JP3787945B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及び有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及び有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDFInfo
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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも一方が透明である一対の電極間に、有機化合物からなる正孔輸送層や発光層等が積層された有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と呼ぶ)と、かかる有機EL素子用の材料として有用な有機材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、蛍光性有機化合物を含む薄膜を陰極と陽極の間に挟んだ構造を有し、前記薄膜に電子および正孔を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して表示を行う表示素子である。
【0003】
前記有機EL素子の基本構成の一つを図2に示した。この有機EL素子100は、基板101上のアノード102にITOを使用し、正孔輸送層103に化学式(化2)に示すDiamine を使用し、有機発光層104に化学式(化3)に示すトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III) (Alq3 )を使用し、カソード105にマグネシウムと銀の合金を使用している。正孔輸送層103であるDiamine のガラス転移温度Tgは70℃である。有機の各層の厚みは50nm程度である。各層の成膜は真空蒸着で行っている。この有機EL素子100に直流10Vを加えると1000cd/m2 程度の緑色の発光が得られる。この発光はITOのアノード102側から取り出す。
【0004】
【化2】
【0005】
【化3】
【0006】
正孔輸送層に化学式(化4)に示すTPDを用い、発光特性を改善した有機EL素子も提案されている。正孔輸送層であるTPDのガラス転移温度Tgは65℃である。
【0007】
【化4】
【0008】
ITOと正孔輸送層の間に化学式(化5)に示すスターバーストアミン(m−MTDATA)と呼ばれる有機材料を用いてバッファー層(正孔注入層)を形成し、耐久性を改善した有機EL素子も提案されている。バッファー層(正孔注入層)であるスターバーストアミンのガラス転移温度Tgは76℃である。イオン化ポテンシャルは5.1〜5.15である。
【0009】
【化5】
【0010】
前記バッファー層に化学式(化6)に示すCu−フタロシアニンを用いて耐久性を向上させた有機EL素子も提案されている。
【0011】
【化6】
【0012】
前記バッファー層に黒鉛を用いた有機EL素子も提案されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
図2に示した有機EL素子の耐久性は低く、輝度半減は100時間程度であった。この時、素子の駆動電圧は6Vから14Vに上昇した。
【0014】
正孔輸送層にDiamine やTPDを用いた素子の耐熱性は約70℃以下と低かった。
【0015】
バッファー層の材料に用いられたCu−フタロシアニンや黒鉛は、素子の耐久性向上には効果があるものの、薄膜の状態で着色している(Cu−フタロシアニンで青、黒鉛で黒)ため、発光の取り出し効率が低くなるという問題を有していた。
【0016】
スターバーストアミンをバッファー層にもちいた場合、無色透明な薄膜が得られ、耐熱性も向上する。しかし、膜の導電率が高いため、マトリックス表示等においては非点灯桁がもれ発光しやすいという問題があった。
【0017】
本発明は、無色透明の薄膜となるため発光の取り出し効率が高く、耐熱性が高いために寿命が長い有機EL素子用材料と、正孔注入層又は正孔輸送層をこの材料で形成した有機EL素子を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、前記化学式(化1)で表される。
【0019】
請求項2に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、正孔注入層又は正孔輸送層の少なくとも一方を構成する物質として使用された請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料である。
【0020】
請求項3に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも一方が透明である一対の電極間に有機化合物からなる正孔注入層と正孔輸送層と発光層が積層された有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔注入層が前記化学式(化1)で表されることを特徴としている。
【0021】
請求項4に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも一方が透明である一対の電極間に有機化合物からなる正孔輸送層と発光層が積層された有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が前記化学式(化1)で表されることを特徴としている。
【0022】
請求項5に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子は、請求項3又は4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記一対の電極の陰極と前記発光層との間に、有機化合物からなる電子輸送層が設けられたことを特徴としている。
