JP3789698B2 - 自動調心ころ軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、各種の機器、例えば鉄鋼,産業機械等に用いられる自動調心ころ軸受に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来、複列の自動調心ころ軸受として、図4に示すように、ころ53の端面を案内する案内輪55を、内輪51と外輪52との間に設けたものがあり、案内輪55は内輪51の外径面と保持器54の内径面との両方で案内される(例えば、特開昭54−113744号公報、特公昭46−29801号公報)。
【0003】
このような案内輪付きの自動調心ころ軸受においては、案内輪55の回転数は保持器54の回転数とほぼ同一となり、ころ53の端面と案内輪55との滑り速度が遅くなる。そのため、滑り面で油膜形成が生じ難く、案内輪55の摩耗の原因となる。
【0004】
また、両列のころ53は、互いに軸心がハ字状に開くように、内輪51の軌道面を転走するが、案内輪55は、このようにハ字状に開いたころ53の互いにV字状を成す端面に側面が沿う逆台形状の断面形状とされている。そのため、案内輪55は、図5(B)に接触部aを太線で示すように、ころ端面外径部に線接触することになる。図5(A)に示す案内輪55の断面では、その内径端付近から外径部までの範囲a′が、ころ端面接触部となる。
このように、従来の自動調心ころ軸受は、案内輪55がころ端面外径部で線接触する形状のため、接触面積が大きく、油膜が形成され難い。その結果、ころ53の挙動によって、案内輪55が摩耗するという現象が発生することがある。また、油膜形成の不十分による潤滑不足は、軸受温度の上昇を招く。
【0005】
この発明の目的は、案内輪のころ端面との滑り接触部に油膜が形成され易く、案内輪の摩耗が軽減でき、軸受温度の上昇を低く抑えることのできる自動調心ころ軸受を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の自動調心ころ軸受は、隣合うころ列間に介在してころの端面を案内する案内輪を、内輪と外輪との間に設け、前記ころを保持する保持器を設けた自動調心ころ軸受において、前記案内輪の内径面と内輪の外径面との隙間を、案内輪の外径面と保持器の内径面との隙間より小さくして、前記案内輪を内輪の外径面のみで案内されるものとしたことを特徴とする。
このように、案内輪を内輪案内とすることで、案内輪は内輪回転数に近い回転数で回転することになり、ころ公転数よりも速い速度で回転する。そのため、ころと案内輪の滑り速度が大きくなって、その滑り面に油膜が形成され易くなる。その結果、案内輪の摩耗が軽減され、軸受温度の上昇も低く抑えられる。
【0007】
この発明において、案内輪ところ端面との接触は、案内輪の内径部ところ端面の外周部とで点接触となるようにしても良い。
このように点接触とすることで、案内輪のころ端面との接触面積が小さくなって、油膜が形成され易くなる。そのため潤滑性能が向上し、案内輪が摩耗し難くなると共に、軸受温度の上昇が抑制される。
この発明において、案内輪の断面形状を、この案内輪の側面ところ端面との間に内径側が狭まる楔形断面形状の隙間が生じる形状としても良い。これによって、案内輪ところ端面との接触が、ころ端面の外周部で点接触となる。
このように、案内輪ところ端面間に楔形の隙間が生じることで、その滑り接触面に潤滑油が入り易くなり、潤滑性能が向上する。
【0008】
この発明において、案内輪の外径面と保持器の内径面との隙間は、保持器の位置が軸受中心に対して変動可能な最大範囲まで偏っても、案内輪の外径面に保持器の内径面が接しないだけの寸法とする。
保持器のころを保持するポケットの内面ところの外面との間には、若干の隙間がある。そのため、軸受の設置姿勢によっては、また軸受に大荷重が作用したときに、保持器は軸受の中心から偏ることがある。このような保持器の偏りによって、保持器が案内輪に接すると、案内輪は保持器との摩擦による連れ回りで、回転数が増大し、この発明の案内輪の回転数の内輪回転数に近づける効果が十分に得られない。しかし、上記のように、保持器が最大範囲まで偏っても、案内輪に接しないだけの隙間寸法としておくことで、案内輪の保持器との連れ回りが確実に防止され、案内輪の回転数を常に内輪回転数に近い回転数とできる。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図1と共に説明する。この自動調心ころ軸受は、内輪1と外輪2との間に、ころ3を複列に介在させ、隣合うころ列L1,L2間に案内輪5を設け、案内輪5を内輪案内としたものである。各列L1,L2のころ3は、各列L1,L2毎に設けた保持器4のポケットに保持される。
外輪2は、内径面の略全面が、軸受中心を中心とする球面状の軌道面2aとさている。ころ3は、外径面が外輪2の球面状の軌道面2aに沿った円弧状断面の曲面とされ、両側の端面は、平坦面状とされて、外径縁に円弧状断面の面取りが施されている。内輪1は、外径面に2列に円弧状断面の軌道面1a,1aが形成され、両軌道面1a,1aは、互いに若干、軸受幅面の外側を向くように形成されている。したがって、これら内外の軌道面1a,2a間に介在した各列L1,L2のころ3,3は、そのころ中心軸が互いにハ字状に開く。内輪1の外径面における両軌道面1a,1aの外径面部1bは、円筒面状の案内輪案内面とされている。
【0010】
