JP3799753B2 - 磁気記録媒体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は透明磁性層を有する磁気記録媒体およびこの製造方法に関し、詳しくは光学的に透明性を有し、画像形成手段を反対面に付加することのできる磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体の塗布技術は、磁気記録の高密度化と、これにともなう多層化、薄膜化の進行とともに進歩してきているが、磁気記録媒体に光学的な記録層を形成する技術もまた、進展している。
【0003】
磁気記録層付の写真フィルムの上梓もその例で、ハロゲン化銀写真感光材料(以下、単に感光材料とも言う)に於いては、例えば感光材料の種類、製造番号、メーカー名、乳剤No.等に関する各種情報、又、撮影日時、絞り、露出時間、照明条件、使用フィルター、天候、撮影サイズ、撮影機種、アナモルフィックレンズの使用等のカメラ撮影時の各種情報、更に、プリント枚数、フィルターの選択、顧客の色の好み、トリミング枠の大きさ等のプリント作成時に必要な各種情報、並びに、プリント枚数、フィルターの選択、顧客の色の好み、トリミング枠の大きさ等のプリント時に得られた各種の情報、その他顧客情報等を入力して置くことは、管理の上からも、又、プリント品質の向上、プリント作業の効率化の上からも必要である。
【0004】
従来の感光材料では、これら全ての情報を入力することは不可能であって、撮影時に撮影日時、絞り、露出時間等の情報を光学的に入力していたに過ぎなかった。しかも、プリント時に上記情報を感光材料へ入力することは、その手段がなく不可能であった。
【0005】
磁気記録方式は記録/再生が容易であるところから、感光材料へ上記の各種情報を入力するために該方式を使用することが研究され、各種技術が提案されている。
【0006】
例えば、画像部の横の乳剤面又はバック面に、強磁性体の微粒子を分散したストライプ状の磁気記録層を設け、音声や撮影時の条件等の情報を記録することが、特開昭50−62627号、同49−4503号、米国特許3,243,376号、同3,220,843号等に記載され、又、写真感光材料のバック面に、磁性粒子の量、サイズ等を選択して必要な透明性を得た透明磁気記録層を設けることが、米国特許3,782,947号、同4,279,945号、同4,302,523号等に記載されている。又、米国特許4,947,196号、WO90/04254号には、写真フィルムの裏面に磁気記録を可能とする磁性体を含有した磁気記録層を有するロール状フィルムと共に磁気ヘッドを有する撮影用カメラが記載されている。
【0007】
これらの磁気記録層を設けることによって、従来困難であった上記の各種情報を感光材料中に記録することが可能となり、更に、音声や画像信号をも記録できるという将来性を有している。
【0008】
しかしながら、感光材料の磁気記録層に要求される塗布技術およびバインダーの物性は、耐水性、耐摩耗性、磁性粉の分散性、透明性、薄膜塗布適性、断裁や穿孔時の発塵性など、非常に高度かつ達成困難な水準が求められる。その中でも、特に感光材料を塗工する前の原反段階での磁気記録層と保護層の形成磁気記録媒体と類似の技術であるが、従来のオーディオ、ビデオなどのテープ類とことなり、支持体自身の剛性や塗料組成が全く、異なるため、塗布の均一性と塗膜物性の両方を向上させ、なおかつ生産性のよい製法、素材の組合せの探求はいまだ不十分である。従来の考え方は特開平5-329433号に見られるような上下層の液粘度に着目したものなどがある。写真感光材料は主に水系のニュートン流体、であり、高密度磁性材料は顔料濃度の高い有機溶剤系の非ニュートン流体である。
【0009】
透明性を必要とする用途の磁気記録媒体は低顔料濃度であり、さらに薄膜化を追求すれば、低固形分の塗料を薄膜塗布する技術が必須となるが、この分野については意外となされていない。さらにいえば、塗布液の性状はニュートン流体であっても、凝集力の高い難溶性のバインダーへ応用する際には、溶剤の粘度、乾燥速度、塗布直後の流動性、すでに乾燥させた下塗層への拡散性など、検討すべき技術課題が多様であり、単に塗布ヘッドの形状、塗布液の物性だけでは、全体の性能を向上させることができない。
【0010】
特に多層塗布の場合、下層の素材の性質、すなわち粘着性、耐溶剤性などにより逐次重層が困難な場合がある。また、上層を極めて、薄く均一に塗布したい場合に塗布ヘッドの機械的条件が下層塗布済みの支持体のわずかな工程変動で大きく変化し、生産スケールでの長尺安定塗布が事実上、不可能である。
【0011】
加えて、使用できるバインダー、潤滑剤、溶剤は限定され、又、実用化するためには可成り高度な製造技術、処方技術等が必要であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、光学特性において卓越した透明磁性層を有する磁気記録媒体の原反を提供することにある。特に低顔料濃度、低粘度の塗料系を選択して光学特性の均一、且つ、生産性の良好な磁気記録媒体の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の第2の目的は、透明磁性層と保護層の塗布方式を適切に選択することにより、塗布均一性、耐ブロッキング性の優れた透明磁性層と保護層を有する磁気記録媒体及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明の第3の目的は、塗膜強度の良好な素材により、磁気信号の入出力時の磁気ヘッドの汚れと出力低下が極めて少ない透明磁性層を有する磁気記録媒体を提供することにある。
【0015】
本発明の第4の目的は、耐水性に優れ、支持体との接着性が強靭な透明磁性層を有し、且つ、その物性変動の少ないハロゲン化銀写真感光材料用の磁気記録媒体を提供することにある。
【0016】
本発明の第5の目的は、透明磁性層の保護層として潤滑層を非常に薄くすることにより、磁気入出力の安定化された磁気記録媒体およびその製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記の構成により達成される。
【0019】
