JP3790608B2 - 粉体塗料用塗装ブース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉体塗料を用いて塗装作業を行うための粉体塗料用塗装ブースに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車車体等の被塗装物を塗装する際に、粉体塗料を使用した静電塗装方法が一般的に知られている。この種の塗装作業は、通常、長尺な塗装ブース内で行われており、この塗装ブース内には、粉体塗料を塗布する塗装作業ゾーンの他に、硬化または乾燥等の処理ゾーンが設けられている。このため、塗装作業ゾーン内に浮遊している粉体塗料が処理ゾーン内に導入されて、処理または処理機器を汚染するおそれがある。
【0003】
そこで、例えば、特開平1−210069号公報に開示されている塗装ブースが知られている。この従来技術では、塗装作業域を複数の吹き付け作業ゾーンに仕切るための塗料ミスト転移阻止用気流壁を形成するように、前記塗装作業域の天井部に、天井吹き出し口からの換気気体吹き出し速度よりも大きい速度で換気気体を所定幅で下向きに吹き出す気流壁形成用吹き出し口を設けるとともに、前記塗装作業域の床部には、換気空気を余剰吹き付け塗料ミストとともに排出する床排気口とは区画された所定幅内で前記床排気口よりも吸引気流速度が大きい気流壁形成用排気口を設けている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の従来技術では、気流壁形成用吹き出し口より換気気体を吹き出すとともに、この気流壁形成用吹き出し口に対向する気流壁形成用排気口より吸引を行うことにより、エアカーテンを構成している。このため、被塗装物がエアカーテン部分を通過する際に、気流の乱れが発生し易く、エアシール機能が不完全なものとなってしまう。これにより、塗装作業域内に塗料が漏洩して塗装ブース内が汚れてしまうおそれや、この塗装作業域内に外部から塵埃等が侵入して塗装不良が惹起し易いという問題が指摘されている。
【0005】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、簡単な構成で、塗装ブース外への粉体塗料の漏洩とこの塗装ブース内への塵埃等の侵入とを確実に阻止し、高品質な塗装作業を遂行することが可能な粉体塗料用塗装ブースを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、天井吹き出し口から下向きに第1の給気手段により換気気体を吹き出すとともに、前記換気気体および未付着粉体塗料を床排気口から排出する塗装作業ゾーンを有する粉体塗料用塗装ブースは、前記塗装作業ゾーンの出入口に設けられたエアカーテンゾーンを備え、前記エアカーテンゾーンには、閉塞された床面に向かって下向きに第2の給気手段によりエアを吹き出すエアカーテン用天井吹き出し口が設けられ、前記塗装作業ゾーンの床部分には前記床排気口に連通する排気手段が設けられるとともに、前記第2の給気手段によるエアカーテンゾーン内のエア供給圧が、前記第1の給気手段による塗装作業ゾーン内の換気気体供給圧よりも高く設定されている。
【0007】
このため、天井吹き出し口から下向きに吹き出されたエアは、閉塞された床面によって塗装作業ゾーン内へ向かう気流と塗装ブース外へ向かう気流とに分流される。従って、塗装作業ゾーン内へ向かう気流によってこの塗装作業ゾーンからの未付着粉体塗料の漏洩を有効に阻止する一方、塗装ブース外へ向かう気流によって前記塗装作業ゾーン内に外気に伴い塵埃等が侵入することを防止することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態に係る粉体塗料用塗装ブース10の概略側面説明図であり、図2は、図1中、II−II線断面図である。
【0009】
塗装ブース10は、被塗装物であるワークWに粉体塗料を用いた静電塗装を行うための塗装作業ゾーン12と、この塗装作業ゾーン12の出入口側に設けられる第1および第2エアカーテンゾーン14、16と、矢印A方向に指向して延在し、前記ワークWを前記第1エアカーテンゾーン14、前記塗装作業ゾーン12および前記第2エアカーテンゾーン16に、順次、搬送自在な搬送装置18とを備える。
