JP3790499B2 - バルク金属ガラスからなる弾性材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バルク金属ガラスからなる弾性材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは、1988年以来、結晶化に対する過冷却液体の異常安定化が、Mg基、希土類金属基、Zr基、Pd基、Fe基の多くの合金系で生じることを見出すとともに、その安定化により、バルク金属ガラスが作製できることを報告してきた。
【0003】
バルク金属ガラスは、ガラス相生成の最低冷却速度は0.10K/sであり、最大厚さは約100mmである。その安定化は、3元素以上の多成分系、12%以上の原子寸法比と負の混合熱、の条件を満足する成分系における現象である。バルク金属ガラスは、特徴ある機械的性質、広い過冷却液体域、超粘性流動を、鉄族基合金は良好な軟磁性を示す。
【0004】
これらのバルク金属ガラスは、例えば、溶融金属を金型に押圧して所定形状にする鍛造法、溶融金属を圧延して所定形状にする圧延法、溶融金属を冷却金型に鋳込んで所定形状にする鋳造法などにより製造されている。
【0005】
本発明者らは、キャビテイ部を有する下型に溶融金属を流しこんで上型で押圧する方法を開発した(特開2000−61614号)が、この方法により製造したZr−Al−Ni−Cu系バルグ金属ガラス、例えばZr55Al10Ni5Cu30は良好な非晶質状態が形成されれば、曲げ試験において明瞭な降伏を示した後に破壊する。
【0006】
【発明の構成】
金属ガラスは、上記のような異常現象と新規な特性により先端材料としての発展が期待されている。金属ガラスは、例えば、金属結晶と比べて極めて高強度で低弾性率であり(A.Inoue:Bulk Amorphous Alloys, Trans Tech Publications, Zurich (1998))、金属結晶と比べて機械的性質、弾性および破壊挙動が大きく異なる。
【0007】
本発明者らは、金属ガラスが、引張応力対引張ひずみ関係では、実質的に擬弾性現象を示さないか、小さな擬弾性現象を示すだけであるにもかかわらず、ねじり試験のせん断応力対せん断ひずみ関係では顕著に擬弾性現象が生じるという、従来の金属や合金材料には全く見られない特異な性質を持つことを発見した。
【0008】
この擬弾性現象は、負荷試験において、材料にせん断応力を加えた場合の応力−ひずみ曲線において、せん断応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーの率が負荷で蓄積される全エネルギーに対して4%以上であり、非常に大きい。
【0009】
また、このせん断応力下の擬弾性現象は負荷が小さくても生じ、負荷レベルが大きくなるとともに強く現れる傾向があることも分かった。
また、負荷の除去後に残留ひずみが実質的に0である優れた擬弾性を示すことも分かった。
【0010】
このような擬弾性をもつバルク金属ガラスを用いれば、減衰器(ダンパ)を併用したかのような減衰特性に優れた(振動が早く止まる)つるまきバネやねじりバネを作ることができる。
【0011】
すなわち、本発明は、引張応力−ひずみ曲線において擬弾性現象を示さず、せん断応力−ひずみ曲線において、せん断応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーの率が負荷で蓄積される全エネルギーに対して4%以上であり、負荷除去後に残留ひずみが実質的に0である擬弾性現象を利用することを特徴とするバルク金属ガラスを弾性材料として使用する方法である。
【0012】
また、本発明は、引張応力−ひずみ曲線において、引張破壊時のひずみに対して負荷ひずみが50%以下において引張応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーの率が負荷で蓄積される全エネルギーに対して3%以下である擬弾性現象を示し、せん断応力−ひずみ曲線において、せん断応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーの率が負荷で蓄積される全エネルギーに対して4%以上であり、負荷除去後に残留ひずみが実質的に0である擬弾性現象を利用することを特徴とするバルク金属ガラスを弾性材料として使用する方法である。
また、本発明は、バルク金属ガラスがPd基、La基、またはZr基の金属ガラスのいずれかであることを特徴とする上記のバルク金属ガラスを弾性材料として使用する方法である。
【0013】