1〕透明磁性層の乾燥膜厚が0.5〜3.0μmであり、該透明磁性層上に、乾燥膜厚3〜200nmの潤滑層が形成された磁気記録媒体の製造方法であって、連続的に走行する非磁性支持体上の一方の側に、エクストルージョン型の塗布ヘッドを用いて、含有される有機溶剤塗布量が0.8〜30g/m 2 である該潤滑層の塗布液を、該透明磁性層上に該透明磁性層と同時重層塗布し該潤滑層を形成する製造方法であり、更に、該透明磁性層を形成する塗布液の粘度が10〜1500cpsであって、該潤滑層を形成する塗布液の粘度が1〜300cpsであることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【0025】
2〕非磁性支持体の塗布面にあらかじめ、バインダーと金属酸化物を含む層が形成されており、透明磁性層が粒径0.1〜1μmのα−アルミナ粒子を3〜200mg/m2含有し、且つ、潤滑層がカルナウバワックスとセルロースの脂肪酸エステルを含有することを特徴とする1〕項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明に於いて透明磁性層(以下、磁気記録層とも言う)の“透明”とは、光学濃度が1.5以下であることを言う。光学濃度の測定法は、濃度計PDA−65〔コニカ(株)製〕を用い、ブルー光を透過するフィルターを介して436nmの波長の光を塗膜に垂直に入射させ、該塗膜による光の吸収を算出する方法による光学濃度が0.2以下、好ましくは0.1以下のことを言う。
【0028】
本発明に於ける単位面積当たりの磁化量とは、写真感光材料1m2当たりの磁化の強さ、即ち、透明磁性層1m2当たりの磁化の強さのことである。磁化の強さは磁化とも呼ばれ詳細な説明及び計測法は「磁気工学の基礎I」(太田恵造著,共立全書)に記載されている。
【0029】
本発明に於いては、東英工業製試料振動型磁束計(VSM−3)を用いて、一定体積の塗膜の塗布方向に外部磁界1000エルステッド(Oe)で一度飽和させた後、外部磁界を減少させて0にした時の磁束密度(残留磁束密度)を計測して、これを感光材料1m2当たりに含まれる透明磁性層の体積に換算して求める方法によった。
【0030】
透明磁性層の単位面積当たりの磁化量が3×10-2emuより小さいと磁気記録の入出力に支障を来す。
【0031】
本発明の透明磁性層の乾燥膜厚は、0.5〜3.0μmであり、好ましくは0.6〜2.5μm、更に好ましくは0.6〜2.0μmである。
【0032】
磁気記録層を形成する塗布液には、該記録層に潤滑性の付与、帯電防止、接着防止、摩擦・磨粍耐性向上等の機能を持たせるために、潤滑剤、帯電防止剤等種々の添加剤を添加することができる。又、磁気記録層に柔軟性を与えるために可塑剤を添加したり、塗布液中での磁性体の分散を助けるために分散剤、或いは磁気ヘッドの目詰りを防止するために研磨剤を添加することができる。
【0033】
上記潤滑性の付与、帯電防止、接着防止、摩擦・磨粍耐性向上、磁気ヘッドの目詰り防止等の機能は、磁気記録層とは別にこれらの機能性層を設けて付与させてもよい。例えば帯電防止層の上に本発明の磁気記録層を設ける場合、その良好な被膜形成性と塗布回数を減らして、より均一な薄膜にできるので、従来の透明磁性層を帯電防止層上に形成する場合よりも、良好な帯電防止性を得ることができる。又、磁気記録層をストライプ状に設ける場合、この上に磁性体を含有しない透明なポリマー層を設けて磁気記録層による段差をなくしてもよい。この場合、この透明なポリマー層に上記の各種機能を持たせてもよい。
【0034】
本発明の磁気記録体の製造方法は、下層への溶剤浸透と膨潤を抑え、且つ、乾燥後の塗膜強度が優れるために、磁性粉のみならず上記の各種添加剤をも併用して分散でき、感光材料の構成層を減らすことも可能で、製造上有利である。
【0035】
磁気記録層を設けた後に、この層の上をカレンダリング処理して平滑性を向上させ、磁気出力のS/N比を向上することも可能である。この場合、カレンダリング処理を施した後に、ハロゲン化銀感光性層を塗布することが好ましい。
【0036】
透明磁性体層に用いられる強磁性微粉末としては、強磁性酸化鉄微粉末、Coドープの強磁性酸化鉄微粉末、強磁性二酸化クロム微粉末、強磁性金属粉末、強磁性合金粉末、バリウムフェライト等が挙げられる。
【0037】
強磁性粉末は公知の方法に従って製造することができる。その形状としては、針状、米粒状、球状、立方体状、板状等の何れでもよいが、針状、板状が電磁変換特性上好ましい。結晶子サイズ、非表面積も特に制限はないが、結晶子サイズで400Å以下、SBETで20m2/g以上が好ましく、30m2/g以上が特に好ましい。
【0038】
強磁性粉末のpH、表面処理は特に制限なく用いることができ、好ましいpHの範囲は5〜10である。強磁性酸化鉄微粉末の場合、2価の鉄/3価の鉄の比は特に制限されることなく用いることができる。これらの磁気記録層については、特開昭47−32812号、同53−109604号に記載されている。
【0039】
磁性粉の好ましい使用量は感光材料1m2当たり4×10-4g以上が良い。これ以下であると磁気記録の入出力に支障をきたす。又、上限は436nm波長光の光学濃度が1.5以下であれば幾らでもよいが、1m2当たり4g程度が限界であり、これ以上多いと、感光材料として実用上の問題が発生する。
【0040】
光学的に透明な磁気記録層を形成するには、バインダーは磁性体粉末1重量部に対して1〜200重量部用いるのが好ましい。更に好ましくは、磁性体粉末1重量部に対して2〜50重量部である。又、溶剤は塗布が容易に行える量で用いられる。
【0041】
支持体上に磁気記録層を設ける方法としては、エクストルージョンコート、エアードクターコート、ブレードコート、エアーナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート等が利用できる。多条のストライプ塗布を行うには、これら塗布ヘッドを多連にすればよく、ストライプ塗布の具体的方法としては、例えば特開昭48−25503号、同48−25504号、同48−98803号、同50−138037号、同52−15533号、同51−3208号、同51−6239号、同51−65606号、同51−140703号、特公昭29−4221号、米国特許3,062,181号、同3,227,165号等の記載を参考にすることができる。
【0042】
