JP3796005B2 - マスク装置及び成膜装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相堆積)プロセスにおいて半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)等の基板の外周部分に成膜されない領域を形成する技術に関する。なお、本明細書ではこの技術をマスキングと称している。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造のCVD法を用いた成膜工程においては、様々な理由からウェハの外周部分に成膜されない領域を形成することが望まれている。例えば、CVDプロセスによりウェハ全面にアルミニウムやタングステン等の薄膜を形成した後、ウェハ表面の平坦化のためにCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)プロセスを行うと、ウェハの端面及び外周縁の面取り部分、いわゆるベベル部分の薄膜が剥離してパーティクルの発生源となる恐れがある。従って、ウェハの外周部分をマスキングすることが望ましい。これに対して、1枚のウェハから製品、すなわち半導体デバイスのチップを可能な限り多く取りたいという要請もある。かかる要請からは、マスキングする領域を極力小さくすること、具体的にはマスキング領域のマスク幅(端面からの径方向寸法)を約1.5mm以下とすることが望まれる。
【0003】
従来のマスキング手段としては、シャドウリングをウェハの外周部分に載置して、接触部分の成膜を防止するというものがある。この手段で用いられるシャドウリングは、真空チャンバの内壁に設けられたアダプタリングの内側に単に嵌合されているのが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のシャドウリングにおいては、アダプタリングに対して隙間をもって嵌合されるため、両者間に相対的な位置ずれが生ずることがある。このため、3mm以上のマスク幅には対応可能であるが、マスク幅が1.5mm以下となると、再現性が悪いという問題点があった。また、シャドウリングが半導体ウェハに接していると、形成される薄膜の膜質特性がシャドウリングとの境界部で不安定となるという問題もある。
【0005】
ところで、図7に示すように、ウェハWは、ブレード1と呼ばれる搬送用プレートに載せて搬送され、処理チャンバ内の基板支持体であるペディスタルの上面に移載される。従来一般のブレード1のウェハ載置部分2は凹部となっており、この凹部2の側面3は底面に対して直角となっている。このようなブレード1の凹部2内にウェハWを置くためには、ウェハWの寸法に誤差があることから、凹部2の側面3とウェハWとの間に間隙を設けておく必要があった。この間隙によって生じ得るウェハWとブレード1との間の位置ずれは極く僅かであり、ペディスタルに移載されたときも僅かな位置ずれが生じるが、これも微細なマスキングを困難とする要因となっていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ウェハのような基板に対して微細なマスキングを再現性よく行うことのできる手段を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、成膜処理を行う処理チャンバと、この処理チャンバ内で非成膜処理時には下降され、成膜処理時には上昇される基板支持体とを有する成膜装置において用いられる、基板支持体上に支持された基板の外周部分の成膜を抑制するマスク装置であって、前記基板の外周部分の上方を覆うためのシャドウリングと、非成膜処理時にシャドウリングを処理チャンバ内の所定の位置に配置する位置決め手段とを備えているマスク装置を特徴としている。位置決め手段としては、非成膜処理時にシャドウリングを支持する3個の位置決め部材と、位置決め部材が嵌合されるようシャドウリングに形成された嵌合部分とからなり、嵌合部分の側面の一部が位置決め部材の側面の一部と接するよう構成されているものが考えられる。
【0008】
