JP3792949B2 - 回路遮断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気回路を短時間で遮断する回路遮断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に設けられる電装システムでは、パワーウインドウ等の負荷に何らかの異常が発生したり、バッテリーと各負荷とを接続している複数の電線によって構成されたワイヤーハーネス等に何らかの異常が発生したとき、バッテリーと、ワイヤーハーネスとの間に介挿された大電流ヒューズを溶断させて、バッテリーと、ワイヤーハーネスとの間を遮断し、これによって各負荷やワイヤーハーネス等が焼損するのを防止している。
【0003】
しかしながら、このような大電流ヒューズを使用した電装システムでは、パワーウインドウ等の負荷に何らかの異常が発生したり、バッテリーと各負荷とを接続しているワイヤーハーネス等に何らかの異常が発生したりしても、大電流ヒューズに予め設定されている許容値以上の電流が流れないと、これが溶断しないことから、許容値に近い大きな電流が連続的に流れているとき、これを検知して、バッテリーと、ワイヤーハーネスとの間を遮断する各種の保護装置が開発されている。
【0004】
図7は保護装置のうち、バイメタルを使用した保護装置の一例を示す断面図である。図7に示す保護装置は、絶縁樹脂などによって構成され、上部側にヒューズ収納部102が形成されたハウジング103と、このハウジング103のヒューズ収納部102を開閉自在に閉止する蓋113と、上端部分がヒューズ収納部102内に突出し、下端が外部に露出するように、ハウジング103の下側に配置され、外部に露出した部分がバッテリー104のプラス端子に接続される電源ターミナル105と、上端部分がヒューズ収納部102に突出し、下端が外部に露出するように、ハウジング103の下側に配置され、外部に露出した部分がワイヤーハーネス106を構成する電線107を介して負荷108に接続される負荷ターミナル109と、ヒューズ収納部102内に配置された低融点金属などによって構成され、その一端が電源ターミナル105の上端に接続され、他端が負荷ターミナル109の上端に接続される可溶体110と、電源ターミナル105、負荷ターミナル109の中間位置となるように、かつ下端が外部に露出するように、ハウジング103の下側に配置され、外部に露出した部分がバッテリー104のマイナス端子に接続される中間ターミナル111と、2種類の金属を張り合わせた長板状部材によって構成され、下端側が中間ターミナル111の上端に接続され、上端側がL字状に曲げられて可溶体110と対向するように配置されるバイメタル112とを備えている。
【0005】
そして、車両のイグニッションスイッチ等が操作され、バッテリー104のプラス端子、電源ターミナル105、可溶体110、負荷ターミナル109、ワイヤーハーネス106の電線107、負荷108、バッテリー104のマイナス端子なる経路で、電流が流れているとき、負荷108あるいはこの負荷108と保護装置101とを接続しているワイヤーハーネス106に何らかの異常が発生して、可溶体110に許容値以上の電流が流れたとき、これが発熱して溶断し、負荷108やワイヤーハーネス106などを保護する。
【0006】
また、負荷108あるいは負荷108と保護装置101とを接続しているワイヤーハーネス106に何らかの異常が発生し、可溶体110に大きな電流が流れていても、これが許容値を越えていないとき、可溶体110に流れている電流によって可溶体110が発熱し、バイメタル112が変形を開始する。そして、可溶体110に大きな電流が流れ始めてから、所定時間が経過した時点で、バイメタル112の先端が可溶体110に接触して、バッテリー104のプラス端子、電源ターミナル105、可溶体110、中間ターミナル111、バッテリー104のマイナス端子なる経路で、可溶体110に大きな短絡電流が流れ、これが溶断する。
【0007】
これにより、予め設定されている時間以上、許容値以下の電流が流れたときにも、回路を遮断して、ワイヤーハーネス106や負荷108などを保護する。
【0008】
また、このような保護装置101以外に保護装置として、図8に示す保護装置121も開発されている。
【0009】
