JP3791376B2 - 定着装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、電子写真方式を採用した複写機やプリンター、あるいはファクシミリ等の画像形成装置において、未定着トナー像を加熱定着する定着装置に関し、特にベルト部材を用いるベルトニップ方式の定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記電子写真方式を採用した複写機やプリンター、あるいはファクシミリ等の画像形成装置において、未定着トナー像を加熱定着する定着装置としては、種々の方式のものが提案されてきており、実際に製品化されている。かかる定着装置としては、例えば、加熱源を有する定着ロールに、定着ベルトを加圧部材により圧接させるベルトニップ方式のものがある。
【0003】
しかし、上記ベルトニップ方式の定着装置の場合には、エンドレスベルトの内面に、表面がゴムで形成された圧力付与部材が圧接している為、当該エンドレスベルトと圧力付与部材との摺動抵抗が大きくなると、(1)像ずれ、(2)ギア破損、(3)モーター消費電力アップ等が発生するという問題点を有していた。
【0004】
そこで、上記ベルトニップ方式の定着装置において、エンドレスベルト内面の磨耗を抑制する為に、エンドレスベルトと圧力付与部材との間に摺動部材を設ける提案が成されている。具体的には、圧力付与部材の表面を、ガラス繊維製のシートにフッ素樹脂(PFA)をコーティングしたシート状部材(摺動部材)によって被覆するとともに、前記エンドレスベルトの内面にシリコーンオイル等の潤滑油を塗布する様に構成したものが、既に提案され、実際に使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術の場合には、次の様な問題点を有している。すなわち、上記従来のベルトニップ方式の定着装置の場合には、圧力付与部材の表面を、ガラス繊維製シートにフッ素樹脂(PFA)をコーティングしたシート状部材によって被覆する様に構成したものであるが、定着時に、エンドレスベルトの裏面と圧力付与部材が摺動すると、その接触面に塗布されたシリコーンオイル等の潤滑油が圧力により押し出され、次第に不足し、シート状部材にコーティングされたフッ素樹脂(PFA)が次第に磨耗していく。すると、上記シート状部材表面は、フッ素樹脂(PFA)コート面表面の凹凸が磨耗して、徐々に鏡面化し、この表面が、定着ベルトと摺動すると、当該定着ベルトとシート状部材との接触面積が増大し、摺動抵抗が急激に増加する。さらに、上記シート状部材の表面磨耗が進行すると、ガラス繊維がシート状部材表面に露出し、物理的な接触抵抗が大きくなって、定着ベルトとの摺動抵抗をさらに増加させることになる。
【0006】
また、上記従来のベルトニップ方式の定着装置の場合には、上記の如く、シート状部材にコーティングされたフッ素樹脂(PFA)が磨耗していくと、磨耗によって発生した磨耗粉が潤滑油と混合して、粘性物質へと変化する。すると、この粘性物質は、定着ベルトを張架する張架ロールや定着ベルトの裏面に付着して、摺動抵抗を増加させることになる。しかも、上記定着ベルトの裏面に塗布される潤滑油は、磨耗粉と混合されて粘性物質と変化する為、潤滑油本来の役割を果たさなくなり、この点からも摺動抵抗を増加させることになる。
【0007】
このように、上記従来のベルトニップ方式の定着装置の場合には、シート状部材(摺動部材)と定着ベルトの摺動抵抗が次第に増加し、定着ベルトを駆動する為の駆動モーターの消費電流が増加する。
【0008】
上記定着装置によって定着処理を受ける用紙の搬送速度は、定着ベルトの移動速度に依存している為、加熱定着ロールと定着ベルトの間に速度差が生まれると、画像ずれが発生するという問題を有していた。
【0009】
従って、本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、ベルトニップ方式の定着装置において、定着ベルトと圧力付与部材との摺動抵抗を長期に渡って低減することができ、さらに画像ずれの発生を防止することが可能な定着装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
<1> ロール部材と、
外周面が前記ロール部材に当接され、トナー像を担持した記録媒体が前記ロール部材との間に挟み込まれるニップ部を形成するベルト部材と、
前記ロール部材及び前記ベルト部材の少なくとも一方を加熱する加熱源と、
前記ベルト部材の内側に当接され、前記ロール部材の表面に沿って前記ベルト部材を押圧する圧力付与部材と、
前記ベルト部材と前記圧力付与部材との間に介在され、少なくとも表面に多孔質構造を有する摺動部材と、
前記ベルト部材と前記摺動部材との間に介在される潤滑油と、
を有し、
前記摺動部材は、前記多孔質構造を非貫通で有することを特徴とする定着装置。
【0011】
<1>の発明では、前記ベルト部材と前記圧力付与部材との間に介在され、少なくとも表面に多孔質構造を有する摺動部材を有するので、当該摺動部材とベルト部材との間に介在させる潤滑油が、摺動部材における多孔質構造より良好に保持される。さらに、摺動部材における多孔質構造中に保持された潤滑油は、前記ベルト部材と前記圧力付与部材との圧力により押し出され、潤滑油が摺動部材とベルト部材との間に順次供給されるかたちとなり、潤滑油不足を補い、摺動部材とベルト部材内面との摺動抵抗の上昇を長期に渡り防ぐことができる。このため、ベルト部材と圧力付与部材との摺動抵抗を長期に渡って低減することができるばかりでなく、摺動部材とベルト部材内面との摺動抵抗の上昇に伴う、ロール部材とベルト部材の間の速度差を防止し、画像ずれの発生を防止することができる。
【0012】
<2>前記摺動部材が、シート状部材であることを特徴とする前記<1>に記載の定着装置である。
【0013】
<2>の発明では、摺動部材をシート状とすることで、簡易な構成で、前記ベルト部材と前記圧力付与部材との間に介在させることができる。
【0014】
<3>前記摺動部材における細孔の大きさが、0.01μm〜100μmであることを特徴とする<1>又は<2>に記載の定着装置である。
【0015】
<3>の発明では、摺動部材における細孔の大きさを、上記範囲とすることで、機械的強度を維持しつつ、良好に潤滑油を保持することができる。
【0016】
<4>前記摺動部材が、ポリイミド樹脂からなることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれかに記載の定着装置。
【0017】
<4>の発明では、ポリイミド樹脂を用いた摺動部材は耐熱性及び耐磨耗性に優れるので、摺動部材とベルト部材内面との摺動特性を長期渡り好適に維持することができる。
【0018】
<5>前記摺動部材が、表面に凹凸が形成されていることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれかに記載の定着装置である。
【0019】
<5>の発明では、摺動部材表面に、凹凸が形成されてなることで、当該摺動部材とベルト部材内面との接触点を減らし、点接触とすることができる。このため、摺動部材とベルト部材内面との摺動抵抗をより低減することができる。
【0020】
