形成した駆動振動用の支持ビームとし、他の支持ビームを、上面に形成した電気配線と重りの電極配線とを一電気回路に形成した検出振動用の支持ビームとした、電磁駆動型角度センサの製造方法であって、シリコン基板の表裏に熱酸化膜を形成し、裏面にパターニングをする工程と、熱酸化膜をマスクとしてシリコン基板の裏面をエッチングしてギャップを形成する工程と、シリコン基板の裏面の熱酸化膜を除去し、シリコン基板の表面に電極をスパッタリングにより形成し、パターニングにより金属配線と電極部を形成する工程と、金属配線、電極部、振動子の重り及び支持ビームに対応する部分にて、シリコン基板の表面にレジストパターンを形成し、エッチングによりシリコン基板表面の熱酸化膜を除去する工程と、レジストパターンをマスクとして、反応性イオンエッチングによりシリコン基板の貫通エッチングする工程と、レジストパターンを除去し、シリコン基板とガラス基板とを陽極接合する工程と、電極部にリード線を接続し、ガラス基板の下面に永久磁石を取り付ける工程と、を備える構成とした。
また、好ましくは、貫通エッチングが、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングである。
【0012】
このような構成により、本発明の電磁駆動型角速度センサの製造方法では、角速度センサの製作に必要なマスクが3枚で済み、製作工程が非常に簡単になる。また、シリコン基板の貫通エッチングが極めて異方性のよいエッチングであるため、構造的に対称性よく正確に振動子を形成でき、しかも角速度センサ全体の大きさに比して振動子の重りを大きく形成できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の電磁駆動型角速度センサは、例えばガラス基板上に配設された振動子が、電極配線が形成された対称中心を有する板状の重りと、この重りを対称的位置にて弾性的に支持する支持ビームとを備え、重りに形成した電極配線に流れる電流に均一な磁界を作用させる磁石を有するものである。
この磁石は例えば永久磁石でもよい。振動子の重りは対称中心を有して大きな重りになる形状がよく、例えば矩形状や略正方形状でもよい。
【0014】
またこの電磁駆動型角速度センサは、振動子の重りを支持する支持ビームとして、一対の駆動振動用の支持ビームと、角速度が印加されたときにコリオリ力による振動を検知する一対の検出振動用支持ビームとを備えている。
駆動振動用の支持ビームは検出振動方向に対して、また検出振動用支持ビームは駆動振動方向に対して、それぞれ対称な位置に配設されている。
さらに各駆動振動用の支持ビーム上に形成された配線と重りに対称な位置に形成された各電極配線とが一電気回路に接続され、各検出振動用の支持ビーム上に形成された配線も同様に重りの対称な位置に形成された各電極配線とで一電気回路を形成されている。
【0015】
このような構成の電磁駆動型角速度センサでは、重りの電極配線に交番電流を流すと、磁界により電流の方向と直角な水平面方向(振動子と同一平面)にローレンツ力が作用し、振動子が振動する。このとき振動子の垂直上方に角速度が印加すると、振動子はコリオリ力により駆動振動方向と直角方向の同一平面上で振動する。この振動により一対の検出振動用の支持ビームの両端に誘導起電力が発生する。
したがって、この誘導電圧から印加された角速度がわかる。また駆動振動と検出振動が同じ面上にあるので完全な共振型にでき、感度が高い。
【0016】
なお、対称性をよくするため各支持ビームは一対とするのが望ましいが、一対でなくても駆動振動方向とコリオリ力による検出振動方向の一側に各支持ビームを配設する構造でもよい。
また、一側の駆動振動用の支持ビームの幅と一側の検出振動用の支持ビームの幅を変えると、駆動振動と検出振動の振動周波数が変わる。
したがって、支持ビームの幅を変えることにより角速度センサの周波数特性をあげることができ、非共振型にできる。
【0017】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、実質的に同一又は対応するものには同一符号を用いた。
図1は本発明による電磁駆動型角速度センサの一実施形態を示している。
