JP3793721B2 - 光硬化性液状樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光硬化性に優れ、かつ硬化物の圧縮強度及び耐熱性に優れた液状硬化性樹脂組成物に関し、特に、高熱となる場所でねじ締めにより固定されて使用される硬化物を製造するための光学的立体造形用樹脂組成物として有用な光硬化性液状樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光硬化性の液状物質(液状樹脂組成物)に選択的に光照射して硬化樹脂層を形成する工程を繰り返すことにより、当該硬化樹脂層が一体的に積層されてなる立体形状物を形成する光学的立体造形法が提案されている(特開昭60−247515号公報、特開昭62−35966号公報、特開昭62−101408号公報、特開平5−24119号公報参照)。この光学的立体造形法の代表的な例を説明すると、容器内に収容された光硬化性液状樹脂組成物の液面に、紫外線レーザーなどの光を選択的に照射することにより、所定のパターンを有する硬化樹脂層を形成する。次いで、この硬化樹脂層の上に、一層分の光硬化性液状樹脂組成物を供給し、その液面に選択的に光を照射することにより、先行して形成された硬化樹脂層上にこれと連続するよう新しい硬化樹脂層を一体的に積層形成する。そして、光が照射されるパターンを変化させながらあるいは変化させずに上記の工程を所定回数繰り返すことにより、複数の硬化樹脂層が一体的に積層されてなる立体形状物が形成される。この光学的立体造形法は、目的とする立体形状物の形状が複雑なものであっても、容易にしかも短時間で得ることができるために注目されている。
【0003】
従来、光学的立体造形法に使用される光硬化性液状樹脂組成物としては、下記〔イ〕〜〔ハ〕のような樹脂組成物が紹介されている。
〔イ〕ウレタン(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、チオールおよびエン化合物、感光性ポリイミドなどのラジカル重合性有機化合物を含有する樹脂組成物(例えば特開平1−204915号公報、特開平2−208305号公報、特開平3−160013号公報参照)。
〔ロ〕エポキシ化合物、環状エーテル化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニルエーテル化合物などのカチオン重合性有機化合物を含有する樹脂組成物(例えば特開平1−213304号公報参照)。
〔ハ〕ラジカル重合性有機化合物とカチオン重合性有機化合物とを含有する樹脂組成物(例えば特開平2−28261号公報、特開平2−75618号公報、特開平6−228413号公報、特開平11−310626号公報、特開平11−228610号公報、特開平11−240939号公報参照)。
【0004】
しかし、このような立体造形法により得られる立体形状物は、デザインを検討するためのモデル、機械部品の試作品などとして多く用いられるが、特に機械部品の試作品として用いる立体形状物には、設計図に忠実な微細加工が高い精度で施されていること、使用条件に耐え得る十分な機械的強度や耐熱性を有していることなどが要求される。特に高熱となる場所でねじ締めにより固定されて使用される機械部品の試作品の場合には優れた圧縮強度、耐ねじ締め性、耐熱性等が要求される。
【0005】
ところが、前記従来の〔イ〕〜〔ハ〕の組成物では十分満足できる耐熱性と圧縮強度及び耐ねじ締め性を示す硬化物が得られなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた耐熱性と圧縮強度及び耐ねじ締め性を有する硬化物を与えることのできる光硬化性液状樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は種々検討した結果、分子中に脂環式エポキシ基を有するカチオン重合性有機化合物とカチオン性光重合開始剤を含有し、かつ組成物中の脂環式エポキシ基濃度を3.8〜5.0mmol/gと高濃度にした組成物から得られる硬化物は、耐熱性、圧縮強度及び耐ねじ締め性に優れることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、組成物全量100重量%に対して、
(A)3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3 ' ,4 ' −エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 40〜70重量%、
(B)カチオン性光重合開始剤 0.1〜10重量%、
(C)平均粒子径10〜700nmのエラストマー粒子 1〜35重量%、
(D)エチレン性不飽和モノマー 10〜25重量%、及び
(F)ラジカル性光重合開始剤 0.01〜10重量%
