JP3789652B2 - 耐熱密着性ラップフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にその用途を限定しないが、包装用、特に家庭用ラップフィルムとして好適に使用される耐熱密着性ラップフィルムに関するものである。
但し、本発明の特性を同時に利用する他の用途が有ればこれに限定しないものとするが、説明は以後上記ラップについて行う。
【0002】
【従来の技術】
家庭用ラップフィルムは、主として容器に盛った食品をオーバーラップ包装し、冷蔵庫や冷凍庫でのこれら食品の保存用、又これらの電子レンジでの加熱用に使用される。このため、家庭用ラップフィルムには、透明性は勿論のこと、包装し易い適度の弾性率、冷蔵保存・加熱時に、加熱中も溶融穿孔、大きな変形、容器への融着、それ自身の変質等の無い耐熱安定性、及びラップ同士、容器に対する低温から高温域までの適度な密着性等が要求されている。
【0003】
現在、市販されている家庭用ラップフィルムとしては、最も使い勝手の良いポリ塩化ビニリデン系樹脂を主体とした延伸フィルム、その他、後述のラップ適性においては大幅に劣るポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1系樹脂等を主成分とするフィルム等がある。しかしながら、あらゆる面でより安全性が高いと思われる脂肪族ポリエステル系樹脂からなり、使い勝手も良く、且つ環境・衛生的にもより優れ、更に塩化ビニリデン系樹脂からなるラップフィルムを越えるものは未だかつてない。
【0004】
例えば、乳酸系脂肪族ポリエステルからなる他用途の延伸フィルムは、特開平6−23836号公報等に開示されているが、該公報に開示のフィルムの引張弾性率は220kg/mm2 を超え、あまりにその値が高すぎ、後述の問題点をも含み、ラップ同士の密着性も、又他に本発明に後述するラップ適性も無く、全く家庭用ラップフィルムとして適さないものである。また、特開平9―272794号公報には、本発明の用途と異なる従来一般包装用ポリエチレン袋用途に向けた単なる柔軟性付与のため、ポリ乳酸系樹脂に、軟化点が低く且つ結晶化点が室温以下の柔軟な他種の脂肪族ポリエステル樹脂を多量(25〜80重量%)に混合して柔軟性及び両樹脂の分子間の相互作用により結晶を制御し押さえ、透明性を付与する旨の記述がある。これも本発明の特定のラップ用途と異なる分野のものである。また、特開平7―257660号公報には、他用途の、乳酸系樹脂利用による野菜、花卉、果実等の輸送、貯蔵時に使用する水蒸気透過度が50〜300g/m2 ・24hrの従来2軸延伸ポリスチレンフイルム(通称OPSフイルム)鮮度保持用途分野の厚み10〜500μmのフイルムの開示等がある。これらは、本発明の用途とは異なる分野のものであり本発明の特定のラツプには、都合良く使え難いものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、2−ヒドロキシイソ酪酸を含む2−ヒドロキシ−2,2−ジアルキル酢酸系脂肪族ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種を主成分とした新規な家庭用ラップフィルムとして、特に加熱使用時の各種容器(含磁器製、プラスチックス製)包装、又容器無しのラッピング包装共に、好適な耐熱密着性ラップフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、結晶融点が120〜250℃の、2−ヒドロキシイソ酪酸を含む2−ヒドロキシ−2,2−ジアルキル酢酸(アキル基の炭素数が1〜5)よりなる単位を少なくとも85モル%含む脂肪族ポリエステル樹脂を主体とする樹脂(A)100重量部に対し、(イ)脂肪族系アルコール、脂肪族系多価アルコール、及びこれらの縮重合物から選ばれる少なくとも一種のアルコール成分と、脂肪族カルボン酸及び脂肪族多価カルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸とのエステル及びその変性物、(ロ)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、(ハ)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、(ニ)エポキシ化大豆油、(ホ)ポリグリセリン縮合物、及び(ヘ)ポリグリセリンと脂肪族脂肪酸とのエステルから選ばれる少なくとも一種の液状添加剤(B)1〜20重量部を含む樹脂組成物(C)からなる延伸フィルムであって、フィルムの結晶化度が20〜70%であり、引張弾性率が20〜150kg/mm2 であり、100℃における加熱収縮率X%と同加熱収縮応力Yg/mm 2 が下記式(1)〜式(3)の関係式の範囲内にあり、耐熱性が120℃以上であり、厚さ5〜15μmであることを特徴とする耐熱密着性ラップフィルム、である。
式(1) Y≦(1400−20X)/3
式(2) 2≦X≦45
式(3) 5≦Y≦350
【0007】
本発明において、結晶融点が120〜250℃の2−ヒドロキシイソ酪酸系脂肪族ポリエステルを主体とする樹脂(A)としては、2−ヒドロキシイソ酪酸系脂肪族ヒドロキシカルボン酸類の直接重合又は各種環状(二量)体等の開環重合、これらのエステル化物の重縮合、又は他の単量体との共重合、光学異性体の存在するものはそのD−体、L−体、又はそのDL体(ラセミ体)、DL−ラクチド等との共重合をも含むものであり、これら単量体は、好ましくはL体を主体とするが特に限定はしない。又、共重合とはランダム状、ブロック状、両者の自由な混合構造を含むものとする。これら樹脂の共重合する場合のその比率は、上記ラップとしての性能を維持する為には、対象成分同士によっても多少異なるが、一般に、共重合する少量成分の合計で表して15モル%以下である。好ましくは1.5〜14モル%,より好ましくは2〜13モル%、更に好ましくは2.5〜12モル%程度である。これらの下限は、フイルムに柔軟性としなやかさを与える為、又密着性を与える添加剤との適度ななじみを与えるために都合が良く、上限は、耐熱性不足、寸法安定性の悪化等で制限される。