図8に示す保護装置121は、絶縁樹脂などによって構成されるハウジング122と、このハウジング122の一側面側に埋設され、下端部分がバッテリー123のプラス端子に接続される電源ターミナル124と、ハウジング122の他側面側に埋設され、下端部分がワイヤーハーネス125を構成する電線126を介して負荷127に接続される負荷ターミナル128と、低融点金属等をU字型に形成した可溶導線129及び可溶導線129を覆うように形成される耐熱被覆130によって構成され、一端が電源ターミナル124の上端に接続され、他端が負荷ターミナル128の上端に接続される電線131と、マルテンサイト相になっているとき、図8に示すように、電線131に巻き付けられた形状にされ、120°C〜170°Cの温度まで加熱されたとき、電線131を締め付ける形状の母相に戻る形状記憶合金によって構成されるコイル132と、ハウジング122の外部に設けられ、上端がコイル132の一端に接続され、下端がバッテリー123のマイナス端子に接続される外部ターミナル133とを備えている。
【0010】
そして、車両のイグニッションスイッチ等が操作され、バッテリー123のプラス端子、電源ターミナル124、電線131の可溶体129、負荷ターミナル128、ワイヤーハーネス125の電線126、負荷127、バッテリー123のマイナス端子なる経路で、電流が流れているとき、負荷127あるいは負荷127と保護装置121とを接続しているワイヤーハーネス125に何らかの異常が発生して、可溶導線129に許容値以上の電流が流れたとき、これが発熱して溶断し、負荷127やワイヤーハーネス125などを保護する。
【0011】
また、負荷127あるいは負荷127と保護装置121とをワイヤーハーネス125に何らかの異常が発生し、可溶導線129に大きな電流が流れていても、これが許容値を越えていないとき、可溶導線129に流れている電流によって可溶導線129が発熱し、コイル132の温度が上昇する。そして、可溶導線129に大きな電流が流れ始めてから、所定時間が経過し、コイル132の温度が120°C〜170°Cの温度まで上昇したとき、コイル132がマルテンサイト相から母相に遷移して、熱によって軟化している耐熱被覆130に食い込んで、可溶導線129に接触し、バッテリー123のプラス端子、電源ターミナル124、可溶導線129、コイル132、外部ターミナル133、バッテリー123のマイナス端子なる経路で、可溶導線129に大きな短絡電流が流れ、これが溶断する。
【0012】
これにより、予め設定された時間以上、許容値以下の電流が流れたときにも、回路を遮断して、ワイヤーハーネス125や負荷127などを保護する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した従来の保護装置101、121にあっては、以下に述べるような問題があった。
【0014】
まず、図7に示す保護装置では、熱膨張率が異なる2種類の金属を張り合わせたバイメタル112を使用して、可溶体110に大きな電流が流れているかどうかを検出しているので、可溶体110に流れる電流の大きさが変化すると、バイメタル112が変形して、回路を遮断するまでの時間が変化する。
【0015】
このため、大きな電流が断続的に流れるような故障が発生したとき、可溶体110の温度がある程度以上、上昇しなくなり、保護装置101が回路を遮断する前に、ワイヤーハーネス106や負荷108などが燃え出してしまう虞れがあった。
【0016】
一方、図8に示す保護装置121では、形状合金記憶によって構成されるコイル132を使用して、可溶導線129に大きな電流が流れているかどうかを検出しているので、可溶導線129に流れる電流の大きさが変化すると、コイル132が変形して、回路を遮断するまでの時間が変化する。
【0017】
このため、大きな電流が断続的に流れるような故障が発生したとき、可溶導線129の温度がある程度以上、上昇しなくなり、保護装置121が回路を遮断する前に、ワイヤーハーネス125や負荷127などを過度に発熱させてしまう虞れがあった。
【0018】
また、図7及び図8に示す保護装置では、熱変形電導部材であるバイメタル112やコイル132の熱反応時間が通電電流に左右されていた。さらには、熱変形電導部材の熱反応が異常時(過電流通電)にタイムリーに作動しない場合があった。
