JP3794350B2 - 系統連系インバータ及びこれを用いた系統連系システム - Google Patents

系統連系インバータ及びこれを用いた系統連系システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、太陽電池や燃料電池などを用いた系統連系システムに関し、より詳しくは、系統連系インバータの出力電流に直流成分が発生しないよう補正する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7は例えば特開平8−149842号公報に開示されている従来の系統連系インバータの構成例である。この図において、102は太陽電池や燃料電池等により形成された直流電源、108は平滑用コンデンサ、105は内部にスイッチング素子105aを有し、入力電流を交流に変換するインバータ、107は波形補正用フィルタである。120は電流検出器で例えばホールCTまたは変流器で構成され、インバータ105の出力電流を検出する。電流検出された検出信号は全波整流回路127で整流される。121はインバータ105の出力電流の電流値を指令する電流指令装置で、この電流指令装置121の指令信号と全波整流回路127の出力信号とを加算器122で比較し、その誤差を瞬時波形制御装置123によりインバータ105のスイッチング素子105aをPWM制御、PAM制御等して瞬時波形制御を行う。瞬時波形制御が行われた後、ゲートドライブ回路124により瞬時波形制御装置123の出力信号をインバータ105のスイッチング素子105aに与えて、インバータ105より正弦波に制御された出力電流を得ている。なお109は出力端子で商用系統に接続される。
【0003】
次に、出力電流の直流成分を補正するための回路部分について説明する。110はインバータ105の出力電流を検出する分流器、111は分流器110により検出された信号の直流分を検出するローパスフィルタ、113はローパスフィルタ111の出力信号を絶縁して増幅する絶縁増幅器、118は電流検出器120の検出信号に、絶縁増幅器113で増幅された信号を加算する加算器、125は直流分検出回路であり、絶縁増幅器113で増幅された信号が内蔵する基準信号より高いとき、又は所定時間以上に入力されたとき、または上記のいずれか一方が所定値に達したときに信号を出力し、瞬時波形制御装置123に入力する。
【0004】
直流電源やインバータ等で構成され系統へ連系する系統連系システムにおいては、インバータや出力電流の瞬時波形制御が異常を起こし、インバータの出力電流に直流成分が発生すると、出力端子に接続される商用系統の柱上変圧器又は商用系統に接続される他の装置の変圧器等に直流成分が流れ、直流励磁され、損傷するという問題点がある。前述の従来例はこの点に鑑みて示された技術であり、インバータ105の出力電流に直流成分が発生した場合はこれを検出し、電流検出器120により検出した検出信号に加算器118により減算補正することで、出力電流の直流成分を打ち消すよう動作する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術においては、検出対象であるインバータの出力電流の直流成分のレベルが非常に小さい時、たとえばインバータの出力電流100%に含まれる直流成分が1%である場合、直流電流を検出することは非常に困難であった。また、絶縁増幅器は通常、周囲温度の変化や電圧の変化の影響を受けやすいため、絶縁増幅器のオフセット誤差が増大し、直流成分を精度良く検出できず、その結果、インバータの出力電流の直流成分を精度良く除くことが困難であった。
【0006】
このような場合、絶縁増幅器を高精度のものにするか、あるいは直流成分が流れない状態の時の検出値を基準レベルとして記憶しておき、前記直流成分が流れている状態の時の検出値を補正する必要がある。しかし絶縁増幅器を高精度のものにする方法では高価となって実用的ではない。また、直流成分が流れない状態の時の検出値を基準レベルとして記憶しておくためには、直流成分が流れない状態にするためにインバータ8を一旦停止させたり、連系リレーを解列したり、特開平9−37568号公報に記載されているように、例えば工場での出荷試験時に直流成分が流れない状態での検出値を基準レベルとして予め記憶させておいたりすることが考えられるが、次のような問題がある。すなわち、インバータを一旦停止させたのでは、例えば太陽光発電システムで考えると、太陽電池に太陽光が当たっていて発電可能なのに、インバータが半強制的に1〜数秒間止められてしまい、その間は発電できなくなるという問題があり、連系リレーを解列する場合もインバータの出力に少なからず影響を与えることになる。また、特開平9−37568号公報に記載された方法では基準レベルが1つに限られてしまい、周囲温度の変化や電圧の変化の影響を受けやすい増幅器を用いる場合には、直流成分を精度良く検出することができないという問題があった。
