JP3788547B2 - ビスフェノール製造用触媒、その調製方法及びビスフェノールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はフェノール類とケトン類との脱水縮合反応によるビスフェノール類、とりわけフェノールとアセトンとの脱水縮合反応による、2,2−ビス(4’−オキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAと略称する)、及びフェノールとアセトフェノンとの脱水縮合反応による、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール(以下ビスフェノールAPと略称する)を製造する触媒およびその調製方法並びにビスフェノールの製造方法に関する。
【0002】
ビスフェノールA、ビスフェノールAPはポリカーボネート、ポリエステル、エポキシ樹脂、感熱紙顕色剤の原料等、工業的に極めて有用な化合物である。特に、ポリカーボネート樹脂用に供するビスフェノールAは無色で且つ高純度なものが要求される。
【0003】
【従来の技術】
ビスフェノールAは通常、塩酸等の酸触媒の存在下にフェノール2分子とアセトン1分子との脱水縮合反応によって製造されている。
均一触媒として例えば塩酸を用いる場合には、低温で操作することにより、フェノールとビスフェノールAの付加物を晶析させながら反応させることが可能であるため、アセトンの高転化率と共に、高いP、P’−選択性でビスフェノールAを製造することが出来る。しかしながら塩酸等の均一触媒は反応混合液中の触媒の除去、又は中和する工程が必要であり、操作が煩雑となる。これに加え反応液中に酸が均一に溶解することから装置等の腐食をもたらし、そのため、反応装置等に耐腐食材質を用いなければならず、環境的にも経済的にも問題を生じている。
このことから、固体不均一触媒によるビスフェノールAの製造が工業的に実施されるようになってきている。
【0004】
固体不均一触媒としてはゼオライト、部分中和し不溶化されたヘテロポリ酸塩、強酸性陽イオン交換樹脂等が知られている。しかし、これらの固体不均一触媒は触媒の活性及び選択率の双方とも低い。
これらの固体酸触媒の性能の低さを克服する方法として助触媒として含イオウ化合物を酸触媒とともに反応系に添加することで触媒活性及び反応選択性が向上することが知られている。
【0005】
含イオウ化合物として添加効果のあるものとしては、古くからアルキルメルカプタン、ベンジルメルカプタン等のチオール化合物が知られている。これらの化合物は反応系において均一に溶解しており、酸触媒の活性向上と、ビスフェノールAの高いP、P’−選択性をもたらすが、上記均一酸触媒と同様に生成物であるビスフェノールAとの分離が困難となり、生成物の精製に問題を生じている。そこで、チオール化合物を固定化し、生成物への混入を避ける方法が検討されている。例えば、特公昭37−14721ではメルカプトアルキルアルコールと強酸性陽イオン交換樹脂の酸性基の一部とをエステル化して、エステル結合によりメルカプト化合物を陽イオン交換樹脂に固定化した触媒、特公昭46−19953ではメルカプトアルキルアミンにより強酸性陽イオン交換樹脂を部分中和して固定化した触媒、特開昭52−19189では環状メルカプトアミンで強酸性陽イオン交換樹脂を部分中和し、イオン結合により固定化した触媒、更に英国特許第1539186号においてはメルカプトアミノ酸を陽イオン交換樹脂とイオン結合により固定化した触媒等が知られている。しかしながら、これらイオン交換樹脂にメルカプト化合物を固定化した触媒は、イオン交換樹脂そのものの耐熱性が低く劣化しやすい、更に上記例示のメルカプト化合物の固定化では熱的に不安定であり、分解遊離しやすい。その結果上記したような均一酸触媒、均一メルカプト化合物の有する欠点と同様の問題点がある。さらに、上記の固定化は反応触媒として有効である酸基との反応によるものであり、酸量を減少することを伴う欠点も併せて有している。
【0006】
これらの欠点を克服する方法として特開平8−208545ではスルホン酸基及びメルカプト基を有する有機高分子シロキサンが提案されている。これらの有機高分子シロキサン触媒は上記強酸性陽イオン交換樹脂に比較して熱的に安定であり、且つメルカプト化合物もスルホン酸基をつぶすことなく、且つシロキサンマトリックス中に直接シロキサン結合により固定化されていることから有効且つ安定な固定化となっている。
【0007】
またビスフェノールAPは通常、塩酸等の酸触媒及び含硫黄化合物の存在下にフェノール2分子とアセトフェノン1分子との脱水縮合反応によって製造されている。
均一触媒として例えば塩酸を用いる場合には、アセトフェノンの反応性がアセトンと比較して格段に低いために助触媒となる含硫黄化合物の共存が必須条件となる。アセトフェノンとフェノールからビスフェノールAPを製造する方法として既に知られているものとしては、例えば塩化水素及びメチルメルカプタンを触媒として75℃、3日間の反応により収率86%でビスフェノールAPを得る方法(イタリア特許685536号公報)や、塩化水素及び塩化亜鉛を触媒として60℃、2日間の反応によりアセトフェノン転化率92%、ビスフェノールAP選択率92%、ビスフェノールAP収率84.6%で得る方法(特開昭61−33136号公報)、塩化水素、塩化亜鉛及びブチルメルカプタンを触媒として50℃、6時間の反応でアセトフェノン転化率96.5%、ビスフェノールAP収率87.6%で得る方法(特開平2−196746号公報)、ヘテロポリ酸及びブチルメルカプタンを触媒として100℃、6時間の反応によりアセトフェノン転化率88.3%、ビスフェノールAP収率81.7%で得る方法(特開平4−145039号公報)などがある。
【0008】
しかし、ビスフェノールAと同様、塩酸等の均一触媒は反応混合液中の触媒の除去、又は中和する工程が必要であり、操作が煩雑となる。これに加え反応液中に酸が均一に溶解することから装置等の腐食をもたらし、そのため、反応装置等に耐腐食材質を用いなければならず、環境的にも経済的にも問題を生じることから、ビスフェノールAPの場合も固体不均一触媒による製造が工業的に望ましい。