JP3789594B2 - 自動車車体の姿勢変更装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として自動車解体作業で使用する自動車車体の姿勢変更装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の姿勢変更装置としてEP0624543号公開公報により、自動車車体を車幅方向に跨ぐようにして保持可能な車体保持フレームを該フレームの片側に配置した支持体に車長方向の軸線回りに回動自在に支持させ、車体支持フレームの回動で自動車車体をそのフロアが支持体とは反対側を向くような横転姿勢に姿勢変更し、車体下回りの解体作業を楽に行い得られるようにしたものが知られている。
【0003】
このものでは、車体保持フレームの車幅方向両側部に夫々車幅方向内方に進退自在な把持部材を設けており、各把持部材を、自動車車体のサイドシルを下方から受ける受座部と、サイドシルの外側面に当接する立上り部とを有する略L字状に形成し、自動車車体を両側の把持部材間に挟持するようにしている。また、車体保持フレームに自動車車体のルーフに当接するルーフ押圧部材を設け、自動車車体を車高方向に拘束している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のものでは、ルーフ押圧部材でルーフを押圧しても、ルーフの変形で押圧力が吸収されるため、サイドシルを把持部材の受座部に強く押し付けることはできず、車体横転時にサイドシルが受座部から浮いて自動車車体のガタツキを生ずる不具合がある。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、車体横転時の自動車車体のガタツキを防止できるようにした姿勢変更装置を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明は、自動車車体を車幅方向に跨ぐようにして保持可能な車体保持フレームを、その片側に配置した支持体に対し、車長方向の軸線回りに回動自在に支持し、自動車車体を横転させてその底面を支持体と反対側に向ける自動車車体の姿勢変更装置であって、車体保持フレームの車幅方向両側部に夫々車幅方向内方に進退自在な把持部材を設けるものにおいて、把持部材を、車幅方向内方に開口する略コ字状であって、下側部に自動車車体のサイドシルを下方から受ける受座部と、上側部に、サイドシルの外側面の上縁部に当接する車幅方向内方に向って上方に傾斜する傾斜面を有する爪部とを備えるものに構成するとともに、車体保持フレームの車幅方向両側部に設ける把持部材のうち、少なくとも支持体側に設けられ、自動車車体の横転時には下方側に位置する把持部材の進退機構を、車長方向に伸縮動作するシリンダと、シリンダの伸縮動作を把持部材に車幅方向の動きとして伝達するトグルリンクとで構成している。
【0007】
これによれば、把持部材を車幅方向内方に前進させたとき、受座部が自動車車体のサイドシルの下側に臨入すると共に、爪部の傾斜面がサイドシルの外側面の上縁部に当接し、傾斜面を介してサイドシルに下方への分力が作用して、サイドシルが受座部に強く押し付けられる。かくて、自動車車体を車幅方向だけでなく車高方向にも確実に拘束できる。従って車体保持フレームの回動で自動車車体を横転姿勢にしても、サイドシルが受座部から浮くことはなく、自動車車体のガタツキが防止される。
【0008】
また、車種によってサイドシルの上下幅が異なっても、受座部にサイドシルを着座させた状態でサイドシルの上縁部の位置が爪部の傾斜面の上下幅内に収まっていれば、把持部材によってサイドシルを上記の如く拘束でき、汎用性もある。
【0009】
ところで、把持部材の進退用駆動源として車幅方向に伸縮動作するシリンダを用いても良いが、これではシリンダが車体保持フレームの各側部から車幅方向外方に張り出すように配置されることになる。ここで、車体保持フレームを該フレームの片側に配置した支持体に車長方向の軸線回りに回動自在にする場合、車体保持フレームの支持体側の側部から車幅方向外方にシリンダが張り出すと、車体横転時にシリンダの張出し方向が下方を向くことになるため、車体保持フレームをリフトアップして比較的高い位置で横転させないと、シリンダが床に当たる。
【0010】