このように、本発明によるマスク装置のシャドウリングは、3つの位置決め部材に接触状態で嵌合される嵌合部分を有しているため、位置決め部材に対して一定の位置に配置される。この位置は、成膜処理時に基板支持体が上昇され、シャドウリングが基板支持体により持ち上げられ支持されても、高温、真空下におけるシャドウリングと基板支持体間の充分な摩擦によって維持される。また、シャドウリングが基板支持体により持ち上げられている時に、突発的な事故によりシャドウリングがずれた場合も、位置決め部材が嵌合部材に嵌合されているので、ずれ量は最小に制限され、基板支持体の下降により正規の位置に戻る。従って、シャドウリングは基板支持体上の基板に対して一定の位置に高精度に配置され、マスク幅が変動することがなくなる。
【0009】
なお、位置決め部材は円錐形の頭部を有するピンとし、シャドウリングの嵌合部分をシャドウリングの径方向に延びる長穴とすることが、シャドウリングの熱膨張を補償することが可能となるので、好ましい。
【0010】
また、位置決め部材及び嵌合部分は、こすれによるパーティクル発生が基板表面に及ぼさないように、且つ、基板支持体に加熱手段が設けられている場合には、その熱による副生成分の成長や高温による摩擦の増大を防止するために、基板支持体上で支持された基板の径方向外方に所定の距離をおいて配置されることが必要である。
【0011】
更にまた、成膜処理時、シャドウリングが基板支持体上の基板から所定の間隙をもって配置されるよう構成されるのが有効である。この場合、シャドウリングの接触による膜質特性の劣化、及び基板間(wafer to wafer)の特性の不安定化を防止できる。
【0012】
成膜装置がCVD装置であり、基板支持体の上方に、処理ガスを供給するためのガス分配プレートが設けられている場合には、シャドウリングの上面は、ガス分配プレートからの処理ガスを円滑に外方に流すように流線形をなすよう形成することが好適である。この場合、シャドウリングの内周部分の上面と、前記基板支持体の上面とのなす角度が45度以下とすることが、より効果的である。
【0013】
このように、処理ガスの流れを円滑化することで、成膜すべき部分の膜厚の一定化を図ることが可能となり、ひいては基板外周部の膜終端部を厚さ方向に急峻に立ち上げることができる。
【0014】
また、成膜装置がCVD装置であり、基板支持体の上方に、処理ガスを供給するためのガス分配プレートが設けられている場合において、マスク装置は、成膜処理時、シャドウリングが基板支持体上の基板から所定の間隙をもって配置されるよう構成され、また、基板支持体上の基板の外周部分にガス分配プレートからの処理ガスが接するのを抑制するパージガスを流すよう、基板支持体に形成されたパージガス流路を備えていることを特徴としている。パージガスを流すことで、シャドウリングと基板との間の間隙から処理ガスが基板外周部に流入するのを防止し、マスキング効果を一層向上させることができる。
【0015】
更に、基板を搬送するための搬送装置において、基板を受けて支持する凹部が形成されていると共に水平方向に移動されるブレードを設け、前記凹部の側面の一部が基板の外縁部を支持する傾斜面とし、この傾斜面により支持された基板の他側の部分が凹部の側面に当接するようにしたことを特徴としている。これにより、基板はブレードに対して常に一定の位置とされ、従ってこのような基板がブレードから基板支持体に移載されても基板支持体に対して一定の位置関係となる。これは、シャドウリングの位置決め効果と相まって、マスク幅を一定するものである。ブレードの材質は、従来のアルミ合金に対して熱膨張、熱変形の影響が本技術において無視できる程小さいアルミナ等のセラミックから選択されることが好適である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明が適用された成膜装置であるCVD装置の内部構成が示されている。このCVD装置は、処理チャンバ10と、処理チャンバ10内に配置された円板状のウェハ支持用ペディスタル(基板支持体)12と、ペディスタル12の上方に配置されたガス分配プレート14とを備えている。図示のCVD装置のチャンバ構造は、具体的には、本願出願人であるアプライド・マテリアルズ・インコーポレイテッドから製造、販売されている商標「WXZチャンバ」を基本構造するものである。
【0018】
ガス分配プレート14は、中空のプレートであり、その下面には処理ガスを噴出するための噴出口16が多数形成されている。従って、処理チャンバ10外のガス供給源(図示しない)からこのガス分配プレート14内に所定の処理ガスが供給されると、その処理ガスはガス分配プレート14の噴出口16からペディスタル12上のウェハWに向かって噴出されることとなる。
【0019】