【0007】
因みに、平成5年に財団法人電気安全環境研究所から発行されている分散型電源系統連系指針では、系統連系形電力変換装置で絶縁変圧器を設置しない場合には、前記直流成分の流出を電力変換装置の定格出力電流の1%以下に抑えることが規定されている。
【0008】
この発明は上述のような問題点を解決するためになされたもので、その目的は、出力電流に発生する直流成分を精度良く補正することのできる系統連系インバータ、及びこれを用いた系統連系システムを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る系統連系インバータは、直流電源に接続され直流電力を交流電力に変換して商用系統に出力するインバータと、このインバータの出力電流を検出する分流器と、この分流器の出力から直流成分を検出する直流成分検出器と、この直流成分検出器の出力を増幅する増幅器と、前記インバータの出力電流がない場合に前記増幅器に入力される信号に相当する信号を所定のタイミングで前記増幅器に出力するゼロ調整手段と、このゼロ調整手段からの信号が前記増幅器に入力されたときの前記増幅器の出力値を基準値として記憶する基準値記憶手段と、前記増幅器から出力された前記インバータの出力電流の直流成分から前記基準値記憶手段に記憶された基準値を減算補正する加算器とを備えたものである。なお、下記の実施の形態1、2及び4においては、ゼロ調整指令器とゼロ信号発生器と入力切替器がゼロ調整手段として動作し、実施の形態3においてはゼロ調整指令器と入力短絡回路がゼロ調整手段として動作する。
【0010】
また、本発明に係る系統連系インバータは、直流電源に接続され直流電力を交流電力に変換して商用系統に出力するインバータと、このインバータの出力電流を検出する分流器と、この分流器の出力を増幅する増幅器と、この増幅器の出力から直流成分を検出する直流成分検出器と、前記インバータの出力電流がない場合に前記増幅器に入力される信号に相当する信号を前記商用系統の電圧周期に同期したタイミングで前記増幅器に出力するゼロ調整手段と、このゼロ調整手段からの信号が前記増幅器に入力されたときの前記増幅器の出力値を基準値として記憶する基準値記憶手段と、前記直流成分検出器から出力された前記インバータの出力電流の直流成分から前記基準値記憶手段に記憶された基準値を減算補正する加算器とを備えたものである。
【0011】
また、直流電源に接続され直流電力を交流電力に変換して商用系統に出力するインバータと、このインバータの出力電流を検出する分流器と、この分流器の出力を増幅する増幅器と、この増幅器の出力から直流成分を検出する直流成分検出器と、前記インバータの出力電流がない場合に前記増幅器に入力される信号に相当する信号を前記商用系統の電圧周期に同期したタイミングで前記増幅器に出力するゼロ調整手段と、このゼロ調整手段からの信号が前記増幅器に入力されたときの前記増幅器の出力値を基準値として記憶する基準値記憶手段と、前記増幅器から出力された前記インバータの出力電流から前記基準値記憶手段に記憶された基準値を減算補正する加算器とを備えたものである。
【0012】
また、ゼロ調整手段として、インバータの出力電流がない場合に増幅器に入力される信号に相当する信号が記憶されたゼロ信号発生器を用いたものである。
【0013】
また、ゼロ調整手段として増幅器の入力端子間を短絡する半導体素子を用いたものである。
【0014】
また、基準値記憶手段に記憶された基準値が所定値以上となったとき、インバータを停止するものである。
【0015】
また、ゼロ調整手段の出力時間を0.5秒未満とするものである。
【0016】
また、加算器により補正された直流成分を検出し、所定値以上の直流成分が所定時間以上検出された場合にインバータを停止するための信号を出力する直流分監視手段を備え、ゼロ調整手段が出力動作をしているときは、前記直流分監視手段が直流成分の検出動作を行わないか、または所定値以上の直流成分を所定時間以上検出してもインバータ停止信号を出力しないようにしたものである。
