JP3795988B2 - パイプルーフの構築方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パイプルーフを構築する方法に関し、特に、地下水が発進立坑側に流入することを防止すると共に複数の推進管を推進してパイプルーフを構築する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
土手や道路或いは鉄道線路の盛土を横断してトンネルを構築するような場合、外周又は内周に継手を形成した推進管を前記盛土を横断する方向に推進して埋設し、既に埋設した推進管に隣接させて新たな推進管を配置すると共に、該新たな推進管の継手を既に推進された推進管の継手に係合させて推進して順に埋設することで、互いに継手を介して接続すると共に埋設された複数の推進管によって地盤を支持する所謂パイプルーフを構築することが行われている。
【0003】
パイプルーフを構築する際に用いられる推進管は、外周又は内周の所定位置にに形成された全長にわたる一対の継手を有している。この継手は、推進管の外周に溶接されたT形鋼からなる雄継手と、同様に推進管の外周に2本の山形鋼をフランジを向き合わせて溶接した雌継手とからなるのが一般的である。しかし、最近では、内周面に溝形鋼のフランジを溶接すると共に該フランジ間に対応する推進管にスリットを形成して雌継手としたような推進管(実公平8-3515号)も提供されている。
【0004】
パイプルーフを構築する場合、発進側には土留め壁が形成されており、推進管を推進する都度、土留め壁には推進管の径よりも継手の分だけ大きい径を持った穴が連続的に形成される。即ち、土留め壁は推進管の推進部位で分断されることになり、特に、推進管よりも上部の土留めが不安定になる虞が生じる。
【0005】
一方、最近では地下水が存在するような地中にパイプルーフを構築することを要求されることが多くなっている。この場合、推進管に形成された継手が樋の機能を果して地下水が発進立坑に流入するという問題が生じる。
【0006】
このため、本件出願人は上記各問題を解決し得る技術を開発して特許出願している。例えば、特許第2529644 号公報に開示された技術は、掘進機及び推進管を推進する都度、推進すべき部位の周囲に型枠を構成し、この型枠に掘進機を配置して該掘進機の周囲に推進管の継手に対応させた部材と弾性変形可能な部材を配置した後、コンクリートを打設して上下の土留め壁を一体化すると共に弾性変形可能な部材が掘進機及び推進管の周囲から発進立坑に対する地下水の流出を防止し得るように構成している
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記発明であっても未だ完全なものではなく、1本の推進管を推進した後、この推進管に隣接させて新たな推進管を推進する場合、新たな推進管を連接する側の型枠を撤去して継手のみを露出させ、該継手に新たな推進管の継手を係合させているが、係合させた継手の接合部位のシールが困難であり、該接合部位を通って地下水が発進立坑に流入するという問題が生じている。
【0008】
本発明の目的は、発進立坑に対する地下水等の流入を防止することが出来るパイプルーフの構築方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係るパイプルーフの構築方法は、長手方向の全長にわたって継手部を形成した複数の推進管を前記継手部を互いに係合させて平行に地中に敷設してパイプルーフを構築するための方法であって、発進立坑の土留め壁に於ける推進管を推進すべき位置に推進管の径よりも大きい径を持った穴を形成する鏡切り工程と、前記鏡切りされた部位の周囲に左右両側面と底面からなる枠を固着する枠付け工程と、前記鏡切りされた穴に対向させて元押し装置を設置すると共に該元押し装置に装着した掘進機の先端部分を前記穴に挿入する機械設置工程と、前記掘進機の外周に弾性を有し且つ所定の厚さを持った多孔質のシートをバンドによって巻き付け、且つ推進管の外周に継手部が突出して形成されている場合には該継手部の断面形状