JP3791172B2 - トロイダル形無段変速機用同期ケーブル - Google Patents

トロイダル形無段変速機用同期ケーブル Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば自動車用の変速機として用いるトロイダル形無段変速機用同期ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
トロイダル形無段変速機のトラニオン部は、図4及び図5に示すように構成されている。すなわち、エンジン等の駆動源(図示しない)に連結される入力軸1には入力ディスク2と出力ディスク3がニードルベアリングを介して回転自在に支持されている。入力ディスク2の背面側にはカム板4が入力軸1に対してスプライン係合しており、カム板4と入力ディスク2との間にはローラ5が介在され、入力ディスク2を出力ディスク3側に押し付けるローディングカム式の押圧機構6が設けられている。
【0003】
入力ディスク2と出力ディスク3との間には枢軸7を中心として揺動するトラニオン8a,8bが設けられ、トラニオン8a,8bの中心部には変位軸9が設けられている。そして、この変位軸9にはパワーローラ10が回転自在に支持され、このパワーローラ10は入力ディスク2及び出力ディスク3と接するトラクション部を有し、入力ディスク2と出力ディスク3との間に傾転自在に転接されている。
【0004】
また、トラニオン8a,8bとパワーローラ10との間にはパワーローラ軸受11が設けられている。このパワーローラ軸受11はパワーローラ10に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、パワーローラ10の回転を許容するものである。このようなパワーローラ軸受11の複数個の玉12はトラニオン8a,8b側に設けられた円環状の外輪13と回転部としてのパワーローラ10との間に設けられた円環状の保持器14によって保持されている。
【0005】
さらに、前記トラニオン8a,8bの本体部分の外周部には溝15が設けられ、この溝15にはワイヤロープ16が円弧状チューブからなる止め具17によって8の字の無端ループ状に連結された同期ケーブル18が掛け渡されている。前記同期ケーブル18は、トラニオン8a,8bの傾動(枢軸7を中心として揺動)を互いに同期させる役目をしている。
【0006】
そして、通常、トロイダル型無段変速機の変速制御方法としては、変速信号が制御モータに入力されると、バルブが切り替わり、トラニオン8a,8bの上下方向に配置されている油圧シリンダ室に油が流れ、トラニオン8a,8bを上下させることによって変速させる。しかしながら、油圧回路途中の不具合で片方のパワーローラ10が変速作動不良等が発生すると、もう片方の正常なパワーローラ10とは同じ変速動作を行わない。その時にこの互い違いになろうとする変速動作を放置していれば、一瞬にしてパワーローラ10はロックし、大きな損傷を引き起こし、変速機としての機能を全く失ってしまう。
【0007】
これらの事態を未然に回避するために、両方のパワーローラ10を同じ変速角度に保持させるための機構が必要になる。その機構として機械的なセーフティケーブルとしての同期ケーブル18がある。
【0008】
図6は、各変速位置における同期ケーブル18とトラニオン8a,8bの位置関係を示し、(a)は変速比1.0の状態、(b)は変速比LOWの状態、(c)は変速比HIGHの状態である。同期ケーブル18は、通常はワイヤロープ16(例えばJIS G3525相当品)を、別部材の金属製の止め具17で固定して無端ループ状に構成されている。具体的には、ワイヤロープ16を無端ループ状に湾曲し、その両端部と中間部とに金属製のチューブからなる止め具17を嵌合し、止め具17の全体に亘って加締めることにより、止め具17をワイヤロープ16に締結している。
【0009】
ところで、非常時に同期ケーブル18にかかる力は、パワーローラ10の傾転力と同等になる。変速比が最大減速側で、入力トルクが最大のときには、この力は数百kgfに相当するため、それに耐え得る強度がワイヤロープ16と止め具17に必要になる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のトロイダル形無段変速機の同期ケーブル18には以下のような問題点があった。
▲1▼止め具17としてのチューブをワイヤロープ16に加締めるため、チューブの材料を硬度が低いHBSCの砲金を用いていたが、軟らかすぎるため加締め強度が大きくできず、非常時にワイヤロープ16が引張られたとき、その加締め部からワイヤロープ16が抜けてしまった。
【0011】
▲2▼同期ケーブル18のトラニオン8a,8bとの装着部の端面が強く接触するため、摩耗、変形してしまい、ガタが大きくなってしまった。本来、同期ケーブル18は非常時に片方のパワーローラ10ともう片方のパワーローラ10の変速角度を同じにしなければならないが、そのトラニオン8a,8bとの装着部のガタが大きくなってしまい、パワーローラ10の両者を同じ変速角度に保つことができなくなり、パワーローラ10はロックしてしまった。
【0012】