【0017】
また、加算器により補正された直流成分を検出し、所定値以上の直流成分が所定時間以上検出された場合にインバータを停止するための信号を出力する直流分監視手段を備え、この直流分監視手段が所定値以上の直流成分を検出しているときは、ゼロ調整手段が出力動作をしないようにしたものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る実施の形態を、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の第1の実施の形態における系統連系システムを示し、特に直流電源の電力を入力して商用系統と連系運転を行う系統連系インバータ1の要部構成を例示したものである。直流電源としては太陽電池や燃料電池等があるが、この実施の形態においては複数の太陽電池を接続した太陽電池アレイ2を用いた。
【0019】
図1に示すように、太陽電池アレイ2の出力電圧は系統連系インバータ1のDC−DCコンバータ4に入力される。DC−DCコンバータ4は、太陽電池アレイ2から出力される入力電圧をインバータ5の入力に必要な電圧に変換して出力する。インバータ5は、DC−DCコンバータ4から出力される直流電力を交流電力に変換して出力し、波形補正用フィルタ7で高周波成分を除去し、連系リレー6を経由して商用系統3に連系する。
【0020】
インバータ5の出力電流は分流器10で検出され、直流成分検出器であるローパスフィルタ11により直流成分が抽出される。ローパスフィルタ11から出力された直流成分は、入力切替器12により選択された場合に入力切替器12を経由して絶縁増幅器13へ入力される。絶縁増幅器13は入力切替器12からの信号を絶縁して増幅する。
【0021】
ゼロ信号発生器14はインバータ5の出力電流が0Aの時のローパスフィルタ11の出力信号、すなわち、インバータ5の出力電流がない場合に絶縁増幅器13に入力される信号に相当する信号を発生する。その信号の値は、分流器10として何を用いるかにより異なる。例えば、分流器10としてシャント抵抗を用いた場合には、0Vを出力する。また、分流器10として電流センサを用いた場合には、電流センサの入力電流が0Aの時の出力電圧を出力する。ゼロ信号発生器14の出力は、入力切替器12により選択された場合に入力切替器12を経由して絶縁増幅器13へ入力される。
【0022】
入力切替器12はゼロ調整指令器15からの指令信号に基づいて切り替えられる。ここでゼロ調整指令器15は、任意のタイミングで、任意の時間、指令信号を出力する。例えばインバータ5が動作中で、分流器10に電流が流れているときにおいても、指令信号を出力して、ゼロ信号発生器14の信号を絶縁増幅器13へ出力させることができる。ここで、ゼロ調整指令器15の指令信号を出力する任意の時間を0.5秒未満に設定すれば、後述する直流分監視手段25によるインバータ5の出力電流の直流成分の検出時間、すなわち「分散型電源系統連系指針」にて規定されている検出時限(0.5秒以内)の検出への影響を小さくすることができる。
【0023】
また、ゼロ調整指令器15からの指令信号は基準値記憶手段である基準値記憶回路16にも入力される。基準値記憶回路16は書き換え可能なメモリ等で構成され、ゼロ調整指令器15からの指令信号が入力される都度、絶縁増幅器13の出力を更新して記憶し、記憶した信号を出力する。ここで、ゼロ調整指令器15からの指令信号が入力されたときの絶縁増幅器13の出力とは、インバータ5の出力電流が0Aの時の絶縁増幅器13の出力であり、絶縁増幅器13のオフセット誤差に相当するものである。
【0024】
加算器17では絶縁増幅器13の出力から基準値記憶回路16の出力が減算される。すなわち、加算器17からは、絶縁増幅器13のオフセット誤差が補正された、インバータ5の出力電流の直流成分が出力される。加算器17の出力は加算器18に入力される。
【0025】
カレントトランス(CT)や変流器等で構成される電流検出器20はインバータ5の出力電流の交流成分を検出し、加算器18に出力する。加算器18において、電流検出器20で検出された交流成分と加算器17から出力された直流成分が加算され、インバータ出力電流検出値として出力される。
【0026】