しかし、上記したようにアセトフェノンの反応性がアセトンと比較して著しく低いために固体不均一触媒を用いる例は報告されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フェノール類とケトン類との脱水縮合反応によりビスフェノール類を製造する方法において、生成物であるビスフェノール類に酸成分、メルカプト化合物等が混入することなく、且つ高温反応においても酸及びメルカプト化合物が分解遊離せず、高活性且つ高選択的な触媒を提供すると共にこの触媒を用いた極めて効率的且つ経済性の高いビスフェノール類の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは酸触媒存在下でフェノール類とケトン類の脱水縮合反応によりビスフェノール類、とりわけフェノールとアセトンとの脱水縮合反応によりビスフェノールA及び、フェノールとアセトフェノンとの脱水縮合反応によりビスフェノールAPを製造するにあたり、固体酸触媒の有利性、メルカプト化合物の有効性かつメルカプト化合物の固定化の効果に注目し、従来のメルカプト化合物の均一系での分離精製の問題、メルカプト化合物の固定化における不安定さの問題等の克服、さらには、スルホン酸基及びメルカプト基を有する有機高分子シロキサンの優れた触媒作用を考慮し、その触媒作用の性能の向上を目指し鋭意検討した結果、フェノール類とケトン類との脱水縮合反応によるビスフェノール類を製造するに際して、触媒として高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物、有機スルホン酸基含有シロキサンオリゴマーよりなる群から選ばれた少なくとも1種と、高分子シロキサンマトリックスを形成しうるメルカプト基含有シラン化合物との混合物、またはこれらの混合物と高分子シロキサンであるシリカマトリックスを形成しうるシラン化合物との混合物を加水分解し、次いで、得られた混合ゾルを脱水縮合処理によるゲル化により、シリカマトリックスを形成したスルホン酸基及びメルカプト基を有する有機高分子シロキサンとすることで、スルホン酸基及びメルカプト基を均一広分散且つ効率的に固定化することを可能とし、更に熱的にも極めて安定で酸成分及び助触媒成分の脱離が抑制された極めて活性の高い触媒であることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、1)高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物および有機スルホン酸基含有低分子シロキサンよりなる群から選ばれた少なくとも1種と、高分子シロキサンマトリックスを形成しうるメルカプト基含有シラン化合物とを、または2)高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物および有機スルホン酸基含有低分子シロキサンよりなる群から選ばれた少なくとも1種と、高分子シロキサンマトリックスを形成しうるメルカプト基含有シラン化合物と、一般式: Ra nSiX(4-n)(式中nは0又は1以上3以下の整数であり、Ra は炭素数1以上20以下の炭化水素基または含フッ素炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物の少なくとも1種とを、加水分解し、次いで、得られた混合ゾルを脱水縮合することによるゲル化により、シリカマトリックスを形成したスルホン酸基およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサンとするビスフェノール製造用触媒の調製方法において、高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物が、一般式:R bn SiX (4-n) (式中nは1以上3以下の整数であり、R b は少なくとも1以上のスルホン酸基を有する炭素数1以上15以下の炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物であり、有機スルホン酸基含有低分子シロキサンが一般式:R bn SiX (4-n) のシラン化合物の2分子以上がおのおのの分子のXの少なくとも1個が置換されてシロキサン結合を形成し、かつ水もしくは有機溶媒に可溶な有機スルホン酸基含有シロキサンであることを特徴とするビスフェノール製造用触媒の調製方法である。
【0012】
また、本発明は、1)高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物および有機スルホン酸基含有低分子シロキサンよりなる群から選ばれた少なくとも1種と、高分子シロキサンマトリックスを形成しうるメルカプト基含有シラン化合物とを、または2)高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物および有機スルホン酸基含有低分子シロキサンよりなる群から選ばれた少なくとも1種と、高分子シロキサンマトリックスを形成しうるメルカプト基含有シラン化合物と、一般式: Ra nSiX(4-n)(式中nは0又は1以上3以下の整数であり、Ra は炭素数1以上20以下の炭化水素基または含フッ素炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物の少なくとも1種とを、加水分解し、次いで、得られた混合ゾルを脱水縮合することによるゲル化により、シリカマトリックスを形成したスルホン酸基およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサンとするビスフェノール製造用触媒の調製方法において、高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物が、一般式:R bn SiX (4-n) (式中nは1以上3以下の整数であり、R b は少なくとも1以上のスルホン酸基を有する炭素数1以上15以下の炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物であり、有機スルホン酸基含有低分子シロキサンが一般式:R bn SiX (4-n) のシラン化合物の2分子以上がおのおのの分子のXの少なくとも1個が置換されてシロキサン結合を形成し、かつ水もしくは有機溶媒に可溶な有機スルホン酸基含有シロキサンであることを特徴とするビスフェノール製造用触媒の調製方法により調整されたビスフェノール製造用触媒を提供するものである。
【0013】
更に、本発明は、該シリカマトリックスを形成したスルホン酸基およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサン触媒の存在下に、フェノール類とケトン類とを反応させることを特徴とするビスフェノールの製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用されるフェノール類はベンゼン環に直接ヒドロキシ基が置換、結合した化合物(フェノール)であり、更にヒドロキシ基以外に置換基を有する置換フェノール類も使用可能である。
このとき、ヒドロキシ基以外の置換基は、多くとも4置換基で置換されたフェノール類であり、好ましくは2置換基以下、更に好ましくは1置換基以下のフェノール類であることが望ましい。
【0015】
ヒドロキシ基以外の置換基の数が多い場合には反応が立体的等の要因から進行しにくく、またヒドロキシ基以外の置換基数が5であれば、実質的にアセトンとの縮合反応は進行しない。
