JP2010164808A - 画像加熱装置、及び低摩擦シートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久寿命の末期まで、急激な摩擦抵抗の増加を発生しない低摩擦シートを備えて、摩擦抵抗の急激な増加に伴う様々な不都合を解消した画像加熱装置を提供する。
【解決手段】加圧機構100の加圧パッド26における加圧ベルト20対向面と分離ローラ22対向面とを低摩擦シート27で一体に覆う。低摩擦シート27はエンボス型を用いて多数の凸部が密集形成されている。多数の凸部には、高さの中心値が150μMの凸部と高さの中心値が130μMの凸部とが千鳥配置されている。高さの中心値が150μMの凸部のフッ素樹脂の表層が摩耗してポリイミドフィルムの基層が露出する前に高さの中心値が130μmの凸部が加圧ベルト20に接触し始める。
【選択図】図4

Description

本発明は、回転体にベルト部材を圧接して記録材の加熱ニップを形成する画像加熱装置、詳しくはベルト部材の内側面を押圧する加圧パッドのベルト部材対向面に配置される低摩擦シートに関する。
回転体(ローラ部材又はベルト部材)にベルト部材を圧接して、ローラ部材とローラ部材とを圧接する場合よりも搬送方向に長い加熱ニップを形成する画像加熱装置が広く用いられている。画像加熱装置は、トナー像を担持した記録材を加熱加圧してトナー像を記録材に定着させる定着装置と、半定着又は定着済み画像が形成された記録材を加熱加圧して画像面の光沢度を調整する光沢処理装置とを含む。
特許文献1には、一対の支持回転体(加圧ローラ、入口ローラ)に掛け渡したベルト部材と定着ローラとの間にトナー像の定着ニップが形成される定着装置が示される。ここでは、ベルト部材と加圧ローラの当接部に向かって突き出してベルト部材の内側面と加圧ローラとを押圧するように弾性材料の加圧パッドが配置され、加圧パッドの摺擦面が低摩擦シートに覆われている。
特許文献2には、樹脂シート材料をプレス成型してベルト部材との接触面に四角錐状の凸部を密に形成する方法が示される。
特許文献3には、プレス成型して四角錐状の凸部を形成したポリイミドシートの表面にフッ素樹脂材料をコーティングして低摩擦係数の表層を形成する方法が示される。
特開平10−319772号公報 特開2002−148970号公報 特開2004−37552号公報
特許文献2、3に示されるように、プレス成型して四角錐状の凸部を形成したポリイミドシートの表面にフッ素樹脂材料をコーティングした低摩擦シートは、耐久寿命の途中で急激に摩擦抵抗が増大することが判明した(図15参照)。
このため、特許文献1、2に示される定着ローラを回転駆動してベルト部材を従動回転させる定着装置で使用した場合、低摩擦シートがベルト部材の回転を妨げて正常な起動や記録材搬送ができなくなる。
そして、急激に摩擦抵抗が増大した低摩擦シートを顕微鏡観察したところ、凸部の先端部分でフッ素樹脂材料が摩耗して消滅し、ポリイミドシートの基層がベルト部材の内側面に直接摺擦する状況となっていた。
本発明は、耐久寿命の末期まで、急激な摩擦抵抗の増加を発生しない低摩擦シートを備えて、摩擦抵抗の急激な増加に伴う様々な不都合を解消した画像加熱装置を提供することを目的としている。
本発明の画像加熱装置は、回転体と、複数の支持回転体に掛け渡して支持され、前記回転体との間に記録材の加熱ニップを形成する無端状のベルト部材と、前記ベルト部材の内側面を前記回転体に向かって面状に押圧する押圧部材と、前記内側面に摺擦するように前記押圧部材に配置され、摺擦面に多数の凸部が成型された低摩擦シートとを備えたものである。そして、前記低摩擦シートは、強度を担う基層の上に低摩擦を担う表層を形成した樹脂シート材料で形成され、高さの中心値が複数段階に異なる凸部を混在させて前記多数の凸部としている。
本発明の画像加熱装置では、高さの中心値が高い順番で凸部の表層が摩耗するため、耐久寿命の途中で多数の凸部が一斉に表層を喪失して摩擦係数の高い基層でベルト部材の内側面を摺擦し始めることが無い。
従って、耐久寿命の末期まで、低摩擦シートの急激な摩擦抵抗の増加が発生せず、摩擦抵抗の急激な増加に伴う、例えばジャム、起動障害、搬送不良に伴う画像不良と言った様々な不都合が解消される。
以下、本発明のいくつかの実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、押圧部材のベルト部材対向面に配置された低摩擦シートに高さの異なる凸部が混在している限りにおいて、各実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
実施形態の定着装置は、図1のモノクロ画像形成装置のみならず、各色トナー像を重ね合わせるフルカラー画像形成装置にも搭載でき、直接転写方式のみならず中間転写方式でも実施できる。
本発明は、図1の定着装置のみならず、トナー像が一度定着された記録材を加熱加圧して所定の表面光沢度に仕上げる加熱仕上げ装置等でも実施できる。
なお、特許文献1〜3に示される画像形成装置、定着装置に関する一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。
図1に示すように、画像形成装置120は、感光ドラム121にトナー像を形成して記録材Pに転写した後に、記録材Pを定着装置1へ送り込んで加熱・加圧することにより、記録材Pの表面にトナー像を定着させる。
感光ドラム121を囲んで、帯電ローラ122、露光装置123、現像装置124、転写ローラ125、クリーニング装置126が配設されている。
