JP2007277057A - 結晶性酸化チタン膜被覆紛体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の白色顔料である酸化チタン粒子よりも密度が低く、かつ従来の酸化チタン膜被覆粒子よりも白色度及び隠蔽度が高い酸化チタン膜被覆粉体、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】有機樹脂微粒子からなる母粒子と、該母粒子表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナタ−ゼ型の結晶構造を持つ酸化チタン被覆膜とを有する結晶性酸化チタン膜被覆粉体、及びその製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、結晶性酸化チタン膜被覆紛体及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、従来のものよりも密度が低く、高い白色度及び隠蔽性を有し、各種用途に好適な結晶性酸化チタン膜被覆紛体、及びその効率的な製造方法に関するものである。
一般に酸化チタンは優れた光散乱効果により、白色度、隠蔽度を付与することができ、白色顔料及び、隠蔽材料として使用されている。また、紫外線吸収性にも優れ、紫外線吸収材としても使用されている。その使用方法としては、酸化チタン粒子そのものを用いる方法や、母粒子表面に酸化チタン膜を被覆する方法(特許文献1及び2参照)等が知られている。
特許文献1では母粒子に酸化亜鉛粒子が用いられ、特許文献2では母粒子に球状シリカ等が用いられ、母粒子表面の酸化チタン膜により隠蔽性や紫外線吸収性を持たせている。このような酸化チタン膜被覆粒子は、無機化合物を母粒子として用いているため密度が大きく、インク、トナー、化粧用液等に添加した場合、沈降するという問題がある。
そこで有機樹脂母粒子を酸化チタン膜で被覆し、密度を小さくする方法(特許文献3参照)が提案されている。一般にゾルゲル法で作製された酸化チタンゾルは酸や有機物質を含むため400℃以上で焼成除去する必要があるが、特許文献3では母粒子に有機樹脂粒子を使用しているため焼成ができず、結晶性の酸化チタン被覆膜を形成することが困難である。そのため、白色度、隠蔽度が共に低いという問題があった。
一方、光触媒用のチタン酸化物形成用溶液として、アナターゼ型酸化チタンゾルを用いる方法(特許文献4参照)が知られている。特許文献4によれば、アナターゼ型酸化チタンゾルを塗布することにより、光触媒効果のある塗膜を形成することができ、各種材料への保護被膜、光触媒膜、紫外線カット被膜等の製造等に利用できるとされている。
特開2000−297023号公報 特開2003−12324号公報 特開2005−97339号公報 特開2001−48538号公報
本発明は、このような状況下で、従来の白色顔料である酸化チタン粒子よりも密度が低く、かつ従来の酸化チタン膜被覆粒子よりも白色度及び隠蔽度が高い酸化チタン膜被覆粉体及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、ルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜を含む特定の構成の被覆層を形成してなる被覆紛体が、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記の(1)〜(8)を提供するものである。
(1)有機樹脂微粒子からなる母粒子と、該母粒子表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜とを有することを特徴とする結晶性酸化チタン膜被覆紛体(以下「被覆紛体1」という)。
(2)有機樹脂微粒子からなる母粒子と、該母粒子表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜と、該金属酸化物被覆膜表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜とを有することを特徴とする結晶性酸化チタン膜被覆紛体(以下「被覆紛体2」という)。
(3)有機樹脂微粒子からなる母粒子と、該母粒子表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜と、該酸化チタン被覆膜表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜とを有することを特徴とする結晶性酸化チタン膜被覆紛体(以下「被覆紛体3」という)。
(4)有機樹脂微粒子からなる母粒子と、該母粒子表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜と、該金属酸化物被覆膜表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜と、該酸化チタン被覆膜表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ1〜500nmの金属酸化物被覆膜とを有することを特徴とする結晶性酸化チタン膜被覆紛体(以下「被覆紛体4」という)。