<6>前記摺動部材における凹凸は、WC−aの値が0.8μm以上であることを特徴とする前記<5>に記載の定着装置である。
【0021】
<6>の発明では、摺動部材における凹凸のWC−aの値を、0.8μm以上とすることで、摺動部材とベルト部材内面との摺動抵抗をより好適に低減することができる。
【0022】
<7>前記摺動部材における凹凸が、先端が鋭利なものを押圧し、凸部先端を塑性変形させて形成されてなることを特徴とする前記<5>又は<6>に記載の定着装置である。
【0023】
<7>の発明では、摺動部材における凹凸が、先端が鋭利なものを押圧し、凸部先端を塑性変形させて形成されることで、凸部の強度を向上させ、摺動部材とベルト部材内面との摺動抵抗による前記凹凸が消失し難くし、当該摺動抵抗の低減効果を長期間維持することができる。
【0024】
<8>前記摺動部材における凹凸の凸部が、高さ10μm以上であることを特徴とする前記<5>〜<7>のいずれかに記載の定着装置である。
【0025】
<8>の発明では、摺動部材における凹凸の凸部を、高さ10μmとするこで、摺動部材とベルト部材内面との摺動抵抗をより好適に低減することができる。
【0026】
<9>前記摺動部材は、バルク状の樹脂層と、前記バルク状の樹脂層上に形成された多孔質の樹脂層と、を含んで構成されたことを特徴とする前記<1>〜<8>のいずれかに記載の定着装置である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、実質的に同じ機能を有する部材には、全図面通して同じ符号を付与し、その説明を省略することがある。
【0028】
図1はこの発明の実施の形態1に係る定着装置を示す構成図である。
図1に示す定着装置1は、加熱源を内蔵した加熱定着ロール(ロール部材)2と、加熱定着ロール2に圧接されるエンドレスベルト(ベルト部材)3と、エンドレスベルト3の内面側に当接され、加熱定着ロール2の表面に沿ってエンドレスベルト3を押圧する表面に多孔質構造を有するパッド部材(圧力付与部材)4と、パッド部材4を被覆するパッドシート(摺動部材)25と、エンドレスベルト3内面に潤滑油を塗布する潤滑油塗布部材27と、で主要部が構成されている、フリーベルトニップフューザー(FBNF)方式の定着装置である。
【0029】
定着装置1では、加熱定着ロール2の回転に伴い、エンドレスベルト3も回転走行する。エンドレスベルト3と加熱定着ロール2との間に、未定着トナー像20を担持した記録用紙等の記録媒体19を通過させることで、記録媒体19上の未定着トナー像20が定着される。このような定着方式は加熱定着ロール2から伝導される熱が発散されにくく、エンドレスベルト3の回転が開始されても、加熱定着ロール2から奪う熱量が少ない。そのため、熱損失が少ないことにより省電力を達成でき、経済的であり、かつベルトニップの温度低下も減少し、トナーの定着性を向上させることが可能である。
【0030】
定着装置1では、表面に多孔質構造を有するパッドシート25をパッド部材4に被覆することで、エンドレスベルト3とパッド部材4との間に介在させる構成である。また、潤滑油塗布部材27によりエンドレスベルト3内面に潤滑油を塗布することで、パッドシート25とエンドレスベルトとの間に潤滑油を介在させる構成である。このため、潤滑油がパッドシート25における多孔質構造より良好に保持される。さらに、パッドシート25における多孔質構造中に保持された潤滑油は、エンドレスベルト3とパッド部材4とから受ける圧力により押し出され、潤滑油がパッドシート25とエンドレスベルト3との間に順次供給されるかたちとなり、潤滑油不足を補い、パッドシート25とエンドレスベルト内面との摺動抵抗の上昇を長期に渡り防ぐことができる。このため、エンドレスベルト3とパッド部材4との摺動抵抗を長期に渡って低減することができるばかりでなく、パッドシート25とエンドレスベルト内面との摺動抵抗の上昇に伴う、加熱定着ロール2とエンドレスベルトとの間の速度差を防止し、画像ずれの発生を防止することができる。
【0031】
加熱定着ロールについて説明する。
加熱定着ロール2は、図示しない駆動源によって矢印方向に沿って所定の速度たとえば260mm/secの周速で回転駆動されるようになっている。上記加熱定着ロール2は、例えば、外径62mm、内径55mm、長さ350mmの円筒状に形成された金属製コア5を備えており、この金属製コア5としては、例えば、アルミニウムやステンレス等からなるものが用いられる。上記金属製コア5の表面には、弾性体層6としてHTVシリコーンゴム(JIS−Aのゴム硬度45度)が2mmの厚さに被覆されているとともに、この弾性体層6の表面には、さらにトップコート層7としてフッ素ゴムが50μmの厚さにティップコー卜されており、このトップコート層7の表面は、鏡面状態に近い状態に仕上げられている。上記下地弾性体層6のゴム硬度は、Teclock社製のスプリングタイプのA型硬度計により、JIS K6301に準拠して、荷重1,000gfを付加して計測した結果の値である。なお、金属製コア5としては、アルミニウムやステンレス等以外にも熱伝導率の高い金属からなるものを使用することができ、トップコート層7としては、耐熱性の高い弾性体であれば他の材料を使用することができる。
【0032】
金属製コア5の内部には、加熱源として出力1000Wのハロゲンランプ8が配置されており、加熱定着ロール2は、このハロゲンランプ8によって表面温度が所定の温度となるよう内部から加熱されるようになっている。上記加熱定着ロール2の表面温度は、当該加熱定着ロール2の表面に接触する温度センサー9によって検出され、加熱定着ロール2の表面温度が例えば175℃となるように、図示しない温度コントロールーによって制御されるように構成されている。
【0033】
加熱定着ロール2の表面には、離型剤として、例えば、粘度300cs程度のアミン変性シリコンオイルが、離型剤供給装置10により均一に供給されている。この離型剤供給装置10は、オイルパイプ11aから滴下される離型剤12が、オイルウィック1lbを介してピックアップロール11cに供給され、当該ピックアップロール11cに供給された余剰な離型剤12は、メタリングブレード11dで掻き取られ、オイルパン11eから図示しないオイルタンクへ戻される。また、上記ピックアップロール11cの表面に供給された離型剤12は、ドナーロール11fを介して加熱定着ロール2の表面に塗布されるようになっている。なお、上記ピックアップロール11cの表面は、クリーニングブレード11gによって付着物が除去される。また、上記加熱定着ロール2の表面には、当該加熱定着ロール2の表面を所定のタイミングで外部から加熱する外部加熱ロール13が設けられている。
【0034】
エンドレスベルトについて説明する。
エンドレスベルト3は、パッド部材4により加熱定着ロール2の表面に所定のニップ幅に渡って圧接するように配置されている。このエンドレスベルト3は、例えば、好適には無端ベルト状で、厚さ75μm、幅340mm、周長214mmのポリイミドフィルムからなり、支持ロールなどで超過されることなく、配置されてなる
【0035】
パッド部材について説明する。
