JP3791641B2 - 新規ポリカーボネート重合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なポリカーボネート重合体に関する。本発明のポリカーボネート重合体は、ポリシロキサン構造を構成単位として有する新規なポリカーボネート重合体であり、各種成形材料やポリマーアロイ材料、添加剤として有用のものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、生産されているポリカーボネート樹脂の大部分は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(略称:ビスフェノールA)を原料とするビスフェノールA型ポリカーボネートである。
ビスフェノールA型ポリカーボネートはコスト、耐熱性、機械的強度等のバランスのとれたポリカーボネート樹脂であるが、近年ポリカーボネートの用途拡大にともない、より優れた物性を有するポリカーボネートが望まれており、様々な構造を持つポリカーボネートが開発されている。
しかしながら、市場からはそれらよりもっと物性の優れたものあるいは特異な物性を有するポリカーボネートの要求があり、新しいポリカーボネートの開発が必要とされている。
その一つとして、離型性や流動性を改良した、変性ポリカーボネートであるシロキサン共重合ポリカーボネートが開発されている(特開昭50−29695、特開平3ー079626、特開平5ー155999、特開平7−258398、特開平7−165897)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の変性ポリカーボネートは、従来のポリカーボネートに比べ離型性、撥水性、流動性、耐磨耗性等が改善されるが、市場ではさらに耐摩耗性の向上が要求されており、上記の変性ポリカーボネートでもかならずしも満足するものではなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、繰り返し単位中に特異なグラフト状ポリシロキサン構造を有するポリカーボネート重合体は文献未記載の新規なポリカーボネートであって、各種成形材料やポリマーアロイ原料として有用であることを見い出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明はシロキサン構造を有する下記一般式(A)のポリシロキサン化合物、
【0005】
【化4】
【0006】
(式中のR1は、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜7のアルケニル基、炭素数1〜7のアルコキシ基又は炭素数7〜17のアラルキル基から選ばれた基を表し、Xは、R 1 又はヒドロキシフェニル基を有する有機基(M)を表し、かつMの個数は平均で2〜3を表す。nは平均で2〜1000を表す。)
【0007】
および下記一般式(B)で表されるビスフェノール類
【0008】
【化5】
【0009】
(式中、R 2 〜R 9 は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜7のアルケニル基、炭素数1〜7のアルコキシ基又は炭素数7〜17のアラルキル基である。Yは、
【0010】
【化6】
【0011】
であり、ここにR 10 及びR 11 は、水素、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、炭素数1〜7のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表すか、R 10 及びR 11 が一緒に結合して、炭素環又は複素環を形成する基を表す。eは0〜20の整数を表す。)
【0012】
とを炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるポリカーボネート重合体を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
【0014】
前記一般式(A)で表されるポリシロキサン化合物は、公知のヒドロシリル化反応による製造法、例えば不飽和基を有するフェノールとSi−H基を有するポリシロキサンをヒドロシリル化触媒下で付加反応させる方法にて製造される。
【0015】
ヒドロシリル化に使用される触媒は、均一系、不均一系のいずれでもよく、具体的には、塩化白金酸などに代表される白金錯体、金属白金、オクタカルボニル2コバルト、パラジウム錯体、ロジウム錯体等が挙げられる。
反応は、本発明に使用される不飽和基含有フェノール類が溶解する溶媒中で行われる。具体的には、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、モノクロルベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン化物、メチルエチルケトン、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン等を挙げる事ができるが、溶解性や触媒との相性より、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が望ましい。
反応温度は60〜150℃が好ましい。
【0016】
上記Si-H基含有ポリシロキサンは、ポリアルキルハイドロジェンシロキサン、ポリアリールハイドロジェンシロキサン、ポリアルキルアリールハイドロジェンシロキサン等より誘導することができ、具体的にはポリメチルハイドロジェンシロキサン、ポリエチルハイドロジェンシロキサン、ポリフェニルハイドロジェンシロキサン、ポリメチルフェニルハイドロジェンシロキサン等が挙げられる。これらは2種類以上併用しても良い。
【0017】
また、本発明における一般式(A)のポリシロキサン化合物には、前記の反応にて付加されたフェノール(ヒドロキシフェニル基)がポリシロキサン1分子当たり平均2〜3個付加されている。この付加されたヒドロキシフェニル基が、炭酸エステル形成化合物と反応しカーボネート結合を形成する。ヒドロキシフェニル基がポリシロキサン1分子当たり平均2未満であると、ヒドロキシフェニル基の全く付加されていない非反応性ポリシロキサンが増加する。また平均3を越えると、ポリシロキサンが強力な分岐化剤となり、ゴム状3次元網目構造の溶媒不溶性ポリカーボネート共重合体が生成しやすく、成形性や取扱いが困難となる。更に、nは平均で2〜1000が好ましく、特に3〜100が好適である。nが2未満では十分にポリシロキサンの特性が得られないし、1000を超えると他のフェノール類との反応性が悪くなり好ましくない。
【0018】