【0019】
本発明は、車両の異常信号が入力されたとき、回路を短時間で且つ確実に遮断して、電気部品を保護することができる回路遮断装置を提供することを課題とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、以下の構成とした。請求項1の発明は、第1の接続端子と第2の接続端子との間に配置され、前記第1の接続端子及び前記第2の接続端子に接触し、加熱剤を充填した導電性を有する加熱部と、車両の異常時に外部からの異常信号により、前記加熱部に充填された加熱剤に着火する着火部と、この着火部及び前記加熱部を収納する外ケースと、伸縮自在な弾性部材と、この弾性部材を圧縮状態で取り付けるとともに前記外ケースに着脱自在であって、前記外ケースに装着されたときに前記加熱部の近傍または接触して配置されるとともに前記加熱剤の熱により溶融する着脱部材とを備えることを特徴とする。
【0021】
請求項1の発明によれば、伸縮自在な弾性部材を圧縮状態で取り付けた着脱部材は、外ケースに装着されたときに加熱部の近傍または接触して配置される。そして、外部からの異常信号により着火部が着火すると、加熱部に充填された加熱剤が発熱し、その熱により着脱部材が溶融する。圧縮されていた弾性部材が伸張して加熱部を跳ね上げるため、加熱部と第1の接続端子及び第2の接続端子との電気的接続が遮断されるから、回路を短時間で且つ確実に遮断して、電気部品を保護することができる。
【0022】
また、着脱部材は、外ケースに着脱自在に構成されてなるため、着脱部材の着脱作業が簡単になる。さらに、弾性部材を着脱部材で保持しているため、第1の接続端子及び第2の接続端子と加熱部との接合部に外力が加わらなくなる。
【0023】
請求項2の発明の前記外ケースは、上ケースと、この上ケースに被せられる下ケースとからなり、この下ケースには開口部及び溝部が形成され、前記弾性部材が取り付けられた前記着脱部材は、前記溝部と嵌合するケース取付用爪を有するとともに、前記開口部に挿入可能に構成されることを特徴とする。
【0024】
請求項2の発明によれば、弾性部材が取り付けられた着脱部材を下ケースに形成された開口部に挿入し、着脱部材に形成されたケース取付用爪を下ケースに形成された溝部に嵌合させることで、着脱部材が下ケースに容易に装着できるため、装置全体の組み付けが容易に行える。
【0025】
請求項3の発明の前記着脱部材は、基部と、この基部に対して植立し且つ前記弾性部材が巻き付けられた胴部と、この胴部の端部に形成され且つ前記弾性部材を圧縮した状態で係止させる係止部と、前記ケース取付用爪とを有してなることを特徴とする。
【0026】
請求項3の発明によれば、係止部を内側に倒し、弾性部材を係止部を通して胴部に押し込むことで胴部に弾性部材が巻き付けられ、弾性部材が圧縮された状態で係止部により係止される。すなわち、係止部を弾性部材の内側に設置しているため、係止部が弾性部材の反力によって内側に倒れ込む傾向にあり、これによって、係止部が加熱部と強接し、熱伝導が良好となる。また、弾性部材を着脱部材で保持しているため、第1の接続端子及び第2の接続端子と加熱部との接合部に外力が加わらなくなる。
【0027】
請求項4の発明の前記係止部は、前記加熱剤の熱により溶融する低融点金属または樹脂部材からなることを特徴とする。
【0028】
請求項4の発明によれば、係止部が、加熱剤の熱により溶融する低融点金属または樹脂部材からなるため、加熱剤の発熱により係止部が溶融し、弾性部材が伸張して、加熱部が跳ね上がり、第1の接続端子及び第2の接続端子の電気的接続が遮断される。
【0029】
請求項5の発明は、前記加熱部の端部には側壁部が形成され、前記第1の接続端子及び前記第2の接続端子のそれぞれの先端部と前記側壁部とを低融点材により接合したことを特徴とする。
【0030】