を含有し、組成物中の脂環式エポキシ基濃度が3.8〜5.0mmol/gであることを特徴とする光硬化性液状樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の光硬化性液状樹脂組成物に用いられる(A)カチオン重合性化合物は、分子中に脂環式エポキシ基を有するものであり、特に分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有するものが好ましい。ここで脂環式エポキシ基とは、炭素数4から12のシクロアルカンの環上においてエポキシ結合を形成している基をいい、下記式(1)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中のR1は水素原子又はアルキル基を示す。また、αは0から5の整数であり、βは0から5の整数である。)
で表される基が挙げられる。
【0012】
成分(A)としては、組成物中の脂環式エポキシ基濃度を高くする点で、分子中に式(1)で表される基を2個以上有するカチオン重合性有機化合物がより好ましい。そのような化合物の例としては、−COO−、−COOCH2−、−CH2−、−CH2OCO(CH2)kCOOCH2−(ここでkは1〜4の数を示す)等の2価の有機基に上記式(1)で表される基が結合した化合物、及びそれらの変性化合物が挙げられる。
【0013】
より具体的には3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどを例示することができる。
【0014】
これらのカチオン重合性有機化合物のうち、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましく、特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートが好ましい。
【0015】
成分(A)として好適に使用できるカチオン重合性有機化合物の市販品としては、UVR−6100、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6200、UVR−6216(以上、ユニオンカーバイド社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、エポリードGT−300、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリードGT−400、エポリード401、エポリード403(以上、ダイセル化学工業(株)製)、KRM−2100、KRM−2110、KRM−2199(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。上記のカチオン重合性有機化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて成分(A)を構成することができる。
【0016】
本発明組成物中の脂環式エポキシ基濃度は3.8〜5.0mmol/gであるが、3.8〜4.8mmol/gがより好ましく、3.9〜4.5mmol/gがさらに好ましい。当該濃度が3.8mmol/g未満の場合には十分な耐熱性、耐ねじ締め性及び圧縮強度が得られず、また5.0mmol/gを超えると造形後の反りが大きくなる。
【0017】
成分(A)の本発明組成物中の含有量は、本発明組成物中の脂環式エポキシ基濃度を前記範囲とするよう決定されるものであり、本発明組成物100重量%に対して20〜85重量%が好ましく、40〜70重量%がさらに好ましい。
【0018】
本発明に用いられる(B)カチオン性光重合開始剤は、光などのエネルギー線を受けることによって、前記成分(A)のカチオン重合を開始させる物質を放出することができる化合物である。ここで、光などのエネルギー線とは可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線、γ線などを意味する。特に好ましい成分(B)の化合物として、下記一般式(2):
[R2 aR3 bR4 cR5 dW]+m[MXn+m]-m (2)
〔式中、カチオンはオニウムイオンであり、WはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O,I、Br、Clまたは−N=Nであり、R2、R3、R4およびR5は同一または異なる有機基であり、a、b、cおよびdは各々0〜3の整数であって、(a+b+c+d)はWの価数に等しい。Mはハロゲン化物錯体[MXn+m]の中心原子を構成する金属またはメタロイドであり、例えばB、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coなどである。Xは、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン原子であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。〕で表される構造を有するオニウム塩を挙げることができる。このオニウム塩は、光を受けることによりルイス酸を放出する化合物である。上記一般式(1)中におけるアニオン[MXn+m]の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4 -)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6 -)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6 -)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6 -)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6 -)などが挙げられる。
