JP3794542B2 - 水中油乳化型多層式化粧料 - Google Patents

水中油乳化型多層式化粧料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水中油型多層式化粧料、とくにその振盪時の分散性及び、外観を含めた層形成能の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
多層式化粧料とは、二層以上の層からなる液状の化粧料で、油層−水層または水層−粉末層の二層より構成される場合が多い。これらはいずれも、使用時には振盪することにより、各々均一な乳液状、粉末分散状となり、使用後は静置することにより、分散した油分や粉末が上部または下部に集まり、再び多層状となるものである。
【0003】
このうち、油層−水層より形成される多層式化粧料の場合、少量の界面活性剤等を配合することにより、振盪時に一時的に乳化状態となり、使いやすくすることができる。この場合、一時的に乳化した油分は、時間とともに徐々に合一して大きな油滴となって上部に集まり、均一な油層を形成するようになっている。このタイプの多層式化粧料の問題点としては、一時的に形成した乳化がある程度以上安定に存在してしまうと、きれいな二層状に分離することができなくなることである。きれいな二層状に分離させるためには、処方上で微妙な乳化のバランスを取る必要があり、そのため処方の幅が限られ、幅広い使用感触を持たせることが難しくなっている。またこのタイプの多層式化粧料の欠点としては、分離後の油層、水層の各層が、どちらもほぼ透明の外観となるため、多層式であることが一見して判りづらいことであり、そのために使用方法を誤ったり、商品としての特徴が外観から解りにくくなるなどの問題が存在する。
【0004】
上記の問題点を解決させるための方法として、油分が乳化状態を保ったままで上部に集まり、白濁した乳化層を形成する多層式化粧料が考案されている。この場合、一時的に乳化した油分を再合一させるという微妙な段階を経させる必要が無いため、処方に幅を持たせられる可能性があること、また二層分離後の外観は、上部の乳化層が白濁状であるため、二層式であることが外観から容易に判別できるというメリットがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしこのタイプの多層式化粧料には、二層状に分離するまでに非常に長い時間がかかるという大きな問題点があった。
【0006】
二層状に分離する速さ、すなわち均一に分散した乳化粒子が浮上してくる速さには、多くの要因が関わっているが、一般的にはストークスの法則として知られているように、乳化粒子の移動速度は、乳化粒子の半径の二乗に比例し、油分と水相の密度差に比例し、水相の粘度に反比例する。ここで油分と水相の密度差が十分にあり、水相の粘度が十分に低い場合には、二層状に分離する速さは、乳化粒子の大きさに依存することになる。具体的に二層状に分離するまでにかかる時間を概算してみると、乳化粒子の大きさが1000μmの場合は、分離にかかる時間は数分程度、100μmの場合は数時間程度、10μmの場合は数日程度、1μmの場合は数年かかると計算される。
【0007】
通常の化粧品は毎日使うものであることを考慮に入れると、使ってから数時間以内に二層状に戻るのが理想的であり、1日以上静置しても前日と同じ状態に戻らないのは、化粧品としては欠点であると考えられる。そのため、乳化粒子は100μm程度以上の大きさに調製する必要がある。ところが、一般的に乳液、クリームなどで調製できるエマルションでは、乳化粒子の大きさは1μmから10μm程度のものが多く、100μm以上の大きさの乳化粒子を安定に調製するのは実際には非常に難しい。大きな乳化粒子を持つエマルションの調製には、通常、分散法と呼ばれる、機械力によって乳化粒子を細かくする方法が用いられるが、この方法では、乳化粒子の大きさには分布が生じるため、必ずある程度の小さな乳化粒子が存在することになる。ここで生じる小さな乳化粒子は、上述したように浮上する速度が非常に遅いため、静置することによって大部分の大きな乳化粒子が上部に浮上した後も、依然下部相に小さな乳化粒子が分散したままであるため、長時間に渡って下部相が濁った状態となり、外観のきれいな二層状とすることは非常に難しい。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み為されたものであり、その目的は、多層状に分離する時間が短く、外観がきれいな水中油乳化型多層式化粧料を提供することにある。
【0009】