と略等しい形状を持った盲部材を掘進機の外周であって前記シートとの間で且つ推進管の外周に突出して形成された継手部と対応する位置に配置しておく止水工程と、土留め壁に固着された枠の前面を閉鎖して型枠を形成すると共に該型枠にモルタル又はコンクリートを打設する打設工程と、型枠にモルタル又はコンクリートを打設した後、掘進機を推進すると共に該掘進機に後続させた推進管を所定長推進する推進工程と、前記推進工程が終了した後、既に推進された推進管に於ける継手部側の型枠の一部とモルタル又はコンクリート及びシートの一部を撤去して、既に推進された推進管の外周の一部と継手部を露出させる管露出工程と、発進立坑の土留め壁に於ける既に推進された推進管に隣接した新たな推進管を推進すべき部位の周囲に既に推進された推進管の周囲に形成され且つ一部が撤去された型枠と連続させて枠を固着すると共に土留め壁に推進管の径よりも大きい径を持った穴を形成し、次いで、前記穴に対向させて元押し装置を設置すると共に該元押し装置に装着した掘進機の先端部分を前記穴に挿入し、その後、掘進機の外周に前記シートをバンドによって巻き付けると共に該シートを既に推進された推進管の周囲に配置されているシートと接続し、且つ新たな推進管の外周に継手部が突出して形成されている場合には該継手部の断面形状と略等しい形状を持った盲部材を掘進機の外周であって前記シートとの間で且つ推進管の外周に突出して形成された継手部と対応する位置に配置し、次いで、既に推進された推進管の周囲に形成された型枠と連続して土留め壁に固着された枠の前面を閉鎖して型枠を形成すると共に該型枠にモルタル又はコンクリートを打設し、その後、掘進機を推進し且つ該掘進機に新たな推進管を後続させると共に該推進管の継手部を既に推進された推進管の継手部と係合させて所定長推進する新たな推進管の推進工程と、を含み、以後、前記新たな推進管の推進工程を繰り返すことを特徴とするものである。
【0010】
上記パイプルーフの構築方法では、推進管を推進するのに先立って土留め壁に両側面と底面を有する枠を固着することによって、推進部位の周囲の土留め壁を枠によって接続し、この枠内に於ける土留め壁に穴を形成する鏡切りを行って、該穴に元押し装置及び掘進機を対向させ、掘進機の先端部分を前記穴に挿入した状態で、掘進機の外周に弾性を有し且つ所定の厚さを持った多孔質のシートをバンドによって巻き付ける。その後、枠の前面であって掘進機の外周との間に形成された開放部を閉鎖して上方が開放された型枠を構成する。そして型枠にモルタル又はコンクリート(以下「コンクリート」という)を打設することによって、穴の上下を型枠とコンクリートとによって一体化させることが出来る。
【0011】
型枠に打設されたコンクリートのセメントミルクが掘進機の外周に巻き付けたシートの孔に含浸して固化する。このとき、シートの外周側(コンクリート側)は打設されたコンクリートと充分に高い強度を持って一体化し、且つ内周側(掘進機の外周側)は弾性を維持する。
【0012】
従って、型枠に打設されたコンクリートが固化した後、掘進機を推進すると、該掘進機の外周面にシートが摩擦接触して両者の間を止水することが出来る。また掘進機に推進管を後続させて推進する場合にも、同様にして推進管の外周面にシートが摩擦接触して両者の間を止水して地下水等の流出を防止することが出来る。
【0013】
上記の如くして発進立坑側から到着立坑側に向けて推進管を推進する推進工程を経て両立坑の間に推進管を敷設した後、露出工程では、前記推進管(既設管)に隣接させて新たな推進管(新管)を推進する際の該既設管に於ける新管を接続する側の型枠とコンクリートを撤去する。このとき、コンクリート及びシートは既設管の継手まで撤去するのではなく、継手及び既設管の一部を露出させるまで撤去する。
【0014】
上記の如くして既設管の継手と外周面の一部を露出させた後、再度、土留め壁に新管の推進部位に対応させて枠を固着し、更に、鏡切りを行って形成された穴に対向させて元押し装置を設置すると共に該元押し装置に掘進機を装着して先端部を穴に挿入し、この状態で外周所定位置に盲部材を取り付けてシートを巻き付け、このシートの端部を既設管の周囲に配置されているシートと接続してバンドで固定することで、既設管の周囲に配置されたシートと新管の周囲に配置されるシートを一体化させる。