請求項5の発明によれば、第1の接続端子及び第2の接続端子のそれぞれの先端部と側壁部とを低融点材により接合したため、加熱剤の発熱により着脱部材及び低融点材が溶融すると、加熱部が跳ね上がり、第1の接続端子及び第2の接続端子の電気的接続が遮断されるから、回路を短時間で且つ確実に遮断して、電気部品を保護することができる。また、第1の接続端子及び第2の接続端子と加熱部との接合部である低融点材にバネ力が加わらないため、接合部の信頼性を向上することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の回路遮断装置の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は実施の形態の回路遮断装置の遮断前の断面図である。図2は実施の形態の回路遮断装置の組立斜視図である。図3は実施の形態の回路遮断装置の遮断前のリテーナの状態図である。図4は実施の形態の回路遮断装置の遮断後のリテーナの状態図である。
【0032】
図1に示す回路遮断装置において、板状の長い第1のバスバー11aは、例えば、銅または銅合金からなり、図示しないバッテリ等に接続されている。また、板状の長い第2のバスバー19aも、例えば、銅または銅合金からなり、図示しない負荷等に接続されている。
【0033】
図2において、上ケースとしてのキャップ14aには四角形状の溝部51を有する延出部50が形成されており、下ケースとしての樹脂ケース14bには楔状の係止部55が形成されており、溝部51に係止部55が嵌合することで、樹脂ケース14bにキャップ14aが被せられるようになっている。キャップ14a及び樹脂ケース14bは、外ケースを構成し、樹脂(熱可塑性樹脂)等の絶縁材料の容器からなる。
【0034】
樹脂ケース14bに形成された開口部53には、円筒状のテルミットケース26が収納されており、このテルミットケース26には、加熱剤27とリード線31が接続された着火部29とが収納されていて、加熱剤上部には上蓋24が被せられている。
【0035】
テルミットケース26は、熱伝導度が良く、加熱剤27の発熱で溶けない、例えば、黄銅、銅、銅合金、ステンレス等を用いると良い。テルミットケース26は、金属の絞り加工等により成形され、円筒または直方体からなる。
【0036】
着火部29は、着火剤を有し、車両の衝突事故等の車両の異常時にリード線31に流れる電流によって発生する発熱により着火剤を点火して加熱剤27にテルミット反応熱を発生させるようになっている。
【0037】
丸穴部12を有する第1のバスバー11a及び丸穴部20を有する第2のバスバー19aは、上方に略直角に折り曲げられており、折り曲げられた部分が樹脂ケース14bを挿通し、バスバー先端部13a,16aがハンダ(例えば、融点が200℃〜300℃)等の低融点材としての低融点金属23を介してテルミットケース26の左右の側壁部に接触している。
【0038】
テルミットケース26の左右の側壁部は、バスバー先端部13a,16aに低融点金属23により接合されており、低融点金属23及びテルミットケース26を介して第1のバスバー11aと第2のバスバー19aとが電気的に接続可能となっている。
【0039】
低融点金属23としては、例えば、Sn、Pb、Zn、Al及びCuから選ばれる少なくとも1種の金属からなる。
【0040】
加熱剤27は、例えば、酸化鉄(Fe23)等の金属酸化物の粉末、アルミニウムの粉末とによって構成され、リード線31の発熱によりテルミット反応を起こして高熱を発生するテルミット剤である。このテルミット剤は、防湿対策として金属製の容器であるテルミットケース26に封入される。なお、酸化鉄(Fe23)を用いる代わりに、酸化クロム(Cr23)、酸化マンガン(MnO2)などを用いても良い。
【0041】
また、加熱剤27としては、B、Sn、FeSi、Zr、Ti及びAlの中から選ばれる少なくとも1種の金属粉末と、CuO、MnO2、Pb34、PbO2、Fe34およびFe23の中から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物と、アルミナ、ベントナイト、タルク等からなる添加剤の少なくとも1種の混合物を用いても良い。このような加熱剤によれば、着火部29により容易に着火され、低融点金属23を短時間で溶融することができる。
【0042】
また、樹脂ケース14bの開口部53内にあって且つテルミットケース26の下部には、樹脂部材からなるリテーナ45が配置されている。このリテーナ45は、圧縮バネ39aを圧縮状態で取り付けるとともに樹脂ケース14bに着脱自在であって、樹脂ケース14bに装着されたときにテルミットケース26の近傍または接触して配置されるとともに加熱剤27の熱により溶融する着脱部材を構成する。
【0043】
