JP3798225B2 - ダンパーバルブ及びそれを用いた油圧式パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両に搭載され、油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間の油圧回路に設けられるダンパーバルブ及びそれを用いた油圧式パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用の舵取装置として、油圧によって操舵力を補助する油圧式パワーステアリング装置が多用されている。この油圧式パワーステアリング装置は、油圧ポンプから吐出される作動油を、油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータに供給することにより、操舵補助力を出力するものであり、前記油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間には、操舵方向及び操舵抵抗に応じて油圧アクチュエータへの作動油の供給を制御する油圧コントロールバルブを介在している。詳細には、油圧コントロールバルブが、ドライバーによるステアリングホイールの操舵に応じて、例えば油圧シリンダ内に設けられた左右いずれか一方の油室に作動油を供給して操舵補助力を発生し、ステアリングホイールの回転操作をアシストする。
【0003】
この種の油圧式パワーステアリング装置においては、操舵系の部品精度等に起因して走行中に駆動輪が過剰に振動し、この振動が例えば油圧シリンダのシリンダロッドを介してステアリングホイールに伝達されるいわゆるシミー現象が生じることがある。このようなシミー現象を抑制するために、例えば油圧コントロールバルブ内に逆止弁を設けて油圧シリンダを封止した状態とすることにより、当該油圧シリンダを前記の振動に対するダンパーとして機能させることが知られている。
しかしながら、上記のように油圧シリンダをダンパーとして機能させた場合、特に危険回避等のために急転舵を行った際、そのステアリングホイールの転舵と反対側の油室から油圧コントロールバルブに戻ろうとする作動油の流れが逆止弁によって妨げられ操舵補助力が低下して、ステアリングホイールが異常に重くなるなどの不具合を発生するという問題点があった。
【0004】
上記のような問題点を解決しようとした従来の油圧式パワーステアリング装置には、例えば実公平2−49109号公報に開示されたものがある。この従来の油圧式パワーステアリング装置は、図6に示すダンパーバルブ50を油圧コントロールバルブと油圧シリンダの左右の油室を個別に接続する油圧回路に介在している。
ダンパーバルブ50は、同図において、ケーシング51、そのケーシング51に螺着されたキャップ52、及び上記ケーシング51とキャップ52との間に介装された管継手53を備えている。ケーシング51は、油圧シリンダとしてのステアリングダンパ本体56のハウジング57に固着されたものであり、その内部には油室51aがキャップ52との間に形成されている。この油室51aは、キャップ52内に設けられたポート52aを介して管継手53内の通孔53aと連通している。また、ケーシング51の下端にはポート51bが穿設されて、ポート57bを介してハウジング57内の油室57aに連通している。また、管継手53には、上記油圧コントロールバルブに接続されるパイプ58が連結されている。
【0005】
上記ケーシング51の油室51aには、油圧コントロールバルブから油圧シリンダ側への作動油の流れを許容するチェック弁54と、油圧シリンダから油圧コントロールバルブ側への作動油の流れを、所定の抵抗を有して許容する絞りチェック弁55とが収容されている。
チェック弁54は、スチールボール54aと、そのスチールボール54aを上方、すなわちキャップ52に向けて付勢するスプリング54bとで構成されている。絞りチェック弁55は、上記スチールボール54aと対向してこれを当接させる弁体55aと、この弁体55aを下方、すなわちハウジング57に向けて付勢するスプリング55bとで構成されている。弁体55aは、その中央ポート55cがスプリング54bで付勢されたスチールボール54aによって閉塞されるとともに、その下端面が上記スプリング55bによってケーシング51の内底部上面に密着させられている。つまり、上記弁体55aを付勢するスプリング55bの付勢力はスチールボール54aを付勢するスプリング54bのものより大きいものが選定され、さらにスプリング55bは上記所定の抵抗を生じるように弁体55aを予め設定された初期荷重で付勢するものが選択されている。
【0006】
上記のように構成された従来の油圧式パワーステアリング装置では、駆動輪の振動によってハウジング57内のシリンダロッド(図示せず)が左右に急激に移動しようとすると、その移動量に応じた微量な作動油が前記チェック弁54及び絞りチェック弁55を通過するのが阻止されることによって、シミー現象を生じるのが防止される。
また、ドライバーが急転舵を行った場合では、絞りチェック弁55が油圧コントロールバルブに戻ろうとする作動油の圧力によって上記初期荷重に抗して開くことにより、その逆向きの作動油の流れを許容するので、ステアリングホイールが異常に重くなるなどの不具合の発生が防止される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の油圧式パワーステアリング装置では、ダンパーバルブ50の弁体55aが作動油の圧力でスプリング54bに抗してキャップ52側に押し上げられるとき、当該弁体55aはスプリング54bにのみ支持されているだけである。このため、弁体55aは、上方に対して上記作動油の圧力とスプリング54bの付勢力とのバランスだけでキャップ52側への移動位置が決まるように動作するので、当該弁体55aは非常に不安定な状態となり、最悪の場合、弁体55aが上記油室51a内で倒れて復帰不能な状態となるおそれがあった。
【0008】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、弁体の倒れ等の発生を防ぐことができ、安定した性能を確保することができるダンパーバルブ及びそれを用いた油圧式パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、油圧ポンプと前記油圧ポンプから供給される作動油によって動作する油圧アクチュエータとの間の油圧回路に設けられるダンパーバルブであって、
