JP3799374B2 - 接着性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属、特に貴金属および貴金属合金に対して優れた接着性を有する接着性組成物に関する。本発明の接着性組成物は、金属にレジンを接着する医療、電子材料、精密機械および宝飾等の多くの分野で利用可能であるが、特に歯科分野において有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、齲蝕等により損傷を受けた歯牙の修復には、金属製の補綴物を歯牙に接着する方法が広く行われている。このような金属製の補綴物と歯牙とを接着させるための接着剤として、特開昭58−21607号公報、特開昭61−293951号公報等に開示されているリン酸エステルモノマーやカルボン酸モノマーを配合した歯科用接着剤が用いられている。これら接着剤を用いた接着に際しては、接着力を向上させる目的で接着剤を補綴物に塗布するに先立ち各々の被着面の前処理が行われる。具体的には、歯牙はリン酸に代表される酸水溶液による処理が行われ、他方、補綴物の被着面は一般にサンドブラスト処理を行い表面の粗造化が行われていた。
【0003】
上記方法による接着は、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、スズ、アルミニウム、銅、チタン等の卑金属およびこれらの元素を主成分とする卑金属合金に対して優れた接着性を示す事が確認されている。しかしながら、貴金属合金(金、白金、パラジウム、銀等を主成分とする合金)に対する接着力は充分なものではなかった。そこで、貴金属或いは貴金属合金を対象とする場合、その接着性を向上させる目的で、金属表面をサンドブラスト処理した後に更にスズメッキまたは加熱酸化処理等の表面処理が行われていた。
【0004】
しかしながら、かかるスズメッキや加熱酸化処理操作は煩雑であり、より簡便な方法として、チオリン酸基を有する化合物(特開平1−138282)、チオリン酸ジクロリド基を有する化合物(特開平5−117595)、トリアジンジチオン誘導体(特開昭64−83254)、さらにはメルカプトチアジアゾール誘導体(特開平8−113763)等の特定の官能基を有する重合性化合物を含む表面処理剤を、サンドブラスト処理された貴金属合金面に塗布する方法が提案され、操作の簡略化が図られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、もっと簡便に、即ち表面処理剤による表面処理操作を行うことをも必ずしも必要としない、貴金属および貴金属合金に対して充分な接着性を有する接着剤の開発を我々は技術課題とした。
【0006】
従って、本発明の目的は、金属、特に貴金属および貴金属合金に対して充分な接着性を有する接着性組成物を見い出すことである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定構造のラジカル重合可能なジスルフィド化合物を含有する接着性組成物が貴金属に対する接着性に極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記一般式(1)または(2)で示されるラジカル重合性不飽和結合を有するジスルフィド化合物である。また他の発明は、該ジスルフィド化合物、ラジカル重合性単量体及び重合開始剤を含有してなる接着性組成物である。
【0009】
【化3】
【0010】
{式中、R1は水素原子またはアルキル基であり、R2は水素原子、アルキル基またはフェニル基であり、R3は炭素数2〜12の2価の飽和炭化水素基もしくは下記一般式(3)、(4)または(5)で表されるいずれかの基であり、
【0011】
【化4】
【0012】
(式中、nは1〜5の整数であり、o及びpはそれぞれ1〜10の整数であり、qは1〜5の整数であり、r及びsはそれぞれ1〜5の整数である。但し、いずれの基も左端の炭素原子が基Zに結合し、右端の炭素原子が酸素原子に結合する)
R4は水素原子またはメチル基であり、Zは、−COO−基、−CH2O−基または−C6H4−CH2O−基(いずれの基も左端の炭素原子が不飽和炭素に結合し、右端の酸素原子が基R3に結合する)である}
他の発明は、上記接着性組成物に更にフィラーを含有してなる接着性組成物である。
【0013】
【発明の実施の形態】
上記一般式(1)および(2)で表される本発明のラジカル重合性不飽和結合を有するジスルフィド化合物(以下、重合性ジスルフィド化合物という)において、R1は水素原子またはアルキル基を表す。好適なアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が例示される。
【0014】
ここで、R1が水素原子の場合には、上記一般式(1)と(2)は異性体となるため、本明細書では一般式(1)をもって表記する。
【0015】
上記一般式(1)および(2)において、R2は水素原子、アルキル基またはフェニル基を表す。R2がアルキル基の場合、該アルキル基としては、上記R1と同様の基が例示できる。
【0016】
上記一般式(1)および(2)において、R3は炭素数2〜12の2価の飽和炭化水素基、もしくは上記一般式(3)、(4)又は(5)で表されるいずれかの基を表す。
【0017】
R3が炭素数2〜12の2価の飽和炭化水素基の場合、該飽和炭化水素基は分枝を有してもよい。この様な基を具体的に例示すれば、エチレン基、プロピレン基、イソプロペン基、ヘキシレン基、デシレン基、ドデシレン基等が挙げられ、これらの中で炭素原子数5〜10のアルキレン基のものが接着力、合成の容易さの点で好ましい。
【0018】
一般式(3)で表される基において、nは1〜5の整数である。一般式(4)で表される基において、o及びpはそれぞれ1〜10の整数であり、接着力、合成の容易さの点でそれぞれ3〜6の整数であることが好ましい。また、一般式(4)で表される基において、qは1〜5の整数であり、接着力、合成の容易さの点で1〜3の整数であるのが好ましい。さらに、一般式(5)で表される基において、r及びsはそれぞれ1〜5の整数であり、接着力、合成の容易さの点でそれぞれ1〜3の整数であるのが好ましい。
【0019】
上記一般式(1)および(2)において、R4は水素原子またはメチル基を表す。
【0020】
上記一般式(1)および(2)において、Zは、−COO−基、−CH2O−基または−C6H4−CH2O−基を表す。中でも−COO−基である重合性ジスルフィド化合物が重合性および取り扱い易さ等の点で好適である。
【0021】
上記一般式(1)および(2)で示される重合性ジスルフィド化合物のうち、R1が水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R2が水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、R3が炭素数5〜10のアルキレン基もしくは前記一般式(2)、(3)または(4)で表されるいずれかの基(式中、nは1〜5の整数であり、o及びpはそれぞれ3〜6の整数であり、r及びsはそれぞれ1〜3の整数である)であり、R4が水素原子又はメチル基であり、Zが−COO−基である重合性ジスルフィド化合物が、接着力、合成の容易さ及び取り扱い易さの諸点で特に好適に用いられる。
【0022】
本発明で用いられる重合性ジスルフィド化合物を具体的に例示すれば下記の通りである。
【0023】
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
【化10】
【0029】
【化11】
【0030】
【化12】
【0031】
【化13】
【0032】
本発明に用いる一般式(1)および(2)で示される重合性ジスルフィド化合物の製造方法は特に限定されるものではなく、如何なる方法を採用してもよい。工業的に好適な方法の一例を具体的に例示すれば次の通りである。
【0033】
即ち、下記一般式(6)
【0034】
【化14】
【0035】
(式中、R1は水素原子またはアルキル基である)で示されるチオ尿素誘導体と、下記一般式(7)
【0036】
【化15】
【0037】
(式中、R2は水素原子、アルキル基またはフェニル基である)で示されるマロン酸誘導体を縮合反応させて下記一般式(8)または(9)
【0038】
【化16】
【0039】
(式中、R1およびR2は上記一般式における定義と同義である)で示されるカルボエトキシチオウラシル誘導体を得、次いで該誘導体を加水分解して下記一般式(10)または(11)
【0040】
【化17】
【0041】
(式中、R1およびR2は上記一般式における定義と同義である)で示されるカルボキシチオウラシル誘導体を得た後、該化合物と下記一般式(12)
【0042】
【化18】
【0043】
{式中、R3は炭素数2〜12の2価の飽和炭化水素基、または下記一般式(3)、(4)又は(5)
【0044】
【化19】
【0045】
(式中、nは1〜5の整数であり、o及びpはそれぞれ1〜10の整数であり、qは1〜5の整数であり、またr及びsはそれぞれ1〜5の整数である。但し、いずれの基も左端の炭素原子が基Zに結合し、右端の炭素原子が酸素原子に結合する)で表されるいずれかの基であり、R4は水素原子またはメチル基であり、Zは、−COO−基、−CH2O−基または−C6H4−CH2O−基(いずれの基も左端の炭素原子が不飽和炭素に結合し、右端の酸素原子が基R3に結合する)である}
で示される重合性不飽和結合を有するアルコール(以下、重合性不飽和アルコールという)とを反応させることにより、下記一般式(13)または(14)
【0046】
【化20】
【0047】
(式中、R1、R2、R3、Z及びR4は上記一般式における定義と同義である。)で示されるチオウラシル誘導体を得る。その後、該チオウラシル誘導体を酸化的二量化反応させることにより一般式(1)または(2)で示される目的の重合性ジスルフィド化合物が得られる。
【0048】
前記一般式(6)で示したチオ尿素誘導体としては公知のものが制限なく用いられる。例えば、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、プロピルチオ尿素、ブチルチオ尿素等が好適に用いられる。
【0049】
前記一般式(7)で示したマロン酸誘導体は、マロン酸ジエチルとオルト酸トリエチルの反応により合成される。
【0050】
オルト酸トリエチルとしては、オルトギ酸トリエチル、オルト酢酸トリエチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルト安息香酸トリエチル等が例示される。
