JP3795637B2 - ウエビング巻取装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウエビング巻取装置に関し、さらに詳しくは、遊星歯車機構によって、付勢手段によるウエビング巻取軸の回転付勢力を軽減させてウエビングを巻き取るウエビング巻取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に取り付けられるウエビング巻取装置には、遊星歯車機構によって、ゼンマイばね等の付勢手段のウエビング巻取力を軽減させるテンションリデューサを備えたものがある。
【0003】
このウエビング巻取装置は、ウエビングを巻き取るスプールのシャフトに固定された太陽歯車と、この太陽歯車と同軸的に軸支された内歯歯車及び、これら太陽歯車と内歯歯車の双方にかみ合い、ゼンマイばねの回転力を受けてスプールのシャフトの回りを公転する遊星歯車で構成された遊星歯車機構を有している。また、太陽歯車と内歯歯車との間に、例えばテープ状の中間部材が設けられている。そして、乗員がウエビングを装着する前の状態では、内歯歯車は回転可能となっており、中間部材を介してゼンマイばねの回転力が太陽歯車に伝達されるが、乗員がウエビングを装着した後は、内歯歯車の回転が停止されるため(いわゆるリデュース作動)、ゼンマイばねの回転力を受けた遊星歯車が内歯歯車の内歯にかみ合って公転し、太陽歯車も回転する。これによって、リデュース作動時のウエビング巻取量が多くなるようにしている。
【0004】
しかし、このウエビング巻取装置では、太陽歯車と内歯歯車との間に中間部材を設けているため、部品点数が多くなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる事実を考慮し、少ない部品点数で、リデュース作動時のウエビング巻取量を多くすることができるウエビング巻取装置を得ることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明では、太陽歯車と、この太陽歯車と同軸的な内歯歯車と、この太陽歯車及び内歯歯車とかみ合い太陽歯車の軸回りに公転する遊星歯車と、を備えた遊星歯車機構と、乗員装着用ウエビングを巻き取ると共に、前記太陽歯車及び前記内歯歯車の一方へ連結されたウエビング巻取軸と、巻取付勢力を前記遊星歯車の公転力として伝え、前記太陽歯車又は内歯歯車を介してウエビング巻取軸へ巻取方向回転力を付与する付勢手段と、乗員のウエビング装着後に前記太陽歯車及び前記内歯歯車の他方のウエビング巻取方向回転を阻止して巻取軸の回転を減速し遊星歯車の公転へと伝えて巻取低張力状態とする停止手段と、前記遊星歯車の円周上の一部に設けられた係合部と、前記太陽歯車又は前記内歯歯車の円周上の一部に設けられ前記停止手段による巻取低張力状態で前記係合部と係合して遊星歯車のウエビング巻取方向回転を阻止し、ウエビング巻取軸のウエビング引出方向の回転による遊星歯車の複数回転を可能とする係合受部と、を有することを特徴とする。
【0007】
乗員のウエビング装着前は、停止手段による巻取低張力状態となっており、係合部と係合受部とが係合して遊星歯車のウエビング巻取方向回転が阻止されている。このため、太陽歯車と遊星歯車、又は内歯歯車と遊星歯車とは、それぞれ相対的に回転しない。従って、付勢手段の付勢力によって、太陽歯車と遊星歯車、又は内歯歯車と遊星歯車とが一体で、太陽歯車の軸回りに回転し(遊星歯車は太陽歯車の軸回りに公転する)、ウエビング巻取軸が回転する。
【0008】
乗員のウエビング装着後に、停止手段によって太陽歯車又は内歯歯車の他方のウエビング巻取方向回転が阻止されると(リデュース状態)、内歯歯車と噛み合っている遊星歯車が、係合部と係合受部との係合が解除される方向へと付勢手段の付勢力で太陽歯車の軸回りに公転し、太陽歯車と遊星歯車との間に相対的な回転差が生じて、太陽歯車が回転する。太陽歯車は、係合部と係合受部とが再び係合するまで回転できるので、太陽歯車の回転量、すなわち、ウエビングの巻取量を多くすることができる。従来のように中間部材を必要としないので、部品点数が少なくなる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記係合部は、前記遊星歯車の複数の歯の一部が歯幅方向に延長された突起であり、前記太陽歯車又は前記内歯歯車の複数の歯のうち隣接する一対の歯を歯幅方向に延長し、これらの一対の歯間を埋めて前記係合受部とすることを特徴とする。
【0010】
すなわち、遊星歯車の歯の一部を歯幅方向に延長するだけで、係合部としての突起を形成することができる。また、また、係合受部は、太陽歯車又は内歯歯車の複数の歯のうち隣接する一つの歯の間を埋めだけで形成することができる。従って、簡単に係合部及び係合受部を形成することができ、部品点数も少なくすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1〜図3には、本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10が示されている。