【0019】
また、一般式[MXn(OH)-]で表されるアニオンを有するオニウム塩を使用することができる。さらに、過塩素酸イオン(ClO4 -)、トリフルオロメタンスルフォン酸イオン(CF3SO3 -)、フルオロスルフォン酸イオン(FSO3 -)、トルエンスルフォン酸イオン、トリニトロベンゼンスルフォン酸アニオン、トリニトロトルエンスルフォン酸アニオンなどの他のアニオンを有するオニウム塩を使用することもできる。
【0020】
このようなオニウム塩のうち、成分(B)として特に有効なオニウム塩は芳香族オニウム塩である。中でも、特開昭50−151996号公報、特開昭50−158680号公報などに記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号公報、特開昭52−30899号公報、特開昭56−55420号公報、特開昭55−125105号公報などに記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭50−158698号公報などに記載のVA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号公報、特開昭56−149402号公報、特開昭57−192429号公報などに記載のオキソスルホキソニウム塩、特開昭49−17040号公報などに記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4,139,655号明細書に記載のチオビリリウム塩などが好ましい。また、鉄/アレン錯体、アルミニウム錯体/光分解ケイ素化合物系開始剤なども挙げることができる。
【0021】
成分(B)として好適に使用できるカチオン性光重合開始剤の市販品としては、UVI−6950、UVI−6970、UVI−6974、UVI−6990(以上、ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマーSP−150、SP−151、SP−170、SP−172(以上、旭電化工業(株)製)、Irgacure 261(以上、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)製)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(以上、サートマー社製)、DTS−102、DTS−103、NAT−103、NDS−103、TPS−103、MDS−103、MPI−103、BBI−103(以上、みどり化学(株)製)、PCI−061T、PCI−062T、PCI−020T、PCI−022T(以上、日本化薬(株)製)などを挙げることができる。これらのうち、UVI−6970、UVI−6974、アデカオプトマーSP−170、SP−172、CD−1012、MPI−103は、これらを含有してなる樹脂組成物に高い光硬化感度を発現させることができることから特に好ましい。上記のカチオン性光重合開始剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて(B)成分を構成することができる。
【0022】
本発明の光硬化性液状樹脂組成物における成分(B)の含有割合は、通常0.1〜10重量%であり、好ましくは0.2〜5重量%、更に好ましくは0.3〜3重量%である。成分(B)の含有割合が過小である場合には、得られる樹脂組成物の光硬化性が低下し、十分な機械的強度、を有する立体形状物を造形することができない。一方、この含有割合が過大である場合には、得られる樹脂組成物を光学的立体造形法に供する場合に、適当な光透過性を得ることができず硬化深さの制御が困難となり、得られる立体形状物の造形精度が低下する傾向がある。
【0023】
また、本発明の光硬化性液状樹脂組成物には、前記の耐ねじ締め性及び圧縮強度を向上させる目的で(C)平均粒子径10〜700nmのエラストマー粒子を含有させるのが好ましい。成分(C)としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/α−オレフィン系共重合体、エチレン/α−オレフィン/ポリエン共重合体、アクリルゴム、ブタジエン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体などをベース成分とするエラストマー粒子を挙げることができる。
【0024】
またこれらエラストマー粒子を、メチルメタアクリレートポリマー、メチルメタアクリレート/グリシジルメタアクリレート共重合体などで被覆したコア/シェル型の粒子を挙げることができる。コアの半径とシェルの厚みの比は通常1/2〜1000/1、好ましくは1/1〜200/1である(例えばコア半径350nm、シェルの厚み10nmでは、35/1である)。
【0025】