【0010】
塗装作業ゾーン12には、図2に示すように、ワークWの両側部側に対応して塗装装置20、22が配設されている。塗装作業ゾーン12の上方には、プレナムチャンバ24が設けられており、このプレナムチャンバ24には、給気ブロア26を介して所定圧の換気気体(例えば、エア)が導入される(図1参照)。プレナムチャンバ24と塗装作業ゾーン12との間には、天井吹き出し口28が設けられる。この天井吹き出し口28は、多孔板30により構成されており、プレナムチャンバ24から塗装作業ゾーン12に向かって換気気体を均等に吹き出す機能を有する。
【0011】
塗装作業ゾーン12の床部分には、多孔板32によって床排気口34が設けられ、この床排気口34の下方に回収装置36が設けられる。回収装置36は、換気気体および未付着粉体塗料を床排気口34から排出するための排気ブロア38を備える。
【0012】
プレクリーンゾーンである第1エアカーテンゾーン14は、その上方にエアカーテン用プレナムチャンバ40を有し、このエアカーテン用プレナムチャンバ40に給気ブロア42からエアが供給される。エアカーテン用プレナムチャンバ40と第1エアカーテンゾーン14とは、多孔板44により構成されるエアカーテン用天井吹き出し口46を介して互いに連通している。第1エアカーテンゾーン14の底部は、閉塞された床面48により構成される。第1エアカーテンゾーン14内のエア供給圧は、塗装作業ゾーン12内の換気気体供給圧よりも高く設定されている。
【0013】
スタビライジングゾーンである第2エアカーテンゾーン16は、第1エアカーテンゾーン14と同様に構成されており、同一の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0014】
このように構成される塗装ブース10の動作について、以下に説明する。
【0015】
先ず、塗装作業ゾーン12では、給気ブロア26を介してプレナムチャンバ24に換気気体が供給されるとともに、排気ブロア38が駆動される。このため、プレナムチャンバ24から天井吹き出し口28を介して塗装作業ゾーン12内に鉛直下方向に向かって換気気体が吹き出される一方、この換気気体が床排気口34から外部に排出される。
【0016】
第1および第2エアカーテンゾーン14、16では、それぞれ給気ブロア42の作用下にエアカーテン用プレナムチャンバ40にエアが供給されている。従って、エアカーテン用天井吹き出し口46から第1および第2エアカーテンゾーン14、16内にエアが下向きに吹き出され、このエアが床面48に衝突する。
【0017】
この状態で、ワークWが搬送装置18を介して矢印A方向に搬送され、このワークWが第1エアカーテンゾーン14から塗装作業ゾーン12に搬入される。塗装作業ゾーン12では、搬送装置18の側方に配置された塗装装置20、22を介して静電気を帯電した粉体塗料がワークWに噴射され、この粉体塗料が前記ワークWに静電引力によって付着される。
【0018】
その際、プレナムチャンバ24から天井吹き出し口28を介して下向きに換気気体が吹き出されており、この換気気体と未付着粉体塗料とが、排気ブロア38の作用下に床排気口34を介して塗装作業ゾーン12から排出される。この未付着粉体塗料は、回収装置36を介して回収され、再使用されることになる。
【0019】
そして、粉体塗料による塗装が終了したワークWは、搬送装置18を介して塗装作業ゾーン12から第2エアカーテンゾーン16側に移送され、さらに次段の工程へと送り出される。
【0020】
この場合、本実施形態では、図1に示すように、エアカーテン用プレナムチャンバ40から第1および第2エアカーテンゾーン14、16にエアが吹き出されるとともに、この第1および第2エアカーテンゾーン14、16内のエア供給圧が塗装作業ゾーン12内の換気気体供給圧よりも高く設定されている。
【0021】
このため、第1および第2エアカーテンゾーン14、16内を下方向に移動して床面48にエアが衝突した際に、塗装作業ゾーン12側に向かう第1気流50と、塗装ブース10の外方へと向かう第2気流52とが発生する。第1気流50は、塗装作業ゾーン12から外部に未付着粉体塗料が漏洩することを防止する機能を有する一方、第2気流52は、外気に伴って塵埃等が塗装ブース10内に侵入することを防止する機能を有する。
