JP3794760B2 - フィターゼ生産酵母 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はメタノール、グリセロールの少なくとも一方の添加により誘導可能であるアルコールオキシダーゼ遺伝子のプロモーターの下流に通常の分泌シグナルを持たないポリペプチドであるフィターゼをコードする遺伝子を結合した配列を有する組換えプラスミド、該組換えプラスミドで形質転換されたメタノール資化性酵母、該メタノール資化性酵母を培養して得られる培養液、菌体又はそれらの処理物、及びそれらを用いたフィターゼの生産方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
EP 699762号に記載されているシュワニオミセス オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)由来の脱糖鎖後の分子サイズが約50kDのフィターゼ(以下特別の断わりがない限り単にフィターゼと略す。)は、フィチン酸あるいはその塩をミオ−イノシトールまで分解することが可能で熱安定性に優れている酵素として知られている。
該フィターゼは、常温常圧下で単独でフィチンをミオ−イノシトールまで加水分解でき、またこの反応では強酸を用いないため、排水が環境へ与える負荷を低減できる。このため本酵素はミオ−イノシトール製造用酵素として期待されている。
また近年、フィターゼを飼料添加剤として家畜飼料に添加して、単胃動物が消化できないリン酸源であるフィチンを分解することにより、排泄物中のリン酸濃度を低減する試みがなされている。その際、飼料製造工程の乾燥工程において飼料が高温にさらされるが、該フィターゼは熱安定性に優れているため酵素の失活がより少なく、工業的に有用である。
【0003】
該フィターゼをコードする遺伝子はゲノム遺伝子、cDNA共にクローニングされており、1383bpのORFを持つ遺伝子としてその塩基配列についても開示されている。(EP 699762号)
EP 699762号で開示された塩基配列から予想されるフィターゼのアミノ酸配列及びシュワニオミセス オキシデンタリスの培養上清から精製されたフィターゼのN末端アミノ酸配列は、N末端のメチオニン残基以外同一である。このことから、本酵素は培養上清中に見いだされたタンパク質であるにもかかわらず、通常の分泌タンパク質に見られるような分泌の過程で切断される分泌シグナルが存在しないことがわかった。またKyteらの方法(Kyte.J.ら、J.Mol.Biol. 157:pp105-132(1982))によりタンパク質の疎水性領域の解析を行なったところ、本酵素のN末端に疎水性に富む領域が存在することがわかった。
実際に本発明者らは、EP 699762号記載のサッカロミセス セルビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)の形質転換酵母を用いてフィターゼの製造方法を鋭意検討したが、発現量が十分ではなく、大部分のフィターゼの活性は酵母細胞に付随しており、上清中に生産されるフィターゼ活性はごくわずかであった。フィターゼを工業的に利用しようとする場合、フィターゼが酵母細胞から遊離していることが経済性の点等で有利であるが、現在までのところ、フィターゼを細胞外に大量に生産する技術は確立されていない。
【0004】
一方、メタノール酸化酵素由来の強力なプロモーターを利用できるキャンディダ ボイディニイ(Candida boidinii)(特開平5−344895号)などのメタノール資化性酵母による異種タンパク質発現系が開発されている。中でもキャンディダ ボイディニイは、目的遺伝子を相同組換えにより規定した染色体の位置に組み込みが可能で、グリセロールとメタノールが共存する培地での1段階培養が可能である点で優れている。
特開平5−344895号によればアデニル酸キナーゼ、チトクロムC、及びペルオキシダーゼをキャンディダ ボイディニイ形質転換体で大量生産できることが示されている。そこで本発明者らは、フィターゼの大量生産のためにキャンディダ ボイディニイを用いることを考えた。しかし、アデニル酸キナーゼ及びチトクロムCは細胞内タンパク質で、該形質転換体により細胞内に生産されるタンパク質であり、またペルオキシダーゼは分泌過程で切断される通常の分泌シグナルを持つ分泌タンパク質で、サッカロミセス セルビッシェ形質転換体で細胞外に分泌され、細胞にはほとんど付随しないタンパク質であることが知られている(特開平4−228078)。
すなわち、該酵母がシュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼのごとき通常の分泌シグナルを持たないタンパク質を細胞外に効率よく生産するか否かは不明であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フィターゼ活性を有するポリペプチドを細胞外へ安価にかつ大量に生産できる形質転換体を提供することを課題とするものであり、本発明の目的は、フィターゼ活性を有するポリペプチドを発現可能な組換えプラスミドであって、メタノール及びグリセロールよりなる群から少なくとも1種選ばれる化合物により誘導可能なプロモーターを有し、該プロモーターの下流にフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を連結した組換えプラスミド、該組換えプラスミドで、メタノール資化性酵母を形質転換して得られる形質転換酵母、該形質転換酵母を培養することにより得られる、培養液、菌体又はそれらの処理物、及びそれらを用いたフィターゼ活性を有するポリペプチドの生産方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