また、本発明は、引張応力−ひずみ曲線において擬弾性現象を示さず、せん断応力−ひずみ曲線において、せん断応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーの率が負荷で蓄積される全エネルギーに対して4%以上であり、負荷除去後に残留ひずみが実質的に0である擬弾性現象を有することを特徴とするバルク金属ガラスからなるつるまきバネまたはねじりバネである。
また、本発明は、引張応力−ひずみ曲線において、引張破壊時のひずみに対して負荷ひずみが50%以下において引張応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーの率が負荷で蓄積される全エネルギーに対して3%以下である擬弾性現象を示し、せん断応力−ひずみ曲線において、せん断応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーの率が負荷で蓄積される全エネルギーに対して4%以上であり、負荷除去後に残留ひずみが実質的に0である擬弾性現象を有することを特徴とするバルク金属ガラスからなるつるまきバネまたはねじりバネである。
また、本発明は、バルク金属ガラスがPd基、La基、またはZr基の金属ガラスのいずれかであることを特徴とする上記のつるまきバネまたはねじりバネである。
【0014】
合金に弾性限を超えた歪みを与え、見掛け上の塑性変形を起こさせても除荷時には歪みが回復してしまう性質は、擬弾性と言われ、Ti−Ni、Cu−Al−Ni、Cu−Zn、Au−Cd、Ag−Cd合金などが知られている。このような合金は、擬弾性を利用してバネ、歯列矯正器具、生体用インプラント、眼鏡のフレーム、ケーブル固定用のクリート、携帯電話のアンテナ、釣糸などに使用されている。これらの合金の擬弾性現象はマルテンサイト変態に起因するものである。
【0015】
図1の(a)は、金属材料に応力を加えた場合の応力−ひずみ曲線における典型的な擬弾性(超弾性)現象を模式的に示す図である。応力ーひずみ曲線において、典型的には、一定応力の下で比較的大きく変位し、ひずみが増加しても応力の大きさが変わらず、応力を除去するとひずみがほとんどまたは完全に消失するが、図1の(b)に示すように、一定応力の下で大きく変位するのではなく、応力の大きさに伴ってなだらかに変位する場合もある。例えば、特開平10−237572号公報には、このような高強度擬弾性Ti−Ni系合金が開示されている。このような従来知られている擬弾性現象を示す合金における擬弾性はマルテンサイト変態に起因するものであり引張応力下でもせん断応力下でも同様に生じる。
【0016】
図1の(b)に示すAは、応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーを示し、Bは除荷で吐き出されたひずみエネルギーを示している。負荷で蓄えられた全ひずみエネルギー(A+B)に対して、除荷により消失したひずみエネルギーAの率、すなわち、A/(A+B)が大きいほど、実質的に蓄えられる弾性ひずみエネルギーは小さく、また、振動における減衰率が大きいといえる。
【0017】
【作用】
本発明の弾性材料においては、せん断応力−ひずみ曲線において、A/(A+B)は4%以上であるが、引張応力下では実質的に擬弾性現象を示さないか、A/(A+B)が3%程度以下の小さな擬弾性現象を示すだけである。
【0018】
結晶合金である鋼では、ねじり試験のせん断応力対せん断ひずみ関係においては、このような顕著な擬弾性現象は見られず、各種結晶純金属や通常の結晶合金においてもこのような擬弾性現象の報告は見られない。また、アモルファス合金薄膜は金属結晶と比べて擬弾性を生じやすいことが同材料の大きな荷重下の引張試験によって知られている(T.Matsumoto:Sci.Rep.RITU,tA-26(1977),1625)。さらに、銅単元素アモルファス金属の分子動力学シュミレーションにおいて擬弾性挙動は引張試験よりもせん断試験において生じやすいことが報告されている(K.Fujita,M.Watanabe:Proc.of Jpn.Soc.Mech.Eng,995-1(1999),47-48)。
【0019】
しかし、本発明らは、バルク金属ガラスについて、引張破断時のひずみ、せん断破壊時のひずみに対して負荷ひずみが50%以下と小さい場合でも、擬弾性現象が引張ではほとんど生じず、せん断では大きく生じる特徴を見出した。
よって、バルク金属ガラスについてみられるこのようなせん断応力下の顕著な擬弾性現象はアモルファス合金薄膜の大きい荷重下の弾性挙動とは異なる特異な機構に基づくものと考えられる。その機構は、現在のところ明らかではないが下記のような推測が可能である。一般に、通常の結晶合金では見られず、バルク金属ガラスで見られる特有の現象として次のことが知られている。
【0020】
