JP3788095B2 - カカオ脂の分別方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カカオ脂をヘキサン又はアセトンを用いて二段分別する方法に関する。本発明の分別方法によって得られる中融点画分を用いたチョコレートは口どけ及びスナップ性の優れた品質を有する。
【0002】
【従来の技術】
口どけの良好なチョコレートを得るためには、チョコレートの主原料であるカカオ脂に、炭素鎖長が16以下の脂肪酸に富むパーム油、パーム核油、ヤシ油等の分別脂や乳脂肪を添加する手法が用いられる。しかし、これらのカカオ脂代用脂等の添加によって、チョコレートのスナップ性が損なわれる為、その添加量は制限される。一方、チョコレートのスナップ性を向上させるためには対称型トリグリセリドの1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセリン(以下SOSと略)に富むシア脂、サル脂、イリッペ脂等の分別脂をカカオ脂代用脂として添加する手法が用いられるが、チョコレートの口どけが損なわれる為、その添加量は制限される。また、カカオ脂の配合を高めたチョコレートのニーズが高まりつつある中、カカオ脂代用脂の添加によるチョコレートの品質改良ではなく、カカオ脂自体の分別等によるチョコレートの品質改良が必要となっている。
【0003】
既にカカオ脂の分別技術として英国特許2177107号には、ヘキサンを用いてステアリン画分とオレイン画分とに分別する方法が提案されているが、規定温度で6時間以上のホールドを必要とし時間を要するという欠点がある。また特開平3−146594のアセトンまたはヘキサンを用いた分別方法では、オレイン画分の1,3−ジパルミトイル−2−オレオイルグリセリン(以下POPと略)含量を25重量%以上と規定しているが、このオレイン画分はモノ飽和ジ不飽和トリグリセライド(SU2)成分が除去されていないため、チョコレートに用いた場合スナップ性の点で不十分である。また特開平8−34989ではアセトンを用いてステアリン画分を高収率で得る分別方法が提案されているが、このステアリン画分はカカオ脂と比較すると30℃以上での固体脂含量が高く口どけの点で不十分である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような状況に鑑み、カカオ脂からヘキサンまたはアセトンを用いて、チョコレート用途における良好なスナップ性と口どけを付与しうる中融点画分を得る分別方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、カカオ脂とヘキサン又はアセトンを用いた二段分別法により、1,3−ジパルミトイル−2−オレオイルグリセリン(POP)及び1−パルミトイル−2−オレオイル−3−ステアロイルグリセリン(POS)に富み、かつ1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセリン(SOS)を低減したカカオ脂の中融点画分を分離できることを見出し、更にはこの中融点画分を含有してなるチョコレートが良好なスナップ性と口どけを有していることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の第1は、カカオ脂をヘキサン又はアセトン又はその混合物と混合加熱し、−5〜5℃に冷却してステアリン画分と濾液とに分別し、更に濾液を−5℃以下に冷却して中融点画分とオレイン画分とに分別することを特徴とするカカオ脂の二段分別方法に関する。
【0007】
好ましい実施態様としては、中融点画分のトリグリセリド組成が、POP含量が20重量%以上、POS含量が40重量%以上、SOS含量が25重量%以下であることを特徴とするカカオ脂の分別方法に関する。
【0008】
本発明の第2は、原料油脂として、上記カカオ脂の分別方法によって得られる中融点画分を用いることを特徴とするチョコレートの製造方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のカカオ脂の分別方法について詳述する。先ず一段階目の分別として、溶解したカカオ脂1部(以下、部は重量部を示す。)と、溶剤としてヘキサン又はアセトン又はその混合物1〜10部、望ましくは3〜7部を混合加熱する。溶剤が1部より少ないと結晶量が過剰となり固液分離が困難であり、10部より多いと結晶析出が不十分となり中融点画分のSOS含量が増大し、口どけが悪化する原因となる。次にカカオ脂と溶剤の混合物を、撹拌を行いながら冷却して、結晶を析出させた後に吸引濾過又は圧搾によりステアリン画分と濾液とに分離する。この時の冷却温度は−5〜5℃の範囲が好ましい。冷却温度が−5℃より低い場合は二段階目の分別での中融点画分の収率が低くなり、また5℃より高い場合は結晶の析出が不十分で中融点画分のSOS含量が増大し口どけが悪化する原因となる。
【0010】
更に二段階目の分別として、一段階目の分別で得られた濾液を撹拌しながら更に冷却して結晶を析出させ、真空濾過又は圧搾により中融点画分(結晶部)とオレイン画分とを分離する。この時の冷却温度は−5℃以下が好ましく、更に好ましくは−10℃以下である。冷却温度が−5℃より高い場合は結晶析出が不十分で、中融点画分の収率が低いものとなる。
【0011】
この様にして分離した中融点画分は蒸留等により溶剤を除去した後脱臭し、チョコレートの原料油脂として供することができる。
【0012】
上記分別方法によって得られる中融点画分のトリグリセリド組成は、POP含量が20%以上、POS含量が40%以上、SOS含量が25%以下であり、固体脂含量(SFC)が20℃では90以上、30℃では50以下、35℃では5以下という特性を示す。中融点画分のトリグリセリド組成が、POP含量が20%未満またはPOS含量が40%未満である場合や、SOS含量が25%より多い場合は、30℃におけるSFCが60以上となり口どけが悪くなる。