通常、分泌シグナルが無いタンパク質を細胞外に分泌させようとする場合、その宿主で機能する分泌シグナルを該タンパク質のN末端に付加するか、もしくは付加した分泌シグナルをさらに改変して分泌量を向上させることを試みる。しかし、この方法においても効率的な分泌シグナルを見いだすことは容易ではなく、多くの試行錯誤が必要である。
【0007】
本発明者らは、このような分泌シグナルの検討に加え、発現量を増加させるため宿主について鋭意検討を行った。その結果、驚いたことにキャンディダ ボイディニイを宿主とした場合は、シグナル配列の付加を行なわなくても、即ち通常の分泌タンパク質に見られるような分泌シグナルがないシュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼが細胞外へ効率よく分泌、蓄積されることを見いだした。さらに、本発明者らはキャンディダ ボイディニイが、分泌シグナルの切断という通常の分泌タンパク質の分泌機構を介さずにタンパク質を効率よく細胞外へ生産することを見いだし、該知見に基づき本発明を完成させた。
【0008】
即ち本発明は、フィターゼ活性を有するポリペプチドを発現可能な組換えプラスミドであって、メタノール及びグリセロールよりなる群から少なくとも1種選ばれる化合物により誘導可能なプロモーターを有し、該プロモーターの下流にフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を連結した組換えプラスミド、該組換えプラスミドで、メタノール資化性酵母を形質転換して得られる形質転換酵母、該形質転換酵母を培養することにより得られる、培養液、菌体又はそれらの処理物、及びそれらを用いたフィターゼ活性を有するポリペプチドの生産方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明においてフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子とは、フィチン酸あるいはその塩からリン酸基を遊離させる活性を持つポリペプチドである限り特に限定はないが、好ましくはシュワニオミセス オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)由来の脱糖鎖後の分子サイズが約50kDのフィターゼをコードする遺伝子であり、具体的には配列番号2の配列の遺伝子が例示される。
【0010】
また、本発明においてメタノール及びグリセロールよりなる群から少なくとも1種選ばれる化合物により誘導可能なプロモーターとは、メタノール資化性菌のメタノール酸化酵素由来のプロモーターであり、例えばキャンディダ ボイディニイ(Candida boidinii)(特開平5−344895号)のAOD1プロモーター、ピキア パストリス(Pichia pastoris)(J.M.Creggら、Mol.Cell.Biol.5:pp.3376-3385(1985))のAOX1もしくはAOX2プロモーター、ハンセヌラ ポリモルファ(Hansenula polymorpha)(P.E.Sudberyら、Biochem.Soc.Trans.16:pp.1081ー1083(1988))のMOXプロモーターなど、メタノール資化性酵母におけるメタノール酸化酵素由来のプロモーターがあげられる。好ましくはキャンディダ ボイディニイのメタノール酸化酵素由来のプロモーターであり、そのようなものとして配列番号1に記載の配列を含むプロモーターが例示できる。
【0011】
本発明の組換えプラスミドは、上記メタノール及びグリセロールよりなる群から少なくとも1種選ばれる化合物により誘導可能なプロモーターの配列と、フィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子配列を適当なベクターに挿入して構成されている。そのために使用できるベクターとしては大腸菌の形質転換に利用される公知のベクター、例えばpUC18、pBR322等が例示できる。
【0012】
本発明の組換えプラスミドは、形質転換した細胞を判別するために、組換えプラスミド中に適当な選択マーカーを連結しておくことが望ましい。選択マーカーとしては核酸の合成に関与する遺伝子、アミノ酸の合成に関与する遺伝子など生育に関係する遺伝子や薬剤耐性を付与する遺伝子などが挙げられ、例えばアンピシリン耐性遺伝子等が例示できる。
【0013】
本発明の組換えプラスミドは、形質転換した細胞内に保持されるため細胞内で自律複製を可能にする配列を含むか、相同組換えにより染色体内に組み込むため宿主細胞の染色体と相同性の高い配列を含むことが望ましい。
【0014】
さらに、本発明の組換えプラスミドは発現効率を向上させるためにフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の下流にターミネーター付加しておくことが望ましい。例えばキャンディダ ボイディニイのAOD1ターミネーター等が例示できる。
【0015】
このような組換えプラスミドの例としてはpNNPH60が例示できる。
【0016】
本発明の組換えプラスミドで形質転換される宿主は異種タンパク質発現系が開発されているメタノール資化性酵母ならばいかなる宿主でも良く、例えばキャンディダ ボイディニイ、ピキア パストリス、ハンセヌラ ポリモルファなどがあげられる。好ましくはキャンディダ ボイディニイである。
【0017】
また、本発明のフィターゼを細胞外に効率よく生産するメタノール資化性酵母の形質転換体は、上記記載のプラスミドをメタノール資化性酵母を公知の形質転換方法を用いて形質転換することにより作製することができる。本発明の組換えプラスミドで形質転換されたメタノール資化性酵母の例としては、シュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼを生産するキャンディダ ボイディニイ形質転換株であるMT−40544(本菌株は受託番号FERM P−15665として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている)があげられる。