【0015】
その後、新管の周囲に形成された枠の前面に形成された開放部を閉鎖して一方の側面が既設管の周囲に形成されたコンクリートが露出した型枠を構成し、この型枠にコンクリートを打設する。新管の周囲に配置された型枠に打設されたコンクリートのセメントミルクがシートの孔に含浸し、コンクリートの固化に伴って該コンクリートとシートを強固に一体化すると共に既設管のシートと新管のシートを一体化させる。
【0016】
上記の如くして既設管に隣接させて掘進機を配置し、更に、該掘進機に新管を後続させると共に該新管の継手を既設管の継手に係合させて推進することで、新管を地中に敷設することが出来る。
【0017】
従って、推進管を敷設する都度、上記手順を繰り返すことで、パイプルーフを構築することが出来る。特に、既設管に新管を隣接させる際に、既設管の周囲に配置されたコンクリートを撤去して継手と既設管の一部を露出させてシートを接続するため、継手の周囲にあるシートが継手に密着して高いシール性能を維持し、地下水の発進立坑側への流出を防止することが出来る。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下上記パイプルーフの構築方法の好ましい実施形態について図を用いて説明する。図1は推進管を推進する状態を説明する模式図、図2は推進管を推進する際の手順を説明する図、図3は既に推進された推進管に新たな推進管を隣接させて推進する際の型枠の接続手順を説明する図、図4は既に推進された推進管と新たな推進管に適用するシートとの関係を説明する図、図5は既に推進された推進管の継手に新たな推進管の継手を係合させて推進した状態を説明する図である。
【0019】
本発明に係るパイプルーフの構築方法は、地中にパイプルーフを構築するに際し、掘進機を推進するのに先立って該掘進機の周囲にコンクリートを打設することによって土留め壁を上下に一体化させて強度を保持させ、且つ既設管に隣接させて新管を推進した場合であっても、これらの管の継手部分から地下水が発進立坑側に流出することを防止し得るように構成したものである。
【0020】
本発明に係るパイプルーフの構築方法を説明するのに先立って、図1により推進管Aを推進して地中に敷設する推進工法を簡単に説明する。推進工法は、掘進機Bに後続させた推進管Aを発進立坑Cに設置した元押し装置Dによって推進することで、発進立坑Cから図示しない到着立坑に向けて推進するものである。
【0021】
発進立坑Cは予め設定された深さに設置されており、周囲は鋼矢板を打ち込んで構成した土留め壁1が構成されている。また土留め壁1の所定位置には坑口Eが形成されている。この坑口Eは、掘進機B,推進管Aによって分断された土留め壁1を一体化させると共に、発進立坑Cに対する地下水の流入を防止するものであり、後述するように構成されている。
【0022】
掘進機Bは地山を掘削するものであり、先端にカッターヘッド2を設けたシールド本体3と、シールド本体3に屈折可能に接続されたテールシールド4とを有して構成されている。また元押し装置Dは掘進機B及び該掘進機Bに後続させた推進管Aに推力を付与してこれらを地中に推進するものであり、掘進機B,推進管Aを搭載して移動方向を案内する架台5と、該掘進機B,推進管Aの後端に当接して架台5を移動することで推力を伝達する押し輪6と、押し輪6を駆動するジャッキ7とを有して構成されている。
【0023】
上記構成に於いて、掘進機Bを元押し装置Dの架台5に搭載し、ジャッキ7を駆動して押し輪6を前進させて掘進機Bに推力を付与しつつ、該掘進機Bのカッターヘッド2を駆動して地山を掘削することで、掘進機Bを地山に推進することが可能である。そして掘進機Bの推進が終了した後、押し輪6を引き戻し、架台5に推進管Aを搭載して再度押し輪6を前進させることで、掘進機Bに推進管Aを後続させて地山に推進することが可能である。
【0024】