前記油圧ポンプ側に接続される一端部、前記油圧アクチュエータ側に接続される他端部、及び前記一端部から他端部に向かって所定寸法で内周面を切り欠くことにより形成された切り欠き部を有する筒状のケーシングと、
前記ケーシング内でその内周面にガイドされた状態で油路に沿って移動可能に配置され、内部に弁座を有する筒状の弁体と、
前記ケーシングの内部に配置され、前記ケーシングの他端部側に前記弁体を付勢し前記ケーシングの他端部に前記弁体の端部を密接させるスプリングと、
前記弁体の内部に油路に沿って移動可能に配置され、その弁体の弁座に密接するボールと、
前記ボールが前記油圧ポンプからの作動油の圧力によって前記弁体の弁座から離れた状態で、前記油圧ポンプからの作動油を前記ケーシングの一端部から前記弁体の内部を経て前記ケーシングの他端部に導く主通路と、
前記弁体が前記油圧アクチュエータからの作動油の圧力によって前記スプリングに抗して前記ケーシングの一端部側に移動し、かつ前記切り欠き部との間に隙間を生じた状態で、前記油圧アクチュエータからの作動油を前記ケーシングの他端部から前記切り欠き部を経て前記ケーシングの一端部に導く副通路とを備えることを特徴としている(請求項1)。
【0010】
また、この発明の油圧式パワーステアリング装置は、油圧ポンプと、この油圧ポンプから供給される作動油によって操舵補助力を出力する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータと油圧ポンプとの間に介在し、操舵に応じて前記油圧アクチュエータに対する作動油の給排をコントロールする油圧コントロールバルブとを備える油圧式パワーステアリング装置であって、
前記油圧コントロールバルブの出力ポートと油圧アクチュエータとの間の油圧回路の所定部に、請求項1記載のダンパーバルブを設けていることを特徴としている(請求項2)。
【0011】
上記のように構成されたダンパーバルブ及び油圧式パワーステアリング装置によれば、作動油が油圧ポンプから油圧アクチュエータに向かって流れる場合には、その作動油の圧力によってボールが弁体の弁座から離れて、上記主通路を通してその作動油の流通が許容される。
また、作動油が油圧アクチュエータから油圧ポンプに向かって流れる場合には、その作動油の圧力によって弁体がケーシングの内周面にガイドされた状態で油路に沿ってケーシングの一端部側に移動し、かつ切り欠き部との間に隙間を生じて、上記副通路を通してその作動油の流通が許容される。このように、作動油が油圧ポンプ側へ逆流する場合、弁体がケーシングの内周面にガイドされた状態で移動するので、当該弁体の倒れ等の発生を防ぐことができ、安定した性能を確保することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のダンパーバルブ及びそれを用いた油圧式パワーステアリング装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態における油圧式パワーステアリング装置Aの構成を示す概略図である。図2は、図1に示した油圧式パワーステアリング装置Aの油圧回路を示す説明図である。図1において、本実施形態の油圧式パワーステアリング装置Aは、図示しないステアリングホイールに連結される入力軸Sと、この入力軸Sの回転に伴って回転するピニオン1と、このピニオン1に噛み合うラック軸2と、このラック軸2を覆うハウジング5と、このハウジング5の内部に設けられた油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ6と、この油圧シリンダ6に作動油を供給する油圧ポンプ7と、前記ステアリングホイールに連動して油圧シリンダ6に対する作動油の給排を制御する油圧コントロールバルブ8とによって主要部が構成されている。
【0013】
前記ラック軸2の両端部は、ハウジング5の両端開口部5a,5bから突出しており、その突出端には、ボールジョイント10,11が一体化されている。各ボールジョイント10,11には、タイロッド12,13が取り付けられており、このタイロッド12,13を介して前記ラック軸2の両端部が操舵輪に連結されている。したがって、前記ステアリングホイールの回転操作により、入力軸Sを介してピニオン1を回転させ、ラック軸2を軸方向(車幅方向)へ移動させて、車両の操舵を行うことができる。
【0014】
前記油圧シリンダ6は、ハウジング5によって構成されたシリンダチューブ6aと、ラック軸2で構成されたピストンロッド6bと、ラック軸2に一体化されたピストン6cとからなり、このピストン6cを挟んだ両側空間が、第1油室6d及び第2油室6eとして構成されている。
【0015】
油圧コントロールバルブ8は、ロータリーバルブによって構成されており、そのバルブハウジング8aには、入力ポート8b、リターンポート8c、第1出力ポート8d及び第2出力ポート8eがそれぞれ突出形成されている。前記入力ポート8bは、第1油圧配管P1を介して前記油圧ポンプ7の出力ポート7aに接続されており、リターンポート8cは、第2油圧配管P2を介してリザーブタンクTに接続されている。また、第1出力ポート8dは、管体としての第3油圧配管P3を介して油圧シリンダ6の第1油室6dに接続されており、第2出力ポート8eは、管体としての第4油圧配管P4を介して油圧シリンダ6の第2油室6eに接続されている。この油圧コントロールバルブ8は、操舵方向と操舵抵抗に応じて、各油室6d,6eの何れか一方に操舵力補助用の作動油を供給すると同時に、他方の油室から作動油をリザーブタンクTに還流させる。
【0016】
前記第3油圧配管P3及び第4油圧配管P4は、それぞれ金属管4によって構成されており、これらの各配管の途中部分にはこの発明のダンパーバルブ20が管継手14a、14bを介して取り付けられている。ダンパーバルブ20は、図2に示すように、油圧コントロールバルブ8から油圧シリンダ6側への作動油の流れを許容するチェック弁20aとしての機能と、それとは逆向きの作動油の流れを、所定の抵抗を有して許容する絞りチェック弁20bとしての機能とを含んだものである。
