JP3796399B2 - カードコネクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カードコネクタ、特に筐体内のカードセット位置に挿入されているカードの無理抜きが不可能であり、しかも、そのカードを操作部材のプッシュ操作によって定位置まで排出することのできるカードコネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平11−135192号公報には、カードセット位置に挿入されているカードを操作部材のプッシュ操作によって定位置まで排出することのできるカードコネクタについての記載がある。また、この公報には、カードのカードセット位置でハーフロックすることについての記載もある。すなわち、この公報に記載されているカードコネクタでは、筐体の挿入口から挿入されてきたカードが、その筐体に収容されているスライダに前側からのみ係合した後、そのスライダをばね弾性に抗して前進させることによりカードがカードセット位置に挿入されるようになっていると共に、スライダがカードに前側からのみ係合しているときには常にカードがスライダにハーフロックされるようになっている。すなわちカードがスライダに引抜き可能に仮固定されるようになっている。
また、カードセット位置に挿入されたカードによって押し込まれたスライダのその位置からの後退を阻止する手段には、ハート形のカム溝とそのカム溝に嵌め込まれたピンとを組み合わせることによって構成されるプッシュ−プッシュ操作によって動作するカム機構が採用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載されている従来のカードコネクタによると、カードがカードセット位置に挿入されているときでも、そのカードがスライダに対してハーフロックされているに過ぎなかったので、カードセット位置に挿入されているカードを抜出し方向に無理に引っ張ることによってそのカードが不慮に抜き出されてしまうというおそれがあった。
また、カードコネクタが落下などに伴う衝撃を受けると、その衝撃の度合によっては、上記カム機構のピンがカム溝の所定の係合箇所から外れてしまってカードが不慮に排出されてしまうというおそれがあった。
【0004】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、カードがカードセット位置に挿入されているときにはカードの無理抜きが不可能になり、しかも、落下などの衝撃を受けても、カードセット位置に挿入されているカードが不慮に排出されるような事態の起こらないカードコネクタを提供することを目的とする。
また、本発明は、部品点数をでるだけ増やさずに、カードの無理抜きが不可能になり、落下などの衝撃によってカードが不慮に排出されるような事態の起こらないように構成することのできるカードコネクタを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
図面を参照して本発明のカードコネクタを説明する。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図例に限定する意図ではない。
【0006】
本発明に係るカードコネクタは、偏平な箱形に形成されていて、後端にカード100の挿入口15が形成されている筺体1と、上記筺体1の片側に収容され、筺体1の挿入口15から挿入されてきたカード100が後方側からのみ係合する待機位置と筺体1内でのカードセット位置に対応する前進位置との間で前後にスライド可能なスライダ5と、上記スライダ5を後退方向に常時弾発付勢するコイルばね42と、上記スライダ5と上記筺体1とに振り分けて具備され、カード100が上記セット位置まで挿入されたときに互いに係合してスライダ100の後退を阻止する係合体及び被係合体と、上記スライダ5が待機位置に位置しているときには、そのスライダ5に係合しているカード100をハーフロックすることによってそのカード100をスライダ5に対して引抜き可能に仮固定し、かつ、上記スライダ5がその前進位置に位置しているときには上記セット位置に挿入されたカード100をフルロックしてそのスライダ5からのカード100の後退を阻止するカードロック機構と、上記係合体及と被係合体との係合を解除する係合解除機構と、を備えたカードコネクタにおいて、