図1において、角速度センサ10は、ガラス基板11と、このガラス基板11の表面に配設された振動子20と、このガラス基板11の裏面に取り付けられた永久磁石12とから構成されており、三層構造になっている。
図2は本発明による電磁駆動型角速度センサの他の実施形態を示す表面図である。図3(a)は図2のB−B線端面図であり、図3(b)は図2のC−C線端面図である。
【0018】
図1乃至図3を参照すると、L2で示す領域が振動子20であり、この振動子20の下にはギャップが形成され、ガラス基板11と永久磁石12が設けられている。なお、図2の電磁駆動型角速度センサ10はL1の範囲が角速度センサの一単位である。
ガラス基板11は、例えば300μm厚に選定され、永久磁石12は例えばSm−Co磁石から構成されている。
さらにシリコン基板30は、例えば厚さ200μm,各辺の長さL1が10mm程度に選定されている。図2にて下面側に例えば50μm程度のギャップを有するように150μm程度の厚さで形成された振動子の重り21と、この振動子の重り21を各辺にて支持するそれぞれ一対(即ち、全体で8本)の支持ビーム22とから振動子20が構成されている。
上記振動子の重り21は、図示の場合、例えば各辺の長さL2が7mm程度のほぼ正方形の外形を有していると共に、各辺の中間位置にて内側に入り込んだ位置において、一対の支持ビーム22,22によって中空に支持されるようになっている。
さらに、上記振動子20は、各辺の一対の支持ビーム22,22による支持点を連結するように、その表面に形成されたそれぞれ一対の金属配線33a,33bを備えている。
【0019】
上記支持ビーム22は、図1及び図2に示すように、振動子の重り21の各辺に関して、それぞれ内側の支持点から各辺に対して垂直に延びる部分と、その先端から直角に屈曲して延びる部分を備えるようにL字形に形成されていると共に、その厚さが振動子の重り21と同様に150μm程度に選定されている。
そして、各支持ビーム22は、その先端が振動子の重り21の四つの角部付近にまで延びており、そこでガラス基板21に対して陽極接合されることにより固定保持されている。これにより、振動子の重り21が各支持ビーム22によってガラス基板11上に中空に保持されることになる。
さらに、上記各支持ビーム22は、その先端の表面に、電極部(後述)が形成されている。
【0020】
ここで、上記角速度センサ10は例えば図4に示すようにして製造される。図4は図2のA−A線端面の製造工程の模式図である。
先ず図4(A)において、所定の厚さ例えば200μmの厚さのシリコン基板30を熱酸化することにより、表面及び裏面に熱酸化膜31を形成後、裏面に対してパターニングをする。この酸化膜が第1のマスクとなる。
次に、図4(B)において、上記熱酸化膜31を第1のマスクとして、裏面から例えばTMAHを使用したエッチングによって50μmのギャップ32を形成し、裏面の熱酸化膜31を除去する。これにより、ギャップ32に対応するシリコン基板30の厚さは150μmになる。
続いて、図4(C)に示すように、シリコン基板30の表面に、Au/Crをスパッタリングすることにより金属膜を形成し、パターニングにより金属配線33及び電極部33aを形成する。この金属膜のパターニングが第2のマスクとなる。
【0021】
その後、図4(D)に示すように、金属配線33,電極部33a及び振動子の重り21,支持ビーム22に対応する部分にて、シリコン基板30の表面にレジストパターン34を形成した後、このレジストパターン34を第3のマスクとして熱酸化膜31を除去する。
続いて、図4(E)に示すように、上記レジストパターン34を第3のマスクとして、例えばICPRIE(誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング)によりシリコン基板30を貫通エッチング35し、その後レジストパターン34を除去する。この貫通エッチングではエッチング速度を均一にし、オーバーエッチングを抑えることが重要である。
最後に、図4(F)に示すように、電極部33aに対してリード線36を接続すると共に、シリコン基板30とガラス基板11とを陽極接合すると共に、このガラス基板11の下面に対して永久磁石12を接着等により取り付ける。かくして、角速度センサ10が完成することになる。