尚、上記の説明では、ダンパーバルブ20を管継手14a、14bを介して第3油圧配管P3及び第4油圧配管P4の途中部分に取り付ける構成を説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、油圧コントロールバルブ8の出力ポート8d、8eと油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)6との間の油圧回路の所定部に設ける構成であればよい。具体的には、油圧シリンダ6の第1油室6dに連通する第1入力ポート6f及び第2油室6eに連通する第2入力ポート6gの内部、または油圧コントロールバルブ8の第1出力ポート8d及び第2出力ポート8eの内部にダンパーバルブ20を設ける構成でもよい。
【0017】
ここで、上記ダンパーバルブ20について、図3(a)を参照して具体的に説明する。
図3(a)は、図1に示したダンパーバルブ20の具体的な構成を示す拡大断面図である。
図3(a)において、ダンパーバルブ20は、当該ダンパーバルブ20の外容器としての筒状のケーシング21と、このケーシング21の内部に配置された筒状の弁体22及びこの弁体22を付勢するスプリング23とを備えている。さらに、ダンパーバルブ20には、上記弁体22内に収納されたボール24及び当該ボール24を付勢する予圧バネ25が設けられている。尚、同図に示すダンパーバルブ20では、スプリング23で付勢された弁体22の端部の外周面がケーシング21の内周面に密接してケーシング21の内部を閉塞した状態であり、さらに予圧バネ25で付勢されたボール24が弁体22に密接して弁体22の内部を閉塞した状態であり、作動油の流れを許容していない状態である。また、ダンパーバルブ20では、ボール24及び弁体22がそれぞれ作動油の圧力によって弁体22の内部及びケーシング21の内部を移動することにより、後述の主通路26及び副通路27が当該ダンパーバルブ20内でそれぞれ開放されて、作動油の流通を許容する。
【0018】
上記ケーシング21は、管継手14a及び金属管4を介して油圧ポンプ7側に接続される一端部21a、管継手14b及び金属管4を介して油圧シリンダ6側に接続される他端部21b、及び一端部21aから他端部21bに向かって所定寸法で内周面21dを切り欠くことにより形成された切り欠き部21cを有している。また、このケーシング21の内部には、作動油を一端部21aから弁体22の内部を経て他端部21bに導く主通路26と、作動油を他端部21bから上記切り欠き部21cを経て一端部21aに導く副通路27とが形成されている。
【0019】
上記一端部21aは、ねじ止めされたリング状のキャップ21eで構成され、そのキャップ21eの中心部分は作動油を通す通孔21e1として構成されている。他端部21bは、リング状に形成され、その中心部分は作動油を通す通孔21b1として構成されている。上記通孔21e1及び21b1には、それぞれ管継手14a及び14bが例えばねじ止めされている。尚、この説明以外に、管継手14a及び14bを一端部21a及び他端部21bにそれぞれ溶接により固定してもよい。
【0020】
また、他端部21bには、図3の(c)に示すように、例えば周方向に沿って等間隔に配置された4つの突出片21b2が設けられている。これらの突出片21b2は、弁体22の端面(図において下端面)と接して、スプリング23によって他端部21b側に付勢された弁体22を受け止めている。また、切り欠き部21cは、当該ケーシング21の軸方向と直角な方向での断面形状が例えば扇形形状に形成されたものであり、油圧シリンダ6から油圧コントロールバルブ8に向かって流れる作動油の流通を許容する副通路27の一部分を構成する。さらに、切り欠き部21cの他端部21b側の端部は、図3(a)に示すようにテーパ状に形成されている。尚、上記切り欠き部21cでは、その扇形形状の中心角を180度未満とすることにより、弁体22が当該切り欠き部21cに倒れ込んでくることを防止している。
【0021】
弁体22は、ケーシング21内でその内周面21dに沿って移動可能に配置されたものであり、円筒状の一端部分22a及びリング状の他端部分22bのそれぞれの中心部分は、作動油を通す通孔22a1及び22b1として構成されている。一端部分22aでは、その通孔22a1の内側開口の周囲部分は弁座21cとして構成されている。この弁座21cは、上記通孔22a1がボール24によって塞がれるように、その一部がボール24の球面形状に一致した形状に形成されている。また、一端部分22aと他端部分22bとの間においては、ボール24の直径よりも大きい内径寸法をもつ部分が形成されており、これにより図3(b)に示すように、ボール24と弁体22の内周面との間に作動油の流通を許容する隙間が形成されている。また、他端部分22bの内側表面とボール24との間には、予圧バネ25が弾性収縮させた状態で介在してある。このように、予圧バネ25を弁体22の内部に張り詰めることにより、予圧バネ25と弁体22を付勢するスプリング23とが互いに付勢力を打ち消し合うのを阻止することができるので、これらのスプリング23及び予圧バネ25の各バネ圧の設定を容易に行える。
【0022】
上記ボール24は、弁体22の弁座22cに密接するものであり、弁体22の内部に油路に沿って移動可能に配置されている。このボール24は、図4に示すように、油圧コントロールバルブ8から油圧シリンダ6側に流れようとする作動油の圧力により、予圧バネ25に抗して他端部分22b側に押圧移動される。これにより、当該ダンパーバルブ20内では、主通路26が開放されて、その作動油は同図の矢印Fに示すように、ケーシング21の一端部21a、弁体22の内部、及びケーシング21の他端部21bを順次通過する。その結果、油圧ポンプ7からの作動油がステアリングホイールの操舵方向側の油室に供給されて、そのステアリングホイールの回転操作をアシストすることができる。
【0023】