上記カードロック機構は、スライダ5に左右方向に貫通して備わる孔部57に左右方向出退自在に嵌合され、孔部57に具備された段付部58と突出方向で係止する段付部62が具備されると共に、カード100の片側辺部に形成されている凹入部120に嵌入する山形先端面61を備えた可動体6と、上記筺体1の片側の側板部に内向きに切起こし形成され、スライダ5が待機位置に位置しているときに上記可動体6を筺体1の内方側へ弾発付勢し、孔部57の段付部58に可動体6の段付部62が係合して孔部57から筺体1の内方側へ可動体6の山形先端面61が突出する位置にその可動体6を位置決めするばね片26と、スライダ5が前進位置に位置しているときに上記可動体6の後端64が対向する筺体1の側板部の板面によって形成されている支持部23aとを備え、スライダ5が待機位置に位置しているときに、筐体1の挿入口15から挿入されたカード100が、可動体6をばね片26の弾発付勢力に抗してスライダ5の孔部57に押し込みながらその可動体6を乗り越えてスライダ5に係合したとき、カード100の凹入部120の中に、ばね片26の弾発付勢力によって可動体6の山形先端面61が嵌入することによって、カード100を後方へ引っ張ると、カード100が可動体6をばね片26の弾発付勢力に抗してスライダ5の孔部57に押し込みながら後退してカード100の凹入部120が可動体6の山形先端面61から抜け出て、カード100を引き抜くことが可能な仮固定状態に、カード100をスライダ5に対してハーフロックすると共に、スライダ5がカード100の挿入によりコイルばね42の弾発付勢力に抗して待機位置から前進位置に押し込まれたときには、可動体6の後端64が上記支持部23aに対向して、その支持部23aが可動体6の後退を阻止することによって、カード100を後方へ引っ張ったとしても、カード100の凹入部120が可動体6の山形先端部61を乗り越えることができず、カードセット位置に挿入されたカード100のスライダ5からの後退を阻止する状態に、カード100をスライダ5に対してフルロックし、
上記スライダ5の後端部に連結されてスライダ5の後方に延び出ていて、後端部に所定長さの幅狭部53が具備され、その幅狭部53の端部近傍箇所に幅広の突起54が備わっており、その突起54の後端面55がカード挿入方向に対して直角をなし、突起54の前端面が前窄まりに傾斜したガイド面56に形成されている杆体52と、上記筐体1の下板部と上板部にそれぞれ内向きに切起こし形成されて、筐体1の左右方向片側において上下方向で対向していて、筐体1の左右方向片側において上下方向で対向する開口25,35が具備され、スライダ5が待機位置に位置しているときに、上記杆体52の幅狭部53を摺動自在に挾み付ける上下の弾性片24,34とを備え、上記被係合体が上記杆体52の突起54でなり、その突起54の上記後端面55を被係止部として備える一方、上記係合体が上記上下の弾性片24,34でなり、その弾性片24,34の開口25,35の後側 の口縁25a,35aを係止部として備えており、スライダ5がカード100の挿入によりコイルばね42の弾発付勢力に抗して待機位置から前進位置に押し込まれる過程で、上下の弾性片24,34を撓ませながら上記杆体52の突起54がそれらの弾性片24,34の先端部を上記ガイド面56を介して乗り越えて、弾性片24,34の開口25,35に嵌まり込み、上記コイルばね42の弾発付勢力によって上記突起54の後端面55が上記開口25,35の後側の口縁25a,35aに係合することによって、前進位置に押し込まれた上記スライダ5の後退を、上記カードロック機構によりカード100がそのスライダ5に対してフルロックされているその前進位置で上記コイルばね100の弾発付勢力に抗して阻止し、
上記係合解除機構は、上記筺体1の片側の側板部に配設され、前方に向けて押込み操作される操作部材7と、この操作部材7を後方に向けて常時弾発付勢する引張りコイルばね72と、上記筺体1の内側に配備される上記操作部材7の端部に備わり、操作部材7が押込み操作されない常態時に上記上下の弾性片24,34の後方でそれらの間に離間して対向する先尖り形状に形成された作用部74とを備え、上記セット位置に挿入されているカード100を排出するときに、上記操作部材7を初期位置から引張りコイルばね72の弾発付勢力に抗して前方へ押込むことにより、上記作用部74が、上下の弾性片24,34の間に分け入り、それらの弾性片24,34を撓み変形させて押し拡げて、上記突起54を弾性片24,34の開口25,35から抜け出させ、上記突起54の後端面55と上記開口25,35の後側の口縁25a,35aとを離脱させて両者の係合を解除することを特徴としている。
【0007】