コア/シェル型の粒子の場合は、前記エラストマー粒子の内、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、ブタジエン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体などを部分架橋したコアに、メチルメタアクリレートポリマーで被覆したエラストマー粒子、メチルメタアクリレート/グリシジルメタアクリレート共重合体で被覆した粒子が特に好ましい。
【0026】
さらに、エラストマー粒子は、粒子内部に架橋構造を取っていてもよく、通常用いられている手段によって架橋することができる。この場合使用される架橋剤としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、メタアクリル酸アリルなどが挙げられる。
【0027】
これらのエラストマー粒子は通常用いられている方法で作製することができ、例えば、乳化重合法が挙げられる。この乳化重合法としては、例えば単量体成分を全量一括して仕込み重合する方法、単量体成分の一部を重合した後、残部を連続的または断続的に添加する方法、単量体成分を重合の始めから連続的に添加する方法、あるいはシード粒子を用いる方法などを採用することができる。
【0028】
こうして得られるエラストマー粒子の平均粒子径は10nm〜700nmである。10nm未満では得られる立体形状物の耐ねじ締め性及び圧縮強度が低下したり、樹脂液の粘度が上昇し、立体形状物の生産性や造形精度に影響を及ぼし、一方、700nmを超えると、十分に表面平滑な立体形状物が得られなかったり、造形精度が低下する。上記のようなコア/シェル型エラストマー粒子の市販品としては、例えば、レジナスボンドRKB(レジナス化成(株)製)、テクノMBS−61、MBS−69(以上、テクノポリマー(株)製)等を挙げることができる。これら成分(C)のエラストマー粒子は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
本発明の光硬化性液状樹脂組成物における成分(C)の含有割合は、通常1〜35重量%であり、好ましくは3〜30重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。成分(C)の含有割合が過小である場合には、耐ねじ締め性及び圧縮強度が低下し、一方、この含有割合が過大である場合には、得られる立体形状物の造形精度が低下する傾向がある。
【0030】
本発明の光硬化性液状樹脂組成物には、さらに(D)エチレン性不飽和モノマー及び/又は(E)分子中に1個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオール化合物を含有させるのがより好ましい。(D)エチレン性不飽和モノマーは、エチレン性不飽和結合(C=C)を分子中に有する化合物であり、1分子中に1個のエチレン性不飽和結合を有する単官能モノマー、および1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能モノマーを挙げることができる。
【0031】
成分(D)として好適に使用できる単官能性モノマーとしては、例えばアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドテトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、および下記一般式(3)〜(5)で表される化合物を例示することができる。
【0032】
【化3】
【0033】
(式(3)〜式(5)中、R6はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R7は炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、R8は水素原子または炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示し、R9は炭素数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基を示す。rは0〜12、好ましくは1〜8の整数であり、qは1〜8、好ましくは1〜4の整数である。)
【0034】
これらの単官能性モノマーうち、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これらの単官能性モノマーの市販品としては、例えばアロニックスM−101、M−102、M−111、M−113、M−117、M−152、TO−1210(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD TC−110S、R−564、R−128H(以上、日本化薬(株))、ビスコート192、ビスコート220、ビスコート2311HP、ビスコート2000、ビスコート2100、ビスコート2150、ビスコート8F、ビスコート17F(以上、大阪有機化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0035】
成分(D)として好適に使用できる多官能性モノマーとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートなどを例示することができる。