本発明者等は上記現状に鑑み、油分が乳化状態を保ったままで上部(または下部)に集まり、白濁した乳化層を形成する多層式化粧料において、二層状に分離する時間が短く、外観がきれいな二層状となる多層式化粧料を得るべく鋭意研究を行った結果、平均重合度が150〜350の間であるポリエチレングリコールと、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油またはポリオキシエチレンジヒドロコレステリルエーテルであるポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤と、油性原料とを特定の重合比で組み合わせて配合することにより、数時間から1日程度で二層状に分離し、外観のきれいな多層式化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の水中油乳化型多層式化粧料は、平均重合度が150〜350の間であるポリエチレングリコールと、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油またはポリオキシエチレンジヒドロコレステリルエーテルであるポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤と、油性成分とを含有することを特徴とする。また、本発明の水中油乳化型多層式化粧料においては、組成物の30℃における粘度が50mPa・s未満であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の水中油乳化型多層式化粧料においては、平均重合度が150〜350の間であるポリエチレングリコールの含有量が0.5〜20重量%であり、ポリオキシエチレン非イオン性界面活性剤の含有量が0.02〜5重量%であることが好適である。
【0012】
また、本発明の水中油乳化型多層式化粧料においては、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油またはポリオキシエチレンジヒドロコレステリルエーテルであることが好適である。
また、本発明の水中油乳化型多層式化粧料においては、イオン性界面活性剤の含有量が0.001重量%未満であることが好適である。
【0013】
また、本発明の水中油乳化型多層式化粧料においては、界面活性を持たない電解質の含有量が0.1重量%以上であることを特徴とする。
また、上記水中油乳化型多層式化粧料においては、全組成物の重量に対するイオン性界面活性剤の重量比をA、全組成物の重量に対する界面活性を持たない電解質の重量比をBとするとき、log(B)/log(A)が0.6以下となる濃度であることが好適である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
本発明は水中油型に乳化した油分を含む液状の多層式化粧料に関し、更に詳細には、使用時に振盪することにより、乳化した油分が均一に分散して全体が白濁した状態となり、使用後には静置することにより、乳化した油分が上部または下部に集まって層を形成し、このときの層の形成速度が速く、各層の外観が美しい多層式化粧料に関するものである。本発明の概念図を示すと図1となる。すなわち通常乳化粒子が小さい場合は、層の形成速度が遅いが、本発明においては、特定重合度のポリエチレングリコールと、特定非イオン性界面活性剤とを配合することにより、分散後細かい乳化粒子を一時的に凝集させて凝集体を形成させ乳化粒子の大きさを疑似的に大きくすることにより、層の形成能を高めることが可能となった。すなわち、これにより通常困難な乳化粒子径100μm未満でも十分に短時間で層分離が可能となる。またこの凝集作用により極小さな乳化粒子も集めることができ水層の透明度も著しく改善することができたものである。そして多層に分かれてクリーミングした後の再分散性にも優れたものである。
【0015】
まず、本発明の各構成成分について述べる。
ポリエチレングリコール
本発明において用いられるポリエチレングリコールは、平均重合度が150以上、350以下のもので、すなわち後述INCI名称では、PEG-150からPEG-350の間に含まれるものである。粧配規の名称では、ポリエチレングリコール6000からポリエチレングリコール20000の間に含まれるもので、平均分子量は6000から25000の間である。これら特定重合度のポリエチレングリコールは乳化粒子を凝集させ、かつ組成物の粘度が大きくなりにくいので多層式化粧料の優れた層分離能に寄与することができる。
【0016】
ここでポリエチレングリコールについて説明すると、ポリエチレングリコールは、酸化エチレンの重合体で、重合度によって各種の性状の異なる製品を生じるので、その平均重合度の違いによって区別されている。米国のCTFA International Cosmetic Ingregient Dictionary には、表1に示すように本発明に該当する13種類のポリエチレングリコールが記載されている。INCI(International Nomenclature Cosmetic Ingredient)の命名法では、例えば平均重合度が150であるものをPEG-150のように平均重合度によって名称が付けられている。平均重合度が1000以上の場合については、例えば平均重合度が2000であるものはPEG-2Mのように名称が付けられている。また、日本の粧配規、外原規等の公定書には、表1に示す本発明に該当する7種類が記載されており、その平均分子量によって、ポリエチレングリコール6000のように名称が付けられている。表1に、本発明に該当するポリエチレングリコールのINCI名称と、それに該当する粧配規、外原規名称を並列して記載する。また、各ポリエチレングリコールの重合度には分布があるため、およその分子量の分布についても、文献値があるものは表1に併せて記載する。
【0017】
【表1】
Figure 0003794542
【0018】
また、本発明において、平均重合度が150から350の間であるポリエチレングリコールの含有量は0.5〜20重量%の範囲が好ましい。0.5重量%未満の配合量では、層分離能が十分でなかったり、外観のきれいな多層状にならないことがあるので好ましくない。一方20重量%を超える含有量では、層分離能が低下したり使用感がべたつくなどの欠点が生じることがある。