ここにおいて、ヒドロキシ基以外にベンゼン環に置換基を有するフェノール類の場合、その置換基は特に限定されることはなく、通常ベンゼン環に置換可能な置換基であればいかなる置換基であっても差し支えないが、具体的に例示すれば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の飽和脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基、フェニル基、トリル基等の芳香族炭化水素基等の炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。またこれら置換基が複数(具体的には2以上4以下)ベンゼン環に置換している場合には、これらの基が同一であってもまた異なっていても差し支えない。
【0016】
更に、具体的にこれらフェノール類を例示すれば、無置換であるフェノール、o−、p−及びm−クレゾール、o−、p−及びm−エチルフェノール、o−、p−及びm−n−プロピルフェノール、o−、p−及びm−i−プロピルフェノール、o−、p−及びm−n−ブチルフェノール、o−、p−及びm−sec−ブチルフェノール、o−、p−及びm−tert−ブチルフェノール、2,4−キシレノール、2,6−キシレノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール等のアルキル置換フェノール類、p−シクロヘキシルフェノール等の脂環式炭化水素置換フェノール類、o−及びp−フェニルフェノール、o−及びp−トリルフェノール類等の芳香族基置換フェノール類、o−及びp−アニソール、o−及びp−エトキシフェノール、o−及びp−フェノキシフェノール等のアルコキシ置換フェノール類、ニトロフェノール類、アミノフェノール類、クロロフェノール類等が挙げられる。無論、本発明ではこれらのフェノール類のみに限定されることはない。本発明においてはこれらフェノール類の少なくとも1種を使用する。
【0017】
また、本発明において使用するケトン類とは、一般式:R’−(C=O)−R”(式中R’及びR”それぞれ水素原子もしくは炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、同一の基であっても異なる基であっても差し支えない、またこれらの基はハロゲン原子等の置換基を有していても差し支えない。また−(C=O)−はカルボニル基である)で表されるカルボニル化合物である。具体的に例示すればホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−i−ブチルケトン、ジエチルケトン等のアルキルケトン類、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン等の脂環式ケトン類、アセトフェノン、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、1,3−ジクロロアセトン等のハロゲン置換ケトン類等が挙げられる。本発明はこれらのケトン類のみに限定されないのは無論である。本発明ではこれらケトン類の少なくとも1種を使用する。
【0018】
本発明では、フェノール類がフェノールであり、ケトン類がアセトンもしくはアセトフェノンであり、ビスフェノールがビスフェノールA及びビスフェノールAPである方法が好ましい。
また、本発明において使用するこれらフェノール類及びケトン類の純度に関しては特に限定されることはなく、工業純度であっても、試薬純度であっても差し支えない。また、高度精製した高純度品を使用することも当然可能である。さらには、反応に不活性な媒体、例えば飽和炭化水素等で希釈して使用することも可能である。
【0019】
本発明において用いられる触媒はシリカマトリックスを形成したスルホン酸基及びメルカプト基(SH基)を有する、有機高分子シロキサンである。更に詳しくは、高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物および有機スルホン酸基含有低分子シロキサンよりなる群から選ばれた少なくとも1種と、高分子シロキサンマトリックスを形成しうるメルカプト基含有シラン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種との混合物を、必要である場合には、加水分解等の処理を行い混合ゾルとし更に脱水縮合によりゲル化させて得られるシリカマトリックスを形成したスルホン酸基及びメルカプト基を有する有機高分子シロキサンである。この時、混合ゾルを調製する際に、上記有機スルホン酸基含有シラン化合物および有機スルホン酸基含有低分子シロキサンよりなる群から選ばれた少なくとも1種と、メルカプト基含有シラン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種との混合物とともに一般式:Ra nSiX(4-n)(式中nは0又は1以上3以下の整数であり、Raは炭素数1以上20以下の炭化水素基または含フッ素炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物の少なくとも1種を添加して、ゾル化及びゲル化させて得られるシリカマトリックスを形成したスルホン酸基及びメルカプト基を有する有機高分子シロキサンとする場合もある。後者の調製方法の法が、シリカマトリックスの安定性等の観点から好ましい触媒となる場合もある。
【0020】
本発明で用いる、高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物とは、直接ケイ素原子に結合した有機スルホン酸基を有するものであり、該シラン化合物単独もしくはエチルシリケート、四塩化ケイ素等のシラン化合物の混合物として通常のゾル−ゲル反応により固体化しゲル状物質を形成しうるシラン化合物である。また有機スルホン酸基含有低分子シロキサンとは、上記の有機スルホン酸基含有シラン化合物の2分子以上が加水分解によりシロキサン結合を形成したシロキサン化合物である。ここで言う低分子シロキサンとは、シロキサン結合形成によってもゲル化し固体化しないシロキサン化合物である。通常、上記の有機スルホン酸基含有シラン化合物の2分子以上〜数10分子により形成されたシロキサンである。またゲル化前のシリカゾルも含まれる。好ましくは上記の有機スルホン酸基含有シラン化合物が10分子以下で生成されたシロキサンであるが、本発明においては特に限定されることはなく、溶媒中で均一状態もしくはゾル状態を保持するシロキサンであれば差し支えない。
【0021】
具体的には高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物としては、一般式:Rb nSiX(4-n)(式中nは1以上3以下の整数であり、Rbは少なくとも1以上のスルホン酸基を有する炭素数1以上15以下の炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物が例示される。
【0022】