【0008】
具体的に、共重合又は混合使用する他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸類としては、例えば、グリコール酸、乳酸、β(又は3)−ヒドロキシ酪酸、β(又は3)−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシブタン酸、2−ヒドロキシ−2,2−ジアルキル酢酸の内異なるアルキル基(炭素数が1〜5)から選ばれるもの、その他公知のもの、等から選ばれる少なくとも一種を原料とするのが好ましい。但し、これらの環状二量体(これらの光学異性体が存在するものも含めて)、これらのエステル類を原料として使用しても良い。
次に共重合するラクトン類としては、β―ブチロラクトン、β―プロピオラクトン、ピバロラクトン、γ―ブチロラクトン、δ―バレロラクトン、β―メチルーδ―バレロラクトン、ε―カプロラクトン、を含むものである。
【0009】
同様に、重合時のアルコール成分、即ち(共)重合する脂肪族多価アルコール類には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、その他のポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジ−、トリ−、テトラプロピレングリコール、カーボネート結合を有するジオール類、などが挙げられ、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等も使用することが可能である。なお、これらを多成分に組み合わせて用いてもよい。
【0010】
又、重合時の酸成分、即ち(共)重合する脂肪族多価カルボン酸類としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−ジシクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、及びこれらのエステル誘導体、酸無水物等を使用することが可能である、なお、これらを多成分に組み合わせてもよい。
【0011】
又更に、此に限定されるものではないが、例えば、好ましい組み合せ例として、2−ヒドロキシイソ酪酸を主原料にして単独(含二量体)で重合したもの、又は少量の他の単量体と共重合したもの、例えば、乳酸系のものでは、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド,DL−ラクチド、等の2量体、又はL−乳酸、D−乳酸、又はDL−乳酸、と共重合したもの、グリコール酸と共重合したもの、3−ヒドロキシ酪酸と共重合したもの、3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシブタン酸、ε―カプロラクトンと共重合したもの(前述のランダム状、ブロック状、その他を含む)等がある。又これらのエステル類を原料として重縮合しても良い。
【0012】
該樹脂(A)は、2−ヒドロキシイソ酪酸系単量体に、必要により上述の単量体を組み合わせて得られる2−ヒドロキシイソ酪酸系脂肪族ポリエステルを主体とし、これらは結晶融点(DSC法に準じてスキャンスピード10℃/分で測定)が120〜250℃のものを主成分としている。又、重合する触媒により、その結晶構造は制御でき、アイソタクチック、シンジオタクック、両者の混合する結晶、ブロック的結晶構造、その他自由なものが重合できるが、要するに主として、上記の耐熱性を発揮できる結晶融点成分が有れば良いことである。
原料としての樹脂の結晶融点が120℃未満だと、ラップフィルムの耐熱性、剛性が不足し、また結晶融点が250℃を超えると、樹脂の分解温度が近くなり、押出成形性や延伸性等の加工性が悪くなるため好ましくない。又、より好ましいこれらの範囲は、同じ理由で、下限が130℃上限が240℃である、更に好ましくは、下限が140℃上限が230℃である。
【0013】
更に、フイルム化する原料としての該脂肪族ポリエステルの飽和結晶化度の範囲は通常20〜80%程度であり、好ましくは30〜70%である。又、フイルムの結晶化度の範囲は、通常20〜70%程度であり、好ましくは25〜60%である。これらの下限はフイルムの耐熱性より制限され、上限は原料の成形加工性不足、柔軟性不足(それ自身でも柔軟性が不足する他に、可塑剤を均一に含み難くなり、有効な密着性を付与せしめ難くなる)、又はフイルムの透明性等より制限される。但し、原料の特性で、加工条件(急冷等)、及び添加剤(結晶制御)等の影響によりフイルムに加工した後、上述より更に結晶化度が低くなるが、これを加熱使用(例えば調理する)時、結晶化速度が早くて即座に結晶し、結果として有効に耐熱性がでる(フイルムが局部的にでも、メルト、穿孔しない)場合は、使用前フイルム結晶化度の制限値下限は、この限りでない。この場合、上記の脂肪族ポリエステルの内、生分解性機能を有するが結晶化度が高い結果として(廃棄処理時、生ゴミと一緒にコンポスト化した場合)生分解し難いタイプの樹脂の廃棄物処理を容易にさせるのに好ましい場合が有る。
【0014】
又該樹脂(A)は、主体となる上記脂肪族ポリエステルの他に50重量%以下、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜30重量%の範囲内で通常公知の他の脂肪族ポリエステル(前述の共重合する場合の単量体よりなる重合体、又は共重合体を含む)、ポリL−乳酸系重合体とポリD−乳酸系重合体との共晶性混合体、又他の熱可塑性樹脂を少なくとも一種混合して用いてもかまわない。これらには、前述の2−ヒドロキシイソ酪酸系以外の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリオレフイン系樹脂、芳香族系単量体を含む通常のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンービニルアルコール系共重合樹脂、エチレンースチレン共重合樹脂(含同環水添樹脂)、α−オレフイン−一酸化炭素共重合樹脂(含同水添樹脂)、エチレン−脂環族炭化水素共重合樹脂(含同水添樹脂)、スチレンとブタジエンないしイソプレン共重合樹脂(含同水添樹脂)、ポリカプロラクトン類、その他が含まれる。