パッド部材4は、エンドレスベルト3を加熱定着ロール2の表面に所定の圧力で押圧するように配置されている。このパッド部材4は、図2に示すように、ステンレス等の金属からなるベースプレート21の表面に、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂からなるシム22を介して、ステンレス等の金属からなる支持プレート23上に積層された弾性体層24を配置して構成されている。また、上記パッド部材4の表面は、シート状部材としてのパッドシート25によって全周が被覆されている。上記弾性体層24が積層された支持プレート23は、その長手方向の両端部に設けられた取り付けネジ26によって、シム22を介してベースプレート21に固定されている。さらに、上記パッド部材4は、ベースプレート21側に配置された図示しない圧縮コイルスプリングによって、加熱定着ロール2に向けて例えば50kgfの押圧力で圧接されている。上記ベースプレート21としては、例えば、幅(ベルトの走行方向)20mm、長さ(紙面の垂直方向)360mm、厚さ7.5mmのステンレス鋼製のものが用いられる。また、弾性体層24は、ゴム硬度20°のシリコーンスポンジ(シリコーンゴムの発泡体)からなる厚さ5mmのものである。なお、ここでゴム硬度は、高分子科学社製のアスカーCタイプのスポンジ用ゴム硬度計により、荷重300gfを付加して計測した結果である。
【0036】
ここで、上記パッド部材4に弾性体層24を設けることにより、パッドシート25のエンドレスベルト3と接触する接触面は、加熱定着ロール2の外周面と整合可能になっている。すなわち、一定以上の荷重によってパッド部材4を加熱定着ロール2に向けて押圧すれば、弾性体層24が変形し、パッドシート25の接触面が加熱定着ロール2の外周面に沿って圧接されるように変形するようになっている。したがって、パッド部材4が図示しない圧縮コイルスプリングによって加熱定着ロール2に押圧されると、エンドレスベルト3は加熱定着ロール2に隙間なく圧接される。
【0037】
潤滑油塗布部材について説明する。
潤滑油塗布部材27は、例えば、フェルト等からなり、図1及び図2に示すようにエンドレスベルト3の内面に潤滑油を塗布可能に配置されている。このような潤滑油塗布部材27により、潤滑油をエンドレスベルト3内面とパッドシート25との間に介在させることができ、エンドレスベルト3とパッドシート25との間の摺動抵抗(摩擦係数)が小さくなるようになされている。潤滑油を塗布した状態では、エンドレスベルト3は、加熱定着ロール2の回転に伴って、パッドシート25上を滑りながら、当該加熱定着ロール2と等しい速度で走行することが可能となっている。なお、この潤滑油塗布部材27は、必要に応じて設けることができるものであり、特に定着装置1では、上述のようにパッドシート25が潤滑油を良好に保持することができるため、潤滑油塗布部材27を備えることなく、長期に渡って、エンドレスベルト3とパッドシート25との摺動抵抗の上昇を抑制することができる。
潤滑油としては、例えば粘度が100〜500cs(好ましくは200〜400cs)のアミノ変性シリコンオイル、ジメチルシリコンオイル等が挙げられる。これらの中でも、粘度300csのアミン変性シリコンオイルが特に好適である。
【0038】
パッドシートについて説明する。
パッドシート25は、表面に多孔質構造を有し、エンドレスベルト3とパッド部材4の間に介在させるように、パッド部材4を被覆して配置されている。パッドシート25は、図3に示すように、例えば、シート状のものを略円筒状して配置されているが、エンドレスベルト3とパッド部材4の間に介在されていれば、どのような形状で配置されていてもよく、平らなシート状のまま配置されていてもよいし、また、加熱定着ロール2の面形状に合わせて屈曲していてもよい。
【0039】
パッドシート25は、表面に多孔質構造を有するが、少なくともエンドレスベルト3と当接する表面近傍のみが多孔質構造であればよく、パッドシート25表面全て或いはパッドシート25全体が多孔質構造であってもよい。しかし、強度の観点からエンドレスベルト3と当接する表面近傍のみが多孔質構造であることが好適である。
この多孔質構造とは、多数の微細な連続孔がパッドシート25表面から内部にかけて延在している状態を示し、パッドシート25を貫通していない。この細孔の大きさ(口径)としては、0.01μm以上100μm以下であることが、上述のように所望とする機械的強度を有しつつ、十分な潤滑油保持性を得る観点から好ましく、より好ましくは、0.05μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以上20μm以下である。細孔の大きさが、0.01μmより小さいと、所望とする潤滑油保持性が十分に得られないことがあり、100μmより大きいと、機械的強度が低下することがある。
ここで、細孔の大きさは、走査型電子顕微鏡による表面観察像を画像解析により計算した平均値により求められる値である。
【0040】
パッドシート25を構成する材料としては、耐熱性、耐磨耗性を有するものであれことが好適であり、この条件を満たせば特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ピーク等が挙げられるが、ポリイミド、芳香族ポリアミド(アラミド)、サーモトロピック液晶ポリマーとして分類されるものを使用するのが望ましい。上記サーモトロピック液晶ポリマーには、完全芳香族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステル、芳香族ポリアゾメチ、芳香族ポリエステル−カーボネ−ト等がある。これらの中でも、耐熱性や耐磨耗性が高い観点から、ポリイミドが特に好ましい。このポリイミドを用いることで、耐熱性、耐磨耗性が要求されるロール部材などに好適に適用可能である。ポリイミドは、熱硬化性のものが望ましく、熱硬化性ポリイミドは、分子主鎖中にイミド基が有機基と直結し、これが繰り返し単位となって、高分子化しているものである。有機基は、例えば、脂肪族基、芳香族基等を意味するが、芳香族基、例えば、フェニル基、ナフチル基、ジフェニル基(2つのフェニル基がメチレン基やカルボニル基を介して結合されたものを含む)である方が、高い使用温度で機械的特性が良好なものとなる。ポリイミド前駆体の一つであるポリアミド酸は、有機酸二無水物と有機ジアミンとの当量を、常温の有機極性溶媒中で縮重合反応させることによって生成することができる。
【0041】
パッドシート25の厚さは、50μm〜300μm程度であることが好ましい。また、パッドシート25は、単層から構成されてもよし、複数層から構成されていてもよく、各層は同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
【0042】
パッドシート25は、表面に多孔質構造を有するが、このような表面に多孔質構造を有する摺動部材の製造方法としては、表面が多孔質構造を有するように構成できれば、特に制限はないが、例えば、バルク状の樹脂層と多孔質の樹脂層とを接着剤などで貼り合わせたりすることで、容易に得ることができるが、以下に示す製造方法も好適に挙げられる。なお、この製造方法においては、パッドシート25の構成材料としてポリイミド樹脂を用いて樹脂層(シート状部材)を形成する場合を説明する。