【0051】
さらに具体的には、一般式(7)で示されるマロン酸誘導体は、マロン酸ジエチル1モルとナトリウムエトキシド2〜3モルを溶媒存在下で仕込み、オルト酸トリエチル1モルを徐々に滴下して反応させることにより得られる。
【0052】
前記一般式(12)で示した重合性不飽和アルコールとしては、Zが−COO−基の場合、(メタ)アクリル酸とグリコールとのエステル化反応、(メタ)アクリル酸クロライドとグリコールのエステル化反応等により得られるものが使用できる。Zが−CH2O−基の場合にはアリルクロライドとグリコールとの反応等により得られるものが使用できる。また、Zが−C6H4−CH2O−基の場合には4−ビニルベンジルクロライドとグリコールとの反応等により得られるものが使用できる。
【0053】
該グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、パラ−キシレングリコール、1,3−ビス(ヒドロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン等が例示される。
【0054】
具体的には、一般式(12)においてZが−COO−基の重合性不飽和アルコール(12)は、(メタ)アクリル酸1モルに対し、グリコール1モル〜4モルと酸触媒0.01〜0.1モルを仕込み、反応させることにより得られる。酸触媒としてはp−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等が好ましく用いられる。或いは、グリコール1〜4モルと脱ハロゲン化水素剤として第三アミン1モルまたはモレキュラーシーブ3Aを溶媒存在下で仕込み、(メタ)アクリル酸クロライド1モルを徐々に滴下してエステル化反応することでも得られる。第三アミンとしてはピリジン、トリエチルアミン等が好ましく用いられる。
【0055】
また、一般式(12)においてZが−CH2O−基の重合性不飽和アルコール(12)は、グリコール1モル〜4モルと塩基性触媒1〜1.2モルを溶媒存在下で仕込み、アリルクロライド1モルを徐々に滴下して反応させることにより得られる。塩基性触媒としては水素化ナトリウム等が好ましく用いられる。
【0056】
さらに、一般式(12)においてZが−C6H4−CH2O−基の重合性不飽和アルコール(12)は、グリコール1モル〜2モルと塩基性触媒1〜1.2モルを溶媒存在下で仕込み、4−ビニルベンジルクロライド1モルを徐々に滴下して反応させることにより得られる。塩基性触媒としては水素化ナトリウム等が好ましく用いられる。
【0057】
上記反応において、通常、目的のモノ置換体である重合性不飽和アルコール(12)と副生成物のジ置換体が得られが、蒸留またはカラムクロマトグラフィーによりモノ置換体(12)を分離精製することができる。
【0058】
前記一般式(6)のチオ尿素誘導体と一般式(7)のマロン酸誘導体との縮合反応において、一般式(6)のチオ尿素誘導体に対する一般式(7)のマロン酸誘導体の反応モル比は0.5〜1.5モルが好ましい。
【0059】
この時用いられる反応触媒としては公知のものが使用可能であり、ナトリウムエトキシド等が例示され、その添加量は一般式(6)のチオ尿素誘導体に対して0.5〜1.5倍モルが好ましい。反応に用いる溶媒としてはエタノール等が挙げられる。反応の温度は40〜80℃の範囲から選択することができ、好ましくは60〜80℃の範囲である。反応時間は特に限定されることはなく一般的には1〜10時間程度の範囲から選択できるが、反応温度との関連で決定されればよい。
【0060】
反応後は析出した塩を水に溶解させ、酸を加えて溶液を酸性にすることにより、カルボエトキシチオウラシル誘導体が得られる。
【0061】
ただし、一般式(6)のチオ尿素において、R1がアルキル基の場合、前記反応において得られるカルボエトキシチオウラシル誘導体はアルキル基のN原子上の置換位置による異性体の混合物、すなわち一般式(8)および(9)で表されるカルボエトキシチオウラシル誘導体の混合物として得られる。これらはカラムクロマトグラフィーにより分離精製することができる。
【0062】
前記一般式(6)のチオ尿素誘導体と一般式(7)のマロン酸誘導体との反応で得られる一般式(8)または(9)のカルボエトキシチオウラシル誘導体の加水分解において、用いられる反応試剤としては公知のものが使用できるが、カリウムターシャルブトキシドのジメチルスルホキシド溶液を用いるのが好ましい。
【0063】
該反応試剤の添加量は上記カルボエトキシチオウラシル誘導体に対して6〜20倍モルの範囲が好適であるが、12〜16倍の範囲がより好ましい。反応の温度は室温〜80℃の範囲から選択することができるが、好ましくは室温〜40℃の範囲である。反応時間は特に限定されることはなく一般的には1〜24時間程度の範囲から選択できるが、反応温度との関連で決定されればよい。
【0064】
反応後は、反応混合液に水を添加し、さらに酸を加えて溶液を酸性にすることにより、一般式(10)または(11)で示されるカルボキシチオウラシル誘導体が得られる。
【0065】
一般式(10)または(11)のカルボキシチオウラシル誘導体と一般式(12)の重合性不飽和アルコールとのエステル化反応において、カルボキシチオウラシル誘導体に対する重合性不飽和アルコールの反応モル比は1〜5の範囲で反応させることができるが、1〜3の範囲がより好ましい。
【0066】
このエステル化反応のエステル化触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド等が挙げられる。これら反応触媒の添加量は上記カルボキシチオウラシル誘導体に対して0.1〜1倍モルの範囲が好ましい。反応溶媒としてはテトラヒドロフラン、アセトン、トルエン等が挙げられる、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ブチルヒドロキシトルエン等の重合禁止剤を少量添加することも好ましい。反応温度は室温〜80℃の範囲から選択することができるが、好ましくは室温〜70℃の範囲である。反応時間は特に限定されることはなく一般的には1〜50時間程度の範囲から選択できるが、反応温度との関連で反応物が重合しない範囲で決定されればよい。
【0067】
反応後は、析出物を濾過し、溶媒を減圧留去後、その濃縮物を酢酸エチル等の不活性溶媒を展開溶媒としてシリカゲルカラムを通過させて分離精製することにより、一般式(13)または(14)で示されるチオウラシル誘導体が得られる。
【0068】
これら一般式(13)または(14)のチオウラシル誘導体から酸化的二量化反応により目的の重合性ジスルフィド化合物が得られるが、該反応に使用する酸化剤としては、臭素、ヨウ素、過酸化水素、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド等が挙げられる。反応触媒の添加量は上記チオウラシル誘導体に対して1〜10倍モルの範囲が好ましい。またこの反応に用いる溶媒としてはテトラヒドロフラン、アセトン、塩化メチレン、エタノール、水等が挙げられ、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ブチルヒドロキシトルエン等の重合禁止剤を少量添加することも好ましい。反応温度は室温〜80℃の範囲から選択することができるが、好ましくは室温〜70℃の範囲である。反応時間は特に限定されることはなく一般的には1〜50時間程度の範囲から選択できるが、反応温度との関連で反応物が重合しない範囲で決定されればよい。
【0069】
本発明の接着性組成物において、かかる重合性ジスルフィド化合物の配合量は特に制限されるものではないが、接着強度の観点から、ラジカル重合性単量体100重量部に対し、好ましくは0.005〜30重量部の範囲内であり、より好ましくは0.01〜10重量部であり、特に好ましくは0.05〜5重量部である。該重合性ジスルフィド化合物の配合量が多すぎても少なすぎても貴金属および貴金属合金に対する接着強さが小さくなる傾向がある。
【0070】
本発明の接着性組成物にはラジカル重合性単量体が配合される。該ラジカル重合性単量体は特に限定されず、公知の単官能または多官能ラジカル重合性単量体、もしくは酸性基を含有するラジカル重合性単量体(以下、酸性基含有重合性単量体という)を用いることができる。
【0071】
該ラジカル重合性単量体において、ラジカル重合可能な不飽和結合を有する基としては、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基、スチリル基、アリル基等が挙げられる。中でも、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体が重合性、接着性及び取り扱い易さの点で好適である。
【0072】
一般に好適に使用される単官能ラジカル重合性単量体を具体的に例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート系単量体:N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリルアミド系単量体:スチレン、α−メチルスチレン等の単官能スチレン系単量体が挙げられる。
【0073】
一般に好適に使用される多官能ラジカル重合性単量体を具体的に例示すると、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、1−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル ハイドロジェンマレート等の芳香族二官能(メタ)アクリレート系単量体:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の脂肪族二官能(メタ)アクリレート系単量体:N,N−メチレン(ビス)アクリルアミド等の二官能(メタ)アクリル酸アミド系単量体:ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンダイマー等の二官能スチレン系単量体:ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネートなどの二官能アリル系単量体:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の三官能(メタ)アクリレート系単量体:ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の四官能(メタ)アクリレート系単量体等が挙げられる。