【0036】
これらの多官能性モノマーの市販品としては、例えばSA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鐵化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0037】
上記の単官能モノマーおよび多官能モノマーは、各々1種単独でまたは2種以上組み合わせるか、あるいは単官能モノマーの少なくとも1種と多官能モノマーの少なくとも1種とを組み合わせて成分(D)を構成することができるが、成分(D)中には3官能以上、即ち1分子中に3個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能モノマーが、成分(D)全体を100重量%として、60重量%以上の割合で含有されていることが好ましい。この3官能以上の多官能モノマーのさらに好ましい含有割合は70重量%以上であり、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは100重量%である。3官能以上の多官能モノマーの含有割合が60重量%未満であると、得られる樹脂組成物の光硬化性が低下すると共に、造形される立体形状物の経時的変形が生じやすくなることがある。
【0038】
かかる3官能以上の多官能モノマーとしては、上記に例示されたトリ(メタ)アクリレート化合物、テトラ(メタ)アクリレート化合物、ペンタ(メタ)アクリレート化合物、ヘキサ(メタ)アクリレート化合物等の中から選択することができ、これらのうち、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0039】
本発明の光硬化性液状樹脂組成物における成分(D)の含有割合は、通常5〜45重量%であり、好ましくは7〜35重量%、更に好ましくは10〜25重量%である。成分(D)の含有割合が過小である場合には、得られる樹脂組成物の光硬化性が低下し、十分な機械的強度を有する立体形状物を造形することができない。一方、この含有割合が過大である場合には、得られる樹脂組成物が光硬化により収縮しやすいものとなり、また、得られる立体形状物について、耐熱性、耐湿性などが低下する傾向がある。
【0040】
(E)ポリエーテルポリオールは、樹脂組成物の光硬化性、光造形により得られる立体形状物の形状安定性(経時的変形の抑制性能)および形状安定性(機械的特性の経時的変化の抑制性能)を向上させるために含有される成分である。成分(E)として使用されるポリエーテルポリオールは、好ましくは1分子中に3個以上、さらに好ましくは1分子中に3〜6個の水酸基を有するものである。1分子中に有する水酸基の数が3個未満のポリエーテルポリオール(ポリエーテルジオール)を使用すると、光硬化性の向上効果が十分ではなく、また、得られる立体形状物の機械的特性、特に弾性率が低下する傾向がある。一方、1分子中に6個を超えるポリエーテルポリオールを含有させる場合には、得られる立体形状物の伸びが低下する傾向が見られるとともに耐湿性に問題を生じる傾向がある。
【0041】
かかる成分(E)としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、クオドロールなどの3価以上の多価アルコールを、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの環状エーテル化合物で変性することにより得られるポリエーテルポリオールを挙げることができ、具体的には、EO変性トリメチロールプロパン、PO変性トリメチロールプロパン、テトラヒドロフラン変性トリメチロールプロパン、EO変性グリセリン、PO変性グリセリン、テトラヒドロフラン変性グリセリン、EO変性ペンタエリスリトール、PO変性ペンタエリスリトール、テトラヒドロフラン変性ペンタエリスリトール、EO変性ソルビトール、PO変性ソルビトール、EO変性スクロース、PO変性スクロース、EO変性スクロース、EO変性クオドールなどを例示することができ、これらのうち、EO変性トリメチロールプロパン、PO変性トリメチロールプロパン、PO変性グリセリン、PO変性ソルビトールが好ましい。
【0042】
成分(E)として使用するポリエーテルポリオールの分子量は、100〜2,000であることが好ましく、更に好ましくは160〜1,000とされる。分子量が過小なポリエーテルポリオールを成分(E)として使用すると、得られる樹脂組成物によっては、形状安定性および物性安定性を有する立体形状物を得ることが困難となることがある。一方、分子量が過大なポリエーテルポリオールを成分(E)として使用すると、得られる樹脂組成物の粘度が過大となり、光造形により得られる立体形状物の弾性率が低下する恐れがある。
【0043】