(5)有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜を形成することを特徴とする、結晶性酸化チタン膜被覆紛体の製造方法(以下「製造方法1」という)。
(6)有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜を形成し、次いでその表面に少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜を形成することを特徴とする、結晶性酸化チタン膜被覆紛体の製造方法(以下「製造方法2」という)。
(7)有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜を形成し、次いでその表面に少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜を形成することを特徴とする、結晶性酸化チタン膜被覆紛体の製造方法(以下「製造方法3」という)。
(8)有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜を形成し、次いでその表面に少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜を形成したのち、さらにその表面に少なくとも1層からなる厚さ1〜500nmの金属酸化物被覆膜を形成することを特徴とする、結晶性酸化チタン膜被覆紛体の製造方法(以下「製造方法4」という)。
本発明の結晶性酸化チタン膜被覆粉体は、母粒子に無機化合物よりも密度の低い有機樹脂粒子を用い、その母粒子表面に少なくとも1層からなる結晶性酸化チタン膜を、その厚さが0.1〜500nmの範囲になるように被覆し、さらに好ましくは、用いる有機樹脂母粒子の平均粒子径、粒度分布を規定したものである。このように、結晶性酸化チタン膜を被覆することにより、非結晶酸化チタン膜を被覆する場合よりも白色度が高く、かつ密度が高い酸化チタン膜を被覆したにもかかわらず、有機樹脂粒子程度の低い密度を有した白色度、隠蔽性の高い結晶性酸化チタン膜被覆粉体を製造することが可能となった。
また、アナターゼ型の酸化チタンを被覆した場合、光触媒作用により、母粒子表面を傷める場合があり、塗膜を設けた場合、塗膜バインダーを傷め、チョーキングといった現象が起こる。このため、アナターゼ型の酸化チタン膜を被覆する場合、母粒子表面、あるいは粒子最外面を金属酸化物で被覆することによりオーバーコートを作製し、母粒子、塗膜バインダーを傷めることのない、白色度及び隠ぺい性の高い結晶性酸化チタン膜被覆粉体を提供することができる。
本発明の酸化チタン膜被覆紛体には、以下に示すように、被覆紛体1、被覆紛体2、被覆紛体3及び被覆紛体4の4つの態様があり、またこれらの被覆紛体1〜4の製造方法として、それぞれに対応する被覆紛体の製造方法1、製造方法2、製造方法3及び製造方法4の4つの態様がある。
まず、本発明において、母粒子を構成する有機樹脂微粒子について説明する。
[有機樹脂微粒子]
本発明において、母粒子として用いられる有機樹脂微粒子としては、例えばポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリイソブチレン、ポリアミド、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン等からなる合成樹脂粒子が挙げられる。これらの粒子は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの有機樹脂微粒子の平均粒子径は、特に制限されるものではなく、被覆紛体に応じて異なるが、一般に0.02〜100μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜40μmの範囲にあることがより好ましい。
ここで平均粒子径とは、粒度分布測定装置[例えば、日機装株式会社製、粒度分布測定装置「マイクロトラックX−100」]にて体積粒度分布を測定した際の、累積体積50%通過径(D50)を用いた値である。
これらの有機樹脂微粒子の形状については特に制限はなく、球状、中空状、扁平状、表面凹凸状等、さらには亜球状、多面体、回転楕円体、板状体、針状体、あるいは粉砕物のような全くの不定形粒子も使用可能である。
これらの有機樹脂微粒子は、その粒度分布の幅の狭いことが好ましいが、粒度分布の幅がある程度の広がりをもっているものでも差し支えない。この粒度分布の幅を示す指標として、下記の標準偏差値(sd値)が30以下であるものが好ましい。
このsd値は、粒度分布測定装置[例えば、日機装株式会社製、粒度分布測定装置「マイクロトラックX−100」]にて体積径分布を測定し、累積体積の84%通過径(D84)と、16%通過径(D16)とから、下記式(1)により求めることができる。
sd値=(D84−D16)/2 式(1)
式(1)により求められるsd値が小さいほど粒度分布の幅が狭く、求めた値が大きいほど粒度分布の幅が広いことを示す。
このsd値は30以下が好ましく、その下限については特に制限されない。sd値が30を超えるものであっても結晶性酸化チタン膜被覆には特に影響を与えるものではないが、結晶性酸化チタン膜被覆後の分散性を保持することが難しくなり、細粒母粒子が粗粒母粒子と凝集粒子を形成する確立が高くなる。
次に、本発明の被覆紛体1、及びその製造方法1について説明する。
