JP3797691B2 - フェノール化合物およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェニルエステル構造を含有する新規フェノール化合物、およびその用途に関する。
より詳細には、ポリオレフィン等の合成高分子材料をはじめ、天然有機材料、および化粧品、不凍液等の各種有機材料の安定剤(酸化防止剤)として有用であり、特に水もしくは熱水の存在する環境中での使用において著しい効果を発揮するフェノール化合物、およびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン等の合成高分子材料をはじめとする各種有機材料は、成形加工時および使用時に酸化を受け、品質が低下するという問題がある。このため、従来より酸化劣化を防止する目的で各種酸化防止剤が開発され、当該材料中に配合されている。
例えばヒンダードフェノール化合物(例えば、特公昭38−170164号、特公昭39−4620号、特公昭39−21140号、特公昭42−9651号、特開昭62−30134号の各公報に記載の化合物)は、特にポリオレフィン等の合成高分子材料の酸化劣化防止に有用であり、現在実用に供されている。
【0003】
ところで、ヒンダードフェノール化合物として1,1,3−トリス置換ブタン系化合物が知られているが、当該化合物としては、例えば英国特許第951935号明細書には、
【0004】
【化7】
【0005】
により表されるフェニルエステル構造を有する化合物が、米国特許第4199495号明細書には、
【0006】
【化8】
【0007】
により表されるエステル構造を有する化合物が、特開昭52−154851号公報には、
【0008】
【化9】
【0009】
により表されるエステル構造を有する化合物が、特開昭52−66551号公報には、
【0010】
【化10】
【0011】
により表される亜燐酸エステル化合物が、特開昭53−56239号公報には、
【0012】
【化11】
【0013】
により表される亜燐酸エステル化合物が記載され、これらは合成高分子材料の酸化防止剤として知られている。
【0014】
また、1,1,3−トリス置換ブタン系化合物として、特開昭62−156152号公報には、
【0015】
【化12】
【0016】
により表される難燃作用性化合物が、特開昭62−18444号公報には、
【0017】
【化13】
【0018】
により表される耐光剤用化合物が記載されている。
しかしながら、従来の各種酸化防止剤により安定化された材料を、水の存在する環境中で使用する場合、その酸化劣化防止効果が著しく低下するという問題等が起こり、従来の酸化防止剤では未だ十分に満足されるものはない。
この原因としては、従来、酸化防止剤が水によって抽出されるため、あるいは加水分解された後抽出されるためであると考えられていた。従って、水の存在する環境中で使用する材料には、水による抽出や加水分解を防ぐため、例えば、特開平2−265939号公報に記載の組成物のようにエステル構造を含まず、高分子量で、剛直な構造を持つ酸化防止剤を配合するのが一般的であった。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような酸化防止剤も、要求される耐酸化劣化性を十分に満たすものではなく、水もしくは熱水の存在する環境中での酸化劣化防止に対して特に有効である酸化防止剤が必要とされてきた。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水の存在する環境中にて使用される有機材料に配合されている酸化防止剤の効果の低下機構について永年にわたり研究を重ねてきた。ところが、本発明者らは、有機材料中の酸化防止剤が水によって抽出され、または加水分解されるという従来の酸化防止機構に基づいた研究を行ったが、所望の酸化防止剤を得ることはできなかった。この研究過程において本発明者らは、実は水の作用によって、当該酸化防止剤自体の酸化変質が促進されて、酸化防止効果を示さない化合物となってしまうことを発見した。
従って、水の存在する環境中にて使用される有機材料には、たとえ水の作用によって酸化変質したとしても、その酸化変質によって生成した化合物にも酸化防止能を有する化合物を設計することを着想し、鋭意検討を行った。
その結果、下記一般式〔1〕で表されるフェノール化合物がそれ自体の化学構造で有機材料に対する優れた酸化劣化防止能を有し、しかも、水または熱水の存在する環境中にて使用して変質された場合でも、十分に満足できる酸化劣化防止能を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。本発明化合物は、たとえ水による変質が生じたとしても、新たな酸化劣化防止能を有する化合物が順次生成することから、その酸化劣化防止能の持続効果も著しいものがある。
すなわち、本発明は、一般式〔1〕
【0021】
【化14】
【0022】
[式中、Xは、それぞれ式〔2〕
【0023】
【化15】
【0024】
(ここでR1 ,R4 は同一または異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜8のアルキル基を示し、R2 ,R3 ,R5 ,R6 は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)により表される基を示す。]
により表されるフェノール化合物に関する。
【0025】