しかし本特許でもっとも有効な塗布方式は、特開平5−192627号の図3に示した2スリット型の重層塗布ヘッドである。このヘッドのスリット間隙とフロント、センター、バックの各エッジの接触長を調整することにより、支持体の厚さ、剛性の異なる磁気記録媒体にも対応できる。
【0043】
磁気記録層を支持体上に強固に接着させるために、支持体に下塗層を設けてもよく、又、支持体を薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、濃酸処理、オゾン酸化処理等の表面活性化処理をしてもよい。更に、これら表面活性化処理をした後に下塗層を設けてもよい。下塗層は水系ラテックス系のものが好ましい。
【0044】
磁気記録層に採用できるバインダーや下引層に用いるバインダーとしては、熱可塑性樹脂、放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、その他の反応型樹脂があり、有機溶媒や水に溶解又は分散したものを単独又は混合して使用することができる。
【0045】
熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合体、部分加水分解した塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体又は共重合体、ニトロセルロース、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/又はアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン・ブタジエン樹脂、ブタジエン・アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、弗素系樹脂等を挙げることができる。特にセルロース誘導体、中でもセルロースジアセテートが好ましい。
【0046】
上記熱可塑性樹脂は、Tgが−40〜180℃、好ましくは−30〜150℃であり、重量平均分子量は5,000〜300,000であるものが好ましく、更に好ましくは重量平均分子量が10,000〜200,000のものである。
【0047】
本発明における透明磁性層は、Tgが50℃以上のものと、30℃以下のものを併用する。Tgについては新実験化学講座19.「高分子化学II」,(丸善発行)に詳しく記載されている。これらは水系エマルジョン又は水系コロイド溶液として使用することもできる。これら合成樹脂系エマルジョンの粒径は5〜2μmのものを使うことが出来る。
【0048】
放射線硬化性樹脂とは、電子線、紫外線等の放射線によって硬化させる樹脂であり、無水マレイン酸型、ウレタンアクリル型、エーテルアクリル型、エポキシアクリル型のものが挙げられる。
【0049】
又、熱硬化性樹脂、その他の反応型樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン系硬化型樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、シリコン系硬化型樹脂等が挙げられる。
【0050】
上記列挙の結合剤は、その分子中に極性基を有していてもよい。極性基としてはエポキシ基、−COOM、−OH、−NR2、−NR3X、−SO3M、−OSO3M、−PO3M2、−OPO3M(Mは各々、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウムを、Xはアミン塩を形成する酸を、R2、R3は各々、水素原子、アルキル基を表す)等が挙げられる。
【0051】
この他に本発明に使用できる親水性バインダーとしては、例えばリサーチ・ディスクロージャー(RD)No.17643,26頁、及び同No.18716,651頁に記載されている水溶性ポリマー、セルロースエーテル、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルを挙げることができる。
【0052】
水溶性ポリマーとしては、前述の他にゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ナトリウム、澱粉、ポリビニールアルコール、アクリル酸系共重合体、無水マレイン酸共重合体等が挙げられ、セルロースエーテルとしては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0053】
水溶性ポリマーを使用する場合は硬膜剤を使用するのが好ましい。使用できる硬膜剤としては、アルデヒド系化合物類、ケトン化合物類、反応性ハロゲンを有する化合物類、反応性オレフィンを持つ化合物類、N−メチロール化合物、イソシアナート類、アジリジン化合物類、酸誘導体類、エポキシ化合物類、ムコハロ酸類、クロム明礬、硫酸ジルコニウム、カルボキシル基活性型硬膜剤等を挙げることができる。硬膜剤は、通常、樹脂固形分に対して0.01〜60重量%用いられ、好ましくは0.05〜50重量%である。
【0054】
透明磁性層に使用できる潤滑剤としては、ポリシロキサン等のシリコンオイル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等のプラスチック微粉末、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、パラフィンワックス、フルオロカーボン類が挙げられる。これらは、単独又は混合して用いることができる。これらの添加量は、乾燥塗膜100重量部に対し0.5〜20重量部の範囲で用いることができる。水に溶けるか拡散させることができるものが好ましい。
【0055】
次に本発明で用いられる一般式(1)、(2)で表される滑り剤化合物について説明する。
【0056】
一般式(1)において、R1、R2は、脂肪族炭化水素基であり、R1又はR2の少なくとも一方に、少なくとも1つの極性置換基を持つ。この化合物のR1、R2の合計の総炭素数は25以上120以下である。これは十分な滑り性を有するために総炭素数25以上必要であり、また総炭素数が多くなると有機溶剤への溶解性が悪くなり有機溶剤中での分散がしにくくなるためである。
【0057】