このため、筐体1の挿入口15からカード100を挿入すると、待機位置に位置しているスライダ5に係合したカード100がそのスライダ5を弾発力に抗して前進位置まで押し込むと共に、カード100自体もセット位置まで挿入される。こうしてカード100がセット位置に挿入されると、係合体と被係合体とが互いに係合することによってスライダの後退を阻止する。したがって、カード100によって前進位置まで押し込まれたスライダ5がその前進位置から後退するという事態は起こらない。
【0008】
また、セット位置に挿入されたカード100は、カードロック機構によって、スライダ5にフルロックされて無理抜きすることができなくなる。これに対し、スライダ5が待機位置に位置しているときには、カード100がスライダ5にハーフロックされているだけであるのでカード100を引き抜いて排出することが可能である。
【0009】
また、カード100がセット位置に挿入されているときに操作部材7を押込み操作(プッシュ操作)すると、操作部材7の作用部74が係合体と被係合体との係合を解除し、スライダ5が弾発力によりカード100を伴って待機位置まで後退する。こうしてスライダ5が待機位置まで後退すると、カード100がカードロック機構によってハーフロックされた状態になるので、カード100をスライダ5から引き抜いて排出することが可能になる。
【0010】
また、上記係合解除機構は、上記操作部材7が押込み操作されない常態時には上記係合体と上記被係合体との係合箇所からその作用部74を離間させている。このため、落下などによる衝撃を受けても、操作部材7が不慮に押し込まれてその作用部74が係合体と被係合体との係合を解除させてしまうというような事態が起こりにくい。したがって、セット位置に挿入されているカード100が落下などの衝撃によって不慮に排出されるというような事態が起こりにくい。
【0011】
また、上記係合体が、上記筐体1に具備されかつ上記被係合体を係止可能な係止部25a,35aを備える弾性片24,34でなり、上記被係合体が、上記スライダ5に具備されてそのスライダ5が前方へ押し込まれたときに上記弾性片24,34をその弾性に抗して撓み変形させた後にその弾性片24,34の復帰動作を通じて上記係止部25a,35aに係止される被係止部55を備える突起54でなる。これによると、スライダ5が前進位置に押し込まれたときの係合体と被係合体との係合動作が確実に行われる割に、係合体や被係合体の構成が簡単になる。このような作用は、弾性片24,34が筐体1の上板部又は下板部に内向きに切起し形成されていて、その弾性片24,34に形成された開口25,35の口縁によって上記係止部25a,35aが形成され、上記被係合体を形成している上記突起54の後端面によって上記被係止部55が形成されていると共に、その突起54に、上記スライダ5がカード挿入方向前方へスライドしたときに上記弾性片24,34をその弾性に抗して撓み変形させる傾斜したガイド面56が備わっているという構成によって良好に発揮される。
【0012】
また、上記係合解除機構の上記作用部74が、上記操作部材7の押込み操作を通じて上記弾性片24,34と摺動しつつその弾性片24,34をその弾性に抗して撓み変形させることにより上記開口25,35の口縁を上記突起54の後端面から離脱させる先尖り形状に形成されている。これによると、作用部74による係合体と被係合体との係合解除作用が簡単な構成で確実に発揮されるようになる。
【0013】
上記操作部材7が、その操作部材7をカード挿入方向後方に向けて付勢する引張りコイルばね72に連結されている。これによると、操作部材7を押込み操作した後、その操作部材7が手指を離すだけで元位置まで復帰する。
【0014】
上記カードロック機構の上記ばね片が、上記筐体の側板部に内向きに切起し形成されたばね片26でなり、上記支持部23aが上記側板部の内側の板面によって形成されていることによってカードロック機構の構成部品を少なくして価格を安く抑えることが可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は本発明に係るカードコネクタの実施形態の動作を示した概略水平断面図である。図5は下カバー2の概略平面図、図6は下カバー2の要部拡大図、図7は図6のVII−VII線断面図、図8は下カバー2の他の要部拡大図、図9は図8のIX−IX線断面図、図10は上カバー3の概略平面図、図11は図10のXI−XI線断面図、図12は可動体6が組み込まれたスライダ5の平面図、図13は図12のXIII−XIII線断面図、図14は操作部材7の平面図、図15は図14のXV矢視による作用部74の形状図、図16〜図18は作用部74の動作説明図である。
【0016】