【0074】
酸性基含有重合性単量体としては、1分子中に少なくとも1つの酸性基と少なくとも1つの重合性不飽和基を持つ重合性単量体であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。
【0075】
酸性基としてはリン酸基、カルボン酸基、無水カルボン酸基、スルホン酸基等が好ましい。代表的なリン酸基、カルボン酸基、無水カルボン酸基、及びスルホン酸基を有する重合性単量体を下記一般式(15)で示す。
【0076】
【化21】
【0077】
{式中、R5は水素原子またはメチル基、Wはオキシカルボニル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、またはフェニレン基(−C6H4−)を表し、R6は結合手、またはエーテル結合および/またはエステル結合を有していてもよい2〜6価の炭素数1〜30の有機残基、Xはリン酸基、カルボン酸基、無水カルボン酸基、又はスルホン酸基を含有する基を表し、lは1〜4の整数を、mおよびnは1又は2の整数を表す。但し、Wがオキシカルボニル基またはアミド基の場合にはR6は結合手とはならない。}
上記一般式(15)中、Xはリン酸基、カルボン酸基、無水カルボン酸基、スルホン酸基を含有する基でありその構造は特に限定されることはないが、好ましい基を具体的に例示すると次の通りである。
【0078】
【化22】
【0079】
上記一般式(15)中、R6の構造は特に制限されることはなく、結合手、または公知のエーテル結合および/またはエステル結合を有してもよい2〜6価の炭素数1〜30の有機残基が採用され得るが、該有機残基を具体的に例示すると次の通りである。尚、R6が結合手の場合とは基Wと基Xが直接結合した状態をいい、Wがオキシカルボニル基またはアミド基の場合にはR6は結合手とはならず、上記有機残基となる。
【0080】
【化23】
【0081】
一般式(15)で表される酸性基含有重合性単量体の好ましい具体例を挙げると次の通りである。
【0082】
【化24】
【0083】
【化25】
【0084】
【化26】
【0085】
【化27】
【0086】
(但し、R5は水素原子またはメチル基である。)
その他、ビニル基に直接リン酸基が結合したビニルホスホン酸類や、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸等も酸性基含有重合性単量体の好ましい具体例として挙げられる。
【0087】
上述のラジカル重合性単量体は単独で又は二種以上を混合して用いることができる。特に貴金属或いは貴金属合金への接着と同時に、歯質等の生体の硬組織や卑金属への接着性が要求される歯科用レジンセメントとして本発明の接着性組成物を使用する場合は、ラジカル重合性単量体の一部として酸性基含有重合性単量体を配合するのが好適である。この場合、酸性基含有重合性単量体は全ラジカル重合性単量体に対して10重量%〜50重量%の配合が好ましく、特に15重量%〜40重量%の配合がより好ましい。
【0088】
本発明の接着性組成物にはさらに重合開始剤が配合される。この重合開始剤は、ラジカル機構により上述のラジカル重合性単量体を重合しうる公知のラジカル重合開始剤が制限なく使用される。
【0089】
代表的な重合開始剤としては、有機過酸化物とアミン類、有機過酸化物類及びアミン類とスルフィン酸塩類、酸性化合物とアリールボレート類、バルビツール酸、アルキルボラン等の化学重合型開始剤、アリールボレート類と光酸発生剤類、α−ジケトン類と第三級アミン類、チオキサントン類と第三級アミン類及びα−アミノアセトフェノン類等の光重合型開始剤が挙げられる。
【0090】
上記有機過酸化物類を具体的に例示すると、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過酸化ジt−ブチル、過酸化ジクミル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を配合して使用することができる。
【0091】
アミン類としては、アミノ基がアリール基に結合した第二級又は第三級アミン類が好ましく、具体的に例示すると、N−メチルアニリン、N−メチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルベン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等が挙げられ、これらも単独又は2種以上を配合して使用することができる。
【0092】
スルフィン酸塩類としては、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、m−ニトロベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−フルオロベンゼンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0093】
アリールボレート類としてはテトラフェニルホウ素、テトラ(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラ(p−クロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−フルオロフェニル)ホウ素、トリアルキル(3、5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、ジアルキルジフェニルホウ素、ジアルキルジ(p−クロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−フルオロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(3、5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリ(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−フルオロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(3、5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0094】
バルビツール酸としては5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等を挙げることができる。
【0095】
アルキルボランとしてはトリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物等が好適に使用される。
【0096】
光酸発生剤としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,4−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(o−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル基置換−s−トリアジン誘導体類や、ジフェニルヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(m−ニトロフェニル)ヨードニウム、p−tert−ブチルフェニルフェニルヨードニウム、メトキシフェニルフェニルヨードニウム、p−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウム等のクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホネート等のジフェニルヨードニウム塩化合物類が例示される。
【0097】
また、上記光酸発生剤を増感分解させることができるクマリン系色素類の添加も好ましく、好適に使用されるクマリン系色素類を具体的に例示すると、3−チエノイルクマリン、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)クマリン、3−チエノイル−7−メトキシクマリン、7−メトキシ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−7−メトキシクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(4−メトシキベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−シアノベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)クマリン、3−シンナモイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(p−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−アセチル−7−ジエチルアミノクマリン、3−カルボキシ−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−カルボキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−10−(ベンゾチアゾイル)−11−オキソ−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジメトキシ)−3,3’−ビスクマリン、3−(2’−ベンズイミダゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2’−ベンズオキサゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(5’−フェニルチアジアゾイル−2’)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2’−ベンズチアゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’カルボニルビス(4−シアノ−7−ジエチルアミノ)クマリン等を挙げることができる。
【0098】
α−ジケトン類としては、カンファーキノン、ベンジル、α−ナフチル、アセトナフテン、ナフトキノン、p,p’−ジメトキシベンジル、p,p’−ジクロロベンジルアセチル、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン等が好適に使用できる。