帯電ローラ122は、不図示の帯電電源から負極性の直流電圧に交流電圧を重畳した帯電電圧を印加されて、感光体ドラム121の表面を一様な負極性の電位に帯電させる。
露光装置123は、画像データを展開した画像信号に応じてON−OFF変調されたレーザービームを走査して、感光ドラム121の表面に画像の静電像を書き込む。
現像装置124は、負極性に帯電させたトナーを感光ドラム121に供給して静電像の露光部に付着させることにより、静電像をトナー像に反転現像する。
記録材Pは、記録材カセット133から分離ローラ132を用いて1枚ずつ取り出されてレジストローラ135で待機し、レジストローラ135によって、感光ドラム121と転写ローラ125の転写ニップT1へ給送される。そして、感光ドラム121に担持されたトナー像に重ねて転写ニップT1を挟持搬送される過程で、不図示の転写電源から転写ローラ125に正極性の電圧が印加されることにより、感光ドラム121から記録材Pへトナー像が転写される。
クリーニング装置126は、感光ドラム121にクリーニングブレード127を摺擦させて、トナー像転写後の感光ドラム121に残留した転写残トナーを除去する。
一方、トナー像が転写された記録材Pは、定着装置1へ受け渡されて、定着ニップNを加熱・加圧状態で挟持搬送されることにより、粉体状のトナー像が融解加圧され、永久画像として記録材Pの表面に定着される。その後、表面にトナー像が定着された記録材Pは、排出ローラ136を通じて筐体外部に排出される。
<画像加熱装置>
図2は定着装置の構成の説明図、図3は加圧ベルトの加圧機構の説明図、図4は加圧機構周辺の拡大図である。
図2に示すように、定着装置1は、回転自在に配設された定着ローラ10に加圧ベルト20を圧接して記録材の定着ニップWを形成する。定着ローラ10の内部には、ハロゲンランプヒータ113が配設されている。
定着ローラ10には、サーミスタ114が接触状態で配設される。温度調整回路115は、サーミスタ114の出力に応じてハロゲンランプヒータ113への印加電圧を調整することによって定着ローラ10の温度調節を行っている。
ベルトユニット2は、可撓性のエンドレスベルトである加圧ベルト20を、支持回転体の一例である入口ローラ21、分離ローラ22、及びテンションローラ23に掛け渡して支持する。入口ローラ21と分離ローラ22との間隔で、加圧ベルト20は、内側から加圧機構100によって定着ローラ10に押し付けられている。
分離ローラ22と加圧機構100とが加圧ベルト20を介して定着ローラ10に向かって圧接されることで、定着ローラ10と加圧ベルト20との接触部である定着ニップWが加圧ベルト20の回転方向に連続して長く形成される。
定着ローラ10は、芯金10a上に、弾性材料としてシリコンゴムを用いた弾性層10bが配置され、弾性層10bの上に、フッ素樹脂材料チューブの離形層10cが配置されて、外径がφ40mmである。
加圧ベルト20は、厚み100μmのポリイミド樹脂の基層を有するシームレスの無端ベルトに形成されている。加圧ベルト20の基層上には厚さ0.2mmのシリコンゴム層が被覆されている。
加圧ベルト20は、モータ109によって回転駆動される定着ローラ10に圧接して従動回転する。入口ローラ21、分離ローラ22、テンションローラ23は、加圧ベルト20の回転に伴って従動回転する。
ただし、分離ローラ22は、ワンウエイクラッチを介してモータ109のギア列から駆動されることによって、加圧ベルト20の回転速度よりも低い回転速度で回転するようにギア比を設定されている。このため、定着ローラ10からベルトユニット2を退避させた状態でモータ109を作動させると、加圧ベルト20は、定着ローラ10よりも低い周速度で回転する。
入口ローラ21の中心には、加圧ベルト20を加熱するためのハロゲンランプヒータ116が配置されている。テンションローラ23は、加圧ベルト20に所定の張力を与えるように外側へ向かってバネ付勢されている。分離ローラ22は、加熱ニップの一例である定着ニップWの最下流位置で加圧ベルト20の内側面を定着ローラ10に向かって押圧する。
入口ローラ21と分離ローラ22との間には、加圧ベルト20の内側面を定着ローラ10に向かって面状に押圧して定着ニップWを形成する加圧機構100が配置されている。入口ローラ21と加圧機構100との間には、シリコンオイルを含浸させたフェルト材料で形成されたオイル塗布ローラ28が設けられる。オイル塗布ローラ28は、加圧ベルト20の内側面に圧接して従動回転しつつ、潤滑材としてのシリコンオイルを加圧ベルト20の内側面に一定量塗布する。これにより、加圧機構100の表面に配置された低摩擦シート27が摺擦する際の摩擦力を低減し、低摩擦シート27の耐久性を向上させている。
<接離機構>
図3に示すように、定着装置1は、接離機構(61)によって、ベルトユニット2の全体を昇降させて、定着ローラ10に対して加圧ベルト20を圧接及び離間させることにより、定着ニップWの形成及び解除が可能である。図3中、(a)は、定着ローラ10に加圧ベルト20が加圧されている状態を示し、(b)は、定着ローラ10から加圧ベルト20が離間されている状態を示す。
図3の(a)に示すように、モータ108に駆動されて加圧カム61が回動軸60を中心に回転し、加圧カム61の長径が頂上に位置する状態にすると、受部59が上方に押し上げられる。これにより、回動軸54を中心にして加圧ホルダ53が矢印V方向に回転し、加圧ホルダ53に一端が固定されたローラ加圧バネ57を介して分離ローラ22が定着ローラ10に加圧力SFで加圧される。同時に、加圧ホルダ53に一端が固定されたパッド加圧バネ58を介してパッド加圧ホルダ52が回動軸54を中心に回動し、パッド加圧ホルダ52に固定された加圧機構100が定着ローラ10に加圧力PFで加圧される。