総炭素数としてより好ましくは30以上100以下であり、更に好ましくは40以上80以下である。また、R1、R2のそれぞれは、十分な耐傷性、及び種々の使用条件での滑り性の悪化を抑えるため、それぞれ炭素数10以上70以下の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。炭素数が10以下の場合は、耐傷性が悪化し、種々の使用条件で滑り剤の転写により滑り性の悪化が起こる。また、炭素数70以上の片末端官能基化された脂肪族化合物は、一般に知られていない。
【0058】
この脂肪族炭化水素基は、直鎖構造でもよいし、不飽和結合を含んでいてもよく、また一部置換基を持っていてもよいし、分岐構造を持っていてもよい。このうち、耐傷性の観点で特に好ましいのは直鎖構造である。R1、R2の炭素数として、更に好ましいのは、15以上50以下である。
【0059】
一般式(2)において、R3、R4、R5は脂肪族炭化水素基である。この化合物の総炭素数は30以上150以下が必要である。総炭素数は十分な滑り性を得るためには、30以上が必要となる。また、総炭素数が150より多くなると有機溶剤に対する溶解性が悪く、分散や塗布による付与が困難となる。また、総炭素数としてより好ましくは40以上130以下、更に好ましくは50以上120以下である。また、十分な耐傷性、及び種々の使用条件で滑り性の悪化を抑えるため、R3、R5は、それぞれ炭素数10以上70以下の脂肪族炭化水素基R4は、炭素数10以上50以下の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。R3、R5については、炭素数が10以下の場合は、耐傷性が悪化し、種々の使用条件で滑り剤が転写により滑り性の悪化が起こる。また、炭素数70以上の片末端官能基化された脂肪族化合物は、一般的に知られていない。
【0060】
この脂肪族炭化水素基は、直鎖構造でも良いし、不飽和結合を含んでいても良いし、一部置換基を持っていても良いし、分岐構造を持っていても良い。このうち、耐傷性の観点で特に好ましいのは直鎖構造である。R3、R5の炭素数として、特に好ましいのは、15以上50以下である。また、R4については炭素数が10以下の場合は、耐傷性が悪化し、種々の使用条件で滑り剤の転写より滑り性の悪化が起こる。また、炭素数50以上の両末端官能基化された脂肪族化合物は、一般的に知られていない。この脂肪族炭化水素基についても、直鎖構造でも良いし、不飽和結合を含んでいてもよいし、一部置換基を持っていてもよいし、分岐構造を持っていてもよい。このうち、耐傷性の観点で特に好ましいのは直鎖構造である。R4の炭素数として、好ましいのは、10以上30以下である。特に好ましいのは、12以上25以下である。
【0061】
また、一般式(1)、(2)において、X1、X2、X3は二価の連結基である。
【0062】
具体的には、−C(O)O−、−C(O)NR−、−SO3−、−OSO3−、−SO2NR−、−O−、−S−、−NR−、−OC(O)NR−等が示される(Rは、H又は炭素数8以下のアルキル基を示す)。
【0063】
以上のような本発明に使用されるポリエーテル含有化合物は、例えば、相当する高級アルコールに通常の方法によりエチレンオキシドを逐次付加反応させるか、または相当するジカルボン酸にこの高級アルコールポリエーテル付加物を脱水縮合させるか、又はこの高級アルコールポリエーテル付加物に高級カルボン酸を縮合させて容易に合成できる。
【0064】
また、一般式(1)、(2)中のR1、R2の少なくとも一方に、またはR3、R4、R5の少なくとも一方に、極性の置換基を持つ化合物である。極性基は化合物の疎水性を低減し現像処理時の処理液の付着ムラを防止することが可能であり、また有機溶剤中への分散安定性も良化させることが可能である。
【0065】
ここでいう極性置換基としては、水素結合をしうる基、若しくはイオン性解離性のことを示す。極性置換基としては、−OH、−COOH、−COOM、−NH3、−NR4 +A-、−CONH2が好ましい。ここで、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、4級アンモニウム塩等のカチオン、RはHまたは炭素数8以下の炭化水素基、A-はハロゲン原子特にアニオンである。また、これらの基のうち−OHは特に好ましい。この極性の置換基は1分子中にいくつあっても良い。
【0066】
本発明の一般式(1)、(2)で表される滑り剤の使用量は特に限定されないが、その含有量は十分な滑り、耐傷性を発現するためには0.001〜0.1g/m2が好ましく、より好ましくは0.005〜0.05g/m2である。以下に本発明の一般式(1)、(2)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
【化1】
【0068】
【化2】
【0069】
前述の滑り剤は、これを適当な水又は有機溶剤に溶解、又は分散した塗布液を、支持体、又はバック面にその他の層を付与した支持体上又は、乳剤塗布時に塗布し、乾燥することにより形成できる。
【0070】
有機溶剤中に溶解する場合、一般式(1)、(2)で示される化合物が非常に疎水的なため、極性の低い炭化水素系有機溶剤にしか溶けないものが多く、製造工程中での溶剤取り扱いが難しくなってしまうため、水又は一般の有機溶剤中に分散することが好ましいが、平均分散粒子サイズが大きいと塗布した後の面状が悪化するため平均分散粒子サイズは0.1μm以下であることが好ましい。滑り剤を分散する方法としては、一般的に知られている乳化、分散法を利用することが出来る。具体的には、有機溶剤に溶解しておいて水中で乳化する方法、滑り剤を高温で溶融して水中で乳化する方法、ボールミル、サンドグラインダーによる固体分散法である。このような乳化分散法については、刈米、小石、日高編集「乳化・分散技術応用ハンドブック」(サイエンスフォーラム版)等の成書に記載されている。
【0071】
有機溶剤中に分散する方法としては、一般的に知られている方法を用いることができる。好ましい方法としては、具体的には滑り剤を有機溶剤中で、ボールミル、サンドグラインダー等により、固体分散する方法、滑り剤を有機溶剤中で加温溶解しておき、撹拌しながら冷却析出させて分散する方法、また、滑り剤を有機溶剤中で加温溶解しておき、これを常温又は冷却した有機溶剤中に添加して冷却析出させて分散する方法、また、相互に相溶しない有機溶剤同志により乳化する方法等である。このうち好ましい方法は滑り剤を有機溶剤中で加温溶解しておき、これを、常温又は冷却した有機溶剤中に添加して冷却析出させて分散する方法と滑り剤を有機溶剤中で、ボールミル、サンドグラインダー等により、固体分散する方法である。この分散に用いられる有機溶剤としては分散性が悪化しなければ特に制限はない。冷却析出させる方法において滑り剤溶解液を添加する冷却媒としては、極性の高い溶剤が好ましい。特に好ましい方法は滑り剤を60〜150℃に加熱溶解し冷却倍として滑り剤の常温での溶解度が1%以下の溶媒中に分散する方法である。滑り剤の常温での溶解度が1%以下の溶媒の中でも特にケトン類、アルコール類が分散性が良く好ましい。また、この分散で用いられる分散機としては、通常の撹拌機が使用できるが、特に好ましいのは、超音波分散機、ホモジナイザーである。