▲3▼また、チューブの両端部を加締めてしまうと、トラニオン8a,8bとの装着部の断面積が減少してしまうため、そこの接触面圧が大きくなり、より摩耗、変形しやすくなってしまった。
【0013】
この発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、非常時に同期ケーブルに大きな力がかかった時、加締め部からワイヤロープが抜けたり、また同期ケーブルのトラニオンとの装着部のガタが大きくなることはなく、止め具の端面の摩耗、変形を防止し、またトラニオンに対して同期ケーブルの組み付けが容易であるとともに、同期ケーブルの脱落を防止できるトロイダル形無段変速機用同期ケーブルを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記目的を達成するために、請求項1は、入力ディスクと出力ディスクとの間に傾転自在に転接されたパワーローラを回転自在に支持するトラニオンを備えたトロイダル形無段変速機用同期ケーブルにおいて、前記同期ケーブルは、ワイヤロープと、このワイヤロープに締結されるとともに、前記トラニオンに装着される円弧状のチューブとからなり、前記チューブは、その両端部を除き、他の部分が加締められていることを特徴とする。
【0016】
請求項は、入力ディスクと出力ディスクとの間に傾転自在に転接されたパワーローラを回転自在に支持するトラニオンを備えたトロイダル形無段変速機用同期ケーブルにおいて、前記同期ケーブルは、ワイヤロープと、前記トラニオンに装着される止め具とからなり、前記止め具は、前記ワイヤロープに固着された円弧状の第1の止め具と、この第1の止め具の両端部に可動自在に設けられた第2の止め具とから構成したことを特徴とする。
【0017】
請求項1の構成によれば、加締めた範囲の加締め強度が大幅に向上し、チューブからワイヤロープが抜けるのを防止できる。また、チューブの両端部は加締めていないのでトラニオンとの引っ掛かり部の面積は十分に確保できる。
【0018】
請求項2の構成によれば、第1の止め具と、この第1の止め具の両端部に可動自在に設けられる第2の止め具との3部品から構成され,第1の止め具は、ワイヤロープに締結され、第2の止め具は、例えば金属製のリング状で、ワイヤロープに対して嵌合され、この第2の止め具は第1の止め具に対してワイヤロープの長手方向に移動自在及び周方向に回転可能であるため、第2の止め具はワイヤロープに対して微妙に揺動回転でき、トラニオンの装着部と第2の止め具の接触部は常に同じ端面部と接触しなくなり、摩耗、変形をより小さく抑えることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の各実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は第1の実施形態を示し、同期ケーブル31は、8の字無端ループ状のワイヤロープ32と、このワイヤロープ32に締結されるとともに、前記トラニオン8a,8bに装着される円弧状のチューブ33とから構成されている。
【0020】
ワイヤロープ32は、排気量の大きい車両用としては荷重が大きいので、外径がφ3〜φ5が望ましく、チューブ33は、外径がφ7〜φ10位が望ましい。また、排気量の小さい車両用としては、荷重が小さいのでワイヤロープ32の径がφ2〜φ3で十分であり、チューブ33の外径がφ5〜φ6位で十分である。また、ワイヤロープ32の仕様は、例えば構成記号が7×19で、ロープの撚り方が普通Z撚りのものを使用している。
【0021】
前記チューブ33は、鉄製であり、例えばSS400の材料を使用している。そして、このチューブ33はトラニオン8a,8bの溝15に沿うように円弧状に形成され、その両端部を残して他の部分が加締めによりワイヤロープ32に締結されている。すなわち、チューブ33の両端部の加締めていない範囲Aは、円形断面で、その内周面とワイヤロープ32の外周面との間には僅かな隙間があり加締めた範囲Bは、六角断面で、ワイヤロープ32に締結されている。
【0022】
前記同期ケーブル31は、トラニオン8a,8bの溝15に装着されるが、装着部端面との隙間は、0.5〜2.0゜位が望ましく、余り隙間が大きすぎると、互い違いの角度を許容してしまい、小さすぎると、同期ケーブル31の組付けが困難となる。
【0023】
前述のように、チューブ33の両端部を除いた部位を加締めることにより、加締めた範囲Bの加締め強度が大幅に向上し、チューブ33からワイヤロープ32が抜けるのを防止できる。また、チューブ33の両端部は加締めていないのでトラニオン8a,8bとの引っ掛かり部の面積は十分に確保できる。そして、チューブ33の端部は、鉄製のトラニオン8a,8bと接触するが、このチューブ33が軟らかいHBSCでなく鉄製であり,摩耗、変形することはなく、耐久性を向上できる。
【0024】
図2は第2の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分は同一番号を付して説明を省略する。本実施形態の同期ケーブル31は、ワイヤロープ32と、このワイヤロープ32に固着されるとともに、前記トラニオン8a,8bに装着される円弧状の止め具34とからなり、この止め具34はワイヤロープ32に鋳込み法により固着されている。
