JP3790645B2 - 点火コイル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は点火コイルに関し、より具体的にはリサイクル率を向上させるようにした点火コイルに関する。
【0002】
【従来技術】
近時、種々の分野で資源の効率的な回収と再利用、いわゆるリサイクル化が望まれているが、内燃機関で使用される点火コイルの場合、耐振性、耐水性、耐熱性などが要求されるため、通例、コイル部をコイルケース内に収容した後、熱硬化性の樹脂(例えばエポキシ樹脂)を充填し、コイル部を樹脂内に埋設して固定している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来技術に係る点火コイルにあってはコイル部を充填樹脂内に埋設して固定しているため、点火コイルの廃棄時、分解が困難であってコイル部などはそのまま廃棄せざるを得ず、リサイクル率が低かった。
【0004】
従って、この発明は、上記した課題を解消することにあり、リサイクル率を向上させ、よって資源の効率的な回収と再利用を図るようにした点火コイルを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の問題を解決するために、請求項1項においては、1次コイルおよび2次コイルからなるコイル部と点火制御回路ユニットをコイルケース内に内蔵した点火コイルにおいて、前記コイルケースに内蔵された1次コイルおよび2次コイルの端子側にハイテンションコード取り出し口を一体的に形成したインナキャップを配置し、前記インナキャップ上で前記1次コイルの端子と前記点火制御回路ユニットの端子をフュージングによって接合すると共に、接合部を部分モールドする如く構成した。
【0006】
これにより、半田接合を用いないことから鉛廃棄規制への対応が容易となると共に、部分モールドすることでコイル部の分離回収が容易となり、リサイクル率を向上させることができる。さらに、接合部の耐水性および耐振性にも欠けることがない。また、インナキャップを作業台として利用することができ、接続作業が容易となって工程を簡略化できると共に、信頼性も向上させることができる。
【0007】
請求項2項にあっては、前記インナキャップ上で前記2次コイルの端子とハイテンションコード取り出し口の端子をフュージングによって接合すると共に、接合部を部分モールドする如く構成した。
【0008】
これによって、同様に鉛廃棄規制への対応が容易となると共に、部分モールドすることでコイル部の分離回収が一層容易となってリサイクル率を向上させることができる。また、同様にインナキャップを作業台として利用することができ、接続作業が容易となって工程を簡略化できると共に、信頼性も向上させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明の一つの実施の形態に係る点火コイルを説明する。
【0012】
図1はその点火コイルの説明側面断面図、図2は図1のII−II線断面図、図3は図1に示す点火コイルにおいてケース本体の蓋を取外した状態の上面図、および図4はケース蓋を取り付けた状態(図1に示す状態)の上面図である。
【0013】
以下説明すると、この発明に係る点火コイル10はアウタケース(コイルケース)12と、それに取り付けられる大略断面C字状のコア(鉄心)14を備える。
【0014】
アウタケース12は、大略円筒状で一端が開口したケース本体12aとその開口端を閉鎖するケース蓋12bからなり、ケース本体12aもケース蓋12bもPBTから製作される。尚、12cは水抜き孔である。
【0015】
コア14は断面逆L字状のコア片14aと断面I字状のコア片14bからなり、コア片14aと14bは取外し自在に構成され、その一端14cで開放可能に構成される。
【0016】
コア14は、コア片14bをアウタケース12のケース本体12aの中央貫通孔に挿入し、ケース蓋12bを取り付けた後、コア片14aを組み付けることでアウタケース12に取り付けられる。
【0017】
コア14は一端14cに対向する端部において切り欠かれると共に、近接して回転する内燃機関(図示せず)の円形のフライホィール16に応じて湾曲させられて離間距離が均一となるように構成される。即ち、コア14はフライホィール16を利用して閉磁束回路を形成するように構成される。
【0018】
コア14は、傾斜性の珪素鋼板を積層してなる。傾斜性の珪素鋼板にあってはシリコンが表面側に偏在することから、シリコンが均一に分布する一般的な、いわゆる方向性を備えた珪素鋼板材に比して鉄損が少なく、磁気飽和特性にも優れる。尚、14dは取り付け孔である。
【0019】
