JP3788526B2 - 撓み噛み合い式歯車装置の潤滑剤封止機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、撓み噛み合い式歯車装置の潤滑剤封止機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
撓み噛み合い式歯車装置は、一般に、剛性内歯歯車の内側にカップ状の可撓性外歯歯車が配置され、この可撓性外歯歯車の内側に波動発生器が嵌め込まれた構造となっている。カップ状の可撓性外歯歯車の開口端の側には、モータ等のハウジングが取付けられる円盤状のフランジ(端板)が配置され、このフランジは剛性内歯歯車に固着されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、このような構造の撓み噛み合い式歯車装置において、可撓性外歯歯車の内側と外側を確実に仕切ることにより、当該可撓性外歯歯車の内側と外側の間に潤滑剤が流通することを遮断して、潤滑対象部分に対して効率良く潤滑を行なうことのできる潤滑剤封止機構を提案することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の撓み噛み合い式歯車装置においては、可撓性外歯歯車の外歯側の開口端に取り付けた環状の弾性シール材を有し、当該弾性シール材の幅は、前記開口端と前記端板との間隔よりも大きい寸法であり、当該弾性シール材の断面形状は、先端部分が先端側に向けて先細りとなっており、当該弾性シール材の基端が前記開口端の先端に取り付けられることにより、この弾性シール剤の先端側を、これに対峙している円盤状の端板の内側端面に押し当て、これによって、可撓性外歯歯車の内側と外側とを仕切るようにしている。
【0005】
ここで、弾性シール材を、着脱可能な状態で可撓性外歯歯車の開口端に取付けることができる。この場合には、弾性シール材が確実に開口端に取付けられるように、一方の側に係合突起を形成し、他方の側には係合溝を形成し、弾性シールの弾性特性を利用してこれらの間の係合を保持するように構成することが望ましい。
【0006】
このように構成した本発明の潤滑剤封止機構では、弾性シール材の先端がフランジの内周面に押し付けられた状態となっているので、この位置で、可撓性外歯歯車の内側空間と外側空間が仕切られ、これらの間で潤滑剤が流動することを阻止できる。従って、内側空間においては波動発生器のウエーブベアリングの部分の潤滑を充分に行なうことができる。また、外側空間においては、外歯と内歯の噛み合い部分の潤滑を充分に行なうことができる。更には、たとえば、内側空間と外側空間では使用する潤滑剤の種類を変えても、これらが相互に混合してしまうこともないので好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、図1を参照して本発明の潤滑剤封止機構を適用したシルクハット型撓み噛み合い式歯車装置を説明する。
【0008】
図に示すシルクハット型撓み噛み合い式歯車装置1は、装置軸線1aの方向に一定の間隔を開けて配置した第1の端板2および第2の端板3を備えている。これらの第1および第2の端板2、3の間には、入力回転軸4が装置軸線1aの方向に向けて配置されている。この入力回転軸4は、第1の端板2を貫通して外側に突出している。また、第1の端板2の内周面2aに対してボールベアリング5を介して回転自在に支持されている。同様に、第2の端板3の側においては、その内側の表面に形成した円形溝の内周面3aに対してボールベアリング6を介して回転自在に支持されている。このように、入力回転軸4は、第1および第2の端板2、3によって両持ち状態に支持されている。第1の端板2を貫通して外側に突出している入力回転軸4の突出部分4aには、モータ出力軸等の高速回転部材が連結される。
【0009】
これらの第1および第2の端板2、3の間において、その外周側には、第1の端板2の側にクロスローラベアリング7が配置され、第2の端板3の側には剛性内歯歯車11が配置されている。クロスローラベアリング7および剛性内歯歯車11の内側には、シルクハット形状の可撓性外歯歯車12が配置されている。この可撓性外歯歯車12は、円筒状の胴部13と、この胴部13の第1の端板2の側の開口端から半径方向の外側に広がっているダイヤフラム14と、このダイヤフラム14の外周縁に連続している環状のボス15と、胴部13の第2の端板3の側の開口端の外周面に形成された外歯16とを備えている。