ペディスタル12の上面にはウェハWが載置され、ペディスタル12上面に設けられた静電チャック或は真空吸着手段等の適当な保持手段によって保持されるようになっている。また、ペディスタル12は、保持されたウェハWを加熱するためのヒータとしても機能し、内部には加熱素子(図示しない)が設けられている。
【0020】
このペディスタル12は、処理チャンバ10の底部を貫通して垂直方向に延びる支持脚18の上端に設けられている。この支持脚18は昇降機構(図示しない)により昇降可能となっており、これにより、ペディスタル12は、ガス分配プレート14の近傍の処理位置(図1に示す位置)と、ウェハWの交換を行う非処理位置との間で昇降される。
【0021】
また、ペディスタル12の下側にはリフトプレート20が配設されており、このリフトプレート20は、処理チャンバ10の底部を貫通する支持軸22に接続されている。リフトプレート20は、ペディスタル12の貫通孔に垂下された複数本、図示実施形態では4本のリフトピン24をペディスタル12に対して相対的に押し上げることができるようになっている。
【0022】
処理チャンバ10の側壁には、ウェハWを処理チャンバ10内に搬入し或は処理チャンバ10内から搬出するための開口26が設けられており、この開口26はバルブ(図示しない)により気密に閉じられるようになっている。
【0023】
ウェハWの搬入・搬出は、処理チャンバ10の外部に設けられた周知のウェハ搬送装置により行われる。このウェハ搬送装置は、ウェハWが載置されるブレード28を水平方向に駆動する機構を備えており、ブレード28に載置されたウェハWを処理チャンバ10の開口26から出し入れすることができるよう構成されている。開口26から挿入されたブレード28は、非処理位置に下げられたペディスタル12の上面よりも上方の位置に達する。従って、ペディスタル12及びリフトピン24を下げた状態で、ブレード28にウェハWを載せて開口26から処理チャンバ10内に挿入し、次いでリフトピン24を上昇させると、ウェハWはリフトピン24上に移載される。そして、ブレード28を処理チャンバ10から引き抜くと共に、リフトピン24を下げると、ウェハWはペディスタル12の上面に置かれる。この逆の手順で操作することにより、ペディスタル12上のウェハWをブレード28上に載せ変えることが可能となる。
【0024】
ここで、図2を参照する。図2は、本発明に従って構成されたブレード28の構成を示している。ブレード28は、その先端部及び末端部に円弧状の隆起部30,32が形成されており、これらの隆起部30,32の間がウェハWを受け入れるための凹部となっている。末端側の隆起部32の側面34は傾斜面となっている。この傾斜面34は、ウェハWを凹部に配置した場合、ウェハWの外周下縁の一部を支持する。従って、ウェハWの端面の他側の部分は先端側の隆起部30の側面に押し付けられた状態で支持される。この結果、ブレード28に多少の振動が生じても、或は、ウェハWの径に製造誤差があっても、ウェハWの外周縁の少なくとも一部(先端側隆起部30の側面に接する部分)はブレード28に対して常に一定の位置に置かれることとなる。従って、ウェハWは、このようなブレード28からペディスタル12上に移載された時も、先端側隆起部30との接触部分を基準として高精度にペディスタル上面の所定のウェハ支持エリアに配置されることとなる。
【0025】
なお、ブレード28は熱膨張や熱変形の極めて少ないセラミック、好ましくはアルミナから構成し、帯電を防止するために炭化ケイ素をコーティングしたものが好ましい。また、少なくともウェハと接触する部分は、こすれによるパーティクル発生を防止するために、鏡面仕上げが施されていることが好適である。図2において、符号35は、センサ検出のための切欠き部分である。更に、ウェハWをペディスタル12上に載せ変える時に、万が一ウェハWが位置ずれした場合、その位置を修正するために、バンパと呼ばれる略扇形の小片を複数個、ペディタスル12の外周部に周方向等間隔に設けておくことが好ましい(図3の符号51を参照)。このバンパ51の内側縁部には、ウェハWが位置ずれを生じた場合に当該ウェハWをペディスタル12上の所定の位置に落とし込むよう、テーパが形成されている。
【0026】