【0015】
混合使用する樹脂としてより好ましくは、本発明の脂肪族ポリエステルの内異なるアルキル基のもの同志、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、乳酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、4―ヒドロキシブタン酸、から選択される少なくとも1種の単量体(又これらのエステル)を原料として、少なくとも50モル%以上含む重合体、及び共重合体、又はこれらに乳酸を85モル%以下含む共重合体が好ましい(但し、通常では、光学異性体も結晶構造に影響を与えるので別の単量体として換算することとする)。
【0016】
又上述の乳酸系樹脂の共晶(ステレオコンプレックス)体のごときリジッドな特殊な構造になり、結果として耐熱性等が発揮される場合もより好ましい。
本発明で使用する液状添加剤(B)としては、ラップフィルムの引張弾性率の調整で取り扱い時のしなやかさ、密着性(同仕事量)付与の為に必要であり、更にフイルムの生分解性等を好適な範囲にコントロールするために有用なものであり、その主体とする成分の50℃での粘度(以後、B型粘度計での測定値)が少なくとも5センチポイズ以上、100℃での粘度が500センチポイズ以下、好ましくは100℃での粘度で300センチポイズ以下で有り、かつその主体とする成分の沸点が170℃以上の液体が好適に使用可能である。
【0017】
その添加量は、該樹脂(A)100重量部に対し、1〜20重量部の範囲であり、これらの好ましい範囲は1〜15重量部であり、より好ましくは2〜10重量部である。それらの理由は、後述の通りである。
これら添加剤は、なかでも、脂肪族アルコール、又は脂環族アルコール、又はこれらの多価アルコール、及びこれらの縮重合物、から少なくとも一種選ばれるアルコール、及び同アルコール成分と脂肪族又は芳香族多価カルボン酸とのエステル、脂肪族ヒドロキシカルボン酸とアルコール及び/又は脂肪酸とのエステル、及びこれらエステルの変性物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はそのエステル、該樹脂(A)のオリゴマー、ミネラルオイル、流動パラフィン、飽和炭化水素化合物よりなる低重合物、から成る群から選択された少なくとも1種の可塑剤がより好適に使用可能である。
【0018】
例示に限定されるものではないが、これらには、グリセリン、ジグリセリン、・・・等のポリグリセリン類、及びこれらをアルコール成分の原料とし、酸成分として脂肪族脂肪酸、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、・・・等との、モノ、ジ、トリ、・・・等のポリエステル等より選ばれる少なくとも一種のエステル、又はソルビタンと上記脂肪酸との自由なエステル、又はエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、およびこれらの縮重合物と上記脂肪酸との自由なエステル、又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸として、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、・・・等と、炭素数10以下の低級アルコールとの自由なエステル、又は多価カルボン酸として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、・・・等と脂肪族アルコールとの自由なエステル、又はこれらエステルの変性物として、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、その他がある。
【0019】
好ましくは、これらから選ばれる少なくとも2種の粘度差(以後50℃で測定して差が少なくとも3センチポイズ)のあるものを選定し混合使用すると良い。より好ましくは、上記に加え「高粘度物/低粘度物」の重量混合比を「0.5/10〜9/1」の範囲で混合使用するのが良く、更に好ましくは上記粘度差が少なくとも10のもの、及び「高粘度物/低粘度物」の重量混合比は「1/9〜5/5」の範囲で混合使用するのが良い。3種以上混合使用する場合は、該全添加量の内少なくとも5重量%以上添加する物の内、どれかの2成分が上記を満たしていれば良い。その理由は、フイルム表面に経時的にもより平均的にブリードアウト(ブリードアウトする速度、量とも)し、両成分が相乗的に有効に前述の機能を発揮出来る場合があるからである。
【0020】
なお、実施例等に示される諸物性の測定、及び本発明におけるこれら諸物性の範囲等については次のとおりである。
(1)ここでいう引張弾性率は、ASTM−D882に準拠して測定され、当該フィルムの2軸延伸時の流れ方向に対して、縦、横方向における2%伸張時の応力値を100%に換算し、更に厚み換算した値の平均値で表し、弾性率(kg/平方(sq)ミリメートル(mm)単位)で表す。
【0021】
本フイルムでのこの引張弾性率の範囲は、20〜150kg/mm2 の範囲内で、上記下限はフイルムの(刃切れ性の良い)カット性、フイルムの腰硬さ、フイルムの伸展性(引っ張り、カットした後、包装するまでの張り、防皺等)、取り扱い性、等から制限され、同上限は、フイルムの破断伸びを適当値に制御する効果にも関係して、包装時のフイット性、(刃切れの良い)カツト性を保つ為にも制限される。好ましい範囲は25〜130kg/mm2 、より好ましくは25〜120kg/mm2 の範囲である。
【0022】
(2)加熱収縮率は、100mm角のフイルム試料を接着しないようにタルク等の粉をまぶし、所定の温度に設定したエヤーオーブン式恒温槽に水平に入れ自由に収縮する状態で10分間処理した後、フイルムの収縮量を求め、元の寸法で割った値の百分比で表し、同様に縦、横方向の平均値(%単位)で表す。