【0010】
可撓性外歯歯車12における外歯16が形成されている胴部13の内側には、波動発生器17が嵌め込まれている。波動発生器17は、楕円形をした剛性カム板18と、この外周面に嵌めたウエーブベアリング19とを備えている。剛性カム板18は、入力回転軸4の外周に固着されている。
【0011】
クロスローラベアリング7の外輪71は、可撓性外歯歯車の環状ボス15を介して第1の端板2の側に締結ボルト21によって締結固定されている。したがって、第1の端板2と、可撓性外歯歯車12と、クロスローラベアリングの外輪71との三部材が締結されている。
【0012】
クロスローラベアリング7の内輪72は、剛性内歯歯車11を介して、第2の端板3の側に、締結ボルト22によって締結固定されている。したがって、第2の端板3と、剛性内歯歯車12と、クロスローラベアリングの内輪72との三部材が締結されている。
【0013】
このように、クロスローラベアリング7によって、第1の端板2の側と、第2の端板3の側とは相対回転可能となっている。これらの端板のうちの一方が被駆動側に連結され、他方の側が回転しないように固定される。この結果、公知の減速原理によって、入力回転軸4から入力された高速回転は、大幅に減速されて、被駆動部材の側に伝達される。
【0014】
ここで、可撓性外歯歯車12の外歯側の開口端13aには、ゴムあるいは樹脂からなる環状の弾性シール材8が取付けられている。この弾性シール材8は、その基端8aが開口端13aに対して着脱可能に取付けられ、その先端部分8bが、第2の端板3の内側端面3bに押し付けられている。この内側端面3bは滑らかな表面となるように加工されている。
【0015】
図2には、弾性シール材8が取付けられた可撓性外歯歯車12の開口端13aの部分を取り出して示してある。図2(A)に示すように、開口端13aの先端には円状の膨出部が係合突起13cとして形成されている。これに対して、弾性シール材8の側の基端8aには、この係合突起13cをはめ込むための係合溝8cが形成されている。係合溝8cは、係合突起13cと相補的な断面形状をしている。したがって、係合突起13cを係合溝8cにはめ込むためには、弾性シール材8の側の係合溝8cを弾性変形させて押し広げて強制的に押し込む必要がある。このため、一旦押し込まれた後は、係合溝8cの側が元の形状に弾性復帰して、弾性シール材8が開口端13bから外れない状態になる。
【0016】
図2(B)には、弾性シール材8が取付けられた可撓性外歯歯車12を装置1に組み付けた後の状態を示してある。弾性シール材8の幅は、可撓性外歯歯車12の開口端13aと第2の端板3の間隔よりも大きい寸法に設定されている。したがって、弾性シール材8の先端部分13bは、端板3の内側端面3bに押し付けられて弾性変形して湾曲した状態となる。本例では、弾性シール材8の先端部分13bが端板3の内側端面3bに密着できるように、当該先端部分13bを先端側に向けて先細りとなる断面形状としてある。
【0017】
このように構成した撓み噛み合い式歯車装置1においては、当該装置の内部空間が、弾性シール材8によって、可撓性外歯歯車12の内側空間9と外側空間10とに仕切られている。従って、装置内部に供給された潤滑剤が可撓性外歯歯車12の内側から外側に向けて、あるいはその逆の方向に流動することが阻止される。この結果、可撓性外歯歯車の内側空間9においては、ウエーブベアリング19の部分に対して充分な潤滑剤が供給される。また、可撓性外歯歯車の外側空間10においては、両歯車11、12の歯部の噛み合い部分に対して充分な潤滑剤が供給される。
【0018】
(その他の実施の形態)
なお、弾性シール材8の側に係合溝を形成し、可撓性外歯歯車の開口端の側に係合突起を形成しているが、この関係は逆でもよい。すなわち、弾性シール材の側に係合突起を形成し、開口端の側に係合溝を形成してもよい。
【0019】