【0072】
塗布に使用される希釈溶剤としては、滑り分散の分散安定性、又は溶解性を悪化させないものであれば良く例えば、水、各種界面活性剤を含有した水、アルコール類、(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸、蟻酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸などのメチル、エチル、プロピル、ブチルエステルなど)、炭化水素系(ヘキサン、シクロヘキサンなど)ハロゲン化炭化水素系(メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素など)、芳香族炭化水素系(ベンゼン、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール、安息香酸、アンソールなど)、アミド系(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドンなど)、エーテル系(ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフランなど)、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテルアルコール類、グリセリン、ジエチレングリコール、ジメチルスルホキシド等がある。この中でも取り扱い上、水、各種界面活性剤を含有した、水、アルコール類、ケトン類、エステル類が好ましい。
【0073】
また、塗布された一般式(1)、(2)で示される化合物を均一に表面に存在させるために、塗布後の乾燥ゾーン又は熱処理ゾーン又は両ゾーンとも、実質的な温度を一般式(1)、(2)で示される化合物の融点以上とすることが必要である。融点以上の熱処理により塗布された一般式(1)、(2)の化合物が、フィルム上で溶解し、均一に塗れ広がり易くなり、また熱処理ゾーンのローラーと塗布面がタッチしたときに該化合物が押し広がるため、フィルム表面に均一に存在するようになる。乾燥、熱処理温度は該化合物の融点以上であればよいが、高すぎるとフィルム自体の変形等が起こり易くなるため、フィルム種類にもよるがその上限は200℃が好ましい。
【0074】
後述するガラス転移温度以下で処理したポリエチレンナフタレートを50重量%以上含む支持体を用いた場合は、支持体の巻き癖改良特性を悪化させないために一般式(1)、(2)の化合物を塗布した後の乾燥、熱処理温度は、一般式(1)、(2)の化合物の融点以下で、かつ該熱処理した支持体のガラス転移温度以下で行うことが好ましい。
【0075】
透明磁性層に使用できる研磨剤としては、モース硬度が5以上、好ましくは6以上の非磁性無機粉末が挙げられ、具体的には、酸化物アルミニウム(α−アルミナ、γ−アルミナ、コランダム等)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化鉄(α−Fe2O3)、二酸化珪素、二酸化チタン等の酸化物、炭化珪素、炭化チタン等の炭化物、ダイアモンド等の微粉末を挙げることができる。これらの平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましく、磁性体粉末100重量部に対して0.5〜300重量部の範囲で添加することができる。
【0076】
透明磁性層に含有される帯電防止剤としては金属酸化物の微粒子が好ましい。具体例としてはNb2O5 +xのような酸素過剰な酸化物、RhO2 -x,Ir2O3 -x等の酸素欠損酸化物、あるいはNi(OH)xのような不定比水素化物、HfO2,ThO2,ZrO2,CeO2,ZnO,TiO2,SnO2,Al2O3,In2O3,SiO2,MgO,BaO,MoO2,V2O5等或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO,TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してAl,In等の添加、TiO2に対してはNb,Ta等の添加、又、SnO2に対してはSb,Nb,ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25モル%の範囲が好ましいが、0.1〜15モル%の範囲が特に好ましい。
【0077】
又、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ωcm、特に105Ωcm以下であることが好ましい。又、前記金属酸化物の微粒子が水溶液中に混合されたゾルを用いてもよい。
【0078】
この他に、カーボンブラック、カーボンブラックグラフトポリマー等の導電性微粉末、アルキレンオキサイド系、グリセリン系及びグリシドール系等のノニオン系界面活性剤;高級アルキルアミン類、第4級アンモニウム塩類、ピリジンその他の複素環化合物の塩類、ホスホニウム又はスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤;カルボキシル基、燐酸基、硫酸エステル基、燐酸エステル基等の酸性基を含むアニオン系界面活性剤;アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又は燐酸エステル類等の両性界面活性剤等を挙げることができる。
【0079】
本発明のバインダー系はこれらの帯電防止剤の分散性にも優れるので、透明磁性層に良好な導電性を付与することができる。尚、界面活性剤は、ポリマーの置換基として含まれていてもよい。
【0080】