上記Si-H基を有するポリシロキサンと反応する不飽和基を有するフェノールとしては、具体的には、o-アリルフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール、p-イソプロペニルフェノール、p-ヒドロキシスチレン、p−アリルフェノール、2,6-ジメチル-4-アリルフェノール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル−2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート、p-ヒドロキシケイ皮酸メチル、2-ヒドロキシスチルベン、4-(1-ブテニル)フェノール等が挙げられる。なかでも、取扱いの容易さ、工業的有用性や反応性からo-アリルフェノール、オイゲノールが好ましい。
【0019】
前記一般式(A)で表されるポリシロキサン化合物は、具体的には、
【0020】
【化7】
【0021】
などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらポリシロキサン化合物を2種類以上併用して使用することも可能である。これらのポリシロキサンに付加しているヒドロキシフェニル基は、あくまで理論上ポリシロキサン1分子当たり平均2〜3個付加しているだけであり、例えば付加が0のものもあれば10個のものも存在する。すなわち、本発明におけるポリシロキサン1分子当たり平均2〜3個ヒドロキシフェニル基が付加するという意味は、そのヒドロキシフェニル基付加数の分布の中心値が2〜3であることを示す。また、ヒドロキシフェニル基の付加位置も特定できるものではなく、一般式(A)の側鎖のいずれにヒドロキシフェニル基が付加しても良い。
【0022】
本発明における一般式(B)で表されるビスフェノール類としては、具体的には4,4'−ビフェニルジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノ−ルA;BPA)、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノ−ルZ;BPZ)、2,2-ビス(4−ヒドロキシ−3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4−ヒドロキシ−3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4−ヒドロキシ−3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4−ヒドロキシ−3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4−ヒドロキシ−3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4−ヒドロキシ−3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4−ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(2−ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4−ヒドロキシ−3,5-ジメチルフェニル)プロパンなどが例示される。これらは、2種類以上併用して用いてもよい。また、これらの中でも特に2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4−ヒドロキシ−3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4−ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルから選ばれることが、反応性から好ましい。
【0023】
一方、炭酸エステル形成性化合物としては、例えばホスゲンや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネートなどのジアリールカーボネートが挙げられる。
【0024】
本発明の重合体の製法としては、ビスフェノールAからポリカーボネートを製造する際に用いられている公知の方法、例えばビスフェノール類とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、あるいはビスフェノール類とジアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)などの方法を採用することができる。
【0025】
ホスゲン法とエステル交換法では、一般式(A)のポリシロキサン化合物の耐熱性やエステル交換率を考慮した場合、ホスゲン法の方が好ましい。
またホスゲン法においては、一般式(A)のポリシロキサン化合物の使用量はポリシロキサンの反応性の観点から、全モノマー成分(一般式(A)+一般式(B))に対し0.01〜20mol%が好ましい。ポリシロキサン化合物(A)が0.01mol%未満ではポリシロキサンの特性付与が不十分であり、20mol%を超えると本発明の共重合体の粘度が低くなり、ポリカーボネート樹脂としての目的が達成できなくなるので好ましくない。さらにホスゲン法の界面重合状態を維持しやすくするため、一般式(A)のポリシロキサン化合物は、全モノマー成分に対し50wt%以下使用することが好ましい。
【0026】
前者のホスゲン法においては、通常、酸結合剤および溶媒の存在下において、前記一般式(A)のポリシロキサン化合物と一般式(B)で表されるビスフェノール類とをホスゲンと反応させる。酸結合剤としては、例えばピリジンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが用いられる。また、溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、キシレンなどが用いられる。
縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を使用することが好ましい。また、重合度を調節するために、フェノールやp−t−ブチルフェノールなどの分子量調節剤を添加して反応を行うことが望ましい。更にまた、所望に応じ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトなどの酸化防止剤や、フロログルシン、イサチンビスフェノールなど分岐化剤を小量添加してもよい。
反応は、通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲とするのが適当である。
反応時間は、反応温度によって左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。