(a)ポリイミド前駆体溶液を塗布してポリイミド前駆体塗膜を形成し(以下、「PI前駆体塗膜形成工程」という)、ポリイミド前駆体塗膜表面に貫通孔を多数有する溶剤置換速度調節材を被覆し、ポリイミド前駆体塗膜を凝固溶媒に接触させて、表面に多孔質構造を有するポリイミド前駆体塗膜を形成し(以下、「PI前駆体析出工程」という)、表面に多孔質構造を有するポリイミド前駆体塗膜を、熱イミド化処理して、表面に多孔質構造を有するポリイミド樹脂層を形成する(以下、「PI樹脂層形成工程」という)方法(以下、この方法を(a)の方法という)。
以下、(a)の方法について説明する。
−PI前駆体塗膜形成工程−
PI前駆体塗膜形成工程では、通常、基体表面に、ポリイミド前駆体溶液を塗布することでポリイミド前駆体塗膜を形成するが、当該溶液に使用するポリイミド前駆体としては、ジアミノ化合物とテトラカルボン酸二無水物とから得られるポリアミド酸等が挙げられる。また、ポリイミド前駆体を溶解する溶剤としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン系極性溶剤が挙げられる。
また、ポリイミド前駆体溶液には、目的に応じて、滑剤、可塑剤、導電性粒子、酸化防止剤その他の添加物が添加されてもよい。
【0043】
基体としては、摺動部材(パッドシート25)の形状によってことなるが、円筒状とする場合、円筒或いは円柱状の基体が、平らなフィルム状とする場合、板状の基体が用いられる。基体の構成材料としては、アルミニウム等の金属などが一般的に用いられる。
【0044】
ポリイミド前駆体含有液は、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン成分とを有機極性溶媒中で反応させポリイミド前駆体を合成することによって得ることできる。
芳香族テトラカルボン酸の代表例としては、次のようなものが挙げられる。例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、あるいはこれらのテトラカルボン酸エステル、または上記各テトラカルボン酸類の混合物等が挙げられる。
一方、芳香族ジアミン成分としては、特に制限はなく、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノフェニルメタン、ベンジジン、3,3'−ジメトキシベンチジン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
【0045】
ポリイミド前駆体溶液の基体への塗布量は、所望とする膜厚によるが、200〜1800g/m2とすることが好ましい。200g/cm2未満であると膜厚不足となることがあり、1800g/m2を超えると膜厚過多となることがある。
【0046】
ポリイミド前駆体溶液を塗布する方法は特に制限されず、例えば特開昭57−74131号公報に記載の遠心成形塗布法、特開昭62−19437号公報に記載の内面塗布法、特開平6−23770号公報に記載の外面塗布法、特開平3−180309号公報に記載の浸漬塗布法、特開平9−85756号公報に記載のらせん塗布法等が挙げられるが、基体として柱状或いは筒体を用いる場合、特願平11−314011号公報等に記載の浸漬塗布法を適用することが好ましい。
【0047】
浸漬塗布法は生産性が高いことが特徴であるが、通常の方法では塗布膜厚が、塗布液の粘度と引き上げ速度に支配される。また、ポリイミド前駆体溶液は濃度が低い割には粘度が非常に高い問題があるので、塗布後の被膜の濡れ膜厚が厚くなりすぎ、所望の膜厚に塗布することが難しい。そこで、例えば、円筒状の部材を形成する場合、塗布液に所定の円孔を設けたフロートを浮かべ、基体をその円孔を通して引き上げる特願平11−314011号に記載の浸漬塗布法を適用することが特に好ましい。この浸漬塗布法におけるフロートの円孔の大きさ(直径)は所望の膜厚により適宜調整することがよい。塗布される濡れ膜厚は、円孔と基体の間隙によって規制され、乾燥膜厚は濡れ膜厚と塗布液の濃度との積になる。但し、上記間隙は所望の濡れ膜厚の1〜3倍であるのがよい。1〜3倍とするのは、塗布液の粘度および/または表面張力、並びに、硬化時の収縮等により、乾燥膜厚が濡れ膜厚に比例するとは限らないからである。
【0048】
−PI前駆体析出工程−
PI前駆体析出工程では、ポリイミド前駆体塗膜を凝固溶媒に接触させる際、ポリイミド前駆体塗膜表面に貫通孔を多数有する溶剤置換速度調節材を被覆しておく。この凝固溶剤は、ポリイミド前駆体には不溶で、ポリイミド前駆体溶液の溶剤(非プロトン系極性溶剤)には相溶する溶剤である。このため、ポリイミド前駆体塗膜を、凝固溶媒に接触させると、ポリイミド前駆体塗膜から溶剤(プロトン系極性溶剤)が凝固溶媒に染み出て、代わりに凝固溶媒が浸透する。ポリイミド前駆体は凝固溶媒には不溶なのでポリイミド前駆体は析出する。この凝固溶剤に接触させる際に、ポリイミド前駆体塗膜表面に、溶剤置換速度調節材を被覆することで、当該調節材の貫通孔からのみ、凝固溶剤がポリイミド前駆体塗膜と接触する。そして、この接触した部分にのみ、溶剤(プロトン系極性溶剤)が凝固溶媒に染み出て、代わりに凝固溶媒が浸透し、ポリイミド前駆体塗膜では、上記調節材の貫通孔の部分にのみ細孔が形成される。このため、表面に多孔質構造を有するポリイミド前駆体塗膜を形成することができる。なお、表面に多孔質構造を有するポリイミド前駆体塗膜を形成後、溶剤置換速度調節材は剥離する。
【0049】
溶剤置換速度調節材は、ポリイミド前駆体塗膜表面に被覆する構造であれば、どのようなものでもよいが、一般的には、シート状のものが用いられる。また、その材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロース、ポリフッ化エチレン系繊維(例えば、テフロン(R))等からなる不織布、或いは多孔質膜が挙げられる。また、溶剤置換速度調節材は、多数の貫通孔が設けられてなるが、これは、所望とする多孔質構造によって、その数や大きさは異なる。貫通孔の大きさ(口径)は、所望とするポリイミド樹脂層における多孔質構造の細孔の大きさよりも、大きめに設定することが好適である。
【0050】
凝固溶剤としては、例えば、水、アルコール類(例えばメタノール、エタノール等)、炭化水素類(例えばヘキサン、ヘプタン、等)、ケトン類(例えばアセトン、ブタノン等)、エステル類(例えば酢酸エチル等)が挙げられ、水が最も扱いが簡便で好ましい。
【0051】
ポリイミド前駆体塗膜を凝固溶剤と接触させる方法としては、ポリイミド前駆体塗膜を内面に形成した基体を、凝固溶剤で満たした槽に浸漬する方法、等が好適である。この方法では、ポリイミド前駆体塗膜を凝固溶剤に均一に接触させることができる。この浸漬方法では、より効率よくポリイミド前駆体を析出させ、多孔質構造を形成する観点から、凝固溶剤を攪拌して、溶剤置換速度調節材における貫通孔内部に流通させやすくすることが好ましい。
【0052】
ポリイミド前駆体塗膜を凝固溶剤と接触させる方法としては、その他、ポリイミド前駆体塗膜に凝固溶剤を流下させたり、吹き付けてもよい。
【0053】
PI前駆体析出工程においては、ポリイミド前駆体塗膜を凝固溶剤に接触させる時間により、ポリイミド前駆体塗膜からの非プロトン系極性溶剤の溶出量が変化する。即ち、この時間により、多孔質構造の細孔の大きさや深さ(長さ)などを適宜制御することができる。