このリテーナ45は、図3に示すように、基部61と、この基部61に形成された切欠部63と、切欠部63及び基部61に対して植立したリテーナ胴部65と、このリテーナ胴部65の先端に形成された一対のリテーナ係止部67と、樹脂ケース14bにリテーナ45を取り付けるための突起状のケース取付用爪69とを有して構成される。
【0044】
このリテーナ45に形成されたケース取付用爪69に対応して、樹脂ケース14bには溝部15が形成されていて、ケース取付用爪69が樹脂ケース14bに形成された溝部15に嵌合するようになっている。
【0045】
リテーナ胴部65の外側には螺旋状にリテーナ胴部65を巻いた圧縮バネ39aが配置されており、この圧縮バネ39aの先端部は、リテーナ係止部67により係止されている。すなわち、リテーナ45には圧縮バネ39aが圧縮された状態で挟み込まれている。リテーナ係止部67及びリテーナ胴部65の一部は、テルミットケース26に強接している。
【0046】
次に、このように構成された実施の形態の回路遮断装置の動作を図面を参照して説明する。
【0047】
まず、リテーナ45の樹脂ケース14bへの取り付けが行われる。最初に、一対のリテーナ係止部67を内側に撓ませ、リテーナ45に圧縮バネ39aを押し込んでリテーナ45に圧縮バネ39aを組み付ける。
【0048】
そして、圧縮バネ39aを組み付けた後に、樹脂ケース14bの下面方向から開口部53内に圧縮バネ39aが取り付けられたリテーナ45を挿入し、リテーナ45に形成されたケース取付用爪69を樹脂ケース14bに形成された溝部15に嵌合させることで、リテーナ45を樹脂ケース14bに装着させる。このとき、圧縮バネ39aが取り付けられたリテーナ45は、テルミットケース26の内の着火部29側にある側壁部に強接する。
【0049】
すなわち、リテーナ係止部67を内側に倒し、圧縮バネ39aをリテーナ45に押し込むだけで容易に圧縮バネ39aをリテーナ45に組み付けでき、リテーナ45を容易に樹脂ケース14bに装着することができる。
【0050】
次に、リテーナ45が樹脂ケース14bに取り付けられた状態における回路遮断動作を説明する。
【0051】
まず、通常では、第1のバスバー11aと第2のバスバー19aとは、低融点金属23及びテルミットケース26を介して電気的に接続され、図示しないバッテリから図示しない負荷に電流が供給される。
【0052】
次に、車両が障害物等に衝突したり、あるいは車両が崖等から転落したりすると、衝突センサー等により車両の異常を検知する。車両の異常検知により、リード線31を通って着火部29へ電流が流れる。
【0053】
すると、電流による発熱により着火部29が発火するため、テルミット剤である加熱剤27が以下の反応式によりテルミット反応熱を発生する。
【0054】
Fe23+2AL→AL23+2Fe+386.2Kcal
このテルミット反応熱によりテルミットケース26が加熱され、加熱剤27の発熱とテルミットケース26の熱により低融点金属23が加熱されて、溶融する。また、これと同時に、圧縮バネ39aをリテーナ45に圧縮固定した樹脂性のリテーナ係止部67が前記熱によって溶融する。すると、図4に示すように、圧縮バネ39aが伸張するため、テルミットケース26がキャップ14aの方向に跳ね上がる。
【0055】
このため、テルミットケース26と、第1のバスバー11a及び第2のバスバー19aとの電気的接続が切断される。すなわち、車両の電気回路が遮断されることになる。
【0056】
このように、実施の形態の回路遮断装置によれば、車両からの異常信号を入力して、着火部29の発火により、加熱剤27でテルミット反応を起こさせ、そのテルミット反応熱で、低融点金属23及びリテーナ係止部67を溶融させるため、圧縮バネ39aが瞬時に跳ね上がる。このため、車両の電気回路を短時間で且つ確実に遮断することができ、電気部品を保護することができる。
【0057】
また、リテーナ45のリテーナ係止部67を圧縮バネ39aの内側に設置しているため、リテーナ係止部67が圧縮バネ39aの反力によって内側に倒れ込む傾向があり、テルミットケース26とリテーナ45とが強接し、これによってテルミットケース26からリテーナ45への熱伝導が良好となるので、効率よくリテーナ係止部67を溶融することができる。
【0058】