本発明での範囲は2〜45%、好ましくは3%〜40%、より好ましくは3%〜35%で有る。その下限は、加熱時のフイット性(多少収縮し、容器、盛り上がった内容物、容器外壁に仮密着したフイルムの皺を消失し密着面積の拡大、又はフイルムーフイルム面の皺で剥離しやすい所を少なくし、密着させる)等に有効で、加熱時高温になり水蒸気が出て剥離し密着不足に成るのを防ぐ為に有効であり、上限はフイルム外れ、破れ、容器(プラスチックス製時)、内容物の変形等に問題を有する様になるためのものである。
【0023】
(3)加熱収縮応力値は、フイルムを幅10mmの短冊状にサンプリングし、それをストレインゲージ付きのチヤックにチヤック間隔50mmに所定の長さより5%緩め(長めに)てセットし、それを所定の温度に加熱したシリコーンオイル中に浸漬し、発生した応力を検出することにより得た浸漬後20秒以内における最大値で、同様に縦、横の同値の平均値を厚み換算した値(g/平方ミリメートル単位、以後単にgと略す)で表す。
本発明での範囲は5〜350g/mm2 、好ましくは10〜300g/mm2 、より好ましくは10〜250g/mm2 で有る。下限は加熱時の収縮率と共に、容器、被包装物へのフイット性(前述、加熱収縮率の時と同じ)、延伸による強度発揮、カット性等に問題を生じるからであり、上限は加熱時の容器からのフイルム外れ、破れ、容器、内容物の変形等により制限される。
【0024】
(4)密着性(同仕事量)は、23℃、関係湿度65%の恒温室で円面積が25平方センチメートルの二つの円柱の各一端側にしわの入らないように該フィルムを緊張させて固定し、その該フィルム面の相互が重なり合うように2本の円柱をあわせ、荷重500gで1分間圧着した後、引張試験機で該フィルム面を互いに垂直な方向に100mm/分のスピードで引き剥がしたときの仕事量(g・cm/25平方センチメートル)で表す。
【0025】
本フイルムでの範囲は、5〜30g・cm/25cm2 の範囲内であり、その理由は,下限以下では包装時及び保存(含冷蔵)、加熱時の容器又はフイルム面同士の密着不足によるフイルム剥がれであり、上限は箱及びロールからの引き出し性不良となり、又包装時にフイルム同士が密着し過ぎ、カット後のフイルム展張性(重なった部分が剥がれ難く又重なりが自然に増加してしまう等)、包装性が悪くなるからである。この好ましい範囲は725g・cm/25cm2 である。
(5)耐熱性は、100mm角のフレームに緊張状態で張ったフイルムの中央部に温度調節可能な半径40mmの熱版に軽く1分間接触させ、フイルム面上に少なくとも合計面積で10mm2 の穿孔が発生する温度を5℃ピッチで測定し、その一歩手前の温度で表す(サンプル繰り返し数、n=5の平均)。
【0026】
本フイルムでのこの範囲は120℃以上、好ましくは130℃以上、より好まししくは140℃以上である。その下限の理由は、電子レンジ等で加熱中の包装破れ等によるフイルム収縮で内容物の飛散、乾燥しすぎ、水分不足で局部加熱になる等であり、その上限は特に限定しないが、他の特性と連動(例えば、加工性の悪化、引っ張り弾性率の高過ぎ等)しているため、好ましくは250℃程度である。又、上記の範囲の理由は電子レンジ等での加熱初期は約100℃の水蒸気でフイルムが破損しなければ当面良いが、内容物と接触している部分が(加熱終了期、特に水蒸気が少なくなった場合)内容物に油成分と塩類の混合物が存在すると特に高温になる場合があり、また全体として耐熱性が悪いと孔があき広がったりフイルム成分が溶け衛生上好ましくないばかりか、容器無しで包装し加熱した場合フイルムが溶着してしまい、さらに取り出し中に真空状態に密着し内容物がそのまま取り出し不可になったりする。
【0027】
(6)結晶化度は、原料樹脂では、結晶化に最適温度で充分アニール処理し平衡状態としたものを広角X線回折法により求めた結晶化度を固定した標準試料の融解エネルギーとの相関を求めて置き、簡易的には、DSC法(JIS−K7122に準処)にて検量線を求めておき、目的サンプルを測定する。但し、製品のフイルムを測定する場合は、フイルムをそのまま測定し、フィルムに含まれる該樹脂(A)成分(層)についてのみ換算(他樹脂混合、多層状共)し、測定するものとする。
フイルムの結晶化度は、その組成物条件、原反の製造条件、延伸条件、熱処理条件等により自由に制御され、原料自身で測定された値より広範囲に変化させることができる。その上限は、適性に配向結晶化させれば、原料より高くする事も可能である。本発明での範囲は前述のとおりである。
【0028】
該樹脂組成物(C)は、該脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部あたり該液状添加剤(B)を1〜20重量部含んでいる。この好ましい範囲は1〜15重量部であり、より好ましくは2〜10重量部である。該(B)が上記下限より少ないとラップフィルムの引張弾性率の調整、使いがつて(滑り性、ロール巻きよりの引き出し性、静電気発生制御、密着面積自己増大性、刃切れ性、等)性、密着仕事量(密着力)等を好適な範囲にコントロールできないので好ましくなく、又延伸安定性も良くない場合が多い。
【0029】
又、該(B)が上記上限よりも多いと、該樹脂(A)が場合により可塑化されすぎて耐熱性が不足するばかりか、フイルム引っ張り弾性率(フイルム腰、取り扱い性に影響)の低下、箱刃物部でのカット後の伸(展)張性が悪くなり、包装性を阻害する重複部が増加したり、これらに伴う皺部が剥離し難くなり伸ばし難く、張った状態で包装し難くなる。又、加熱によりフイルムが収縮し過ぎる様になり、容器からフイルムがはずれ抜けやすくなり、加熱むらが生じ、庫内が汚れてしまう結果となる場合がある。更に、過剰の該(B)が時間の経過とともにラップフィルムの表面や、ロール端部に過剰にブリードアウトし、箱が汚れたり、ラップフィルムがべたついたり、密着性(仕事量)が好ましい範囲から外れたり、食品に移行したりするので好ましくない。
【0030】