また、ポリイミド前駆体塗膜から凝固溶剤への非プロトン系極性溶剤の溶出量は、通常、凝固溶剤の温度が高いほど速くなるので、温度によっても、上記多孔質構造の細孔の大きさや深さなどを適宜制御することができる。
さらに、凝固溶剤にあらかじめ非プロトン系極性溶剤を混合しておくことにより、ポリイミド前駆体塗膜からの非プロトン系極性溶剤の溶出量を調整することもできるので、これによっても、上記多孔質構造の細孔の大きさや深さなどを適宜制御することができる。
【0054】
−PI樹脂層形成工程−
PI樹脂層形成工程においては、まず、非プロトン系極性溶剤を除去する目的で、乾燥を行うことが好ましい。乾燥条件は、20〜120℃の温度で10〜60分間、行うのが好ましい。筒状体の内部に温風を送ることも効果的である。乾燥温度は、段階的、または一定速度で上昇させてもよい。
【0055】
乾燥を、基体の長手方向を縦にして行うと、塗膜の一部分に筋やむらが生じることもある。そのような場合には、基体の長手方向を縦にして、さらに回転させることが有効である。回転速度は、10〜100rpm程度が好ましいが、回転装置によってはこれより速くても遅くてもかまわない。基体の長手方向を縦にして回転させることは、筒状体の長手方向を横にして回転させるよりも装置の構造は簡単である。
【0056】
PI樹脂層形成工程において、乾燥の後、好ましくは、350℃前後(好ましくは300〜450℃)の温度で、20〜60分間、ポリイミド前駆体塗膜を加熱することで、熱イミド化処理し、ポリイミド樹脂層を形成することができる。熱イミド化処理の際、溶剤が残留しているとポリイミド樹脂層に膨れが生じることがあるため、熱イミド化処理前には、完全に残留溶剤を除去することが好ましく、具体的には、熱イミド化処理前に、200〜250℃の温度で、10〜30分間加熱乾燥することが好ましく、続けて、温度を段階的、または一定速度で上昇させて、熱イミド化処理することが好ましい。
【0057】
このような方法により、表面に多孔質構造を有するポリイミド樹脂層からなる摺動部材(パッドシート25)を形成することができる。
【0058】
また、表面に多孔質構造を有する樹脂層(シート状の摺動部材)の製造方法としては、以下に挙げる方法も好適に挙げられる。
(b)樹脂材料塗布液を用いてバルク状の樹脂層を形成し(以下、「バルク状の樹脂層形成工程」という)、前記バルク状の樹脂層表面に、発泡剤を含む樹脂材料塗布液を用いて多孔質の樹脂層(以下、「多孔質の樹脂層形成工程」という)を形成する方法((b)の方法という)。
【0059】
以下、(b)の方法について説明する。なお、(b)の方法では、ポリイミド前駆体溶液を用いてポリイミド樹脂層を形成する方法に準じて説明するが、これに限定されるわけではない。
【0060】
−バルク状の樹脂層形成工程−
バルク状の樹脂層形成工程では、上記(a)の方法における、PI析出工程で溶剤置換速度調節材を用いない以外は、同様の工程で、バルク状の樹脂層(ポリイミド樹脂層)を形成することができる。ここで、「バルク状」とは、多孔質構造を有する樹脂層と区別するための文言であり、多孔質構造を有さない樹脂層を意味する。なお、場合によっては、PI析出工程は行わなくてよい。
【0061】
―多孔質の樹脂層形成工程―
多孔質の樹脂層形成工程では、上記(a)の方法におけるポリイミド前駆体溶液中に、発泡剤を添加し、さらに、ポリイミド析出工程で溶剤置換速度調節材を用いない以外は、同様の工程で、バルク状の樹脂層(ポリイミド樹脂層)を形成することができる。このように、多孔質の樹脂層は、樹脂材料(ポリイミド前駆体)と共に、発泡剤を用い、加熱硬化処理(熱イミド化処理)させることで、容易に形成することができる。なお、場合によっては、PI析出工程は行わなくてよい。
【0062】
発泡剤としては、「セルマイクC191(三協化成(株)製)」(主成分アゾジカルボンアミド)や、「セルマイク417(三協化成(株)製)」(無機系)、その他、テトラソニル系発泡剤等が挙げられる。
【0063】
また、(b)の方法のように、樹脂層を複数層で構成する場合、下層の樹脂層を乾燥或いは半硬化させて、上層の樹脂層における加熱硬化(熱イミド化処理)と共に、下層の樹脂層を完全に加熱硬化(熱イミド化処理)させることも好適である。このような方法を取ることで、各層間が溶融接着し優れた接着強度が得られるため好適である。
【0064】
なお、上記(a)、(b)の方法のように、通常は、樹脂層は、基体表面に形成する際、樹脂材料溶液(ポリイミド前駆体溶液)を塗布するが、例えば、フィルム状にする場合、基体としては板状のものが用いられる。無端ベルト状にする場合、例えば、円柱状又は円筒状、楕円柱状又は楕円筒状が用いられる。基体の材質は、アルミニウムや銅、ステンレス等の金属が好ましい。その際、表面をクロムやニッケルでメッキしたり、フッ素樹脂やシリコーン樹脂で表面を被覆したり、あるいは表面にポリイミド樹脂が接着しないよう、表面に離型剤を塗布することも有効である。
【0065】
パッドシート25の表面には、少なくともエンドレスベルト3の表面に当接(圧接)する部分25aに、凹凸28が形成されていることが好ましい。このパッドシート25表面の大きな凹凸28は、例えば、当該パッドシート25を構成するシート材料の表面に、当該特殊なエンボス加工や、サンディング加工を施すことによって形成することができる。
【0066】
パッドシート25の表面に凹凸28を形成することにより、当該パッドシート25とエンドレスベルト3内面との接触点を減らし、点接触とすることにより、パッドシート25とエンドレスベルト3内面との摺動抵抗を低減することができる。
【0067】
更に説明すると、上記パッドシート25は、図4に示すように、厚さ75μm程度のポリイミドフィルム30に、所定の大きさの凹凸31を有するエンボス加工用のエンボス型32を用いて、加圧エンボス加工を施すことにより、当該パッドシート25の表面に凹凸28が形成される。
【0068】
ところで、本発明者らは、図4に示すように、先端が鋭利なエンボス型32と、先端が丸いエンボス型32とを用いて、ポリイミドフィルム30の表面に所定の大きさの凹凸28をエンボス加工により形成して、当該エンボス加工が施されたポリイミドフィルム30によってパッドシート25を構成して、後述するように、当該パッドシート25の表面に凹凸28を形成することによる摺動抵抗の低減効果を確認する実験を行ったところ、図5に示すような結果が得られた。
【0069】
その結果、図5に示すように、先端が鋭利なエンボス型32を用いて表面に大きな凹凸28を形成したパッドシート25を使用した場合には、摺動抵抗の低減効果が長期間にわたって維持することができたが、先端が丸いエンボス型32を用いて表面に凹凸28を形成したパッドシート25を使用した場合には、摺動抵抗の低減効果が急速に失われ、摺動抵抗が急激に増加して、ベルト駆動負荷電流値が早い時期に高い値を示すことがわかった。
【0070】
これは、パッドシート25の表面に凹凸28を形成するのに、先端が鋭利なエンボス型32を用いた場合には、図6に示すように、パッドシート25が塑性変形して、凹凸28形状が長期間維持されるのに対して、先端が丸いエンボス型32を用いた場合には、パッドシート25が弾性変形して、凹凸28形状が早い時期に失われるか、平面に近い形状に復帰してしまうためと考えられる。
【0071】
