JP3789212B2 - 熱可塑性樹脂発泡シート及び容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子レンジ耐熱性を有し、使用後の減容廃棄性に優れ、かつまたパール調の外観を有する熱可塑性樹脂発泡シート及びその成形容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
生活習慣の変化に伴い近年コンビニエントストアー、スーパー等には調理済みの食品あるいは弁当が多く販売されている。これらの食品は電子レンジで再加熱して使用に供される事が多くそのため容器は電子レンジ耐熱性を保有することが必須となっている。従来、電子レンジ加熱対応の食品包装容器として、無機物であるタルクをポリプロピレン系の樹脂に、全配合物に対して30〜40重量%充填したシート(以下PP/Fシートという)を熱成形させた成形体が使用されている。この成形体は、食品を充填した状態で電子レンジで加熱しても、内部の食品の発熱による熱でも変形しない容器として広く使用されている。
【0003】
しかし、この容器は内容物を電子レンジで加熱した際に容易に内容物の熱を通すため、加熱直後に素手で持ちにくい問題がある。また、使用終了後に廃棄する際容器が強靱で裂きにくく、また潰しにくいためにそのままの形状で廃棄しなければならずそのため廃棄物の容量が増えてしまう問題がある。
【0004】
この問題を解決するにはPP/Fを発泡化させることが考えられる。しかし単に発泡化したのでは剛性が著しく低下してしまう。この剛性の低下を補うだけ、成形体の肉厚を上げると、コスト高となってしまう。薄肉で発泡ポリプロピレン系シートの剛性を上げる方法としては、特開平1−278539号の公報でポリスチレン系樹脂を添加する事や、多層化手法として特開平1−166942号の公報で公知である。しかし、特開平1−278539号では充分な剛性を得る事が出来ず、また、特開平1−166942号では、多層化の為に高価なものとなってしまう問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、130℃の電子レンジ耐熱性を有し、実用的な強度を保持しながらも、減容廃棄性、すなわち廃棄時に容器を容易に潰すことができるためにゴミとなる容器の見かけの容量を減らすことができ、かつまた従来のPP/F製の容器にはなかった、パール調の美麗な外観を有する熱可塑性樹脂発泡シート及び容器を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述の問題を解決するために種々検討した結果、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂及び無機充填材からなる樹脂組成物に対して特定の相溶化剤を併用して発泡化させたシート及び成形体が130℃の電子レンジ加熱対応の耐熱性、減容廃棄性に優れ、環境適性(低燃焼カロリー)を有しながら、比較的安価で剛性が高く、パール調の外観を有する特性を持つ事を見出し、本発明を完成させたものである。
【0007】
本発明の第1の発明は(A)ポリプロピレン系樹脂40〜60重量部、(B)ポリスチレン系樹脂10〜30重量部、(C)無機充填剤10〜40重量部及び、(D)スチレンとイソプレンブロック共重合体水素添加物3〜20重量部を含有する発泡倍率が1.05〜3倍の熱可塑性樹脂発泡シートである。
【0008】
第2の発明は(A)ポリプロピレン系樹脂40〜60重量部、(B)ポリスチレン系樹脂10〜30重量部、(C)無機充填剤10〜40重量部及び、(D)スチレン及び共役ジエン炭化水素よりなるブロック共重合体2〜20重量部を含有する発泡倍率が1.05〜3倍の熱可塑性樹脂発泡シートである。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明の熱可塑性樹脂発泡シートよりなる電子レンジ加熱可能であることを特徴とする成形容器である。
【0010】
第4の発明は、食品が充填された第3の発明の成形容器である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明でいうポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを単独重合することによって得られるプロピレン単独重合体(以下PPホモポリマー)、又は20重量%以下のコモノマー、例えばエチレン、アクリル酸エステル、マレイン酸等の不飽和有機酸及びその無水物、炭素数が4〜12個のα−オレフィン等のモノマー単位をプロピレンと共重合して得られる共重合体が挙げられる。該共重合体はランダム共重合体でもブロック共重合体でもグラフト共重合体でもよい。また、ポリプロピレン系樹脂主鎖に放射線照射等の方法で長鎖のポリプロピレンを分岐鎖として導入したものも挙げられる。もしくはこれらの重合体の酸化・塩素化等の変成物でもよい。本発明の実施に当たりポリプロピレン系樹脂はこれらを単独で使用しても、2種以上を使用しても良い。