【0022】
このような製造方法により、大きな重りを持った振動子の形成が正確にでき、さらに振動子とガラス基板のギャップを形成するのに必要なマスクが3枚となり製作工程が非常に簡単になる。
【0023】
次に本発明の角速度センサ10の機能について説明する。
図5は図1に示した電磁駆動型角速度センサの振動特性を測定するための測定回路を示す概略図である。なお、40はネットワークアナライザを示し、41はオペアンプを示す。
図5を参照すると、本発明の角速度センサ10全体が角速度を測定するための物体等に取り付けられ、振動子20の一つの辺に対応する一対の支持ビームの電極部(駆動用電極)25,26間に対して、ネットワークアナライザ40から交流電圧(例えば、0.3Vp−p)を印加する。これにより、振動子20は永久磁石12の磁界と作用して電磁駆動し、駆動振動を開始する。そして、この振動により発生する誘導起電力を反対側の電極部(駆動モニタ用電極)27,28から取り出し、オペアンプ41により増幅し、ネットワークアナライザ40に帰還することによりネットワークアナライザ40によって振動を検出する。尚、測定はすべて大気中で行った。
【0024】
このような測定装置を使用した角速度センサ10の振動特性、即ち周波数に対する振動の大きさ(dB)及び位相(度)は、図6及び図7のグラフに示す通りである。
この振動特性によれば、駆動振動の共振周波数は548Hz,検出振動の共振周波数は562Hzであり、その相互のずれは、約2%であった。従って、駆動振動及び検出振動が同じ振動モードであることから、ほぼ完全な共振型になるので、角速度の高い検出感度が得られることになる。尚、このずれは、シリコン基板30の貫通エッチングの際のエッチング速度の不均一性によって各支持ビーム22の断面積にバラツキが発生したためである。
【0025】
ここで、二つの共振ピーク、即ち検出振動及び駆動振動における共振周波数及びQ値は、真空度の変化に伴って、図8及び図9のグラフにそれぞれ示すように変化する。これにより、駆動振動及び検出振動のQ値は共に真空度の変化に対して急激な変化は見られなかった。これは、振動子20がガラス基板11の表面に対して大きなギャップを有していることから、空気ダンピングの影響を受けにくいためである。従って、本角速度センサ10は、振動子20の真空封止が不要である。
【0026】
このような振動特性を有する角速度センサ10は、図10に示すようにして角速度の検出を行う。
図10に示すように、本発明の角速度センサ10全体を角速度を測定するための物体等に取り付け、振動子20の一つの辺に対応する一対の支持ビームの電極部(駆動用電極)25,26間に駆動電圧を印加しx方向に電流を流すと、永久磁石12による磁界の方向zに基づいてローレンツ力が振動子21に作用することになり、水平方向yに駆動振動が発生する。
【0027】
この状態から、垂直方向zに角速度が加わると、振動子20はコリオリ力によって電界とは直角な水平方向xに振動(検出振動)する。
これにより、上記電極部25,26に関する一対の支持ビーム22と隣接する辺の一対の支持ビーム22の電極部(検出用電極)23,24間には、誘導起電力が発生する。
したがって、この誘導起電力による電圧を計測することにより、この計測した電圧に基づいて適宜な処理を行なうことにより角速度を検出することができる。
【0028】
具体的には、図10において、角速度センサ10及び測定回路を図示しないターンテーブル上にセットし、角速度センサ10の駆動用電極25,26に対して、駆動電源42から、548Hzで12Vp−p及び20Vp−pの交流電圧を印加する。このときの振動子20の駆動振幅は、それぞれ40及び70μmである。
このようにして電磁駆動により駆動振動する振動子20に対して、ターンテーブルの回動によって角速度が加わると、振動子20はコリオリ力によってx方向に振動を開始する。これにより発生した誘導起電力を検出用電極23,24から取り出して、例えばゲイン500のアンプ41により増幅し、駆動電源42からの駆動信号に基づいて検波回路43により同期検波して、角速度に対応する出力電圧を出力する。