【0023】
【実施例】
本発明者等は、前記化学式(化1)で表される有機化合物、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリフェニル−1,3,5−トリアジン誘導体の一例として、次の化学式(化7)に示す有機化合物を合成した。
【0024】
【化7】
【0025】
(1) 合成方法
前記化学式(化7)で示す有機化合物(以下、本発明の有機化合物と呼ぶ。)の合成方法について説明する。合成は、次の▲1▼▲2▼に示す2段階反応によって行う。
▲1▼ ヘキサヒドロ−1,3,5−トリフェニル1,3,5−トリアジンのヨウ素化
三つ口フラスコに温度計と還流塔を取り付け、その中にヘキサヒドロ−1,3,5−トリフェニル1,3,5−トリアジン3.14gヨウ化カリウム1.66g、ヨウ素酸カリウム2.14gを入れ、さらに酢酸50mlを加えて攪拌する。その後、窒素気流下、5時間攪拌しながら還流する。得られた生成物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。濾過した後、濾液を回収し溶媒を減圧除去した。残った固形分をエタノールとアセトンで再結晶した。濾過後、真空乾燥を行った。収率は75%であった。
【0026】
▲2▼ 上記合成▲1▼で得られた化合物1.00g(1.44mol)とジフェニルアミン0.73g(4.33mol)と銅粉0.068g、炭酸カリウム0.795g(5.77mol)をニトロベンゼン10mlに入れて攪拌混合する。その後、190℃で5時間還流した。溶媒を減圧蒸留によって除去し、残渣をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、濾過する。濾液からTHFを減圧除去する。得られた固形をトルエンで溶解し、中性アルミナを用いてカラムコロマトで分取した。溶媒を除去した後、真空乾燥を行った。収率は55%であった。
【0027】
(2) 生成物の同定
生成物の同定は、差動熱量分析(DSC)によるガラス転移温度の測定と、FAB−MSによる分子量測定と、核磁気共鳴( 1H−NMR)によるスペクトル分析により行った。
▲1▼DSCの結果、ガラス転移温度(Tg)は86℃であった。
▲2▼FAB−MSによる分子量測定においてM/eを測定したところ、1670と835(M+H+ )が検出された。この結果から、前記化学式(化7)は、そのトリアジン環内に水分を抱接し(835)、さらに2量体を形成している(1670)ことがわかった。
▲3▼ 1H−NMR(CDCl3 )により構造解析を行った。 1H−NMRスペクトルより、ケミカルシフト(ppm)δ=6.5〜7.5(m 42H 芳香環)、δ=5.0(s 6H トリアジン環)の存在が確認された。
以上、▲1▼〜▲3▼の結果により、前記化学式(化7)の構造が確認された。
【0028】
(3) 有機EL素子の作製
図1に本実施例の有機EL素子1の構造を示す。
ガラス基板2の上には、アノード3としてITO(Indium Tin Oxide)膜が形成されている。アノード3の上には、前記化学式(化7)で示す有機化合物を含む正孔注入層(バッファー層)4が形成されている。正孔注入層(バッファー層)4の上には、TPDからなる正孔輸送層5が形成されている。正孔輸送層5の上には、Alq3 からなる発光層6が形成されている。発光層6の上には、Al:Li合金からなるカソード7が形成されている。
【0029】
前述した構造の有機EL素子1の作成方法を説明する。
アノード3であるITO膜付きのガラス基板2を洗浄、乾燥後、真空蒸着装置にセットし、10-5torrの真空にした後、前記化学式(化7)で示す有機化合物を蒸着する。次に、TPDを20nmの膜厚に蒸着する。更にAlq3 を50nm蒸着する。一旦、真空を解除し、カソード7としてAl:Li合金を200nm蒸着する。
【0030】
このように構成された有機EL素子1のアノード3であるITO側にプラス、カソード7であるAl:Li合金側にマイナスの直流電圧をかけたところ、発光層6であるAlq3 からの緑色の発光を確認した。このEL素子1のEL効率は2.5cd/Aであった。
【0031】
前記化学式(化7)で示す有機化合物からなるバッファー層4を持たず、TPDの正孔輸送層とAlq3 の発光層を、本実施例と同一のカソード7とアノード3の間に設けた素子を作製して比較例1とした。本実施例の素子のEL効率は、この比較例1の1.2倍であった。また、本実施例の素子において、前記化学式(化7)で示す有機化合物の代わりにCu−フタロシアニンを用いた素子を作製して比較例2とした。本実施例の素子のEL効率は、この比較例2の1.2倍であった。
【0032】
EL効率とは、入力電流と出力される光度の比であり、バッファー層が有色である等のための光の吸収が大きいとEL効率は低下すると考えられる。前記化学式(化7)で示す有機化合物のバッファー層4は無色透明であり、上記の結果から前記化学式(化7)の有機化合物は、TPDやCu−フタロシアニンに比較して光を吸収しにくいことがわかる。
【0033】
また、EL素子は駆動時に発生する熱で温度が上昇すると各有機層が熱によって結晶化して欠陥が発生することがある。前記ガラス転移温度Tgはその耐熱性の目安となる。上述したように、本実施例でバッファー層4を構成する前記化学式(化7)の有機化合物のガラス転移温度Tgは86℃である。この値は、前述したDiamine 、TPD、スターバーストアミンのガラス転移温度Tgに比べて高く、この点から前記化学式(化7)の有機化合物は耐熱性に優れており、電圧上昇を抑えて素子を一定電流で駆動するバッファー層としての機能が安定しており、寿命が長いと考えられる。