【0018】
本発明の形質転換体酵母を培養する培地としては、グリセロール及びメタノールのうち少なくともひとつを含む培地であれば特に制限はなく、使用菌株の利用し得る窒素源、無機塩類、更に微量の有機栄養物等を適当に含有する合成培地、天然培地のいずれも使用できる。培養条件としては、菌株や培地によっても異なるが、培養温度は20℃〜40℃、培地のpHは3.0〜7.0が望ましい。
【0019】
本発明の形質転換酵母を培養して得られた培養液、菌体又はそれらの処理物とは、培養した菌体を含む培地、培養した菌体を除いた培養上清、及びこれらから遠心分離やろ過等で集菌した菌体を機械的破壊、超音波処理、凍結融解処理、乾燥処理、溶媒処理、加圧減圧処理、浸透圧処理、自己消化、界面活性剤処理、酵素処理により破壊したもの、及び該破壊物の粗精製物、並びに培養液や菌体から分離精製されたフィターゼ、更には培養により得られた菌体、菌体或いは培養液から分離精製されたフィターゼをアルギン酸ナトリウム、κ−カラギーナン、ポリアクリルアミド等の固定化剤を用いて固定化したものを含む。
【0020】
【実施例】
以下本発明を実施例により更に詳しく説明するがこれらの実施例は本発明の内容を何等限定するものではない。
実施例1 発現プラスミドの作製
EP 699762号記載のシュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼをコードするcDNAを含むプラスミドをMT−10743(本菌株は受託番号FERM BP−5108として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている)から抽出し、このプラスミドをpPHY36とした。このプラスミドのXhoI siteをT4ポリメラーゼで平滑末端にした後、NotI siteを持つリンカー(TAKARA Cat.No.4966P)を加えライゲーションし、NotI siteを作製した。該プラスミドをNotIで切断し調製したcDNA断片を、キャンディダ ボイディニイの異種タンパク質発現用プラスミドであるpNoteIのNotI siteにT4リガーゼで結合し、pNNPH60を作製した。pPHY36の制限酵素地図を図1(図1)に、pNNPH60の制限酵素地図を図2(図2)に示す。
【0021】
実施例2 形質転換
特開平5−344895号に記載のキャンディダ ボイディニイTK62株を5mlのYPD(1% Yeast extract、2% polypeptone、2% Glucose)培地に植菌し、28℃、30時間振とう培養し、前培養液とした。得られた前培養液を用いて100mlのYPD培地にOD610が0.2となるように植菌し、28℃でOD610が1.0付近になるまで約12時間培養した。この培養液を集菌し、25mlのリチウム溶液(10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、3mM lithium acetate)に懸濁した。これを遠心分離により集菌し、再度5mlのリチウム溶液に懸濁した後、振とうしながら30℃で1時間インキュベートし、これをコンピテントセルとした。1.5mlチューブに熱変性させた10μg/μl calf thymusを10μl、BamHIで切断した1μg/μl pNNPH60を5μl、およびコンピテントセル100μlを加え、ピペッティングで穏やかに混合した後、30℃、30分間静置した。静置後、700μlの45%PEG溶液(45%(w/v)polyethylene glycol#4000(PEG)、10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、3mM lithium acetate)を加え、ピペティングで穏やかに混合した後、30℃、1時間静置した。その後、42℃、5分間のヒートショックをかけ、30℃で5分間静置した。これを遠心分離で集菌した後、1mlの滅菌水に懸濁して200μlずつYNBプレート(0.67% YeastNitrogen base w/o Amino acid(Difco社製)、2% glucose、 2% 寒天)に塗布して28℃、3日間培養した。この操作によりpNNPH60で形質転換された菌体のみがコロニーを形成した。
【0022】
実施例3 フィターゼ高生産株のスクリーニング
実施例2により得られたキャンディダ ボイディニイ形質転換株の中からシュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼを高発現する株を選択するため以下に示す培養を行ない、培養上清中のフィターゼ活性を比較した。
シングルコロニーを5ml YPD培地で28℃、24時間前培養した。この前培養液を用いて20mlのYPGM培地(1% Yeast extract、2% polypeptone、3% Glycerol、1.5% Methanol)にOD610が0.2となるように植菌し、28℃で3日間培養し、培養液を遠心分離して上清を得た。得られた上清を限外濾過(amicon centricon 30 microconcentrator)により10倍に濃縮した後、脱イオン交換水と置換した。脱イオン交換水と置換された液を反応に適した濃度に更に濃縮、もしくは希釈した液100μlに60mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.4)、 5mMフィチン酸ナトリウムの水溶液900μlを加え、70℃で30分間反応した。反応終了後、反応液に5N H2SO4を100μl添加して反応を停止した。対照として基質を含むバッファー液にあらかじめ5N H2SO4を100μlを加えたものに酵素液を加えた画分を用意した。反応停止後、反応液を96穴マイクロタイタープレート上で1〜2048倍希釈し、希釈液100μlあたり50μlのリン酸検出液を加え30分間振とう後、ABS620を測定した。1〜10nMの範囲のリン酸校正曲線により、得られた測定値から、放出されたリン酸量を決定した。この操作により形質転換株には様々なフィターゼ生産性を示す菌株が存在することが判明し、その中からシュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼ高生産株MT−40544が得られた。