【0019】
ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤
ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤は、親水基としてポリオキシエチレン鎖を持つ界面活性剤で、疎水基(親油基)としては様々な構造を持たせることができる。この疎水基の構造の違いにより何種類かの界面活性剤が存在するが、本発明においては、親水基としてポリオキシエチレン鎖を持ち、且つイオン性の親水基を持たない構造のものであれば、いずれも用いることができる。具体的な例としては、次のものが挙げられる。(以下ポリオキシエチレンをPOEと略す。)POEソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルエーテル、POEフィトステロールエーテル、POEフィトスタノールエーテル、POEコレステリルエーテル、POEジヒドロコレステリルエーテル、POEポリオキシプロピレンアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POEラノリン、POEラノリンアルコール、POEミツロウ誘導体、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、POEアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、POEトリメチロールプロパン脂肪酸エステル、POE・メチルポリシロキサン共重合体、などを用いることができるが、これらのうちPOE硬化ヒマシ油、POEジヒドロコレステリルエーテルが特に好ましい。上記に挙げたポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤は、さらにアルキル鎖の構造の違いや、ポリオキシエチレン鎖の付加重合数の違いにより、あらゆる異なる性質を持つものが存在する。本発明では、上記ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。本発明において、上記ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤を用いることにより、水相の透明度の優れた水中油乳化型多層式化粧料とすることができる。
【0020】
また、本発明において、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤の含有量は0.02〜5重量%の範囲が好ましい。0.02重量%未満の配合量では、十分に乳化状態を安定化することができないことがある。一方5重量%を超える含有量では、逆に層分離の速度が遅くなったり、使用性の面でべたつきがでることがあるので好ましくはない。
【0021】
油性成分
本発明で用いられる油性成分としては、通常化粧料で用いられる油性成分ならば、どのようなものでも用いることができる。それらの油性成分としては、オリーブ油等の天然植物油類、カルナバロウ等のワックスエステル類、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン等の炭化水素類、2-エチルヘキサン酸セチル等のエステル油類、メチルポリシロキサン等のシリコーン油類、高級脂肪酸類、高級アルコール類などが挙げられる。これら油性成分を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
組成物粘度
本発明の水中油乳化型多層式化粧料の粘度は、30℃において、50mPa・s未満であることが好適である。これ以上の粘度においては、多層に分離しなかったり、層分離速度が著しく遅くなることがあるため好ましくはない。
【0023】
イオン性界面活性剤
本発明においては、組成物中のイオン性界面活性剤の含有量が0.001重量%未満であることが好ましい。0.001重量%以上含有する場合、層分離能や水相の透明感を損なうことがあるため、好ましくない。ただし、後述する界面活性を持たない電解質を含む場合はこの限りではない。
【0024】
界面活性を持たない電解質
また、本発明においては、イオン性界面活性剤を0.001重量%以上含有する場合であっても、界面活性を有しない電解質を0.1重量%以上含有させることによって、本発明をなし得ることができる。
【0025】
本発明で用いられる界面活性を持たない電解質とは、水に溶解して溶液中で電荷を持ったイオンとなる物質であり、なお且つ水溶液中でミセルのような会合体を形成しないか、あるいは乳化物中において水−油界面に特異的に吸着することのない物質である。その多くは酸と塩基の組合せによる塩である。組合せとなる具体的な酸としては、塩酸塩、リン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、酸性アミノ酸塩、サリチル酸塩、安息香酸塩、スルフォ石炭酸塩、エデト酸塩、アスコルビン酸塩、グルコン酸塩、ピロリドンカルボン酸塩、などが挙げられ、また具体的な塩基としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、トリエタノールアミン塩、アミノメチルプロパノール塩、塩基性アミノ酸塩、などが挙げられ、これらの酸と塩基を任意に組み合わせることができる。また、塩ではなく単独で水溶液中で電荷を持つ物質として、アミノ酸、ベタインなどの両性物質を用いることができる。