【0012】
本発明のポリスチレン系樹脂とは、ポリスチレンホモポリマー(以下GP−PSという)、あるいは、スチレンと他の1つ以上のコモノマー、例えばα−メチルスチレン、アクリロニトリル、ブタジエン、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸等との共重合体が挙げられる。また、スチレン−ブタジエン共重合体成分をポリスチレンとグラフト重合した、通常HI−PSと称されるゴム補強ポリスチレンも使用出来る。これらは併用することもできる。これらの内ポリスチレン系樹脂としては、特に経済性の面からGP−PSが、望ましい。
【0013】
本発明の無機充填材としては、タルク、クレー、マイカ、ケイ酸カルシウム、モンモリナイト、ベントナイト、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、軽石、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ホワイトカーボン、ゼオライト、ガラス粉末、大谷石、シラスバルーン、ガラスバルーン等が挙げられるが、特にこれらの中でも好ましくは、酸に対する安定性やその取り扱い、経済性の面でタルクが好適に用いられる。
【0014】
本発明において熱可塑性樹脂は、発泡シート、成形体の外観及び成形体の諸物性の点から、ポリプロピレン系樹脂が40〜60重量部、ポリスチレン系樹脂が10〜30重量部の範囲が好ましい。ポリプロピレン系樹脂が少なすぎると、電子レンジ耐熱性が得られず、ポリスチレン系樹脂が少なすぎると、シート、成形体の剛性を向上させる事が出来ない。
【0015】
本発明の樹脂組成物の配合比は、シート、成形体の剛性、環境適性及びシートから成形体への成形性の点から、無機充填材が10〜40重量部の範囲が好ましい。無機充填材が10重量部未満では、剛性、環境適性が得られず、40重量部を越えるとシートから成形体への成形性が著しく低下する。
【0016】
本発明における樹脂組成物の発泡倍率は、シート、成形体としての剛性、経済性の点から1.05〜3倍の範囲が好ましく、更に好ましくは1.1から1.5倍の範囲である。発泡倍率が小さすぎると経済性を改善する効果に乏しく、逆に大きすぎると所定の剛性を得るのに、シート厚みをより以上に増す必要が生じ、経済性の点で劣る。
【0017】
本発明において、実施組成物を発泡させるには発泡剤を用いる方法が好適に使用される。この場合発泡剤は特に限定されず、化学発泡剤、物理発泡剤何れも各種の物が使用出来る。具体的には、化学発泡剤としてアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、p−トルエンスルホニルヒドラジド等の有機系のもの、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の無機系発泡剤が挙げられる。物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン、水、炭酸ガス、窒素等のものが挙げられる。また、発泡剤として粉末状の物は、樹脂或いは各種添加剤によってマスターバッチ化した物や、物理発泡剤をベース樹脂に含浸した物を用いても良い。より好適には、発泡剤として、表面外観の点から無機系発泡剤が望ましい。
【0018】
本発明において、必要に応じて樹脂添加剤として、一般に使用されている着色剤、エチレンビスアマイド等の滑剤、ヒンダードフェノール系やリン系の酸化防止剤を添加しても良い。
【0019】