【0099】
チオキサントン類として2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0100】
α−アミノアセトフェノン類として2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1等が挙げられる。
【0101】
これら重合開始剤は単独であるいはその複数を組み合わせて用いることが可能である。重合開始剤の配合量はラジカル重合反応が十分に進行する量存在すれば特に制限されるものではないが、通常ラジカル重合性単量体100重量部に対し、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部配合される。
【0102】
本発明の接着性組成物には、さらにフィラーを配合することが本発明の接着性組成物の硬化体の機械的強度、耐水性を向上させるという観点から好ましい。また、フィラーを配合することにより、接着性組成物の粘度や流動性を調節することができる。このようなフィラーとしては、公知の有機フィラー、無機フィラーを限定なく使用することができる。
【0103】
有機フィラ−を具体的に例示すると、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、メチルメタクリレート−エチルメタクリレート共重合体、エチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−トリメチロールプロパントリメタクリレート共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、塩素化ポリエチレン、ナイロン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0104】
無機フィラーを具体的に例示すると、石英、無定形シリカ、シリカジルコニア、フルオロアルミノシリケート、クレー、酸化アルミニウム、タルク、雲母、カオリン、ガラス、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等が挙げられる。
【0105】
これら無機フィラーは、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することがラジカル重合性単量体とのなじみをよくし、硬化体の機械的強度や耐水性を向上させる上で望ましい。表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
【0106】
また、上記種々の無機フィラーを分散、含有したラジカル重合性単量体混合物を重合硬化させて得られる無機酸化物とポリマーの複合体を粉砕して得られる無機有機複合フィラーも好適に使用される。
【0107】
これらフィラーの形状は特に限定されず、通常の粉砕により得られる様な粉砕形フィラー、あるいは球状フィラーでもよい。フィラーの粒子径は、特に限定されるものではないが、操作性の点で100μm以下のものが好適に使用される。
【0108】
また、フィラーの配合量は、所望される粘度や機械的強度等に応じて適宜決定される。特に、接着性組成物の硬化体の機械的強度が必要な場合には、ラジカル重合性単量体100重量部に対し、該フィラーを100〜1200重量部添加することが好ましく、300〜1000重量部添加することがより好ましい。
【0109】
本発明の接着性組成物には、その性能を低下させない範囲で必要に応じて公知の重合禁止剤、その他公知の紫外線吸収剤、顔料、有機溶媒、及び増粘剤等を添加することも可能である。
【0110】
代表的な重合禁止剤としては、ハイドキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ブチルヒドロキシトルエン等が例示され、代表的な機溶媒としては、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類、またはアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、トルエン、ジクロロメタン、酢酸エチル等が挙げられる。これら有機溶媒は必要に応じ複数を混合して用いることも可能である。
【0111】
本発明の接着性組成物においては、全成分が必ずしも同一包装中に存在する必要はなく、包装形態は保存安定性を損なわない事を条件に適宜決定することができる。例えば、前記重合性ジスルフィド化合物、ラジカル重合性単量体、重合開始剤及びフィラーを主組成成分とする場合、重合性ジスルフィド化合物、ラジカル重合性単量体、重合開始剤及びフィラーからなるペーストと、ラジカル重合性単量体、重合開始剤及びフィラーからなるペーストを別個に包装し、使用時に混合する態様が可能である。或いは、重合性ジスルフィド化合物、ラジカル重合性単量体を主成分とする液と、重合開始剤及びフィラーを主成分とする粉を別個に包装し、使用時に混合する態様も可能である。
【0112】
【発明の効果】
本発明の接着性組成物は、重合性ジスルフィド化合物を含有するため、金属、特に貴金属或いは貴金属合金に対する接着性に優れる。また、フィラーを含有する接着性組成物は、該組成物を重合させた硬化体が機械的強度に優れる。
従って、本発明の組成物は歯科用接着材料として好適であり、特に金属の補綴物と歯質との接着に極めて有効である。例えば、従来実施されていたサンドブラスト後の、スズメッキ処理、加熱酸化処理或いは表面処理剤による処理等の金属表面処理を必ずしも行うことなく、貴金属または貴金属合金に対して高い接着強さを発現することができ、操作の大幅な簡略化を図ることが可能となった。
【0113】
【実施例】
次に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0114】
製造例1
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.85g、45mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(11.1g、54mmol)、5−カルボキシ−2−チオウラシル(5.16g、30mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.36g、3mmol)およびテトラヒドロフラン(300ml)を500ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。得られたろ液からテトラヒドロフランを減圧留去し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに添加した。酢酸エチル、塩化メチレンの混合溶媒を展開溶媒として用いることにより、2−メタクリロイルオキシエチル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(3.41g)を得た。
【0115】
2−メタクリロイルオキシエチル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(2.84g、10mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(3.40g、11mmol)およびエタノール(400ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。反応終了後、反応混合物からエタノールを減圧留去し、残渣にクロロホルムを加えた。不溶物を濾過し、濾液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに添加し、クロロホルムを展開溶媒として用いることにより、目的物であるジスルフィド化合物[A]を得た(1.75g、3.10mmol)を得た。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0116】
【化28】
【0117】
製造例2
窒素雰囲気下、1、6−ヘキサンジオール(47.3g、0.40mol)とモレキュラシーブ3A粉末(40g)およびアセトニトリル(470ml)の入った1リットルの3つ口フラスコに、メタクリル酸クロリド(20.9g、0.2mol)のアセトニトリル溶液(30ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、5時間加熱還流させた。その後室温まで放冷し、反応混合物からモレキュラシーブ3A粉末を濾過し、ろ液からアセトニトリルを減圧留去した。残査に塩化メチレン300mlを加え、その塩化メチレン溶液を水洗した。塩化メチレン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。この残査からシリカゲルカラムクロマトグラフィーで無色透明液体6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート(33.3g)を分離精製した。
【0118】
6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート(8.36g、45mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(11.1g、54mmol)、5−カルボキシ−2−チオウラシル(5.16g、30mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.36g、3mmol)およびテトラヒドロフラン(300ml)を500ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。得られたろ液からテトラヒドロフランを減圧留去し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに添加した。酢酸エチル、ヘキサンの混合溶媒を展開溶媒として用いることにより、6−メタクリロイルオキシヘキシル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(4.08g)を得た。
【0119】