【0034】
前記化学式(化7)の有機化合物は、分子の中心骨格のヘキサヒドロ−トリアジン環が親水性であるため基板との未着性が改善される。また、トリアジン環どうしが重なり合うため移動度が高くなり、よって移動度の異方性を生じる。
【0035】
以上説明した実施例では、前記化学式(化7)で示す有機化合物をバッファー層(正孔輸送層)として用いたが、イオン化ポテンシャル等の条件が適合すれば正孔輸送層としても使用できる。その場合には、発光層としては前述したAlq3 の代わりに、例えばZnq2 (Zn(OXZ))やMgq2 (Mg(OXZ))等を用いることができる。なお、前記化学式(化7)の有機化合物のイオン化ポテンシャルは5.15である。
【0036】
前記実施例のEL素子1において、前記カソード7と前記発光層6との間に、必要に応じて有機化合物からなる電子輸送層を設けてもよい。
【0037】
前記実施例では、前記化学式(化1)に示したヘキサヒドロ−1,3,5−トリフェニル−1,3,5−トリアジン誘導体の一例として、前記化学式(化1)においてR1 ,R2 がアリール基である有機化合物を説明した。しかしながら、前記化学式(化1)に示した有機化合物においては、R1 ,R2 は独立に水素、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基又はアラキル基となることができる。前記化学式(化1)の一般式で示した有機化合物の内、本実施例の有機化合物以外の物質は、それぞれ必要な原料を用いて本実施例の有機化合物に準じた手順で合成することができる。また、その得られた有機化合物によっても前記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0038】
【発明の効果】
本発明の化学式(化1)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料と、これを正孔注入層又は正孔輸送層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子によれば、次のような効果が得られる。
【0039】
(1) 本発明の有機EL素子は、定電流駆動での素子の破壊が起こりにくく、耐熱性に優れている。
【0040】
(2) 本発明の化学式(化1)の有機化合物は無色透明であるため、Cu−フタロシアニンや黒鉛をバッファー層に用いた時に生じるような発光の取り出し効率の低下がない。
【0041】
(3) 本発明の化学式(化1)の有機化合物は、分子の中心骨格のヘキサヒドロ−トリアジン環が親水性であるため基板との未着性が改善される。
【0042】
(4) 本発明の化学式(化1)の有機化合物は、トリアジン環どうしが重なり合うため移動度が高くなり、よって移動度の異方性を生じる。
【0043】
(5) 本発明の化学式(化1)の有機化合物のガラス転移温度は、TPDの65℃やm−MTDATAの76℃よりも高いので、素子の連続駆動時の発熱による劣化が抑えられる。
【0044】
(6) 本発明の化学式(化1)の有機化合物を正孔注入層に使用することで、素子の連続駆動時の電圧上昇が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の有機EL素子1の構造を示す断面図である。
【図2】有機EL素子の基本構成の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)
3 電極としてのアノード
4 正孔注入層(バッファー層)
5 正孔輸送層
6 発光層
7 電極としてのカソード
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも一方が透明である一対の電極間に、有機化合物からなる正孔輸送層や発光層等が積層された有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と呼ぶ)と、かかる有機EL素子用の材料として有用な有機材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、蛍光性有機化合物を含む薄膜を陰極と陽極の間に挟んだ構造を有し、前記薄膜に電子および正孔を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して表示を行う表示素子である。
【0003】
前記有機EL素子の基本構成の一つを図2に示した。この有機EL素子100は、基板101上のアノード102にITOを使用し、正孔輸送層103に化学式(化2)に示すDiamine を使用し、有機発光層104に化学式(化3)に示すトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III) (Alq3 )を使用し、カソード105にマグネシウムと銀の合金を使用している。正孔輸送層103であるDiamine のガラス転移温度Tgは70℃である。有機の各層の厚みは50nm程度である。各層の成膜は真空蒸着で行っている。この有機EL素子100に直流10Vを加えると1000cd/m2 程度の緑色の発光が得られる。この発光はITOのアノード102側から取り出す。
【0004】
【化2】
【0005】
【化3】
【0006】
正孔輸送層に化学式(化4)に示すTPDを用い、発光特性を改善した有機EL素子も提案されている。正孔輸送層であるTPDのガラス転移温度Tgは65℃である。
【0007】
【化4】
【0008】
ITOと正孔輸送層の間に化学式(化5)に示すスターバーストアミン(m−MTDATA)と呼ばれる有機材料を用いてバッファー層(正孔注入層)を形成し、耐久性を改善した有機EL素子も提案されている。バッファー層(正孔注入層)であるスターバーストアミンのガラス転移温度Tgは76℃である。イオン化ポテンシャルは5.1〜5.15である。