【0023】
実施例4 シュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼ生産酵母の比較実施例3により得られたキャンディダ ボイディニイのシュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼ高生産株MT−40544とEP 699762号に開示されているサッカロミセス セルビッシェのシュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼ生産株MT−40539(本菌株は受託番号FERMBP−5109として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている)との比較を以下の方法で行った。
サッカロミセス セルビッシェのフィターゼ生産株MT−40539及びキャンディダ ボイディニイのフィターゼ生産株MT−40544をそれぞれ1コロニーずつとり、5mlのYNB−URA培地(0.67% Yeast Nitrogen base (Difco社製)、2% glucose、20mg/l adenine、30mg/l leucine)に植菌し、28℃、48時間前培養を行った。本培養はそれぞれ酵素の誘導様式が異なるため、サッカロミセス セルビッシェについては表1(表1)に示すフィターゼ誘導培地に前培養液2mlを植菌し、キャンディダ ボイディニイについてはYNB−GMY培地(0.67% Yeast Nitrogen base (Difco社製)、3% glycerol、1.5% Methanol、0.5% Yeast extract)20mlに植菌前培養液2mlを植菌した。その後、28℃、4日間培養し、培養液を遠心分離して上清を得た。得られた上清を透析、もしくはamicon centricon 30 microconcentrator(amicon社製)を用いて限外ろ過する事により脱イオン交換水と置換し、活性測定に適当な濃度に希釈、もしくは濃縮を行なって活性測定を行った。細胞付随の活性はそれぞれの組換え体を遠心分離し脱イオン交換水に懸濁する操作を2回洗浄して活性測定に用いた。それぞれの活性は各組換え体の宿主細胞にベクターのみを組換えた形質転換体の持つ活性を差し引いて算出した。活性測定の方法は実施例3に記載されている方法を用いた。結果を表2(表2)に示す。表中、1u(unit)は反応温度70℃、pH4.4において1分間でフィチン酸ナトリウムからリン酸を1μmol遊離させる活性を示している。
表2(表2)の結果より、サッカロミセス セルビッシェのフィターゼ生産株MT−40539の場合は、細胞付随のフィターゼ活性に対し細胞外のフィターゼ活性が1:0.008の比であったが、キャンディダ ボイディニイのフィターゼ生産株MT−40544をメタノール、グリセロール及び酵母エキスを含む培地で培養した場合は、細胞付随のフィターゼ活性に対し細胞外のフィターゼ活性が1:1.2の比で見いだされた。また、メタノール資化性酵母のメタノール酸化酵素由来のプロモーターにより全体の発現量が向上する効果が加わり、キャンディダ ボイディニイのフィターゼ生産株MT−40544の細胞外のフィターゼ活性はサッカロミセス セルビッシェのフィターゼ生産株MT−40539の約1500倍となった。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】
本発明により、従来細胞外にはほとんど生産できなかったシュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼを、培地中に効率よく生産することが可能となった。すなわち本発明により細胞外のフィターゼの生産量を著しく向上させ、またフィターゼ全体の発現量を増加させることが可能となった。このように、フィターゼを安価にかつ大量に細胞外に生産できることは、ミオ−イノシトールの製造用酵素や、排泄物中のリン酸濃度の低減を目的とした家畜の飼料添加剤等にフィターゼを利用する上で、非常に有効である。
【0027】
【配列表】
【0028】
【図面の簡単な説明】
【図1】 シュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼのcDNAを含むプラスミドpPHY36の制限酵素地図である。
【図2】 シュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼをキャンディダ ボイディニイで発現するための発現組換えプラスミドpNNPH60の制限酵素地図である。
【符号の説明】
AOD1 promoter :キャンディダ ボイディニイのアルコールオキシダーゼのプロモーターを示す。
AOD1 terminator:キャンディダ ボイディニイのアルコールオキシダーゼのターミネーターを示す。
Ampr :アンピシリン耐性遺伝子を示す。
ori :大腸菌プラスミドの複製開始点を示す。
C.boidinii URA3:キャンディダ ボイディニイのオロチジン−5−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を示す。
Phytase cDNA :シュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼのcDNAを示す。
【発明の属する技術分野】