スプリング23は、ケーシング21の他端部21b側に弁体22を付勢しケーシング21の他端部21bに弁体22の他端部分22bを密接させるものであり、油圧シリンダ6から油圧ポンプ7側へ逆流しようとする作動油の圧力に応じて伸縮するように、ケーシング21の一端部21aの内側表面と、弁体22の途中に設けられた段部との間に弾性収縮させた状態で介在してある。つまり、このスプリング23は、上述の作動油の圧力が所定値未満である場合、ケーシング21と弁体22との密接状態を維持して油圧ポンプ7側への作動油の流通を阻止する。これにより、油圧シリンダ6を封止した状態として、前述のシミー現象やキックバック現象などの車両の部品精度等や走行環境に起因する外乱の影響を抑制することができる。
【0024】
一方、上記作動油の圧力が所定値以上である場合、例えば危険回避等のためにステアリングホイールが急転舵されて、作動油がステアリングホイールの転舵と反対側の油室から油圧コントロールバルブ8に戻ろうとする場合、スプリング23はその作動油の圧力によってケーシング21の一端部21a側に押圧されて、その作動油の流れを許容する。具体的には、作動油の圧力がスプリング23の付勢力に打ち勝って、図5に示すように、弁体22をケーシング21の内周面21dに沿って一端部21a側に移動させて切り欠き部21cとの間に隙間を生じさせる。これにより、当該ダンパーバルブ20内では、副通路27が開放されて、その作動油は同図の矢印IFに示すように、ケーシング21の他端部21b、切り欠き部21c、及び一端部21aを順次通過する。その結果、油圧コントロールバルブ8に戻ろうとする作動油の流れを許容して、操舵補助力の低下を防いでステアリングホイールが異常に重くなるなどの不具合の発生を防止することができる。
【0025】
上記のように構成されたダンパーバルブ20及び油圧式パワーステアリング装置Aによれば、一方向への操舵に伴って作動油が例えば油圧コントロールバルブ8の第2出力ポート8eから第4油圧配管P4を通して油圧シリンダ6の第2油室6eに向かって流れようとすると、その第4油圧配管P4に介在したダンパーバルブ20において、弁体22の内部に配置されたボール24が、図4に示したように、作動油によって押圧され予圧バネ25に抗して弁体22の他端部分22b側に移動する。これにより、作動油はダンパーバルブ20内の主通路26を通って第2油室6eに流れて、ラック軸2が図1において左方向に移動し操舵補助力が出力される。
【0026】
このとき、第3油圧配管P3に介在したダンパーバルブ20においては、作動油は油圧シリンダ6の第1油室6dから油圧コントロールバルブ8に向かって流れようとする。この作動油の圧力がスプリング23の付勢力よりも小さい場合、弁体22はスプリング23によってケーシング21に密接された状態が維持されて、当該ダンパーバルブ20はその作動油の流通を阻止する。
一方、作動油の圧力が上記の付勢力よりも大きい場合、弁体22が、図5に示したように、スプリング23に抗してケーシング21の一端部21a側に押圧移動されて切り欠き部21cとの間に隙間を生じる。これにより、作動油は抵抗を生じることなくダンパーバルブ20内の副通路27を通って油圧コントロールバルブ8に戻りステアリングホイールの操舵に違和感が生じることを防止する。また、弁体22をケーシング21の内周面21dにガイドされて油路に沿って移動可能に配置しているので、弁体22が油圧シリンダ6からの作動油の圧力によって一端部21a側に移動される場合でも、当該弁体22の倒れ等の発生を防ぐことができ、安定した性能を確保することができる。
【0027】
【発明の効果】
以上のようにこの発明によれば、油圧アクチュエータ側から油圧ポンプ側への逆向きに流れる作動油の圧力が所定値以上である場合、弁体はその圧力によってケーシングの内周面にガイドされた状態で油路に沿って移動する。このように、弁体の移動がケーシングの内周面でガイドされながら行われるので、当該弁体の倒れ等の発生を防ぐことができ、安定した性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における油圧式パワーステアリング装置Aの構成を示す概略図である。
【図2】図1に示した油圧式パワーステアリング装置Aでの油圧回路を示す説明図である。
【図3】(a)は図1に示したダンパーバルブ20の具体的な構成を示す拡大断面図であり、(b)は(a)のIIIb−IIIb線における断面図であり、(c)は(a)のIIIc−IIIc線における断面図である。
【図4】作動油が主通路26を流れる場合でのダンパーバルブ20の動作を示す説明図である。
【図5】作動油が副通路27を流れる場合でのダンパーバルブ20の動作を示す説明図である。
【図6】従来の油圧式パワーステアリング装置のダンパーバルブを示す断面図である。
【符号の説明】
1 ピニオン
2 ラック軸
4 金属管(管体)
5 ハウジング
6 油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)
6f 第1入力ポート
6g 第2入力ポート
7 油圧ポンプ
8 油圧コントロールバルブ
8d 第1出力ポート
8e 第2出力ポート
20 ダンパーバルブ
21 ケーシング
21a 一端部
21b 他端部
21c 切り欠き部
21d 内周面
22 弁体
22a 一端部分
22b 他端部分
23 スプリング
24 ボール
25 予圧バネ
26 主通路
27 副通路
A 油圧式パワーステアリング装置
S 入力軸
P3 第3油圧配管
P4 第4油圧配管
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両に搭載され、油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間の油圧回路に設けられるダンパーバルブ及びそれを用いた油圧式パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用の舵取装置として、油圧によって操舵力を補助する油圧式パワーステアリング装置が多用されている。この油圧式パワーステアリング装置は、油圧ポンプから吐出される作動油を、油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータに供給することにより、操舵補助力を出力するものであり、前記油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間には、操舵方向及び操舵抵抗に応じて油圧アクチュエータへの作動油の供給を制御する油圧コントロールバルブを介在している。詳細には、油圧コントロールバルブが、ドライバーによるステアリングホイールの操舵に応じて、例えば油圧シリンダ内に設けられた左右いずれか一方の油室に作動油を供給して操舵補助力を発生し、ステアリングホイールの回転操作をアシストする。