図1及び図3に示すように、ペディスタル12の外周部分には、環状のパージガス流路36が形成されている。このパージガス流路36の上端は、ウェハ支持エリアの外周で開放されている。また、パージガス流路36は、ペディスタル12の内部で放射状に延びる複数本の放射パージガス流路38と連通しており、更にこの放射パージガス流路38は支持脚18内のパージガスチューブ40を介して外部のパージガス供給源(図示しない)に接続されている。パージガス供給源からパージガスを供給すると、そのパージガスはパージガスチューブ40、放射パージガス流路38、パージガス流路36を経て均等に分配され、ペディスタル12上に配置されたウェハWの外周部分に均等に吹き付けられる。このパージガスにより、処理ガスはウェハWの外周部分に到達し難くなり、ウェハWの外周部分での成膜が抑制されることとなる。
【0027】
処理チャンバ10の側壁の上部内壁面には、内方に突出する棚部42が形成されており、その上には円形且つ環状のアダプタリング44が取り付けられている。アダプタリング44は、処理位置のペディスタル12を囲むように配置されている。図4にも示すように、アダプタリング44には3本の位置決め用のピン46が垂直に取り付けられている。これらのピン46は同一形状であり、ペディスタル12の中心、より詳細にはウェハ支持エリアの中心Cから同一の距離をもって配置され、且つ、周方向において互いに等間隔に、すなわち120度の間隔で配置されている。ピン46の頭部47は切頭円錐形をなしている。
【0028】
アダプタリング44上には、ウェハWの外周部分をマスキングするための円形且つ環状のシャドウリング48が配置されている。シャドウリング48の内径はウェハWの外径よりも小さく、その差は所望のマスク幅とほぼ一致している。また、シャドウリング48の外周縁には径方向外方に突出する突出部49が一体的に設けられている。この突出部49は、周方向に等間隔に3箇所設けられている。突出部49の先端は、概ね、アダプタリング44の外周縁まで達している。
【0029】
このようなシャドウリング48の各突出部49には、径方向に延びる長穴50が形成されている。長穴50は周方向において互いに等間隔(120度間隔)に配置されている。各長穴50の幅は、ピン頭部47の所定高さ位置での外径と等しい大きさとされている。また、各長穴50は、アダプタリング44上の対応のピン頭部47を嵌合できる位置に形成されている。従って、各長穴50に対応のピン頭部47が嵌合するようにシャドウリング48を置くと、ピン頭部47の側面と長穴50の径方向側面の下縁とが接してシャドウリング48の水平方向の動きを拘束する。長穴50及びピン46はそれぞれ120度間隔であるので、シャドウリング48は、3本のピン46が画す三角形の重心Cと同軸に配置され、ひいてはペディスタル12と同軸に配置される。
【0030】
なお、長穴50とピン46とは、ペディスタルの外周縁よりも充分に離れた位置に配置されているので、長穴50とピン46の接触やこすれにより発生され得るパーティクルがウェハWの表面に影響を与えることはない。また、ペディスタル12内の加熱素子から発生される熱による副生成分がこれらの長穴50やピン46で成長したり、高温により摩擦が増大したりすることもない。
【0031】
ペディスタル12が非処理位置に下がっている状態では、シャドウリング48はピン46の頭部47に接した状態となっているが、成膜処理時、ペディスタル12がウェハWを載せた状態で処理位置まで上昇されると、ペディスタル12の最外周部分がシャドウリング48の下面を押し上げて、シャドウリング48はペディスタル12により支持される。この際、ペディスタル12は正確に垂直方向に上昇するため、シャドウリング48の水平方向の位置は変動せず、ペディスタル12に対する同軸状態は維持される。前述したように、ウェハ搬送装置の特殊形状のブレード28により、ウェハWはペディスタル12の上面の所定位置に高精度に配置されるため、シャドウリング48は、ペディスタル12により支持された後も、ペディスタル12上のウェハWに対して一定の位置関係となり、シャドウリング48により覆われるウェハWの部分も所望の幅dで保たれる。
【0032】
また、シャドウリング48がペディスタル12により支持されている際、長穴50内にピン46の頭部47の一部が挿入された状態に保たれる。特に、図示実施形態では、ピン頭部47上には上方に延びる延長部分47´が一体的に設けられているので、ピン46が長穴50から抜けることはない。従って、この状態で何等かの突発的な事故によりシャドウリング48が位置ずれを起こしても、シャブトリング48の最大ずれ量はピン頭部47と長穴50の内面との間の隙間分だけとなる。そして、この位置ずれも、ペディスタル12を下げてシャフドリング48をピン頭部47で再度支持させることにより、正規の位置に修正される。