電流指令器21はインバータ5の出力電流の電流値を指令する。加算器18から出力されたインバータ出力電流検出値と電流指令器21の出力との誤差信号が、加算器22により、瞬時波形制御器23に入力される。瞬時波形制御器23は、インバータ5の出力電流の電流値を、電流指令器21で指令する電流に制御する。これによりインバータ5の出力電流は、瞬時波形が制御されるともに、インバータ5の出力電流に含まれる直流成分が打ち消されるよう制御される。ゲートドライブ回路24は、瞬時波形制御器23の出力に基づきインバータ5の動作を制御する。
【0027】
インバータ5の出力電流の直流成分が打ち消されず、所定の電流値(例えば系統連系インバータの定格出力電流を16.5Aとしたとき、その1%の0.165A)を超える電流が、所定時間続いた場合、直流分監視手段25はこれを検出し、瞬時波形制御器23にインバータ5の停止信号を出力し、インバータ5を停止させる。ここで、「所定時間」は「分散型電源系統連系指針」の規定に基づき0.5秒未満の値が好ましく、例えば、0.5秒からゼロ調整時間(例えば50Hzの場合0.02秒)を引いて、さらにマージンを見込んで0.4秒未満の値とする。
【0028】
ここで、ゼロ調整指令器15が指令信号を出力しているときには、直流分監視手段25が直流成分の検出動作を行わないか、または所定値以上の直流成分を所定時間以上検出してもインバータ停止信号を出力しないようにすれば、直流分監視手段25の誤動作を防ぐことができる。また、逆に、直流分監視手段25が所定値以上の直流成分を検出しているときに、ゼロ調整指令器15が指令信号を出力しないようにしても、直流分監視手段25の誤動作を防ぐことができる。
【0029】
さらに、基準値記憶回路16の出力、すなわち絶縁増幅器13のオフセット誤差が所定の電流値(例えば2A)を超える場合、異常検出器26はこれを検出し、瞬時波形制御器23にインバータ5の停止信号を出力し、インバータ5を停止させる。
【0030】
このように、本実施の形態では、インバータ出力電流が0Aの時の検出信号に相当するゼロ信号により、任意のタイミングおよび時間で絶縁増幅器のオフセット誤差を補正するようにしたたため、容易かつ安価な構成で、周囲温度や電圧等の影響を受けることなく、インバータ出力電流の直流成分を精度良く検出することができる。またインバータを停止することなく、インバータ出力電流の直流成分を精度よく補正することができる。また何らかの事由によりインバータ出力電流の直流成分が増大した場合でも、それを検出し、インバータを停止させることができる。また、従来は絶縁増幅器のオフセット誤差が異常に大きくなってもそれを直接的に検出できなかったが、異常判定器を設けたことにより、絶縁増幅器などの構成要素に異常あった場合でもそれを検出し、インバータを停止させることができる。
【0031】
また、この実施の形態においてはゼロ信号発生器14を用いたため、分流器10の種類に応じて適切に絶縁増幅器13のオフセット誤差を補正することができる。つまり、インバータ5の出力電流がない場合に絶縁増幅器13に入力される信号の値は使用する分流器によって異なるが、その値を予めゼロ信号発生器14に記憶させておくことによって適切に対応することができる。
【0032】
さらに、このようにインバータ出力電流の直流成分を精度良く検出することができる系統連系インバータを直流電源に接続し、その系統連系インバータからの出力を商用系統で利用することにより、商用系統や商用系統に接続される他の装置が直流成分により損傷する恐れのない系統連系システムが得られる。
【0033】
なお、本実施形態では、ローパスフィルタ11と、ゼロ信号発生器14と、ゼロ調整指令器15と、基準値記憶回路16と、異常検出器26と、直流分監視手段25と、電流指令器21と、瞬時波形制御23と、加算器17と、加算器18と、加算器22とをハードウエアで構成したが、そのすべて又はその何れかをマイコン等を用いソフトウエアで構成してもよい。例えば絶縁増幅器13を、絶縁増幅回路(図示しない)とA/D変換器(図示しない)とで構成し、ゼロ信号発生器14と、ゼロ調整指令器15と、基準値記憶回路16と、異常検出器26と、直流分監視手段25と、電流指令器21と、瞬時波形制御23と、加算器17と、加算器18と、加算器22とをマイコンを用いてソフトウエアで構成することもできる。
【0034】
また、本実施形態では、絶縁増幅器13を用いたが、単なる増幅器でも同様の効果が得られる。また、直流成分検出器としてローパスフィルタ11を用いたが、一定期間の電流値の平均値を算出することによって直流成分を検出する回路であってもよい。
【0035】
実施の形態2.