本発明はメタノール、グリセロールの少なくとも一方の添加により誘導可能であるアルコールオキシダーゼ遺伝子のプロモーターの下流に通常の分泌シグナルを持たないポリペプチドであるフィターゼをコードする遺伝子を結合した配列を有する組換えプラスミド、該組換えプラスミドで形質転換されたメタノール資化性酵母、該メタノール資化性酵母を培養して得られる培養液、菌体又はそれらの処理物、及びそれらを用いたフィターゼの生産方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
EP 699762号に記載されているシュワニオミセス オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)由来の脱糖鎖後の分子サイズが約50kDのフィターゼ(以下特別の断わりがない限り単にフィターゼと略す。)は、フィチン酸あるいはその塩をミオ−イノシトールまで分解することが可能で熱安定性に優れている酵素として知られている。
該フィターゼは、常温常圧下で単独でフィチンをミオ−イノシトールまで加水分解でき、またこの反応では強酸を用いないため、排水が環境へ与える負荷を低減できる。このため本酵素はミオ−イノシトール製造用酵素として期待されている。
また近年、フィターゼを飼料添加剤として家畜飼料に添加して、単胃動物が消化できないリン酸源であるフィチンを分解することにより、排泄物中のリン酸濃度を低減する試みがなされている。その際、飼料製造工程の乾燥工程において飼料が高温にさらされるが、該フィターゼは熱安定性に優れているため酵素の失活がより少なく、工業的に有用である。
【0003】
該フィターゼをコードする遺伝子はゲノム遺伝子、cDNA共にクローニングされており、1383bpのORFを持つ遺伝子としてその塩基配列についても開示されている。(EP 699762号)
EP 699762号で開示された塩基配列から予想されるフィターゼのアミノ酸配列及びシュワニオミセス オキシデンタリスの培養上清から精製されたフィターゼのN末端アミノ酸配列は、N末端のメチオニン残基以外同一である。このことから、本酵素は培養上清中に見いだされたタンパク質であるにもかかわらず、通常の分泌タンパク質に見られるような分泌の過程で切断される分泌シグナルが存在しないことがわかった。またKyteらの方法(Kyte.J.ら、J.Mol.Biol. 157:pp105-132(1982))によりタンパク質の疎水性領域の解析を行なったところ、本酵素のN末端に疎水性に富む領域が存在することがわかった。
実際に本発明者らは、EP 699762号記載のサッカロミセス セルビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)の形質転換酵母を用いてフィターゼの製造方法を鋭意検討したが、発現量が十分ではなく、大部分のフィターゼの活性は酵母細胞に付随しており、上清中に生産されるフィターゼ活性はごくわずかであった。フィターゼを工業的に利用しようとする場合、フィターゼが酵母細胞から遊離していることが経済性の点等で有利であるが、現在までのところ、フィターゼを細胞外に大量に生産する技術は確立されていない。
【0004】
一方、メタノール酸化酵素由来の強力なプロモーターを利用できるキャンディダ ボイディニイ(Candida boidinii)(特開平5−344895号)などのメタノール資化性酵母による異種タンパク質発現系が開発されている。中でもキャンディダ ボイディニイは、目的遺伝子を相同組換えにより規定した染色体の位置に組み込みが可能で、グリセロールとメタノールが共存する培地での1段階培養が可能である点で優れている。
特開平5−344895号によればアデニル酸キナーゼ、チトクロムC、及びペルオキシダーゼをキャンディダ ボイディニイ形質転換体で大量生産できることが示されている。そこで本発明者らは、フィターゼの大量生産のためにキャンディダ ボイディニイを用いることを考えた。しかし、アデニル酸キナーゼ及びチトクロムCは細胞内タンパク質で、該形質転換体により細胞内に生産されるタンパク質であり、またペルオキシダーゼは分泌過程で切断される通常の分泌シグナルを持つ分泌タンパク質で、サッカロミセス セルビッシェ形質転換体で細胞外に分泌され、細胞にはほとんど付随しないタンパク質であることが知られている(特開平4−228078)。
すなわち、該酵母がシュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼのごとき通常の分泌シグナルを持たないタンパク質を細胞外に効率よく生産するか否かは不明であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フィターゼ活性を有するポリペプチドを細胞外へ安価にかつ大量に生産できる形質転換体を提供することを課題とするものであり、本発明の目的は、フィターゼ活性を有するポリペプチドを発現可能な組換えプラスミドであって、メタノール及びグリセロールよりなる群から少なくとも1種選ばれる化合物により誘導可能なプロモーターを有し、該プロモーターの下流にフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を連結した組換えプラスミド、該組換えプラスミドで、メタノール資化性酵母を形質転換して得られる形質転換酵母、該形質転換酵母を培養することにより得られる、培養液、菌体又はそれらの処理物、及びそれらを用いたフィターゼ活性を有するポリペプチドの生産方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
通常、分泌シグナルが無いタンパク質を細胞外に分泌させようとする場合、その宿主で機能する分泌シグナルを該タンパク質のN末端に付加するか、もしくは付加した分泌シグナルをさらに改変して分泌量を向上させることを試みる。しかし、この方法においても効率的な分泌シグナルを見いだすことは容易ではなく、多くの試行錯誤が必要である。
【0007】