【0026】
また、イオン性界面活性剤の濃度と、界面活性を有しない電解質の最低必要とする濃度との関係は下記の通りである。すなわち、全組成物の重量に対するイオン性界面活性剤の重量比をA、全組成物の重量に対する界面活性を持たない電解質の重量比の最低必要濃度をBとすると、イオン性界面活性剤を組成物中に含有する場合には、log(B)/log(A)が0.6以下となる濃度であることが好ましい。上記値が0.6より大きいと、水層の透明感や優れた層形成能を損なうことがあるので好ましくはない。
【0027】
その他の成分
本発明に係る水中油乳化型多層式化粧料中には、上記の必須構成成分のほかに、本発明の効果を損なわない限り必要に応じ一般的に化粧料に配合される成分を配合することができる。それらの成分としては、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ソルビトール、マルチトールなどの多価アルコール類、タルク、カオリン、酸化チタン、無水ケイ酸、セルロース粉末等の粉末、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム等の水溶性高分子、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、防腐剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸化防止剤、香料などが挙げられる。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、配合量は特に記載がない限り重量%であり、30℃における各組成物の粘度は、特に記載のない限り50mPa・s未満である。実施例に先立ち、本発明の開発過程で行われた試験について以下に示す。
【0029】
凝集成分の選択
本発明者らは、まず下記処方の白濁ローションに適量の各種成分を添加し、顕微鏡で乳化粒子の状態を観察するとともに、ローションの外観を観察することによって、乳化粒子を凝集させることができる成分のスクリーニングを行った。結果を表2に示す。
【0030】
<白濁ローション処方>
メチルポリシロキサン 1重量%
POE(60)硬化ヒマシ油 0.5
1,3−ブチレングリコール 5
防腐剤 適量
精製水 残余
【0031】
[製法]
高能力分散装置を用いて、乳化粒子径を1から5μm程度の大きさに乳化する。
【0032】
【表2】
Figure 0003794542
【0033】
表2の結果より、ポリエチレングリコール(PEG−350)を添加したときに、乳化粒子の凝集が見られ、乳化粒子のクリーミングが起こることがわかる。
また、ここで生成した乳化粒子の凝集物は、経時で変化せず、合一も起こらなかった。凝集物は攪拌すると分散し、静置すると再び短時間で凝集した。
【0034】
つぎに、本発明者らは水中油乳化型多層式化粧料を完成させるため、さらに検討を行った。以下、各実施例で用いた評価法を説明する。
【0035】
[二層分離速度測定]
ガラス製の沈降管(容量100ml、外径30mm、高さ250mm、100ml目盛付き)に良く分散させた試料を100ml入れ、30℃恒温槽に入れて30℃になるまで放置する。30℃になったら、沈降管を1分間、約25回反転して中味試料を良く分散させ、再び30℃恒温槽に静置する。そこから24時間後に、二層に分離した状態での下層の容積を測定する。二層分離速度の評価は、平衡状態に達したときの下層容積によっても異なるが、例えば平衡状態での下層容積が80mlの場合、24時間での値がその半分の40ml以上であれば十分に分離速度が速いと判断でき、10ml未満の場合は、分離速度が遅いと判断される。
【0036】
[水層の透明度試験]
ガラス製の沈降管(容量100ml、外径30mm、高さ250mm、100ml目盛付き)に良く分散させた試料を100ml入れ、30℃恒温槽で24時間放置し、二層に分離させる。沈降管を黒色板の前に置き、肉眼で水層の透明度を観察し、以下の基準で判定した。
○:ほぼ透明
△:透明性はあるが、やや白濁している
×:白濁し、ほとんど透明性が無い
【0037】
[使用性試験]
20〜30代の女性パネル10名に、試料約1mlを顔面に塗布してもらい、使用感のアンケートを取り、以下の基準で評価した。
○:「べたつく」と答えたパネルが2名以下であった
△:「べたつく」と答えたパネルが3名以上5名以下であった
×:「べたつく」と答えたパネルが6名以上であった
【0038】
[乳化安定性試験]
容量100mlのスクリューキャップ付きガラス管に試料50mlを入れ、1分間に300回の割合で振盪を繰り返し、これを20分間続ける。その後試料を取り、顕微鏡で乳化粒子の大きさを測定するとともに、油分の分離などを観察し、以下の基準で評価した。
○:乳化粒子の大きさに変化が無く、油分の分離も認められない
△:乳化粒子が一部大きくなっているが、油分の分離は認められない
×:乳化粒子が大きくなり、油分の分離が認められる
【0039】