これに対し、車体保持フレームの支持体側の側部に設ける把持部材の進退機構を、車長方向に伸縮動作するシリンダと、シリンダの伸縮動作を把持部材に車幅方向の動きとして伝達するトグルリンクとで構成すれば、シリンダは車幅方向外方に張り出さず、車体保持フレームを比較的低い位置で横転させてもシリンダが床に当たることはない。従って、自動車車体を横転姿勢にして車体下回りの解体作業を行う際、車体の位置を低くして背丈の低い者にとっての作業性を良くすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1乃至図3は自動車車体Wの姿勢変更装置を示している。図中1は基台であり、基台1の前方位置に台車2により自動車車体Wをその車長方向を左右方向に向けた状態で搬入するようにしている。
【0012】
基台1上には左右1対の支柱3,3が立設されており、両支柱3,3間にこれに沿って昇降する支持体4を設けている。また、支持体4の前側には、自動車車体Wを車幅方向に跨ぐようにして保持する車体保持フレーム5が設けられており、該フレーム5を支持体4により車長方向、即ち、左右方向の軸線回りに回動自在に支持している。そして、車体支持フレーム5の図1で時計方向への回動により、図4に示すように自動車車体Wをそのフロアが前方を向く横転姿勢に姿勢変更し、車体下回りの解体作業を作業性良く行い得られるようにしている。
【0013】
支持体4は、左右1対の支持枠4a,4aと、両支持枠4a,4aを連結する上下1対のクロスメンバ4b,4bとで構成されており、各支持枠4aを各支柱3の内側面に固定したガイドレール3aに昇降自在に支持させている。そして、支持体4の上側のクロスメンバ4bに1対のチェーン40,40を連結し、両チェーン40,40を基台1上に立設したシリンダ41のロッド上端の連結片41aに支柱3,3の上端間の梁3bに軸支した1対のガイドスプロケット42,42に巻掛けした状態で連結し、かくて、シリンダ41を駆動源として支持体4が昇降動されるようにしている。
【0014】
前記ガイドレール3aは、車体保持フレーム5側を向く第1のレール面たる前側レール面とその反対側の第2のレール面たる後側レール面とを有しており、各支持枠4aの外側面に前側レール面に当接する第1ローラ431と、後側レール面に当接する第2ローラ432を取付けて、各支持枠4aを両ローラ431,432を介してガイドレール3aに転動自在に支持させている。
【0015】
ここで、第2ローラ432は第1ローラ431よりも上方に設けられており、車体保持フレーム5の重量によって支持体4に作用する車体保持フレーム5側、即ち、前側への傾動モーメントを、各ローラ431,432の各レール面への当接反力で受けられるようにしている。
【0016】
また、両ローラ431,432を上下に離間配置することで支持体4がガイドレール3aに対し前後に傾動可能となる。そのため、姿勢変更装置を屋外に設置して、ガイドレール3aの各レール面に発錆による凹凸を生じても、この凹凸に追従して支持体4が傾動して凹凸部を各ローラ431,432が乗り越えるようになり、支持体4の昇降動の円滑性が損われることはない。
【0017】
尚、各支持枠4aの外側面には、図5乃至図7に示す如く、ガイドレール3aの前側レール面に隙間を存して対向する上方の第1ストッパローラ441と、ガイドレール3aの後側レール面に隙間を存して対向する下方の第2ストッパローラ442と、ガイドレール3aの内端面に隙間を存して対向する上下1対のサイドローラ45,45とが設けられている。各ストッパローラ441,442は、支持体4が後側に過度に傾動することを規制するもので、ガイドレール3aの各レール面との間の隙間を調整ねじ44aで調整し得るようにしている。また、サイドローラ45,45は支持体4が左右に過度に傾動することを防止する。
【0018】
車体保持フレーム5は、自動車車体Wを車幅方向に跨ぐアーチ状の左右1対のフレーム部材5a,5aと、両フレーム部材5a,5aを連結する複数のクロスメンバ5bとで構成されている。そして、各フレーム部材5aの外側面に、車長方向の軸線を中心とする円弧状に延在する断面コ字状のガイド枠50を取付けると共に、支持体4の各支持枠4aの内側面に、ガイド枠50に周方向に離間した2箇所で内接する1対のガイドローラ46,46を取付け、車体保持フレーム5をこれらガイドローラ46により車長方向の軸線回りに回動自在に支持している。
【0019】
尚、ガイドローラ46は、図5に示す如く、ガイド枠50の径方向の内幅より小径に形成されており、後記するルーフ押圧部材6や把持部材7,8の押圧反力でフレーム部材5aを介してガイド枠50が拡径するように変形しても、車体保持フレーム5をガイド枠50において回動性を損うことなく支持できるようしている。更に、支持体4の各支持枠4aの内側面には、車体保持フレーム5の車長方向への動きを規制する上下1対のサイドローラ47,47が設けられている。