引張、圧縮破壊は一つの最大せん断応力面で生じ、また、疲労き裂伝播方向は、き裂伝播速度が応力拡大係数範囲の指数則で表される領域で引張荷重軸に垂直な方向ではなく、やはり一つの最大せん断応力方向に進展しやすい。これらは、破壊が一挙に進展する場合も、徐々に進展する場合も最大せん断応力方向にすべりやすいことを示している。金属ガラスは、通常、原子半径差の比が10%程度以上異なる3元系以上からなっている。このように、金属ガラスは、原子半径差の比が大きいので、1番小さい原子が大きな原子間の隙間を移動して最大せん断応力方向の変位を誘起している可能性が考えられる。
【0021】
これより、バルク金属ガラスは、最大せん断応力方向ですべり変位が生じやすく、負荷過程ではせん断応力が大きくなるにつれて弾性変位に加えて最大せん断応力方向の変位も徐々に大きくなって加わり、応力−ひずみ曲線は上に凸になり、除荷では逆の現象が生じて下に凸になり、結果として、引張応力下ではなく、せん断応力下で擬弾性現象が顕著に現れるものと考えられる。
【0022】
【実施例】
下記の表1に示す組成のバルク金属ガラスのせん断応力下での擬弾性特性を比較例のみがき丸棒鋼(JIS SGD 400−D)と対比して具体的に説明する。バルク金属ガラスおよびみがき丸棒鋼の機械的特性を併せて表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
Pd40Cu30Ni10P20(at%)についてみれば、最も大きいPdの原子半径に対するPdとCu,NiおよびPの原子半径差の比は、それぞれ7%、10%および26%である。
また、La60Al20Ni10Cu5Co5(at%)についてみれば、最も大きいLaの原子半径に対するLaとAl,Ni、CuおよびCoの原子半径差の比は、それぞれ31%、50%および50%である。
また、Zr55Cu30Ni5Al10(at%)についてみれば、最も大きいZrの原子半径に対するZrとCu,NiおよびAlの原子半径差の比は、それぞれ27%、30%および13%である。
【0025】
実施例1
本発明者らが開発した貴金属基バルク金属(特開平9−195017号公報参照)に相当する単相バルク金属ガラスPd40Cu30Ni10P20(at%)について下記の試験を行った。この単相バルク金属ガラスは以下の製造方法により製造したものである。
【0026】
予め合金化したPd−P、純Pd、NiおよびCuを純アルゴンガス中で高周波誘導加熱して所定の組成に合金化した。これを金属ガラスの母合金とした。母合金を所望の内径を有する石英管中に装填し、石英管の開放端より真空ポンプを用いて石英管内を真空脱気した。その後、石英管の開放端をバーナ等の熱源で閉じカプセル状に封入した。このカプセルを加熱炉中で所定の温度まで昇温し、原料合金を完全に溶解させた。この原料合金溶湯を、かき回した水中へ石英管ごと入れ、急冷凝固した。
【0027】
引張試験には、両端のつかみ部直径φ10mm、平行部直径φ4mmの円形断面の試験片、ねじり破断試験には、つかみ部直径φ10mm、平行部直径φ5.5mmの円形断面の試験片、弾性範囲内のねじり試験には直径10mmのストレートの丸棒を用いた。
【0028】
試験機は、引張試験、ねじり試験ともに軸力電気油圧サーボ式疲労試験機(島津製作所製EHF-U 50kN)を用いた。ねじり試験は、ピストン軸変位を回転運動に変換するねじり治具により、ねじり棒を介して試験片にねじり変形を与えて実施した。ピストン変位速度は0.01mm・s−1(ねじり角速度約1×10−4rad・s−1、せん断ひずみ速度約1.1×10−5s−1)一定とした。
【0029】
トルクは、ねじり棒に貼付けたひずみゲージの出力から、また、ねじり角はクリップゲージで試験片固定板間の変位を求め、これをねじり角に変換して求めた。変位とねじり角の関係は予め予備試験を行い決定した。また、引張試験は荷重制御で行い、応力負荷速度はねじり試験と同じになるようにした。引張試験の引張荷重は、試験機のロードセルを、ひずみは、標点間距離12.5mmのクリップゲージをそれぞれ用いて測定した。
【0030】
試験結果
図2に、ねじり試験のトルク(T)とねじり角(φ)の関係を示す。
また、せん断応力(τ)とせん断ひずみ(γ)は、それぞれTとφを用いて弾性体の関係式τ=T・d/2/Ip、γ=φ・(d/2)/lから求めた。ここで、dは平行部直径、Ipは断面二次極モーメント、lは平行部長さである。これらの値は、試験片平行部の表面における値である。
【0031】
Pd基金属ガラスにおいては破壊に至るまで明瞭な降伏現象が見られず、ねじり試験におけるせん断強さτBも破壊時のトルクTBを用いて弾性体の式で評価した。その値は980MPaであり、報告されているPd基の引張強さσB=1640MPa)に対して、ミーゼスの相当応力の関係τ=σ/√3)とほぼ一致している。