該樹脂組成物(C)は、成形し、延伸し、フィルム化され、適度にヒートセットされ、寸法安定性、最終的に結晶度を制御して耐熱性を付与せしめ、本発明の密着性耐熱ラップフィルムとなる。該フィルム化の方法には、T−ダイから押出しキャストロールで急冷後ロール延伸機やテンターで延伸する方法や、環状ダイから単層状、又は必要に応じて多層状に押出し、水冷リング等により所定の温度に急冷後、次の行程で、所定の温度に加熱し、エアーを吹き込んでチューブラー延伸し、次にヒートセットする方法等があるが、製造プロセスが安価で生産性も良く、得られるフィルムの幅方向の厚み・偏肉分散・等を制御しやすく、製品化収率が良い、等の理由で後者の方法が好ましい。
【0031】
本発明の密着性耐熱ラップフィルムに適する100℃における加熱収縮率Xと加熱収縮応力Yとの関係は、X−Y座標系で前述の、式(1)、式(2)、式(3)の線に囲まれた図形の範囲内である。その理由は、加熱収縮率Xが45%を超えるか、加熱収縮応力Yが350g/mm2を超えると(例えば電子レンジ庫内での)加熱時に皿にかぶせたラップフィルムが収縮して容器から外れたり、破れたり、容器又は被包装体(食品)が変形したりするので好ましくない。
【0032】
本発明における好ましい範囲は、下記式(1)、式(2)、式(3)の関係式の範囲内である。
式(1) Y≦(1400−20X)/3
式(2) 2≦X≦45
式(3) 5≦Y≦350
より好ましい範囲は、以下の関係式、式(4)、式(5)、式(6)に囲まれる範囲である、
式(4) Y≦(1100−20X)/3
式(5) 3≦X≦40
式(6) 10≦Y≦300
【0033】
ここでいう加熱収縮率の好ましい範囲は3〜40%の範囲内であり、より好ましい範囲は3〜35%の範囲で有る。又、加熱収縮応力の好ましい範囲は10〜300g/mm2 の範囲内、より好ましい範囲は10〜250g/mm2 の範囲内である。尚、上記温度で表す理由は、主に電子レンジ等で耐熱容器に水分を含む被加熱物を入れ、調理又は単に加熱処理する場合、当所は約100℃の水蒸気に大部分が晒されて膨らみ、加熱される為である。
【0034】
本発明における好ましい種々の包装適性は上記の特性及びその範囲で主に表されるがその他の官能的包装特性も実用上重要であり、前述及び実施例で好ましい範囲としてそれぞれ記す。
本発明の密着性耐熱ラップフィルムの厚みは、家庭用ラップフィルムとしての扱いやすさや原料コストの面で5〜15μmであることが好ましく、より好ましくは6〜13μmであり、更に好ましくは7〜11μmである。
また、本発明の密着性耐熱ラップフィルムは、必要に応じて、少なくとも2層の、互いに異なる該(C)からなる同種層により構成される多層構造をとってもよい。
【0035】
また、本発明の密着性ラップフィルムは、必要に応じて、少なくとも1層の該(C)からなる層が合計厚み比率10〜95%、好ましくは50〜90%と、更に、且つその他層(同様な範囲内の添加量の添加剤を含む)として、上記残り厚み(100%より引いた分)比率の少なくとも1層の他種樹脂層、つまり他の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン−1系樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1系樹脂をはじめとするポリオレフィン系樹脂(PO)、及び、ポリエチレンテレフタレート系(含変性)樹脂、ポリブチレンテレフタレート系(含変性)樹脂をはじめとする芳香族系成分を含むポリエステル系樹脂(PEST)、エチレンービニルアルコール系共重合体樹脂(EVOH)、α−オレフィン−一酸化炭素共重合樹脂(含同水添樹脂)、α−オレフィン(エチレン他)−スチレン共重合樹脂(含同環水添樹脂)、エチレン−環状炭化水素系化合物共重合樹脂(含同水添樹脂)、ポリアミド系樹脂、カプロラクトン系樹脂、等から選ばれる少なくとも一種の樹脂からなる少なくとも一層とから構成される、多層構造をとってもよく、更に任意の層を電子線等の高エネルギー線等の公知な方法で照射処理し、架橋せしめて耐熱性を持たせても良い。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例などを用いて更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
ここに使用する、2−ヒドロキシイソ酪酸系脂肪族ポリエステル樹脂は以下の樹脂である。
A−1;ポリ2−ヒドロキシイソ酪酸系樹脂で、L−乳酸を2重量%共重合した樹脂(結晶融点177℃、結晶化度56%)
A−2;ポリ2−ヒドロキシイソ酪酸系樹脂で、グリコール酸を3モル%共重合した樹脂(結晶融点168℃、結晶化度54%)
A−3;ポリ2−ヒドロキシイソ酪酸系樹脂で、3−ヒドロキシ吉草酸を2モル%共重合した樹脂(結晶融点163℃、結晶化度53%)
【0037】
A−4;ポリ2−ヒドロキシイソ酪酸系樹脂で、3−ヒドロキシヘキサン酸を4モル%共重合した樹脂(結晶化度49%、結晶融点160℃)
A−5;ポリ2−ヒドロキシイソ酪酸系樹脂で、ε−カプロラクトンを5モル%共重合した樹脂(結晶化度44%、結晶融点149℃)
A−6;ポリ2―ヒドロキシイソ酪酸重合体(A−8,結晶融点が183℃、結晶化度65%)と、3−ヒドロキシ酪酸重合体(結晶融点160℃、結晶化度50%)を前者が70重量%、後者が30重量%の混合樹脂
【0038】
A−7;2−ヒドロキシイソ酪酸単位にL−乳酸単位を6モル%共重合した樹脂(結晶融点160℃、結晶化度48%)78重量%に、L−乳酸にD−乳酸を3モル%共重合した共重合体と、D−乳酸にL−乳酸を3モル%共重合した共重合体とを1/1の比で混合配合した共晶性組成物(主結晶融点228℃、主結晶化度47%、但し、主とは共晶成分の換算分を言う)を22重量%混合した樹脂
A−8;ポリ2―ヒドロキシイソ酪酸重合体からなる樹脂(結晶融点183℃、結晶化度65%)
【0039】
ここに使用する液状添加剤(B)は、前述好ましい範囲(粘度)内のもので以下のものである(以下、粘度はセンチポイズを単位を略し、その測定温度50℃/100℃の順に記す)。