この状態で矢印G方向に定着ローラ10を回転させると、定着ベルト20が定着ローラ10に従動回転して矢印G方向に回転し、定着ベルト20に従動回転して分離ローラ22も矢印G方向に回転する。
その後、記録材が矢印H方向から搬送されて定着ローラ10と定着ベルト20の定着ニップWに狭持される。記録材に担持されたトナー像は、定着ローラ10及び加圧ベルト20の熱で溶融され、加圧機構100の圧で記録材に押し付けられて定着する。このとき、オイル塗布ローラ28は加圧ベルト20の内面と接触状態になっている。
図3の(b)に示すように、モータ108に駆動されて加圧カム61が回動軸60を中心に回転し、加圧カム61の短径が頂上に位置する状態にすると、受部59が下方に下げられる。これにより、回動軸54を中心にして加圧ホルダ53が矢印W方向に回転してローラ加圧バネ57の付勢力が付加されなくなり、ローラ加圧ホルダ51が回動軸54を中心に回動して分離ローラ22が定着ローラ10から離間する。同時に、パッド加圧バネ58の付勢力が付加されなくなり、パッド加圧ホルダ752が回動軸54を中心に回動して加圧機構100が定着ローラ10から離間する。このとき、オイル塗布ローラ28は加圧ベルト20の内面と非接触状態になっている。
図4に示すように、分離ローラ22は、加圧ベルト20を介して定着ローラ10に向けて加圧されているため、定着ローラ10の弾性層10bは、分離ローラ22の円筒面の形に変形して、弾性層10bの円弧形状が反対方向になる。分離ローラ22は、ローラ加圧バネ(57:図3)によって、定着ローラ10の回転軸に向かって加圧されて、定着ローラ10の弾性層10bに加圧ベルト20を食い込ませる。その結果、定着ローラ10の弾性層10bが加圧変形されている部分の最下流に、記録材を定着ローラ10の表面から効率的に曲率分離させる、小さな曲率半径の分離面が形成される。
記録材上のトナー像は、定着装置の定着ニップWで溶融、加圧されるため、トナーと定着ローラ10は貼り付く傾向となる。しかし、定着ローラ10の弾性層10bの円弧形状が分離ローラ22によって反対方向になっているため、定着ローラ10に貼り付いた記録材は、加圧ベルト20側へ突き出すように剥離されて矢印Y方向に排出される。
<加圧機構>
図5は定着ニップの記録材搬送方向における圧力分布の説明図、図6は定着装置の起動時の温度推移の説明図である。
図4に示すように、加圧機構100は、ステンレスで形成された加圧ベース25の上にシリコンゴムで形成された加圧パッド26を固定してある。加圧パッド26は、ゴム硬度Hsが30°のシリコンゴムからなり、加圧ベルト20の移動方向に向かって徐々に厚みが拡大するように成形されている。加圧パッド26の表面は、加圧ベルト20との摺動抵抗を低減するため、低摩擦シート27で被覆されている。
加圧ベルト20と定着ローラ10とは、加圧パッド26から分離ローラ22までの長い定着ニップWを形成している。これにより、従来の定着ローラに加圧ローラを圧接させたローラ定着装置よりも長い定着ニップが得られるため、記録材上のトナー像を短時間で良好に溶融することが可能になる。従って、フルカラープリンタのような多量のトナーを使用する画像形成装置にも適している。
本実施形態では、加圧機構100に総圧558N(60kgf)の加圧を行わせ、分離ローラ22に総圧392N(40kgf)の加圧を行わせることで、総圧980N(100kgf)の定着ニップWを構成した。
図4を参照して図5に示すように、定着ニップWにおける加圧機構100による上流側のピーク圧は、分離ローラ22による下流側のピーク圧よりも低くなるように設定されている。
柔軟なシリコンゴムで形成された加圧パッド26は、低摩擦シート27を介して分離ローラ22と定着ローラ10とに押圧されて弾性変形する。加圧パッド26は、低摩擦シート27とともに、加圧パッド26と加圧ベルト20と分離ローラ22との間に形成される隙間を埋め合わせて、加圧ベルト20に対する押圧力を確保する。これにより、定着ニップWにおける加圧ベルト20の回転方向における局所的なニップ圧の落ち込みを減少させている。
加圧パッド26の端部には、加圧パッド26と一体構成にして金属ワイヤ26aが設けられている。金属ワイヤ26aによっても、定着ニップWにおける加圧ベルト20の回転方向における局所的なニップ圧の落ち込みを減少させている。
図6は、定着装置1が室温からスタンバイ状態まで起動される過程における定着ローラ10及び加圧ベルト20の温度推移を示している。
図2を参照して図6に示すように、定着装置1を立ち上げる温度制御に伴って、内部に熱源を有する定着ローラ10に対して、定着ベルト20を含むベルトユニット2が当接−退避−当接と切り替えられる。
制御部110は、定着装置1が起動されると(step1:図6、以下同じ)、定着ローラ10と加圧ベルト20とを回転しない状態で当接状態にして、定着ローラ10の内部のハロゲンランプヒータ113に対する通電を開始する。
制御部110は、定着ローラ10の表面温度が80℃に達すると、定着ローラ10の回転を開始させる(step2)。すると、加圧ベルト20が従動回転して定着ローラ10から加圧ベルト20の一周全体に熱を供給するので、定着ローラ10の表面温度が一次的に低下する。