【0033】
図3に明示するように、シャドウリング48は、ペディスタル12により支持されている状態において、ウェハWに対して非接触状態に配置され、シャドウリング48の内周縁下面と半導体ウェハの上面との間に適当な間隙tが形成されている。この間隙tはパージガス流路36からのパージガスの出口となるものである。但し、この間隙tが過度に大きいと、パージガスの流速が低下して、マスキング効果が低減する。一方、間隙tが小さすぎると、パージガスの流速が増し、シャドウリング48の内周縁に隣接する部分の膜が乱される。このため、ウェハWとシャドウリング48の内周縁との間の間隙tは、種々の条件から適当な大きさに定める必要がある。この間隙tの大きさを定める方法については後述する。
【0034】
また、シャドウリング48とペディスタル12の最外周部分との接触により、パージガスはシャドウリング48とウェハWの端面との間のみを通ってチャンバ10内に排出され、シャドウリング48とペディスタル12との間からは排出されない。これにより、最小限のパージガスで最大限のマスキング効果が得られる。パージガスの流量を低減することは、成膜の均一性に有効に作用する。
【0035】
シャドウリング48の厚さ(ウェハWの表面からの高さ)は可能な限り薄くされており、表面はいわゆる流線形に形成されている。更に、シャドウリング48の内周縁部の上面の角度θはウェハWの表面に対して45度以下、好ましくは40度以下とされている。これは、ガス分配プレート14からウェハW上に吹き付けられた処理ガスを円滑に径方向外方に導き、処理ガスがウェハW上に滞るのを防止するためである(図3の中抜き矢印を参照)。この形状は特に供給律速領域での成膜モードに有効である。供給律速領域の成膜モードは、配線膜等のためにウェハ全面に成膜するモードであり、処理ガスをウェハ全面に均一に分配することが重要となるからである。勿論、処理ガスよりも温度が問題となる反応律速領域による成膜モードにも、このシャドウリング48は適応する。
【0036】
ここで、上記構成のマスク装置44,46,48を有するCVD装置及びウェハ搬送装置を用いて8インチ径のシリコンウェハWにタングステン膜を実際に成膜した実験結果について述べる。
【0037】
この実験では、次プロセスとしてCMPプロセスが行われることを想定し、ウェハ端面(図5及び図6の符号Dで示すベベル部)に成膜しないこと(第1条件)、端面から径方向3mmの位置(図6の一点鎖線で示す位置)で膜厚が中心部の膜厚の90%以上であること(第2条件)、端面から径方向5mmの位置(図6の二点鎖線で示す位置)での膜厚の均一性が±5.0%以下であること(第3条件)、を満たすことを目標とした。また、この実験では、図6に示すように、外周部にノッチ52が形成されているウェハWを使用した。このノッチ52の深さは約1.3mmであり、このノッチ52の隣接部分(約0.2mm幅)にも成膜がされないことも条件とした。なお、ウェハWには、図5に示す如く、タングステン膜54の下地膜としてチタン膜56、窒化チタン膜58が形成されているものとする。
【0038】
タングステン膜54の成膜自体は従来から知られている方法で行われた。すなわち、ウェハ搬送装置のブレード28によりウェハWを処理チャンバ10内に搬入し、ペディスタル12上の所定のウェハ支持エリアに移載した後、処理チャンバ10内を所定の真空度に減圧した。その後、処理ガスとしてタングステンヘキサフルオライド(WF6)及びシラン(SiH4)をガス供給源からガス分配プレート14を経て、処理チャンバ10内に導入した。そして、ペディスタル12を加熱して熱化学反応によりブランケットタングステン膜54を形成した。
【0039】
まず、シャドウリング48として、ウェハWの外周部分との重なり合う部分の径方向寸法dが1.0mmとなり、ウェハWとの間隙tが0.6mmとなるものを用いた。この場合、ベベル部Dに成膜しないという第1条件を満たすためには、パージガスの総流量が3000sccm以上とすることが必要であった。そして、パージガスの総流量を3000sccmとして成膜を行った結果、形成されたタングステン膜54の膜際が著しくパージガスの影響を受け、端面から3mmの位置での膜厚が中央部の膜厚の90%未満となっていた。
【0040】