従って、推進管Aを推進する毎に上記手順を繰り返すことで、推進管Aを到着立坑に向けて推進して地中に敷設することが可能である。
【0025】
パイプルーフを構築する場合、目的のパイプルーフに応じて複数の推進管Aを推進することが必要である。特に、推進された推進管Aの位置精度は充分に高いことが好ましい。このため、図5に示すように、予め設定された位置に基準となる推進管Aaを充分に高い位置精度を保持して推進し、この推進管Aaの両側に順次新たな推進管Abを隣接させて推進することで、推進管Aaに対する推進管Ab、及び推進管Abどうしの精度を保持している。そして構築されたパイプルーフの内側を掘削して土砂を排除し、その後、目的に応じて選択的にコンクリートを打設することで周壁を構成することで、トンネルを構築することが可能である。
【0026】
次に、本実施例で用いる推進管Aa,Abの構成について図5により説明する。一般的に用いる推進管Abは、図に示すように、素管11の内部に全長にわたってフランジ12a,ウエブ12bを有する溝形鋼からなる管部分構成部材12が配置され、フランジ12aが素管1に当接された状態で溶接されている。また素管11の管部分構成部材12のフランジ12a間に対応する部位には全長にわたって所定の幅(後述する雄継手14を構成するT形鋼のウエブ14bの厚さよりも充分に広い幅寸法)を持った溝11aが形成されている。そして管部分構成部材12及び溝11aによって雌継手13を構成している。
【0027】
素管11の外周であって雌継手12の形成位置を基準とし且つ目的のパイプルーフに於ける配置位置に応じた位置には、雄継手14が形成されている。雄継手14は、雌継手13を構成する管部分構成部材12のフランジ12aの間の寸法よりも小さい寸法を持ったフランジ14aと、素管11の溝11aに嵌合するウエブ14bとからなるT形に形成されている。従って、素管11の全長にわたって形成される溝11aの幅寸法は雄継手14のウエブ14bを容易に嵌合し得る値を有している。
【0028】
またパイプルーフの基準となる位置に推進される推進管Aaは素管11の内部であって所定位置に2つの雌継手13が形成されている。従って、推進管Aaを推進する場合、該管Aaの外周に突起物が形成されていないため地山の抵抗を受けることがなく、推進時に曲がりやローリングが発生することが少なく、精度の高い推進を行うことが可能である。
【0029】
次に、上記推進管Aa,Abを推進してパイプルーフを構成する手順について図により説明する。先ず、パイプルーフに於ける予め設定された位置に基準となる推進管Aaを推進する。そして基準位置に推進された推進管Aaの両側に該推進管Aaの雌継手13に雄継手14を嵌合させて推進管Abが推進される。
【0030】
図2(a),(b)は鏡切り工程を示している。この工程では、発進立坑Cの土留め壁1及び地山に穴21が形成される。この穴21はパイプルーフを構築する際の基準となる位置に対応して、掘進機B(推進管Aa)の径よりも大きい径を持って形成される。
【0031】
鏡切り工程が終了すると、同図(c)に示す枠付け工程では、穴21の周囲に左右両側面22a(図3参照)及び底面22bからなる枠22を固着する。この枠22は坑口Eを構成するものであり、コンクリートを打設する際の型枠としての機能を発揮するものである。枠22の土留め壁1に対する固着方式は、土留め壁1の構造に応じて設定される。即ち、土留め壁1が鋼矢板によって構成されている場合、枠22は鋼矢板に溶接される。また土留め壁1がコンクリートによって構成されている場合、枠22ははつり出した鉄筋や形鋼からなる心材に溶接される。
【0032】
尚、鏡切り工程と枠付け工程は必ずしも本実施例の順序で実施する必要はなく、先に枠付け工程を実施しても良い。
【0033】
土留め壁1に枠22を固着した後、機械設置工程が実施される。先ず、元押し装置Dを穴21に対向させると共にマシンセンターを推進管Aaの芯23に一致させて発進立坑Cに設置する。そして元押し装置Dの架台5に掘進機Bを搭載することで、同図(d)に示すように、掘進機Bのマシンセンターは芯23に一致する。このとき、掘進機Bの先端側は、カッターヘッド2に対するコンクリートの浸透を防止するための袋24によって覆われている。次いで、同図(e)に示すように、掘進機Bを穴21内に押し込んで該掘進機Bの外周部を枠22に対応させる。