制御部110は、次に、定着ローラ10の表面温度が110℃に達すると、ベルトユニット2を退避状態にして定着ローラ10から加圧ベルト20を離間させる(step3)。従動回転が解除されても、上述した分離ローラ22のワンウエイクラッチ機構によって加圧ベルト20は回転し続ける。
定着ローラ10は、内部のハロゲンランプヒータ113からの熱供給によって、表面温度が170±2℃になるように温度制御される(step4)。ベルトユニット2は、加圧ベルト20が回転し続けている状態で入口ローラ21の内部のハロゲンランプヒータ116によって、加圧ベルト20の表面温度が120℃になるように温度制御される。
定着ローラ10及び加圧ベルト20が設定温度に達すると(step4)、立ち上げ完了となり、いつでもプリントジョブを開始できるスタンバイ状態に移行する。
制御部110は、スタンバイ状態でプリントジョブ信号を受け付けると、トナー像を形成する動作を開始する。制御部110は、離間状態でそれぞれ回転している定着ローラ10及びベルトユニット2を当接状態にして、未定着トナー像を転写した記録材を定着ニップWへ送り込んで定着動作を終了させる。
制御部110は、定着動作が終了すると、定着ローラ10からベルトユニット2を退避させて、スタンバイ状態に復帰させる。
図2に示すように、画像形成装置の高速化に対応するために、定着装置1においても、定着ローラの回転速度を上げたり、加圧力を上げたりする必要が出てきている。同時に、さらなる長寿命化への要望も強まっている。
ところが、定着装置1において加圧力を上げると、加圧パッド26と加圧ベルト20との間の摩擦抵抗を低減するために配置されている低摩擦シート27の摩耗が激しくなり、耐久性を満たさなくなってしまう。また、同程度の加圧力であったとしても、定着ローラ10の回転速度を上げた場合、やはり低摩擦シート27の摩耗が早まることになる。
ガラス繊維製のシートの表面に数10μmの厚さでフッ素樹脂をコーディングした従来の低摩擦シート27の場合、加圧力が高くなってくると、表面のコーティング層がはがれてしまう。その結果、硬いガラス繊維面と加圧ベルト20が直接接触するようになり、急激に接触抵抗が上昇して加圧ベルト20の走行が不安定になる。その結果、像ズレ等の画像欠陥や、スリップ等の搬送障害が弊害として発生する。
<低摩擦シート>
図7は低摩擦シートの構成の説明図である。
図4を参照して図7に示すように、低摩擦シート27は、3つの折り山を形成して加圧ベルト20の内側面を押圧する加圧パッド26の外周面を覆うように配置される。低摩擦シート27の両端は、配列した取り付け孔27aにネジ25aを挿入して加圧ベース25に固定される。
低摩擦シート27は、強度を担う基層の上に低摩擦を担う表層を形成した幅400mm、長さ40mm、厚さ100μmの樹脂シート材料で形成される。低摩擦シート27は、押圧部材の一例である加圧パッド26の加圧ベルト20対向面と分離ローラ22対向面とを一体に覆って配置される。低摩擦シート27の加圧ベルト摺擦領域27bと分離ローラ摺擦領域27cには、摺擦面積を減らして静止摩擦及び動摩擦を軽減するために、四角錐型の多数の凸部が成型されている。
図3の(b)に示すように、定着ローラ10からベルトユニット2を退避させた状態では、低摩擦シート27は、加圧ベルト摺擦領域27bが加圧ベルト20に接触しない状態に維持される。
図3の(a)に示すように、定着ローラ10にベルトユニット2を圧接させた状態では、加圧ベルト摺擦領域27bが加圧ベルト20の内側面に強く押し付けられる。このとき、低摩擦シート27は、加圧ベルト20の内側面と加圧パッド26の摺動抵抗を軽減しており、定着ニップWが形成されて加圧ベルト20が回転している場合に効果を発揮する。
図4に示すように、低摩擦シート27とは別に、加圧ベルト20の内側面にシリコンオイルを塗布することによって、摺動抵抗をさらに軽減している。ただし、シリコンオイルは、定着装置の初期状態から十分に塗布されているものではない。定着装置が立ち上がった後に、ベルトユニット2からはみ出さない程度の量の塗布を初期に行い、続いてオイル塗布ローラ28からの継続的な塗布によって加圧ベルト20の内側面に十分に塗布される。
以上より、低摩擦シート27が作用するのは、定着装置の起動過程及び定着動作時である。両者において、加圧ベルト20と加圧パッド26の摺動抵抗を減らしながら、弊害を伴わないこと、及び長時間にわたって使用することが要求される。特に立ち上げ過程においては、初期の加圧ベルト20の内側面にシリコンオイルが十分に行き渡っていない場合においても、低摩擦シート27の作用が要求される。
以下の実施例では、定着装置の初期及びそれ以降の立ち上げ過程及び定着動作時の両状態において、低摩擦シート27が加圧ベルト20と加圧パッド26との摺動抵抗を減らす。そして、摩耗に伴う摺動抵抗の急激な増加を伴わない、長時間にわたって使用可能な低摩擦シート27の構成を説明する。
<実施例1>
図8は実施例1の低摩擦シートの凸部の配置の説明図、図9は凸部の高さ分布の説明図、図10は凸部の構成の説明図、図11は低摩擦シートの製造方法の説明図である。
図4に示すように、低摩擦シート27は、加圧パッド26が加圧ローラ(22)を押圧する面とベルト部材(20)を押圧する面とを一体に覆って配置される。
図7に示すように、ベルト部材(20)と加圧ローラ(22)との当接部に向かう低摩擦シート27の二つ折りされた部分には凸部(27H、27L:図8)が配置されない。