【0012】
ウエビング巻取装置10は、車両に取り付けられるフレーム(図示省略)を有しており、このフレームに、略円筒状に形成されたスプール12が回転可能に軸支されている(図1及び図3では、スプール12を一部のみ図示)。スプール12の図2時計周り方向(図1及び図2の矢印A方向)の回転によりウエビング(図示省略)が巻き取られ、図2反時計周り方向(図1及び図2の矢印B方向)の回転によりウエビングが巻き出される。
【0013】
フレームを構成する支持板16(図2及び図3参照)には、シート14が取り付けられている。このシート14は、後述する遊星歯車機構28が収容される略偏平円筒状の遊星歯車機構収容部18と、同じく後述する停止手段82が収容される停止手段収容部20と、が一体的に形成されている。
【0014】
遊星歯車機構収容部18の側壁22の中央には軸支孔24が形成されており、この軸支孔24に、スプール12内に配置された回転軸26が挿通されて、スプール12が軸支されている。回転軸26の先端は略四角柱状に形成されて側壁22から突出している。そして、太陽歯車30からシート14側に突出した支軸32の軸孔34(図2参照)に挿入されている。これにより、スプール12と太陽歯車30とが同軸的に連結され、軸線CLを中心として一体で回転する。
【0015】
図2及び図4に示すように、太陽歯車30の複数の歯のうち、隣接する特定の2個の歯の間の歯溝には、歯幅方向(図4上下方向)の一端側でこの歯溝を埋めて、係合板部としての係合板36が形成されている。この係合板36は、図2に示すように、支軸32に対して対称の位置で1枚ずつ、合計2枚形成されている。
【0016】
太陽歯車30から、シート14側と反対側に突設された突軸38は、キャリア40の中央に形成された透孔42に挿通されている。キャリア40は円板状に形成されており、2本の支軸44が、中心(軸線CLに一致する)に対して対称の位置から太陽歯車30側に向かって突設されている。
【0017】
支軸44のそれぞれには、遊星歯車46が軸支されている。この遊星歯車46は、太陽歯車30及び、内歯歯車52の双方とかみ合っている。図5に示すように、遊星歯車46の複数の歯のうち、1個の歯48を除く全ての歯は、歯幅が遊星歯車46の肉厚よりも小さく形成されているが、1個の歯48のみ、歯幅が遊星歯車46の肉厚と等しく形成されて、実質的にその他の歯よりも歯幅方向(図5では下側)に突出している。この突出部分が、係合部としての突起50となっている。そして、太陽歯車30の図2反時計周り方向(矢印B方向)の回転、及び、遊星歯車46の図2時計周り方向(矢印C方向)の回転は、突起50が係合板36に当たって阻止されているが、太陽歯車30の図2時計周り方向(矢印A方向)の回転、及び、遊星歯車46の図2反時計周り方向(矢印D方向)の回転は阻止されておらず、自由に回転できる。
【0018】
太陽歯車30及び遊星歯車46の歯数は、図13に示すように、太陽歯車30が時計周り方向に所定の回数(本実施の形態では約6.86回転)だけ回転したところで突起50が係合板36に当たってこの回転が阻止されるように、所定の数に設定されている。
【0019】
図1〜図3に示すように、太陽歯車30の外側には、遊星歯車46とかみ合う内歯歯車52が配置されている。内歯歯車52は略円環状に形成されており、中央に形成された位置決め孔54に、太陽歯車30に形成された円板56が収容されて、内歯歯車52が太陽歯車30と同軸的に、且つ相対回転可能に支持されている。また、この状態で、遊星歯車46が太陽歯車30及び内歯歯車52の双方に噛み合っている。
【0020】
内歯歯車52の外周には、複数のラチェット歯58が形成されている。図6〜図12に示すように、このラチェット歯58に、パウル60に形成された爪部62が係合すると、内歯歯車52の図2時計周り方向(矢印E方向)の回転が阻止される。
【0021】
パウル60は略L字状に形成されており、爪部62は長片部60Aの先端に形成されている。また、パウル60はその略中央で、後述するカバー78から突設された支軸80(図3参照)に揺動可能に軸支されており、停止手段収容部20に配設されたねじりコイルスプリング64によって、爪部62がラチェット歯58から離間する方向に付勢されている。停止手段収容部20には、乗員がウエビングを装着した後に作動するソレノイド66が収容されて固定されており、ソレノイド66のプランジャ68が、パウル60の短片部60Bに形成された連結部70に連結されている。ソレノイド66が作動すると、ねじりコイルスプリング64の付勢力に抗して爪部62がラチェット歯58に係合する方向(図2反時計周り方向)にパウル60を回転させ、図6〜図13に示すように、爪部62をラチェット歯58に係合させることができる。なお、パウル60、ねじりコイルスプリング64及びソレノイド66によって、停止手段82が構成されている。