成分(E)として使用できるポリエーテルポリオールの市販品としては、サンニックスTP−400、サンニックスGP−600、サンニックスGP−1000、サンニックスSP−750、サンニックスGP−250、サンニックスGP−400、サンニックスGP−600(以上、三洋化成(株)製)、TMP−3Glycol、PNT−4 Glycol、EDA−P−4、EDA−P−8(以上、日本乳化剤(株)製)、G−300、G−400、G−700、T−400、EDP−450、SP−600、SC−800(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。上記のポリエーテルポリオールは、1種単独で、または2種以上組み合わせて成分(E)を構成することができる。
【0044】
本発明の光硬化性液状樹脂組成物における成分(E)の含有割合は、通常5〜35重量%であり、好ましくは7〜30重量%、特に好ましくは10〜25重量%である。成分(E)の含有割合が過小である場合には、得られる樹脂組成物の光硬化性の向上効果を十分に図ることができず、また、当該樹脂組成物によっては形状安定性および物性安定性の良好な立体形状物を得ることができない。一方、成分(E)の含有割合が過大である場合にも、得られる樹脂組成物の光硬化性が低下し、光造形により得られる立体形状物の弾性率が低下する傾向がある。
【0045】
(F)ラジカル性光重合開始剤は、光などのエネルギー線を受けることにより分解し、発生するラジカルによって成分(D)のラジカル重合反応を開始させる化合物である。
【0046】
成分(F)として使用することのできるラジカル性光重合開始剤の具体例としては、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン系化合物、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−2−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリ−メチルペンチルフォスフィンオキサイド、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、およびBTTBとキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリンその他の色素増感剤との組み合わせなどを挙げることができる。これらのうち、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどが特に好ましい。上記のラジカル性光重合開始剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて成分(F)を構成することができる。
【0047】
本発明の光硬化性液状樹脂組成物における成分(F)の含有割合は、通常0.01〜10重量%であり、好ましくは0.1〜8重量%である。成分(F)の含有割合が過小である場合には、得られる樹脂組成物のラジカル重合反応速度(硬化速度)が低くなって造形に時間を要したり、解像度が低下したりする傾向がある。一方、成分(F)の含有割合が過大である場合には、過剰量の重合開始剤が樹脂組成物の硬化特性をかえって低下させたり、立体形状物の耐湿性や耐熱性に悪影響を及ぼすことがある。
【0048】
本発明の光硬化性液状樹脂組成物には、さらに光増感剤(重合促進剤)、反応性希釈剤などを含有させることができる。光増感剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミンなどのアミン系化合物;チオキサントン、チオキサントンの誘導体、アントラキノン、アントラキノンの誘導体、アントラセン、アントラセンの誘導体、ペリレン、ペリレンの誘導体、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが、また反応性希釈剤としては、ビニルエーテル類、ビニルスルフィド類、ビニルウレタン類、ウレタンアクリレート類、ビニルウレア類などが挙げられる。
【0049】
また本発明の光造形用光硬化性液状樹脂組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として各種の添加剤が含有されていてもよい。かかる添加剤としては、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマーなどのポリマーあるいはオリゴマー;ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の成分(A)以外のカチオン重合性化合物;フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどの重合禁止剤;重合開始助剤;レベリング剤;濡れ性改良剤;界面活性剤;可塑剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;無機充填剤;顔料;染料などを挙げることができる。本発明の光硬化性液状樹脂組成物は、上記成分(A)〜成分(F)、および必要ならば上記任意成分を均一に混合することによって製造することができる。このようにして得られる光硬化性液状樹脂組成物の粘度(25℃)は、50〜2,000cpsであることが好ましく、更に好ましくは70〜1、500cpsである。
【0050】