【0020】
また、各ガイド枠50の外周面には、1対のチェーン51,51が取付けられており、支持体4の左右の支持枠4a,4a間に、一方の支持枠4aに搭載したモータ52によりチェーン駆動される駆動軸53を横設し、該駆動軸53に、車体保持フレーム5の左右のガイド枠50,50の外周面の各1対のチェーン51,51に係合する左右各1対のスプロケット54,54を取付け、かくて、モータ52を駆動源として車体保持フレーム5が回動されるようにしている。
【0021】
車体保持フレーム5には、その中央部に位置させて自動車車体WのルーフWaを押圧するルーフ押圧部材6が設けられており、更に、各フレーム部材5aの車幅方向両側部に位置させて、車幅方向内方に進退自在な1対の把持部材7,8が設けられている。
【0022】
ルーフ押圧部材6は、車体保持フレーム5の中央のクロスメンバ5bに1対のガイドバー60,60を介して車高方向に摺動自在に支持され、車高方向に伸縮動作するシリンダ61により自動車車体WのルーフWaに向けて進退される。
【0023】
各把持部材7,8は、図8及び図10に明示する如く、車幅方向内方に開口する略コ字状に形成されており、その下側部を、自動車車体WのサイドシルWbを下方から受ける受座部7a,8aに構成し、その上側部をサイドシルWbに車幅方向外方から当接する爪部7b,8bに構成している。受座部7a,8aは、爪部7b,8bより長く、且つ、先端が車幅方向内方に向って下方に傾斜しており、把持部材7,8を車幅方向内方に前進させたとき、サイドシルWbの下面に受座部7a,8aがせり込み、サイドシルWbが受座部7a,8aによって下方から支持されるようにしている。
【0024】
前記爪部7b,8bは、車幅方向内方に向って上方に傾斜する傾斜面7c,8cを有する先鋭な形状に形成されており、把持部材7,8の車幅方向前方への前進で爪部7b,8bの傾斜面7c,8cがサイドシルWbの外側面の上縁部に当接し、サイドシルWbに車幅方向内方への押付力と下方への押付力とが作用するようにしている。かくて、自動車車体Wは把持部材7,8によって車幅方向及び車高方向に確実に拘束される。ここで、上記ルーフ押圧部材6によっても自動車車体Wは車高方向に拘束されるが、ルーフ押圧部材6だけではその押圧力がルーフWaの変形で吸収されて、サイドシルWbを受座部7a,8aに強く押し付けることはできず、車体横転時にサイドシルWbが受座部7a,8aから浮いて自動車車体Wのガタツキを生ずる。然し、本実施形態では、爪部7b,8bの傾斜面7c,8cを介して作用する下方への分力でサイドシルWbが受座部7a,8aに強く押し付けられるため、車体横転時にもサイドシルWbが受座部7a,8aから浮くことはなく、自動車車体Wを安定に保持できる。
【0025】
また、車種が変ってもサイドシルWbの上下寸法は余り差がないため、サイドシルWbの外側面上縁部に傾斜面7c,8cの何れかの部分が当接して、サイドシルWbが上記の如く拘束される。また、ドアが付いていても、爪部7b,8bがドアを突き破ってサイドシルWbを拘束する。従って、車種やドアの有無に係わりなく車体を拘束でき、汎用性にも優れている。
【0026】
両把持部材7,8は、車体保持フレーム5のフレーム部材5aの各側部に取付けたガイドブロック70,80に夫々上下1対のガイドバー71,81を介して車幅方向に摺動自在に支持されている。そして、フレーム部材5aの支持体4から離間した側の側部(横転時に上方に位置する側部)に設ける把持部材7は、図8及び図9に示す如く、車幅方向に伸縮動作するシリンダ72のピストンロッド72aに直結され、該シリンダ72により車幅方向内方に進退される。尚、シリンダ72の取付位置の上下のずれを許容できるように、シリンダ72はガイドブロック70に支点ピン73を介して上下方向に傾動自在に支持されている。
【0027】
フレーム部材5aの支持体4側の側部(横転時に下側に位置する側部)に設ける把持部材8は、図10及び図11に示すように、車長方向に伸縮動作するシリンダ82と、この伸縮動作を車幅方向の動きに変換するトグルリンク83とから成る駆動機構によって車幅方向内方に進退される。トグルリンク83は、把持部材8に枢着した車幅方向内方の第1リンク片83aとガイドブロック80に枢着した車幅方向外方の第2リンク片83bとを車長方向に屈曲自在に連結して成るもので、両リンク片83a,83bの連結部83cにシリンダ82のピストンロッド82aを連結している。尚、ピストンロッド82aの伸縮動作によって連結部83cが車長方向及び車幅方向に動くため、シリンダ82をガイドブロック80に支点ピン84を介して車幅方向に傾動自在に支持している。