6−メタクリロイルオキシヘキシル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(3.40g、10mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(3.40g、11mmol)およびエタノール(400ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。反応終了後、反応混合物からエタノールを減圧留去し、残渣にクロロホルムを加えた。不溶物を濾過し、濾液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに添加し、クロロホルムを展開溶媒として用いることにより、目的物であるジスルフィド化合物[B]を得た(2.10g、3.10mmol)を得た。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0120】
【化29】
【0121】
製造例3
窒素雰囲気下、1、10−デカンジオール(34.9g、0.20mol)とモレキュラシーブ3A粉末(20g)およびテトラヒドロフラン(350ml)の入った1リットルの3つ口フラスコに、メタクリル酸クロリド(10.5g、0.1mol)のテトラヒドロフラン溶液(30ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、5時間加熱還流させた。その後室温まで放冷し、反応混合物からモレキュラシーブ3A粉末を濾過し、ろ液からテトラヒドロフランを減圧留去した。残査に塩化メチレン300mlを加え、その塩化メチレン溶液を水洗した。塩化メチレン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。この残査からシリカゲルカラムクロマトグラフィーで無色透明液体10−ヒドロキシデシルメタクリレート(14.5g)を分離精製した。
【0122】
10−ヒドロキシデシルメタクリレート(10.9g、45mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(11.1g、54mmol)、5−カルボキシ−2−チオウラシル(5.16g、30mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.36g、3mmol)およびテトラヒドロフラン(300ml)を500ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。その後、製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、10−メタクリロイルオキシデシル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(4.87g)を得た。
【0123】
10−メタクリロイルオキシヘキシル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(3.96g、10mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(3.40g、11mmol)およびエタノール(400ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、ジスルフィド化合物[C]を得た(2.17g、2.74mmol)。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0124】
【化30】
【0125】
製造例4
窒素雰囲気下、1、6−ヘキサンジオール(47.3g、0.40mol)とモレキュラシーブ3A粉末(40g)のアセトニトリル溶液(470ml)の入った1リットルの3つ口フラスコに、アクリル酸クロリド(18.1g、0.2mol)のアセトニトリル溶液(30ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、5時間加熱還流させた。反応後、製造例2と同様の処理を行い、その後無色透明液体6−ヒドロキシヘキシルアクリレート(28.9g)を分離精製した。
【0126】
6−ヒドロキシヘキシルアクリレート(7.76g、45mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(11.1g、54mmol)、5−カルボキシ−2−チオウラシル(5.16g、30mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.36g、3mmol)およびテトラヒドロフラン(300ml)を500ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。その後、製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、6−アクリロイルオキシヘキシル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(4.12g)を得た。
【0127】
6−アクリロイルオキシヘキシル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(3.26g、10mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(3.40g、11mmol)およびエタノール(400ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、ジスルフィド化合物[D]を得た(2.05g、3.14mmol)。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0128】
【化31】
【0129】
製造例5
窒素雰囲気下、60%水素化ナトリウム(1.92g、48mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20ml)の入った300mlの3つ口フラスコに、1、6−ヘキサンジオール(4.72g、40mmol)のテトラヒドロフラン溶液(30ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。引き続き、クロロメチルスチレン(6.1g、40mmol)のテトラヒドロフラン溶液(30ml)をゆっくり滴下した。滴下終了後、4時間加熱還流させた。その後室温まで放冷し、反応混合物に希塩酸を加えて反応を停止した。水層をエーテルで抽出し、合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで1−ヒドロキシ−6−(p−ビニルベンジルオキシ)ヘキサン(7.97)gを分離精製した。
【0130】
1−ヒドロキシ−6−(p−ビニルベンジルオキシ)ヘキサン(10.5g、45mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(11.1g、54mmol)、5−カルボキシ−2−チオウラシル(5.16g、30mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.36g、3mmol)およびテトラヒドロフラン(300ml)を500ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。その後、製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、6−(p−ビニルベンジルオキシ)ヘキシル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(4.20g)を得た。
【0131】
6−(p−ビニルベンジルオキシ)ヘキシル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(3.88g、10mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(3.40g、11mmol)およびエタノール(400ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、ジスルフィド化合物[E]を得た(2.28g、2.95mmol)。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0132】
【化32】
【0133】
製造例6
窒素雰囲気下、2、2−ジメチル−1、3−プロパンジオール(20.8g、0.2mol)とモレキュラシーブ3A粉末(20g)およびアセトニトリル(350ml)の入った1リットルの3つ口フラスコに、メタクリル酸クロリド(10.5g、0.1mol)のアセトニトリル溶液(30ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、4時間加熱還流させた。反応後、実施例2と同様の処理を行い、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルメタクリレート(13.1g)を分離精製した。
【0134】
3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルメタクリレート(7.77g、45mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(11.1g、54mmol)、5−カルボキシ−2−チオウラシル(5.16g、30mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.36g、3mmol)およびテトラヒドロフラン(300ml)を500ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。その後、製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、3−メタクリロイルオキシ−2,2−ジメチルプロピル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(3.71g)を得た。
【0135】
3−メタクリロイルオキシ−2,2−ジメチルプロピル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(3.26g、10mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(3.40g、11mmol)およびエタノール(400ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、ジスルフィド化合物[F]を得た(1.82g、2.80mmol)。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0136】