以上のようにして得られる本発明の光硬化性液状樹脂組成物は、光学的立体造形法における光硬化性液状樹脂組成物として好適に使用される。すなわち、本発明の光硬化性液状樹脂組成物に対して、可視光、紫外光、赤外光等の光を選択的に照射して硬化に必要なエネルギーを供給する光学的立体造形法により、所望の形状の立体形状物を製造することができる。
【0051】
光硬化性液状樹脂組成物に光を選択的に照射する手段としては、特に制限されるものではなく、種々の手段を採用することができる。例えば、レーザー光、あるいはレンズ、ミラーなどを用いて得られた収束光等を走査させながら組成物に照射する手段、所定のパターンの光透過部を有するマスクを用い、このマスクを介して非収束光を組成物に照射する手段、多数の光ファイバーを束ねてなる導光部材を用い、この導光部材における所定のパターンに対応する光ファイバーを介して光を組成物に照射する手段等を採用することができる。また、マスクを用いる手段においては、マスクとして、液晶表示装置と同様の原理により、所定のパターンに従って、光透過領域と光不透過領域とよりなるマスク像を電気光学的に形成するものを用いることもできる。以上において、目的とする立体形状物が微細な部分を有するものまたは高い寸法精度が要求されるものである場合には、組成物に選択的に光を照射する手段として、スポット径の小さいレーザー光を走査する手段を採用することが好ましい。なお、容器内に収容されている樹脂組成物における光の照射面(例えば収束光の走査平面)は、当該樹脂組成物の液面、透光性容器の器壁との接触面の何れであってもよい。樹脂組成物の液面または器壁との接触面を光の照射面とする場合には、容器の外部から直接または器壁を介して光を照射することができる。
【0052】
前記の光学的立体造形法においては、通常、樹脂組成物の特定部分を硬化させた後、光の照射位置(照射面)を、既硬化部分から未硬化部分に連続的にまたは段階的に移動させることにより、硬化部分を積層させて所望の立体形状とする。ここで、照射位置の移動は種々の方法によって行うことができ、例えば光源、樹脂組成物の収容容器、樹脂組成物の既硬化部分の何れかを移動させたり当該容器に樹脂組成物を追加供給するなどの方法を挙げることができる。前記の光学的立体造形法の代表的な一例を説明すると、収容容器内において昇降自在に設けられた支持ステージを樹脂組成物の液面から微小量降下(沈降)させることにより、当該支持ステージ上に樹脂組成物を供給してその薄層(1)を形成する。次いで、この薄層(1)に対して選択的に光を照射することにより、固体状の硬化樹脂層(1)を形成する。次いで、この硬化樹脂層(1)上に光硬化性液状樹脂組成物を供給してその薄層(2)を形成し、この薄層(2)に対して選択的に光照射することにより、前記硬化樹脂層(1)上にこれと連続して一体的に積層するよう新しい硬化樹脂層(2)を形成する。そして、光照射されるパターンを変化させながら或いは変化させずに、この工程を所定回数繰り返すことにより、複数の硬化樹脂層(n)が一体的に積層されてなる立体形状物が造形される。
【0053】
このようにして得られる立体形状物を収容容器から取り出し、その表面に残存する未反応の樹脂組成物を除去した後、必要に応じて洗浄する。ここで、洗浄剤としては、イソプロピルアルコール、エチルアルコールなどのアルコール類に代表されるアルコール系有機溶剤;アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどに代表されるケトン系有機溶剤;テルペン類に代表される脂肪族系有機溶剤;低粘度の熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂を挙げることができる。なお、表面平滑性の良好な立体形状物を製造する場合には、前記熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を使用して洗浄することが好ましく、この場合には、洗浄に使用した硬化性樹脂の種類に応じて、熱照射または光照射によるポストキュアーを行う必要がある。なお、ポストキュアーは、表面の樹脂を硬化させるだけでなく、立体形状物の内部に残存することのある未反応の樹脂組成物をも硬化させることができるので、有機溶剤により洗浄した場合にもポストキュアーを行うことが好ましい。
【0054】
このようにして得られる立体形状物は、圧縮強度、耐ねじ締め性、および寸法精度などが高く、耐熱性にも優れている。さらに、立体形状物の表面強度および耐熱性を向上させるためには、洗浄処理を施した後に、熱硬化性または光硬化性のハードコート材を使用することが好ましい。かかるハードコート材としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などからなる有機コート材、あるいは無機ハードコートを使用することができ、これらのハードコート材は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0055】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0056】
実施例及び比較例
表1に示す配合処方に従って各成分を攪拌容器内に仕込み、60℃で3時間攪拌することにより、液状組成物を製造した。得られた液状組成物についてB型粘度計により粘度(25℃)を測定し、その結果を表1に示した。表1の配合処方は、重量部で示す。