この実施形態に係るカードコネクタの筐体1は、図5の下カバー2と図10の上カバー3とを互いに嵌合させることによって偏平な箱形に形成されていて、上下の各板部と左右の各側板部とを有している。具体的には、筐体1の下側の板部が下カバー2の下板部21によって形成され、上側の板部が上カバー3の上板部31によって形成され、左右の各側板部が、互いに重なり合った下カバー2の左右の各側板部22,23と上カバー3の左右の各側板部32,33によって形成されている。そして、図1〜図4のように、筐体1の前端部分に必要極数の端子41…を備えたボディ4が組み付けられている。
【0017】
図5〜図7のように、下カバー2の下板部21に後向きに延び出た弾性片24が内向き(上向き)に切起し形成されており、この弾性片24に矩形の開口25が形成されている。同様に、図10及び図11のように、上カバー3の上板部31に後向きに延び出た弾性片34が内向き(下向き)に切起し形成されており、この弾性片34に矩形の開口35が形成されている。これらの弾性片24,34や開口25,35は同じ形状及び大きさを有していて、筐体1では、これらの弾性片24,34や開口25,35がその筐体1の左右方向片側において上下方向で対向している。
【0018】
また、図5、図8、図9のように、下カバー2の片側の側板部23に、後向きに延び出たばね片26が内向き(横内向き)に切起し形成されている。これに対し、図10のように、上カバー3の片側の側板部33に外側へ膨らみ出た逃げ部36が形成されている。そして、図1〜図4で判るように、筐体1では、ばね片26が上記弾性片24,34の形成箇所の少し前側に位置し、かつ、逃げ部36がばね片26の外側に位置している。
【0019】
図1〜図4のように、筐体1内の片側にスライダ5がカード挿入方向(矢印A)の前後にスライド可能に収容されていると共に、このスライダ5が、上記ボディ4との間に介在されたコイルばねでなるばね42によって後退方向に向けて常時弾発付勢されている。図12のように、このスライダ5は前端側に近い箇所ほど筐体1の左右方向中央に近付く形状に湾曲した段付状の係合面51を有している。また、スライダ5の後端部にその後方に延び出る細長い杆体52が連結されている。この杆体52は、筐体1に備わっている上記弾性片24,34の開口25,35に嵌合可能な厚さを有している。図16〜図18のように、この杆体52の後端部に所定長さの幅狭部53が具備され、その幅狭部53の端部近傍箇所に上下一対の突起54,54が備わっている。そして、各突起54の後端面がカード挿入方向Aに対して直角をなす被係止部55として形成されていると共に、各突起54の前端面は前窄まりに傾斜したガイド面56として形成されている。さらに、図12及び図13のように、スライダ5には左右方向に貫通する角孔状の孔部57が備わり、この孔部57に、山形先端面61を備えた可動体6が左右方向出退自在に嵌合されている。しかも、上記孔部57に具備された段付部58と、可動体6に具備された段付部62とが係止することによって、可動体6が上記孔部57から筐体1の内方側へ抜け出さないようになっている。なお、可動体6の後端64には上記したばね片26の嵌合可能な凹溝63が備わっている。
【0020】
上記したスライダ5は、図1、図2及び図4に示されている待機位置と図3に示されている前進位置との間でカード挿入方向Aの前後にスライド可能である。そして、図1、図2及び図4のようにスライダ5が待機位置に位置しているときには、図示のように筐体1のばね片26が可動体6の凹溝63(図13参照)に嵌まり込んでその可動体6を筐体1の内方側へ弾発付勢している。このときには、スライダ5の孔部57の段付部58に可動体6の段付部62が係止して可動体6が筐体1の内方側へ抜け出さないように位置決めされている(図13参照)。このようにばね片26によって可動体6が筐体1の内方側へ弾発付勢されている状態は、スライダ5が待機位置に位置しているときだけでなく、スライダ5が待機位置の前方へ移動したときでも、ばね片26が可動体6に接触して弾圧している限り常に維持される。したがって、このばね片26による可動体6の弾発付勢状態は、スライダ5が待機位置と前進位置の手前側の中間位置との間の箇所に位置しているときに常に維持されるようになる。また、図3のようにスライダ5が前進位置に位置しているときには、可動体6がスライダ5と共に上記ばね片26よりも前側に移動していて、その可動体6の後端64が、筐体1の側板部の板面、すなわち下カバー2の側板部23の内面に対向し、その側板部23の内面によって筐体1の外方へ可動体6が後退することが阻止されるようになっている。したがって、この実施形態では、上記側板部23の内面が、スライダ5が前進位置に位置しているときに可動体6が後退することを阻止する支持部23a(図3参照)として形成されている。