図8に示すように、実施例1の低摩擦シート27には、高さの中心値が複数段階に異なる凸部を混在させて多数の凸部を構成している。具体的には、高さの中心値が150μm(第1高さ)の凸部27Hと高さの中心値が130μmの凸部27Lとが摺擦方向に対して45度の傾きでそれぞれ配列している。凸部27Hと凸部27Hとの配置関係は千鳥配置になっていて、凸部27Lは、進行方向及び長手方向から見て間になるように、凸部27Hの対角線上の中間位置に配置される。凸部27Hの中心位置で見たピッチ間隔は、進行方向及び長手方向ともに2mmとし、凸部27H、27Lの大きさは、いずれも500μm四方とした。
なお、高さの中心値とは、摺擦・摩耗する領域にある多数の凸部の未使用状態におけるそれぞれの高さを測定したとき、高さ範囲の連続的な刻みごとの凸部の個数で高さ分布を定義し、その高さ分布のピーク位置に相当する凸部の高さである。
図9に示すように、多数の凸部27H、27Lの高さの度数分布における2つのピークが同一高さ同一形状である。凸部27H、27Lの高さは、超深度形状測定顕微鏡VK8500(キーエンス社製)にて測定した。測定範囲は、20mm×50mm四方で、その中での凹凸高さ情報の度数分布を算出した。
低摩擦シート27は、凸部27H、27Lの高さの度数分布は、高い側と低い側で2つのピークを持つ。高さの度数分布における高い側のピークの中心値H1が150μm、低い側のピークの中心値H2が130μmである。2つのピークの最大度数に相当する凸部の高さの差20μmは、表層(27f:図10)の厚さ30μmよりも小さい。
なお、凸部27H、27Lは、後述するエンボス加工によって成型されていて、高さは、エンボス加工が施されていない平坦部から、凸部27H、27Lの先端までの高低差の測定値である。
高さの度数分布は、高い側の中心値H1と、低い側の中心値H2の2つのピークを持つが、このとき(H1+H2)/2の高さの度数分布は、母数全体の10%以下であることが望ましい。母数全体の0%であればさらに好ましい。(H1+H2)/2の高さの度数分布が低いほど、凸部27Hの摩耗に伴う凸部27Lの摺擦開始時期が揃って実施例の効果が顕著になるからである。
これに対して、(H1+H2)/2の高さの度数分布が高い場合は、凸部27H、27Lの高さがそれぞれ大きくばらついている。このため、それぞれの凸部27H、27Lにおける接触面積の増加率、あるいは、摺動抵抗の増加率がばらついて、実施例の効果がばらついてしまう。
第1高さの凸部27Hの度数分布におけるピーク半値幅は0.1×H1以下であることが好ましい。同様に、第2高さの凸部27Lの度数分布におけるピーク半値幅は0.1×H2以下であることが望ましい。ピーク半値幅が大きい場合は、(H1+H2)/2の高さの度数分布が高い場合と同様に、実施例の効果がばらつくためである。
図10に示すように、低摩擦シート27は、強度を担う基層27eの上に低摩擦を担う表層27fを形成した樹脂シート材料である。耐熱性および耐摩耗性を有する厚さ100μmのポリイミドフィルムを基層27eとし、低摺動性を有するフッ素樹脂材料を厚さ30μmにコーティングして表層27fとした。
基層27eを形成する材料は、耐熱性、耐摩耗性を有する材料が好ましく、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズオキサゾール(PBO)等も利用できる。表層27fを形成する材料は、耐熱性、低摺動性を有するポリエーテルエーテルケトン(Peek)等も利用できる。
凸部27H、27Lは、先端ほど断面積が小さくなる四角錐の形状で高さの中心値を二段階に異ならせた凸部を成型されている。凸部27Hと凸部27Lとの高さの差は、表層(27f)の厚さよりも小さい。凸部27H、27Lは、シート材料の表面にエンボス加工を施すことによって形成される。所定の大きさの凹凸を有するエンボス加工用のエンボス型を用いて、加圧エンボス加工を施すことにより、低摩擦シート27の表面に凹凸を形成する。
凸部27H、27Lの高さの差は、高さの異なる二種類のエンボス型を用いて成型することで設定される。しかし、同一のエンボス型で2回の成型を行い、各回の成型における加圧力を二種類に異ならせたり、加圧時間を二種類に異ならせたりしても設定可能である。
図11の(a)に示すように、第1工程では、第1高さの凸部を成型するための第1型E1を用いて基層(27f)の樹脂シート材料に凸部を成型する。
図11の(b)に示すように、第2工程では、第2高さの凸部を成型するための第2型E2を用いて、第1工程で形成された凸部29Hと位置をずらせて凸部を成型する。
図11の(c)に示すように、第3工程では、第1高さ及び第2高さの凸部27H、27Lが形成された基層面にフッ素樹(PTFE)をスプレーコーティングして表層27fを形成する。その後、熱処理を行って、表層27fを基層27eに対して強固に接合する。
実施例1では、低摩擦シート27と加圧ベルト20の摺動抵抗を低くするために、図10に示すように、低摩擦シート27にフッ素樹脂材料の表層27fを設けている。表層27fの厚みをDとしたとき、中心値H1、H2と厚みDの関係は以下であることが望ましい。
H2>H1−D
第1高さの凸部27Hのコーティング層が摩耗消滅する前に、第2高さの凸部27Lが加圧ベルト20の内側面に接触するので、実施例1の効果を発揮できるからである。
実施例1では、凸部27H、27Lを以下のように形成した。
H1=150μm
H2=130μm
D=30μm
((H1+H2)/2の度数)=母数の5%
第1高さの凸部27Hのピーク半値幅=10μm
第2高さの凸部27Lのピーク半値幅=10μm
