JP3791936B2 - 無機酸化物粒子 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、無機酸化物微粒子(子粒子)が凝集してなる無機酸化物粒子(母粒子)に関し、更に詳しくは、当該無機酸化物粒子(母粒子)を構成する無機酸化物微粒子(子粒子)に再分散が可能な無機酸化物粒子(母粒子)に関するものである。
【0002】
【従来技術】
多数の無機酸化物微粒子(子粒子)を凝集させてなる無機酸化物粒子(母粒子)については既に公知であり、例えば、特開昭56−120511号公報には、アルミノシリケートコーティングを有する球形粒子の集塊よりなる実質的に均一な孔サイズを有する多孔性粉末、および、その製造方法として、ゲル化させることなしに均一なサイズの粒子を有するアルミノシリケート水性ゾルを乾燥させて粉末とすることからなる多孔性粉末の製法が開示されている。
【0003】
しかしながら、上記公報を含めてこれら従来の無機酸化物粒子(母粒子)は、それを構成する無機酸化物微粒子(子粒子)に再分散させることができなかった。また、従来は、比表面積の増加等を企図して無機酸化物微粒子(子粒子)を如何にして凝集させるかという点に研究の視点が注がれており、無機酸化物粒子(母粒子)について、これを構成する無機酸化物微粒子(子粒子)に再分散させるという認識自体がなかった。
【0004】
【発明の目的】
本発明者等は脱臭剤、フィルムフィラーなどの各種添加剤等の特定の用途に対しては、無機酸化物微粒子(子粒子)に再分散が容易な無機酸化物粒子(母粒子)の適用が極めて有効であろうとの着想に基づき、鋭意研究した結果、本発明をなすに到ったものである。即ち、本発明の目的は、無機酸化物粒子(母粒子)を構成する単一の無機酸化物微粒子(子粒子)に再分散可能な無機酸化物粒子(母粒子)を提供することにある。
【0005】
【発明の構成】
本発明にかかる無機酸化物粒子は、無機酸化物微粒子(子粒子)が凝集してなる無機酸化物粒子(母粒子)であって、下記式〔1〕を満足することを特徴とするものである。
1.0 ≦ Dpm/Dpc ≦ 2.0・・・〔1〕
但し、式〔1〕中、Dpcは無機酸化物微粒子(子粒子)の平均粒子径(μm)を表し、Dpmは、無機酸化物粒子(母粒子)を水に分散させたときの分散粒子の平均粒子径(μm)を表す。
【0006】
前記無機酸化物微粒子(子粒子)の平均粒子径は0.1〜1.0μmの範囲にあり、かつ、粒子径分布が平均粒子径±30%の粒子径の範囲に占める割合が50%以上であることが望ましい。
【0007】
【発明の具体的説明】
本発明において無機酸化物微粒子(子粒子)の形状は、特に限定されるものではないが、球形状のものが特に好ましい。また、その平均粒子径は0.1〜1.0μm、好ましくは、0.3〜0.6μmの範囲にあることが望ましい。
【0008】
該微粒子(子粒子)の平均粒子径が0.1μm未満の場合には、凝集して無機酸化物粒子(母粒子)を構成した際に、子粒子同士の結合力が強くなるため得られた粒子(母粒子)は、子粒子への再分散性が悪くなり、一般に、後述する式〔1〕を満足しにくくなる。また、該微粒子(子粒子)の、平均粒子径が1.0μmを越える場合には、子粒子同士の結合力が弱いために凝集した粒子(母粒子)の形状を保持することが難しくなる。
【0009】
無機酸化物微粒子(子粒子)の大きさは可及的に均一であることが望ましい。具体的には、粒子径分布が平均粒子径±30%の粒子径の範囲に占める割合が50%以上、好ましくは60%以上であることが望ましい。粒子径分布が平均粒子径±30%の粒子径の範囲に占める割合が50%より少ない場合には、平均粒子径が0.1〜1.0μmの範囲にあっても、粒子径の小さい微粒子(子粒子)の存在によって子粒子同士の結合力が強くなり、単一の子粒子への再分散性が悪くなるので望ましくない。
【0010】
本発明において、無機酸化物微粒子(子粒子)を構成する無機酸化物としては、単一の酸化物、酸化物の混合物、あるいは、複合酸化物を挙げることができ、例えば、Al2 3 、SiO2 、TiO2 、ZrO2 、Fe2 3 、Sb2 5 、ZnO、MgO、CaO、CuO、SiO2 −Al2 3 、TiO2 −Al2 3 、SnO2 −Sb2 3 、TiO2 −ZrO2 、SiO2 −TiO2 、SiO2 −Al2 3 −MgO、SiO2 −Al2 3 −Ag2 O、SiO2 −TiO2 −Fe2 3 、SiO2 −Al2 3 −CaO、SiO2 −TiO2 −Al2 3 、SiO2 −Al2 3 −ZnO、などを挙げることができる。
【0011】
本発明の無機酸化物粒子(母粒子)は、前述の無機酸化物微粒子(子粒子)が凝集してなるもので、該粒子(母粒子)を、水や適当な有機溶媒、またはこれらの混合溶媒、もしくは、合成樹脂や塗膜形成剤(ビヒクル)中に混合すれば、無機酸化物粒子(母粒子)を構成する単一の微粒子(子粒子)に容易に再分散する。即ち、無機酸化物粒子(母粒子)は、下記式〔1〕を満足することを特徴とする。
1.0 ≦ Dpm/Dpc ≦ 2.0・・・〔1〕
【0012】