本発明者らはある重合度のポリエチレングリコールと特定の非イオン性界面活性剤を用いることにより、優れた水中油乳化型多層式化粧料となることを見出した。そして、さらに実際の化粧料として本発明を完成させるため以下の試験を行った。次の表3から表6記載の配合組成より成る多層式化粧料を調製し、その二層分離速度測定、分離後の水層(下層)の透明度試験、使用性試験、および安定性試験を行った。
【0040】
ポリエチレングリコールの重合度の検討
つぎに、本発明者らはポリエチレングリコールの重合度の検討を下記表の組成物を用いて行った。
【0041】
【表3】
Figure 0003794542
【0042】
表3より明らかなように、本発明の多層式化粧料(実施例1〜3)は、二層分離速度が速く、二層の外観にも優れていることが解る。ポリエチレングリコールの平均重合度が150よりも少ない場合は(比較例1〜3)、24時間後の下層容積が10ml未満と分離速度が遅く、満足な結果が得られない。また、ポリエチレングリコールの平均重合度が25000を超える場合は、(比較例4)使用性がべたつくため、満足な結果が得られない。
【0043】
特定重合度ポリエチレングリコールの配合量の検討
つぎに、本発明者らは、特定重合度ポリエチレングリコールの配合量の検討を下記表の組成物を用いて行った。
【0044】
【表4】
Figure 0003794542
【0045】
表4より明らかなように、本発明の水中油乳化型多層式化粧料においては、平均重合度が150から350の間であるポリエチレングリコールの配合量が0.5重量%よりも少ない場合は(試験例1、2)分離速度が遅く、配合量が20重量%を超える場合は(試験例7)べたつきで使用性が悪くなるため、特定重合度ポリエチレングリコールの配合量は0.5重量%〜20重量%であることが好ましい。
【0046】
界面活性剤の種類の検討
つぎに本発明者らは、界面活性剤の種類の検討を下記表の組成物を用いて行った。
【0047】
【表5】
Figure 0003794542
【0048】
表5より明らかなように、本発明の多層式化粧料は、二層分離速度が速く、二層の外観にも優れていることが解る。アニオン性界面活性剤を用いた場合(比較例5)や、ポリオキシエチレン系以外の非イオン性界面活性剤を用いた場合(比較例6)は、二層分離速度が遅く、いずれも満足な結果が得られない。
また、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いた場合(表4試験例5参照)とポリオキシエチレンジヒドロコレステリルエーテルを用いた場合(実施例4)は安定性がとくに良く、中でもこれらが特に好ましい。
【0049】
ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤の配合量の検討
つぎに、本発明者らは、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤の配合量の検討を下記表の組成物を用いて行った。
【0050】
【表6】
Figure 0003794542
【0051】
表6より明らかなように、本発明の多層式化粧料においては、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤の配合量が0.02重量%よりも少ない場合は(試験例8)、安定な乳化が保てず、一方ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤の配合量が5重量%よりも多い場合は(試験例12)、二層分離速度が遅く、べたつきで使用性が悪くなるため、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤の配合量は0.02〜5重量%の間であることが好ましい。
【0052】
粘度と分離速度の関係
次の表7記載の配合組成より成る多層式化粧料を調製し、その粘度と二層分離速度の測定を行った。
【0053】
【表7】
Figure 0003794542
【0054】
表7にキサンタンガムの含有量を変えて組成物の粘度を変化させた場合の二層分離速度の結果を示すが、この結果から、組成物の30℃における粘度が50mPa・s未満の場合(試験例13〜16)十分な二層分離速度が得られるが、50mPa・s以上の場合(試験例17、18)二層分離速度が遅く、本発明の効果が十分に発揮されないことがわかる。すなわち、組成物の30℃における粘度が50mPa・s未満であることが本発明の好ましい条件の一つであることがわかる。
【0055】
つぎに、本発明者らは、アニオン性界面活性剤などのイオン性界面活性剤をどの程度まで本発明の水中油乳化型多層式化粧料に用いることができるかを検討した。
イオン性界面活性剤の有無と二層分離状態との関係
下記組成からなる水中油乳化型多層式化粧料を調製し、組成物中のイオン性界面活性剤の濃度(下記処方中Xで示す)と、電解質の濃度(下記処方中Yで示す)を変化させた各々の多層式化粧料を調製し、それらについて、静置24時間後における二層分離状態と、分離後の水層(下層)の透明度を観察した。結果を表8に示す。
【0056】
[処方]
(1)PEG-350 2重量%
(2)メチルポリシロキサン 2
(3)POE(30)ジヒドロコレステリルエーテル 0.2
(4)ステアロイルグルタミン酸1ナトリウム X
(5)リン酸1ナトリウム Y
(6)エタノール 2
(7)1,3-ブチレングリコール 2
(8)メチルパラベン 0.2