本発明の分散、混練、塗布の際に使用する溶媒としては、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン等のケトン系;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、i−ブチルアルコール、i−プロピルアルコール、メチルシクロヘキサノール等のアルコール系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−i−ブチル、酢酸−i−プロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール、モノエチルエーテル等のエステル系;エーテル、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系;ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、スチレンなどのタール系(芳香族炭化水素);メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素;N,N−ジメチルホルムアルデヒド、ヘキサン、水などが使用できる。
【0081】
本発明において、支持体としては各種のものが使用できる。具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、セルローストリアセテート(TAC)フィルム、セルロースジアセテート(DAC)フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム等を挙げることができる。
【0082】
ポリエステル支持体としては特に限定されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸とエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等のアルキレングリコール類との縮合ポリマー、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ジナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等、あるいはこれらの共重合体が挙げられる。特に、現像処理後の巻癖回復性の点で特開平1−244446号、同1−291248号、同1−298350号、同2−89045号、同2−93641号、同2−181749号、同2−214852号及び特開平2−291135号等に示されるような、含水率の高いポリエステルを用いることが好ましい。これらのポリエステルは、極性基、その他の置換基を有していてもよい。
【0083】
本発明の支持体としては、PET又はPENが好ましい。これらポリエステルは、フィルム支持体の機械的強度、寸法安定性などを満足させるために面積比で4〜16倍の範囲で延伸を行うことが好ましい。
【0084】
支持体には、マット剤、帯電防止剤、滑剤、界面活性剤、安定剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、導電性物質、粘着性付与剤、軟化剤、流動性付与剤、増粘剤、酸化防止剤等を添加することができる。
【0085】
支持体は、最小濃度部の色味のニュートラル化、写真乳剤層を塗設したフィルムに光がエッジから入射した時に起こるライトパイピング現象(縁カブリ)の防止、ハレーション防止等の目的で染料を含有させることができる。
【0086】
この染料の種類は特に限定されないが、支持体としてポリエステルフィルムを用いる場合、製膜工程上、耐熱性に優れたものが好ましく、例えばアンスラキノン系化学染料等が挙げられる。又、色調としては、ライトパイピング防止を目的とする場合、一般の感光材料に見られるようにグレー染色が好ましい。染料は1種類又は2種類以上の染料を混合して用いてもよい。市販品として、三菱化成(株)製:Diaresin、Bayer社製:MACROLEX等の染料を、単独又は適宜混合して用いることで目標を達成することが可能である。
【0087】
本発明の磁気記録層を有する感光材料は、黒白用感光材料、カラーネガ用感光材料、カラーペーパー用感光材料、カラーリバーサル用感光材料、映画用感光材料、X線用感光材料、印刷用感光材料、マイクロ写真用感光材料等、何れの感光材料であってもよい。
【0088】
【実施例】
以下、本発明を実施例により述べるが、本発明の実施の態様はこれらに限定されるものではない。
【0089】
実施例1
(下引処理ベースの作成)
ポリエチレン−2,6−ナフタレートベース(厚さ85μm)の両面に8W/m2・minのコロナ放電処理を施し、片面に下記組成の下引塗布液U−1、U−2を調製し、ベース側より順次0.8μm、0.1μmの乾燥膜厚となるように塗布した。また他方の面に、下記組成の下引塗布液U−3、S−1を調製し、ベース側より順次0.1μm、0.3μmの乾燥膜厚となるように塗布して帯電防止機能を持つ下引層形成済み支持体を作成した。尚、以下の実施例において、特に断りない限り、各素材の「部」は「重量部」を示す。
【0090】
下引層塗布液(U−1)
ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/ 270部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体ラテックス液
(重量構成比=30:20:25:25,固形分30%)
界面活性剤(A−1) 0.5部
硬膜剤(H−1) 1部
純水 730部
下引層塗布液(U−2)
スチレン/マレイン酸共重合体ラテックス液(固形分5%) 100部
界面活性剤(A−1) 0.5部
硬膜剤(H−2) 0.1部
マット剤(平均粒径3μmのシリカ粒子) 0.5部
純水 900部
下引層塗布液(U−3)
ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/ 270部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体ラテックス液
(重量構成比,固形分共U−1と同じ)
界面活性剤(A−1) 0.5部
硬膜剤(H−1) 1部
純水 730部
下引層塗布液(S−1)
酸化錫微粉末(平均粒径0.1μm)
〔石原産業(株)製:SN100P〕 60部
スルホ基含有ポリエステルラテックス(固形分30%) 120部