B−1;はテトラグリセリンモノラウレート(1700/150)
B−2;ジグリセリンモノラウレート(200/25)
B−3;ポリオキシエチレンアルキルエーテル(18/2)
B−4;エポシキ化大豆油(110/16)
B−5;ミネラルオイル(13/3)
B−6;ポリオキシエチレンソルビタンラウレート(210/34)
B−7;ヘキサグリセリン(1000/70)
B−8;アセチルトリブチルシトレート(11/2)
【0040】
又、ここに使用する樹脂組成物(C)は以下の樹脂である。
C−1;ポリ2−ヒドロキシイソ酪酸(A−8,結晶融点が185℃、結晶化度65%の)80重量%に、ε−カプロラクトン(R−1)(結晶融点62℃、結晶化度45%)20重量%を加えた樹脂100重量部にB−2を4重量部、B−5を2重量部、B−1を1重量部混合した組成物。
C−2;A−7を75重量%に、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(エチレンを39モル%共重合)を25重量%加えた樹脂100重量部に、B−1を3重量部、更にB−5を3重量部混合した組成物。
【0041】
C−3;A−7が85重量%に、エチレン(一部プロピレン)−一酸化炭素共重合樹脂の 水添共重合体15重量%を加えた樹脂100重量部に、B−3を3重量部、更に B−4を2重量部、混合した組成物。
C−4;A−6が80重量%に、PEST−1として、ポリブチレンテレフタレート系共 重合樹脂(アルコール成分として14ブタンジオール80モル%、トリエチレ ングリコール19モル%、ポリテトラメチレングリコール1モル%を共重合:結 晶融点220℃、結晶化度40%)20重量%を加えた樹脂100重量部に、B −6を3重量部、B−7を2重量部、混合した組成物。
【0042】
又、包装性、その他に関する本発明での参考チェックポイントは、数値化が困難な官能的な性能も含む以下の項目を好ましくは満たすことである。
(i) 小巻ロールのエージング保存性(30cm幅で50m巻きの箱に入れた製品を30℃、関係湿度65%下で30日保存時)ロール端部からの添加剤滲みだし、フイルムの適度な剥離性、フイルム表面のべとつき等に問題無きこと。
(ii) ロールの箱からの引き出し性フイルム端部が伸び、静電気がひどく発生しなくて、手・箱等にステックしなく、且つフイルムが展張し易く手で掴みやすく、引き出し抵抗性が適度で有ること。
【0043】
(iii) ト性フイルムが展張したままで皺がよる事なく、適度な抵抗で、心地良く(軽い音もたて)、伸びて永久変形する事なく、正確にカット出来る事。
(iv) フイルム展張性切断後のフイルムが皺よったり、重なったりする事なく、被包装物にうまくラッピング出来る事。
(v) 密着性容器(磁器、合成樹脂製とも)の種類にこだわる事無く、又は容器無しでも、フイルム容器間、フイルム被包装物間、フイルム間同士でも重なった部分が膨れあがることなく、密着する事、又それが低温保存中、加熱中でも外れてこない事。
【0044】
(vi) 耐熱性加熱中に、裂けたり、溶融して穴があいたり、フイルムが内圧に負けて伸び異常に膨れあがらない事。
(vii) 保存中及び加熱中に、味の変化、衛生性の悪化、食品臭の発生、添加剤の移行、フイルムの破片の混入がない事
(viii) 加熱後、フイルムを簡単に除去出来やすい事、フイルム同士が溶着して剥離出来なく成ったり、場合により内容物に、又は容器(特に合成樹脂製)に溶着し汚さない事。
(ix) 使用後の廃棄処理に問題が少ない事。
【0045】
【実施例1,2、比較例1,2】
表1に記載のごとく、2−ヒドロキシイソ酪酸系脂肪族ポリエステル(A)としてポリ2−ヒドロキシイソ酪酸系樹脂(A−1)を、スクリュー50mm径の押出機で、且つそのスクリューの長さ方向途中の混練り部を有する所に相当するシリンダー部に注入口を有する押出機で加熱混練り溶融し、液状添加剤(B)として前述のB−1/B−8(混合比2/3)を表1記載のごとき樹脂組成物100重量部に対し所定の割合(重量部)で注入し、充分混練りし、径が100mmφでそのスリットが1.0mmの環状ダイより押し出し、チューブの内面に流動パラフィンを封入し、外面を冷媒(水)により急冷固化し、折り幅140mmの均一なチューブ状原反を作成した。ついで、これらの原反を均一な状態でそれぞれ自由にアニール処理し、2対の差動ニップロール間に通し、加熱ゾーンで78℃の雰囲気下に通し加熱し、75℃の熱風雰囲気下の延伸ゾーンで流れ方向出口部に設置してあるエヤー封入用ニップロールで内部に空気を圧入する事により連続的に膨張バブルを形成させ、冷却ゾーンの延伸終了部で20℃の冷風を吹き付け、延伸を終了させ、次に出口部ニップロールを閉じ、ほぼ縦5倍、横4倍に同時2軸延伸し、次に温度をそれぞれに制御したヒートセットゾーンに連続的に通し、次に巻き取り機で耳を切り取り、平均厚み約8.5μmの2枚のフイルムに巻き取った。
【0046】
実施例1、2のフイルムの延伸安定性は、比較例1,2の場合にバブルの揺れが多くて不安定であつたのに比し良かつた。次に、これらのフイルムを30cm幅の紙管に約50m巻いた小巻ロールに仕上げ、市販の家庭用ラップ(旭化成工業株式会社の塩化ビニリデン系樹脂製専用)の箱に入れ、包装テストを実施した。
【0047】
【表1】
Figure 0003789652
【0048】
包装テストは、市販の電子レンジ加熱用磁器(プラスチックス)製容器にライスを盛り上げ、その上にカレーを乗せ、電子レンジで加熱時間を色々変えて、サンプル繰り返し数n=5で実施した。最初に、上記フイルムを収納したそれぞれの箱でラッピングした。その結果、箱からの引き出し性は実施例1,2のフイルムは、上記市販の塩化ビニリデン系樹脂製(以後、市販PVDCと略する)の場合と同様に適度な抵抗で正確に所定量引き出せたが、比較例1(以後、比1と表す)のフイルムは箱から出過ぎたり、静電気が発生してあちこちにくっついたりして好ましくなかった。比較例2(以後、同様に、比2と表す)のフイルムは明らかにべとつき過ぎで、箱の一部にくっいたり、手にまとわりついたり、不具合いであった。次に箱についている刃物でのカット性に関しては、実施例1,2のフイルムは、市販PVDC製と同様に、心地よく切れ、刃切れ性が良かった。