また、本発明は、上記化合物からなる有機材料用安定剤、上記化合物および有機材料を含有してなる組成物、これにさらに硫黄系酸化防止剤を併用してなる組成物に関する。
【0026】
さらに詳細には、
(1)一般式〔1〕
【0027】
【化16】
【0028】
[式中、Xは、それぞれ式〔2〕
【0029】
【化17】
【0030】
(ここでR1 ,R4 は同一または異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜8のアルキル基を示し、R2 ,R3 ,R5 ,R6 は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)により表される基を示す。]
により表されるフェノール化合物、
【0031】
(2)一般式〔1〕におけるXが、3つとも同一の置換基である上記(1)記載のフェノール化合物、
【0032】
(3)一般式〔2〕におけるR6 が、炭素数1〜8のアルキル基である上記(1)記載のフェノール化合物、
【0033】
(4)上記(1)、(2)または(3)記載の化合物からなる有機材料用安定剤、
【0034】
(5)上記(1)、(2)または(3)記載の化合物及び有機材料を含有する組成物、
【0035】
(6)上記(1)、(2)または(3)記載の化合物及びポリオレフィンを含有する組成物、
【0036】
(7)一般式〔1〕で表されるフェノール化合物がポリオレフィン100重量部に対し、0.01〜10重量部の割合で含有される上記(6)記載の組成物、
【0037】
(8)ポリオレフィンがポリエチレン、ポリプロピレンおよびプロピレン系共重合体より選ばれたものである上記(6)記載の組成物、
【0038】
(9)上記(1)、(2)または(3)記載の化合物と硫黄系酸化防止剤とを併用してなる有機材料用安定剤、
【0039】
(10)硫黄系酸化防止剤がジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジドコシルチオジプロピオネート、テトラキス[メチレン(ラウリルチオプロピオネート)]メタンまたはテトラキス[メチレン(ステアリルチオプロピオネート)]メタンである上記(9)記載の安定剤、
【0040】
(11)硫黄系酸化防止剤の割合が、一般式〔1〕で表されるフェノール化合物に対し、0.1〜10(重量比)である上記(9)記載の有機材料用安定剤、
【0041】
(12)一般式〔1〕
【0042】
【化18】
【0043】
[式中、Xは、それぞれ式〔2〕
【0044】
【化19】
【0045】
(ここでR1 ,R4 は同一または異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜8のアルキル基を示し、R2 ,R3 ,R5 ,R6 は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)により表される基を示す。]
により表されるフェノール化合物を有機材料に加えることからなる有機材料の安定化方法、
【0046】
(13)フェノール化合物が、一般式〔1〕において、Xが3つとも同一の置換基である上記(12)記載の有機材料の安定化方法、
【0047】
(14)フェノール化合物が、一般式〔2〕において、R6 が、炭素数1〜8のアルキル基である上記(12)記載の有機材料の安定化方法、
【0048】
(15)有機材料がポリオレフィンである上記(12)、(13)または(14)記載の有機材料の安定化方法、
【0049】
(16)一般式〔1〕で表されるフェノール化合物がポリオレフィン100重量部に対し、0.01〜10重量部の割合で含有される上記(15)記載の有機材料の安定化方法、
【0050】
(17)ポリオレフィンがポリエチレン、ポリプロピレンおよびプロピレン系共重合体より選ばれたものである上記(15)記載の有機材料の安定化方法、
【0051】
(18)一般式〔1〕
【0052】
【化20】
【0053】
[式中、Xは、それぞれ式〔2〕
【0054】
【化21】
【0055】
(ここでR1 ,R4 は同一または異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜8のアルキル基を示し、R2 ,R3 ,R5 ,R6 は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)により表される基を示す。]
により表されるフェノール化合物と有機材料を含む組成物、
【0056】
(19)フェノール化合物が、一般式〔1〕において、Xが3つとも同一の置換基である上記(18)記載の組成物、
【0057】
(20)フェノール化合物が、一般式〔2〕において、R6 が炭素数1〜8のアルキル基である上記(18)記載の組成物、
【0058】
(21)上記(18)、(19)または(20)記載の組成物からなる有機材料用安定剤、
【0059】
(22)上記(18)、(19)または(20)記載の組成物を含有してなるポリオレフィン組成物、
【0060】
(23)一般式〔1〕で表されるフェノール化合物がポリオレフィン100重量部に対し、0.01〜10重量部の割合で含有される上記(22)記載の組成物、
【0061】
(24)ポリオレフィンがポリエチレン、ポリプロピレンおよびプロピレン系共重合体より選ばれたものである上記(22)記載の組成物、
【0062】
(25)さらに硫黄系酸化防止剤を含む上記(18)、(19)または(20)記載の組成物、
【0063】