[被覆紛体1、及びその製造方法1]
本発明の被覆紛体1は、前記の有機樹脂微粒子からなる母粒子と、該母粒子表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜(以下「結晶性酸化チタン被覆膜」ということがある)とを有することを特徴とする。
また、本発明の被覆紛体の製造方法1によれば、前記の有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶性酸化チタン被覆膜を形成することにより、被覆紛体1を製造することができる。
<結晶性酸化チタン被覆膜>
酸化チタンの結晶性に関しては、非結晶のものよりも結晶性の酸化チタンの方が隠ぺい性、白色度ともに優れており、被覆膜に関しても同様のことが言える。また、結晶性酸化チタンの中では、アナターゼ型よりもルチル型の方が隠ぺい性、白色度ともに優れている。アナターゼ型の場合は、光触媒作用があるため、後述するように、母粒子と結晶性酸化チタン被覆膜との間に保護層として、金属酸化物被覆膜を入れることが好ましく、また、粒子最外層にも、光触媒作用を抑えるため、保護層として、金属酸化物被覆膜を入れることが好ましい。
少なくとも1層からなる結晶性酸化チタン被覆膜の厚さは0.1〜500nmであるが、好ましくは0.5〜100nm、より好ましくは1〜50nmである。
この結晶性酸化チタン被覆膜の厚さが0.1nm未満である場合には、酸化チタンが持つ隠蔽性効果が乏しく、酸化チタン膜を被覆しないものと比較して、隠ぺい性は高くなっていない。また、酸化チタン膜の厚さが500nmを超えると隠ぺい性や紫外線吸収能は十分に発揮されるが、酸化チタン膜の占める割合が高くなるために、密度の低い結晶性酸化チタン膜被覆粉体を得ることが困難になる。
前記の結晶性酸化チタン被覆膜は、ルチル型及び/又はアナターゼ型結晶構造をもつ酸化チタンゾルと、非結晶性チタン酸化物ゾルとを、固形分質量比で100:0〜80:20の割合で組み合わせたゾルを用い、噴霧乾燥により形成させることができる。すなわち結晶性酸化チタン被覆膜形成材料として、ルチル型及び/又はアナターゼ型結晶構造をもつ酸化チタンゾルのみを用いてもよいし、全ゾル中に、固形分換算で20質量%以下の割合で含む非結晶性チタン酸化物ゾルと、ルチル型及び/又はアナターゼ型結晶構造をもつ酸化チタンゾルとの混合物を用いてもよい。結晶性酸化チタン被覆膜の具体的な形成方法については、後で説明する。
前記のルチル型及び/又はアナターゼ型結晶構造をもつ酸化チタンゾル、及び非結晶性チタン酸化物ゾルの平均粒子径としては、それぞれ0.1〜100nmが好ましく、0.1〜50nmがより好ましい。
次に、本発明の被覆紛体2、及びその製造方法2について説明する。
[被覆紛体2、及びその製造方法2]
本発明の被覆紛体2は、前記の有機樹脂微粒子からなる母粒子と、該母粒子表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜と、該金属酸化物被覆膜表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶性酸化チタン被覆膜とを有することを特徴とする。
また、本発明の被覆紛体の製造方法2によれば、前記の有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜を形成し、次いでその表面に少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶性酸化チタン被覆膜を形成することにより、被覆紛体2を製造することができる。
本発明において、母粒子表面と結晶性酸化チタン被覆膜との間に介在する金属酸化物被覆膜は、前記結晶性酸化チタン被覆膜がアナターゼ型である場合は、その光触媒作用から、有機樹脂微粒子からなる母粒子を保護するための保護層として機能することができる。
この少なくとも1層からなる金属酸化物被覆膜は、通常非結晶性チタン酸化物被覆膜やシリカ被覆膜が用いられ、その厚さは0.1〜500nmの範囲であるが、好ましくは1〜100nmの範囲である。この金属酸化物被覆膜の厚さが0.1nm未満では、光触媒作用から保護する効果が十分に発揮されず、また500nmを超えると、密度の低い結晶性酸化チタン膜被覆粉体を得ることが困難になる。
前記の結晶性酸化チタン被覆膜の形成については、前述の[被覆紛体1及びその製造方法1]において説明したとおりである。具体的な形成方法については、後で説明する。
一方、金属酸化物被覆膜の形成方法については、金属酸化物被覆膜を形成し得る方法であれば特に制限はない。例えば(a)非結晶性チタン酸化物ゾルを用い、噴霧乾燥により形成させる方法、(b)金属アルコキシドの加水分解・縮合反応により形成させる方法、(c)カップリング剤を用いて形成させる方法、(d)無機チタン酸を加水分解させて、形成させる方法、(e)ペルオキソチタンを反応させて、形成させる方法等が挙げられる。これらの方法の中では、前記(a)、(b)及び(c)の方法が、操作性及び形成される金属酸化物被覆膜の性能等の観点から好ましい。
前記(a)の方法においては、平均粒子径が、好ましくは0.1〜100nm、より好ましくは0.1〜50nmの非結晶性チタン酸化物ゾルを用い、噴霧乾燥により、有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に非結晶性チタン酸化物被覆膜を形成させる。