この出力電圧は、図11に示すグラフのようになり、この出力電圧に基づいて角速度を検出する。図11中、aは駆動電圧が20Vで駆動振幅が70μmの場合であり、bは駆動電圧が12Vで駆動振幅が40μmの場合を示す。
【0029】
本発明の電磁駆動型角速度センサでは、検出用電極23,24に誘電起電力による電圧が発生するため、例えば静電駆動型角速度センサにおける容量検出の場合とは異なり、C−V変換が不要であることからJFET等(C−V変換用)が不要となり、構成が簡単になる。
尚、上記実施形態においては、図10に示す角速度の検出の際に、互いに対向する二対の支持ビームに関連して、一側の支持ビームの電極部23,24のみを検出用電極として使用しているが、双方の支持ビームの電極部23,24及び電極部52,54を使用して誘導起電力の検出を行うようにすれば、ほぼ二倍の感度の角速度検出が行われ得ることは明らかである。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の電磁駆動型角速度センサによれば、狭いギャップ間で振動子を振動させなくてもよく、また振動子の重りが大きいので、振動子の大振幅駆動ができるとともに、角速度センサの感度をあげることができるという効果を有する。
さらに本発明では電磁駆動による振動と角速度により発生する振動(検出振動)とが同じ面上の振動モードであることから、その共振周波数を容易に合わせることができ、しかも完全な共振型にできることから角速度の検出感度を格段に上げることができるという効果を有する。
また本発明では片方のビーム幅を変えることにより自由に振動周波数を決定して非共振型にすることができ、角速度センサの周波数特性を上げることができるという効果を有する。
さらに、本発明では大きな重りを持った振動子の駆動振幅が大きいので、角速度が高精度で検出できるとともに、空気ダンピングの影響を受けないという効果を有する。 したがって、振動子の真空封止が不要となり、コストが低減するようになる。
【0031】
また本発明の電磁駆動型角速度センサの製造方法では、大きな重りを持った振動子の形成が対称性よく正確にでき、センサの製作に必要なマスクが3枚であり、製作工程を非常に簡単にできるという効果を有する。
したがって、製造コスト及び組立コストが低減するようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電磁駆動型角速度センサの一実施形態の構成を示す概略斜視図である。
【図2】本発明による電磁駆動型角速度センサの他の実施形態を示す表面図である。
【図3】(a)は図2のB−B線端面図、(b)は図2のC−C線端面図である。
【図4】図2の電磁駆動型角速度センサのA−A線端面の製造工程を順次に示す工程図である。
【図5】図1の電磁駆動型角速度センサの振動特性を測定するための測定回路を示す概略図である。
【図6】図4の測定回路により測定された駆動振動における振動特性を示すグラフである。
【図7】図4の測定回路により測定された検出振動における振動特性を示すグラフである。
【図8】図1の電磁駆動型角速度センサにおける真空度に対する駆動振動の共振周波数とQ値を示すグラフである。
【図9】図1の電磁駆動型角速度センサにおける真空度に対する検出振動の共振周波数とQ値を示すグラフである。
【図10】図1の電磁駆動型角速度センサを使用した角速度測定回路の構成を示す概略図である。
【図11】図10に示す角速度測定回路による角速度と出力電圧との関係を表すグラフである。
【図12】従来の角速度センサの一例を示し、(A)は概略断面図、(B)はシリコン基板の斜視図である。
【図13】従来の角速度センサの他の例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
10 電磁駆動型角速度センサ
11 ガラス基板
12 永久磁石
20 振動子
21 振動子の重り
21a 金属配線
22 支持アーム
23,24,52,54 検出用電極
25,26 駆動用電極
27,28 駆動モニタ用電極
30 シリコン基板
31 熱酸化膜
32 ギャップ
33 金属配線
33a 電極部
34 レジストパターン