次に、ウェハWの外周部分との重なり合う部分の径方向寸法dが1.0mmで、ウェハWとの間隙tが0.3mmとなるシャドウリング48を用いた。この場合、ノッチ52の一部がシャドウリング48で覆われていないため、ノッチ52から漏出するパージガスの流速が大きくなり、ノッチ52の隣接部分での成膜状態が悪化する結果となった。
【0041】
更に、ウェハWの外周部分との重なり合う部分の径方向寸法dが1.5mm、ウェハWとの間隙tが0.3mmとなるシャドウリング48を用いた。この場合、ノッチ52はシャドウリング48で完全に覆われる。また、ベベル部Dに成膜しないためには、パージガスの総流量は1200sccmですんだ。そして、得られたタングステン膜54は、第2及び第3条件も満たし、更に、シャドウリング48はウェハWに対して非接触であるので、タングステン膜54の膜際特性も良好であった。
【0042】
この結果から、マスキングを伴う成膜の条件を定めるに当たっては、ウェハWとシャドウリング48との間の間隙t、重なり合う部分の径方向寸法d、パージガスの流量を調整することで、最適な成膜条件を見いだすことが可能となることが判った。この知見に基づき、ウェハWにオリエンテーションフラットがある場合も成膜及びマスキングの最適化を図ることができることも、当業者ならば理解されよう。
【0043】
また、上記実験をそれぞれ複数枚のウェハについて行ったが、いずれの場合もほぼ同等の結果が得られた。これは、ブレード28によるウェハの位置合わせが高精度であること、及びシャドウリング48がペディスタル12に対して常に一定の位置に置かれることによるものと考えられる。
【0044】
ところで、本発明はCMPプロセスが後に行われる場合のマスキングのみならず、近年運用化が進んでいるロングスロースパッタリング(Long Throw Sputtering)に対しての利用も可能である。
【0045】
ロングスロースパッタリングは、ウェハの表面とターゲットとの距離を長くし、より多くの垂直成分をウェハに堆積させることで埋め込み性の向上を図るPVD技術である。この技術によりウェハの全面に成膜されたチタン膜56/窒化チタン膜58では、図5に示すように、ウェハWのベベル部において窒化チタン膜58がチタン膜56を被覆しきれずに一部のチタン膜56が露出することがある。チタンとタングステンとの密着性は悪いため、この露出チタン部分にタングステンを成膜することは不可能といえる。この場合、タングステン膜54の成膜後、エッチバックすると、窒化チタン膜58の表面荒れ等の不具合が生じる懸念がある。
【0046】
このような場合に、本発明を適用し、タングステン成膜時にマスク幅Dを微細にすることで、窒化チタン膜58の露出部分を最小限に抑え、且つ、チタン膜56上への成膜を回避することが、有効となる。このことは、本発明によるシャドウリング48及びブレード28がマスク幅を微細にでき且つ任意に設定できることから可能となるものである。
【0047】
なお、上記実施形態において本発明によるブレード28をCVD装置との関連で用いることとしているが、PVD装置におけるウェハ搬送装置のブレードとしても有効に利用することができる。
【0048】
また、上記実施形態では、切頭円錐形頭部47を有するピン46をアダプタリング44上に取り付けているが、処理チャンバ10の壁面に直接取り付けてもよい。また、ピン46をシャドウリング48に取り付け、長穴50若しくはV型の溝をアダプタリング44に形成する形を採っても、同様な効果が得られる。
【0049】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、シャドウリングをペディスタル等の基板支持体に対して常に一定の位置関係で配置することができるので、マスク幅が一定に維持される。従って、シャドウリングの位置ずれによるマスク幅の精度低下はなく、0.5〜1.5mmの微細なマスク幅も得ることができる。
【0050】
また、搬送装置のブレードも上述の如く基板の位置合わせの精度向上に寄与し、これによっても微細なマスク幅を得ることが可能となっている。
【0051】
更に、シャドウリングの形状及びパージガスとの相互作用により、処理ガスの基板外周部分への到達を制御することができ、マスキング及び成膜の最適化を容易に図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたCVD装置の概略図である。
【図2】(A)は本発明による搬送装置のブレードを示す平面図であり、(B)はその断面図である。