【0028】
把持部材8を把持部材7と同様に車幅方向に伸縮動作するシリンダで車幅方向内方に進退させることも可能であるが、この場合にはシリンダが車幅方向外方に張り出して、横転時に車体保持フレーム5の位置を比較的高くしないと、シリンダが床に当たる。これに対し、本実施形態では、把持部材8の駆動用シリンダ82が車幅方向外方に張り出さず、横転時に車体保持フレーム5の位置を比較的低くしてもシリンダ82が床に当たることはない。そのため、比較的低い位置で自動車車体Wを横転姿勢にし、車体下回りの解体作業を背丈の低い者も楽に行い得られるようにすることができる。尚、把持部材7の駆動機構を把持部材8と同様にシリンダとトグルリンクとで構成することも可能であるが、これではコストが高くなるため、本実施形態では、把持部材7を車幅方向に伸縮動作するシリンダ72に直結して車幅方向内方に進退させるようにしている。
【0029】
上記の如く構成された姿勢変更装置を使用する際は、先ず、自動車車体Wを台車2に載置して基台1の前方位置に搬入し、次いで、車体保持フレーム5の両側部の把持部材7,8を車幅方向内方に前進させて自動車車体Wの両側のサイドシルWbを把持し、その後でルーフ押圧部材6により自動車車体WのルーフWaを押圧する。次に、支持体4により車体保持フレーム5を上昇させて自動車車体Wを台車2から持ち上げる。そして、台車2を退去させた後、車体保持フレーム5を回動して自動車車体Wを横転姿勢にし、車体下回りの解体作業を行う。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、把持部材により自動車車体のサイドシルを車幅方向だけでなく車高方向にも確実に拘束でき、車体横転時の自動車車体のガタツキを防止できると共に、種々の車種に対応できて汎用性にも優れる。更に、支持体側の側部に設ける把持部材の駆動機構を車長方向に伸縮動作するシリンダとトグルリンクとで構成することにより、自動車車体を比較的低い位置で横転できるようになり、車体下回りの解体作業の作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明装置の一例の側面図
【図2】 図1の装置の正面図
【図3】 図1の装置の平面図
【図4】 車体横転時の側面図
【図5】 支持体の拡大側面図
【図6】 支持体の拡大平面図
【図7】 図5のVII−VII線拡大平面図
【図8】 支持体から離間した側の側部に設ける把持部材の側面図
【図9】 図8のIX−IX線截断面図
【図10】 支持体側の側部に設ける把持部材の側面図
【図11】 図10のXI−XI線截断面図
【符号の説明】
W 自動車車体 Wb サイドシル
4 支持体 5 車体保持フレーム
7 支持体から離間した側の側部に設ける把持部材
8 支持体側の側部に設ける把持部材
7a,8a 受座部 7b,8b 爪部
7c,8c 傾斜面 82 シリンダ
83 トグルリンク
Claims (1)
- 自動車車体を車幅方向に跨ぐようにして保持可能な車体保持フレームを、その片側に配置した支持体に対し、車長方向の軸線回りに回動自在に支持し、自動車車体を横転させてその底面を支持体と反対側に向ける自動車車体の姿勢変更装置であって、
車体保持フレームの車幅方向両側部に夫々車幅方向内方に進退自在な把持部材を設けるものにおいて、
把持部材を、車幅方向内方に開口する略コ字状であって、下側部に自動車車体のサイドシルを下方から受ける受座部と、上側部に、サイドシルの外側面の上縁部に当接する車幅方向内方に向って上方に傾斜する傾斜面を有する爪部とを備えるものに構成するとともに、
車体保持フレームの車幅方向両側部に設ける把持部材のうち、少なくとも支持体側に設けられ、自動車車体の横転時には下方側に位置する把持部材の進退機構を、車長方向に伸縮動作するシリンダと、シリンダの伸縮動作を把持部材に車幅方向の動きとして伝達するトグルリンクとで構成する、
ことを特徴とする自動車車体の姿勢変更装置。
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- 1997-04-24 JP JP10739797A patent/JP3789594B2/ja not_active Expired - Fee Related
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