次に、前記(a)の方法における、非結晶性チタン酸化物ゾルを用い、噴霧乾燥により、母粒子表面に非結晶性チタン酸化物被覆膜を形成させる方法、及び母粒子表面に形成された非結晶性チタン酸化物被覆膜上に、ルチル型及び/又はアナタ−ゼ型の結晶性酸化チタン被覆膜を形成させる方法について説明する。
<(a)噴霧乾燥による被覆膜の形成方法>
まず、非結晶性チタン酸化物ゾル中に、母粒子を懸濁、あるいは結晶性酸化チタンゾル中に、表面に非結晶性チタン酸化物被覆膜を有する母粒子(以下「加工母粒子」という)を懸濁させ、例えば超音波攪拌等で攪拌して、懸濁液を調製する。次いで、スプレードライヤー処理装置を用い、前記懸濁液を70〜150℃程度の高温気流中に噴霧して微粒液とし、乾燥させて、母粒子表面に非結晶性チタン酸化物膜を被覆させることにより、あるいは加工母粒子表面に結晶性酸化チタン膜を被覆させることにより、所望の被覆膜を形成させる。
このような噴霧乾燥においては、使用するゾルとしては、操作性の観点から、25℃における粘度が500mPa・s以下であるものが好ましく、1〜30mPa・sの範囲にあるものがより好ましい。また、ゾルの比重は、通常0.9〜3程度である。
さらに、噴霧乾燥における噴霧ノズルとしては、径が、通常0.1〜5mm程度のもの、好ましくは0.3〜1mmのものが用いられる。
次に、前記(b)の方法における、金属アルコキシドの加水分解・縮合反応により、母粒子表面に金属酸化物被覆膜を形成させる方法について説明する。
<(b)金属アルコキシドの加水分解による被覆膜の形成方法>
原料の金属アルコキシドとしては、チタンアルコキシドやシランアルコキシド等を用いることができる。チタンアルコキシドとしては、アルコキシ基の炭素数が1〜5のテトラアルコキシチタン、例えばテトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトライソブトキシチタン等が挙げられる。また、シランアルコキシドとしては、アルコキシ基の炭素数が1〜5のテトラアルコキシシラン、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシラン等が挙げられる。
これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの金属アルコキシドを用いて、有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、金属酸化物被覆膜を形成させるには、例えば以下に示す方法により行うことができる。
まず、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコールを主成分とする水性媒体中に母粒子を投入し、例えば700〜900rpmで攪拌して懸濁液を調製する。次いで、この懸濁液に、前記のチタンアルコキシドやシランアルコキシド等の金属アルコキシドを所定量加え、さらにアンモニア水等のアルカリ水(pH8.5〜10程度)を、適当な速度で加えたのち、20〜60℃程度の温度で加水分解・縮合反応を行う。反応時間は、温度等に左右され一概に決定できないが、通常0.2〜8時間、好ましくは0.5〜4時間である。
アルカリ水の添加速度は、速すぎると急激な加水分解により、チタン酸化物の遊離微粒子が析出して被覆膜が形成できない場合があり、遅すぎる反応効率が低下する。このため、アルカリ水は、好ましくは0.2〜5ml/分、より好ましくは0.5〜2ml/分の速度で滴下することが望ましい。
反応終了後、表面に金属酸化物被覆膜が形成された母粒子を十分に洗浄したのち、母粒子の融点未満の温度で乾燥処理する。
この反応において、金属アルコキシドとしてチタンアルコキシドを用いる場合には、母粒子表面に非結晶性チタン酸化物被覆膜が形成される。一方、金属アルコキシドとしてシランアルコキシドを用いる場合には、母粒子表面にシリカ被覆膜が形成される。
<前記(c)〜(e)による被覆膜の形成方法>
前記(c)の方法における、カップリング剤を用いて、母粒子表面に金属酸化物被覆膜を形成させる方法としては、例えば、適当な溶媒でカップリング剤(シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等)を希釈し、これに母粒子を懸濁させて懸濁液を調製した後、この懸濁液を加熱処理し、溶媒を除去する方法が挙げられる。
前記(d)の方法における、無機チタン酸を加水分解させて、母粒子表面に金属酸化物非結晶性チタン酸化物被覆膜を形成させる方法としては、例えば、水系媒体中に母粒子を懸濁させてなる懸濁液中に、無機チタン酸溶液(硫酸チタニル溶液、四塩化チタン溶液、三塩化チタン溶液等)を加え、40〜60℃程度の温度で加水分解を行い、反応終了後、表面に被覆膜を有する母粒子を十分に洗浄後、母粒子の融点未満の温度で乾燥処理する方法が挙げられる。
前記の(e)の方法における、ペルオキソチタンを反応させて、母粒子表面に金属酸化物(非結晶性チタン酸化物)被覆膜を形成させる方法としては、例えば、pH9〜10程度の水系緩衝液中に母粒子を懸濁させてなる懸濁液中に、ペルオキソチタン溶液を加えた後、40〜60℃程度の温度で反応を行い、反応終了後、表面に被覆膜を有する母粒子を十分に洗浄後、母粒子の融点未満の温度で乾燥処理する方法が挙げられる。