(26)硫黄系酸化防止剤がジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジドコシルチオジプロピオネート、テトラキス[メチレン(ラウリルチオプロピオネート)]メタンまたはテトラキス[メチレン(ステアリルチオプロピオネート)]メタンである上記(25)記載の組成物、
【0064】
(27)硫黄系酸化防止剤の割合が、一般式〔1〕で表されるフェノール化合物に対し、0.1〜10(重量比)である上記(25)記載の組成物に関するものである。
【0065】
本明細書中に用いられている各記号について、以下に説明する。
R1 およびR4 の炭素数1〜8、好ましくは1〜5のアルキル基としては、それぞれ直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれでもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0066】
R2 ,R3 ,R5 およびR6 としては、それぞれ水素原子、またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれでもよい炭素数1〜8、好ましくは1〜5のアルキル基が挙げられる。
【0067】
また、一般式〔1〕の化合物におけるXは、必ずしも3つともすべて同じである必要はないが、通常は同一であることが好ましい。
【0068】
一般式〔1〕で表される本発明化合物の具体例としては、1,1,3−トリス[2−メチル−4−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]ブタン、1,1,3−トリス[3−メチル−4−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]ブタン、1,1,3−トリス[2−メチル−4−(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]ブタン、1,1,3−トリス[3−メチル−4−(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]ブタン等が挙げられる。
【0069】
一般式〔1〕で表される本発明化合物の製造方法は特に限定されず、例えば、
【0070】
【化22】
【0071】
(式中、各記号は前記と同義。)によって表される特公昭39−4469号公報、特開昭56−40629号公報に記載のある化合物と、
【0072】
【化23】
【0073】
(式中、Yはハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素等)を示し、他の各記号は前記と同義。)によって表される化合物とを、アルカリの存在下に反応させることにより、一般式〔1〕で表される本発明化合物を製造することができる。
当該反応は、通常、不活性溶媒(例えば、トルエン等)中で行われる。
【0074】
一般式〔1〕で表される本発明化合物の特徴は、ヒンダードフェニルエステル構造を有するヒンダードフェノール化合物であるところにある。すなわち、水の存在する環境中において、使用初期はヒンダードフェノールが酸化防止効果を発揮し、使用中にヒンダードフェニルエステルが水の作用によって変質すると、新たにヒンダードフェノールが生成し、引き続き酸化防止防止能を発揮するので、従来の酸化防止剤に比べて長期の酸化劣化防止効果を示すことができる。
【0075】
一般式〔1〕で表される本発明化合物は、種々の有機材料の安定剤として用いることができ、有機材料の酸化劣化防止に有効であるが、特に水の存在する環境中で使用されることの多い合成高分子の酸化劣化防止に有効である。
また、本発明は、一般式〔1〕で表される化合物を含有する有機材料をも提供する。
【0076】
有機材料としては、例えば、合成高分子、天然有機材料等が挙げられる。
合成高分子としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1等の炭素数2〜8のα−オレフィンの単独重合体、エチレン・プロピレンランダムまたはブロック共重合体、エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1ランダム共重合体等のα−オレフィン共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等のポリ−α−オレフィンと他の単量体との共重合体等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、塩化ビニル・アクリル酸アルキルエステル共重合体等の含ハロゲン系重合体;ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂、AES樹脂等のスチレン系樹脂;ポリアクリレート、ポリメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン612等のポリアミド;芳香族ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリエチレンオキシド;ポリフェニレンエーテル;ポリスルホン;ポリウレタン;不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらの混合物等も挙げることができる。
【0077】
本発明化合物は、特にポリオレフィン、なかでもポリエチレン、ポリプロピレンまたはプロピレン系共重合体に配合した場合、優れた酸化劣化防止効果を示す。
【0078】