【0003】
この種の油圧式パワーステアリング装置においては、操舵系の部品精度等に起因して走行中に駆動輪が過剰に振動し、この振動が例えば油圧シリンダのシリンダロッドを介してステアリングホイールに伝達されるいわゆるシミー現象が生じることがある。このようなシミー現象を抑制するために、例えば油圧コントロールバルブ内に逆止弁を設けて油圧シリンダを封止した状態とすることにより、当該油圧シリンダを前記の振動に対するダンパーとして機能させることが知られている。
しかしながら、上記のように油圧シリンダをダンパーとして機能させた場合、特に危険回避等のために急転舵を行った際、そのステアリングホイールの転舵と反対側の油室から油圧コントロールバルブに戻ろうとする作動油の流れが逆止弁によって妨げられ操舵補助力が低下して、ステアリングホイールが異常に重くなるなどの不具合を発生するという問題点があった。
【0004】
上記のような問題点を解決しようとした従来の油圧式パワーステアリング装置には、例えば実公平2−49109号公報に開示されたものがある。この従来の油圧式パワーステアリング装置は、図6に示すダンパーバルブ50を油圧コントロールバルブと油圧シリンダの左右の油室を個別に接続する油圧回路に介在している。
ダンパーバルブ50は、同図において、ケーシング51、そのケーシング51に螺着されたキャップ52、及び上記ケーシング51とキャップ52との間に介装された管継手53を備えている。ケーシング51は、油圧シリンダとしてのステアリングダンパ本体56のハウジング57に固着されたものであり、その内部には油室51aがキャップ52との間に形成されている。この油室51aは、キャップ52内に設けられたポート52aを介して管継手53内の通孔53aと連通している。また、ケーシング51の下端にはポート51bが穿設されて、ポート57bを介してハウジング57内の油室57aに連通している。また、管継手53には、上記油圧コントロールバルブに接続されるパイプ58が連結されている。
【0005】
上記ケーシング51の油室51aには、油圧コントロールバルブから油圧シリンダ側への作動油の流れを許容するチェック弁54と、油圧シリンダから油圧コントロールバルブ側への作動油の流れを、所定の抵抗を有して許容する絞りチェック弁55とが収容されている。
チェック弁54は、スチールボール54aと、そのスチールボール54aを上方、すなわちキャップ52に向けて付勢するスプリング54bとで構成されている。絞りチェック弁55は、上記スチールボール54aと対向してこれを当接させる弁体55aと、この弁体55aを下方、すなわちハウジング57に向けて付勢するスプリング55bとで構成されている。弁体55aは、その中央ポート55cがスプリング54bで付勢されたスチールボール54aによって閉塞されるとともに、その下端面が上記スプリング55bによってケーシング51の内底部上面に密着させられている。つまり、上記弁体55aを付勢するスプリング55bの付勢力はスチールボール54aを付勢するスプリング54bのものより大きいものが選定され、さらにスプリング55bは上記所定の抵抗を生じるように弁体55aを予め設定された初期荷重で付勢するものが選択されている。
【0006】
上記のように構成された従来の油圧式パワーステアリング装置では、駆動輪の振動によってハウジング57内のシリンダロッド(図示せず)が左右に急激に移動しようとすると、その移動量に応じた微量な作動油が前記チェック弁54及び絞りチェック弁55を通過するのが阻止されることによって、シミー現象を生じるのが防止される。
また、ドライバーが急転舵を行った場合では、絞りチェック弁55が油圧コントロールバルブに戻ろうとする作動油の圧力によって上記初期荷重に抗して開くことにより、その逆向きの作動油の流れを許容するので、ステアリングホイールが異常に重くなるなどの不具合の発生が防止される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の油圧式パワーステアリング装置では、ダンパーバルブ50の弁体55aが作動油の圧力でスプリング54bに抗してキャップ52側に押し上げられるとき、当該弁体55aはスプリング54bにのみ支持されているだけである。このため、弁体55aは、上方に対して上記作動油の圧力とスプリング54bの付勢力とのバランスだけでキャップ52側への移動位置が決まるように動作するので、当該弁体55aは非常に不安定な状態となり、最悪の場合、弁体55aが上記油室51a内で倒れて復帰不能な状態となるおそれがあった。
【0008】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、弁体の倒れ等の発生を防ぐことができ、安定した性能を確保することができるダンパーバルブ及びそれを用いた油圧式パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、油圧ポンプと前記油圧ポンプから供給される作動油によって動作する油圧アクチュエータとの間の油圧回路に設けられるダンパーバルブであって、
前記油圧ポンプ側に接続される一端部、前記油圧アクチュエータ側に接続される他端部、及び前記一端部から他端部に向かって所定寸法で内周面を切り欠くことにより形成された切り欠き部を有する筒状のケーシングと、
前記ケーシング内でその内周面にガイドされた状態で油路に沿って移動可能に配置され、内部に弁座を有する筒状の弁体と、
前記ケーシングの内部に配置され、前記ケーシングの他端部側に前記弁体を付勢し前記ケーシングの他端部に前記弁体の端部を密接させるスプリングと、
前記弁体の内部に油路に沿って移動可能に配置され、その弁体の弁座に密接するボールと、
前記ボールが前記油圧ポンプからの作動油の圧力によって前記弁体の弁座から離れた状態で、前記油圧ポンプからの作動油を前記ケーシングの一端部から前記弁体の内部を経て前記ケーシングの他端部に導く主通路と、