なお、前記ペルオキソチタン溶液は、チタンアルコキシド溶液、四塩化チタン溶液、三塩化チタン溶液等をアルカリ性にした後、これに過酸化水素水等の過酸化物を加えることにより調製することができる
次に、本発明の被覆粉体3、及びその製造方法3について説明する。
[被覆粉体3、及びその製造方法3]
本発明の被覆粉体3は、前記の有機樹脂微粒子からなる母粒子と、該母粒子表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナタ−ゼ型の結晶性酸化チタン被覆膜と、該酸化チタン被覆膜表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜とを有することを特徴とする。
また、本発明の被覆粉体の製造方法3によれば、前記の有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナタ−ゼ型の結晶性酸化チタン被覆膜を形成し、次いでその表面に少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被服膜を形成することにより、被覆粉体3を製造することができる。
本発明において、結晶性酸化チタン被覆膜上に形成する金属酸化物被服膜は、その上に塗膜が設けられる場合、その塗膜を前記結晶性酸化チタン被覆膜(アナタ−ゼ型)の光触媒作用から保護するための保護層として機能させることができる。
結晶性酸化チタン被覆膜及び金属酸化物被覆膜の形成方法については、前述の[被覆粉体2、及びその製造方法2]において、説明したとおりである。
次に、本発明の被覆粉体4、及びその製造方法4について説明する。
[被覆粉体4、及びその製造方法4]
本発明の被覆粉体4は、前記の有機樹脂微粒子からなる母粒子と、該母粒子表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜と、該金属酸化物被覆膜表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナタ−ゼ型の結晶性酸化チタン被覆膜と、該酸化チタン被覆膜表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ1〜500nmの金属酸化物被覆膜とを有することを特徴とする。
また、本発明の被覆粉体の製造方法4によれば、前記の有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜を形成し、次いでその表面に少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナタ−ゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜を形成したのち、さらにその表面に少なくとも1層からなる厚さ1〜500nmの金属酸化物被覆膜を形成することにより、被覆粉体4を製造することができる。
この被覆粉体4における金属酸化物被覆膜の機能については、前述の[被覆粉体2、及びその製造方法2]及び[被覆粉体3、及びその製造方法3]において説明したとおりである。また、結晶性酸化チタン被覆膜及び金属酸化物被覆膜の形成方法については、前述の[被覆粉体2、及びその製造方法2]において、説明したとおりである。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1(噴霧乾燥による結晶性酸化チタン膜被覆)
架橋アクリル樹脂単分散粒子[綜研化学株式会社製「MX−80H3wT」、球状、平均粒子径0.8μm]からなる母粒子3gを、非結晶性チタン酸化物ゾル「SLEC−PTA」[有限会社オフィスタカハシ製、固形分濃度0.85質量%]と、結晶性酸化チタンゾル「SLEC−PA」[有限会社オフィスタカハシ製、固形分濃度0.85質量%]との質量比1:9の混合ゾル液100gに懸濁し、10分間超音波分散処理し、懸濁液を調製した。
次いで、噴霧乾燥機[「SPRAY DRYER SD−1000」東京理科器機株式会社製]を用い、高温気流中に上記懸濁液を噴霧して微粒液とし乾燥させ、母粒子表面に結晶性酸化チタン膜を被覆した。噴霧条件は、入り口温度125℃、出口温度70℃、熱風量1.1m3/min、噴霧圧力10×10kPaであった。
実施例2(噴霧乾燥による結晶性酸化チタン膜被覆)
(1)前記架橋アクリル樹脂単分散粒子「MX−80H3wT」からなる母粒子10gを、前記結晶性チタン酸化物ゾル「SLEC−PA」300gに懸濁し、10分間超音波分散し、懸濁液を調製した
(2)前記噴霧乾燥機を用い、高温気流中に上記懸濁液を噴霧して微粒液とし乾燥させ、母粒子表面に結晶性酸化チタン膜を被覆した。噴霧条件は、入り口温度125℃、出口温度70℃、熱風量1.1m3/min、噴霧圧力10×10kPaであった。
次に、上記で得られた粒子に、前記(1)及び(2)の繰り返し処理を施し、2層の結晶性酸化チタン被覆膜を有する粒子を得た。
実施例3(噴霧乾燥による結晶性酸化チタン膜被覆)