また、天然有機材料としては、セルロース、天然ゴム、蛋白質、あるいは酢酸セルロース等の誘導体等の天然高分子物質や、鉱油、動植物油、ロウ等を挙げることができる。
【0079】
さらに、本発明化合物は、特に硫黄系酸化防止剤と組み合わせて用いることにより、より優れた効果を発揮する。つまり、本発明化合物および硫黄系酸化防止剤を安定剤として用い、有機材料に含有させると、より安定性に優れた有機材料を含む組成物を得ることができる。
【0080】
硫黄系酸化防止剤としては、特に限定されないが、好ましくはジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジドコシルチオジプロピオネート、テトラキス[メチレン(ラウリルチオプロピオネート)]メタン、テトラキス[メチレン(ステアリルチオプロピオネート)]メタン等が挙げられる。これらは、1種でも、2種以上でも用いることができる。
【0081】
本発明化合物を有機材料用安定剤として用いる場合、有機材料(安定剤を含まない)100重量部に対し、本発明化合物は好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部の割合で配合するのがよい。本発明化合物の割合は、本発明化合物単独利用の場合も、本発明化合物と硫黄系酸化防止剤の併用の場合も同じである。
また、硫黄系酸化防止剤は、有機材料(安定剤を含まない)100重量部に対し、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部の割合で配合するのがよい。
さらに、本発明化合物に対する硫黄系酸化防止剤の割合(硫黄系酸化防止剤/本発明化合物)は、0.1〜10(重量比)の範囲が好ましい。
【0082】
本発明化合物は、安定剤として用いる場合、さらに必要に応じて、本発明化合物の効果を著しく損なわない程度の他の添加物、例えば他のフェノール系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、金属石鹸、重金属不活性化剤、有機錫安定剤、エポキシ化合物、顔料、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、加工助剤、中和剤、造核剤、可塑剤、着色剤、充填剤、発泡剤等の1種以上と併用することもできる。
【0083】
当該安定剤を有機材料に配合する方法としては特に限定されず、従来公知の方法等が挙げられ、例えば、有機材料と安定剤を混合した後、混練り、押し出し等の工程を経て処理する方法等が挙げられる。
【0084】
【実施例】
次に、実施例および実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0085】
実施例1
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン6g、トリエチルアミン5gおよびトルエン30mlの溶液を5℃に冷却し、これに3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルクロリド11gをトルエン30mlに溶解した溶液を滴下した後、5℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応液を濾過し、濾液にトルエン40mlおよび水50mlを加え、水洗した。分液後、トルエン層を濃縮し、シリカゲルカラムにより精製すると、融点101〜103℃の白色結晶性粉末の1,1,3−トリス[2−メチル−4−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]ブタンが得られた。その構造および物性値を次に示す。
【0086】
【化24】
【0087】
2)赤外分光分析結果(KBr)
νOH:3600cm-1、νC=O :1726cm-1
3)核磁気共鳴分析結果(CDCl3 ,ppm)
δ1.16(s,12H) δ1.30(s,9H)
δ1.32(s,11H) δ1.44(s,54H)
δ1.62(s,3H) δ1.80(s,3H)
δ2.08(s,4H) δ2.64−3.12(m,12H)
δ3.72−4.04(m,1H) δ5.05(s,3H)
δ6.44−6.60(m,3H) δ6.90−7.36(m,9H)
【0088】
実施例2
実施例1の1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンの代わりに1,1,3−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンを用い、実施例1と同様に反応・精製を行うと、融点104〜113℃の白色結晶性粉末の1,1,3−トリス[3−メチル−4−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]ブタンが得られた。その構造および物性値を次に示す。
【0089】
【化25】
【0090】
2)赤外分光分析結果(KBr)
νOH:3600cm-1、νC=O :1725cm-1
3)核磁気共鳴分析結果(CDCl3 ,ppm)
δ1.16,1.21(d,3H) δ1.24(s,9H)
δ1.25(s,9H) δ1.27(s,9H)
δ1.44(s,54H) δ1.91(s,3H)
δ1.93(s,3H) δ1.95(s,3H)
δ2.12−2.28(m,2H) δ2.45−2.52(m,1H)
δ2.85−3.10(m,12H)
δ3.59,3.62,3.65(t,1H)
δ5.08(s,3H) δ6.77−7.13(m,12H)
【0091】