本発明において使用されるスチレン−イソプレンブロック共重合体水素添加物(以下SEPSという)とは、スチレンからなる重合体ブロックA 1個以上と、イソプレンからなる重合体ブロックB 1個以上からなり、全体の数平均分子量が5,000から500,000の範囲にあり、重合体ブロックA全体の含有率が10〜70重量%であるブロック共重合体であって、かつ(AB)n又はA−(BA)n(nは整数で1以上5以下)のブロック形態を有し、ブロックB全体の脂肪族二重結合の少なくとも70%以上を水素添加して得られる水素ブロック共重合体である。また、スチレン及び共役ジエン炭化水素よりなるブロック共重合体(以下STRという)とはスチレンからなる重合体ブロックA 1個以上と、共役ジエン(ブタジエン、イソプレン)からなる重合体ブロックB 1個以上からなり、全体の数平均分子量が5,000から500,000の範囲にあり、重合体ブロックA全体の含有率が10〜80重量%であるブロック共重合体であって、かつ(AB)n又はA−(BA)n(nは整数で1以上5以下)のブロック形態を有するブロック共重合体である。
【0020】
SEPSの添加量は3〜20重量部が好ましく、STRの添加量は2〜20重量部が好ましい。この範囲において実用的に適度な強度を有しながら、容器を潰す際にそれを可能とする引き裂き強度等の物性がバランスし減容廃棄することが可能となる。すなわち、実用的には容器に惣菜等を入れて運搬しても容器が破損することはなく、かつまた容器を廃棄する際に容器を潰し、或いは裂いて見かけの容積を減らすことが可能となる。SEPS或いはSTRの添加量が少ないといずれの場合もシートの強度、特に引き裂き強度が低下して好ましくない。逆に添加量が多すぎると強度が低下し柔軟となる。そのため容器に内容物をいれた時その重みで容器の形状が変形して好ましくなく、電子レンジ耐熱性も低下する。
【0021】
発泡シート製造に共する樹脂組成物は、発泡剤を除いてシート押出し加工の前に予め単軸あるいは、2軸押出機で溶融混合したものを用いても、溶融混練せずにブレンド、ドライブレンドしたものを用いても良い。また、無機充填剤の混合方法として、無機物をポリプロピレンに、予め高濃度で溶融混合してマスターバッチ化したものを使用しても良い。
【0022】
本発明の発泡シートは、一般に使用されている押出し加工法が適用でき、ダイとしては、Tダイ、サーキュラーダイ及び異形ダイの何れであってもよい。また、加飾等の為に、発泡シートに無発泡層を共押出しや予めフィルム化した物を熱ラミネートする等の方法で積層しても良い。
【0023】
本発明の成形体としては、本発明で得られる発泡シートを用い通常の熱成形、たとえば真空成形、圧空成形、真空圧空成形、プラグアシスト成形、プレス成形等により成形された物が挙げられる。
【0024】
このようにして得られた容器は、食品、惣菜等の容器、或いは弁当容器として好適に使用される。特に油の多い食品を用い、電子レンジデンカ化工熱しても十分な耐熱性を有するため、変形したり、穴があいたりするようなことはない。
【0025】
【発明の効果】
本発明による熱可塑性樹脂発泡シートを用いた成形容器は、電子レンジにかけることができ、食品、惣菜或いは弁当容器として好適に用いられる。
【0026】
【実施例】
以下実施例により更に詳細に説明する。
(実施例1)
メルトインデックスが9でランダム共重合体であるポリプロピレン樹脂(グランドポリマー社製F229D)50重量部、タルク(白石カルシウム社製、タルクFVS)30重量部、ポリスチレン樹脂(電気化学工業社製、HRM−5)20重量部、発泡剤(永和化成社製、SC−K)0.25重量部、流動パラフィン0.2重量部、SEPS(1)(クラレ社製、セプトン2104、スチレンとイソプレンのトリブロック共重合体の水添物、スチレン含量65重量%)をドライブレンドした後、65mmΦの単軸押出機にて樹脂温度236℃、樹脂圧153kg/cm3、押出量77.9kg/hの条件で厚さ0.6mmのシートを製造した。
【0027】
シートの発泡倍率は1.22倍、シートの押出方向と平行方向及び直行する方向の発泡セルの最大径は各々237μ、100μであった。このシートについて以下の評価を行った。
【0028】
(1)デュポン衝撃
デュポン衝撃試験機(東洋精機製作所製)を用い、撃芯先端直径1/2インチ、重錘100gでシートの50%破壊エネルギーを測定した。
【0029】
(2)手折り感
シートを幅25mm、長さ50mmに切り出し、長さ方向に両端を折り曲げ、幅方向に折り目を入れた際にシートが割れるかどうかを観察し、割れなかったものを○、割れのきっかけが発生した物を△、割れたものを×とした。
【0030】
(3)引裂強度
JIS K−6772に準拠した。すなわち、幅40mm長さ150mmの試験片を資料の縦及び横の方向からそれぞれ3枚ずつとり、各試験片の短辺の中央から長辺に平行に内部へ長さ約75mmに切り込みを入れる。試験片の切り込みを入れた辺の両側が表裏になるように引張試験機のつかみ具に取り付け、切り込みの方向に平行に毎分200±20mmの引っ張り速度で引き裂き、最大荷重を求める。方向は切り込みの方向を示す。