(1)前記架橋アクリル樹脂単分散粒子「MX−80H3wT」からなる母粒子3gを、前記非結晶性チタン酸化物ゾル「SLEC−PTA」10質量%、前記結晶性チタン酸化物ゾル「SLEC−PA」87質量%、及び中性チタニアゾル「TSK−5」[石原産業株式会社製、固形分濃度30質量%]3質量%の割合で含む混合液100gに懸濁し、10分間超音波分散し、懸濁液を調製した。
次いで、前記噴霧乾燥機を用い、高温気流中に上記懸濁液を噴霧して微粒液とし乾燥させ、母粒子表面に結晶性酸化チタン膜を被覆した。噴霧条件は、入り口温度125℃、出口温度70℃、熱風量1.1m3/min、噴霧圧力10×10kPaであった。
実施例4(噴霧乾燥による結晶性酸化チタン膜被覆)
(1)母粒子表面第1層の金属酸化物被覆
前記架橋アクリル樹脂単分散粒子「MX−80H3wT」からなる母粒子5gを、前記非結晶性チタン酸化物ゾル「SLEC−PTA」の10倍希釈液100gに懸濁し、10分間超音波分散し、懸濁液を調製した。
前記噴霧乾燥機を用い、高温気流中に上記懸濁液を噴霧して微粒液とし乾燥させ、母粒子表面にアモルファス酸化チタン膜を被覆した。噴霧条件は、入り口温度125℃、出口温度70℃、熱風量1.1m3/min、噴霧圧力10×10kPaであった。
(2)上記被覆膜上への結晶性酸化チタン膜被覆
上記加工母粒子3gを前記結晶性チタン酸化物ゾル「SLEC−PA」100gに懸濁し、10分間超音波分散し、懸濁液を調製した。
次いで、前記噴霧乾燥機を用い、高温気流中に上記懸濁液を噴霧して微粒液とし乾燥させ、上記(1)の加工母粒子表面に結晶性酸化チタン膜を被覆した。噴霧条件は、入り口温度125℃、出口温度70℃、熱風量1.1m3/min、噴霧圧力10×10kPaであった。
(3)上記被覆膜上へのアモルファス酸化チタンの被覆(オーバーコートの作製)
上記(2)で得られた加工母粒子2gを前記非結晶性チタン酸化物ゾル「SLEC−PTA」の10倍稀釈液100gに懸濁し、10分間超音波分散し、懸濁液を調製した。
次いで、前記噴霧乾燥機を用い、高温気流中に上記懸濁液を噴霧して微粒液とし乾燥させ、加工母粒子表面にアモルファス酸化チタン膜を被覆し、オーバーコートを作製した。噴霧条件は、入り口温度125℃、出口温度70℃、熱風量1.1m3/min、噴霧圧力10×10kPaであった。
実施例5(ゾルゲル法と噴霧乾燥の併用による被覆)
(1)母粒子表面第1層の金属酸化膜被覆
(金属アルコキシドを用いた金属酸化物膜被覆方法)
前記架橋アクリル樹脂単分散粒子「MX−80H3wT」からなる母粒子5gをエタノール(試薬一級)400ml中に懸濁し、これを400〜600rpmにて攪拌し、この中に所定量のチタンアルコキシド溶液を添加した。
添加したチタンアルコキシド溶液と同質量のアルカリ水(アンモニア水(試薬一級)でpH9に調整したイオン交換水)をエタノール60mlに良く混合したものを、約1ml/分の滴下速度で母粒子懸濁エタノール液中に滴下した。滴下終了後、60分間攪拌を続け、添加したチタンアルコキシド溶液を十分に反応させた。
反応終了後、エタノール100mlでの置換洗浄を行い、洗浄後、母粒子の融点未満の温度(50℃)で乾燥させ、母粒子表面に第1層の金属酸化膜を被覆した。
(2)上記被覆膜上への結晶性酸化チタン膜被覆
上記(1)で得られた加工母粒子3gを前記結晶性チタン酸化物ゾル「SLEC−PA」100gに懸濁し、10分間超音波分散し、懸濁液を調製した。次いで、前記噴霧乾燥機を用い、高温気流中に上記懸濁液を噴霧して微粒液とし乾燥させ、加工母粒子表面に結晶性酸化チタン膜を被覆した。噴霧条件は、入り口温度125℃、出口温度70℃、熱風量1.1m3/min、噴霧圧力10×10kPaであった。
(3)上記被覆膜上へのアモルファス酸化チタンの被覆(オーバーコートの作製)
上記(2)で得た加工母粒子2gを前記非結晶性チタン酸化物ゾル「SLEC−PTA」の10倍稀釈液100gに懸濁し、10分間超音波分散し、懸濁液を調製した。次いで、前記噴霧乾燥機を用い、高温気流中に上記懸濁液を噴霧して微粒液とし乾燥させ、母粒子表面にアモルファス酸化チタン膜を被覆し、オーバーコートを作製した。噴霧条件は、入り口温度125℃、出口温度70℃、熱風量1.1m3/min、噴霧圧力10×10kPaであった。
実施例6(ゾルゲル法と噴霧乾燥の併用による被覆)
(1)母粒子表面第1層の金属酸化膜被覆
(金属アルコキシドを用いた金属酸化物膜被覆方法)
前記架橋アクリル樹脂単分散粒子「MX−80H3wT」からなる母粒子5gを、エタノール(試薬一級)400ml中に懸濁し、これを400〜600rpmにて攪拌し、この中に所定量のテトラエトキシシラン[和光純薬工業株式会社製]を添加した。
添加したテトラエトキシシランと同質量のアルカリ水(アンモニア水(試薬一級)でpH9に調整したイオン交換水)をエタノール60mlによく混合したものを、約1ml/分の滴下速度で母粒子懸濁エタノール溶液中に滴下した。
滴下終了後、60分間攪拌を続け、添加したエトキシシランを十分に反応させた。反応終了後、エタノール100mlでの置換洗浄を行い、洗浄後、母粒子の融点未満の温度(50℃)で乾燥させ、母粒子表面に金属酸化物膜を被覆した。
(2)上記被覆膜上への結晶性酸化チタン膜被覆
上記(1)で得た加工母粒子3gを前記結晶性チタン酸化物ゾル「SLEC−PA」100gに懸濁し、10分間超音波分散し、懸濁液を調製した。次いで、前記噴霧乾燥機を用い、高温気流中に上記懸濁液を噴霧して微粒液とし乾燥させ、加工母粒子表面に結晶性酸化チタン膜を被覆した。噴霧条件は、入り口温度125℃、出口温度70℃、熱風量1.1m3/min、噴霧圧力10×10kPaであった。