前記弁体が前記油圧アクチュエータからの作動油の圧力によって前記スプリングに抗して前記ケーシングの一端部側に移動し、かつ前記切り欠き部との間に隙間を生じた状態で、前記油圧アクチュエータからの作動油を前記ケーシングの他端部から前記切り欠き部を経て前記ケーシングの一端部に導く副通路とを備えることを特徴としている(請求項1)。
【0010】
また、この発明の油圧式パワーステアリング装置は、油圧ポンプと、この油圧ポンプから供給される作動油によって操舵補助力を出力する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータと油圧ポンプとの間に介在し、操舵に応じて前記油圧アクチュエータに対する作動油の給排をコントロールする油圧コントロールバルブとを備える油圧式パワーステアリング装置であって、
前記油圧コントロールバルブの出力ポートと油圧アクチュエータとの間の油圧回路の所定部に、請求項1記載のダンパーバルブを設けていることを特徴としている(請求項2)。
【0011】
上記のように構成されたダンパーバルブ及び油圧式パワーステアリング装置によれば、作動油が油圧ポンプから油圧アクチュエータに向かって流れる場合には、その作動油の圧力によってボールが弁体の弁座から離れて、上記主通路を通してその作動油の流通が許容される。
また、作動油が油圧アクチュエータから油圧ポンプに向かって流れる場合には、その作動油の圧力によって弁体がケーシングの内周面にガイドされた状態で油路に沿ってケーシングの一端部側に移動し、かつ切り欠き部との間に隙間を生じて、上記副通路を通してその作動油の流通が許容される。このように、作動油が油圧ポンプ側へ逆流する場合、弁体がケーシングの内周面にガイドされた状態で移動するので、当該弁体の倒れ等の発生を防ぐことができ、安定した性能を確保することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のダンパーバルブ及びそれを用いた油圧式パワーステアリング装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態における油圧式パワーステアリング装置Aの構成を示す概略図である。図2は、図1に示した油圧式パワーステアリング装置Aの油圧回路を示す説明図である。図1において、本実施形態の油圧式パワーステアリング装置Aは、図示しないステアリングホイールに連結される入力軸Sと、この入力軸Sの回転に伴って回転するピニオン1と、このピニオン1に噛み合うラック軸2と、このラック軸2を覆うハウジング5と、このハウジング5の内部に設けられた油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ6と、この油圧シリンダ6に作動油を供給する油圧ポンプ7と、前記ステアリングホイールに連動して油圧シリンダ6に対する作動油の給排を制御する油圧コントロールバルブ8とによって主要部が構成されている。
【0013】
前記ラック軸2の両端部は、ハウジング5の両端開口部5a,5bから突出しており、その突出端には、ボールジョイント10,11が一体化されている。各ボールジョイント10,11には、タイロッド12,13が取り付けられており、このタイロッド12,13を介して前記ラック軸2の両端部が操舵輪に連結されている。したがって、前記ステアリングホイールの回転操作により、入力軸Sを介してピニオン1を回転させ、ラック軸2を軸方向(車幅方向)へ移動させて、車両の操舵を行うことができる。
【0014】
前記油圧シリンダ6は、ハウジング5によって構成されたシリンダチューブ6aと、ラック軸2で構成されたピストンロッド6bと、ラック軸2に一体化されたピストン6cとからなり、このピストン6cを挟んだ両側空間が、第1油室6d及び第2油室6eとして構成されている。
【0015】
油圧コントロールバルブ8は、ロータリーバルブによって構成されており、そのバルブハウジング8aには、入力ポート8b、リターンポート8c、第1出力ポート8d及び第2出力ポート8eがそれぞれ突出形成されている。前記入力ポート8bは、第1油圧配管P1を介して前記油圧ポンプ7の出力ポート7aに接続されており、リターンポート8cは、第2油圧配管P2を介してリザーブタンクTに接続されている。また、第1出力ポート8dは、管体としての第3油圧配管P3を介して油圧シリンダ6の第1油室6dに接続されており、第2出力ポート8eは、管体としての第4油圧配管P4を介して油圧シリンダ6の第2油室6eに接続されている。この油圧コントロールバルブ8は、操舵方向と操舵抵抗に応じて、各油室6d,6eの何れか一方に操舵力補助用の作動油を供給すると同時に、他方の油室から作動油をリザーブタンクTに還流させる。
【0016】
前記第3油圧配管P3及び第4油圧配管P4は、それぞれ金属管4によって構成されており、これらの各配管の途中部分にはこの発明のダンパーバルブ20が管継手14a、14bを介して取り付けられている。ダンパーバルブ20は、図2に示すように、油圧コントロールバルブ8から油圧シリンダ6側への作動油の流れを許容するチェック弁20aとしての機能と、それとは逆向きの作動油の流れを、所定の抵抗を有して許容する絞りチェック弁20bとしての機能とを含んだものである。
尚、上記の説明では、ダンパーバルブ20を管継手14a、14bを介して第3油圧配管P3及び第4油圧配管P4の途中部分に取り付ける構成を説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、油圧コントロールバルブ8の出力ポート8d、8eと油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)6との間の油圧回路の所定部に設ける構成であればよい。具体的には、油圧シリンダ6の第1油室6dに連通する第1入力ポート6f及び第2油室6eに連通する第2入力ポート6gの内部、または油圧コントロールバルブ8の第1出力ポート8d及び第2出力ポート8eの内部にダンパーバルブ20を設ける構成でもよい。
【0017】
ここで、上記ダンパーバルブ20について、図3(a)を参照して具体的に説明する。
図3(a)は、図1に示したダンパーバルブ20の具体的な構成を示す拡大断面図である。