アウタケース12の内部には、1次コイル20と2次コイル22からなるコイル部24が収容される。即ち、コア14のコア片14bの外周には1次コイル20が配置されると共に、図2に良く示す如く、1次コイル20の外周には2次コイル22が配置される。
【0020】
1次コイル20および2次コイル22は共に、PIWからなる自己融着線(各種合成エナメル線の表面に自己接着層を設けた、いわゆるセメンティングエナメル線)200を巻線として用いて製作される。
【0021】
自己融着線200は、図5に模式的に示す如く、銅線200aと、その外周に形成される絶縁層200bと、その外周に形成される自己接着層200cとからなる。
【0022】
1次コイル20および2次コイル22は、かかる自己融着線200を棒材(図示せず)に巻き付けて加熱し、次いで冷却させて図6に模式的に示す如き円筒形状に形成した後、接着材24aで一体的に接合してコイル部24として完成させられる。このように自己融着線200を用いることで、ボビンを必要とすることなく、1次コイル20および2次コイル22を容易に製作することができる。
【0023】
接着材24aとしては、例えば、熱可塑性ポリマである、ポリアミド、EVA、ポリオレフィンを基礎とするホットメルト接着材を用いる。
【0024】
上記の如くして製作した1次コイル20および2次コイル22からなるコイル部24は、粘着性を備えた弾性材26を用いてケース本体12aの底面に固定する。弾性材26としては、例えば、シリコンゲルを用いる。シリコンゲルは、振動吸収性に優れると共に、粘着性も備える。
【0025】
このように、コイル部24は、樹脂モールド樹脂中に埋設させてケース本体12a内に固定するのではなく、弾性材26によってケース本体12a内に固定する。従って、コイル部24とケース本体12a内の空間24bは空隙のままにされる。
【0026】
ケース本体12aは一方の側部で仕切られて分室12dが形成され、そこに点火制御回路ユニット30が収容される。点火制御回路ユニット30は、コイル部24と同様に、ケース本体12aの底面に、同種の弾性材32で固定される。
【0027】
点火制御回路ユニット30は波形整形回路およびスイッチング素子(パワートランジスタ)などからなり、公知の如く、図示しない制御ユニットの指令に応じてバッテリ電源(図示せず)から1次コイル20に通電し、所定のタイミングで通電を遮断して2次コイル22に点火電圧を発生させる。
【0028】
点火制御回路ユニット30はセラミック基板で構成されると共に、図3に示す如く、1次コイル20をバッテリ電源と接地側に接続するための、2本のリード30a,30bを備える。リード30a,30bは黄銅材からなる。
【0029】
ケース本体12aの開口端付近には、インナキャップ34が設けられる。インナキャップ34はコイル部24に当接し、コイル部24をケース本体12aの底面に押圧するように構成される。インナキャップ34は、ケース本体12aと同様に、PBTから製作される。尚、符号34aは水抜き孔を示す。
【0030】
インナキャップ34は、前記したケース本体12の分室12dの上方付近で円筒形状に突起させられてハイテンションコード取り出し口36が形成され、そこにハイテンションコード(図1などに想像線で示す)38がはめ込まれるように構成される。ハイテンションコード取り出し口は、2次コイル22と接続するための断面L字状の端子36a(黄銅製)を備える。図3に端子36aの上端側を示す。
【0031】
尚、この実施の形態に係る点火コイル10はストップ端子42を備える。ストップ端子42はリード42bと接触すると共に、作業員などによって押圧されると、図示しない回路を介して、点火を中止して内燃機関を直ちに停止させる。
【0032】
前記した1次コイル20と点火制御回路ユニット30の2本のリード30a,30bの接続について説明すると、図3に良く示す如く、1次コイル20の端子20a,20bと、点火制御回路ユニット30から延びるリード30a,30bをそれぞれフュージングによって接合、即ち、端子20a,20bとリード30a,30bを加圧しながら大電流を通電し、加熱して溶融させることで接合し、接合部をモールド材44で部分的にモールドして固定する(図1でモールド材44の厚みは誇張して示す)。
【0033】
換言すれば、鉛材を用いた半田結合を使用せずに、端子20a,20bとリード30a,30bを接合し、接合部をモールド材44で部分的にモールドして固定する。
【0034】
同様に、2次コイル22の端子22aとハイテンションコード取り出し口36の端子36a(断面L字状体の下端側)も、フュージングによって接合した後、モールド材46で部分的にモールドして固定する。尚、2次コイル22の他方の端子は、1次コイル20に図示しない位置で接続される。
【0035】