有機スルホン酸基含有低分子シロキサンとは、一般式:Rb nSiX(4-n) で表される有機スルホン酸基含有シラン化合物間でそれぞれのSi−X結合がSi−酸素結合に置換され、Si−O−Si−結合(シロキサン結合)を形成し、かつ、水もしくは有機溶媒に可溶な化合物である。例えば該シラン化合物2分子から形成される場合には一般式:(X(3-n'))(Rb)n'Si−O−Si(Rb)n'(X(3-n'))(式中n’は1以上2以下の整数であり、Rbは少なくとも1以上のスルホン酸基を有する炭素数1以上15以下の炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるジシロキサンである。本発明においてはこれらシラン化合物、シロキサン化合物の少なくとも1種を使用する。
【0023】
ここにおいて、上記シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物及びこれらシラン化合物から形成される有機スルホン酸基含有低分子シロキサンの調製方法に関して、本発明では特に制限されるものではなく、上記シラン化合物もしくはシロキサンとなればいかなる方法であっても差し支えないが、例えば以下の方法により調製することが出来る。
【0024】
有機スルホン酸基を含有する有機高分子シロキサンを、例えば、酸の存在下に水と接触させることにより加水分解し、固体を溶解させ水溶液とする。この方法により水溶液中に例えば有機スルホン酸基が上記一般式におけるRbで表示される有機スルホン酸基であれば一般式:Rb nSi(OH)(4-n)(式中nは1以上3以下の整数であり、Rbは少なくとも1以上のスルホン酸基を有する炭素数1以上15以下の炭化水素基であり、OHは水酸基であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物として溶解する。無論、酸性条件等により一般式:Rb nSi(OH)(4-n)で表されるシラン化合物及び該シラン化合物の縮合した水溶性の有機スルホン酸基含有低分子シロキサン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の水溶液として得られる。得られた水溶液は必要であるならば、水を濃縮除去した後本発明における触媒の調製に使用する。
【0025】
また、一般式:Rc nSiX(4-n) (式中nは1以上3以下の整数であり、Rc は炭素数1以上15以下の炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物をスルホン化することによっても有機スルホン酸基含有シラン化合物を調製することもできる。また、この方法で、無溶媒もしくは溶媒存在下でSO3 と接触させることで炭化水素基の炭素と水素の結合間にSO3を挿入し、少なくとも1以上のスルホン酸基を有するシラン化合物を得ることができる。必要であるならば蒸留等により単離精製した後、本発明における触媒の調製に使用する。
Rcとしては、アルキル基、芳香族基等があり、芳香族基としては、フェニル基がある。
【0026】
本発明では、上記した方法により得られる高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物および有機スルホン酸基含有低分子シロキサンよりなる群から選ばれた少なくとも1種と、高分子シロキサンマトリックスを形成しうるメルカプト基含有シラン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種との混合物、またはこれらの混合物と一般式:Ra nSiX(4-n)(式中nは0又は1以上3以下の整数であり、Raは炭素数1以上20以下の炭化水素基または含フッ素炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物の少なくとも1種との混合物を加水分解することにより得られる混合ゾルの脱水縮合によるゲル化により、シリカマトリックスを形成したスルホン酸基及びメルカプト基を有する有機高分子シロキサンを調製する事ができる。
【0027】
Raとしては、アルキル基、芳香族基、フッ素化アルキル基またはフッ素化芳香族基等がある。 また、有機スルホン酸基としては、アルキルスルホン酸基や芳香族スルホン酸基がある。また、芳香族スルホン酸基としてはフェニルスルホン酸基等がある。
【0028】
メルカプト基含有シラン化合物としては、一般式:Rd nSiX(4-n)(式中nは1以上3以下の整数であり、Rdは炭素数1以上15以下の少なくとも1個のメルカプト(SH)基を置換基として持つ炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物等がある。
【0029】
また、Rdとしては、メルカプトメチル基、2ーメルカプトエチル基、3−メルカプト−n−プロピル基、4−メルカプト−n−ブチル基、p−メルカプトフェニル基及びp−メルカプトメチルフェニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種がある。
【0030】
ここにおいて本発明における混合ゲル化について述べる。本発明における混合ゲル化は通常の混合ゾル−ゲル反応により充分達成される。
実施し易い混合ゲル化方法として具体的に例示すれば、触媒の酸成分となる上記した有機スルホン酸基を有するシラン化合物または有機スルホン酸基含有低分子シロキサンと助触媒であるメルカプト成分となるメルカプト基含有シラン化合物を、目的とする固体触媒の固体酸量、メルカプト量から計算される量を仕込み、さらにシリカマトリックスを安定化させる成分として一般式:Ra nSiX(4-n)(式中nは0又は1以上3以下の整数であり、Raは炭素数1以上20以下の炭化水素基または含フッ素炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物の少なくとも1種とを混合し、必要であるならばエタノール等の溶媒を用いて均一な混合溶液とする。これに加水分解基の半分量の水を加えた後、加熱攪拌し、酸性条件下で濃縮する。得られた高粘度の液体は一般にシリカゾルと呼ばれるものである。
またこの時、先に2成分もしくはそれ以上の成分をあらかじめゾル化させた後、残りの成分とゾル化させること等により、特定成分のシリカマトリックス中の分散性を変化させることもできる。
【0031】
上記したゾルに加水分解基量に対して過剰の水とアンモニア水等を加え、塩基性条件下でゲル化させる。またこの時必要であるならば加熱攪拌し、長時間熟成させることもできる。
これらゲル化を実施するに際して、ゾルに対して不活性であるアルコール、または脂肪族族飽和炭化水素(ヘキサン、ヘプタン等)等の媒体に希釈させてゲル化させることも可能である。
【0032】