【0021】
図1〜図4のように、筐体1の片側の側板部、すなわち下カバー2の側板部23と上カバー3の側板部33の後端部の内側と外側とに跨がって操作部材6が配備されていると共に、この操作部材7のばね受部71と筐体1の後端のばね受部13との間に引張りコイルばねでなるばね部材72が介在されていて、このばね部材72によって操作部材7がカード挿入方向Aの後方に向けて常時弾発付勢されている。図14のように、筐体1の内側に配備される操作部材7の端部73に作用部74が一体に形成されている。図15に示したように、この作用部74は楔形言い換えると先尖り形状に形成されている。図例では、図14のように内外一対の作用部74が操作部材7に備わっており、これら一対の作用部74が、筐体1に設けられている対称形状の上下一対の弾性片24,34の幅方向両端に各別に対応している。
【0022】
次に、カード100は、図2〜図4に示したように、前端片側のコーナ部分が湾曲面110に形成されていると共に、片側辺部に凹入部120が形成されている。そして、図1のようにスライダ5が待機位置に位置しているときに、カード100を筐体1の後端に形成されている挿入口15から図2の矢印Aのように挿入していくと、カード100の湾曲面110が可動体6をばね片26の弾性に抗してスライダ5の孔部57に押し込みながらその可動体6を乗り越えて図2のようにスライダ5の係合面51に係合する。すなわち、係合面51にその後方からのみカード100の湾曲面110が突き当たる。また、カード100の湾曲面110がスライダ5の係合面51に係合したときには、カード100の凹入部120の中に、ばね片26によって押圧された可動体6の山形先端面61が図2のように嵌入する。この状態では、カード100を後方へ強く引っ張ると、カード100が可動体6をばね片26の付勢に抗して押し込みながら後退してその凹入部120が可動体6の山形先端面61から抜け出るので、カード100を引き抜くことが可能である。この状態は、カード100がスライダ5に対して引抜き可能に仮固定されているだけのロック状態、すなわちハーフロック状態である。このようなハーフロック状態は、図2の状態からカード100をさらに挿入してスライダ5を上記した中間位置に押し込むまで持続する。
【0023】
そして、カード100の挿入によってスライダ5が中間位置を通り過ぎた後、スライダ5が前進位置に到達する。このときには、図3のように、カード100がカードセット位置で端子41に重なって端子41とカード100側の電極との電気的接続が行われる。また、可動体6は、同図のようにその後端64が筐体1の側板部の板面によって形成されている支持部23aに対向して可動体6の後退が阻止されている。したがって、このときにはカード100を後方へ強く引っ張ったとしても、カード100の凹入部120が可動体6の山形先端面61を乗り越えることができないので、カード100がスライダ5に対してフルロックされる。
【0024】
一方、スライダ5が上記した待機位置から前進位置まで押し込まれる過程では、スライダ5に連結されている杆体52も前進するので、当初、図16のように杆体52の幅狭部53を摺動自在に挾み付けていた上下の弾性片24,34を撓ませながら突起54,54がそれらの弾性片24,34の先端部を乗り越えて図17のように弾性片24,34の開口25,35に嵌まり込み、しかも、図3などに示したばね42の弾発力によって突起54,54の被係止部55が開口25,35の後側の口縁に係合する。このため、スライダ5の後退が、突起54,54の被係止部55と開口25,35の口縁との係合によって阻止され、しかも、カード100が上記のようにスライダ5に対してフルロックされているので、カード100を無理抜きすることができなくなる。なお、突起54,54が弾性片24,34の先端部を乗り越えるときには、突起54の前窄まりに傾斜したガイド面56がその乗り越え動作を円滑に行わせることに役立つ。
【0025】
ここで、突起54,54の被係止部55に係合する開口25,35の口縁は、突起54,54を係止する係止部25a,35aを形成している。また、弾性片24,34が係合体を構成し、その係合体の相手方である被係合体が上記突起54によって構成されている。
【0026】