ヒドロキシル基含有アクリル酸エステルラテックス
(固形分30%) 12部
界面活性剤(A−1) 1部
純水 1200部
使用した化合物の構造は下記の通り。
【0091】
【化3】
【0092】
(磁気記録層と潤滑層の塗設)
前記下引処理ベースの下引層S−1(導電層に当たる)が塗布された面に、下記組成と手順で磁性層塗布液(M−1)と潤滑層塗布液(W−1)を調製し、特開平5−192627号の第3図記載のエクストルージョンコーターを用い、下層の磁性層の乾燥膜厚1.2μm、上層の潤滑層は15nmとなるように吐出流量を制御して塗布した。その際、スパン500mmのサポートロール間の中間の位置にコーターを設置し、搬送張力は6kg/10cm幅とした。塗膜が未乾燥のうちに配向磁場中で塗布方向へ磁性体を配向させ、磁気記録再生時の高出力化を図った。引続き、乾燥ゾーンで完全に乾燥させ、100℃の熱処理ゾーンに5分間通した後、冷却してから、巻取った。塗布後の元巻を50℃のオーブンに5日間放置して、架橋剤の反応を十分におこなって磁気記録媒体とした。
【0093】
磁性層塗布液(M−1)
下記組成P−1を撹拌混合したのち、サンドミルで分散する。
【0094】
<P−1>
コバルト含有γ−酸化鉄(平均長軸長0.12μm
短軸長0.015μm,Fe2+/Fe3+=0.2
比表面積40m2/g,Hc=750 Oe) 7部
α−アルミナ(平均粒径0.2μm) 5部
ポリウレタン(分子量3万,1分子中スルホン酸基2個含有) 1部
メチルエチルケトン 10部
シクロヘキサノン 3部
上記P−1を下記の希釈用樹脂溶液LD−1で希釈し撹拌・混合する。
【0095】
<LD−1>
セルロースジアセテート 89部
シクロヘキサノン 600部
アセトン 600部
この塗布液をサンドミルで更に分散した後、コロネート3041(固形分50%)を20部添加して撹拌後、フィルターで濾過して磁性層塗布液M−1とした。
【0096】
M−1の粘度は200cpsであった。
【0097】
潤滑層塗布液(W−1)
カルナバワックス 1部
シクロヘキサノン 3部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 3部
上記を攪拌、混合後、サンドミルで分散して原液1とし、これをシクロヘキサノン/アセトンの重量比1/1の溶媒、1000重量部で稀釈し、濾過後、ワックス液W−1とした。この液の粘度は1cpsであった。
【0098】
(磁気記録媒体の評価)
このようにして得られた実施例1の試料について塗布性と失透度、支持体との接着性を評価した。また、磁気入出力と変動を計測し、塗布の均一性と磁性体の凝集状態を評価した。
【0099】
≪塗布性≫
塗布直後のベースが乾燥ゾーンにはいる前の状態を目視で観察し、以下のように評価分類した。
【0100】
○:良好な塗布状態
△:上下層のまだらムラ、スジムラなどの塗布故障が発生して塗布可能範囲が極めてせまいもの
×:実用不可能のレベル
≪濁度(ヘーズ値)≫
濁度計SEP−PT−501D型〔三菱化成(株)製〕を用いて測定した。値が小さい方が濁度が少なく優れることを表す。
【0101】
≪接着性≫
試料にセロハンテープを一定面積、貼付け、ゴムローラーで一定荷重を書けた後、剥がして裏面(磁気記録層)の剥離面積を調べ、最初にテープを貼った部分に対する面積比で算出した。
【0102】
全く剥がれないものを0%、磁気記録層がセロハンテープ側にすべて転写したものを100%とした。
【0103】
≪電磁変換特性≫
オーディオテープレコーダー用の磁気ヘッドにより、試料の塗布方向の出力変動と最適記録電流での2kHzの矩形波の入出力信号からS/N比を計測した。
(感光材料の作成)
得られた試料の磁気記録層を有する面と逆の面、即ち、前記下引層U−2の上に25W/m2・minのコロナ放電を施した後、特開平8−334858号記載の実施例1の試料乳剤層構成より成る多層カラー感光材料を作成した。該試料の銀塗布量は6.25g/m2、乾燥膜厚は18μmであり、特定写真感度はISO420であった。
【0104】
〈現像処理〉
作成した感光材料を、以下に示す処理工程に従って現像処理した。
【0105】
処理工程 処理時間
カラー現像 3分15秒
漂 白 6分30秒
水 洗 2分10秒
定 着 4分20秒
水 洗 3分15秒
安 定 1分05秒
各工程に用いた処理液組成は下記の通りである。
【0106】
カラー現像液
ジエチレントリアミン五酢酸 1.0g
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸 2.0g
亜硫酸ナトリウム 4.0g
炭酸カリウム 30.0g
臭化カリウム 1.4g
沃化カリウム 1.3mg
ヒドロキシルアミン硫酸塩 2.4g
4−(N−エチル−N−β−ヒドロキシエチル)アミノ 4.5g
−2−メチルアニリン硫酸塩
水を加えて1リットルとし、pH10.0に調整する。
【0107】
漂白液
エチレンジアミン四酢酸第二鉄アンモニウム塩 100.0g
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 10.0g
臭化アンモニウム 150.0g
硝酸アンモニウム 10.0g
水を加えて1リットルとし、pH6.0に調整する。
【0108】
定着液
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 1.0g
亜硫酸ナトリウム 4.0g
チオ硫酸アンモニウム(70%) 175.0g
重亜硫酸ナトリウム 4.6g
水を加えて1リットルとし、pH6.6に調整する。
【0109】
安定液
ホルマリン(40%) 2.0mg
ポリオキシエチレン−p−モノノニルフェニルエーテル 0.3g
(平均重合度10)
水を加えて1リットルとした。
【0110】
実施例2〜7
実施例1の塗布液M−1のうちLD−1の溶剤量を変化させた塗料とW−1の稀釈液の組成を変化させた塗料を、表1のように組合わせたほかはまったく同様にして試料を作成し、磁気記録媒体としての評価を行った。
【0111】
実施例1〜7の試料内訳と得られた結果を下記表1、2に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
表2から明らかなように本発明の試料は光学特性(濁度)を維持しつつ、接着性、塗布性を改良し、出力低下の少ない磁気記録媒体を得ることができた。