実施例3〜5、比較例1〜4
チーグラー・ナッタ触媒を用いたスラリー法により重合され、135℃のテトラリン中で測定した極限粘度が1.9でアイソタクチックなものが98%のポリプロピレン粉末100重量部に、表1に記載の化合物を配合し、ミキサーにて充分混合した後、シリンダー温度260℃、L/D=20、吐出直径20mmの押出機によって溶融混練し、これをストランド状に押し出し、カッティングしてペレットとし、安定剤含有有機材料を得た。
【0092】
【表1】
【0093】
実験例
上記実施例および比較例で得られたペレット(安定剤含有有機材料)を230℃で厚さ0.5mmのシートに圧縮成形し、50mm×20mmの試験片を切り出した。
得られた試験片について、耐熱水性試験を行った。すなわち、試験片を90℃の蒸留水中に所定時間(0、1000、3000、5000時間)浸漬した後、150℃のギャー・オーブン中で試験片が脆化するまでの時間(オーブンライフ)を測定した。結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
表2の結果から、本発明のフェノール化合物を配合したポリプロピレン成形体は長期間、熱水中に保持した場合でも、耐久性に優れていることが明らかである。
要するに、比較例1および3に示した公知の酸化防止剤を同量配合した場合に比べ、本発明の実施例1および2の方がポリマーが脆化するまでの時間が長いことが明らかである。
また、硫黄系酸化防止剤を併用した場合の実施例5と比較例4を対比しても、両者の効果差は顕著である。
【0096】
【発明の効果】
本発明化合物を、有機材料用安定剤として用いた場合、従来の耐熱水性酸化防止剤として使用されてきた化合物に比べて、優れた酸化劣化防止効果を示し、特に長期間熱水と接触する環境での有機材料の劣化に対して極めて優れた抵抗性を示す。また、本発明化合物および硫黄系酸化防止剤との併用によって優れた相乗効果を示し、従来の耐熱水性酸化防止剤と比べ、相乗的に長期にわたる耐熱水性が良好となる。
Claims (27)
- 一般式〔1〕におけるXが、3つとも同一の置換基である請求項1記載のフェノール化合物。
- 一般式〔2〕におけるR6 が、炭素数1〜8のアルキル基である請求項1記載のフェノール化合物。
- 請求項1、2または3記載の化合物からなる有機材料用安定剤。
- 請求項1、2または3記載の化合物及び有機材料を含有する組成物。
- 請求項1、2または3記載の化合物及びポリオレフィンを含有する組成物。
- 一般式〔1〕で表されるフェノール化合物がポリオレフィン100重量部に対し、0.01〜10重量部の割合で含有される請求項6記載の組成物。
- ポリオレフィンがポリエチレン、ポリプロピレンおよびプロピレン系共重合体より選ばれたものである請求項6記載の組成物。
- 請求項1、2または3記載の化合物と硫黄系酸化防止剤とを併用してなる有機材料用安定剤。
- 硫黄系酸化防止剤がジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジドコシルチオジプロピオネート、テトラキス[メチレン(ラウリルチオプロピオネート)]メタンまたはテトラキス[メチレン(ステアリルチオプロピオネート)]メタンである請求項9記載の安定剤。
- 硫黄系酸化防止剤の割合が、一般式〔1〕で表されるフェノール化合物に対し、0.1〜10(重量比)である請求項9記載の有機材料用安定剤。
- フェノール化合物が、一般式〔1〕において、Xが3つとも同一の置換基である請求項12記載の有機材料の安定化方法。
- フェノール化合物が、一般式〔2〕において、R6 が、炭素数1〜8のアルキル基である請求項12記載の有機材料の安定化方法。
- 有機材料がポリオレフィンである請求項12、13または14記載の有機材料の安定化方法。
- 一般式〔1〕で表されるフェノール化合物がポリオレフィン100重量部に対し、0.01〜10重量部の割合で含有される請求項15記載の有機材料の安定化方法。
- ポリオレフィンがポリエチレン、ポリプロピレンおよびプロピレン系共重合体より選ばれたものである請求項15記載の有機材料の安定化方法。
- フェノール化合物が、一般式〔1〕において、Xが3つとも同一の置換基である請求項18記載の組成物。
- フェノール化合物が、一般式〔2〕において、R6 が炭素数1〜8のアルキル基である請求項18記載の組成物。
- 請求項18、19または20記載の組成物からなる有機材料用安定剤。
- 請求項18、19または20記載の組成物を含有してなるポリオレフィン組成物。
- 一般式〔1〕で表されるフェノール化合物がポリオレフィン100重量部に対し、0.01〜10重量部の割合で含有される請求項22記載の組成物。
- ポリオレフィンがポリエチレン、ポリプロピレンおよびプロピレン系共重合体より選ばれたものである請求項22記載の組成物。
- さらに硫黄系酸化防止剤を含む請求項18、19または20記載の組成物。
- 硫黄系酸化防止剤がジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジドコシルチオジプロピオネート、テトラキス[メチレン(ラウリルチオプロピオネート)]メタンまたはテトラキス[メチレン(ステアリルチオプロピオネート)]メタンである請求項25記載の組成物。
- 硫黄系酸化防止剤の割合が、一般式〔1〕で表されるフェノール化合物に対し、0.1〜10(重量比)である請求項25記載の組成物。
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