また、リテーナ係止部67を内側に倒し、圧縮バネ39aをリテーナ45に押し込むだけで容易に圧縮バネ39aをリテーナ45に組み付けでき、リテーナ45を容易に樹脂ケース14bに装着することができる。
【0059】
さらに、リテーナ45に形成されたケース取付用爪69を、樹脂ケース14bに形成された溝部15より内側に倒せば、リテーナ45を樹脂ケース14bから容易に離脱することができる。従って、リテーナ45の樹脂ケース14bに対する着脱が簡単に行える。
【0060】
また、圧縮バネ39aをリテーナ45により保持しているため、第1のバスバー11a及び第2のバスバー19aとテルミットケース26との接合部、すなわち、低融点金属23に外力を加えることがなくなる。このため、接合部の信頼性を向上することができる。
【0061】
また、圧縮バネ39aとリテーナ45とのサブアッシーをヒューズ下面、すなわち、樹脂ケース14bの開口部53から挿入するようにしているため、回路遮断装置全体の組み付けが容易になる。さらに、回路が遮断された後には、リテーナ45とテルミットケース26とを交換すれば、樹脂ケース14bは、そのままの状態で、ヒューズとして再利用が可能となる。
【0062】
また、樹脂ケース14bにキャップ14aを被せるため、回路遮断時におけるテルミットケース26がキャップ14aから飛び出すことがなくなり、これによって、熱による火傷等を防止することができる。
【0063】
次に、回路遮断装置に他のリテーナを組み込んだ例を説明する。図5は実施の形態の回路遮断装置の遮断前の他のリテーナの状態図である。図6は実施の形態の回路遮断装置の遮断後の他のリテーナの状態図である。
【0064】
図5に示す他のリテーナは、基部61と、この基部61に形成された切欠部63と、切欠部63及び基部61に対して植立したリテーナ胴部75と、このリテーナ胴部75の先端に形成された一対の金属係止部77と、樹脂ケース14bにリテーナ45を取り付けるための突起状のケース取付用爪69とを有して構成される。
【0065】
一対の金属係止部77及びリテーナ胴部75は、加熱剤27の熱により溶融するハンダ(例えば、融点が200℃〜300℃)等の低融点材としての低融点金属からなる。
【0066】
このような構成の他のリテーナを樹脂ケース14bに装着させても、加熱剤27の発熱とテルミットケース26の熱により圧縮バネ39aを他のリテーナに圧縮固定した金属係止部77が前記熱によって溶融する。すると、図6に示すように、圧縮バネ39aが伸張するため、テルミットケース26がキャップ14aの方向に跳ね上がり、車両の電気回路が遮断されることになる。
【0067】
なお、実施の形態では、圧縮バネ39a及び低融点金属23を設け、リテーナ45及び低融点金属23が溶融したときに回路を遮断したが、例えば、低融点金属23を設けることなくリテーナ45のみを設け、リテーナ45が溶融したときに回路を遮断するようにしても良い。このほか、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能であるのは勿論である。
【0068】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、伸縮自在な弾性部材を圧縮状態で取り付けた着脱部材は、外ケースに装着されたときに加熱部の近傍または接触して配置される。そして、外部からの異常信号により着火部が着火すると、加熱部に充填された加熱剤が発熱し、その熱により着脱部材が溶融する。圧縮されていた弾性部材が伸張して加熱部を跳ね上げるため、加熱部と第1の接続端子及び第2の接続端子との電気的接続が遮断されるから、回路を短時間で且つ確実に遮断して、電気部品を保護することができる。
【0069】
また、着脱部材は、外ケースに着脱自在に構成されてなるため、着脱部材の着脱作業が簡単になる。さらに、弾性部材を着脱部材で保持しているため、第1の接続端子及び第2の接続端子と加熱部との接合部に外力が加わらなくなる。
【0070】
請求項2の発明によれば、弾性部材が取り付けられた着脱部材を下ケースに形成された開口部に挿入し、着脱部材に形成されたケース取付用爪を下ケースに形成された溝部に嵌合させることで、着脱部材が下ケースに容易に装着できるため、装置全体の組み付けが容易に行える。
【0071】