【図3】本発明によるマスク装置の構成要素を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明によるマスク装置を示す平面図である。
【図5】ウェハ上での成膜状態を概略的に示す断面部分図である。
【図6】ノッチ付きのウェハと成膜状態を概略的に示す平面部分図である。
【図7】(A)は従来のブレードを示す平面図であり、(B)はその断面図である。
【符号の説明】
10…処理チャンバ、12…ペディスタル(基板支持体)、14…ガス分配プレート、28…搬送装置のブレード、30,32…隆起部、34…側面(傾斜面)、36…パージガス流路、44…アダプタリング、46…ピン、47…切頭円錐形の頭部(位置決め手段)、48…シャドウリング、50…長穴(位置決め手段)、52…ノッチ、D…マスク幅、W…ウェハ(基板)。
Claims (10)
- 成膜処理を行う処理チャンバと、前記処理チャンバ内で非成膜処理時には下降され、成膜処理時には上昇される基板支持体とを有する成膜装置において、前記基板支持体上に支持された基板の外周部分の成膜を抑制するマスク装置であって、
前記基板の前記外周部分の上方を覆うシャドウリングと、
非成膜処理時に前記シャドウリングを前記処理チャンバに対して一定の位置に配置する位置決め手段と、
を備え、成膜処理時に、前記シャドウリングは前記基板支持体に支持され該シャドウリング内周縁下面と前記基板上面との間に所定の間隙を有して前記基板に非接触に配置されることを特徴とする、マスク装置。 - 前記位置決め手段は、前記処理チャンバ内に取り付けられ、非成膜処理時に前記シャドウリングを支持する3個の位置決め部材と、前記位置決め部材が嵌合されるよう前記シャドウリングに形成された嵌合部分とを備え、前記嵌合部分の側面の一部が前記位置決め部材の側面の一部と接するよう構成されている、請求項1に記載のマスク装置。
- 前記位置決め部材及び前記嵌合部分は、前記基板支持体上で支持された基板の径方向外方に所定の距離をおいて配置されている、請求項2に記載のマスク装置。
- 前記位置決め部材は円錐形の頭部を有するピンであり、前記嵌合部分は前記シャドウリングの径方向に延びる長穴であり、前記長穴の幅は前記ピンの前記頭部の最大外径よりも小さくされている、請求項2又は3に記載のマスク装置。
- 成膜処理を行う処理チャンバと、
前記処理チャンバ内で非成膜処理時には下降され、成膜処理時には上昇される基板支持体と、
前記基板支持体上に支持された基板の外周部分の成膜を抑制すべく前記基板の前記外周部分の上方を覆うシャドウリングと、
非成膜処理時に前記シャドウリングを前記処理チャンバに対して一定の位置に配置する位置決め手段と、
を備え、成膜処理時に、前記シャドウリングは前記基板支持体に支持され該シャドウリング内周縁下面と前記基板上面との間に所定の間隙を有して前記基板に非接触に配置されることを特徴とする、成膜装置。 - 前記位置決め手段は、前記処理チャンバ内に取り付けられ、非成膜処理時に前記シャドウリングを支持する3個の位置決め部材と、前記位置決め部材が嵌合されるよう前記シャドウリングに形成された嵌合部分とを備え、前記嵌合部分の側面の一部が前記位置決め部材の側面の一部と接するよう構成されている、請求項5に記載の成膜装置。
- 前記位置決め部材及び前記嵌合部分は、前記基板支持体上で支持された基板の径方向外方に所定の距離をおいて配置されている、請求項6に記載の成膜装置。
- 前記位置決め部材は円錐形の頭部を有するピンであり、前記嵌合部分は前記シャドウリングの径方向に延びる長穴であり、前記長穴の幅は前記ピンの前記頭部の最大外径よりも小さくされている、請求項6又は7に記載の成膜装置。
- 前記基板支持体の上方に、処理ガスを供給するためのガス分配プレートが設けられており、成膜処理時、前記基板支持体上の前記基板の外周部分に前記ガス分配プレートからの処理ガスが接するのを抑制するパージガスを流すよう、前記基板支持体に形成されたパージガス流路を備えている、化学気相堆積装置である請求項5〜8のいずれか1項に記載の成膜装置。
- 前記シャドウリングは前記基板支持体に接し、もって該シャドウリングと前記基板支持体との間から前記チャンバ内へ前記パージガスが排出されないようにしている、請求項9に記載の成膜装置。
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