上記セット位置に挿入されているカード100を排出するときには、図4の矢印Bのように操作部材7を前方へ押し込む。こうして操作部材7を押し込むと、それまでの常態時には弾性片24,34の後方でそれらに離間して対向していた作用部74が、図18のように上下の弾性片24,34と摺動しつつそれらの弾性片24,34の間に分け入り、それらの弾性片24,34を撓み変形させて押し拡げるので、突起54,54が弾性片24,34の開口25,35から抜け出る。このため、突起54,54の被係止部55,55と弾性片24,34の係止部25a,35aとが離脱して両者の係合が解除され、スライダ5がばね42の弾発力により図4のように待機位置まで後退してカード100がスライダ5にハーフロックされた状態になる。したがって、このときには、カード100を強く引っ張ってカード100を排出することが可能である。また、操作部材7は、上記のように押し込んだ後、ばね部材72の弾発力によって図1ないし図3に示されている元位置に復帰する。
【0027】
この実施形態において、上記した可動体6と、可動体6を突出方向に弾発付勢するばね片26によって形成されているばね体と、可動体6の後退を阻止する支持部23aとが、スライダ5に対してカード100をハーフロックしたりフルロックしたりするためのカードロック機構の構成要素になっている。また、上記した操作部材7と作用部74とばね部材72とが係合解除機構の構成要素になっている。
【0028】
この実施形態では、動作の安定性及び信頼性を高めるために係合体を形成している弾性片24,34や被係合体を形成している突起54,54を上下に各一対ずつ備えている。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、セット位置に挿入されたカードが前進位置に位置しているスライダにフルロックされ、しかも、前進位置に位置しているスライダが係合体と被係合体との係合によって後退不可能になるので、カードがセット位置から無理抜きされるという事態が起こり得ない。また、係合体と被係合体との係合を解除するための操作部材の作用部は、常態時に係合体と被係合体との係合箇所から離間した箇所に位置しているので、落下などの衝撃によっても係合体と被係合体との係合が解除されるという事態は起こりにくくなる。これらのことから、セット位置に挿入されているカードが無理抜きされたり衝撃によって不慮に排出されたりすることがなくなる。さらに、本発明によれば、部品点数をできるだけ増やさずに、カードの無理抜きが不可能になり、落下などの衝撃によってカードが不慮に排出されるような事態の起こらないように構成することのできるカードコネクタを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るカードコネクタのカード未挿入状態での概略水平断面図である。
【図2】 同カードコネクタのカード挿入途中での概略水平断面図である。
【図3】 同カードコネクタでカードがカードセット位置に挿入されている状態の概略水平断面図である。
【図4】 同カードコネクタで操作部材をプッシュ操作した直後の状態の概略水平断面図である。
【図5】 下カバーの概略平面図である。
【図6】 下カバーの要部拡大図である。
【図7】 図6のVII−VII線断面図である。
【図8】 下カバーの他の要部拡大図である。
【図9】 図8のIX−IX線断面図である。
【図10】 上カバーの概略平面図である。
【図11】 図10のXI−XI線断面図である。
【図12】 可動体が組み込まれたスライダの平面図である。
【図13】 図12のXIII−XIII線断面図である。
【図14】 操作部材の平面図である。
【図15】 図14のXV矢視による作用部の形状図である。
【図16】 図1及び図2での弾性片の状態や作用部の位置などを示した説明図である。
【図17】 図3での弾性片の状態や作用部の位置などを示した説明図である。
【図18】 作用部が弾性片の間に分け入った状態を示した説明図である。
【符号の説明】
1 筐体
5 スライダ
6 可動体
7 操作部材
15 挿入口
23a 支持部
24,34 弾性片(係合体)
25,35 開口
25a,35a 開口の後側の口縁(係止部)
26 ばね片
42 コイルばね
52 杆体
53 幅狭部
54 突起(被係合体)
55 突起の後端面(被係止部)
56 ガイド面
57 孔部
58 段付部
61 山形先端面
62 段付部
64 可動体の後端
72 引張りコイルばね
74 作用部
100 カード
120 凹入部
Claims (1)