【0022】
キャリア40の中央からは、支軸44が突設された方向と反対方向に回転軸72が突設されている。回転軸72には、外周から切り込み74が形成されており、この切り込み74に、ゼンマイばね76の内端76Aが差し入れられて固着されている。
【0023】
ゼンマイばね76の外端76Bは、プレート12に取り付けられたカバー78に固着されている。回転軸72が図2反時計周り方向(矢印B方向)に回転すると、ゼンマイばね76が巻き締められて弾性エネルギーが蓄積される。この状態で内端76Aが自由に回転可能になると、図2時計周り方向(図1及び図2に示す矢印A方向)に回転して、弾性エネルギーが開放されるようになっている。また、カバー78とプレート12との間に、遊星歯車機構28、キャリア40、ゼンマイばね76及び停止手段82が収容されている。
【0024】
次に、第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10の作用を説明する。
乗員がウエビングを装着していない状態では、図2に示すように、遊星歯車46の突起50が、太陽歯車30の係合板36に当たっている。このため、太陽歯車30と遊星歯車46とが噛み合うことによって、太陽歯車30が図2反時計周り方向(矢印B方向)に、遊星歯車46の図2時計周り方向(矢印C方向)に、それぞれ回転することはない。
【0025】
また、このときソレノイド66は作動しておらず、パウル60の爪部62がラチェット歯58から離れているため、内歯歯車52は自由に回転し、ウエビングの引き出し、巻き取りができる。ウエビングの引き出しにより、太陽歯車30が図2反時計周り方向(矢印B方向)に回転しようとするため、遊星歯車46が太陽歯車30及び内歯歯車52と一体となって太陽歯車30の軸回りに回転する。これにより、キャリア40(図1参照)も太陽歯車30の軸回りに図2反時計周り方向に回転するため、キャリア40の回転軸72に内端76Aが固着されたゼンマイばね76が巻き締められて、弾性エネルギーが蓄積される。
【0026】
乗員がウエビングを装着すると、ソレノイド66が作動し、図6に示すように、パウル60をねじりコイルスプリング64の付勢力に抗して反時計周り方向に揺動させる。爪部62がラチェット歯58に係合するため、内歯歯車52の図6時計周り方向の回転が阻止され、リデュース状態となる。
【0027】
ここで、乗員がウエビングをさらに引き出そうとすると、スプール12に直結された太陽歯車30に図6反時計周り方向(矢印B方向)の回転力が作用するが、太陽歯車30の係合板36に遊星歯車46の突起50が当たっているため、太陽歯車30と遊星歯車46とは、噛み合いによって互いに回転することはない。このため、太陽歯車30に作用した回転力で、太陽歯車30、遊星歯車46及び内歯歯車52が一体となって図6反時計周り方向に回転し、ウエビングを引き出すことができる。
【0028】
乗員がウエビング引き出し力を解除すると、ゼンマイばね76の弾性力を受けたキャリア40が、図6時計周り方向(矢印A方向)に回転しようとする。これにより、遊星歯車46は、内歯歯車52と噛み合っているので、軸線CL回りに時計周り方向(矢印A方向)に公転しつつ、それ自体反時計周り方向(矢印D方向)に回転しようとする。この遊星歯車46の動きは、突起50が係合板36から離れる方向の動きなので、突起50が係合板36に当たって阻止されることはない。このため、太陽歯車30も図6時計周り方向(矢印A方向)に回転し、スプール12(図1及び図3参照)がウエビング巻取方向(矢印A方向)に回転する。
【0029】
ここで、図7に実線で示すように、遊星歯車46の回転により突起50(図5参照)が形成された歯48が太陽歯車30の歯に噛み合う位置にきたとき、太陽歯車30は図6に示す初期状態から約0.90回転しており、係合板36は突起50から離れた位置にある。突起50が係合板36に当たらないので、遊星歯車46はさらに太陽歯車30の軸回りに時計周り方向(矢印A方向)に公転しつつ反時計周り方向(矢印D方向)に回転し、太陽歯車30も時計周り方向(矢印A方向)に回転する。
【0030】
次に、図8に実線で示すように、遊星歯車46がさらに時計周り方向(矢印A方向)公転しつつ反時計周り方向(矢印D方向)に回転することで、再び突起50が形成された歯48が太陽歯車30の歯に噛み合う位置にくるが、このとき、太陽歯車30は初期状態から約1.91回転しており、係合板36は突起50から離れた位置にある。突起50が係合板36に当たらないため、遊星歯車46はさらに太陽歯車30の軸回りに時計周り方向(矢印A方向)に公転しつつ反時計周り方向(矢印D方向)に回転し、太陽歯車30も時計周り方向(矢印A方向)に回転する。
【0031】