本発明者らは、このような分泌シグナルの検討に加え、発現量を増加させるため宿主について鋭意検討を行った。その結果、驚いたことにキャンディダ ボイディニイを宿主とした場合は、シグナル配列の付加を行なわなくても、即ち通常の分泌タンパク質に見られるような分泌シグナルがないシュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼが細胞外へ効率よく分泌、蓄積されることを見いだした。さらに、本発明者らはキャンディダ ボイディニイが、分泌シグナルの切断という通常の分泌タンパク質の分泌機構を介さずにタンパク質を効率よく細胞外へ生産することを見いだし、該知見に基づき本発明を完成させた。
【0008】
即ち本発明は、フィターゼ活性を有するポリペプチドを発現可能な組換えプラスミドであって、メタノール及びグリセロールよりなる群から少なくとも1種選ばれる化合物により誘導可能なプロモーターを有し、該プロモーターの下流にフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を連結した組換えプラスミド、該組換えプラスミドで、メタノール資化性酵母を形質転換して得られる形質転換酵母、該形質転換酵母を培養することにより得られる、培養液、菌体又はそれらの処理物、及びそれらを用いたフィターゼ活性を有するポリペプチドの生産方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明においてフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子とは、フィチン酸あるいはその塩からリン酸基を遊離させる活性を持つポリペプチドである限り特に限定はないが、好ましくはシュワニオミセス オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)由来の脱糖鎖後の分子サイズが約50kDのフィターゼをコードする遺伝子であり、具体的には配列番号2の配列の遺伝子が例示される。
【0010】
また、本発明においてメタノール及びグリセロールよりなる群から少なくとも1種選ばれる化合物により誘導可能なプロモーターとは、メタノール資化性菌のメタノール酸化酵素由来のプロモーターであり、例えばキャンディダ ボイディニイ(Candida boidinii)(特開平5−344895号)のAOD1プロモーター、ピキア パストリス(Pichia pastoris)(J.M.Creggら、Mol.Cell.Biol.5:pp.3376-3385(1985))のAOX1もしくはAOX2プロモーター、ハンセヌラ ポリモルファ(Hansenula polymorpha)(P.E.Sudberyら、Biochem.Soc.Trans.16:pp.1081ー1083(1988))のMOXプロモーターなど、メタノール資化性酵母におけるメタノール酸化酵素由来のプロモーターがあげられる。好ましくはキャンディダ ボイディニイのメタノール酸化酵素由来のプロモーターであり、そのようなものとして配列番号1に記載の配列を含むプロモーターが例示できる。
【0011】
本発明の組換えプラスミドは、上記メタノール及びグリセロールよりなる群から少なくとも1種選ばれる化合物により誘導可能なプロモーターの配列と、フィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子配列を適当なベクターに挿入して構成されている。そのために使用できるベクターとしては大腸菌の形質転換に利用される公知のベクター、例えばpUC18、pBR322等が例示できる。
【0012】
本発明の組換えプラスミドは、形質転換した細胞を判別するために、組換えプラスミド中に適当な選択マーカーを連結しておくことが望ましい。選択マーカーとしては核酸の合成に関与する遺伝子、アミノ酸の合成に関与する遺伝子など生育に関係する遺伝子や薬剤耐性を付与する遺伝子などが挙げられ、例えばアンピシリン耐性遺伝子等が例示できる。
【0013】
本発明の組換えプラスミドは、形質転換した細胞内に保持されるため細胞内で自律複製を可能にする配列を含むか、相同組換えにより染色体内に組み込むため宿主細胞の染色体と相同性の高い配列を含むことが望ましい。
【0014】
さらに、本発明の組換えプラスミドは発現効率を向上させるためにフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の下流にターミネーター付加しておくことが望ましい。例えばキャンディダ ボイディニイのAOD1ターミネーター等が例示できる。
【0015】
このような組換えプラスミドの例としてはpNNPH60が例示できる。
【0016】
本発明の組換えプラスミドで形質転換される宿主は異種タンパク質発現系が開発されているメタノール資化性酵母ならばいかなる宿主でも良く、例えばキャンディダ ボイディニイ、ピキア パストリス、ハンセヌラ ポリモルファなどがあげられる。好ましくはキャンディダ ボイディニイである。
【0017】
また、本発明のフィターゼを細胞外に効率よく生産するメタノール資化性酵母の形質転換体は、上記記載のプラスミドをメタノール資化性酵母を公知の形質転換方法を用いて形質転換することにより作製することができる。本発明の組換えプラスミドで形質転換されたメタノール資化性酵母の例としては、シュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼを生産するキャンディダ ボイディニイ形質転換株であるMT−40544(本菌株は受託番号FERM P−15665として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている)があげられる。
【0018】
本発明の形質転換体酵母を培養する培地としては、グリセロール及びメタノールのうち少なくともひとつを含む培地であれば特に制限はなく、使用菌株の利用し得る窒素源、無機塩類、更に微量の有機栄養物等を適当に含有する合成培地、天然培地のいずれも使用できる。培養条件としては、菌株や培地によっても異なるが、培養温度は20℃〜40℃、培地のpHは3.0〜7.0が望ましい。