- 偏平な箱形に形成されていて、後端にカードの挿入口が形成されている筺体と、上記筺体の片側に収容され、筺体の挿入口から挿入されてきたカードが後方側からのみ係合する待機位置と筺体内でのカードセット位置に対応する前進位置との間で前後にスライド可能なスライダと、上記スライダを後退方向に常時弾発付勢するコイルばねと、上記スライダと上記筺体とに振り分けて具備され、カードが上記セット位置まで挿入されたときに互いに係合してスライダの後退を阻止する係合体及び被係合体と、上記スライダが待機位置に位置しているときには、そのスライダに係合しているカードをハーフロックすることによってそのカードをスライダに対して引抜き可能に仮固定し、かつ、上記スライダがその前進位置に位置しているときには上記セット位置に挿入されたカードをフルロックしてそのスライダからのカードの後退を阻止するカードロック機構と、上記係合体及と被係合体との係合を解除する係合解除機構と、を備えたカードコネクタにおいて、
上記カードロック機構は、スライダに左右方向に貫通して備わる孔部に左右方向出退自在に嵌合され、孔部に具備された段付部と突出方向で係止する段付部が具備されると共に、カードの片側辺部に形成されている凹入部に嵌入する山形先端面を備えた可動体と、上記筺体の片側の側板部に内向きに切起こし形成され、スライダが待機位置に位置しているときに上記可動体を筺体の内方側へ弾発付勢し、孔部の段付部に可動体の段付部が係合して孔部から筺体の内方側へ可動体の山形先端面が突出する位置にその可動体を位置決めするばね片と、スライダが前進位置に位置しているときに上記可動体の後端が対向する筺体の側板部の板面によって形成されている支持部とで構成され、スライダが待機位置に位置しているときに、筐体の挿入口から挿入されたカードが、可動体をばね片の弾発付勢力に抗してスライダの孔部に押し込みながらその可動体を乗り越えてスライダに係合したとき、カードの凹入部の中に、ばね片の弾発付勢力によって可動体の山形先端面が嵌入することによって、カードを後方へ引っ張ると、カードが可動体をばね片の弾発付勢力に抗してスライダの孔部に押し込みながら後退してカードの凹入部が可動体の山形先端面から抜け出て、カードを引き抜くことが可能な仮固定状態に、カードをスライダに対してハーフロックすると共に、スライダがカードの挿入によりコイルばねの弾発付勢力に抗して待機位置から前進位置に押し込まれたときには、可動体の後端が上記支持部に対向して、その支持部が可動体の後退を阻止することによって、カードを後方へ引っ張ったとしても、カードの凹入部が可動体の山形先端部を乗り越えることができず、カードセット位置に挿入されたカードのスライダからの後退を阻止する状態に、カードをスライダに対してフルロックし、
上記スライダの後端部に連結されてスライダの後方に延び出ていて、後端部に所定長さの幅狭部が具備され、その幅狭部の端部近傍箇所に幅広の突起が備わっており、その突起の後端面がカード挿入方向に対して直角をなし、突起の前端面が前窄まりに傾斜したガイド面に形成されている杆体と、上記筐体の下板部と上板部にそれぞれ内向きに切起こし形成されて、筐体の左右方向片側において上下方向で対向していて、筐体の左右方向片側において上下方向で対向する開口が具備され、スライダが待機位置に位置しているときに、上記杆体の幅狭部を摺動自在に挾み付ける上下の弾性片とを備え、上記被係合体が上記杆体の突起でなり、その突起の上記後端面を被係止部として備える一方、上記係合体が上記上下の弾性片でなり、その弾性片の開口の後側の口縁を係止部として備えており、スライダがカードの挿入によりコイルばねの弾発付勢力に抗して待機位置から前進位置に押し込まれる過程で、上下の弾性片を撓ませながら上記杆体の突起がそれらの弾性片の先端部を上記ガイド面を介して乗り越えて、弾性片の開口に嵌まり込み、上記コイルばねの弾発付勢力によって上記突起の後端面が上記開口の後側の口縁に係合することによって、前進位置に押し込まれた上記スライダの後退を、上記カードロック機構によりカードがそのスライダに対してフルロックされているその前進位置で上記コイルばねの弾発付勢力に抗して阻止し、
上記係合解除機構は、上記筺体の片側の側板部に配設され、前方に向けて押込み操作される操作部材と、この操作部材を後方に向けて常時弾発付勢する引張りコイルばねと、上記筺体の内側に配備される上記操作部材の端部に備わり、操作部材が押込み操作されない常態時に上記上下の弾性片の後方でそれらの間に離間して対向する先尖り形状に形成された作用部とを備え、上記セット位置に挿入されているカードを排出するときに、上記操作部材を引張りコイルばねの弾発付勢力に抗して前方へ押込むことにより、上記作用部が、上下の弾性片の間に分け入り、それらの弾性片を撓み変形させて押し拡げて、上記突起を弾性片の開口から抜け出させ、上記突起の後端面と上記開口の後側の口縁とを離脱させて両者の係合を解除することを特徴とするカードコネクタ。
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