(3)上記被覆膜上へのアモルファス酸化チタンの被覆(オーバーコートの作製)
上記(2)で得た加工母粒子2gを前記非結晶性チタン酸化物ゾル「SLEC−PTA」の10倍稀釈液100gに懸濁し、10分間超音波分散した。次いで、前記噴霧乾燥機を用い、高温気流中に上記懸濁液を噴霧して微粒液とし乾燥させ、加工母粒子表面にアモルファス酸化チタン膜を被覆し、オーバーコートを作製した。噴霧条件は、入り口温度125℃、出口温度70℃、熱風量1.1m3/min、噴霧圧力10×10kPaであった。
実施例7(中空粒子への噴霧乾燥による結晶性酸化チタン膜被覆)
架橋スチレン−アクリル共重合体粉体[JSR株式会社製「SX866(A)」]からなる母粒子10gを、前記結晶性チタン酸化物ゾル「SLEC−PA」300gに懸濁し、10分間超音波分散し、懸濁液を調製した。次いで、前記噴霧乾燥機を用い、高温気流中に上記懸濁液を噴霧して微粒液とし乾燥させ、母粒子表面に結晶性酸化チタン膜を被覆した。噴霧条件は、入り口温度125℃、出口温度70℃、熱風量1.1m3/min、噴霧圧力10×10kPaであった。
比較例1(ゾルゲル法による母粒子被覆)
前記架橋アクリル樹脂単分散粒子「MX−80H3wT」からなる母粒子5gをエタノール(試薬一級)400ml中に懸濁し、これを700〜900rpmにて攪拌し、この中に所定量のチタンアルコキシド溶液を添加した。
添加したチタンアルコキシド溶液と同質量のアルカリ水(アンモニア水(試薬一級)でpH9に調整したイオン交換水)をエタノール60mlによく混合したものを、約1ml/分の滴下速度で母粒子懸濁エタノール液中に滴下した。滴下終了後、60分間攪拌を続け、添加したチタンアルコキシド溶液を十分に反応させた。
反応終了後、エタノール100mlでの置換洗浄を行い、洗浄後、母粒子の融点未満の温度(50℃)で乾燥させ、母粒子表面に金属酸化膜を被覆した。
比較例2(噴霧乾燥によるアモルファス酸化チタン膜被覆)
前記架橋アクリル樹脂単分散粒子「MX−80H3wT」からなる母粒子5gを前記非結晶性チタン酸化物ゾル「SLEC−PTA」の10倍稀釈液100gに懸濁し、10分間超音波分散し、懸濁液を調製した。
前記噴霧乾燥機を用い、高温気流中に上記懸濁液を噴霧して微粒液とし乾燥させ、母粒子表面にアモルファス酸化チタン膜を被覆した。噴霧条件は、入り口温度125℃、出口温度70℃、熱風量1.1m3/min、噴霧圧力10×10kPaであった。
前記実施例1〜7及び比較例1、2で得られた被覆粉体について、下記の方法により諸特性を評価した。結果を表1に示す。
(1)元素分析
元素分析計EDX[堀場産業株式会社製「EX−200」]を用いて元素分析を行った。各粒子表面にTiが検出され、実施例1〜7及び比較例1、2のいずれも、Tiを含む膜が粒子表面にコートされていることが分かった。
(2)反射スペクトル
分光光度計[株式会社日立製作所製、分光光度計「UV3300形分光光度計」、150φ積分球]を用いて反射スペクトルを測定した。これらの結果を代表して、実施例1、比較例1及び母粒子の反射スペクトルを図1に示す。比較例1では、酸化チタン特有のピークは見られるものの、結晶由来のピークではなく、アモルファスであると推察される。実施例1では、アナタ−ゼ結晶由来のピークがみられた。
(3)X線回折
X線回折装置[株式会社島津製作所製「XRD−6000」]により、各粉体表面の酸化チタンの結晶構造を解析した。実施例1〜6ではいずれも結晶構造を持つことが分かった。比較例1、2では回折ピークを測定することができず、アモルファスであることが分かった。
図2に実施例1のX線回折データを示した。
(4)比重、膜厚
膜厚は比重から換算したTiO2の換算膜厚を示す。
(5)隠蔽率
JIS K−4−1(素地)、方法B(隠蔽率試験紙)に準拠し、自動アプリケーター[Yasuda seiki製、「No.542−AB」、Automatic Film Applicator]で50μmに塗布し、多光源分光測色計[スガ試験機株式会社製]により測定した数値から隠蔽率を計算した。インキ組成は、エタノール[和光純薬工業株式会社製1級]86質量%、ケトン樹脂「K−90」[荒川化学株式会社製]10質量%、ポリビニルアセタール「エスレックB BL−1」[積水化学工業株式会社製]4質量%、インキ中の粉体含有量10質量%であった。
Figure 2007277057
表1から、実施例1〜6及び比較例1、2の粉体は、母粒子に比べ比重が重くなっており、また元素分析結果から、表面に酸化チタンがコーティングされていることが分かった。また、下地を隠蔽させるためには、酸化チタンがコーティングされているだけでは不十分で、酸化チタンが結晶構造を取ることが必要であることが分かる。さらに、繰り返しコートし、酸化チタンの膜厚を大きくすれば、隠蔽率は高くなることが分かる。
本発明の結晶性酸化チタン被覆粉体は、従来のものよりも密度が低く、かつ結晶性の酸化チタン膜で被覆されているため、高い白色度、隠蔽性を有し、例えば顔料、インク、塗料、プラスチック・紙用フィラー、化粧品用顔料、インクジェットプリンター用インク、自動車用粉体顔料・塗料等、多くの用途に好適に用いられる。