また、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
【0027】
一方、後者のエステル交換法においては、前記一般式(A)のポリシロキサン化合物と一般式(B)で表されるビスフェノール類とジアリールカーボネートとを混合し、減圧下で高温において反応させる。反応は、通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度で行われる。また、減圧度は、反応の最終で、好ましくは1mmHg以下にして、エステル交換反応により副生した該ジアリールカーボネートに由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は、反応温度や減圧度などによって左右されるが、通常1〜4時間程度である。反応は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、所望に応じ、前記の分子量調節剤、酸化防止剤や分岐化剤を添加して反応を行ってもよい。
【0028】
これらの反応で合成されたポリカーボネート重合体は、押出成形、射出成形、ブロ−成形、圧縮成形、湿式成形など公知の成形法で成形可能であるが、容易に成形加工できるためには極限粘度[η]が2.0(dl/g)以下が望ましく、機械的強度を十分発揮するには0.3(dl/g)以上が好ましい。中でも、本ポリカーボネート重合体を用いた湿式成形によるフィルム状成形品は、シロキサンの有する滑り性や、はっ水性等の性質とポリカーボネートの透明性や機械的強度等の性質がバランス良く発現する。
【0029】
【実施例】
次に実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0030】
実施例1
8.8%(w/v)の水酸化ナトリウム水溶液600mlに、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(略称:BPA)91.2gと、ハイドロサルファイト0.5gを加え溶解した。
これに、メチレンクロライド500mlと、p-ターシャルブチルフェノール1.44g加え撹拌し、溶液温度を15℃に保ちつつ、ホスゲン51gを60分かけて吹き込んだ。
吹き込み終了後、下記構造を主成分とするポリシロキサン化合物(略称:Si1)
【0031】
【化8】
【0032】
13.2gを反応液に加え、激しく撹拌して反応液を乳化させ、乳化後0.2mlのトリエチルアミンを加え、約1時間撹拌し重合させた。
重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液のpHを中性になるまで水洗を繰り返した後、45℃に加温した温水に樹脂液を滴下し、溶媒を除去しつつ、重合物を粒状化させた。粒状化物を濾過後、乾燥して粉末状重合体を得た。
この重合体は、塩化メチレンを溶媒とする濃度 0.5g/dlの溶液の温度20℃における極限粘度[η]は0.89dl/gであった。
得られた上記重合体を赤外線吸収スペクトルにより分析した結果、1770cm-1の位置にカルボニル基による吸収、1240cm-1の位置にエーテル結合による吸収が認められ、カーボネート結合を有することが確認された。また、3650〜3200cm-1の位置に水酸基由来の吸収はほとんど認められなかった。しかも、1100〜1020cm-1のシロキサン由来のピークも確認された。
また、蛍光X線分析(Cr管球)によりこの重合体中にはシリコン元素が含まれていることが確認された。
よって、この重合体は、下記繰り返し単位を主成分とするポリカーボネート重合体と認められた。
【0033】
【化9】
【0034】
実施例2
実施例1で使用したポリシロキサン化合物の代わりに、下記構造を主成分とするポリシロキサン化合物(略称:Si2)
【0035】
【化10】
【0036】
を13.2g用い、P-ターシャルブチルフェノールの量を2.0gに変更した以外は、実施例1と同様に行った。
得られた重合体の極限粘度[η]は0.59dl/g、赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析よりこの重合体は、下記繰り返し単位を主成分とするポリカーボネート重合体と認められた。
【0037】
【化11】
【0038】
実施例3
実施例1で使用したのポリシロキサン化合物の代わりに、下記構造を主成分とするポリシロキサン化合物(略称:Si3)
【0039】
【化12】
【0040】
18.4gを用いた以外は、実施例1と同様に行った。
得られた重合体の極限粘度[η]は0.85dl/gで、赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析によりこの重合体は、下記繰り返し単位を主成分とするポリカーボネート重合体と認められた。
【0041】
【化13】
【0042】
実施例4
実施例1で使用したのポリシロキサン化合物の代わりに、下記構造を主成分とするポリシロキサン化合物(略称:Si4)
【0043】
【化14】
【0044】
を25g用い、ホスゲンの量を52gに変更した以外は、実施例1と同様に行った。
得られた重合体の極限粘度[η]は0.76dl/gで、赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析よりこの重合体は、下記繰り返し単位を主成分とするポリカーボネート重合体と認められた。
【0045】
【化15】
【0046】
実施例5
2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン91.2gの代わりに、1,1-ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPZ)107.2gに変更した以外は、実施例1と同様に行った。
得られた重合体の極限粘度[η]は0.77dl/gで、赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析よりこの重合体は、下記繰り返し単位を主成分とするポリカーボネート重合体と認められた。
【0047】
【化16】
【0048】
実施例6
2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン91.2gの代わりに、2,2-ビス(3-メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(略称:DMBPA)102.4gを用い、p-ターシャルブチルフェノールの量を3.6g、ホスゲンの量を53gに変更した以外は実施例1と同様に行った。