得られたゲルは濾過または溶媒を留去する等により単離できる。このゲルはスルホン酸がアンモニウム塩型等であるため、固体酸触媒として用いるためには酸処理により酸型にもどす必要がある。 本発明においては仕込に際してのスルホン酸量、メルカプト量に関しては特に限定されないが、好ましくはミリグラム当量(meq/g:固体触媒1g当たりの官能基のmmol数)で0.05ないし5、好ましくは0.3ないし3ミリグラム当量であることが推奨される。無論本発明においてはこれらの範囲のみに限定されることはない。
【0033】
さらに上記した、それぞれの一般式におけるXは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子およびアルコキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種を表し、加水分解によりケイ素−X結合が分解し、高分子シロキサン結合を生成することを可能たらしめる基である。具体的に例示すれば、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、等のアルキルアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等の芳香族アルコキシ基等が挙げられる。本発明はこれらアルコキシ基のみに限定されることはなく、更にこれらの混合の置換基であっても差し支えない。
【0034】
原料であるフェノール類とケトンの使用量(量比)は特に限定されないが、好ましくはフェノール類/ケトンのモル比で0.1〜100の範囲であり、更に好ましくは0.5〜50の範囲で実施することが奨励される。余りにフェノール類の量が少なければ、原料ケトンの高い転化率を達成することは困難であり、また余りにフェノール類の量が多ければ高いケトンの転化率を達成することはできるが、必要以上にフェノール類を用いるために反応器が過大となり、更にフェノール類の大量循環が必要となり効率的に製造し得ないためである。
【0035】
反応温度についても本発明では特に限定されることはないが、好ましくは0〜300℃、更に好ましくは30〜200℃の範囲である。反応温度が極端に低すぎると原料の高い転化率を達成させるには極端に長い反応時間を必要とし、言い換えれば極端に反応速度が低下し、反応生成物の生産性が低下する。一方、反応温度が極端に高すぎると好ましからざる副反応等が進行し、副成生物の増大や、原料であるフェノール類、およびケトン、さらに生成物であるビスフェノール類等の安定性にも好ましくなく、反応選択率の低下をもたらし経済的でない。
【0036】
反応は減圧、加圧、および常圧のいずれの状態で実施することも可能である。反応効率(単位体積当たりの反応効率)の観点から余りに低い圧力で実施することは好ましくはない。通常好ましい実施圧力範囲は、0.1〜200気圧であり、更に好ましくは0.5〜100気圧である。無論、本発明はこれらの圧力範囲に限定されない。
【0037】
また本発明を実施するに際し、使用する触媒量は特に限定されないが、例えば、反応をバッチ方式で実施する場合には、好ましくは原料となるフェノール類に対して重量パーセントで0.001〜200%、更に好ましくは0.1〜50%の範囲で行うことが推奨される。余りに少量の有機スルホン酸およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサン触媒を使用することは、実質的に反応速度を極端に低下させ、効率上問題となり、また、余りに大量に使用すれば反応液等の攪拌効率を低下させ、トラブルを生じる恐れがあるためである。
【0038】
本発明を実施するにあたり、反応系内に触媒および反応試剤に対して不活性な溶媒もしくは気体を添加して、希釈した状態で行うことも可能である。具体的にはメタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性気体や場合によっては水素を希釈剤として使用することもできる。
【0039】
本発明を実施するに際してその方法はバッチ式、セミバッチ式、または連続流通式のいずれの方法においても実施することが可能である。
反応形態は有機スルホン酸基およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサンを固体触媒として液相、気相、気−液混合相のいずれの形態においても実施することが可能である。好ましくは反応効率的な観点から液相反応で実施することが推奨される。
有機スルホン酸基およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサンの充填方式としては、固定床、流動床、懸濁床、棚段固定床等種々の方式が採用され、いずれの方式で実施しても差し支えない。
【0040】
反応時間(流通反応においては滞留時間もしくは触媒接触時間)は特に限定されることはないが、通常0.1秒〜30時間、好ましくは0.5秒〜15時間である。
反応後、反応生成物を前記触媒等から濾過、抽出、留去等の分離方法によって、分離回収することができる。
目的生成物であるビスフェノール類は、分離し、回収した回収物から溶媒抽出、蒸留、アルカリ処理、酸処理等の逐次的な処理方法、あるいはこれらを適宜組み合わせた操作等の通常の分離、精製法によって分離精製し、取得することができる。また、未反応原料は回収して、再び反応系へリサイクルして使用することもできる。
【0041】
バッチ反応の場合、反応後に反応生成物を分離して回収された触媒はそのまま、またはその一部もしくは全部を再生した後、繰り返して反応に再度使用することもできる。
固定床または流動床流通反応方式で実施する場合には、反応に供することによって、一部またはすべての触媒が失活もしくは活性低下した場合には反応を中断後、触媒を再生して反応に供することもできるし、また連続的もしくは断続的に一部を抜き出し、再生後、再び反応器にリサイクルして再使用することもできる。さらに新たな触媒を断続的に反応器に供給することもできる。移動床式流通反応で実施する際には、バッチ反応と同様に触媒を分離、回収し、必要であるならば再生して使用することができる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、更に具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(a)酸成分含有原料水溶液の製造
滴下ロートを取り付けた2口の500mlの丸底フラスコに200mlの塩化メチレンを入れ、これに液体のSO3を46.80g(0.585mol)を溶解させた。フラスコを氷冷し、窒素下でトリクロロフェニルシラン124.02g(0.585mol)を30分かけて滴下した後、氷浴を取り外して室温で数時間攪拌した。滴下ロートを取り外した後、油浴を用いて120℃で常圧下数時間加熱し、塩化メチレン、および未反応のSO3を留去した。放冷後、氷冷し、水200gを30分かけて滴下し、次いで窒素をバブリングさせながら数時間還流し発生する塩化水素を取り除いた。得られた反応液を常圧下留去し、ついで減圧下100℃で数時間加熱し乾固させた。この固体に水31.59g(1.755mol)を加えると完全に溶解した。このフェニルヒドロキシシラン等の不純物を含むフェニルスルホン酸基含有ヒドロキシシランの水溶液114.9gを触媒調製の酸成分含有原料水溶液とした。