【0034】
次に、止水工程では、同図(f)に示すように、掘進機Bの外周に予め設定された厚さを有する弾性体で且つ多孔質のシート25を巻き付け、このシート25をバンド26及びターンバックル26aによって締め付け固定する。シート25は、掘進機B,推進管Aを推進する際に枠22に止まって掘進機B,推進管Aの外周面に対し弾性的に摩擦接触することで、地山から発進立坑に対する地下水の流入を防止する機能を有するものである。
【0035】
シート25は、後述するように型枠 にコンクリートを打設したとき、該コンクリートのセメントミルクが多数の孔に含浸して厚さの約半分程度の部分が硬化してコンクリートと一体化し、残りの半分程度は弾性を保持していることが好ましい。このため、シート25に形成された孔は厚さ方向に連続した所謂連孔ではなく、適度に分断された所謂単孔であることが好ましい。また厚さは、掘進機B,推進管Aの径に応じて異なるものの約50mm程度であることが好ましい。このようなシート25としては合成樹脂の発泡体、例えばスポンジがある。
【0036】
上記の如くして掘進機Bの周囲にシート25を巻き付けてバンド26で固定した後、同図(g),(h)に示すように、枠22の前面であって掘進機Bの外周との間に形成された開放部にパッキン27を装着すると共に該パッキン27を締付金具28で締め付けることで、前面を閉鎖する。これにより、枠22と土留め壁1とパッキン27からなり、上面が開放された型枠29が形成される。
【0037】
次に、同図(i)に示す打設工程に於いて型枠29にコンクリート30が打設され、これにより孔口Eが形成される。尚、型枠29に打設されたコンクリート30は穴21を通って地山にも注入されるが、掘進機Bの先端側は袋24によって覆われているため、掘進機Bに悪影響を与えることはない。
【0038】
上記の如くして型枠29にコンクリート30を打設し所定の養生期間が経過した後、推進工程が実施される。この工程は、前述したように、掘進機Bのカッターヘッド2を駆動して地山を掘削しつつ元押し装置Dのジャッキ7を駆動し、該ジャッキ7の推力を押し輪6を介して掘進機Bに付与することで行われる。
【0039】
掘進機Bを推進する際にシート25は外周面側がコンクリート30と一体化し内周面側が弾性を保持しているため、掘進機Bの外周面に対し弾性的に圧接してシール機能を発揮する。このため、地山の地下水が掘進機Bとシート25の間を通って発進立坑C側に流入することがない。
【0040】
掘進機Bの推進が終了すると、元押し装置Dのジャッキ7を駆動して押し輪6を引き戻し、架台5に推進管Aaを搭載する。その後、再度ジャッキ7を前進駆動して推進管Aaを掘進機Bの後端に接続して両者を推進する。この操作を繰り返すことで推進管Aaを到着立坑まで推進し、両立坑に夫々推進管Aaの端部を突出させた状態で推進を終了する。図3(a)は、発進立坑C側に於ける推進管Aaの推進が完了した状態を示している。尚、推進管Aaを推進するに際し、雌継手14には適度な弾性を有する合成樹脂の発泡体、例えば発泡ポリエチレン等を挿入しておくことが好ましい。
【0041】
次に、上記の如くして推進されたパイプルーフの基準となる推進管Aaを既設管Aaとし、該既設管Aaに隣接させて新たな推進管(新管)Abを推進する際の手順について説明する。図3(a)に示すように、既設管Aaが推進されたとき、該既設管Aaの後端は発進立坑Cの内部に突出した状態となる。
【0042】
上記既設管Aaの一方側の雌継手13に新管Abの雄継手14を係合させて推進する場合、同図(b)に示すように、新管Abを接続する側の枠22を切断すると共にコンクリート30を撤去して既設管Aaの雌継手13と該既設管Aaの外周面の一部及びシート25の一部を露出させる。
【0043】