尚、モールド材44,46としては、接着材24aと同種のホットメルト接着材を使用する。
【0036】
また、この接続作業はインナキャップ34上で行われることから、インナキャップ34を作業台として利用することができ、接続作業が容易となって工程を簡略化できると共に、信頼性も向上させることができる。
【0037】
ここで、点火コイル10の製造工程を概説する。
【0038】
先ず、ケース本体12a、ケース蓋12b、インナキャップ34をPBTから製作すると共に、コア片14a,14bを傾斜性の珪素鋼板から製作する一方、1次コイル20および2次コイル22を前記したように自己融着線200を用いて製作し、接着材24aで接合してコイル部24を製作する。また、点火制御回路ユニット30もセラミック基板として製作する。
【0039】
次いで、ケース本体12aの底面に弾性材26,32を塗布し、コイル部24と点火制御回路ユニット30を組み込んで固定する。次いで、インナキャップ34を取り付けて端子をフュージングによって接合し、接合部をモールド材44,46でモールド(塗布)する。
【0040】
次いで、ケース蓋12bを取り付けてコアを挿入すれば、点火コイル10として完成する。その後、内燃機関の所定位置にコア14に穿設した取り付け孔14dなどを介して取り付け、ハイテンションコード38をハイテンションコード取り出し口36にはめ込むと共に、点火制御回路ユニット30をバッテリ電源および制御ユニットに接続すれば良い。
【0041】
この実施の形態においては、上記のように、コア14の一端を開放可能に構成し、1次コイル20および2次コイル22からなるコイル部24を取外し自在に構成してなる点火コイル10において、前記1次コイル20および2次コイル22を自己融着線200から製作すると共に、コイルケース(ケース本体12aおよびケース蓋12b)内に弾性材(例えばシリコンゲル)26によって固定する如く構成した。
【0042】
このように、コア14の一端を開放可能に構成して1次コイル20および2次コイル22からなるコイル部24を取外し自在に構成し、さらに、1次コイル20および2次コイル22を自己融着線200から製作すると共に、コイルケース内に弾性材26によって固定する如く構成したことで、換言すれば、コイル部24とケース本体12aとの空間24bに樹脂を充填しないように構成すると共に、自己融着線200を用いてボビンレス可能としたことで、点火コイル10の廃棄時、コイル部24の分離回収が容易となってリサイクル率を向上させることができ、よって資源の効率的な回収と再利用を図ることができる。また、コアも容易に分離することができる。
【0043】
また、1次コイル20および2次コイル22をコイルケース内に振動吸収性に優れた弾性材(例えばシリコンゲル)26によって固定する如く構成したことで、従来技術に係る点火コイルと同等あるいはそれ以上の耐振性を与えることができる。
【0044】
尚、自己融着線200を使用することで、銅線200aが自己接着層200c(および絶縁層200b)を介して隣接する結果、単位面積あたりの巻線数は低下するが、コア10を傾斜性の珪素鋼板から製作すると共に、フライホィール16を磁束路の一部に利用することで、必要な点火電圧を得ることができる。
【0045】
他方、銅線200aを自己接着層200c(および絶縁層200b)を介して隣接させることは、銅線200aをそれだけ気密、液密に保持して耐水性を向上させることができると共に、銅線200a間の絶縁性を向上させてその間のリークを低減することができることから、点火電圧の高圧化が可能になるなど点火電圧特性も向上させることができる。
【0046】
さらに、前記コイルケース内に点火制御回路ユニット30を内蔵すると共に、前記点火制御回路ユニット30を前記コイルケース(ケース本体16a)内に弾性材32によって固定する如く構成した。
【0047】
これにより、点火コイル10の廃棄時、点火制御回路ユニット30の分離回収も容易となり、リサイクル率を一層向上させることができる。
【0048】
また、点火制御回路ユニット30を振動吸収性に優れた弾性材(例えばシリコンゲル)32によって固定する如く構成したことで、従来技術に係る点火コイルと同等あるいはそれ以上の耐振性を与えることができる。
【0049】
また、前記1次コイル20および2次コイル22を接着材24aを介して一体的に接合する如く構成した。
【0050】
これにより、1次コイル20と2次コイル22の間の絶縁性を向上させることができると共に、一体的に接合してコイル部24とすることで、組み立てが容易となり、作業能率を向上させることができる。
【0051】