次に、上記の如く表面に凹凸28が形成されたパッドシート25の製造方法を、例えば、以下に示す方法により好適に製造することができる。
【0072】
パッドシート25を構成する材料としてポリイミドを用いる場合、例えば、上記(a)の方法により、ポリイミドフィルムを得る。このポリイミドフィルム30は、図7(a)に示すように、まず、所定の長方形状に外形が外被きされると同時に、取り付け用の穴35が打ち抜かれる。次に、上記ポリイミドフィルム30の表面には、エンボス成形によって所定の幅にわたって大きな凹凸28が形成される。
【0073】
このエンボス成形による大きな凹凸28の形成は、図8に示すように、エンボス加工機の下型40上に、エンボス加工を施すエンボス型32を載置し、当該エンボス型32の上に、所定の形状に形成されたポリイミドフィルム30を載せ、その上にクッション材として厚さ2.0mmのシリコンゴム41を介して、上型42によって、所定の圧力P(例えば、60kg/cm2)で押圧することにより、エンボス型32によってポリイミドフィルム30にエンボス加工を施す。プレス時間は、例えば、1.0min程度に設定され、エンボス加工を施す前に、エンボス加工機の下型40及び上型42を、175℃程度に加熱しておくとともに、エンボス加工を施す環境温度も、175℃程度に設定される。
【0074】
上記エンボス加工に使用されるエンボス型32は、図9に示すように、S45C等の鋼材によって、平面長方形状に形成されており、このエンボス型32の表面には、ポリイミドフィルム30のエンボス加工を施す幅に応じて、所定の大きさの凹凸31が一様に形成されている。上記エンボス型32表面の凹凸31は、例えば、正四角錘状に形成されており、当該凹凸31の凸部は、高さ10μm以上であることが好ましく、より好ましくは50μm〜500μmであり、さらに好ましくは100μm〜300μmである。高さ10μm以上とすることで、パッドシート25とエンドレスベルト内面との摺動抵抗より好適に低減することができる。また、凸部のピッチは、1mm〜10mmであることが好ましく、より好ましく、2mm〜8mm、さらに好ましくは3mm〜6mmである。このピッチを上記範囲とすることで、パッドシート25とエンドレスベルト内面との摺動抵抗より好適に低減することができる。
ここで、凸部の高さとは、凹部の最下点と凸部の頂点との面方向に直交する方向の距離を示し、ピッチとは、各凸部の頂点間の面方向の距離を示す。
【0075】
次に、図7(a)に示すように、上記の如くエンボス加工が施されたポリイミドフィルム30を、円筒形状に形成するとともに、当該円筒形状に形成されたポリイミドフィルム30の重なり部分に、接着剤を塗布する。
【0076】
その後、上記ポリイミドフィルム30に塗布された接着剤を加熱して硬化させる。
【0077】
このようにして、図7(b)に示すように、ポリイミドフィルム30によって表面に大きな凹凸28が形成されたパッドシート25が製造される。このパッドシート25の表面には、図7(c)に示すように、所定の幅にわたって大きな凹凸28が形成される。上記パッドシート25の表面に大きな凹凸28が形成された領域25aは、図7(d)に示すように、少なくとも加熱定着ロール2の表面に圧接する部分にわたるように設定される。
【0078】
また、上述したように、エンボス加工を175℃程度に加熱した環境下で行うことにより、ポリイミドフィルム30にエンボス加工を施すことに伴って、当該ポリイミドフィルム30を円筒形状に形成して、パッドシート25を製造する際に、当該パッドシート25に残留応力によって変形が生じるのを防止するように構成することが好適である。
【0079】
すなわち、上記ポリイミドフィルム30にエンボス加工を施すことによって、パッドシート25を製造する際に、当該パッドシート25を構成するポリイミドフィルム30に残留応力が生じる。そのため、上記ポリイミドフィルム30をそのまま円筒状に形成してパッドシート25を製造した場合には、図10(a)に示すように、当該ポリイミドフィルム30の残留応力によって、円筒状のパッドシート25が一方の径方向に競り上がり、パッドシート25の軸方向の途中が楕円形状に変形してしまうことがある。このように変形したパッドシート25を、図1に示す定着装置1において使用すると、パッドシート25の変形によって、ニップ部内のパッドシート25が座屈し、圧力のかからない部分が発生するか、または、座屈している周りの圧力が上がり、本来の図11(a)から、図11(b)に示すように、パッド部材4の圧力分布がW型となり、紙しわの原因となることがある。
【0080】
そこで、上述したように、エンボス加工を175℃程度に加熱した環境下で行うことにより、ポリイミドフィルム30にエンボス加工を施すことに伴って、当該ポリイミドフィルム30を円筒形状に形成して、パッドシート25を製造する際に、図10(b)に示すように、当該パッドシート25に残留応力によって変形が生じるのを防止することができ、パッド部材4の圧力分布も狙いとする荷重分布を得ることができ、紙しわの発生を確実に防止することができる。
【0081】
また、表面に凹凸28が形成されたパッドシート25を製造する際に、エンボス加工以外に、サンディング加工によって、凹凸28をパッドシート25の表面に形成するように構成してもよい。
【0082】
このサンディング加工は、ポリイミドフィルム30を円筒状に形成した後、当該円筒状に形成されたポリイミドフィルム30の表面に施される。更に説明すると、図12に示すように、円筒状に形成されたポリイミドフィルム30を、サンディング加工を施すための治具である割りフィックスに挿入し、この割りフィックスをサンディング機に装着する。そして、このサンディング機によって、連続紙からなるサンディングペーパーによって研磨することによって、当該円筒状に形成されたポリイミドフィルム30の表面に、所定の大きさの凹凸28を形成する。このポリイミドフィルム30の表面に形成される凹凸28は、サンディングペーパーの粗さを適宜設定することにより、所定の大きさに設定される。
【0083】
パッドシート25の表面に形成される凹凸28の大きさは、例えば、当該パッドシート25の表面粗さに伴ううねり曲線の特性値を表すWC−aの値によって評価される。このWC−a値は、図13に示すように、ろ波中心線うねりと呼ばれるものであり、ろ波中心線うねり曲線から中心線の方向に、測定長さLの部分を抜取り、この抜取り部分の中心線とろ波中心線うねり曲線との偏差の絶対値を算術平均した値をいう。
【0084】
本発明者らは、表面に形成された凹凸28のWC−a値が異なる種々のパッドシート25を試作し、初期的に摺動抵抗の低減効果がどのように異なるかを確認する実験を行った。
【0085】
その際、上記パッドシート25の表面に図14に示すようにサンディング加工を施す際に、当該サンディング加工を施すときの方向性を、図15(a)〜(c)に示すように、プロセス方向研磨、ラテラル方向研磨、及びランダム方向研磨と異ならせて、摺動抵抗の低減効果をそれぞれ評価した。この結果を図16に示す。
【0086】
この図16から明らかなように、パッドシート25の表面に、ラテラル方向に沿って研磨を施した場合には、凹凸28のWC−a値が0.8以上であれば、摺動抵抗の低減効果が非常に高く、摺動抵抗の増加に伴う像ずれの発生を防止することができ、好適であることがわかる。
【0087】