【0019】
本発明の形質転換酵母を培養して得られた培養液、菌体又はそれらの処理物とは、培養した菌体を含む培地、培養した菌体を除いた培養上清、及びこれらから遠心分離やろ過等で集菌した菌体を機械的破壊、超音波処理、凍結融解処理、乾燥処理、溶媒処理、加圧減圧処理、浸透圧処理、自己消化、界面活性剤処理、酵素処理により破壊したもの、及び該破壊物の粗精製物、並びに培養液や菌体から分離精製されたフィターゼ、更には培養により得られた菌体、菌体或いは培養液から分離精製されたフィターゼをアルギン酸ナトリウム、κ−カラギーナン、ポリアクリルアミド等の固定化剤を用いて固定化したものを含む。
【0020】
【実施例】
以下本発明を実施例により更に詳しく説明するがこれらの実施例は本発明の内容を何等限定するものではない。
実施例1 発現プラスミドの作製
EP 699762号記載のシュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼをコードするcDNAを含むプラスミドをMT−10743(本菌株は受託番号FERM BP−5108として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている)から抽出し、このプラスミドをpPHY36とした。このプラスミドのXhoI siteをT4ポリメラーゼで平滑末端にした後、NotI siteを持つリンカー(TAKARA Cat.No.4966P)を加えライゲーションし、NotI siteを作製した。該プラスミドをNotIで切断し調製したcDNA断片を、キャンディダ ボイディニイの異種タンパク質発現用プラスミドであるpNoteIのNotI siteにT4リガーゼで結合し、pNNPH60を作製した。pPHY36の制限酵素地図を図1(図1)に、pNNPH60の制限酵素地図を図2(図2)に示す。
【0021】
実施例2 形質転換
特開平5−344895号に記載のキャンディダ ボイディニイTK62株を5mlのYPD(1% Yeast extract、2% polypeptone、2% Glucose)培地に植菌し、28℃、30時間振とう培養し、前培養液とした。得られた前培養液を用いて100mlのYPD培地にOD610が0.2となるように植菌し、28℃でOD610が1.0付近になるまで約12時間培養した。この培養液を集菌し、25mlのリチウム溶液(10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、3mM lithium acetate)に懸濁した。これを遠心分離により集菌し、再度5mlのリチウム溶液に懸濁した後、振とうしながら30℃で1時間インキュベートし、これをコンピテントセルとした。1.5mlチューブに熱変性させた10μg/μl calf thymusを10μl、BamHIで切断した1μg/μl pNNPH60を5μl、およびコンピテントセル100μlを加え、ピペッティングで穏やかに混合した後、30℃、30分間静置した。静置後、700μlの45%PEG溶液(45%(w/v)polyethylene glycol#4000(PEG)、10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、3mM lithium acetate)を加え、ピペティングで穏やかに混合した後、30℃、1時間静置した。その後、42℃、5分間のヒートショックをかけ、30℃で5分間静置した。これを遠心分離で集菌した後、1mlの滅菌水に懸濁して200μlずつYNBプレート(0.67% YeastNitrogen base w/o Amino acid(Difco社製)、2% glucose、 2% 寒天)に塗布して28℃、3日間培養した。この操作によりpNNPH60で形質転換された菌体のみがコロニーを形成した。
【0022】
実施例3 フィターゼ高生産株のスクリーニング
実施例2により得られたキャンディダ ボイディニイ形質転換株の中からシュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼを高発現する株を選択するため以下に示す培養を行ない、培養上清中のフィターゼ活性を比較した。
シングルコロニーを5ml YPD培地で28℃、24時間前培養した。この前培養液を用いて20mlのYPGM培地(1% Yeast extract、2% polypeptone、3% Glycerol、1.5% Methanol)にOD610が0.2となるように植菌し、28℃で3日間培養し、培養液を遠心分離して上清を得た。得られた上清を限外濾過(amicon centricon 30 microconcentrator)により10倍に濃縮した後、脱イオン交換水と置換した。脱イオン交換水と置換された液を反応に適した濃度に更に濃縮、もしくは希釈した液100μlに60mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.4)、 5mMフィチン酸ナトリウムの水溶液900μlを加え、70℃で30分間反応した。反応終了後、反応液に5N H2SO4を100μl添加して反応を停止した。対照として基質を含むバッファー液にあらかじめ5N H2SO4を100μlを加えたものに酵素液を加えた画分を用意した。反応停止後、反応液を96穴マイクロタイタープレート上で1〜2048倍希釈し、希釈液100μlあたり50μlのリン酸検出液を加え30分間振とう後、ABS620を測定した。1〜10nMの範囲のリン酸校正曲線により、得られた測定値から、放出されたリン酸量を決定した。この操作により形質転換株には様々なフィターゼ生産性を示す菌株が存在することが判明し、その中からシュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼ高生産株MT−40544が得られた。
【0023】