実施例1で得られた被覆粉体、比較例1で得られた被覆粉体及び母粒子の反射スペクトル図である。 実施例1で得られた被覆粉体のX線回折チャートである。

Claims (20)

  1. 有機樹脂微粒子からなる母粒子と、該母粒子表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜とを有することを特徴とする結晶性酸化チタン膜被覆紛体。
  2. 有機樹脂微粒子からなる母粒子と、該母粒子表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜と、該金属酸化物被覆膜表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜とを有することを特徴とする結晶性酸化チタン膜被覆紛体。
  3. 有機樹脂微粒子からなる母粒子と、該母粒子表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜と、該酸化チタン被覆膜表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜とを有することを特徴とする結晶性酸化チタン膜被覆紛体。
  4. 有機樹脂微粒子からなる母粒子と、該母粒子表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜と、該金属酸化物被覆膜表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜と、該酸化チタン被覆膜表面に設けられた少なくとも1層からなる厚さ1〜500nmの金属酸化物被覆膜とを有することを特徴とする結晶性酸化チタン膜被覆紛体。
  5. 有機樹脂微粒子が、球状、中空状、扁平状又は表面凹凸状の形状を有する請求項1〜4のいずれかに記載の結晶性酸化チタン膜被覆紛体。
  6. 有機樹脂微粒子が、平均粒子径0.02〜100μmを有する請求項1〜5のいずれかに記載の結晶性酸化チタン膜被覆紛体。
  7. 金属酸化物被覆膜が、非結晶性チタン酸化物被覆膜である請求項2〜6のいずれかに記載の結晶性酸化チタン膜被覆紛体。
  8. 有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜を形成することを特徴とする、結晶性酸化チタン膜被覆紛体の製造方法。
  9. 有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜を形成し、次いでその表面に少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜を形成することを特徴とする、結晶性酸化チタン膜被覆紛体の製造方法。
  10. 有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜を形成し、次いでその表面に少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜を形成することを特徴とする、結晶性酸化チタン膜被覆紛体の製造方法。
  11. 有機樹脂微粒子からなる母粒子表面に、少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmの金属酸化物被覆膜を形成し、次いでその表面に少なくとも1層からなる厚さ0.1〜500nmのルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜を形成したのち、さらにその表面に少なくとも1層からなる厚さ1〜500nmの金属酸化物被覆膜を形成することを特徴とする、結晶性酸化チタン膜被覆紛体の製造方法。
  12. 有機樹脂微粒子が、球状、中空状、扁平状又は表面凹凸状の形状を有する、請求項8〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 有機樹脂微粒子が、平均粒子径0.02〜100μmを有する、請求項8〜12のいずれかに記載の製造方法。
  14. 金属酸化物被覆膜を、金属アルコキシドの加水分解・縮合反応により形成させる、請求項9〜13のいずれかに記載の製造方法。
  15. ルチル型及び/又はアナターゼ型の結晶構造をもつ酸化チタン被覆膜を、ルチル型及び/又はアナターゼ型結晶構造をもつ酸化チタンゾルと、非結晶性チタン酸化物ゾルとを、固形分質量比で100:0〜80:20の割合で組み合わせたゾルを用い、噴霧乾燥により形成させる、請求項8〜14のいずれかに記載の製造方法。
  16. 金属酸化物被覆膜を、非結晶性チタン酸化物ゾルを用い、噴霧乾燥により形成させる、請求項9〜15のいずれかに記載の製造方法。
  17. 平均粒子径0.1〜100nmのゾルを用い、噴霧乾燥する、請求項15又は16に記載の製造方法。
  18. 25℃における粘度が500mPa・s以下のゾルを用いて噴霧乾燥する、請求項15〜17のいずれかに記載の製造方法。
  19. 比重が0.9〜3の範囲にあるゾルを用いて噴霧乾燥する、請求項15〜18のいずれかに記載の製造方法。
  20. 噴霧乾燥において、径0.1〜5mmの噴霧ノズルを用いる、請求項15〜19のいずれかに記載の製造方法。
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