本発明の定着装置において、図1に示す定着装置1に限定されるわけではなく、ベルトニップ方式の定着装置であれば、どのような構成の定着装置であってもよい。例えば、図17に示すような、電磁誘導発熱方式の定着装置も好適に挙げられる。図17に示す定着装置100は、図1に示す定着装置1における加熱定着ロール2の代わりに加圧ロール200、エンドレスベルト3の代わりに金属層を有する加熱定着ベルト(ベルト部材)300を備え、さらに加熱源として金属層を有する加熱定着ベルト300表面周辺に電磁誘導コイル800を備える、IHベルトフューザー(IH−BNF)方式の定着装置である。
【0088】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0089】
(実施例1)
―シート状部材の作製―
厚さ75μmのPIシート(バルク状)表面に、2μmの微細孔を有する多孔質構造のPI層(30μm)を形成した後、このシートを150℃にて80μmの先端が鋭利な凹凸を有する金型でプレスして凸部先端を塑性変形させ、凸部の高さ50μm、ピッチ5mm、WC−aの値2.0μmのエンボス加工を施した。
【0090】
得られたシート状部材の端部を接着し、筒状に形成して、図1に示す定着装置にパッドシート25として装着し、空回しランニングテストを実施した。このテスト中に、摺動抵抗の代用特性として、ベルトの駆動負荷電流値を測定した。その結果、初期:0.5Aで100kpv相当経過後でも0.55Aであった。以上の様に摺動抵抗の上昇はなく、さらに画像像ずれ等の画像欠陥も発生しなかった。
なお、図1に示す定着装置の加熱定着ロール2、エンドレスベルト3としては、それぞれ以下のようにして作製した加熱ロール、加圧ベルトを用いた。
【0091】
−加熱ロールの作製−
チューブ内面に接着用プライマーを塗布した外径50mm、長さ340mm、厚さ30μmのフッ素樹脂チューブと金属製の中空芯金コアを成形金型内にセットし、フッ素樹脂チューブとコア間に液状シリコーンゴム、層厚:3mmを注入後、加熱処理(150℃×2hrs)によりシリコーンゴムを加硫させゴム弾性を有した加熱ロールを作製した。
【0092】
−加圧ベルト−
外径68mm、長さ340mm、厚さ75μmのポリイミド製エンドレスベルトの表面にフッ素樹脂ディスパージョン塗料をディップコートにより塗布後、加熱処理(350℃×1hrs)によりフッ素樹脂を焼き付けることにより加圧ベルトを作製した。
【0093】
(実施例2)
厚さ50μmのPIシート(バルク状)表面に、50μmの微細孔を有する多孔質構造のPI層(100μm)を形成した後、このシートを150℃にて50μmの先端が鋭利な凹凸を有する金型でプレスして凸部先端を塑性変形させ、凸部の高さ20μm、ピッチ6mm、WC−aの値3.0μmのエンボス加工を施した以外は、実施例1と同様してシート状部材を作製し、定着装置に装着して、空回しランニングテストを実施したところ、初期:0.4Aで100kpv相当経過後でも0.45Aであった。以上の様に摺動抵抗の上昇はなく、さらに画像ずれ等の画像欠陥も発生しなかった。
【0094】
(比較例1)
シート状部材として厚さ100μmのPIシート(バルク状)を用いた以外は、実施例1と同様して定着装置の装着し、空回しランニングテストを実施したところ、初期:0.7Aであった電流値が100kpv相当経過後1.8Aに上昇すると同時に画像ずれも発生した。
【0095】
(実施例3)
―シート状部材の作製―
厚さ70μmのPIシート(バルク状)表面に、5μmの微細孔を有する多孔質構造のPI層(30μm)を形成した。
【0096】
得られたシート状部材の端部を接着し、筒状に形成して、図2に示す定着装置にパッドシート25として装着し、空回しランニングテストを実施した。このテスト中に、摺動抵抗の代用特性として、ベルトの駆動負荷電流値を測定した。その結果、初期:0.6Aで100kpv相当経過後でも0.65Aであった。以上の様に摺動抵抗の上昇はなく、さらに画像ずれ等の画像欠陥も発生しなかった。
なお、図2に示す定着装置の加圧ロール200、加熱定着ベルト300としては、それぞれ以下のようにして作製した加圧ロール、加熱ベルトを用いた。
【0097】
−加圧ロール−
チューブ内面に接着用プライマーを塗布した外径50mm、長さ340mm、厚さ30μmのフッ素樹脂チューブと金属製の中空芯金コアを成形金型内にセットし、フッ素樹脂チューブとコア間に液状シリコーンゴム、層厚:2mmを注入後、加熱処理(150℃×2hrs)によりシリコーンゴムを加硫させゴム弾性を有した加圧ロールを作製した。
【0098】
−加熱ベルト−
外径68mm、長さ340mm、厚さ75μmのポリイミド製エンドレスベルトの表面に、金属層として、無電解Cuめっきにより0.3μmの薄膜Cu層を形成後、電解Cuめっきによりトータル8μmのCu層(IH発熱層)を形成した。さらに、その表面にフッ素樹脂ディスパージョン塗料をディップコートにより塗布後、加熱処理(350℃×1hrs)によりフッ素樹脂を焼き付けることにより加熱ベルトを作製した。
【0099】
(実施例4)
厚さ60μmのPIシート(バルク状)表面に、30μmの微細孔を多孔質のPI層(100μm)を形成した以外は、実施例3と同様してシート状部材を作製し、定着装置に装着して、空回しランニングテストを実施したところ、初期:0.55Aで100kpv相当経過後でも0.60Aであった。以上の様に摺動抵抗の上昇はなく、さらに像ずれ等の画像欠陥も発生しなかった。
【0100】
(比較例2)
シート状部材として、厚さ120μmのPIシート(バルク状)を用いた以外は、実施例3と同様にして定着装置に装着し、空回しランニングテストを実施したところ、初期:0.9Aであった電流値が100kpv相当経過後2.5Aに上昇すると同時に画像ずれも発生した。
【0101】
(比較例3)
シート状部材として、厚さ150μmのPFAコートガラス繊維シートを用いた以外は実施例1と同様にして定着装置に装着し、空回しランニングテストを実施したところ、初期:0.8Aであった電流値が100kpv相当経過後3.0Aに上昇すると同時に画像ずれも発生した。
【0102】
(実施例5)
シート状部材として、以下に示すように作製したものを用いた以外は、実施例1と同様にして定着装置に装着し、空回しランニングテストを実施したところ、実施例1と同様な結果が得られた。
【0103】
―シート状部材の作製―
ポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(商品名:Uイミド、(株)ユニチカ製)(ポリイミド前駆体溶液)を用意した。固形分濃度は20%、粘度は約1Pa・sに調整した。
【0104】
基体として、厚さ0.2mmで20×150mmの大きさのガラス板基材を用意し、長手方向を垂直にしてポリイミド前駆体溶液に浸漬し、次いで100mm/minの速度で引き上げて、ポリイミド前駆体塗膜を形成した。
【0105】
その後、ポリイミド前駆体塗膜表面に、貫通孔を多数有する溶剤置換速度調節材(「ユーポアUP2015(宇部興産(株)製)」)を被覆して、水中に浸漬し、1分間放置した。基材を引き上げると、ポリイミド前駆体塗膜表面は、多数の細孔を有した多孔質構造を有していた。
【0106】