この動きを遊星歯車46及び太陽歯車30が繰り返し、図9に実線で示す状態(太陽歯車30が初期状態から2.92回転し、突起50が形成された歯48が太陽歯車30の歯に噛み合っているが、係合板36は突起50から離れた位置にある)、図10に実線で示す状態(太陽歯車30が初期状態から3.93回転し、突起50が形成された歯48が太陽歯車30の歯に噛み合っているが、係合板36は突起50から離れた位置にある)、図11に実線で示す状態(太陽歯車30が初期状態から4.94回転し、突起50が形成された歯48が太陽歯車30の歯に噛み合っているが、係合板36は突起50から離れた位置にある)、図12に実線で示す状態(太陽歯車30が初期状態から5.95回転し、突起50が形成された歯48が太陽歯車30の歯に噛み合っているが、係合板36は突起50から離れた位置にある)を経て、図13に実線で示す状態(太陽歯車30が初期状態から6.96回転している)に至る。
【0032】
この図13に示す状態では、突起50が係合板36に当たるため、遊星歯車46の公転と回転、及び太陽歯車30の回転が止められている。(なお、図7〜図13においては、遊星歯車46の動きを明確にすべく、各図面の状態よりも一段階手前の状態での遊星歯車46の位置を二点鎖線で示している。例えば、図7において二点鎖線で示す遊星歯車46の位置は、これより一段階手前の状態である図6に実線で示す遊星歯車46の位置と同じであり、遊星歯車46は二点鎖線で示す位置から実線で示す位置へと移動したことになる。)
以上から分かるように、リデュース状態では、ゼンマイばね76の弾性力によってキャリア40が2回転し、遊星歯車46も太陽歯車30の軸回りに2回公転しているが、これに対し太陽歯車30は、約6.86回転(角度にして2468.4°)回転している。スプール12(図1及び図3参照)も約6.86回転するため、例えば、単にキャリア40にスプール12を直結した場合(スプール12も2回転しない)等と比較してウエビングの巻取量が多くなる。しかも、従来のように、例えば太陽歯車30とキャリア40との間に中間部材を配置する必要もないので、部品点数が増加しない。
【0033】
また、このように巻取量を多くしたことで、ゼンマイばね76の内端76Aの回転トルクが軽減されて、ウエビングの巻き取りトルクとして作用する。このため、ウエビング装着時に乗員に与える圧迫力(ウエビングと車両のシートとの間で乗員が圧迫される力)を軽減することができる。
【0034】
図14には、本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置90が示されている。このウエビング巻取装置90では、第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10と比較して、太陽歯車及び遊星歯車の形状のみが異なっており、他は全て同じである。以下、図14〜図19に示す部材のうち、第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10と同様の部材については、同一符号を付して説明を省略する。また、図15〜図19においては、遊星歯車46の複数の歯のうち、突起50(図5参照)が形成された歯48のみ図示し、他の歯は図示を省略している。さらに、太陽歯車92についても、図示を省略している。
【0035】
図14に示すように、このウエビング巻取装置90では、太陽歯車92に、第1の実施の形態に係る係合板36に相当する部材は形成されておらず、これに代えて、内歯歯車94の複数の歯のうち、隣接する特定の歯の歯溝に、係合板部としての係合板96が形成されている。この係合板96に、遊星歯車46の突起50が当たって、遊星歯車46の軸線CL回りの公転及び、遊星歯車46自体の回転が阻止される。
【0036】
乗員がウエビングを装着すると、ソレノイド66が作動してパウル60を図14反時計周り方向に揺動させるため、図15に示すように、内歯歯車52の図15時計周り方向(矢印A方向)の回転が阻止されて、リデュース状態となる。
【0037】
ゼンマイばね76の弾性力を受けたキャリア40(図1参照)の回転により、遊星歯車46は、図15に示すように、内歯歯車94と噛み合って反時計周り方向に回転しつつ、太陽歯車92の軸線CL(図1参照)回りに時計周り方向に公転し、太陽歯車92(図14参照)も時計周り方向に回転する。ここで、突起50が形成された歯48が内歯歯車94と噛み合う位置に遊星歯車46がきても、突起50が噛み合う内歯歯車94の歯溝に係合板96は形成されていない。このため、遊星歯車46は、反時計周り方向への回転と、太陽歯車92の軸線CL回りの時計周り方向への公転を続け、図15に実線で示す位置に至る。
【0038】