保持器4は、円筒状部4aと、この円筒状部4aの軸方向外側端から内径側に延びる内鍔部4bとを有する逆L字状断面形状のものとされ、円筒状部4aに、複数個のころ3を1個ずつ保持するポケット4cが形成されている。保持器4は、内鍔部4bの内径面が内輪1に近接して案内される内輪案内形式のものであっても、ころ3で案内される転動体案内形式のものであっても良い。
【0011】
案内輪5は、内輪1の中央の外径面部1bと、保持器4の円筒状部4aの内径面との間に設けられている。案内輪5は、この案内輪5の内径面と内輪1の外径面部1bとの隙間Bを、案内輪5の外径面と保持器4の内径面との隙間Aよりも小さくすることで、内輪1の外径面部1bのみで案内されるものとしてある。また、上記隙間Aは、保持器4の位置が軸受中心に対して変動可能な最大範囲まで偏っても、案内輪5の外径面に保持器4の内径面が接しないだけの寸法としてある。案内輪5の断面形状は、両側面が各列L1,L2のころ3の端面に沿う傾斜面となった逆台形状の断面形状とされている。各部品の材質は、案内輪5が鋳鉄または炭素鋼製とされ、内外輪1,2およびころ3は、軸受鋼製とされている。
【0012】
この構成の自動調心ころ軸受によると、案内輪5を内輪案内としたため、案内輪5は内輪回転数に近い回転数で回転することになり、ころ3の公転数よりも速い速度で回転する。そのため、ころ3の端面と案内輪5との滑り速度が大きくなって、その滑り面となる案内輪側面およびころ端面に油膜が形成され易くなる。その結果、案内輪5の摩耗が軽減され、軸受温度の上昇も低く抑えられる。
また、案内輪5と保持器4との寸法Aを、保持器4が軸受中心に対して最大範囲まで偏っても案内輪5に接しないだけの寸法としたため、軸受の設置姿勢や、軸受に作用する荷重にかかわらず、案内輪5は内輪回転数に近い回転数で回転することになり、上記の作用,効果が確保される。
【0013】
図2および図3は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態の自動調心ころ軸受は、図1の軸受に対して、案内輪5Aの形状を異ならせたものであり、その他の構成は図1の軸受と同じである。
この実施形態では、案内輪5Aの断面形状を、この案内輪5Aの側面ところ端面との間に内径側が狭まる楔形断面形状の隙間dが生じる形状としてある。これにより、案内輪5Aところ3の端面との接触が、ころ端面の外周部で点接触となる。案内輪5Aは、具体的には矩形状の断面形状としてあり、ころ3が内輪1に対して傾くことで、楔状断面形状の隙間dが生じている。案内輪5Aの両側面の外径縁および内径縁は、図3(A)に示すように、断面が円弧状等となる面取が施されている。
【0014】
この構成の場合、案内輪5Aが、図3(B)に示すように、ころ3の端面に対して、ころ端面外周部の接触点Pで点接触することになって、両者間の接触面積が小さくなる。また、案内輪5Aところ端面間に楔形の隙間dが形成され、潤滑油が入り易くなる。これらのため、案内輪5Aの摩耗が抑制され、また潤滑性能が向上する。潤滑性能が向上するため、温度上昇も低く抑えられる。
【0015】
【発明の効果】
この発明の自動調心ころ軸受は、案内輪を内輪の外径面のみで案内されるものとしたため、案内輪は内輪回転数に近い回転数で回転することになり、ころと案内輪の滑り速度が大きくなって、油膜が形成され易くなり、その結果、案内輪の摩耗が軽減され、軸受温度の上昇も低く抑えられる。
案内輪の外径面と保持器の内径面との隙間は、保持器が軸受中心に対して最大範囲まで偏っても、案内輪に接しないだけの寸法としたため、軸受の設置姿勢にかかわらず、また軸受に作用する荷重の大きさにかかわらず、上記の各作用,効果が得られる。
案内輪ところ端面との接触が、ころ端面の外周部で点接触となるようにした場合は、接触面積の低減により油膜が形成され易くなり、その結果、案内輪の摩耗が軽減され、軸受温度の上昇も低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る自動調心ころ軸受の部分断面図である。
【図2】この発明の他の実施形態に係る自動調心ころ軸受の部分断面図である。
【図3】(A)は同軸受の案内輪の断面図、(B)はその案内輪ところ端面との接触部を示す説明図である。
【図4】従来例の部分断面図である。
【図5】(A)は、同従来例の案内輪の断面図、(B)はその案内輪ところ端面との接触部を示す説明図である。
【符号の説明】
1…内輪
2…外輪
3…ころ
4…保持器
5…案内輪
5A…案内輪
5B…案内輪
A,B…隙間
L1,L2…ころ列
Claims (3)
- 隣合うころ列間に介在してころの端面を案内する案内輪を、内輪と外輪との間に設け、前記ころを保持する保持器を設けた自動調心ころ軸受において、前記案内輪の内径面と内輪の外径面との隙間を、案内輪の外径面と保持器の内径面との隙間より小さくして、前記案内輪を内輪の外径面のみで案内されるものとし、案内輪の外径面と保持器の内径面との隙間は、保持器の位置が軸受中心に対して変動可能な最大範囲まで偏っても、案内輪の外径面に保持器の内径面が接しないだけの寸法としたことを特徴とする自動調心ころ軸受。
- 案内輪ところ端面との接触が、案内輪の内径部ところ端面の外周部とで点接触となるようにした請求項1記載の自動調心ころ軸受。
- 案内輪の断面形状を、この案内輪の側面ところ端面との間に内径側が狭まる楔形断面形状の隙間が生じる形状とした請求項2記載の自動調心ころ軸受。
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