式〔1〕中、Dpcは、無機酸化物微粒子(子粒子)の平均粒子径(μm)を表し、Dpmは、無機酸化物粒子(母粒子)を水に分散させたときの分散粒子の平均粒子径(μm)を表す。なお、Dpmは、無機酸化物粒子(母粒子)の試料を0.2重量%ポリリン酸水溶液に45mg/mlの濃度となるように分散させ、周波数19.5KHzで15分間十分に超音波処理した後の分散粒子の平均粒子径を測定した。
【0013】
Dpm/Dpcの値が1の場合、母粒子に凝集する前の子粒子の平均粒子径と、母粒子が水に分散したときの分散粒子の平均粒子径が等しいことを意味しており、分散性が極めて良好であることを示している。一方、Dpm/Dpcの値が2を越える場合、単一の子粒子への再分散性が悪いことを示し、該無機酸化物粒子(母粒子)は水、その他の溶媒や樹脂中への分散性が悪く、前記した特定の用途に適用しても所望の効果が得られない。
【0014】
無機酸化物粒子(母粒子)が混合される前記有機溶媒としては、アルコール、グリコール、エステル、ケトン、芳香族系などの溶媒を使用することができ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、などの有機溶媒を例示することができる。
【0015】
前記合成樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリルエステル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、塩化ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、等を挙げることができる。
【0016】
また、前記塗膜形成剤(ビヒクル)としては、ボイル油、油ワニス、ニトロセルロース、ビニル樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、塩化ゴムなどが例示される。勿論、これらは1種を単独使用しても、または2種以上の化合物を併用してもよい。
【0017】
なお、上記した粒子の平均粒子径は、沈降セルを一定速度で回転させながら粒子濃度の変化を測定したり、または、光透過により濁度変化を測定したり、更には、粒子の沈降に伴う回転セルの重心の移動を検出する、所謂、遠心式粒度分布測定法により測定することができる。
【0018】
本発明の無機酸化物粒子(母粒子)は、その大きさ、形状等に関しては特に限定されるものではないが、平均粒子径が10〜200μmの範囲にある球形状のものが取扱い上の点などから特に好ましい。
【0019】
本発明の無機酸化物粒子(母粒子)は、例えば、次のような方法で製造される。即ち、前記した特定範囲の平均粒子径および粒子径分布を有する微粒子(子粒子)が分散した無機酸化物コロイド溶液を噴霧乾燥し、所望により焼成して、無機酸化物粒子(母粒子)を得る。なお、噴霧乾燥や焼成は通常の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥は、回転円板方式や加圧ノズル方式などの装置を用いて、100〜数百℃程度の温度で実施することができる。また、焼成は、空気中で300〜800℃の温度で1〜数時間行うことができる。
【0020】
また、上記特定の平均粒子径、粒子径分布を有する微粒子が分散してなる無機酸化物コロイド溶液は、例えば、小粒子径のコロイド粒子が分散するコロイド溶液のコロイド粒子をビルドアップ法で粒子成長させて、所望の大きさの粒子径を有するコロイド粒子とする公知の方法等により調製することができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明の無機酸化物粒子(母粒子)は、粒子径が比較的大きいので取扱いが容易であり、水、有機溶媒、樹脂などに添加した場合に、該粒子(母粒子)は、それを構成する微粒子(子粒子)に容易に再分散するので、脱臭剤、フィルムフィラーなどの各種添加剤、化粧料、顔料、塗料、プラスチック等の充填剤などの用途に好適である。
【0022】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。
【0023】
実施例1
平均粒径300nmのシリカゾル(触媒化成工業(株)製、SI−300P)を固形分濃度5重量%に調整したゾル25kgを種(シード)とし、この種(シード)分散液をアルカリ水溶液でpH12.5に調整し、これを95℃で30分間撹拌した。この種(シード)を含有する溶液に0.5重量%アルミン酸ナトリウム37.5kgと1.5重量%水ガラス37.5kgをそれぞれ78.1g/分で8時間かけて同時に添加した。次いで、95℃で1時間熟成した後、室温まで冷却した。このゾルを限外濾過膜を用いて100倍の蒸留水で洗浄し、さらに15重量%に濃縮してシリカ−アルミナ微粒子が分散したゾルを得た。
【0024】
図1は、レーザー光散乱法粒度分布測定装置(Hiac/Royco製、NICOMP−370)により求めた上記ゾルの粒子径分布図であり、微粒子の平均粒子径(Dpc)は0.37μm、粒子径が0.26〜0.48μmの範囲に占める割合は77.4%であった。
【0025】