実施例1は、このように凸部27H、27Lを形成することで、定着装置1の立ち上げ過程及び定着動作時の両状態において、低摩擦シート27が加圧ベルト20と加圧パッド26との摺動抵抗を減らす。低摩擦シート27の摩耗による弊害を伴わない、長時間にわたって使用することが可能な定着装置1を実現できた。
なお、実施例1では、図8に示す配置による効果を示すが、配置の仕方は図8に示す配置には限定されない。実施例1では、第2高さの凸部27Lは、第1高さの凸部27Hの対角線上の中間位置に配置されているので、加圧ベルト20との接触安定性から最も好ましい。しかし、凸部27Lの配置は、凸部27Hの対角線上の中間位置のみには限定されず、凸部27Hの間であれば、定着装置1の立ち上げ過程及び定着動作時の両状態において必要な効果が得られる。
また、実施例1では、低摩擦シート27は、摩耗初期の定着装置1の立ち上げ過程で、相対的に高い第1高さの凸部27Hのみに加圧ベルト20が接触するものとして説明した。しかし、加圧ベルト20の厚みや加圧力等の条件によっては、定着装置1の初期立ち上げ時において、第2高さの凸部27Lにも接触する場合がある。しかし、このとき、凸部27Lでは、凸部27Hに比較して十分に負荷が低いため、実施例1の効果が十分発揮される。
<比較例1>
図12は比較例1の低摩擦シートにおける凸部の配置の説明図である。
図12に示すように、比較例1の低摩擦シート27Xの材料、コーティング仕様、形成方法等は、実施例1と同様である。
比較例1の低摩擦シート27Xの表面に形成された多数の凸部は、1種類の高さ150μmの凸部27Hでのみ構成される。そして、凸部27Hの中心位置のピッチ間隔は、進行方向及び長手方向ともに2mmであり、凸部27Hの大きさは500μm四方である。
比較例1の低摩擦シート27Xを用いると、定着装置の立ち上げ過程及び定着動作時において、加圧ベルト20と加圧パッド26との摺動抵抗を減らすことが可能だが、実施例1の低摩擦シート27よりも短い時間しか使用できない。
<比較例2>
図13は比較例2の低摩擦シートにおける凸部の配置の説明図である。
図13に示すように、比較例2の低摩擦シート27Yの材料、コーティング仕様、形成方法等は、実施例1と同様である。
比較例2の低摩擦シート27Yの表面に形成された多数の凸部は、1種類の高さ150μmの凸部27Hでのみ構成され、凸部27Hの配置の仕方は、実施例1の凸部27H、27Lと同様である。すなわち、等しい高さの凸部27H、27Lが、凸部27Hの対角線上の中間位置に凸部27Lを配置するように配列されている。
比較例2の低摩擦シート27Yを用いると、加圧ベルト20と加圧パッド26の定着動作時の摺動抵抗を減らすことが可能で、長時間使用可能である。しかし、定着装置1の立ち上げ過程において、回転トルクが大きくなってしまう。
低摩擦シート27Yの凸部を多くして、接触面積を増やすことによって、耐久性を確保することができる。接触面積が増えたことによって、凸部の1つ当たりの負荷が軽減して耐久性が向上する。しかし、同時に、低摩擦シート27Yと加圧ベルト20との摺動抵抗が増えて、加圧ベルト20が定着ローラ10に対してスリップして画像障害を引き起し易くなる。特に、低温環境での起動時には、加圧ベルト20の内側面に塗布したシリコンオイルの粘性が下がって摺動抵抗が増大してスリップが発生する。
初期状態の定着装置1の立ち上げ時には、シリコンオイルが加圧ベルト20の内側面の全領域に十分に行き渡っていないため、加圧ベルト20のの摺動抵抗が増加して搬送障害を引き起こしてしまう。
<実施例1と比較例1、2との性能比較>
図14は定着装置の立ち上げ過程における回転トルクの比較の説明図、図15は耐久寿命における立ち上げ過程の回転トルクの変化の説明図である。
実施例1、比較例1、比較例2の低摩擦シート27、27X、27Yを、図1に示す定着装置1で用いたときの検証結果を説明する。
図2に示すように、低摩擦シート27(27X、27Y)を用いて定着装置1の初期の立ち上げ時の駆動トルク測定、及びそのときの加圧ベルト20の走行性について検証した。また、定着装置1を長期間回転させて低摩擦シート27(27X、27Y)に摩耗を進行させて、定着装置1の立ち上げ時における定着ローラ10の駆動トルクの推移、及び、そのときの加圧ベルト20の走行性について検証した。
図14に示すように、新品状態で比較すると、実施例1の低摩擦シート27及び比較例1の低摩擦シート27Xは、比較例2の低摩擦シート27Yに比較して定着装置1の立ち上げ時(初期)の駆動トルクが少ない。比較例2の低摩擦シート27Yは、加圧ベルト20に対する摺動抵抗が大きいため、定着ローラ10の回転に必要な駆動トルクが高くなり、ベルトの走行性が不安定になる。あるいは、シリコンオイルの潤滑性を期待できない極低温環境での起動時に、定着ローラ10の回転がロックして起動できなくなる現象が発生する。
図15に示すように、新品状態では実施例1の低摩擦シート27並みに立ち上げ時の駆動トルクが少なくて済んだ比較例1の低摩擦シート27Xは、耐久寿命の途中で急に定着運転中の駆動トルクが増大する。駆動トルクが突然増大した以降においては、比較例1の低摩擦シート27Xは、定着装置1の起動時に、定着ローラ10の回転がロックして起動できなくなる現象が発生する。
図3の(b)に示すように、定着装置1の立ち上げ時、定着ローラ10とベルトユニット2は、回転しない状態で当接状態に移行するため、図14に示すように、定着ローラ10が回転開始するまで駆動トルクは発生しない。