【0115】
実施例8〜11及び比較例1〜5
実施例1の塗布液W−1の組成をW−2またはW−3のように変更し、磁性層と潤滑層の乾燥後の膜厚を表2のように変化させたほかはまったく同じように実施例8〜11を作成し、磁気記録媒体としての評価を行った。
【0116】
潤滑層塗布液(W−2)
化合物(例示1−1) 1部
化合物(例示2−1) 1部
キシレン 10部
上記を加温溶解して原液2とし、シクロヘキサノン/アセトンの重量比1/1の溶媒、2000重量部で分散稀釈し、濾過後、ワックス液W−2とした。この液の粘度は1cpsであった。
【0117】
潤滑層塗布液(W−3)
前記の原液2を上記を、シクロヘキサノン/アセトンの重量比1/1の溶媒、200重量部で稀釈し、濾過後、ワックス液W−3とした。この液の粘度は1cpsであった。
【0118】
実施例11[逐次重層塗布]
実施例1のM−1を特開平3−162号の第2図記載のコーターを使用して塗布を行い、その下流側でW−1を特開平3−153号の第3図記載のコーターを用いて塗布を行い、第2層目のW−2を特開平3−153号の第3図記載のコーターを用いて塗布し、配向磁場を除去したほかは第1層のM−1の塗布と同じになるように処理して試料を作成し、磁気記録媒体としての評価を行った。
【0119】
比較例5[第1層(磁気記録層)乾燥後の第2層(潤滑層)塗布]
実施例1のM−1を特開平3−162号の第2図記載のコーターを使用して塗布を行い、乾燥させ、実施例1と同様の処理をして巻取った。第2層目のW−2を特開平3−153号の第3図記載のコーターを用いて塗布し、配向磁場を除去したほかは第1層のM−1の塗布と同じように処理して試料を試作し、磁気記録媒体としての評価を行った。
【0120】
実施例8〜10、11及び比較例1〜5の試料内訳と得られた結果を下記表3、4に示す。
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
表4から明らかなように、本発明の試料は磁性層厚みと潤滑層厚みを請求項の範囲にすることにより、従来困難であった生産性の向上と接着性、光学特性、出力変動を改善することができた。
【0124】
実施例12〜16
実施例1の塗布液M−1の組成とW−1の組成を表5のように変更したほかは実施例1とまったく同様にして、実施例12〜16の試料を作成し、磁気記録媒体および写真感光材料としての評価を行った。
【0125】
(感光材料の評価)
上記のように作成した感光材料の各試料について以下のように評価した。
【0126】
≪耐久性テスト≫
15cmの距離を水平に往復走行する荷台の上に、試料の測定面を上にして固定し、上方よりステンレス綱球(5mmφ)で50gの荷重を掛けた。荷台を10cm/secの速度で摺動させ、1000往復繰り返した。試験終了後の傷付きの程度を以下に示すランクにより測定した。測定面は現像後の乳剤層を有さない面であり、測定環境は常温(25℃・55%RH)で行った。
【0127】
A:傷付きなし
B:摺動跡はあるものの、磁気記録再生装置での出力低下なし
C:傷付きあり、磁気記録再生装置での出力が50%低下
D:膜剥がれを生じる
≪耐溶剤試験≫
5cmの距離を水平に往復走行する平板の上に、各試料の測定面を上にして固定し、上方よりエタノールを染み込ませたフェルト(5mm角)を10gの荷重で押し当てた。試料を載せた平板を10cm/secの速度で走行させ、30回の往復を繰り返した。耐溶剤性の程度を以下に示すランクで測定した。
【0128】
A:全く変化のないもの
B:僅かに磁気層が削られるもの
C:10回以上で磁気層が削られて消失するもの
D:数回で磁気層が溶出するもの
≪汚れ付着性試験≫
前記定着液と安定液とをそれぞれ30倍に濃縮(水の稀釈量を1/30に減じる)した液を混合し、通常の現像処理をおこなった後のサンプルを10分間、浸潤したのち、引上げ、23℃、50%環境下に塗布面を垂直方向にして自然乾燥させた。このサンプルの汚れを下記基準によって評価した。
【0129】
○:見た目に変化なく、写真用のフィルムとして使用可能なもの
△:周辺部に水垢状の汚れが見えるが、実用状許容できるもの
×:付着固形分が固まりになって、明らかに透明性が劣化するもの
実施例12〜16の試料内訳と得られた結果を下記表5、6に示す。
【0130】
【表5】
【0131】
【表6】
【0132】
表6から明らかなように本発明の試料は、塗布性、濁度及び接着性において優れていた。さらに感光材料に適用した場合の耐久性、耐溶剤性及び処理液による汚れに関しても問題がなかった。
【0133】
【発明の効果】
実施例にて実証した如く、本発明によれば、濁度が少なく、かつ塗膜の接着性(強度)が優れた磁気記録媒体を得られた。さらに本発明によれば塗布性の向上により電磁変換特性が良好で、かつ透明性の良好な磁気記録媒体とその製造方法を得ることができた。さらに本発明の磁気記録媒体を、ハロゲン化銀写真感光材料に適用した場合、耐久性、耐溶剤性の劣化がなく、かつ処理液による汚れの少ない感光材料を得られた。
Claims (2)
- 透明磁性層の乾燥膜厚が0.5〜3.0μmであり、該透明磁性層上に、乾燥膜厚3〜200nmの潤滑層が形成された磁気記録媒体の製造方法であって、連続的に走行する非磁性支持体上の一方の側に、エクストルージョン型の塗布ヘッドを用いて、含有される有機溶剤塗布量が0.8〜30g/m 2 である該潤滑層の塗布液を、該透明磁性層上に該透明磁性層と同時重層塗布し該潤滑層を形成する製造方法であり、更に、該透明磁性層を形成する塗布液の粘度が10〜1500cpsであって、該潤滑層を形成する塗布液の粘度が1〜300cpsであることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
- 非磁性支持体の塗布面にあらかじめ、バインダーと金属酸化物を含む層が形成されており、透明磁性層が粒径0.1〜1μmのα−アルミナ粒子を3〜200mg/m 2 含有し、且つ、潤滑層がカルナウバワックスとセルロースの脂肪酸エステルを含有することを特徴とする請求項1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
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