上記の実施の形態1では、インバータ5の出力電流の直流成分を得るためのローパスフィルタ11を、分流器10の出力側に入れたが、絶縁増幅器13の出力側に接続してもよい。この場合の系統連系システム、特に系統連系インバータの要部構成を図2に示す。分流器10で検出されたインバータ5の出力電流は入力切替器12により選択されたときに絶縁増幅器13に入力され、絶縁増幅される。また、ゼロ調整指令器15により入力切替器12がゼロ信号発生器14側に切り替えられたときには、ゼロ信号発生器14の出力が絶縁増幅器13に入力される。絶縁増幅器13の出力はローパスフィルタ11に入力され、直流成分が検出される。その他の構成及び動作は上記実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0036】
このようにローパスフィルタ11を絶縁増幅器13の出力側に接続した場合には、商用系統3の電圧周期に同期したタイミングでゼロ調整指令器15から指令信号を出力し、ゼロ信号発生器14の信号を絶縁増幅器13に出力する必要がある。この場合の各構成部分の出力波形を図3に示す。図3において、(a)は商用系統3の電圧波形である。(b)はインバータ5の出力電流波形であり、タイミングt2までは直流成分を含んだ波形となっている。
【0037】
(c)はゼロ調整指令器15の出力波形であり、商用系統3に同期したタイミングで、かつ0.5秒未満の任意の時間、指令信号を出力する。例えば、商用系統3の周期100回毎に1回、ゼロクロス点t1でONし、商用系統3の1電圧周期の時間、すなわち、商用系統3が50Hzのときは0.02秒、60Hzのときは約0.016秒を経過した時点t2でOFFするように設定されている。
【0038】
(d)は絶縁増幅器13の入力信号であり、ゼロ調整指令器15からの指令信号がなく入力切替器12が分流器10を選択しているt1までの間は分流器10が検出したインバータ5の出力電流が入力される。ゼロ調整指令器15から指令信号が出力されているt1からt2の間はゼロ信号発生器14の出力が入力される。
【0039】
(e)は絶縁増幅器13の出力信号であり、t1からt2の間の出力が絶縁増幅器13のオフセット誤差である。(f)は基準値記憶回路16の出力信号である。(g)はローパスフィルタ11の出力信号であり、インバータ5の直流成分に相当する信号である。
【0040】
タイミングt2以降、ローパスフィルタ11からは絶縁増幅器13のオフセット誤差が補正された直流成分が出力されていることがわかる。なお、図では簡略化して示しているが、ローパスフィルタ11の出力は実際にはタイミングt2付近で徐々に変化する。そして、インバータ5の出力電流(b)は、タイミングt2以降、直流成分が除かれた波形になっていることがわかる。
【0041】
次に、図2に示す回路構成で、ゼロ調整指令器15の出力が商用系統3に同期していない場合の各構成部分の出力について、図4を用いて説明する。図4において、(a)から(g)は図3と同じ部分の出力波形を示している。(c)に示すように、ゼロ調整指令器15の出力は商用系統3に同期せず、商用系統3の1周期中のインバータ出力が+の時に出力されている。ゼロ調整指令器15から指令信号が出力されている時の絶縁増幅器13の入力はゼロであり、出力側にはオフセット誤差が現れる。基準値記憶回路16にはそのオフセット誤差が記憶され、(f)に示すように記憶されたオフセット誤差信号が出力される。
【0042】
ところが、ローパスフィルタ11では、絶縁増幅器13の出力波形を平均化して直流成分を抽出するため、ゼロ調整指令器15の指令によって+側が一部欠けた波形の信号を平均化することによって、−側にずれた誤った直流成分が出力されてしまうことになる。そのため、インバータ5の出力電流に含まれる直流成分を正確に除くことができず、(b)に示すようにタイミングt2以降も直流成分が残ったままの電流が出力されることになる。
【0043】
このように、この実施の形態2によれば、ローパスフィルタ11を絶縁増幅器13の出力側に接続して、絶縁増幅器13の出力から直流成分を検出するようにし、商用系統3の電圧周期に同期したタイミングでゼロ信号発生器14の信号を絶縁増幅器13に出力するようにしたので、上記の実施の形態1と同様、インバータを停止することなく、インバータ出力電流の直流成分を精度良く補正することができるとともに、信号発生タイミングを決定するためのタイマ等を省略することができる。
【0044】
さらに、このようにインバータ出力電流の直流成分を精度良く検出することができる系統連系インバータを直流電源に接続し、その系統連系インバータからの出力を商用系統で利用することにより、商用系統や商用系統に接続される他の装置が直流成分により損傷する恐れのない系統連系システムが得られる。
【0045】
なお、上記の実施の形態1における回路構成の場合には、ゼロ調整指令器15の出力を商用系統3の電圧周期に同期させなくても、ローパスフィルタ11の出力が異常になることはないが、ゼロ調整指令器15の出力を商用系統3の電圧周期に同期させれば、信号発生タイミングを決定するためのタイマ等が省略できるという効果が得られる。
【0046】
実施の形態3.