【0049】
比1は、フイルムの弾性率が高過ぎる為、又密着性があまりに低い為にカット時にフイルムが箱先の押さえの部分に固定出来難く、局部的にずれ出てきたりして刃先に食い込み難く、切断面が刃先から外れ斜めに裂けたりし、著しくカット性が悪かった。又、包装性が悪く(静電気でフイルム同士がくっいたり、どこか勝手な所にくっついたり、とは言っても肝心な容器、及びフイルム同士への密着性が全く無く、フイルムが広がってしまい包装を固定出来なく)使いものに成らなかった。比2は、カット性は実施例に比し柔らか過ぎやや物足りない感じは有ったが、他に遜色は無かったが、べとつき、カット直後の、フイルム展張保持性が悪く、オーバーラップ性がかえて悪かた。
【0050】
次に電子レンジでの加熱時では、比1はフイルムが上記の様に密着しないので水蒸気が漏れやすく、局部加熱に成りやすく、内容物が外にこぼれ安く、食品の味もまずく成ってしまた。比2はフイルムの収縮性が高く、密着部がずれてフイルムと容器が剥がれ易く、内容物(カレー)との接触部が、加熱時間がやや長い時は、破れる時が多かった。又プラスチック(PP;ポリプロピレン)製の容器の場合は、容器に部分的に溶着しフイルムの剥離後に容器を汚してしまう事が見られた。実施例1,2のこれらの不良現象はいずれも全くなく、良好に包装及び加熱、又後で容易にフイルムを剥離除去出来、且つ調理品の味も良好であり、本発明の好ましい特性の範囲内で有る事が判明した。
【0051】
【実施例3〜6】
表2に記載のごとく、各種前述の脂肪族ポリエステル樹脂(A)及びそれぞれの液状添加物(B)として、実施例3、4,5、6それぞれ順に混合比で表すと、B−1/B−3の1/3、B−2/B−5の2/3、B−3/B−7の3/1,B−4/B−5の1/1を選定しこれの所定量を添加し、これを実施例1と同様な方法で延伸温度、延伸倍率、をそれぞれ調整し、同様に加工し、下記特性の、平均厚み9.5μmの延伸フイルムを得た。延伸性はいずれも良く、大きな問題はなかつた。
【0052】
【表2】
Figure 0003789652
これらのフイルムを、実施例1の場合と同様に包装テストを実施した。その結果、引き出し性、カット性、展張性、オーバーラップ性、密着性、加熱性、その他を順次テストしたが、特に問題は見られなく、実施例1,2の場合と同様に本発明の好ましい範囲内で有った。
【0053】
【実施例7,8、比較例3,4】
表3に記載のごとく、各種前述の脂肪族ポリエステル(A)、及び液状添加剤(B)を選定し、但し、実施例7では該添加剤(B)はB−4を4重量部に、更にB−7を2重量部添加し使用し、実施例8では同様に、B−2を3重量部に、B−5を1重量部添加使用した。又、比較例3では脂肪族ポリエステルとして、2−ヒドロキシイソ酪酸を79モル%、グリコール酸を21モル%共重合し、結晶融点112℃、結晶化度8%の樹脂(D−1)を用いた。次に、これを実施例3と同様な方法で、延伸条件をそれぞれ選定し、同様に処理し、但し、比較例3の場合、延伸温度条件は低めにし、熱処理温度も低めに調整し実施した。又、比較例4の場合、延伸倍率条件を高めにし、原反、フイルムで熱処理条件を制御し、それぞれ下記特性の平均厚み約9.8μmのフイルムを得た。
【0054】
【表3】
Figure 0003789652
これらのフイルムを実施例1と同様に評価した。その結果、実施例7、8は、何ら問題なく使用でき、いずれも本発明の好ましい範囲内であった。比較例3のフイルムは箱のロールからフイルムの引き出し性が悪く、又柔軟すぎてつかみ難く、歯切れ性も軽快で無かった。同様な電子レンジでの加熱テストでは、初期の水蒸気発生の段階でフイルムが異常に膨れた後、収縮し、密着部が外れ易かったり、パンクし易かった。又、加熱の後期でカレーの具との接触部が溶融し穴があく現象が見られた。又、容器に部分的に溶けて融着し、容器を汚す傾向が有った。比較例4のフイルムは、フイルムの引張弾性率が高過ぎるためパリパリし過ぎ、カット時に刃先と別の方向に裂けやすく、且つ、容器への密着時、フイルム重なり部が戻り、ゆるみ易かった。又、加熱時も、フイルムの収縮応力が高いためか、容器外壁部で局部的にゆるみ易かった。
又、ゆるまない時は、内容物との接触部から時々破れる場合が有った。又プラスチック(PP製)容器では、容器の変形が発生した。
【0055】
【実施例9〜12】
前述、又表4に記載のごとく、本発明の2−ヒドロキシイソ酪酸系脂肪族ポリエステル(A)に、他の樹脂を所定量加え、さらに該添加剤(B)を所定量混合した樹脂組成物(C)を作成し、実施例1と同様に加工し、平均厚み約9.0μmのフイルムを得た。
【0056】
【表4】
Figure 0003789652
これらのフイルムを、実施例1と同様に評価した。いずれも同様に大きな問題は無く良好に、包装及び加熱処理が出来、本発明の範囲内の性能であった。
【0057】
【実施例13】
脂肪族ポリエステル(A)として前述のA−1、その他の樹脂として上記PEST−1,該添加剤(B)としてB−6を5重量部、B−1を1重量部、両者にそれぞれに別に、同様な二台の押し出し機に前述同様に混合し、多層環状ダイより2種3層状(A−1/PEST−1/A−1:層構成比は35/30/35それぞれ%)に押し出し、実施例1と同様に平均厚み約9μmの延伸フイルムに加工した。その特性は「引張弾性率/加熱収縮率/同応力/耐熱性/密着仕事量/フイルム結晶化度」の順に表して、「88/14/190/195/14/40(それぞれ前述の単位は略す)」であつた。各包装テストも大きな問題は無く、本発明の好ましい範囲内の特性であった。
【0058】
【実施例14】