このとき、単に雌継手13を構成する素菅11の溝11aのみを露出させるのではなく、既設管Aaの外周をシート25と共に充分に広い範囲で露出させることが必要である。この場合、既設管Aaの外周面に配置されたシート25を全て撤去する必要はなく、雌継手13の周辺部位以外のシート25を残しておくことが好ましい。
【0044】
上記の如くして既設管Aaの外周を露出させた後、同図(c)に示すように、土留め壁1の既設管Aaに隣接した位置に穴21を形成し、該穴21の周囲に一方の側面が既設管Aaの外周及びコンクリート30を利用した枠22を形成する。枠22を形成するに際し、底板22bは既設管Aaの周囲に形成されている枠22の底板22bと溶接して一体化する。
【0045】
上記の如くして枠22を形成した後、前述の推進管Aaを推進した手順と同様にして穴21に対向させて元押し装置Dを設置し、該元押し装置Dに掘進機Bを搭載して先端部を袋24で覆ったて穴21に押し込む。このとき、掘進機Bの既設管Aaに対する位置及び平行度は新管Abを推進する際の精度を保証する重要な因子となるため、厳密に設定することが必要である。
【0046】
既設管Aaに対する掘進機Bの位置が設定された後、図4,図5(これらの図は既設管Aaの雌継手13に新管Abの雄継手14を係合させた状態を示しているが新管Abの代わりに掘進機Bを想定すれば同一である。)に示すように、掘進機Bの外周にシート25を巻き付けてバンド31とターンバックル31aによって固定する。バンド31は掘進機Bの外周の1/2の長さよりも短い長さを有しており、一方の端部にターンバックル31aに螺合し得るネジが形成され、他方の端部には既設管Aaの雌継手13を構成する素菅11の溝11aに嵌合して該素菅11に係止されるフック31bが設けられている。
【0047】
従って、既設管Aaの外周に配置されたシート25を該管Aaの雌継手13の近傍で切断しておき、一対のバンド31を夫々のフック31bを既設管Aaの溝11aに係止させて新管Abの外周に配置されたシート25の外周に巻き付けると共にターンバックル31aで締め付けることで、新たなシート25を既設管Aaのシート25と接続することが可能である。
【0048】
その後、枠22の前面にパッキン27を取り付けた後、コンクリート30を打設することで坑口Eを構成し、コンクリート30の養生が終了した後、掘進機Bを推進し、引き続き新管Abを推進する。
【0049】
上記の如くして既設管Aaの雌継手13に新管Abの雄継手14を係合させて推進するに際し、既設管Aaの雌継手13の溝11aは新管Abの外周に巻き付けたシート25によって覆われており、且つ雌継手13は予め発泡体で閉塞されているため、地下水が雌継手13を伝わって発進立坑Cに流入することがない。
【0050】
上記実施例では、推進管Aa,Ab共に推進時に継手が突出しないように構成されている。しかし、パイプルーフを構成するための推進管はすべて継手が突出しないものではなく、素菅の外周にC形鋼や山形鋼を溶接して雌継手を構成したものもある。このような推進管を用いる場合には、掘進機Bの外周に突出する継手の断面形状と等しい形状を持った発泡体を取り付けておき、この発泡体の外側からシート25を巻き付けることで、推進管の推進時にシートが継手を安全に回避することが可能である。
【0051】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明に係るパイプルーフの構築方法では、既設管に新管を隣接させて推進する際に、既設管の継手側に存在する型枠,コンクリートを撤去して継手を含む推進管の外周の一部及びシートを露出させ、この露出部に新管の周囲に巻き付けたシートを係合させて止水した後、型枠にコンクリートを打設して掘進機,推進管を推進するようにしたので、土留め壁に固着された型枠及び該型枠に打設されたコンクリートによって、掘進機及び推進管によって分断された土留め壁を一体化することが出来る。
【0052】