【化33】
【0137】
製造例7
窒素雰囲気下、1−メチル−1、5−ペンタンジオール(47.3g、0.4mol)とモレキュラシーブ3A粉末(40g)のアセトニトリル溶液(470ml)の入った1リットルの3つ口フラスコに、メタクリル酸クロリド(20.9g、0.2mol)のアセトニトリル溶液(30ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、5時間加熱還流させた。反応後、製造例2と同様の処理を行い、5−ヒドロキシ−5−メチルペンチルメタクリレート(29.4g)を分離精製した。
【0138】
5−ヒドロキシ−5−メチルペンチルメタクリレート(8.39g、45mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(11.1g、54mmol)、5−カルボキシ−2−チオウラシル(5.16g、30mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.36g、3mmol)およびテトラヒドロフラン(300ml)を500ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。その後、製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、5−メタクリロイルオキシ−1−メチルペンチル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(4.28g)を得た。
【0139】
5−メタクリロイルオキシ−1−メチルペンチル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(3.40g、10mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(3.40g、11mmol)およびエタノール(400ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、ジスルフィド化合物[G]を得た(1.63g、2.40mmol)。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0140】
【化34】
【0141】
製造例8
窒素雰囲気下、パラ−キシレングリコール(55.2g、0.40mol)とモレキュラシーブ3A粉末(40g)およびアセトニトリル(470ml)の入った1リットルの3つ口フラスコに、メタクリル酸クロリド(20.9g、0.2mol)のアセトニトリル溶液(30ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、5時間加熱還流させた。その後室温まで放冷し、反応混合物からモレキュラシーブ3A粉末を濾過し、ろ液からアセトニトリルを減圧留去した。残査に塩化メチレン300mlを加え、その塩化メチレン溶液を水洗した。塩化メチレン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。この残査からシリカゲルカラムクロマトグラフィーで白色固体(4−ヒドロキシメチル)ベンジルメタクリレート(34.8g)を分離精製した。
【0142】
4−ヒドロキシメチルベンジルメタクリレート(9.72g、45mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(11.1g、54mmol)、5−カルボキシ−2−チオウラシル(5.16g、30mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.36g、3mmol)およびテトラヒドロフラン(300ml)を500ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。その後、製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、(4−メタクリロイルオキシメチル)ベンジル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(4.00g)を得た。
【0143】
(4−メタクリロイルオキシメチル)ベンジル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(3.60g、10mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(3.40g、11mmol)およびエタノール(400ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、ジスルフィド化合物[H]を得た(2.26g、3.15mmol)。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0144】
【化35】
【0145】
製造例9
窒素雰囲気下、1,3−ビス(ヒドロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン(100g、0.40mol)とモレキュラシーブ3A粉末(40g)およびアセトニトリル(470ml)の入った1リットルの3つ口フラスコに、メタクリル酸クロリド(20.9g、0.2mol)のアセトニトリル溶液(30ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、5時間加熱還流させた。その後室温まで放冷し、反応混合物からモレキュラシーブ3A粉末を濾過し、ろ液からアセトニトリルを減圧留去した。残査に塩化メチレン300mlを加え、その塩化メチレン溶液を水洗した。塩化メチレン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。この残査からシリカゲルカラムクロマトグラフィーで無色透明液体1−(メタクリロイルオキシプロピル)−3−(ヒドロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン(46.2g)を分離精製した。
【0146】
1−(メタクリロイルオキシプロピル)−3−(ヒドロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン(14.3、45mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(11.1g、54mmol)、5−カルボキシ−2−チオウラシル(5.16g、30mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.36g、3mmol)およびテトラヒドロフラン(300ml)を500ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。その後、製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、化合物(4.96g)を得た。
【0147】
(4.72g、10mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(3.40g、11mmol)およびエタノール(400ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、ジスルフィド化合物[I]を得た(2.31g、2.45mmol)。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0148】
【化36】
【0149】
製造例10
窒素雰囲気下、ジエチレングリコール(42.4g、0.4mol)とモレキュラシーブ3A粉末(40g)のアセトニトリル溶液(470ml)の入った1リットルの3つ口フラスコに、メタクリル酸クロリド(20.9g、0.2mol)のアセトニトリル溶液(30ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、5時間加熱還流させた。反応後、製造例2と同様の処理を行い、ジエチレングリコールモノメタクリレート(59.2g)を分離精製した。
【0150】
ジエチレングリコールモノメタクリレート(7.83g、45mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(11.1g、54mmol)、5−カルボキシ−2−チオウラシル(5.16g、30mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.36g、3mmol)およびテトラヒドロフラン(300ml)を500ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。その後、製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、2−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)エチル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(4.11g)を得た。
【0151】
2−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)エチル 2−チオウラシル−5−カルボキシレート(3.28g、10mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(3.40g、11mmol)およびエタノール(400ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、ジスルフィド化合物[J]を得た(1.63g、2.40mmol)。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0152】
【化37】
【0153】
製造例11