また1次コイル20および2次コイル22からなるコイル部24と点火制御回路ユニット30をコイルケース(ケース本体12a)内に内蔵した点火コイル10において、前記1次コイル20の端子20a,20bと前記点火制御回路ユニットの端子30aをフュージングによって接合すると共に、接合部を部分モールド、より具体的にはモールド材44を介して部分モールドする如く構成した。
【0052】
これにより、半田接合を用いないことから鉛廃棄規制への対応が容易となると共に、モールド材44を介して部分モールドすることでコイル部24の分離回収が一層容易となってリサイクル率を向上させることができ、よって資源の効率的な回収と再利用を図ることができる。
【0053】
さらに、モールド材44を介して部分モールドすることで接合部の耐水性および耐振性にも欠けることがない。
【0054】
さらに、2次コイル24の端子24aとハイテンションコード取り出し口36の端子36aをフュージングによって接合すると共に、接合部を部分モールド、より具体的にはモールド材46を介して部分モールドする如く構成した。
【0055】
これによって、同様に鉛廃棄規制への対応が容易となると共に、モールド材46を介して部分モールドとすることでコイル部24の分離回収が一層容易となってリサイクル率を向上させることができる。
【0056】
さらに、コイルケース(ケース本体12a)の内部に、1次コイル20および2次コイル22の端子20a,20b側に、前記ハイテンションコード取り出し口36aが一体的に形成されたインナキャップ34を配置し、インナキャップ上で前記フュージングと部分モールドを実施する如く構成した。
【0057】
これにより、インナキャップ34を作業台として利用することができ、接続作業が容易となって工程を簡略化できると共に、信頼性も向上させることができる。
【0058】
尚、上記した点火コイル10にあっては、コア14に近接したフライホィール16の一部を磁束路に利用する構成としたが、それに限られるものではなく、コア14のみで閉磁束回路を形成しても良い。
【0059】
【発明の効果】
請求項1項にあっては、半田接合を用いないことから鉛廃棄規制への対応が容易となると共に、部分モールドすることでコイル部の分離回収が容易となり、リサイクル率を向上させることができる。さらに、接合部の耐水性および耐振性にも欠けることがない。また、インナキャップを作業台として利用することができ、接続作業が容易となって工程を簡略化できると共に、信頼性も向上させることができる。
【0060】
請求項2項にあっては、同様に鉛廃棄規制への対応が容易となると共に、部分モールドすることでコイル部の分離回収が一層容易となってリサイクル率を向上させることができる。また、同様にインナキャップを作業台として利用することができ、接続作業が容易となって工程を簡略化できると共に、信頼性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る点火コイルの説明側面断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1に示す点火コイルのケース本体の蓋を取外した状態の上面図である。
【図4】図3に示す状態からケース本体の蓋を取り付けて点火コイルとして完成させた状態の上面図である。
【図5】図1に示す点火コイルのコイル部で使用する自己融着線を模式的に示す説明断面図である。
【図6】図1に示す点火コイルのコイル部の製作を模式的に示す説明斜視図である。
【符号の説明】
10 点火コイル
12 アウタケース(コイルケース)
14 コア
20 1次コイル
20a,20b 1次コイル端子
22 2次コイル
22a 2次コイル端子
24 コイル部
24a 接続材
26,32 弾性材
30 点火制御回路ユニット
34 インナキャップ
36 ハイテンションコード取り出し口
36a ハイテンションコード取り出し口端子
38 ハイテンションコード
44,46 モールド材
200 自己融着線

Claims (2)

  1. 1次コイルおよび2次コイルからなるコイル部と点火制御回路ユニットをコイルケース内に内蔵した点火コイルにおいて、前記コイルケースに内蔵された1次コイルおよび2次コイルの端子側にハイテンションコード取り出し口を一体的に形成したインナキャップを配置し、前記インナキャップ上で前記1次コイルの端子と前記点火制御回路ユニットの端子をフュージングによって接合すると共に、接合部を部分モールドするようにしたことを特徴とする点火コイル。
  2. 前記インナキャップ上で前記2次コイルの端子とハイテンションコード取り出し口の端子をフュージングによって接合すると共に、接合部を部分モールドするようにしたことを特徴とする請求項1項記載の点火コイル。
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