表面の水滴を拭き取り、次いで上記基材を乾燥炉に入れた。設定温度は最初が30℃で、1時間後に100℃になるよう、徐々に温度が上昇するようにした。この乾燥後、皮膜は透明化した。更に150℃で20分間、200℃で20分間加熱乾燥させ、N,N−ジメチルアセトアミドと水を完全に除去した。
【0107】
その後、350℃で30分間加熱して熱イミド化処理した。これにより基材上には表面に多孔質構造を有したポリイミド樹脂層が全面に形成された。ポリイミド樹脂層の膜厚は75μmでほぼ均一であった。また、この多孔質構造における細孔の大きさは、2μmであった。
【0108】
(実施例6)
シート状部材として、以下に示すように作製したものを用いた以外は、実施例1と同様にして定着装置に装着し、空回しランニングテストを実施したところ、実施例1と同様な結果が得られた。
【0109】
―シート状部材の作製―
まず、貫通孔を多数有する溶剤置換速度調節材をポリイミド前駆体塗膜に被覆しなかった以外は、実施例5におけるシート状部材の作製と同様にしてポリイミド前駆体塗膜を形成し、これを100℃にて半硬化させた(バルク状のポリイミド樹脂層)。
続いて、ポリイミド前駆体溶液に発泡剤(「セルマイクC−191(三協化成(株)製)」)を添加し、さらに貫通孔を多数有する溶剤置換速度調節材をポリイミド前駆体塗膜に被覆しなかった以外は、実施例5におけるシート状部材の作製と同様にして、上記半硬化されたバルク状のポリイミド樹脂層表面に、ポリイミド前駆体塗膜を形成し、熱イミド処理を行い、バルク状のポリイミド樹脂層と、多孔質のポリイミド樹脂層とを順次積層した。
このようにして、表面に多孔質構造を有するポリイミド樹脂層を形成した。このポリイミド樹脂層の膜厚は0.5μmでほぼ均一であった(バルク状のポリイミド樹脂層0.3μm、多孔質のポリイミド樹脂層0.2μm)。また、この多孔質構造における細孔の大きさは、0.5μmであった。
【0110】
実施例から、ベルトニッブ方式の定着装置において、ベルト部材と圧力付与部材との間に介在させるシート状部材の摺動抵抗を長期にわたって低減することができ、当該シート状部材の磨耗や摺動抵抗等に伴う画像ずれの発生を防止できることがわかる。
【0111】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、ベルトニップ方式の定着装置において、定着ベルトと圧力付与部材との摺動抵抗を長期に渡って低減することができ、さらに画像ずれの発生を防止することが可能な定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の実施の形態に係る定着装置を示す構成図である。
【図2】 図2は、本発明の実施の形態に係る定着装置の要部を示す構成図である。
【図3】 図3は、本発明の実施の形態に係る定着装置のパッドシート(摺動部材)を示す斜視構成図である。
【図4】 図4は、本発明の一実施の形態に係る定着装置のパッドシート(摺動部材)の加工方法を示す説明図である。
【図5】 図5は、エンドレスベルト(ベルト部材)の空回転数とベルト駆動付加電流値との関係を示す構グラフである。
【図6】 図6(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係る定着装置のパッドシート(摺動部材)の加工に使用する型の形状の違いによる加工形状をそれぞれ示す説明図である。
【図7】 図7(a)〜(d)は、本発明の実施の形態に係る定着装置のパッドシート(摺動部材)の製造工程をそれぞれ示す説明図である。
【図8】 図8は、本発明の実施の形態に係る定着装置のパッドシート(摺動部材)のエンボス加工を示す説明図である。
【図9】 図9は、パッドシート(摺動部材)のエンボス加工に使用する型を示す構成図である。
【図10】 図10(a)、(b)は、エンボス加工時のパッドシート(摺動部材)の加熱処理の有無によるパッドシート(摺動部材)の形状等をそれぞれ示す説明図である。
【図11】 図11(a),(b)は、エンボス加工時のパッドシート(摺動部材)の加熱処理の有無によるパッドシートの荷重部分布をそれぞれ示す説明図である。
【図12】 図12は、本発明の実施の形態に係る定着装置のパッドシート(摺動部材)のサンディング加工を示す説明図である。
【図13】 図13は、パッドシート(摺動部材)表面の凹凸を評価するパラメータを示す説明図である。
【図14】 図14は、本発明の実施の形態に係る定着装置のサンディング加工されたパッドシート(摺動部材)を示す説明図である。
【図15】 図15(a)〜(c)はサンディング加工の方向性をそれぞれ示す説明図である。
【図16】 図16は、サンディング加工の方向性によるパッドシート表面の凹凸を示すパラメータとベルト駆動負荷電流値との関係を示すグラフである。
【図17】 図17は、本発明の他の実施の形態に係る定着装置を示す構成図である。
【符号の説明】
1 定着装置
2 加熱定着ロール(ロール部材)
3 エンドレスベルト(ベルト部材)
4 パッド部材(圧力付与部材)
8 ハロゲンランプ(加熱源)
25 パッドシート(摺動部材)
Claims (9)
- ロール部材と、
外周面が前記ロール部材に当接され、トナー像を担持した記録媒体が前記ロール部材との間に挟み込まれるニップ部を形成するベルト部材と、
前記ロール部材及び前記ベルト部材の少なくとも一方を加熱する加熱源と、
前記ベルト部材の内側に当接され、前記ロール部材の表面に沿って前記ベルト部材を押圧する圧力付与部材と、
前記ベルト部材と前記圧力付与部材との間に介在され、少なくとも前記ベルト部材と当接する表面に多孔質構造を有する摺動部材と、
前記ベルト部材と前記摺動部材との間に介在される潤滑油と、
を有し、
前記摺動部材は、前記多孔質構造を非貫通で有することを特徴とする定着装置。 - 前記摺動部材が、シート状部材であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
- 前記摺動部材における細孔の大きさが、0.01μm〜100μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
- 前記摺動部材が、ポリイミド樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の定着装置。
- 前記摺動部材が、表面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の定着装置。
- 前記摺動部材における凹凸は、WC−aの値が0.8μm以上であることを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
- 前記摺動部材における凹凸は、先端が鋭利なものを押圧し、凸部先端を塑性変形させて形成されてなることを特徴とする請求項5又は6に記載の定着装置。
- 前記摺動部材における凹凸の凸部が、高さ10μm以上であることを特徴とする請求項5〜6のいずれかに記載の定着装置。
- 前記摺動部材は、バルク状の樹脂層と、前記バルク状の樹脂層上に形成された多孔質の樹脂層と、を含んで構成されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の定着装置。
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