窒素雰囲気下、ナトリウムエトキシド(13.6g、0.2mol)のエタノール溶液(200ml)の入った1リットルの3つ口フラスコにマロン酸ジエチル(16.0g、0.1mol)のエタノール溶液(50ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、加熱還流させた。引き続きオルトプロピオン酸トリエチル(17.6g、0.1mol)のエタノール溶液(100ml)を滴下ロートを用いてゆっくり滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。室温まで放冷し、エタノールを減圧留去し、残査に200mlの水を加えてエーテル抽出(3回)した。エーテル層を飽和食塩水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮した。残査を減圧蒸留し、1−エトキシ−1−エチルメチレンマロン酸ジエチル(17.2g)を得た。
【0154】
窒素雰囲気下、ナトリウムエトキシド(3.4g、0.05mol)のエタノール溶液(50ml)の入った500mlの3つ口フラスコに1−エトキシ−1−エチルメチレンマロン酸ジエチル(12.2g、0.05mol)のエタノール溶液(50ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、加熱還流させた。引き続き、チオ尿素(3.8g、0.05mol)のエタノール溶液(50ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、3時間加熱還流させた。室温まで放冷し、反応混合物を水(200ml)の入ったビーカーに添加した。得られた溶液に濃塩酸を加えたところ、淡黄色固体が析出した。析出した固体をろ過することにより、エチル 6−エチル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(7.3g)を得た。
【0155】
カリウム ターシャルブトキシド(43.7g、389mmol)とジメチルスルホキシド(400ml)を2リットルナス型フラスコに入れて溶解し、この溶液にエチル 6−エチル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(5.70g、25.0mmol)をゆっくり滴下し、1時間室温で反応させた。反応終了後、反応混合液にメタノール(500ml)を添加し、析出した沈澱物を濾過した。得られた沈澱物を水に溶解させ、この水溶液に塩酸を加え、淡黄色固体5−カルボキシ−6−エチル−2−チオウラシル(3.10g)を得た。
【0156】
6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート(8.36g、45mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(11.1g、54mmol)、5−カルボキシ−6−エチル−2−チオウラシル(6.00g、30mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.36g、3mmol)およびテトラヒドロフラン(300ml)を500ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。その後、製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、6−メタクリロイルオキシヘキシル 6−エチル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(4.03g)を得た。
【0157】
6−メタクリロイルオキシヘキシル 6−エチル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(3.68g、10mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(3.40g、11mmol)およびエタノール(400ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、ジスルフィド化合物[K]を得た(2.09g、2.85mmol)。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0158】
【化38】
【0159】
製造例12
窒素雰囲気下、ナトリウムエトキシド(13.6g、0.20mol)のエタノール溶液(200ml)の入った1リットルの3つ口フラスコにエトキシメチレンマロン酸ジエチル(43.2g、0.2mol)のエタノール溶液(100ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、加熱還流させた。引き続き、メチルチオ尿素(18.0g、0.2mol)のエタノール溶液(100ml)を滴下ロートを用いてゆっくり滴下した。滴下終了後、3時間加熱還流させた。室温まで放冷し、反応混合物を水(500ml)の入ったビーカーに添加した。得られた溶液に濃塩酸を加えたところ、淡黄色固体が析出した。析出した固体をろ過し、これをカラムクロマトグラフィーで分離精製することにより、エチル 3−メチル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(14.1g)を得た。
【0160】
カリウム ターシャルブトキシド(43.7g、389mmol)とジメチルスルホキシド(400ml)を2リットルナス型フラスコに入れて溶解し、この溶液にエチル 3−メチル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(5.35g、25.0mmol)をゆっくり滴下し、1時間室温で反応させた。反応終了後、反応混合液にメタノール(500ml)を添加し、析出した沈澱物を濾過した。得られた沈澱物を水に溶解させ、この水溶液に塩酸を加え、淡黄色固体5−カルボキシ−3−メチル−2−チオウラシル(2.88g)を得た。
【0161】
6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート(2.79g、15mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(3.70g、18mmol)、5−カルボキシ−3−メチル−2−チオウラシル(1.86g、10mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.12g、1mmol)およびテトラヒドロフラン(100ml)を300ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。その後、製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、6−メタクリロイルオキシヘキシル 3−メチル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(1.38g)を得た。
【0162】
6−メタクリロイルオキシヘキシル 3−メチル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(1.06g、3mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(1.02g、3.3mmol)およびエタノール(150ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、ジスルフィド化合物[L]を得た(0.65g、0.92mmol)。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0163】
【化39】
【0164】
製造例13
製造例12で得られたエチル 3−メチル−2−チオウラシル−5−カルボキシレートの分離精製の際、異性体であるエチル 1−メチル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(15.3)を得た。
【0165】
カリウム ターシャルブトキシド(43.7g、389mmol)とジメチルスルホキシド(400ml)を2リットルナス型フラスコに入れて溶解し、この溶液にエチル 1−メチル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(5.35g、25.0mmol)をゆっくり滴下し、1時間室温で反応させた。反応終了後、反応混合液にメタノール(500ml)を添加し、析出した沈澱物を濾過した。得られた沈澱物を水に溶解させ、この水溶液に塩酸を加え、淡黄色固体5−カルボキシ−1−メチル−2−チオウラシル(2.65g)を得た。
【0166】
6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート(2.79g、15mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(3.70g、18mmol)、5−カルボキシ−1−メチル−2−チオウラシル(1.86g、10mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.12g、1mmol)およびテトラヒドロフラン(100ml)を300ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。その後、製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、6−メタクリロイルオキシヘキシル 1−メチル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(1.32g)を得た。
【0167】
6−メタクリロイルオキシヘキシル 1−メチル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(1.06g、3mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(1.02g、3.3mmol)およびエタノール(150ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、ジスルフィド化合物[M]を得た(0.67g、0.95mmol)。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0168】
【化40】
【0169】
製造例14