図3(a)において、ダンパーバルブ20は、当該ダンパーバルブ20の外容器としての筒状のケーシング21と、このケーシング21の内部に配置された筒状の弁体22及びこの弁体22を付勢するスプリング23とを備えている。さらに、ダンパーバルブ20には、上記弁体22内に収納されたボール24及び当該ボール24を付勢する予圧バネ25が設けられている。尚、同図に示すダンパーバルブ20では、スプリング23で付勢された弁体22の端部の外周面がケーシング21の内周面に密接してケーシング21の内部を閉塞した状態であり、さらに予圧バネ25で付勢されたボール24が弁体22に密接して弁体22の内部を閉塞した状態であり、作動油の流れを許容していない状態である。また、ダンパーバルブ20では、ボール24及び弁体22がそれぞれ作動油の圧力によって弁体22の内部及びケーシング21の内部を移動することにより、後述の主通路26及び副通路27が当該ダンパーバルブ20内でそれぞれ開放されて、作動油の流通を許容する。
【0018】
上記ケーシング21は、管継手14a及び金属管4を介して油圧ポンプ7側に接続される一端部21a、管継手14b及び金属管4を介して油圧シリンダ6側に接続される他端部21b、及び一端部21aから他端部21bに向かって所定寸法で内周面21dを切り欠くことにより形成された切り欠き部21cを有している。また、このケーシング21の内部には、作動油を一端部21aから弁体22の内部を経て他端部21bに導く主通路26と、作動油を他端部21bから上記切り欠き部21cを経て一端部21aに導く副通路27とが形成されている。
【0019】
上記一端部21aは、ねじ止めされたリング状のキャップ21eで構成され、そのキャップ21eの中心部分は作動油を通す通孔21e1として構成されている。他端部21bは、リング状に形成され、その中心部分は作動油を通す通孔21b1として構成されている。上記通孔21e1及び21b1には、それぞれ管継手14a及び14bが例えばねじ止めされている。尚、この説明以外に、管継手14a及び14bを一端部21a及び他端部21bにそれぞれ溶接により固定してもよい。
【0020】
また、他端部21bには、図3の(c)に示すように、例えば周方向に沿って等間隔に配置された4つの突出片21b2が設けられている。これらの突出片21b2は、弁体22の端面(図において下端面)と接して、スプリング23によって他端部21b側に付勢された弁体22を受け止めている。また、切り欠き部21cは、当該ケーシング21の軸方向と直角な方向での断面形状が例えば扇形形状に形成されたものであり、油圧シリンダ6から油圧コントロールバルブ8に向かって流れる作動油の流通を許容する副通路27の一部分を構成する。さらに、切り欠き部21cの他端部21b側の端部は、図3(a)に示すようにテーパ状に形成されている。尚、上記切り欠き部21cでは、その扇形形状の中心角を180度未満とすることにより、弁体22が当該切り欠き部21cに倒れ込んでくることを防止している。
【0021】
弁体22は、ケーシング21内でその内周面21dに沿って移動可能に配置されたものであり、円筒状の一端部分22a及びリング状の他端部分22bのそれぞれの中心部分は、作動油を通す通孔22a1及び22b1として構成されている。一端部分22aでは、その通孔22a1の内側開口の周囲部分は弁座21cとして構成されている。この弁座21cは、上記通孔22a1がボール24によって塞がれるように、その一部がボール24の球面形状に一致した形状に形成されている。また、一端部分22aと他端部分22bとの間においては、ボール24の直径よりも大きい内径寸法をもつ部分が形成されており、これにより図3(b)に示すように、ボール24と弁体22の内周面との間に作動油の流通を許容する隙間が形成されている。また、他端部分22bの内側表面とボール24との間には、予圧バネ25が弾性収縮させた状態で介在してある。このように、予圧バネ25を弁体22の内部に張り詰めることにより、予圧バネ25と弁体22を付勢するスプリング23とが互いに付勢力を打ち消し合うのを阻止することができるので、これらのスプリング23及び予圧バネ25の各バネ圧の設定を容易に行える。
【0022】
上記ボール24は、弁体22の弁座22cに密接するものであり、弁体22の内部に油路に沿って移動可能に配置されている。このボール24は、図4に示すように、油圧コントロールバルブ8から油圧シリンダ6側に流れようとする作動油の圧力により、予圧バネ25に抗して他端部分22b側に押圧移動される。これにより、当該ダンパーバルブ20内では、主通路26が開放されて、その作動油は同図の矢印Fに示すように、ケーシング21の一端部21a、弁体22の内部、及びケーシング21の他端部21bを順次通過する。その結果、油圧ポンプ7からの作動油がステアリングホイールの操舵方向側の油室に供給されて、そのステアリングホイールの回転操作をアシストすることができる。
【0023】
スプリング23は、ケーシング21の他端部21b側に弁体22を付勢しケーシング21の他端部21bに弁体22の他端部分22bを密接させるものであり、油圧シリンダ6から油圧ポンプ7側へ逆流しようとする作動油の圧力に応じて伸縮するように、ケーシング21の一端部21aの内側表面と、弁体22の途中に設けられた段部との間に弾性収縮させた状態で介在してある。つまり、このスプリング23は、上述の作動油の圧力が所定値未満である場合、ケーシング21と弁体22との密接状態を維持して油圧ポンプ7側への作動油の流通を阻止する。これにより、油圧シリンダ6を封止した状態として、前述のシミー現象やキックバック現象などの車両の部品精度等や走行環境に起因する外乱の影響を抑制することができる。
【0024】
一方、上記作動油の圧力が所定値以上である場合、例えば危険回避等のためにステアリングホイールが急転舵されて、作動油がステアリングホイールの転舵と反対側の油室から油圧コントロールバルブ8に戻ろうとする場合、スプリング23はその作動油の圧力によってケーシング21の一端部21a側に押圧されて、その作動油の流れを許容する。具体的には、作動油の圧力がスプリング23の付勢力に打ち勝って、図5に示すように、弁体22をケーシング21の内周面21dに沿って一端部21a側に移動させて切り欠き部21cとの間に隙間を生じさせる。これにより、当該ダンパーバルブ20内では、副通路27が開放されて、その作動油は同図の矢印IFに示すように、ケーシング21の他端部21b、切り欠き部21c、及び一端部21aを順次通過する。その結果、油圧コントロールバルブ8に戻ろうとする作動油の流れを許容して、操舵補助力の低下を防いでステアリングホイールが異常に重くなるなどの不具合の発生を防止することができる。