次に中間層を該添加剤(B)を加えないエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(メルトインデックス:0.8、密度:0.928)にし、原反に電子線(エネルギー:500KV)で照射線量6メガラドの処理をした以外は実施例13と同じくして、上記と同様に加工して、平均厚み約9μmの延伸フイルムとした。その特性は、上記同様の順に「55/14/130/205/15/40(それぞれ前述の単位は略す)」であつた。包装テストも、大きな問題が見られなく、本発明の好ましい範囲内の特性のものであった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、包装時の種々の要求特性(引き出し性、カツト性、展張ハンドリング性、密着固定性、耐熱性、容器の種類、容器無しの場合等、他)に叶い、且つ廃棄処理も安全な、ハウスホールドラップ用フイルムを提供することができた。

Claims (8)

  1. 結晶融点が120〜250℃の、2−ヒドロキシイソ酪酸を含む2−ヒドロキシ−2,2−ジアルキル酢酸(アキル基の炭素数が1〜5)から選ばれる少なくとも1種の単量体よりなる単位を少なくとも85モル%含む脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、(イ)脂肪族系アルコール、脂肪族系多価アルコール、及びこれらの縮重合物から選ばれる少なくとも一種のアルコール成分と、脂肪族カルボン酸及び脂肪族多価カルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸とのエステル及びその変性物、(ロ)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、(ハ)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、(ニ)エポキシ化大豆油、(ホ)ポリグリセリン縮合物、及び(ヘ)ポリグリセリンと脂肪族脂肪酸とのエステルから選ばれる少なくとも一種の液状添加剤(B)1〜20重量部を含む樹脂組成物(C)からなる延伸フィルムであって、フィルムの結晶化度が20〜70%であり、引張弾性率が20〜150kg/mm2 であり、100℃における加熱収縮率X%と同加熱収縮応力Yg/mm 2 が下記式(1)〜式(3)の関係式の範囲内にあり、耐熱性が120℃以上であり、厚さ5〜15μmであることを特徴とする耐熱密着性ラップフィルム。
    式(1) Y≦(1400−20X)/3
    式(2) 2≦X≦45
    式(3) 5≦Y≦350
  2. 脂肪族ポリエステル樹脂が、構成単位基材として2−ヒドロキシイソ酪酸を含む2−ヒドロキシ−2,2−ジアルキル酢酸より選ばれる単量体を使用し、他に乳酸の異性体、乳酸のDL体(ラセミ体)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、ε−カプロラクトン、3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシブタン酸、から選択される少なくとも一種の単位を、1.5〜15モル%含む共重合体からなることを特徴とする請求項1に記載の耐熱密着性ラップフィルム。
  3. 脂肪族ポリエステル樹脂が、2−ヒドロキシイソ酪酸を含む2−ヒドロキシ−2,2−ジアルキル酢酸よりなる単位を少なくとも85モル%含む重合体を少なくとも50重量%含み、その他に、グリコール酸よりなる単位を少なくとも75モル%含む重合体、3−ヒドロキシ酪酸よりなる単位を少なくとも85モル%含む重合体、乳酸よりなる単位を少なくとも85モル%含む重合体、ポリL−乳酸系重合体とポリD−乳酸系重合体との共晶性混合樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪族ポリエステル系重合体を50重量%以下含む混合物であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱密着性ラップフィルム。
  4. 液状添加剤(B)が、その主体とする成分の50℃の粘度で少なくとも5センチポイズ以上、100℃の粘度で500センチポイズ以下の液体であり、かつその主体とする成分の沸点が170℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱密着性ラップフィルム。
  5. 脂肪族ポリエステル樹脂の結晶化度が20〜80%であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱密着性ラップフィルム。
  6. フイルムが、少なくとも50〜99重量%の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物(C)からなり、他に該脂肪族ポリエステル以外の熱可塑性樹脂を1〜50重量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の耐熱密着性ラップフイルム。
  7. フイルムが、少なくとも2層の互いに異なる樹脂組成物(C)からなる層により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐熱密着性ラップフィルム。
  8. フイルムが、少なくとも1層の樹脂組成物(C)からなる層が合計厚み比率10〜90%と、他に同合計厚み比率90〜10%の少なくとも1層の液状添加剤(B)1〜20重量部を含む他種の脂肪族ポリエステル、カプロラクトン系樹脂(R)、ポリオレフィン系樹脂(PO)、及び芳香族系の誘導体を含むポリエステル系樹脂(PEST),エチレン−ビニルアルコール系共重合樹脂(EVOH)、ポリアミド系樹脂(PA)、エチレン(他の少なくとも一種のα−オレフィンを含む)−一酸化炭素系共重合樹脂(含同水添樹脂)、エチレン(他の少なくとも一種のα−オレフィンを含む)−環状炭化水素共重合樹脂(含同環水添樹脂)、からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂からなる層とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐熱密着性ラップフィルム。
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