【0031】
シートから真空成形で図1の様な形状の弁当容器をつくり、以下の試験を行った。
(1)落下強度
弁当容器に300gの重りを全体に均一になるよう固定し、50cmから短手方向の縁が垂直になる方向で落下させて、弁当容器が破壊するかどうかをみた。なお、蓋は用いなかった。
(2)オーブン耐熱性
弁当容器を130℃のギヤオーブンに10分間放置して容器の変形の有無をみた。
(3)電子レンジ耐熱性
弁当容器に食用サラダ油を8分目(約300g)を入れて、5分間蓋なしで電子レンジ加熱し、容器の変形、油もれの有無等をみた。
実施例1の組成を表1に、評価結果を表2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
(実施例2)
票1に示された原料を単軸押出機で事前に混練りした以外は実施例1と同様に行った。
【0035】
(実施例3)
表1に示された原料を二軸押出機で事前に混練りした以外は実施例1と同様に行った。
【0036】
(実施例4)
表1の様にSEPS(1)を10重量部とした以外は実施例1と同様に行った。
【0037】
(実施例5)
SEPS(1) 5重量部とPS 10重量部を混合した後、PS 10重量部と混合した以外は実施例1と同様に行った。
【0038】
(実施例6)
SEPS(1)の代わりにSEPS(2)(クラレ社製、セプトン2043、スチレンとイソプレンのトリブロック共重合体の水添物、スチレン含量13重量%)を用いた以外は実施例1と同様に行った。
【0039】
(実施例7)
SEPS(1)の代わりにSTR(電気化学工業社製STR−1602、スチレンとブタジエンのトリブロック共重合体)を2.5重量部用いた以外は実施例1と同様に行った。
【0040】
(実施例8)
SEPS(1)の代わりにSTR(電気化学工業社製STR−1602、スチレンとブタジエンのトリブロック共重合体)を5重量部用いた以外は実施例1と同様に行った。
【0041】
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂50重量部、タルク30重量部、ポリスチレン樹脂20重量部、発泡剤0.25重量部、流動パラフィン0.2重量部をドライブレンドした後、65mmΦの単軸押出機にて樹脂温度228℃、樹脂圧140kg/cm3、押出量77.4kg/hの条件で厚さ0.6mmのシートを製造した。配合組成を表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
シートの発泡倍率は1.19倍、シートの押出方向と平行方向及び直行する方向の発泡セルの最大径は各々208μ、78μであった。このシート及びシートより成形された弁当容器について実施例と同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
(比較例2)
表3の様にSEBS(旭化成社製、タフテック H1041、スチレンとブタジエンのトリブロック共重合体の水添物)5重量部を添加した以外は実施例1と同様に行った。
【0046】
(比較例3)
票2の様にSEBC(日本合成ゴム社製、ダイナロン 4600P、スチレン−ブタジエン−オレフィン結晶ブロック共重合体の水添物)5重量部を添加した以外は実施例1と同様に行った。
【0047】
(比較例4)
SEPS2.5重量部を添加した以外は実施例1と同様に行った。
【0048】
SEPS(1)を25重量部添加した以外は実施例1と同様に行った。
【0049】
市販のPP/Fについて評価を行った、組成を表3に、評価結果を表4に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で容器の物性を測定する際に使用した容器の形状図。
Claims (4)
- (A)ポリプロピレン系樹脂40〜60重量部、(B)ポリスチレン系樹脂10〜30重量部、(C)無機充填剤10〜40重量部及び、(D)スチレン及び共役ジエン炭化水素よりなるブロック共重合体2〜20重量部を含有する発泡倍率が1.05〜3倍の熱可塑性樹脂発泡シート。
- 共役ジエン炭化水素がイソプレンである請求項1記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
- 請求項1または2の熱可塑性樹脂発泡シートよりなる電子レンジ加熱可能であることを特徴とする成形容器。
- 食品が充填された請求項3の成形容器。
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