図5は本発明の第3の実施形態における系統連系システムを示し、特に系統連系インバータの要部構成を例示したものである。図1に示す第1の実施形態と異なる点は、ゼロ信号発生器と入力切替器をなくし、代わりに入力短絡回路30を設けたことである。この実施の形態は、分流器10として、インバータ5の出力電流がない場合に0Vを出力するシャント抵抗などを用いる場合に効果がある。以下、具体的に説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付け、説明を省略する。
【0047】
インバータ5の出力電流は分流器10で検出され、ローパスフィルタ11により直流成分が検出される。ローパスフィルタ11から出力された直流成分は、入力短絡回路30へ入力される。
【0048】
入力短絡回路30は絶縁増幅器13の入力端子間を短絡する回路で、例えばフォトカプラ等の半導体素子を用いて構成され、ゼロ調整指令器15からの指令信号に基づいて動作する。入力短絡回路30が動作したときは、絶縁増幅器13の入力端子間は、ローパスフィルタ11の出力に関わらず、強制的に短絡される。絶縁増幅器13の入力端子間が短絡されると、インバータ5の出力電流がない場合に絶縁増幅器13に入力される信号に相当する信号が絶縁増幅器13に入力されることになる。なお、分流器10およびローパスフィルタ11の出力からの短絡電流を防ぐため、入力短絡回路30には抵抗等による短絡電流を抑制する手段(図示しない)が含まれている。
【0049】
一方、ゼロ調整指令器15からの指令信号が出力されず、入力短絡回路30が動作していないときは、ローパスフィルタ11の出力がそのまま絶縁増幅器13に入力される。絶縁増幅器13は入力された信号を絶縁して増幅する。
【0050】
ゼロ調整指令器15は、任意のタイミングで、任意の時間、指令信号を出力する。例えばインバータ5が動作中で、分流器10に電流が流れているときにおいても、指令信号を出力して、入力短絡回路30により絶縁増幅器13の入力端子間を短絡することができる。ここで、上記各実施の形態と同様に、ゼロ調整指令器15の指令信号を出力する任意の時間を0.5秒未満に設定すれば、直流分監視手段25によるインバータ5の出力電流の直流成分の検出時間、すなわち「分散型電源系統連系指針」にて規定されている検出時限(0.5秒以内)の検出への影響を小さくすることができる。
【0051】
また、上記実施の形態2と同様に、商用系統3に同期させて、商用系統3の周期100回毎に1回、ゼロクロス点のタイミングで、商用系統3の1電圧周期の時間、すなわち、商用系統3が50Hzのときは0.02秒間、60Hzのときは約0.016秒間、指令信号を出力するようにしてもよい。このように、ゼロ調整指令器15の指令信号を商用系統3に同期させて出力するようにすれば、ローパスフィルタ11を絶縁増幅器13の出力側に接続した場合でも、ローパスフィルタ11の出力が異常になることはない。また、信号発生タイミングを決定するためのタイマ等が省略できる。
【0052】
ゼロ調整指令器15からの指令信号は基準値記憶回路16にも入力される。基準値記憶回路16は書き換え可能なメモリ等で構成され、ゼロ調整指令器15からの指令信号が入力される都度、絶縁増幅器13の出力を更新して記憶し、記憶した信号を出力する。ここで、ゼロ調整指令器15からの指令信号が入力されたときの絶縁増幅器13の出力とは、絶縁増幅器13の入力が短絡されているときの絶縁増幅器13の出力であり、絶縁増幅器13のオフセット誤差に相当するものである。その他の動作は上記実施の形態1における系統連系インバータと同様である。
【0053】
このように、この実施の形態3によれば、絶縁増幅器13の入力端子間を、所定のタイミングおよび時間で短絡させることにより、絶縁増幅器のオフセット誤差を補正するようにしたたため、上記の各実施の形態と同様、インバータを停止させたり連系リレーを解列することなく、容易かつ安価な構成で、インバータ出力電流の直流成分を精度良く検出することができる。また、ゼロ調整手段としてゼロ調整指令器と入力短絡回路を用いるため、ゼロ信号発生器や入力切替器を用いる上記の各実施の形態に比べ、回路構成がより簡単かつ安価になる。
【0054】
また、入力短絡回路30としてラッチングリレーを用いることもできるが、上記のようにフォトカプラ等の半導体素子で構成すれば、反応時間が速いため、ゼロ調整を頻繁に行うことができ、調整のタイミングを商用系統3の周期に対して木目細かく行うことができ、商用系統3の電圧のゼロクロス点に合わせることも容易になる。そのため、周囲温度や電圧等により絶縁増幅器13のオフセット誤差が変化しても精度良く補正でき、インバータ出力電流の直流成分の検出精度をさらに高めることができる。
【0055】
また、上記実施の形態1と同様、何らかの事由によりインバータ出力電流の直流成分が増大した場合でも、それを検出し、インバータを停止させることができる。また、従来は絶縁増幅器のオフセット誤差が異常に大きくなってもそれを直接的に検出できなかったが、異常判定器を設けたことにより、絶縁増幅器などの構成要素に異常あった場合でもそれを検出し、インバータを停止させることができる。
【0056】
さらに、このようにインバータ出力電流の直流成分を精度良く検出することができる系統連系インバータを直流電源に接続し、その系統連系インバータからの出力を商用系統で利用することにより、商用系統や商用系統に接続される他の装置が直流成分により損傷する恐れのない系統連系システムが得られる。
【0057】
なお、図5においては、ローパスフィルタ11を分流器10の出力側に入れたが、絶縁増幅器13の出力側に接続しても、同様の効果が得られる。この場合、ローパスフィルタ11の出力が基準値記憶回路16と加算器17に出力される。
【0058】
実施の形態4.