このゾルを130〜230℃の温度で噴霧乾燥した後、500℃で2時間焼成して平均粒子径65μmの球状無機酸化物粒子を得た。図3および図4は、この球状無機酸化物粒子の電子顕微鏡写真である。
【0026】
この球状無機酸化物粒子1.35gを0.2重量%ポリリン酸水溶液30mlに分散させ、周波数19.5KHzで15分間の超音波処理した後、上記遠心式粒度分布測定法により粒子径分布を測定したところ、図2に示す粒子径分布図が得られた。分散した粒子の平均粒子径(Dpm)は0.37μmで、粒子径が0.26〜0.48μmの範囲に占める割合は77.1%であり、従って、Dpm/Dpcの値は1.0であった。
【0027】
実施例2
平均粒径180nmのシリカゾル(触媒化成工業(株)製、SI−180P)を固形分濃度5重量%に調整したゾル25kgを種(シード)とし、この種分散液をアルカリ水溶液でpH12.5に調整し、これを95℃で30分間撹拌した。この種を含有する溶液に0.5重量%アルミン酸ナトリウム54.5kgと1.5重量%水ガラス54.5kgをそれぞれ113.5g/分で8時間かけて同時に添加した。次いで、95℃で1時間熟成した後、室温まで冷却した。このゾルを限外濾過膜を用いて100倍の蒸留水で洗浄し、さらに15重量%に濃縮してシリカ−アルミナ微粒子が分散したゾルを得た。
該ゾルのシリカ−アルミナ微粒子の平均粒子径(Dpc)は0.23μmで、粒子径が0.16〜0.30μmの範囲に占める割合は68.2%であった。
【0028】
このゾルを130〜230℃の温度で噴霧乾燥した後、500℃で2時間焼成して平均粒子径68μmの球状無機酸化物粒子を得た。
この球状無機酸化物粒子1.35gを0.2重量%ポリリン酸水溶液30mlに分散させ、周波数19.5KHzで15分間の超音波処理した後、上記遠心式粒度分布測定法により粒子径分布を測定した。分散した粒子の平均粒子径(Dpm)は0.41μmで、粒子径が0.29〜0.53μmの範囲に占める割合は62.4%であり、従って、Dpm/Dpcの値は1.78であった。
【0029】
比較例
平均粒径5nmのシリカゾル(触媒化成工業(株)製、SI−550)を固形分濃度0.1重量%に調整したゾル1kgを種(シード)とし、この種分散液をアルカリ水溶液でpH12.5に調整し、これを95℃で30分間撹拌した。この種を含有する溶液に0.5重量%アルミン酸ナトリウム200kgと1.5重量%水ガラス200kgをそれぞれ139g/分で24時間かけて同時に添加した。次いで、95℃で1時間熟成した後、室温まで冷却した。このゾルを限外濾過膜を用いて100倍の蒸留水で洗浄し、さらに15重量%に濃縮してシリカ−アルミナ微粒子が分散したゾルを得た。
該ゾルのシリカ−アルミナ微粒子の平均粒子径(Dpc)は0.09μmで、粒子径が0.06〜0.12μmの範囲に占める割合は48.6%であった。
【0030】
このゾルを130〜230℃の温度で噴霧乾燥した後、500℃で2時間焼成して平均粒子径65μmの球状無機酸化物粒子を得た。
この球状無機酸化物粒子1.35gを0.2重量%ポリリン酸水溶液30mlに分散させ、周波数19.5KHzで15分間の超音波処理した後、上記遠心式粒度分布測定法により粒子径分布を測定した。分散した粒子の平均粒子径(Dpm)は5.30μmであり、粒子径が3.71〜6.89μmの範囲に占める割合は25.4%であった。従って、Dpm/Dpcの値は58.9となり、該無機酸化物粒子(母粒子)は、それを構成する微粒子(子粒子)への分散性が悪いことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で調製した無機酸化物微粒子(子粒子)の粒子径分布図である。
【図2】実施例1で調製した無機酸化物粒子(母粒子)を水に分散させて得られた分散粒子の粒子径分布図である。
【図3】実施例1で得られた無機酸化物粒子の電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例1で得られた無機酸化物粒子の電子顕微鏡写真である。

Claims (2)

  1. 平均粒子径が0.1〜1.0μmの範囲にあり、粒子径分布が平均粒子径±30%の粒子径の範囲に占める割合が50%以上であるシリカ−アルミナ系微粒子(子粒子)が凝集してなる平均粒子径が10〜200μmの範囲にあるシリカ−アルミナ系粒子(母粒子)であって、下記式〔1〕を満足することを特徴とするシリカ−アルミナ系粒子。(但し、式中、Dpcはシリカ−アルミナ系微粒子(子粒子)の平均粒子径(μm)を表し、Dpmは、シリカ−アルミナ系粒子(母粒子)を0.2重量%ポリリン酸水溶液に45mg/mlの濃度となるように分散させ、周波数19.5 kHzで15分間十分に超音波処理した後の分散粒子の平均粒子径(μm)を表す。)
    1.0 ≦ Dpm/Dpc ≦ 2.0・・・〔1〕
  2. 前記シリカ−アルミナ系微粒子(子粒子)がシリカ−アルミナ微粒子である請求項1記載のシリカ−アルミナ系粒子。
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