【0032】
図3に、引張試験のσ−ε関係(a)とねじり試験のτ−γ関係(b)を示す。最大負荷応力値はそれぞれ、破断強さの約30%とした。図3の(a)に示されるように、引張試験では負荷と除荷行程は良く一致しており擬弾性挙動は見られない。しかし、図3の(b)に示されるように、ねじり試験のτ−γ関係では明らかに擬弾性挙動が見られる。また、応力除去後の残留歪みは実質的に0である。
【0033】
実施例2
実施例1と同様の方法で製造した単相バルク金属ガラスLa60Al20Ni10Cu5Co5(at%)について実施例1と同様に試験を行った。引張試験に、平行部直径φ6mmの円形断面の試験片を用いた以外は実施例1と同じ条件とした。La基金属ガラスのτBは、文献で報告されているσBの1/√3であるとして求めた。
【0034】
図4に、引張試験のσ−ε関係(a)とねじり試験のτ−γ関係(b)を示す。最大負荷応力値はそれぞれ、破断強さの約30%とした。図4の(a)に示されるように、引張試験では負荷と除荷行程に若干の差異が見られる。しかし、図4の(b)に示されるように、ねじり試験のτ−γ関係では明らかに擬弾性挙動が見られる。また、応力除去後の残留歪みは実質的に0である。
【0035】
図5(a)〜(c)は、La基金属ガラスのねじり試験の応力レベルを変えて実施したτ−γ関係を示す。図5(a)に示すように、負荷レベルがτBの4%と小さくても擬弾性が生じており、擬弾性特性は負荷応力レベルの増加とともに大きくなる傾向が見られる。
【0036】
実施例3
実施例1と同様の方法で製造した単相バルク金属ガラスZr55Cu30Ni5Al10(at%)について実施例1と同様に試験を行った。Zr基金属ガラスのτBは、文献で報告されているσBの1/√3であるとして求めた。
【0037】
図6に、引張試験のσ−ε関係(a)とねじり試験のτ−γ関係(b)示す。最大負荷応力値はそれぞれ、破断強さの約30%とした。図6の(a)に示されるように、引張試験では負荷と除荷行程は良く一致しており擬弾性挙動は見られない。しかし、図6の(b)に示されるように、ねじり試験のτ−γ関係では明らかに擬弾性挙動が見られる。また、応力除去後の残留歪みは実質的に0である。図7(a)〜(c)は、Zr基金属ガラスの引張試験の応力レベルを変えて実施したσ−ε関係を示す。負荷レベルをσBの20〜50%程度に変えても負荷と除荷行程は良く一致している。
【0038】
比較例1
比較のために金属結晶の代表としてみがき丸棒鋼(JIS SGD 400−D)を用いて試験を行った。引張試験に、平行部直径φ6mmの円形断面の試験片を用いた以外は実施例1と同じ条件とした。
【0039】
図8に、ねじり試験のトルク(T)とねじり角(φ)の関係を示す。鋼の場合には大きな降伏現象を生じていることから、TBを用いて剛完全塑性体を仮定し、全断面降伏状態となった場合の関係式τB=12TB/(πd3)9)からτB値を求めた。
【0040】
図9に、引張試験のσ−ε関係(a)とねじり試験のτ−γ関係(b)を示す。最大負荷応力値は、破断強さの約30%とした。σ−ε関係では負荷と除荷曲線が良く一致し、τ−γ関係でもかなり良く一致している。
【0041】
以上の実施例1〜3および比較例1の結果をまとめて図10に示す。図10の縦軸は、擬弾性現象で消失したひずみエネルギーをAとし、除荷で吐き出されたひずみエネルギーをBとした場合に、負荷で蓄えられた全ひずみエネルギー(A+B)に対する擬弾性現象で消失したひずみエネルギーAの比率(%)A×100/(A+B)を示している。また、横軸は、負荷ひずみ/破断時のひずみ(%)を示している。
【0042】
図10に示されるように、バルク金属ガラスでは1サイクルのねじり試験のせん断応力対せん断ひずみ関係において、(せん断ひずみが破断せん断ひずみの20〜30%と小さくても)擬弾性現象により消失するひずみエネルギーは負荷により与えられたひずみエネルギーの4%以上となり顕著な擬弾性現象を生じた。また、引張応力対ひずみ関係においては、A/(A+B)は0%(Pd基金属ガラス、Zr基金属ガラス)か2%程度(La基金属ガラス)であり、顕著な擬弾性現象は生じなかった。なお、鋼の横軸の値は破断時のひずみではなく、比例限度に対する値である。
【0043】
さらに、図11に、実施例1〜3および比較例1の結果をまとめて、せん断応力の除荷により消失するひずみエネルギー率[A/(A+B)]と横弾性率Gとの関係を示す。横弾性率が小さいほどA/(A+B)が大きい傾向があることが分かる。
【発明の効果】