この動きを遊星歯車46及び太陽歯車92が繰り返し、図16に示す状態(遊星歯車46が初期状態から約2回転している)、図17に示す状態(遊星歯車46が初期状態から約3回転している)、図18に示す状態(遊星歯車46が初期状態から約4回転している)を経て、図19に示す状態に至る(なお、各図面における遊星歯車46の最終位置を実線で、途中位置を二点鎖線でそれぞれ示す)。この図19に示す状態では、太陽歯車92が初期状態から16.8回転しており、突起50が係合板96に当たって、遊星歯車46の公転と回転、及び太陽歯車92の回転が止められる。
【0039】
このように、第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置90においても、単にキャリア40にスプール12(共に図1参照)を直結した場合と比較して、ウエビングの巻取量が多くなる。また、中間部材を配置する必要もなく、部品点数が増加しない。
【0040】
さらに、ゼンマイばね76の内端76Aの回転トルクが軽減された上で、ウエビングの巻き取りトルクとして作用するので、ウエビング装着時に乗員に与える圧迫力が軽減される。
【0041】
なお、上記説明においては、係合部として突起50が形成され、係合受部としては、太陽歯車30又は遊星歯車46の隣接する歯の間を埋めて係合板36、96が形成された場合を例として説明したが、係合部及び係合受部の形状はこれらに限られず、要するに、係合部と係合受部とが係合することで、パウル60によって内歯歯車52、94の回転が停止された状態で遊星歯車46のウエビング巻取方向回転を阻止するものであればよい。同様に、付勢手段としても、巻取付勢力を遊星歯車46の公転力として伝え、太陽歯車30、92又は内歯歯車52、94を介して回転軸26(ウエビング巻取軸)へ巻取方向回転力を付与するものであれば、ゼンマイばね76に限られない。例えば、一般的なねじりコイルスプリング等の弾性体を使用してもよい。
【0042】
また、上記各実施の形態においては、遊星歯車46の数をいずれも2個としたが、遊星歯車の数がこれに限られるものではないことは勿論である。
【0043】
さらに、ウエビングを巻き取るスプール12が太陽歯車30、92に連結され、リデュース時にパウル60が内歯歯車52、94のウエビング巻取方向回転を阻止するタイプのものを挙げて説明したが、スプール12が内歯歯車52、94に連結され、リデュース時にパウル60が太陽歯車30、92のウエビング巻取方向回転を阻止するタイプのもの(従って、太陽歯車30、92と内歯歯車52、94の役割が入れ代わっている)であってもよい。
【0044】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の発明では、遊星歯車の円周上の一部に設けられた係合部と、太陽歯車又は内歯歯車の円周上の一部に設けられ停止手段による巻取低張力状態で係合部と係合して遊星歯車のウエビング巻取方向回転を阻止し、ウエビング巻取軸のウエビング引出方向の回転による遊星歯車の複数回転を可能とする係合受部と、を有するので、中間部材を必要としないで、リデュース状態でウエビングの巻取量を多くすることができ、部品点数が増加しないという優れた効果を有する。
【0045】
本発明の請求項2に記載の発明では、係合部は、遊星歯車の複数の歯の一部が歯幅方向に延長された突起であり、太陽歯車又は内歯歯車の複数の歯のうち隣接する一対の歯を歯幅方向に延長し、これらの一対の歯間を埋めて係合受部としているので、簡単に係合部及び係合受部を形成することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置を示す図2のIII−III線断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置の太陽歯車を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置の遊星歯車を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置がリデュース状態となったときを示す概略構成図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置において図6に示す状態からウエビングを巻き取った状態を示す概略構成図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置において図7に示す状態からさらにウエビングを巻き取った状態を示す概略構成図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置において図8に示す状態からさらにウエビングを巻き取った状態を示す概略構成図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置において図9に示す状態からさらにウエビングを巻き取った状態を示す概略構成図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置において図10に示す状態からさらにウエビングを巻き取った状態を示す概略構成図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置において図11に示す状態からさらにウエビングを巻き取って突起が係合板に当たった状態を示す概略構成図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置において図12に示す状態からさらにウエビングを巻き取った状態を示す概略構成図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置を示す縦断面図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置がリデュース状態となったときを示す概略構成図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置において図15に示す状態からさらにウエビングを巻き取った状態を示す概略構成図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置において図16に示す状態からさらにウエビングを巻き取った状態を示す概略構成図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置において図17に示す状態からさらにウエビングを巻き取った状態を示す概略構成図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置において図18に示す状態からさらにウエビングを巻き取って突起が係合板に当たった状態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
10 ウエビング巻取装置
26 回転軸(ウエビング巻取軸)
28 遊星歯車機構
30 太陽歯車
36 係合板(係合受部)
46 遊星歯車
50 突起(係合部)
52 内歯歯車
60 パウル(停止手段)
66 ソレノイド(停止手段)
76 ゼンマイばね(付勢手段)
82 停止手段
90 ウエビング巻取装置
92 太陽歯車
94 内歯歯車
96 係合板(係合受部)
Claims (2)
- 太陽歯車と、この太陽歯車と同軸的な内歯歯車と、この太陽歯車及び内歯歯車とかみ合い太陽歯車の軸回りに公転する遊星歯車と、を備えた遊星歯車機構と、
乗員装着用ウエビングを巻き取ると共に、前記太陽歯車及び前記内歯歯車の一方へ連結されたウエビング巻取軸と、
巻取付勢力を前記遊星歯車の公転力として伝え、前記太陽歯車又は内歯歯車を介してウエビング巻取軸へ巻取方向回転力を付与する付勢手段と、
乗員のウエビング装着後に前記太陽歯車及び前記内歯歯車の他方のウエビング巻取方向回転を阻止して巻取軸の回転を減速し遊星歯車の公転へと伝えて巻取低張力状態とする停止手段と、
前記遊星歯車の円周上の一部に設けられた係合部と、
前記太陽歯車又は前記内歯歯車の円周上の一部に設けられ前記停止手段による巻取低張力状態で前記係合部と係合して遊星歯車のウエビング巻取方向回転を阻止し、ウエビング巻取軸のウエビング引出方向の回転による遊星歯車の複数回転を可能とする係合受部と、
を有することを特徴とするウエビング巻取装置。 - 前記係合部は、前記遊星歯車の複数の歯の一部が歯幅方向に延長された突起であり、
前記太陽歯車又は前記内歯歯車の複数の歯のうち隣接する一対の歯を歯幅方向に延長し、これらの一対の歯間を埋めて前記係合受部とすることを特徴とする請求項1に記載のウエビング巻取装置。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP19167197A JP3795637B2 (ja) | 1997-07-16 | 1997-07-16 | ウエビング巻取装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP19167197A JP3795637B2 (ja) | 1997-07-16 | 1997-07-16 | ウエビング巻取装置 |
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JPH1134800A JPH1134800A (ja) | 1999-02-09 |
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Family Applications (1)
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-
1997
- 1997-07-16 JP JP19167197A patent/JP3795637B2/ja not_active Expired - Fee Related
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