【0013】
本発明のカカオ脂中融点画分をチョコレートに添加することにより、口どけとスナップ性に優れたチョコレートを得ることができる。本発明のカカオ脂中融点画分は比較的少量でもその効果を発揮しうるが、効果を最大限のものとするためにはかかる中融点画分をチョコレート油分中に30重量%以上加えることが望ましい。
【0014】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
カカオ脂としてガーナ産カカオバターを完全に溶解し、カカオ脂とヘキサンを1:5(重量比)の比率で50℃以上で混合溶解した後、撹拌を100rpmの速度で行いながら、1℃/分の冷却速度で0℃まで冷却し結晶を析出させ、真空濾過により結晶部(ステアリン画分)と濾液とに分離した。更に、濾液を撹拌しながら−15℃まで冷却し結晶を析出させ、真空濾過により結晶部(中融点画分)と液体部分(オレイン画分)に分離した。得られた中融点画分は溶剤を除去した後、常法により脱臭を行った。得られた中融点画分の収率と特性を表1に示す。
(実施例2)
上記カカオ脂とアセトンを1:5の比率で混合溶解した後、撹拌しながら5℃まで冷却し結晶析出を行った。真空濾過によりステアリン画分を除去した濾液を更に−10℃まで冷却して結晶析出を行い、真空濾過により中融点画分とオレイン画分とに分離した。得られた中融点画分の収率と特性を表1に示す。
(比較例1)
上記カカオ脂とヘキサンを1:6の比率で混合溶解した後、撹拌しながら−15℃まで冷却した。真空濾過によりステアリン画分とオレイン画分とに分離した。得られたステアリン画分の収率と特性を表1に示す。
【0015】
【表1】
表1より、実施例1、2で得られた、カカオ脂を溶剤を用いて二段分別した中融点画分のトリグリセライド組成は、POP含量が20%以上、POS含量が45%以上、SOS含量が25%以下であり、そのSFCは20℃では90以上、30℃では50以下、35℃では5以下という特性を示すことから、20以下では固く30℃以上では急激に融解する特徴を有している。
【0016】
一方、比較例1で得られた、カカオ脂を一段分別したステアリン画分のトリグリセライド組成は、POS含量は40%以上であるがPOP含量は20%以下で、更にSOS含量が30%以上であり、そのSFCは35℃で50以上という値を示していることから、口どけの点で実施例1及び2の画分よりも劣ることが予想される。
(実施例3)
実施例1で得られたカカオ脂中融点画分を用いて以下の配合に従ってチョコレートを作成し、その性能についてテストを行った。
<チョコレート配合>
油脂(カカオ脂:中融点画分=65:35) 23部
粉糖 48部
カカオマス 15部
全脂粉乳 14部
レシチン 0.3部
チョコレートの作製方法は通常実施される製造方法により、ミキシング、ロールがけ、コンチング、テンパリングを行い成型したモールドチョコレートを20℃で10日間エージングした後、以下のテストを行った。
【0017】
各測定温度に2時間温調後、レオメーター(サン科学製)で硬さを測定した結果を表2に示す。但し、アダプターは直径1mmの円柱で突いた時の加重をグラム数で示した。スナップ性は20℃及び25℃での硬さ、即ちレオメーターの加重グラム数が大きい程スナップ性が良好であることを意味する。口どけは30℃及び32℃での硬さ、即ちレオメーターの加重グラム数が小さい程口どけが良好であることを意味する。
(実施例4)
実施例1で得られたカカオ脂中融点画分を用い、油脂配合をカカオ脂:中融点画分=85:15とした以外は、実施例3と同様にチョコレートを作製して評価した結果を表2に示す。
(比較例2)
比較例1で得られたカカオ脂ステアリン画分を用い、油脂配合をカカオ脂:ステアリン画分=65:35とした以外は、実施例3と同様にチョコレートを作製して評価した結果を表2に示す。
(比較例3)
油脂配合をカカオ脂:パーム中融点部(沃素価36)=85:15とした以外は、実施例3と同様にチョコレートを作製して評価した結果を表2に示す。
(対照例)
油脂配合をカカオ脂100%とした以外は、実施例3と同様にチョコレートを作製して評価した結果を表2に示す。
【0018】
【表2】
表2より、カカオ脂中融点画分を含有するチョコレートは、対照例のカカオ脂のみのチョコレートと比較して、25℃以下では硬質でありかつ30℃以上では軟質であることから、優れたスナップ性と口どけの両方の特徴が付与された事が判る。又、カカオ脂ステアリン画分の添加ではスナップ性は優れているが口どけが不十分であり、パーム油中融点画分の添加では口どけは良好であるがスナップ性が不十分であった。従って、カカオ脂中融点画分のチョコレートへの添加はスナップ性と口どけを同時に向上させる効果が認められるものである。
【0019】
【発明の効果】
カカオ脂をヘキサン又はアセトンを用いて二段分別して得られる中融点画分は、スナップ性と口どけに優れたチョコレートの製造に供することが出来る。
Claims (3)
- カカオ脂をヘキサン又はアセトン又はその混合物と混合加熱し、−5〜5℃に冷却してステアリン画分と濾液とに分別し、更に濾液を−5℃以下に冷却して中融点画分とオレイン画分とに分別することを特徴とするカカオ脂の二段分別方法。
- カカオ脂中融点画分のトリグリセリド組成が、1,3−ジパルミトイル−2−オレオイルグリセリン含量が20重量%以上、1−パルミトイル−2−オレオイル−3−ステアロイルグリセリン含量が40重量%以上、1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセリン含量が25重量%以下である請求項1記載の分別方法。
- 原料油脂として、請求項1,2記載のカカオ脂の分別方法によって得られる中融点画分を用いることを特徴とするチョコレートの製造方法。
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