このため、掘進機,推進管とコンクリートの間に配置されるシートが既に推進された既設管のシートと接続した状態を保持することが出来るため、地下水が掘進機,コンクリートの間から発進立坑側に流入することがない。また目的のパイプルーフを地中に設置するような場合であって、発進立坑が地下に構成される場合であっても、土留め壁が安定した強度を発揮することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】推進管を推進する状態を説明する模式図である。
【図2】推進管を推進する際の手順を説明する図である。
【図3】既に推進された推進管に新たな推進管を隣接させて推進する際の型枠の接続手順を説明する図である。
【図4】既に推進された推進管と新たな推進管に適用するシートとの関係を説明する図である。
【図5】既に推進された推進管の継手に新たな推進管の継手を係合させて推進した状態を説明する図である。
【符号の説明】
A,Aa,Ab 推進管
B 掘進機
C 発進立坑
D 元押し装置
E 坑口
1 土留め壁
2 カッターヘッド
3 シールド本体
4 テールシールド
5 架台
6 押し輪
7 ジャッキ
11 素管
12 管部分構成部材
13 雌継手
14 雄継手
21 穴
22 枠
23 芯
24 袋
25 シート
26,31 バンド
26a,31a ターンバックル
27 パッキン
28 締付金具
29 型枠
30 コンクリート
31c フック
Claims (1)
- 長手方向の全長にわたって継手部を形成した複数の推進管を前記継手部を互いに係合させて平行に地中に敷設してパイプルーフを構築するための方法であって、
発進立坑の土留め壁に於ける推進管を推進すべき位置に推進管の径よりも大きい径を持った穴を形成する鏡切り工程と、
前記鏡切りされた部位の周囲に左右両側面と底面からなる枠を固着する枠付け工程と、
前記鏡切りされた穴に対向させて元押し装置を設置すると共に該元押し装置に装着した掘進機の先端部分を前記穴に挿入する機械設置工程と、
前記掘進機の外周に弾性を有し且つ所定の厚さを持った多孔質のシートをバンドによって巻き付け、且つ推進管の外周に継手部が突出して形成されている場合には該継手部の断面形状と略等しい形状を持った盲部材を掘進機の外周であって前記シートとの間で且つ推進管の外周に突出して形成された継手部と対応する位置に配置しておく止水工程と、
土留め壁に固着された枠の前面を閉鎖して型枠を形成すると共に該型枠にモルタル又はコンクリートを打設する打設工程と、
型枠にモルタル又はコンクリートを打設した後、掘進機を推進すると共に該掘進機に後続させた推進管を所定長推進する推進工程と、
前記推進工程が終了した後、既に推進された推進管に於ける継手部側の型枠の一部とモルタル又はコンクリート及びシートの一部を撤去して、既に推進された推進管の外周の一部と継手部を露出させる管露出工程と、
発進立坑の土留め壁に於ける既に推進された推進管に隣接した新たな推進管を推進すべき部位の周囲に既に推進された推進管の周囲に形成され且つ一部が撤去された型枠と連続させて枠を固着すると共に土留め壁に推進管の径よりも大きい径を持った穴を形成し、次いで、前記穴に対向させて元押し装置を設置すると共に該元押し装置に装着した掘進機の先端部分を前記穴に挿入し、その後、掘進機の外周に前記シートをバンドによって巻き付けると共に該シートを既に推進された推進管の周囲に配置されているシートと接続し、且つ新たな推進管の外周に継手部が突出して形成されている場合には該継手部の断面形状と略等しい形状を持った盲部材を掘進機の外周であって前記シートとの間で且つ推進管の外周に突出して形成された継手部と対応する位置に配置し、次いで、既に推進された推進管の周囲に形成された型枠と連続して土留め壁に固着された枠の前面を閉鎖して型枠を形成すると共に該型枠にモルタル又はコンクリートを打設し、その後、掘進機を推進し且つ該掘進機に新たな推進管を後続させると共に該推進管の継手部を既に推進された推進管の継手部と係合させて所定長推進する新たな推進管の推進工程と、を含み、
以後、前記新たな推進管の推進工程を繰り返すことを特徴とするパイプルーフの構築方法。
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