【0025】
上記のように構成されたダンパーバルブ20及び油圧式パワーステアリング装置Aによれば、一方向への操舵に伴って作動油が例えば油圧コントロールバルブ8の第2出力ポート8eから第4油圧配管P4を通して油圧シリンダ6の第2油室6eに向かって流れようとすると、その第4油圧配管P4に介在したダンパーバルブ20において、弁体22の内部に配置されたボール24が、図4に示したように、作動油によって押圧され予圧バネ25に抗して弁体22の他端部分22b側に移動する。これにより、作動油はダンパーバルブ20内の主通路26を通って第2油室6eに流れて、ラック軸2が図1において左方向に移動し操舵補助力が出力される。
【0026】
このとき、第3油圧配管P3に介在したダンパーバルブ20においては、作動油は油圧シリンダ6の第1油室6dから油圧コントロールバルブ8に向かって流れようとする。この作動油の圧力がスプリング23の付勢力よりも小さい場合、弁体22はスプリング23によってケーシング21に密接された状態が維持されて、当該ダンパーバルブ20はその作動油の流通を阻止する。
一方、作動油の圧力が上記の付勢力よりも大きい場合、弁体22が、図5に示したように、スプリング23に抗してケーシング21の一端部21a側に押圧移動されて切り欠き部21cとの間に隙間を生じる。これにより、作動油は抵抗を生じることなくダンパーバルブ20内の副通路27を通って油圧コントロールバルブ8に戻りステアリングホイールの操舵に違和感が生じることを防止する。また、弁体22をケーシング21の内周面21dにガイドされて油路に沿って移動可能に配置しているので、弁体22が油圧シリンダ6からの作動油の圧力によって一端部21a側に移動される場合でも、当該弁体22の倒れ等の発生を防ぐことができ、安定した性能を確保することができる。
【0027】
【発明の効果】
以上のようにこの発明によれば、油圧アクチュエータ側から油圧ポンプ側への逆向きに流れる作動油の圧力が所定値以上である場合、弁体はその圧力によってケーシングの内周面にガイドされた状態で油路に沿って移動する。このように、弁体の移動がケーシングの内周面でガイドされながら行われるので、当該弁体の倒れ等の発生を防ぐことができ、安定した性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における油圧式パワーステアリング装置Aの構成を示す概略図である。
【図2】図1に示した油圧式パワーステアリング装置Aでの油圧回路を示す説明図である。
【図3】(a)は図1に示したダンパーバルブ20の具体的な構成を示す拡大断面図であり、(b)は(a)のIIIb−IIIb線における断面図であり、(c)は(a)のIIIc−IIIc線における断面図である。
【図4】作動油が主通路26を流れる場合でのダンパーバルブ20の動作を示す説明図である。
【図5】作動油が副通路27を流れる場合でのダンパーバルブ20の動作を示す説明図である。
【図6】従来の油圧式パワーステアリング装置のダンパーバルブを示す断面図である。
【符号の説明】
1 ピニオン
2 ラック軸
4 金属管(管体)
5 ハウジング
6 油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)
6f 第1入力ポート
6g 第2入力ポート
7 油圧ポンプ
8 油圧コントロールバルブ
8d 第1出力ポート
8e 第2出力ポート
20 ダンパーバルブ
21 ケーシング
21a 一端部
21b 他端部
21c 切り欠き部
21d 内周面
22 弁体
22a 一端部分
22b 他端部分
23 スプリング
24 ボール
25 予圧バネ
26 主通路
27 副通路
A 油圧式パワーステアリング装置
S 入力軸
P3 第3油圧配管
P4 第4油圧配管
Claims (2)
- 油圧ポンプと前記油圧ポンプから供給される作動油によって動作する油圧アクチュエータとの間の油圧回路に設けられるダンパーバルブであって、
前記油圧ポンプ側に接続される一端部、前記油圧アクチュエータ側に接続される他端部、及び前記一端部から他端部に向かって所定寸法で内周面を切り欠くことにより形成された切り欠き部を有する筒状のケーシングと、
前記ケーシング内でその内周面にガイドされた状態で油路に沿って移動可能に配置され、内部に弁座を有する筒状の弁体と、
前記ケーシングの内部に配置され、前記ケーシングの他端部側に前記弁体を付勢し前記ケーシングの他端部に前記弁体の端部を密接させるスプリングと、
前記弁体の内部に油路に沿って移動可能に配置され、その弁体の弁座に密接するボールと、
前記ボールが前記油圧ポンプからの作動油の圧力によって前記弁体の弁座から離れた状態で、前記油圧ポンプからの作動油を前記ケーシングの一端部から前記弁体の内部を経て前記ケーシングの他端部に導く主通路と、
前記弁体が前記油圧アクチュエータからの作動油の圧力によって前記スプリングに抗して前記ケーシングの一端部側に移動し、かつ前記切り欠き部との間に隙間を生じた状態で、前記油圧アクチュエータからの作動油を前記ケーシングの他端部から前記切り欠き部を経て前記ケーシングの一端部に導く副通路と
を備えることを特徴とするダンパーバルブ。 - 油圧ポンプと、この油圧ポンプから供給される作動油によって操舵補助力を出力する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータと油圧ポンプとの間に介在し、操舵に応じて前記油圧アクチュエータに対する作動油の給排をコントロールする油圧コントロールバルブとを備える油圧式パワーステアリング装置であって、
前記油圧コントロールバルブの出力ポートと油圧アクチュエータとの間の油圧回路の所定部に、請求項1記載のダンパーバルブを設けていることを特徴とする油圧式パワーステアリング装置。
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