図3の(a)に示すように、定着ローラ10にベルトユニット2を圧接して定着ローラ10を回転開始すると、図14に示すように、急激に定着ローラ10のトルクが上昇する。
このとき、定着ローラ10の温度は上昇しているが、定着ローラ10が回転していないためにベルトユニット2全体には熱供給を行っておらず、ベルトユニット2自体は温度が低い状態である。このため、摺動性を上げるためのシリコンオイルを塗布していた場合でもシリコンオイルの粘性が下がっておらず、定着ローラ10の起動に大きなトルクを要する。
ここで、ベルト内面に十分にオイルが行き渡っている状態であれば、比較例2の低摩擦シート27Yでも、駆動トルクの上昇を定着ローラ10の駆動を停止させない程度に低く抑えることができる。しかし、加圧ベルト20の内側面に十分にシリコンオイルが行き渡っていない状態だと、比較例2の低摩擦シート27では、定着ローラ10の回転をストップさせてしまうレベルに駆動トルクが達することもある。
一方、加圧ベルト20の内側面にシリコンオイルが行き渡っていない状態でも、実施例1及び比較例1の低摩擦シート27、27Xであれば、加圧ベルト20との接触面積が小さいため、加圧ベルト20の摺動抵抗が小さい。このため、定着ローラ10の駆動トルクは低く抑えられ、加圧ベルト20の走行性は安定した状態に保たれる。
比較例2の低摩擦シート27Yの場合、加圧ベルト20との接触面積が実施例1及び比較例1の低摩擦シート27、27Xに比べて大きくなる。その結果、定着装置の初期の立ち上げ過程で、加圧ベルト20の摺動抵抗が上がり、定着ローラ10の駆動トルクが高くなって加圧ベルト20の走行安定性が損なわれる。あるいはシリコンオイルが行き渡っていない場所に差し掛かったときに定着ローラ10の回転が突然ストップしてしまう。
図3の(a)に示すように、定着ローラ10にベルトユニット2を圧接して定着装置1を長時間回転させて定着ローラ10の駆動トルク推移を検証した。定着装置1を長時間回転させることによる、低摩擦シート27、27X、27Yの摩耗の影響を駆動トルクの推移によって検証した。 定着装置1の定着ローラ10とベルトユニット2とを当接させ、定着ローラ10の表面温度を180℃に制御した状態で回転させ続けて、経過時間と駆動トルクの推移を測定した。これにより、低摩擦シート27、27X、27Yの耐久性実験を促進させた検証を行った。
図15に示すように、実施例1及び比較例2の低摩擦シート27、27Yを用いることによって、長時間に渡って駆動トルクを低く抑えることが可能である。一方、比較例1の低摩擦シート27Xを用いた場合、回転スタートから約280時間までは、ある程度低い駆動トルクの推移を示しているが、その後、急激にトルクが上昇してしまう。
このトルクの急上昇は、低摩擦シート27Xの表面の低摩擦を担う表層(27f:図10)が加圧ベルト20との長時間の摺擦によって摩耗し、ポリイミドフィルムの基層(27e:図10)が露出したためである。同時に加圧ベルト20との接触面積が増えてしまったことも原因である。
これに対して、実施例1の低摩擦シート27は、第1高さの凸部27Hの表層(27f:図10)が摩耗して基層(27e:図10)が露出する前に、第2高さの凸部27Lの表層(27f:図10)が加圧ベルト20に接する。
従って、加圧ベルト20と低摩擦シート27の摺動抵抗が急激に上昇する前に、第1高さの凸部27Hにかかる負荷を減らす。その結果として、基層(27e:図10)が一斉に露出するまでの時間を十分に延ばして低摩擦シート27及び定着装置1の耐久性を向上させている。
比較例2の低摩擦シート27yでは、最初から加圧ベルト20との接触点が多く、接触面積も大きいため、定着ローラ10の駆動トルクは初期から高い。しかし、1つの凸部27にかかる負荷が低く抑えられているため、表層27fの摩耗速度が低く、接触面積の増加率が低く抑えられる。このため、駆動トルクの上昇率が低く、比較例1の低摩擦シート27Yよりも耐久性が向上する。
Figure 2010164808
表1に示すように、実施例1の低摩擦シート27は、加圧ベルト20と加圧パッド26の摺動抵抗を減らしながら、摩耗による種々の弊害を伴わず、長時間に渡って使用することが可能である。
以上説明したように、実施例1の低摩擦シート27を用いることにより、定着装置1の初期及びそれ以降の立ち上げ時の駆動トルクを低く抑え、かつ耐久性を向上させることが可能になる。そして、長期にわたって安定的に加圧ベルト20を走行させることが可能になる。
<実施例2>
図16は実施例2の低摩擦シートにおける凸部の配置の説明図である。
第1高さの凸部27Hと第2高さの凸部27Lとを混在させる配置パターンは、実施例1のパターン以外でも、実施例1の低摩擦シート27と同様の効果が得られる。
図16に示すように、実施例2の低摩擦シート27Pは、表面に形成された多数の凸部が、第1高さの凸部27Hと第2高さの凸部27Lとを混在させている。
実施例2の低摩擦シート27Pを用いる場合も、定着装置1の立ち上げ時の定着ローラ10の駆動トルクを低く抑え、かつ耐久性を向上させることが可能になる。
<実施例3>
図17は実施例3の低摩擦シートにおける凸部の配置の説明図である。
図17に示すように、実施例3の低摩擦シート27Qは、表面に形成された多数の凸部が、第1高さの凸部27Hと第2高さの凸部27Lとを混在させている。
実施例3の低摩擦シート27Qを用いる場合も、定着装置1の立ち上げ時の定着ローラ10の駆動トルクを低く抑え、かつ耐久性を向上させることが可能になる。
<実施例4>