請求項3の発明によれば、係止部を内側に倒し、弾性部材を係止部を通して胴部に押し込むことで胴部に弾性部材が巻き付けられ、弾性部材が圧縮された状態で係止部により係止される。すなわち、係止部を弾性部材の内側に設置しているため、係止部が弾性部材の反力によって内側に倒れ込む傾向にあり、これによって、係止部が加熱部と強接し、熱伝導が良好となる。また、弾性部材を着脱部材で保持しているため、第1の接続端子及び第2の接続端子と加熱部との接合部に外力が加わらなくなる。
【0072】
請求項4の発明によれば、係止部が、加熱剤の熱により溶融する低融点金属または樹脂部材からなるため、加熱剤の発熱により係止部が溶融し、弾性部材が伸張して、加熱部が跳ね上がり、第1の接続端子及び第2の接続端子の電気的接続が遮断される。
【0073】
請求項5の発明によれば、第1の接続端子及び第2の接続端子のそれぞれの先端部と側壁部とを低融点材により接合したため、加熱剤の発熱により着脱部材及び低融点材が溶融すると、加熱部が跳ね上がり、第1の接続端子及び第2の接続端子の電気的接続が遮断されるから、回路を短時間で且つ確実に遮断して、電気部品を保護することができる。また、第1の接続端子及び第2の接続端子と加熱部との接合部である低融点材にバネ力が加わらないため、接合部の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の回路遮断装置の遮断前の断面図である。
【図2】実施の形態の回路遮断装置の組立斜視図である。
【図3】実施の形態の回路遮断装置の遮断前のリテーナの状態図である。
【図4】実施の形態の回路遮断装置の遮断後のリテーナの状態図である。
【図5】実施の形態の回路遮断装置の遮断前の他のリテーナの状態図である。
【図6】実施の形態の回路遮断装置の遮断後の他のリテーナの状態図である。
【図7】従来のバイメタルを使用した保護装置の一例を示す断面図である。
【図8】従来の保護装置の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
11a 第1のバスバー
13a,16a バスバー先端部
14a キャップ
14b 樹脂ケース
15 溝部
19a 第2のバスバー
23 低融点金属
24 上蓋
26 テルミットケース
27 加熱剤
29 着火部
31 リード線
39a 圧縮バネ
45 リテーナ
61 基部
65 リテーナ胴部
67 リテーナ係止部
69 ケース取付用爪
77 金属係止部

Claims (5)

  1. 第1の接続端子と第2の接続端子との間に配置され、前記第1の接続端子及び前記第2の接続端子に接触し、加熱剤を充填した導電性を有する加熱部と、
    車両の異常時に外部からの異常信号により、前記加熱部に充填された加熱剤に着火する着火部と、
    この着火部及び前記加熱部を収納する外ケースと、
    伸縮自在な弾性部材と、
    この弾性部材を圧縮状態で取り付けるとともに前記外ケースに着脱自在であって、前記外ケースに装着されたときに前記加熱部の近傍または接触して配置されるとともに前記加熱剤の熱により溶融する着脱部材と、
    を備えることを特徴とする回路遮断装置。
  2. 前記外ケースは、上ケースと、この上ケースに被せられる下ケースとからなり、この下ケースには開口部及び溝部が形成され、
    前記弾性部材が取り付けられた前記着脱部材は、前記溝部と嵌合するケース取付用爪を有するとともに、前記開口部に挿入可能に構成されることを特徴とする請求項1記載の回路遮断装置。
  3. 前記着脱部材は、基部と、この基部に対して植立し且つ前記弾性部材が巻き付けられた胴部と、この胴部の端部に形成され且つ前記弾性部材を圧縮した状態で係止させる係止部と、前記ケース取付用爪とを有してなることを特徴とする請求項2記載の回路遮断装置。
  4. 前記係止部は、前記加熱剤の熱により溶融する低融点金属または樹脂部材からなることを特徴とする請求項3記載の回路遮断装置。
  5. 前記加熱部の端部には側壁部が形成され、前記第1の接続端子及び前記第2の接続端子のそれぞれの先端部と前記側壁部とを低融点材により接合したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の回路遮断装置。
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