また、上記の説明では、弾性シール材8を着脱可能に可撓性外歯歯車の開口端13bに取り付けた。この代わりに、接着剤等を用いて開口端13bに接合することもできる。
【0020】
さらに、弾性シール材8の形状は、上記の例の限定されるものではなく、どのような形状であってもよい。さらにまた、弾性シール材8の素材も、ゴム、樹脂に限定されず、その他の材質を採用してもよい。
【0021】
一方、上記の装置1は、シルクハット状の可撓性外歯歯車を備えているが、この代わりに、カップ状の可撓性外歯歯車を備えた装置であっても、本発明を同様に適用できる。また、上記の説明では、第2の端板3の側は封鎖端面であるが、ここを貫通させて入力回転軸4を突出させてもよい。このようにすれば、高速回転源の側が何れの側にあっても、入力回転軸4を簡単に接続することができる。入力回転軸4については、中空回転軸を採用してもよい。さらに、上記の説明では、第1の端板2の側と、第2の端板3の側とを相対回転可能とするためにクロスローラベアリング7を採用している。この代わりに、ボールベアリングを使用してもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の撓み噛み合い式歯車装置では、可撓性外歯歯車の胴部開口端に弾性シール材を取付けて、可撓性外歯歯車の内側空間と外側空間とを仕切り、潤滑剤が内側空間から外側空間に向けてあるいはその逆の方向に流動することを阻止するようにしている。したがって、本発明の構成を採用すれば、潤滑対象部分に対する潤滑を効率良く行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したシルクハット型撓み噛み合い式歯車装置の断面構成を示す概略構成図である。
【図2】図1における弾性シール材および当該弾性シール材が取付けられた可撓性外歯歯車の開口端の部分を取り出して示す説明図であり、(A)は装置1に組み込む前の状態を示し、(B)は組み込んだ後の状態を示す。
【符号の説明】
1 撓み噛み合い式歯車装置
2 第1の端板
3 第2の端板
4 回転入力軸
7 クロスローラベアリング
71 外輪
72 内輪
8 弾性シール材
8a 弾性シール材の基端部分
8b 弾性シール材の先端部分
8c 弾性シール材の係合溝
9 内側空間
10 外側空間
11 剛性内歯歯車
11a 内歯
12 可撓性外歯歯車
13 可撓性外歯歯車の胴部
13a 胴部の第2の端板の側の開口端
13b 開口端に形成した係合突起
16 外歯
17 波動発生器
19 波動発生器のウエーブベアリング
19a ウエーブベアリングの外輪
Claims (3)
- 剛性内歯歯車と、この内側に配置された可撓性外歯歯車と、この可撓性外歯歯車を半径方向に撓めて前記剛性内歯歯車に対して部分的に噛み合わせると共に当該噛み合わせ位置を周方向に移動させる波動発生器とを有する撓み噛み合い式歯車装置において、
前記可撓性外歯歯車の外歯が形成されている側の開口端に対峙する状態に配置された円盤状の端板を有し、当該端板は、その内側端面の外周側の部分が前記剛性内歯歯車の環状端面に当接しており、
前記可撓性外歯歯車の前記開口端に取り付けた環状の弾性シール材を有し、
当該弾性シール材の幅は、前記開口端と前記端板との間隔よりも大きい寸法であり、
当該弾性シール材の断面形状は、先端部分が先端側に向けて先細りとなっており、
当該弾性シール材の基端が前記開口端の先端に取り付けられることにより、当該弾性シール材の先端側は前記端板の内側端面に接触して、当該可撓性外歯歯車の外周側の部分と内周側の部分とを仕切っていることを特徴とする撓み噛み合い式歯車装置の潤滑剤封止機構。 - 請求項1において、前記弾性シール材は、前記可撓性外歯歯車の前記開口端に対して着脱可能に取付けられていることを特徴とする撓み噛み合い式歯車装置の潤滑剤封止機構。
- 請求項2において、前記弾性シール材および前記開口端のうちのいずれか一方の側には係合突起が形成され、他方の側には、前記弾性シール材の弾性変形を利用して、当該係合突起を強制的に押し込み可能な係合溝が形成されていることを特徴とする撓み噛み合い式歯車装置の潤滑剤封止機構。
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