上記の各実施の形態においては、瞬時波形制御の帰還用に電流検出器20を用いたが、絶縁増幅器13を帰還用増幅器としてもよい。この場合の系統連系システム、特に系統連系インバータの要部構成図を図6に示す。図に示すように、この実施の形態によれば、上記各実施の形態で備えられていた電流検出器20と加算器18とが不要になる。以下、具体的に説明する。
【0059】
図に示すように、この実施の形態における系統連系インバータは、インバータ5の出力電流を検出する分流器10と、分流器10の出力を絶縁して増幅する絶縁増幅器13と、絶縁増幅器13の出力から直流成分を検出するローパスフィルタ11と、所定のタイミングで指令信号を出力するゼロ調整指令器15と、インバータ5の出力がない場合に絶縁増幅器13に入力される信号に相当する信号を記憶し出力するゼロ信号発生器14と、ゼロ調整指令器15の出力に基づき、分流器10からの出力を絶縁増幅器13に入力するかゼロ信号発生器14からの出力を絶縁増幅器13に入力するかを切り替える入力切替器と、ゼロ信号発生器14からの信号が絶縁増幅器13に入力されたときのローパスフィルタ11からの出力を記憶する基準値記憶回路16を備えている。そして、絶縁増幅器13の出力と基準値記憶回路16の出力とが加算器19に入力され、インバータ5の出力電流から絶縁増幅器13のオフセット誤差が補正される。この点、インバータ5の出力電流の直流成分から絶縁増幅器13のオフセット誤差が補正される上記の各実施の形態と異なる。
【0060】
補正されたインバータ5の出力電流は加算器22に入力され、電流指令器21の出力との誤差が瞬時波形制御部23に入力される。瞬時波形制御器23は、インバータ5の出力電流の電流値が電流指令器21で指令する電流値になるよう制御する。
【0061】
また、ローパスフィルタ11から出力されたインバータ5の出力電流の直流成分は、直流分監視手段25に入力され、所定値以上の直流分が所定時間以上発生したときには、直流分監視手段25から瞬時波形制御器23にインバータ5の停止信号が出力され、インバータ5が停止される。
【0062】
このように、この実施の形態によれば、電流検出器を用いることなく、より簡単な構成で、増幅器のオフセット誤差を補正することができ、インバータ出力電流の直流成分を精度良く補正することができる。
【0063】
また、このようなインバータ出力電流の直流成分を精度良く検出することができる系統連系インバータを直流電源に接続し、その系統連系インバータからの出力を商用系統で利用することにより、商用系統や商用系統に接続される他の装置が直流成分により損傷する恐れのない系統連系システムが得られる。
【0064】
【発明の効果】
本発明に係る系統連系インバータによれば、インバータを停止することなく、所定のタイミングで増幅器の誤差を補正することにより、インバータ出力電流の直流成分を精度良く補正することができる。
【0065】
また、本発明に係る系統連系システムによれば、商用系統や商用系統に接続される他の装置が直流成分により損傷する恐れのない系統連系システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1における系統連系インバータの要部構成図である。
【図2】 実施の形態2における系統連系インバータの要部構成図である。
【図3】 実施の形態2における系統連系インバータの各構成部分の出力波形を示す図である。
【図4】 実施の形態2における系統連系インバータの各構成部分の出力波形を示す図である。
【図5】 実施の形態3における系統連系インバータの要部構成図である。
【図6】 実施の形態4における系統連系インバータの要部構成図である。
【図7】 従来の系統連系インバータの要部構成図である。
【符号の説明】
1 系統連系インバータ、2 太陽電池アレイ、3 商用系統、5 インバータ、10 分流器、11 ローパスフィルタ、12 入力切替器、13 絶縁増幅器、14 ゼロ信号発生器、15 ゼロ調整指令器、16 基準値記憶回路、17 加算器、19 加算器、25 直流分監視手段、26 異常検出器、30 入力短絡回路。

Claims (10)

  1. 直流電源に接続され直流電力を交流電力に変換して商用系統に出力するインバータと、
    このインバータの出力電流を検出する分流器と、