得られた重合体の極限粘度[η]は0.30dl/gで、赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析よりこの重合体は下記繰り返し単位を主成分とするポリカーボネート重合体と認められた。
【0049】
【化17】
【0050】
実施例7
2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン91.2gの代わりに、1,1-ビス(4−ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン58gとビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル40.4gを用いた以外は、実施例1と同様に行った。
得られた重合体の極限粘度[η]は0.86dl/gで、赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析よりこの重合体は下記繰り返し単位を主成分とするポリカーボネート重合体と認められた。
【0051】
【化18】
【0052】
比較例1
実施例1のポリシロキサン化合物を用いなかった以外は実施例1と同様に行った。
得られた重合体の極限粘度[η]は0.64dl/gで、赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析よりシロキサン構造は認められず、この重合体は下記繰り返し単位を有するポリカーボネート重合体と認められた。
【0053】
【化19】
【0054】
比較例2
実施例1のポリシロキサン化合物の代わりに、下記構造で代表されるα,ω-ビス[2−(P−ヒドロキシフェニル)エチル]ポリジメチルシロキサン(略称:Si5)
【0055】
【化20】
【0056】
を13.2g用いた以外は実施例1と同様に行った。
得られた重合体の極限粘度[η]は0.63dl/gで、赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析より、この重合体は下記繰り返し単位を有するポリカーボネート重合体と認められた。
【0057】
【化21】
【0058】
比較例3
比較例1の重合体に実施例1で使用したポリシロキサン化合物を13.2g添加しブレンドを行った。このブレンド物の極限粘度[η]は0.29dl/gであった。
【0059】
実施例1〜7および比較例1〜3の結果を表1に、実施例1〜7と比較例1〜3までの重合物を湿式成形にて成形したフィルムについての摩耗性試験の結果と透過率測定結果を表2に示した。また、実施例1の赤外吸収スペクトルを図1に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
略称説明
Si1: フェノール平均2個及びn=39である実施例1記載のポリシロキサン化合物
Si2: フェノール平均3個及びn=39である実施例2記載のポリシロキサン化合物
Si3: フェノール平均2個及びn=39である実施例3記載のポリシロキサン化合物
Si4: フェノール平均2個及びn=3である実施例3記載のポリシロキサン化合物
Si5: α,ω-ビス[2-(P-ヒドロキシフェニル)エチル]ポリジメチルシロキサン
BPA: 2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
DMBPA:2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン
BPZ: 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン
DHPE: ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル
BPAP: 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン
極限粘度:20℃、0.5W/V%ジクロロメタン溶液にて測定
【0062】
【表2】
【0063】
試験片:20w/v%ジクロロメタン溶液にて250μm厚キャストフィルムを作成し、表面をメタノールで洗浄後、風乾し試験片とした。
透過率:村上ヘーズメーターHM-100使用。全光線透過率測定。
摩耗量:テーバ摩耗試験(荷重1000g、CS-17輪、トルエン雰囲気、4、12、24、48hr)後の摩耗量。
【0064】
【図1】
【0065】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート重合体は、グラフト状にシロキサン構造を有する新規なポリマーであって、各種成形材料やポリマーアロイ原料に使用する新規なポリカーボネートを提供することができる。本発明のポリカーボネート重合体は、従来のポリシロキサン共重合ポリカーボネートより、ポリシロキサン基の自由度が高く、シロキサン基特有の性質が現れやすく、従来ものに比して耐摩耗性が高く、レンズ、照明カバー等の耐摩耗性が要求される透明成形品に応用が可能である。また、湿式成形後の表面が滑らかなため、透明で滑り性の良い湿式成形フィルム製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた重合体の赤外吸収スペクトル。
Claims (6)
- 下記一般式(A)のポリシロキサン化合物と、下記一般式(B)で表されるビスフェノール類とを炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるポリカーボネートであって、一般式(A)のポリシロキサン化合物の使用量が、全モノマー成分(一般式(A)+一般式(B))に対して0.01〜20mol%であり、かつ極限粘度[η]が、0.3〜2.0[dl/g]であるポリカーボネート重合体。
- 一般式(B)のビスフェノール類が、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4−ヒドロキシ−3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4−ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテルから選ばれた1以上のビスフェノールである請求項1記載のポリカーボネート重合体。
- 炭酸エステル形成化合物が、ホスゲンである請求項1記載のポリカーボネート重合体。
- 一般式(A)中のR 1 が、メチル基またはフェニル基である請求項1記載のポリカーボネート重合体。
- 一般式(A)の重合度nが、3〜100である請求項1記載のポリカーボネート重合体。
- 請求項1記載のポリカーボネート重合体を用い、湿式成型法にて成形したフィルム状成型品。
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