【0043】
(b)酸成分含有原料エタノール溶液の製造
滴下ロートを取り付けた2口の500mlの丸底フラスコに200mlの塩化メチレンを入れ、これに液体のSO3を46.80g(0.585mol)を溶解させた。フラスコを氷冷し、窒素下でトリクロロフェニルシラン124.02g(0.585mol)を30分かけて滴下した後、氷浴を取り外して室温で数時間攪拌した。滴下ロートを取り外した後、油浴を用いて120℃で常圧下数時間加熱し、塩化メチレン、および未反応のSO3を留去した。放冷後、室温で乾燥エタノール161.50gを30分かけて滴下し、次いで窒素をバブリングさせながら数時間還流し、発生する塩化水素を取り除いた。得られた未反応のフェニルエトキシシラン等の不純物を含むフェニルスルホン酸基含有エトキシシランのエタノール溶液238.60gを触媒調製の酸成分含有原料エタノール溶液とした。
【0044】
実施例1
攪拌棒を取り付けた2口の500mlの丸底フラスコに上記酸成分含有原料水溶液12.52g、テトラエトキシシラン35.50g(170.67mmol)、メルカプトプロピルトリメトキシシラン6.72g(34.28mmol)、エタノール30mlを入れ、混合した。これに水7.53g(0.418mol)を30分かけて滴下した。次いでこれを加熱し、80℃で数時間攪拌した。これを放冷し、エタノール30ml、n−ヘキサン20mlを加え、混合した。さらに28%アンモニア水15ml、水75mlを混合したものを滴下し、室温で4時間攪拌した。これをエバポレーターで減圧留去し白色の固体を得た。次いで2Nの塩酸200mlを加え室温で1時間攪拌し、プロトン型にもどした。大量の純水で良く洗浄した後、減圧下で乾燥し、スルホン酸およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサン触媒(触媒1と称する。)29.00gを得た。本触媒の固体酸量を測定した結果0.80meq/gであった。この固体酸量から上記酸成分含有原料水溶液中のスルホン酸の総含有量は23.17mmolであることになり、SO3によるフェニルシランのスルホン化の収率を計算すると46.5%となることが判明した。
【0045】
実施例2
攪拌棒を取り付けた2口の500mlの丸底フラスコに上記酸成分含有原料エタノール溶液26.00g、テトラエトキシシラン35.50g(170.67mmol)、メルカプトプロピルトリメトキシシラン6.72g(34.28mmol)、エタノール30mlを入れ、混合した。これに水7.53g(0.418mol)を30分かけて滴下した。次いでこれを加熱し、80℃で数時間攪拌した。これを放冷し、エタノール30ml、n−ヘキサン20mlを加え、混合した。さらに28%アンモニア水15ml、水75mlを混合したものを滴下し、室温で4時間攪拌した。これをエバポレーターで減圧留去し白色の固体を得た。次いで2Nの塩酸200mlを加え室温で1時間攪拌し、プロトン型にもどした。大量の純水で良く洗浄した後、減圧下で乾燥し、スルホン酸およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサン触媒(触媒2と称する。)30.00gを得た。本触媒の固体酸量を測定した結果1.01meq/gであった。この固体酸量から上記酸成分含有原料エタノール溶液中のスルホン酸の総含有量は30.24mmolであることになり、SO3によるフェニルシランのスルホン化の収率を計算すると47.4%となることが判明した。
【0046】
実施例3
攪拌棒を取り付けた2口の500mlの丸底フラスコに上記酸成分含有原料エタノール溶液26.00g、テトラエトキシシラン17.75g(85.34mmol)、エチルトリエトキシシラン16.39g(85.34mmol)メルカプトプロピルトリメトキシシラン6.72g(34.28mmol)、エタノール30mlを入れ、混合した。これに水7.53g(0.418mol)を30分かけて滴下した。次いでこれを加熱し、80℃で数時間攪拌した。これを放冷し、エタノール30ml、n−ヘキサン20mlを加え、混合した。さらに28%アンモニア水15ml、水75mlを混合したものを滴下し、室温で4時間攪拌した。これをエバポレーターで減圧留去し白色の固体を得た。次いで2Nの塩酸200mlを加え室温で1時間攪拌し、プロトン型にもどした。大量の純水で良く洗浄した後、減圧下で乾燥し、スルホン酸、エチル基およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサン触媒(触媒3と称する。)41.79gを得た。本触媒の固体酸量を測定した結果0.79meq/gであった。
【0047】
実施例4
攪拌棒を取り付けた2口の500mlの丸底フラスコに上記酸成分含有原料エタノール溶液26.00g、テトラエトキシシラン17.75g(85.34mmol)、エチルトリエトキシシラン16.39g(85.34mmol)メルカプトプロピルトリメトキシシラン6.72g(34.28mmol)、エタノール30mlを入れ、混合した。これに水7.53g(0.418mol)を30分かけて滴下した。次いでこれを加熱し、80℃で数時間攪拌した。これを放冷し、エタノール30ml、n−ヘキサン20mlを加え、混合した。さらに28%アンモニア水15ml、水75mlを混合したものを滴下し、室温で4時間攪拌し、さらに80℃で数日間攪拌し、良く熟成させた。これをエバポレーターで減圧留去し白色の固体を得た。次いで2Nの塩酸200mlを加え室温で1時間攪拌し、プロトン型にもどした。大量の純水で良く洗浄した後、減圧下で乾燥し、スルホン酸、エチル基およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサン触媒(触媒4と称する。)41.80gを得た。本触媒の固体酸量を測定した結果0.77meq/gであった。
【0048】
実施例5
攪拌棒を取り付けた2口の500mlの丸底フラスコに上記酸成分含有原料エタノール溶液26.00g、エチルトリエトキシシラン16.39g(85.34mmol)、エタノール30mlを入れ、混合した。これに水3.77g(0.21mol)を30分かけて滴下した。さらに室温で1時間攪拌し、先に加水分解した後後、テトラエトキシシラン17.75g(85.34mmol)、メルカプトプロピルトリメトキシシラン6.72g(34.28mmol)を加え、これに水3.77g(0.21mol)を30分かけて滴下した。次いでこれを加熱し、80℃で数時間攪拌した。これを放冷し、エタノール30ml、n−ヘキサン20mlを加え、混合した。さらに28%アンモニア水15ml、水75mlを混合したものを滴下し、室温で4時間攪拌し、さらに80℃で数日間攪拌し、良く熟成させた。これをエバポレーターで減圧留去し白色の固体を得た。次いで2Nの塩酸200mlを加え室温で1時間攪拌し、プロトン型にもどした。大量の純水で良く洗浄した後、減圧下で乾燥し、スルホン酸、エチル基およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサン触媒(触媒5と称する。)41.79gを得た。本触媒の固体酸量を測定した結果0.80meq/gであった。