【0025】
すなわち、ワイヤロープ32を構成するワイヤーの細い鋼線の中に溶融した止め具34の原料を溶かし込むことによってチューブ状の止め具34を成形したものである。このように鋳込み法によってワイヤロープ32に一体に止め具34を固着することにより、止め具34のワイヤロープ32に対する抜け強度が大幅に向上できる。しかも、鋳込みで作るため止め具34の形状は円筒形に形成でき、止め具34の端部とトラニオン8a,8bとの引っ掛かり部も十分に確保できるという効果がある。
【0026】
図3は第3の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分は同一番号を付して説明を省略する。本実施形態の同期ケーブル31は、ワイヤロープ32と、このワイヤロープ32に固着されるとともに、前記トラニオン8a,8bに装着される止め具35とからなり、この止め具35は、ワイヤロープ32に固着される円弧状の第1の止め具35aと、この第1の止め具35aの両端部に可動自在に設けられる第2の止め具35b,35bとの3部品から構成されている。
【0027】
第1の止め具35aは、ワイヤロープ32にチューブを通して加締めて締結してもよく、またはワイヤロープ32を構成するワイヤーの細い鋼線の中に溶融した第1の止め具35aの原料を溶かし込むことによって一体に形成されてもよい。また、第2の止め具35b,35bは、金属製のリング状で、ワイヤロープ32に対して嵌合され、この第2の止め具35b,35bは第1の止め具35aに対してワイヤロープ32の長手方向に移動自在及び周方向に回転可能である。
【0028】
このように,止め具35を3分割構造とすれば、第2の止め具35b,35bはワイヤロープ32に対して微妙に揺動回転できるため、トラニオン8a,8bの装着部と第2の止め具35b,35bの接触部は常に同じ端面部と接触しなくなり、摩耗、変形をより小さく抑えることができるという効果がある。
【0029】
なお、前述した実施形態においては、シングルキャビティ型のトロイダル形無段変速機について説明したが、この発明は、ダブルキャビティ型のトロイダル形無段変速機の同期ケーブルにも適用できる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、加締めた範囲の加締め強度が大幅に向上し、ワイヤロープに大きな引っ張り力が加わってもチューブからワイヤロープが抜けるのを防止できる。また、チューブの両端部は加締めていないのでトラニオンとの引っ掛かり部の面積は十分に確保できるという効果がある。
【0032】
請求項の発明によれば、第1の止め具は、ワイヤロープに締結され、第2の止め具は、ワイヤロープに対して可動自在に嵌合され、ワイヤロープの長手方向に移動自在及び周方向に回転可能であるため、第2の止め具はワイヤロープに対して微妙に揺動回転でき、トラニオンの装着部と第2の止め具の接触部は常に同じ端面部と接触しなくなり、摩耗、変形をより小さく抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態における同期ケーブルの正面図及びZ−Z線に沿う断面図。
【図2】この発明の第1の実施形態における同期ケーブルの正面図及びZ−Z線に沿う断面図。
【図3】この発明の第1の実施形態における同期ケーブルの正面図及びZ−Z線に沿う断面図。
【図4】従来のトロイダル形無段変速機を示す縦断側面図。
【図5】図4のX−X線に沿う断面図。
【図6】図5のY−Y線に沿う断面図で、(a)は変速比1.0の状態の図、(b)は変速比LOWの状態の図、(c)は変速比HIGHの状態の図。
【図7】従来の同期ケーブルを示し、(a)は一部断面図、(b)は正面図及びZ−Z線に沿う断面図。
【符号の説明】
1…入力軸
2…入力ディスク
3…出力ディスク
8a,8b…トラニオン
10…パワーローラ
31…同期ケーブル
32…ワイヤロープ
33…チューブ
34,35…止め具

Claims (2)

  1. 入力ディスクと出力ディスクとの間に傾転自在に転接されたパワーローラを回転自在に支持するトラニオンを備えたトロイダル形無段変速機用同期ケーブルにおいて、
    前記同期ケーブルは、ワイヤロープと、このワイヤロープに締結されるとともに、前記トラニオンに装着される円弧状のチューブとからなり、前記チューブは、その両端部を除き、他の部分が加締められていることを特徴とするトロイダル形無段変速機用同期ケーブル。
  2. 入力ディスクと出力ディスクとの間に傾転自在に転接されたパワーローラを回転自在に支持するトラニオンを備えたトロイダル形無段変速機用同期ケーブルにおいて、
    前記同期ケーブルは、ワイヤロープと、前記トラニオンに装着される止め具とからなり、前記止め具は、前記ワイヤロープに固着された円弧状の第1の止め具と、この第1の止め具の両端部に可動自在に設けられた第2の止め具とから構成したことを特徴とするトロイダル形無段変速機用同期ケーブル。
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