本発明によれば、従来考えられていなかったバルク金属ガラスの新しい適用分野を広めることができ、例えば、つるまきバネやねじりバネとして用いた場合は、減衰器(ダンパ)を併用したかのような減衰特性に優れた(振動が早く止まる)バネを作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、応力−ひずみ曲線における擬弾性現象を模式的に示す図である。
【図2】図2は、実施例1のねじり試験のトルク(T)とねじり角(φ)の関係を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例1の引張試験のσ−ε関係(a)とねじり試験のτ−γ関係(b)を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例2の引張試験のσ−ε関係(a)とねじり試験のτ−γ関係(b)を示すグラフである。
【図5】図5(a)〜(c)は、実施例2において、ねじり試験の応力レベルを変えて実施したτ−γ関係を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例3の引張試験のσ−ε関係(a)とねじり試験のτ−γ関係(b)示すグラフである。
【図7】図7(a)〜(c)は、実施例3において、引張試験の応力レベルを変えて実施したσ−ε関係を示すグラフである。
【図8】図8は、比較例1のねじり試験のトルク(T)とねじり角(φ)の関係を示すグラフである。
【図9】図9は、比較例1の引張試験のσ−ε関係(a)とねじり試験のτ−γ関係(b)を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例1〜3および比較例1の結果をまとめて、せん断応力除荷により消失するひずみエネルギー率(%)と負荷ひずみ/破断時のひずみ(%)の関係を示すグラフである。
【図11】図11は、実施例1〜3および比較例1の結果をまとめて、せん断応力除荷により消失するひずみエネルギー率(%)と横弾性率(GPa)の関係を示すグラフである。
Claims (6)
- 引張応力−ひずみ曲線において擬弾性現象を示さず、せん断応力−ひずみ曲線において、せん断応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーの率が負荷で蓄積される全エネルギーに対して4%以上であり、負荷除去後に残留ひずみが実質的に0である擬弾性現象を利用することを特徴とするバルク金属ガラスを弾性材料として使用する方法。
- 引張応力−ひずみ曲線において、引張破壊時のひずみに対して負荷ひずみが50%以下において引張応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーの率が負荷で蓄積される全エネルギーに対して3%以下である擬弾性現象を示し、せん断応力−ひずみ曲線において、せん断応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーの率が負荷で蓄積される全エネルギーに対して4%以上であり、負荷除去後に残留ひずみが実質的に0である擬弾性現象を利用することを特徴とするバルク金属ガラスを弾性材料として使用する方法。
- バルク金属ガラスがPd基、La基、またはZr基の金属ガラスのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルク金属ガラスを弾性材料として使用する方法。
- 引張応力−ひずみ曲線において擬弾性現象を示さず、せん断応力−ひずみ曲線において、せん断応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーの率が負荷で蓄積される全エネルギーに対して4%以上であり、負荷除去後に残留ひずみが実質的に0である擬弾性現象を有することを特徴とするバルク金属ガラスからなるつるまきバネまたはねじりバネ。
- 引張応力−ひずみ曲線において、引張破壊時のひずみに対して負荷ひずみが50%以下において引張応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーの率が負荷で蓄積される全エネルギーに対して3%以下である擬弾性現象を示し、せん断応力−ひずみ曲線において、せん断応力を1サイクル加えた場合に除荷により消失するひずみエネルギーの率が負荷で蓄積される全エネルギーに対して4%以上であり、負荷除去後に残留ひずみが実質的に0である擬弾性現象を有することを特徴とするバルク金属ガラスからなるつるまきバネまたはねじりバネ。
- バルク金属ガラスがPd基、La基、またはZr基の金属ガラスのいずれかであることを特徴とする請求項4又は5に記載のバルク金属ガラスからなるつるまきバネまたはねじりバネ。
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