窒素雰囲気下、ナトリウムエトキシド(13.6g、0.2mol)のエタノール溶液(200ml)の入った1リットルの3つ口フラスコにマロン酸ジエチル(16.0g、0.1mol)のエタノール溶液(50ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、加熱還流させた。引き続きオルト安息香酸トリエチル(22.4g、0.1mol)のエタノール溶液(100ml)を滴下ロートを用いてゆっくり滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。室温まで放冷し、エタノールを減圧留去し、残査に200mlの水を加えてエーテル抽出(3回)した。エーテル層を飽和食塩水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮した。残査を減圧蒸留し、1’−エトキシ−1’−フェニルメチレンマロン酸ジエチル(18.2g)を得た。
【0170】
窒素雰囲気下、ナトリウムエトキシド(3.4g、0.05mol)のエタノール溶液(50ml)の入った500mlの3つ口フラスコに1’−エトキシ−1’−フェニルメチレンマロン酸ジエチル(14.6g、0.05mol)のエタノール溶液(50ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、加熱還流させた。引き続き、チオ尿素(3.8g、0.05mol)のエタノール溶液(50ml)を滴下ロートを用いて室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、3時間加熱還流させた。室温まで放冷し、反応混合物を水(200ml)の入ったビーカーに添加した。得られた溶液に濃塩酸を加えたところ、淡黄色固体が析出した。析出した固体をろ過することにより、エチル 6−フェニル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(7.6g)を得た。
【0171】
カリウム ターシャルブトキシド(43.7g、389mmol)とジメチルスルホキシド(400ml)を2リットルナス型フラスコに入れて溶解し、この溶液にエチル 6−フェニル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(6.90g、25.0mmol)をゆっくり滴下し、1時間室温で反応させた。反応終了後、反応混合液にメタノール(500ml)を添加し、析出した沈澱物を濾過した。得られた沈澱物を水に溶解させ、この水溶液に塩酸を加え、淡黄色固体5−カルボキシ−6−フェニル−2−チオウラシル(3.21g)を得た。
【0172】
6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート(2.79g、15mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(3.70g、18mmol)、5−カルボキシ−6−エチル−2−チオウラシル(2.00g、10mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.12g、1mmol)およびテトラヒドロフラン(300ml)を500ml三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で3日間攪拌を続けた。反応するに従い白色沈澱物が生成するが、反応終了後、該白色沈澱物を濾過した。その後、製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、6−メタクリロイルオキシヘキシル 6−フェニル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(1.58g)を得た。
【0173】
6−メタクリロイルオキシヘキシル 6−フェニル−2−チオウラシル−5−カルボキシレート(1.24g、3mmol)、ビス(p−メトキシフェニル)セレノオキサイド(1.02g、3.3mmol)およびエタノール(150ml)を1lの三つ口フラスコに入れて溶解し、室温で2時間攪拌した。製造例1と同様の分離精製処理を行うことによって、ジスルフィド化合物[N]を得た(0.70g、0.84mmol)。NMR(d6DMSO)、MASSおよび元素分析の結果を以下に示す。
【0174】
【化41】
【0175】
次に、実施例、比較例で採用した化合物の略称または構造、並びに接着強さの試験方法について示す。
【0176】
(1)略称または構造
MAC−10:11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸
PM2:ビス(2−メタクリロイルオキシエチル) ハイドロジェンホスフェート
4−META:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリテート無水物
AMPS:2−アクリルアミド−2−メチルスルホン酸
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
D−2.6E:2,2−ビス(4−(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)プロパン
NPG:ネオペンチルグリコールジメタクリレート
BPO:過酸化ベンゾイル
DMPT:N,N−ジメチル−p−トルイジン
DEPT:N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン
PBNa:テトラフェニルホウ素ナトリウム
PTSNa:p−トルエンスルフィン酸ナトリウム
CQ:カンファーキノン
DMBE:4−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル
DMEM:N,N−ジメチルアミノエチル メタクリレート
DMA:p−ジメチルアミノアセトフェノン
F1:平均粒径9μmの石英粉末(非球状形の粉砕品)をγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面処理した フィラー
F2:平均粒径0.2μmの球状のシリカ−ジルコニアをγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面処理した フィラー
F3:200重量部のF2をbis−GMA60重量部と3G40重量部の混合溶液に充填してペースト状としたものを触媒にアゾビスイソブチロニトリルを用いて加熱重合し、得られた硬化物を粉砕して得た平均粒径20μmの無機有機複合フィラー
F4:ポリメチルメタクリレートを粉砕して得た平均粒径50μmの有機フィラー
【0177】
【化42】
【0178】
【化43】
【0179】
【化44】
【0180】
(2)純金、歯科用貴金属合金に対する接着強さ
被着体である歯科用金−銀−パラジウム合金「金パラ12」(トーワ技研社製10×10×3mm)、純金板(10×10×3mm)をそれぞれ#1500の耐水研磨紙で磨いた後にサンドブラスト処理し、その処理面に接着面積を固定するために4mmφの穴を開けた接着テープを貼り付けた。この面に実施例または比較例の接着性組成物を直接充填した。次いで、あらかじめサンドブラスト処理を行った8mmφ×18mmの純銀製丸棒(実施例1〜2)あるいはSUS304製丸棒(実施例3〜28、比較例1〜3)を接着面に押しつけて接着を行った。余剰の接着性組成物を除去し、1時間後に接着試験片を37℃水中に浸漬した。24時間後、島津製作所製オートグラフ(クロスヘッドスピード10mm/分)を用いて引張接着強さを測定した。各々6個の試験片の測定値を平均し、測定結果とした。
【0181】
実施例1
0.02gのジスルフィド化合物A、10gの2,2−ビス(4−(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)プロパン(D−2.6E)、0.2gの過酸化ベンゾイル、0.2gのカンファーキノンから成る組成物Aと10gの2,2−ビス(4−(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)プロパン(D−2.6E)、0.2gのN,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)、0.2gのN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMEM)から成る組成物Bをあらかじめ別個に調製し、使用直前にこれらA、Bの各組成物を1:1の重量比で練和して接着性組成物として、純金、歯科用貴金属合金「金パラ12」に対する接着強度を測定した。その結果、純金に対し20.2MPa、金パラ12に対し20.8MPaの高い接着強さを得た。
【0182】
実施例2〜28
実施例1と同様に表1及び表2に示す組成の組成物A、組成物Bをそれぞれ調製した。使用直前に、組成物A、組成物Bを1:1の重量比で練和し表3及び表4に示す組成の接着性組成物を調製し、純金、歯科用貴金属合金「金パラ12」に対する接着強度を測定した。その結果を表3及び表4に併記した。
【0183】
重合性ジスルフィド化合物を配合した本発明の接着性組成物はいずれの組成においても純金及び歯科用貴金属合金「金パラ12」に対して高い接着強さが得られた。
【0184】
【表1】
【0185】
【表2】
【0186】
【表3】
【0187】
【表4】
【0188】
比較例1〜3
実施例1と同様に表5に示す組成の組成物A、組成物Bをそれぞれ調製した。使用直前に、組成物A、組成物Bを1:1の重量比で練和し表6に示す組成の接着性組成物を調製し、純金、歯科用貴金属合金「金パラ12」に対する接着強さを測定した。その結果、表6に示したように、重合性ジスルフィド化合物を添加しなかった例(比較例1)ではいずれの金属に対しても接着強さは低下した。また、ラジカル重合性単量体を添加しなかった場合(比較例2)では両組成物が粉末であり接着試験が不可能であるため、重合開始剤を添加しなかった場合(比較例3)では得られた接着性組成物が硬化しないため、いずれの金属に対する接着強さも、0MPaであった。
【0189】
【表5】
【0190】
【表6】
Claims (3)
- 下記一般式(1)または(2)で示されるラジカル重合性不飽和結合を有するジスルフィド化合物。
R4は水素原子またはメチル基であり、Zは、−COO−基、−CH2O−基または−C6H4−CH2O−基(いずれの基も左端の炭素原子が不飽和炭素に結合し、右端の酸素原子が基R3に結合する)である} - 請求項1に記載のジスルフィド化合物、ラジカル重合性単量体及び重合開始剤を含有してなる接着性組成物。
- フィラーをさらに含有する請求項2記載の接着性組成物。
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