実施例4 シュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼ生産酵母の比較実施例3により得られたキャンディダ ボイディニイのシュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼ高生産株MT−40544とEP 699762号に開示されているサッカロミセス セルビッシェのシュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼ生産株MT−40539(本菌株は受託番号FERMBP−5109として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている)との比較を以下の方法で行った。
サッカロミセス セルビッシェのフィターゼ生産株MT−40539及びキャンディダ ボイディニイのフィターゼ生産株MT−40544をそれぞれ1コロニーずつとり、5mlのYNB−URA培地(0.67% Yeast Nitrogen base (Difco社製)、2% glucose、20mg/l adenine、30mg/l leucine)に植菌し、28℃、48時間前培養を行った。本培養はそれぞれ酵素の誘導様式が異なるため、サッカロミセス セルビッシェについては表1(表1)に示すフィターゼ誘導培地に前培養液2mlを植菌し、キャンディダ ボイディニイについてはYNB−GMY培地(0.67% Yeast Nitrogen base (Difco社製)、3% glycerol、1.5% Methanol、0.5% Yeast extract)20mlに植菌前培養液2mlを植菌した。その後、28℃、4日間培養し、培養液を遠心分離して上清を得た。得られた上清を透析、もしくはamicon centricon 30 microconcentrator(amicon社製)を用いて限外ろ過する事により脱イオン交換水と置換し、活性測定に適当な濃度に希釈、もしくは濃縮を行なって活性測定を行った。細胞付随の活性はそれぞれの組換え体を遠心分離し脱イオン交換水に懸濁する操作を2回洗浄して活性測定に用いた。それぞれの活性は各組換え体の宿主細胞にベクターのみを組換えた形質転換体の持つ活性を差し引いて算出した。活性測定の方法は実施例3に記載されている方法を用いた。結果を表2(表2)に示す。表中、1u(unit)は反応温度70℃、pH4.4において1分間でフィチン酸ナトリウムからリン酸を1μmol遊離させる活性を示している。
表2(表2)の結果より、サッカロミセス セルビッシェのフィターゼ生産株MT−40539の場合は、細胞付随のフィターゼ活性に対し細胞外のフィターゼ活性が1:0.008の比であったが、キャンディダ ボイディニイのフィターゼ生産株MT−40544をメタノール、グリセロール及び酵母エキスを含む培地で培養した場合は、細胞付随のフィターゼ活性に対し細胞外のフィターゼ活性が1:1.2の比で見いだされた。また、メタノール資化性酵母のメタノール酸化酵素由来のプロモーターにより全体の発現量が向上する効果が加わり、キャンディダ ボイディニイのフィターゼ生産株MT−40544の細胞外のフィターゼ活性はサッカロミセス セルビッシェのフィターゼ生産株MT−40539の約1500倍となった。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】
本発明により、従来細胞外にはほとんど生産できなかったシュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼを、培地中に効率よく生産することが可能となった。すなわち本発明により細胞外のフィターゼの生産量を著しく向上させ、またフィターゼ全体の発現量を増加させることが可能となった。このように、フィターゼを安価にかつ大量に細胞外に生産できることは、ミオ−イノシトールの製造用酵素や、排泄物中のリン酸濃度の低減を目的とした家畜の飼料添加剤等にフィターゼを利用する上で、非常に有効である。
【0027】
【配列表】
【0028】
【図面の簡単な説明】
【図1】 シュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼのcDNAを含むプラスミドpPHY36の制限酵素地図である。
【図2】 シュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼをキャンディダ ボイディニイで発現するための発現組換えプラスミドpNNPH60の制限酵素地図である。
【符号の説明】
AOD1 promoter :キャンディダ ボイディニイのアルコールオキシダーゼのプロモーターを示す。
AOD1 terminator:キャンディダ ボイディニイのアルコールオキシダーゼのターミネーターを示す。
Ampr :アンピシリン耐性遺伝子を示す。
ori :大腸菌プラスミドの複製開始点を示す。
C.boidinii URA3:キャンディダ ボイディニイのオロチジン−5−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を示す。
Phytase cDNA :シュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼのcDNAを示す。
Claims (1)
- フィターゼ活性を有するポリペプチドを発現可能な組換えプラスミドで形質転換したキャンディダ・ボイディニイ(Candida boidinii)を培養することにより得られる培養上清からフィターゼを生産する方法であって、該組換えプラスミドが配列表の配列番号1に記載のDNA配列を有するプロモーターを有し、該プロモーターの下流に配列表の配列番号2に記載のDNA配列を有する遺伝子を連結した組換えプラスミドであることを特徴とする方法。
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