【0049】
実施例6
攪拌棒を取り付けた2口の500mlの丸底フラスコに上記酸成分含有原料エタノール溶液26.00g、エチルトリエトキシシラン16.39g(85.34mmol)、エタノール30mlを入れ、混合した。これに水3.77g(0.21mol)を30分かけて滴下した。さらに80℃で数時間攪拌した後、放冷し、テトラエトキシシラン17.75g(85.34mmol)、メルカプトプロピルトリメトキシシラン6.72g(34.28mmol)を加え、これに水3.77g(0.21mol)を30分かけて滴下した。次いでこれを加熱し、80℃で数時間攪拌した。これを放冷し、エタノール30ml、n−ヘキサン20mlを加え、混合した。さらに28%アンモニア水15ml、水75mlを混合したものを滴下し、室温で4時間攪拌し、さらに80℃で数日間攪拌し、良く熟成させた。これをエバポレーターで減圧留去し白色の固体を得た。次いで2Nの塩酸200mlを加え室温で1時間攪拌し、プロトン型にもどした。大量の純水で良く洗浄した後、減圧下で乾燥し、スルホン酸、エチル基およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサン触媒(触媒6と称する。)41.79gを得た。本触媒の固体酸量を測定した結果0.78meq/gであった。
【0050】
実施例7
攪拌棒を取り付けた2口の1000mlの丸底フラスコにテトラエトキシシラン291.6g(1.402mol)、フェニルトリエトキシシラン144.68g(0.600mol)、エタノール200mlを加え、室温で1時間攪拌し、よく混合した。これに0.01Nの塩酸92mlを1時間かけて滴下した。次いで開放系で内温78℃で20時間攪拌し、濃縮した。これを室温まで放冷し、エタノール120ml、n−ヘキサン180mlを加え、室温で1時間攪拌し良く混合した。これに28%アンモニア水100mlと水540mlを混合したものを1時間かけて滴下した。さらに室温で4時間攪拌した。得られた白色懸濁液を濾過し、白色物を大量の純水で洗浄した後、熱風乾燥器中で100℃で1日間乾燥した。この様にして得られたシリカマトリックス中にフェニル基を有する有機高分子シロキサン146.70gを2000mlの丸底フラスコに入れ、濃硫酸1400mlを加え、80℃で6時間加熱攪拌し、スルホン化した。反応後室温まで放冷し、水4000mlを注意して加え、希釈した。これを濾過し、得られた白色物を大量の純水で洗浄した。これを熱風乾燥器中で100℃で1日間乾燥した。得られたシリカマトリックス中にフェニルスルホン酸基を有する有機高分子シロキサン144.0gの固体酸量を測定した結果、0.60meq/gであった。
【0051】
上記したフェニルスルホン酸基を有する有機高分子シロキサン143.0g(固体酸量0.60meq/g)を1500mlの丸底フラスコに入れ、純水1000mlを加えた。これを24時間還流した後、放冷し、濾過した。濾別した白色物の重量は130.81gで固体酸量は0.48meq/gに低下していた。得られた濾液を濃縮し、25.59gの無色透明液を得た。固体酸量の減少から計算するとこの溶液中には23.01mmolのフェニルスルホン酸基を有する低分子シロキサンが溶解していることになる。
【0052】
攪拌棒を取り付けた2口の500mlの丸底フラスコに上記したフェニルスルホン酸基を含有する水溶液6.40g、テトラエトキシシラン12.13g(58.32mmol)、メルカプトプロピルトリメトキシシラン4.63g(23.50mmol)、エタノール10mlを入れ、混合した。次いでこれを加熱し、80℃で数時間攪拌した。これを放冷し、エタノール15ml、n−ヘキサン5mlを加え、混合した。さらに28%アンモニア水5ml、水25mlを混合したものを滴下し、室温で4時間攪拌した。これをエバポレーターで減圧留去し白色の固体を得た。次いで2Nの塩酸200mlを加え室温で1時間攪拌し、プロトン型にもどした。大量の純水で良く洗浄した後、減圧下で乾燥し、スルホン酸およびメルカプト基を有する高分子シロキサン触媒(触媒7と称する。)8.01gを得た。本触媒の固体酸量を測定した結果0.70meq/gであった。
【0053】
実施例8〜14
70mlの耐圧反応器にアセトン3.80g(65.43mmol)、フェノール33.00g(350.65mmol)、触媒1〜7のいずれかを2.00g仕込み、窒素ガスで耐圧反応器内を5kg/cm2ゲージ圧に加圧した後、100℃で2時間加熱攪拌し反応をおこなった。反応終了後、室温に冷却し、放圧後反応液を取り出し液体クロマトグラフ法によって分析定量した。結果は表1に示したようにそれぞれ良い収率でビスフェノールAが生成した。
【0054】
実施例15
アセトンの仕込量を1.90gとした以外は総て実施例8と同じ条件で反応させた。結果は表1に示したように高いアセトンに対する収率でビスフェノールAが生成した。
【0055】
実施例16
反応温度を120℃とし、反応時間を1時間とした以外は総て実施例8と同じ条件で反応を行った。結果は表1に示したように高収率でビスフェノールAが生成した。
【0056】
実施例17
実施例11で使用した触媒4を反応後濾過により取り出し、もう一度原料を仕込んで同一条件で反応させた。結果は表1に示したようにビスフェノールAが生成し、触媒が使用により劣化しないことが判明した。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例18
攪拌棒を取り付けた2口の500mlの丸底フラスコに上記酸成分含有原料水溶液12.52g、テトラエトキシシラン17.75g(85.34mmol)、メルカプトプロピルトリメトキシシラン16.73g(85.34mmol)、エタノール30mlを入れ、混合した。これに水7.53g(0.418mol)を30分かけて滴下した。次いでこれを加熱し、80℃で数時間攪拌した。これを放冷し、エタノール30ml、n−ヘキサン20mlを加え、混合した。さらに28%アンモニア水15ml、水75mlを混合したものを滴下し、室温で4時間攪拌した。これをエバポレーターで減圧留去し白色の固体を得た。次いで2Nの塩酸200mlを加え室温で1時間攪拌し、プロトン型にもどした。大量の純水で良く洗浄した後、減圧下で乾燥し、スルホン酸およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサン触媒(触媒8と称する。)29.50gを得た。本触媒の固体酸量を測定した結果0.77meq/gであった。
【0059】