【0057】
【表1】
【0058】
1)「UVR−6110」(ユニオンカーバイド社製)
2)「UVR−6199」(ユニオンカーバイド社製)
3)「UVI−6974」(ユニオンカーバイド社製)
4)「レジナスボンドRKB」(レジナス化成(株)製)
5)「サンニックスGP−400」(三洋化成(株)製)
6)「ビスコート295」(大阪有機化学工業(株)製)
7)「イルガキュア184」(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)
8)「エポライト4000」(共栄社(株)製)
【0059】
試験例
[ねじ締めの試験]
(1)試験片の作製
ソリッドクリエーターSCS−300P(ソニーマニュファクチュアリングシステムズ(株)製)を使用し、照射面(液面)におけるレーザーパワー100mW、各組成において硬化深さが0.3mmとなる走査速度の条件で、光硬化性樹脂組成物に対して選択的にレーザー光を照射して硬化樹脂層(厚さ0.20mm)を形成する工程を繰り返すことにより、図1および2に示すような測定モデル(以下「ねじ締めモデル」という。)を造形した。次いで、このねじ締めモデルをソリッドクリエーターから取り出し、外表面に付着している樹脂組成物を洗浄除去した。
(2)測定
このようにして作製したねじ締めモデルを温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室内に24時間静置したのち、アルミ製台座に水平に固定し、図1および2の穴に、オーリングとワッシャーリングを備えたSUS製M8ボトル(強度T4)をトルクレンチを用いて4.9N・mづつ締めつけ、破壊強度(以下、「ねじ締め破壊強度」という。)を測定した。
[圧縮強度]
(1)試験片の作製
ねじ締め試験の試験片作製時と同一の光造形条件で、JIS規格K7181に準じた試験片を造形した。
(2)測定
このようにして作製した試験片を温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室内に24時間静置したのち、JIS規格K7181に記載された方法に従って、圧縮強度を測定した。
[熱たわみ荷重試験]
(1)試験片の作製
ねじ締め試験の試験片作製時と同一の光造形条件で、JIS規格K7207に準じた試験片を造形した。
(2)測定
このようにして作製した試験片を温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室内に24時間静置したのち、JIS規格K7207に記載された方法に従って、熱変形温度(HDT)を測定した。
[反り評価試験]
(1)試験片の作製
ねじ締め試験の試験片作製時と同一の光造形条件で、図3(1)に示した試験片を造形した。
(2)測定
このようにして作製した試験片を温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室内に24時間静置したのち、図3(2)に示すように、片端を水平台に固定し、もう片方の片端と水平台との距離Δhを反り量として評価し、反り量の少ない順に優、良、不可とした。
【0060】
得られた結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2から明らかなように、脂環式エポキシ基濃度が3.8〜5.0mmol/gの本発明組成物から形成された光学的立体造形物は、強力な耐ねじ締め性、圧縮強度を有し、かつ耐熱性にも優れているため、高熱となる場所でねじ締めにより固定されて使用される機械部品として有用である。
【0063】
【発明の効果】
本発明の光硬化性液状樹脂組成物は、耐熱性及び耐ねじ締め性の要求される造形物作成用の光学的立体造形用樹脂組成物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ねじ締めモデルの平面図を示す。
【図2】ねじ締めモデルの正面図を示す。
【図3】熱たわみ荷重試験片用の斜視図(1)及び水平台に固定したときの正面図(2)を示す。
Claims (2)
- 組成物全量100重量%に対して、
(A)3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3 ' ,4 ' −エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 40〜70重量%、
(B)カチオン性光重合開始剤 0.1〜10重量%、
(C)平均粒子径10〜700nmのエラストマー粒子 1〜35重量%、
(D)エチレン性不飽和モノマー 10〜25重量%、及び
(F)ラジカル性光重合開始剤 0.01〜10重量%
を含有し、組成物中の脂環式エポキシ基濃度が3.8〜5.0mmol/gであることを特徴とする光硬化性液状樹脂組成物。 - さらに、(E)分子中に1個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオール化合物を含有するものである請求項1記載の光硬化性液状樹脂組成物。
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