【0022】
特に、第1および第2エアカーテンゾーン14、16では、上方からエアを供給するだけであって、床面48が閉塞されている。このため、搬送装置18を介してワークWが第1および第2エアカーテンゾーン14、16を通過する際に、エアカーテンの気流に大きな乱れを生ずることがない。これによって、第1および第2エアカーテンゾーン14、16におけるエアシールが不完全になることがなく、塗装作業ゾーン12からの粉体塗料の漏洩やこの塗装作業ゾーン12への塵埃等の侵入を容易かつ確実に阻止することができ、高品質な塗装作業を効率的に遂行することが可能になるという効果が得られる。
【0023】
ところで、粉体塗料は、静電引力によりワークWに付着しており、このワークWが第2エアカーテンゾーン16を通過する際に、エアカーテンの風速によって該ワークWに付着している前記粉体塗料が脱落するおそれがある。
【0024】
そこで、本実施形態では、ワークWからの粉体塗料の脱落を阻止するために、エアカーテンの風速を所定の範囲内に規定すべく実験を行った。具体的には、架橋硬化温度が130℃で、かつ平均粒径が25μmの粉体塗料(日本ペイント社製)を用い、ワークW上での塗装膜厚が45μmになるように、前記粉体塗料を前記ワークWに静電塗装した。
【0025】
この静電塗装において、第2エアカーテンゾーン16におけるエアカーテンの風速が2m/sec以上になると、ワークWに付着した粉体塗料の脱落や肌荒れ等が発生し、塗装品質の低下が惹起された。この現象は、粉体塗料の平均粒径を20μm〜35μmまで変化させても、同様の結果が得られた。従って、少なくとも第2エアカーテンゾーン16におけるエアカーテンの風速を2m/sec以下に設定することにより、高品質な塗装が確実に遂行されることが判った。
【0026】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る粉体塗料用塗装ブースでは、塗装作業ゾーンの出入口に設けられるエアカーテンゾーンにおいて、閉塞された床面に向かって下向きにエアを吹き出すとともに、このエアカーテンゾーン内のエア供給圧が、前記塗装作業ゾーン内の換気気体供給圧よりも高く設定される。
【0027】
このため、エアカーテンゾーンで床面に衝突したエアは、塗装作業ゾーンからの未付着粉体塗料の漏洩を阻止すべくこの塗装作業ゾーン側に向かう気流と、外気に伴い塵埃等が塗装ブース内に侵入することを防止すべくこの塗装ブース外へ向かう気流とを生じさせる。しかも、床面が閉塞されており、被塗装物がエアカーテンゾーンを通過する際に、エアカーテンの気流に大きな乱れを生ずることがない。これにより、粉体塗料の漏洩および塵埃等の侵入を阻止し、簡単な構成で、高品質な塗装作業が確実に遂行される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る粉体塗料用塗装ブースの概略側面説明図である。
【図2】図1中、II−II線断面図である。
【符号の説明】
10…塗装ブース 12…塗装作業ゾーン
14、16…エアカーテンゾーン 18…搬送装置
24、40…プレナムチャンバ 28、46…天井吹き出し口
34…床排気口 36…回収装置
38…排気ブロア 42…給気ブロア
48…床面 50、52…気流
Claims (1)
- 天井吹き出し口から下向きに第1の給気手段により換気気体を吹き出すとともに、前記換気気体および未付着粉体塗料を床排気口から排出する塗装作業ゾーンを有する粉体塗料用塗装ブースであって、
前記塗装作業ゾーンの出入口に設けられたエアカーテンゾーンを備え、
前記エアカーテンゾーンには、閉塞された床面に向かって下向きに第2の給気手段によりエアを吹き出すエアカーテン用天井吹き出し口が設けられ、前記塗装作業ゾーンの床部分には前記床排気口に連通する排気手段が設けられるとともに、
前記第2の給気手段によるエアカーテンゾーン内のエア供給圧が、前記第1の給気手段による塗装作業ゾーン内の換気気体供給圧よりも高く設定されることを特徴とする粉体塗料用塗装ブース。
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