35 貫通エッチング
36 リード線
Claims (7)
- 複数の電極配線を形成した対称性を有する重りと、この重りを対称的位置にて弾性的に支持する複数のL字形状の支持ビームとを有する振動子と、
上記重りに均一な磁界を作用する磁石と、
上記振動子を上面側に有し、上記磁石を下面側に有する基板とを備え、
上記重りが略正方形状であり、該重りの各辺にて上記支持ビームのうち該辺に対して垂直に延びた部分が挿入されることで、上記振動子が中空に支持されており、
上記一の支持ビームが、この上面に形成した電気配線と上記重りの電極配線とを一電気回路に形成した駆動振動用の支持ビームであり、
上記他の支持ビームが、この上面に形成した電気配線と上記重りの電極配線とを一電気回路に形成した検出振動用の支持ビームであり、
上記駆動振動用の支持ビームに電流を流すことにより上記振動子の重りにローレンツ力が作用して振動し、
角速度の印加によりコリオリ力が作用して上記振動子の重りが上記ローレンツ力による振動方向と直角方向に振動して発生する誘導起電力を上記検出振動用の支持ビームの両端で検出して角速度を検出する、電磁駆動型角速度センサ。 - 前記駆動振動用の支持ビームの幅と、前記検出振動用の支持ビームの幅とを同じにして共振型で高感度を有するようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の電磁駆動型角速度センサ。
- 前記検出振動用の支持ビームの幅に対して前記駆動振動用の支持ビームの幅を変えて、駆動振動と検出振動の振動周波数を調整したことを特徴とする、請求項1に記載の電磁駆動型角速度センサ。
- 前記ローレンツ力による駆動振動方向に対して対称な位置に一対の前記検出振動用の支持ビームを配設し、前記コリオリ力による検出振動方向に対して対称な位置に一対の前記駆動振動用の支持ビームを配設したことを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載の電磁駆動型角速度センサ。
- 大気圧中で使用することを特徴とする、請求項1乃至4の何れかに記載の電磁駆動型角速度センサ。
- 複数の電極配線を形成した対称性を有する重り及び該重りを対称的位置にて弾性的に支持する複数のL字形状の支持ビームとを有する振動子と、上記重りに均一な磁界を作用する磁石と、上記振動子を上面側に有し上記磁石を下面側に有する基板とを備え、重りが略正方形状をなし、該重りの各辺にて支持ビームのうち該辺に対して垂直に延びた部分を挿入することで振動子を中空に支持しており、上記一の支持ビームが、この上面に形成した電気配線と上記重りの電極配線とを一電気回路に形成した駆動振動用の支持ビームで、他の支持ビームが、この上面に形成した電気配線と上記重りの電極配線とを一電気回路に形成した検出振動用の支持ビームである、電磁駆動型角度センサの製造方法であって、
シリコン基板の表裏に熱酸化膜を形成し、裏面にパターニングをする工程と、
上記熱酸化膜をマスクとしてシリコン基板の裏面をエッチングしてギャップを形成する工程と、
上記シリコン基板の裏面の熱酸化膜を除去し、シリコン基板の表面に電極をスパッタリングにより形成し、パターニングにより金属配線と電極部を形成する工程と、
上記金属配線、上記電極部、上記振動子の重り及び支持ビームに対応する部分にて、シリコン基板の表面にレジストパターンを形成し、エッチングにより上記シリコン基板表面の熱酸化膜を除去する工程と、
上記レジストパターンをマスクとして、反応性イオンエッチングによりシリコン基板の貫通エッチングする工程と、
上記レジストパターンを除去し、上記シリコン基板とガラス基板とを陽極接合する工程と、
上記電極部にリード線を接続し、上記ガラス基板の下面に永久磁石を取り付ける工程と、を備える電磁駆動型角速度センサの製造方法。 - 前記支持ビームを形成するための貫通エッチングが、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングであることを特徴とする、請求項6に記載の電磁駆動型角速度センサの製造方法。
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