    この分流器の出力から直流成分を検出する直流成分検出器と、
    この直流成分検出器の出力を増幅する増幅器と、
    前記インバータの出力電流がない場合に前記増幅器に入力される信号に相当する信号を所定のタイミングで前記増幅器に出力するゼロ調整手段と、
    このゼロ調整手段からの信号が前記増幅器に入力されたときの前記増幅器の出力値を基準値として記憶する基準値記憶手段と、
    前記増幅器から出力された前記インバータの出力電流の直流成分から前記基準値記憶手段に記憶された基準値を減算補正する加算器とを備えた系統連系インバータ。
  2. 直流電源に接続され直流電力を交流電力に変換して商用系統に出力するインバータと、
    このインバータの出力電流を検出する分流器と、
    この分流器の出力を増幅する増幅器と、
    この増幅器の出力から直流成分を検出する直流成分検出器と、
    前記インバータの出力電流がない場合に前記増幅器に入力される信号に相当する信号を前記商用系統の電圧周期に同期したタイミングで前記増幅器に出力するゼロ調整手段と、
    このゼロ調整手段からの信号が前記増幅器に入力されたときの前記増幅器の出力値を基準値として記憶する基準値記憶手段と、
    前記直流成分検出器から出力された前記インバータの出力電流の直流成分から前記基準値記憶手段に記憶された基準値を減算補正する加算器とを備えた系統連系インバータ。
  3. 直流電源に接続され直流電力を交流電力に変換して商用系統に出力するインバータと、
    このインバータの出力電流を検出する分流器と、
    この分流器の出力を増幅する増幅器と、
    この増幅器の出力から直流成分を検出する直流成分検出器と、
    前記インバータの出力電流がない場合に前記増幅器に入力される信号に相当する信号を前記商用系統の電圧周期に同期したタイミングで前記増幅器に出力するゼロ調整手段と、
    このゼロ調整手段からの信号が前記増幅器に入力されたときの前記増幅器の出力値を基準値として記憶する基準値記憶手段と、
    前記増幅器から出力された前記インバータの出力電流から前記基準値記憶手段に記憶された基準値を減算補正する加算器とを備えた系統連系インバータ。
  4. 前記ゼロ調整手段は、前記インバータの出力電流がない場合に前記増幅器に入力される信号に相当する信号が記憶されたゼロ信号発生器を有することを特徴とする前記請求項1ないし前記請求項3の何れかに記載の系統連系インバータ。
  5. 前記ゼロ調整手段は前記増幅器の入力端子間を短絡する半導体素子を有することを特徴とする前記請求項1ないし前記請求項3の何れかに記載の系統連系インバータ。
  6. 前記基準値記憶手段に記憶された基準値が所定値以上となったとき、前記インバータを停止することを特徴とする前記請求項1ないし前記請求項5の何れかに記載の系統連系インバータ。
  7. 前記ゼロ調整手段の出力時間を0.5秒未満とすることを特徴とする前記請求項1ないし前記請求項6の何れかに記載の系統連系インバータ。
  8. 前記加算器により補正された直流成分を検出し、所定値以上の直流成分が所定時間以上検出された場合にインバータを停止するための信号を出力する直流分監視手段を備え、ゼロ調整手段が出力動作をしているときは、前記直流分監視手段が直流成分の検出動作を行わないか、または所定値以上の直流成分を所定時間以上検出してもインバータ停止信号を出力しないようにしたことを特徴とする前記請求項1ないし前記請求項7の何れかに記載の系統連系インバータ。
  9. 前記加算器により補正された直流成分を検出し、所定値以上の直流成分が所定時間以上検出された場合にインバータを停止するための信号を出力する直流分監視手段を備え、この直流分監視手段が所定値以上の直流成分を検出しているときは、前記ゼロ調整手段が出力動作をしないようにしたことを特徴とする前記請求項1ないし前記請求項7の何れかに記載の系統連系インバータ。
  10. 前記請求項1ないし前記請求項9の何れかに記載の系統連系インバータと、この系統連系インバータに直流電力を出力する直流電源とを備えた系統連系システム。
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