無端状のベルト部材を用いて記録材の搬送方向に長い定着ニップを形成するベルトニップ方式の画像加熱装置は、図2の定着装置1には限定されない。
特開2004−341346号公報には、2本の支持回転体に掛け渡して支持された定着ベルトと、2本の支持回転体に掛け渡して支持された加圧ベルトとを接離可能に配置した定着装置が提案されている。
実施例4では、このような画像加熱装置において、定着ベルトの内側面に配置された加圧パッドに実施例1の低摩擦シート27を装着する。また、加圧ベルトの内側面に配置された加圧パッドにも、実施例1の低摩擦シート27を装着する。
これにより、定着ベルト及び加圧ベルトに対する摺動抵抗を長期間に渡って低減し、急激な摺動抵抗の増加に伴う弊害、記録材のジャム、駆動モータのロック、画像不良、記録材の搬送障害等を防止できる。
画像形成装置の構成の説明図である。 定着装置の構成の説明図である。 加圧ベルトの加圧機構の説明図である。 加圧機構周辺の拡大図である。 定着ニップの記録材搬送方向における圧力分布の説明図である。 定着装置の起動時の温度推移の説明図である。 低摩擦シートの構成の説明図である。 実施例1の低摩擦シートの凸部の配置の説明図である。 凸部の高さ分布の説明図である。 凸部の構成の説明図である。 低摩擦シートの製造方法の説明図である。 比較例1の低摩擦シートにおける凸部の配置の説明図である。 比較例2の低摩擦シートにおける凸部の配置の説明図である。 定着装置の立ち上げ過程における回転トルクの比較の説明図である。 耐久寿命における立ち上げ過程の回転トルクの変化の説明図である。 実施例2の低摩擦シートにおける凸部の配置の説明図である。 実施例3の低摩擦シートにおける凸部の配置の説明図である。
10 定着ローラ
20 加圧ベルト
21 入口ローラ
22 分離ローラ
25 加圧ベース
26 加圧パッド
27 低摩擦シート
27H、27L 凸部
28 オイル塗布ローラ
100 加圧機構
113 ハロゲンランプヒータ
114 サーミスタ

Claims (7)

  1. 回転体と、
    複数の支持回転体に掛け渡して支持され、前記回転体との間に記録材の加熱ニップを形成する無端状のベルト部材と、
    前記ベルト部材の内側面を前記回転体に向かって面状に押圧する押圧部材と、
    前記内側面に摺擦するように前記押圧部材に配置され、摺擦面に多数の凸部が成型された低摩擦シートと、を備えた画像加熱装置において、
    前記低摩擦シートは、強度を担う基層の上に低摩擦を担う表層を形成した樹脂シート材料で形成され、高さの中心値が複数段階に異なる凸部を混在させて前記多数の凸部としていることを特徴とする画像加熱装置。
  2. 前記低摩擦シートは、先端ほど断面積が小さくなる形状で高さの中心値を二段階に異ならせた凸部を成型されていることを特徴とする請求項1記載の画像加熱装置。
  3. 前記凸部の高さの度数分布における2つのピークが同一高さ同一形状であることを特徴とする請求項2記載の画像加熱装置。
  4. 前記2つのピークの最大度数に相当する前記凸部の高さの差は、前記表層の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項3記載の画像加熱装置。
  5. 回転駆動される前記回転体としての定着ローラと、
    前記定着ローラに向かって付勢された前記支持回転体としての加圧ローラと、
    前記加圧ローラを移動させて前記定着ローラから前記ベルト部材を離間させる接離機構と、を備え、
    前記押圧部材は、前記ベルト部材と前記加圧ローラとの当接部に向かうように配置されて前記ベルト部材と前記加圧ローラとを押圧する弾性材料の加圧パッドを有し、
    前記低摩擦シートは、前記加圧パッドが前記加圧ローラを押圧する面にも配置され、
    前記ベルト部材は、前記接離機構によって前記定着ローラに圧接されることにより従動回転を開始することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の画像加熱装置。
  6. 前記低摩擦シートは、前記加圧パッドが前記加圧ローラを押圧する面と前記ベルト部材を押圧する面とを一体に覆って配置され、
    前記ベルト部材と前記加圧ローラとの当接部に向かう前記低摩擦シートの二つ折りされた部分には前記凸部が配置されないことを特徴とする請求項5記載の画像加熱装置。
  7. 第1高さの凸部を成型するための第1型を用いて基層の樹脂シート材料に凸部を成型する第1工程と、
    第2高さの凸部を成型するための第2型を用いて、前記第1工程で形成された凸部と位置をずらせて凸部を成型する第2工程と、
    前記第1高さ及び第2高さの凸部が形成された基層面にフッ素樹脂材料をコーティングして表層を形成する第3工程と、を有することを特徴とする低摩擦シートの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012068483A (ja) * 2010-09-24 2012-04-05 Fuji Xerox Co Ltd 定着装置及び画像形成装置
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EP4235309A1 (en) * 2022-02-28 2023-08-30 Canon Kabushiki Kaisha Fixing device

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