(9)精製水 残余
【0057】
[判定基準]
○ :二層に分離し、下層がほぼ完全に透明になっている
○△:二層に分離し、下層がかすかに白味を帯びた透明になっている
△ :二層に分離し、下層がやや白濁した半透明になっている
△×:全体が均一に白濁し、一部油分が上部に集まっている
× :全体が均一に白濁している
【0058】
【表8】
Figure 0003794542
【0059】
表8から明らかなように、イオン性界面活性剤であるステアロイルグルタミン酸1ナトリウムの濃度が0.001%未満である場合(表8の一番左の列)、二層状の外観になることが判る。通常の一般的な乳化組成物の場合、脂肪酸石鹸などのイオン性界面活性剤を乳化剤として用いる場合が多いが、本発明においては、非イオン性界面活性剤のみを乳化剤として用い、イオン性界面活性剤を含有しないことが本発明のより好ましい条件の一つである。
【0060】
また、イオン性界面活性剤を0.001%以上含有する場合であっても(表8の左から2番目以降の列)、界面活性剤を有しない電解質を0.1%あるいはそれ以上含有させることにより、二層状の外観とすることができる。
【0061】
またこの場合には、イオン性界面活性剤の濃度と、界面活性を有しない電解質の最低必要とする濃度との間には、一定の関係が存在することが、表8の実験から導き出される。全組成物の重量に対するイオン性界面活性剤の重量比をA(X/100に相当)、全組成物の重量に対する界面活性を持たない電解質の重量比の最低必要濃度をB(Y/100に相当)とするとき、最低必要なBの値に対して、log(B)/log(A)=0.6という関係が成り立つことが表9より判る。即ち、イオン性界面活性剤を組成物中に含有する場合には、log(B)/log(A)が0.6以下となる濃度であることが本発明のより好ましい条件の一つである。
【0062】
【表9】

Figure 0003794542
【0063】
以下、さらに本発明の実施例を挙げる。
<実施例9>
下記の組成からなる水中油乳化型多層式化粧料を調製した。
[処方]
(1)PEG−6 3重量%
(2)PEG−32 3
(3)PEG−350 2
(ポリエチレングリコール20000、平均重合度350)
(4)POE(30)ジヒドロコレステリルエーテル 0.3
(5)メチルポリシロキサン 5
(6)クエン酸 0.1
(7)クエン酸ナトリウム 0.3
(8)メチルセルロース 0.1
(9)カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
(10)エタノール 10
(11)防腐剤 適量
(12)香料 適量
(13)精製水 残余
[製法]
(13)に(1)から(3)および(6)から(9)を添加溶解する。次に(10)に(4),(11),(12)を溶解したものを混合する。次に(5)を添加して強い攪拌を加え乳化する。
二層分離速度が速く、外観、使用性ともに良好な多層式化粧料が得られた。
【0065】
実施例10>下記の組成からなる水中油乳化型多層式化粧料を調製した。
【0066】
本発明の水中油乳化型多層式化粧料は、平均重合度が150〜350の間であるポリエチレングリコールと、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油またはポリオキシエチレンジヒドロコレステリルエーテルであるポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤と、油性成分を含有するので、使用時に振盪することにより、乳化した油分が上部または下部に集まって層を形成し、このときの層の形成速度が速く、各層の外観が良好な多層式化粧料とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる水中油乳化型多層式化粧料の多層分離機構の説明図である。

Claims (4)

  1. 平均重合度が150〜350の間であるポリエチレングリコールを0.5〜20重量%と、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油またはポリオキシエチレンジヒドロコレステリルエーテルであるポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤を0.02〜5重量%と、油性成分とを含有し、水中油型乳化粒子からなる乳化層、及び水層から構成される組成物であり、該組成物の30℃における粘度が50 mPa s 未満であることを特徴とする水中油乳化型多層式化粧料。
  2. 請求項1記載の水中油乳化型多層式化粧料において、イオン性界面活性剤の含有量が0.001重量%未満であることを特徴とする水中油乳化型多層式化粧料。
  3. 請求項1または請求項2記載の水中油乳化型多層式化粧料において、界面活性を持たない電解質の含有量が0.1重量%以上であることを特徴とする水中油乳化型多層式化粧料。
  4. 請求項記載の水中油乳化型多層式化粧料において、全組成物の重量に対するイオン性界面活性剤の重量比をA、全組成物の重量に対する界面活性を持たない電解質の重量比をBとするとき、log(B)/log(A)が0.6以下となる濃度であることを特徴とする水中油乳化型多層式化粧料。
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