実施例19
70mlの耐圧反応器にアセトフェノン7.80g(65.00mmol)、フェノール33.00g(350.65mmol)、触媒1を2.00g仕込み、100℃で3時間加熱攪拌し反応をおこなった。反応終了後、室温に冷却し、放圧後反応液を取り出し液体クロマトグラフ法によって分析定量した。結果は表2に示したように良い収率でビスフェノールAPが生成した。
【0060】
実施例20
70mlの耐圧反応器にアセトフェノン7.80g(65.00mmol)、フェノール33.00g(350.65mmol)、触媒8を2.00g仕込み、100℃で3時間加熱攪拌し反応をおこなった。反応終了後、室温に冷却し、放圧後反応液を取り出し液体クロマトグラフ法によって分析定量した。結果は表2に示したようにメルカプト量を増大させることで非常に良い収率でビスフェノールAPが生成した。
【0061】
比較例1
70mlの耐圧反応器にアセトフェノン7.80g(65.00mmol)、フェノール33.00g(350.65mmol)、350℃で3時間加熱し結晶水を飛ばしたリンタングステン酸(H3PW12O40)を2.00g仕込み、メルカプトプロピオン酸0.12gを加え、100℃で3時間加熱攪拌し反応をおこなった。反応終了後、室温に冷却し、放圧後反応液を取り出し液体クロマトグラフ法によって分析定量した。結果は表2に示した。
【0062】
【表2】
【0063】
【発明の効果】
本発明に従えば、以下の効果が得られる。
(1)ケトン類とフェノール類との脱水縮合反応によりビスフェノール類を収率および選択率良く製造することができる。
(2)工業上重要であるビスフェノールAを安全上、プロセス上および経済上著しく優位に生産することができる。
(3)工業上重要であるビスフェノールAPを安全上、プロセス上および経済上著しく優位に生産することができる。
上記したように、本発明によって工業上著しく優れたビスフェノールの製造方法を提供することができる。
Claims (18)
- 1)高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物および有機スルホン酸基含有低分子シロキサンよりなる群から選ばれた少なくとも1種と、高分子シロキサンマトリックスを形成しうるメルカプト基含有シラン化合物とを、または2)高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物および有機スルホン酸基含有低分子シロキサンよりなる群から選ばれた少なくとも1種と、高分子シロキサンマトリックスを形成しうるメルカプト基含有シラン化合物と、一般式: Ra nSiX(4-n) (式中nは0又は1以上3以下の整数であり、Raは炭素数1以上20以下の炭化水素基または含フッ素炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物の少なくとも1種とを、加水分解し、次いで、得られた混合ゾルを脱水縮合することによるゲル化により、シリカマトリックスを形成したスルホン酸基およびメルカプト基を有する有機高分子シロキサンとするビスフェノール製造用触媒の調製方法において、高分子シロキサンマトリックスを形成しうる有機スルホン酸基含有シラン化合物が、一般式:R bn SiX (4-n) (式中nは1以上3以下の整数であり、R b は少なくとも1以上のスルホン酸基を有する炭素数1以上15以下の炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物であり、有機スルホン酸基含有低分子シロキサンが一般式:R bn SiX (4-n) のシラン化合物の2分子以上がおのおのの分子のXの少なくとも1個が置換されてシロキサン結合を形成し、かつ水もしくは有機溶媒に可溶な有機スルホン酸基含有シロキサンであることを特徴とするビスフェノール製造用触媒の調製方法。
- R a の炭化水素基が、アルキル基である請求項1記載の方法。
- R a の炭化水素基が、芳香族基である請求項1記載の方法。
- R a の含フッ素炭化水素基が、フッ素化アルキル基である請求項1記載の方法。
- R a の 含フッ素炭化水素基が、フッ素化芳香族基である請求項1記載の方法。
- 有機スルホン酸基が、アルキルスルホン酸基である請求項1記載の方法。
- 有機スルホン酸基が、芳香族スルホン酸基である請求項1記載の方法。
- 芳香族スルホン酸基が、フェニルスルホン酸基である請求項7記載の方法。
- 有機スルホン酸基含有シラン化合物が、一般式:Rc nSiX(4-n)(式中nは1以上3以下の整数であり、Rcは炭素数1以上15以下の炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物をスルホン化することにより得られるものである請求項1記載の方法。
- スルホン化を、一般式:Rc nSiX(4-n) (式中nは1以上3以下の整数であり、Rcは炭素数1以上15以下の炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物を無溶媒もしくは溶媒存在下でSO3と接触させることにより行う請求項9記載の方法。
- Rcが芳香族基である請求項9または10記載の方法。
- 芳香族基が、フェニル基である請求項11記載の方法。
- メルカプト基含有シラン化合物が、一般式:Rd nSiX(4-n)(式中nは1以上3以下の整数であり、Rdは炭素数1以上15以下の少なくとも1個のメルカプト(SH)基を置換基として持つ炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基及びアルコキシ基よりなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Siはケイ素原子を表す)で表されるシラン化合物である請求項1記載の方法。
- Rdがメルカプトメチル基、2ーメルカプトエチル基、3−メルカプト−n−プロピル基、4−メルカプト−n−ブチル基、p−メルカプトフェニル基及びp−メルカプトメチルフェニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項13記載の方法。
- 請求項1ないし14のいずれかに記載の方法により調製されたビスフェノール製造用触媒。
- 請求項15に記載の触媒の存在下に、フェノール類とケトン類とを反応させることを特徴とするビスフェノールの製造方法。
- フェノール類がフェノールであり、ケトン類がアセトンであり、ビスフェノールがビスフェノールAである請求項16に記載の方法。
- フェノール類がフェノールであり、ケトン類がアセトフェノンであり、ビスフェノールが4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノールである請求項16に記載の方法。
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