【0009】
【化5】
【0010】
前記バッファー層に化学式(化6)に示すCu−フタロシアニンを用いて耐久性を向上させた有機EL素子も提案されている。
【0011】
【化6】
【0012】
前記バッファー層に黒鉛を用いた有機EL素子も提案されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
図2に示した有機EL素子の耐久性は低く、輝度半減は100時間程度であった。この時、素子の駆動電圧は6Vから14Vに上昇した。
【0014】
正孔輸送層にDiamine やTPDを用いた素子の耐熱性は約70℃以下と低かった。
【0015】
バッファー層の材料に用いられたCu−フタロシアニンや黒鉛は、素子の耐久性向上には効果があるものの、薄膜の状態で着色している(Cu−フタロシアニンで青、黒鉛で黒)ため、発光の取り出し効率が低くなるという問題を有していた。
【0016】
スターバーストアミンをバッファー層にもちいた場合、無色透明な薄膜が得られ、耐熱性も向上する。しかし、膜の導電率が高いため、マトリックス表示等においては非点灯桁がもれ発光しやすいという問題があった。
【0017】
本発明は、無色透明の薄膜となるため発光の取り出し効率が高く、耐熱性が高いために寿命が長い有機EL素子用材料と、正孔注入層又は正孔輸送層をこの材料で形成した有機EL素子を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、前記化学式(化1)で表される。
【0019】
請求項2に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、正孔注入層又は正孔輸送層の少なくとも一方を構成する物質として使用された請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料である。
【0020】
請求項3に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも一方が透明である一対の電極間に有機化合物からなる正孔注入層と正孔輸送層と発光層が積層された有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔注入層が前記化学式(化1)で表されることを特徴としている。
【0021】
請求項4に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも一方が透明である一対の電極間に有機化合物からなる正孔輸送層と発光層が積層された有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が前記化学式(化1)で表されることを特徴としている。
【0022】
請求項5に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子は、請求項3又は4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記一対の電極の陰極と前記発光層との間に、有機化合物からなる電子輸送層が設けられたことを特徴としている。
【0023】
【実施例】
本発明者等は、前記化学式(化1)で表される有機化合物、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリフェニル−1,3,5−トリアジン誘導体の一例として、次の化学式(化7)に示す有機化合物を合成した。
【0024】
【化7】
【0025】
(1) 合成方法
前記化学式(化7)で示す有機化合物(以下、本発明の有機化合物と呼ぶ。)の合成方法について説明する。合成は、次の▲1▼▲2▼に示す2段階反応によって行う。
▲1▼ ヘキサヒドロ−1,3,5−トリフェニル1,3,5−トリアジンのヨウ素化
三つ口フラスコに温度計と還流塔を取り付け、その中にヘキサヒドロ−1,3,5−トリフェニル1,3,5−トリアジン3.14gヨウ化カリウム1.66g、ヨウ素酸カリウム2.14gを入れ、さらに酢酸50mlを加えて攪拌する。その後、窒素気流下、5時間攪拌しながら還流する。得られた生成物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。濾過した後、濾液を回収し溶媒を減圧除去した。残った固形分をエタノールとアセトンで再結晶した。濾過後、真空乾燥を行った。収率は75%であった。
【0026】
▲2▼ 上記合成▲1▼で得られた化合物1.00g(1.44mol)とジフェニルアミン0.73g(4.33mol)と銅粉0.068g、炭酸カリウム0.795g(5.77mol)をニトロベンゼン10mlに入れて攪拌混合する。その後、190℃で5時間還流した。溶媒を減圧蒸留によって除去し、残渣をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、濾過する。濾液からTHFを減圧除去する。得られた固形をトルエンで溶解し、中性アルミナを用いてカラムコロマトで分取した。溶媒を除去した後、真空乾燥を行った。収率は55%であった。
【0027】
(2) 生成物の同定
生成物の同定は、差動熱量分析(DSC)によるガラス転移温度の測定と、FAB−MSによる分子量測定と、核磁気共鳴( 1H−NMR)によるスペクトル分析により行った。
▲1▼DSCの結果、ガラス転移温度(Tg)は86℃であった。
▲2▼FAB−MSによる分子量測定においてM/eを測定したところ、1670と835(M+H+ )が検出された。この結果から、前記化学式(化7)は、そのトリアジン環内に水分を抱接し(835)、さらに2量体を形成している(1670)ことがわかった。
▲3▼ 1H−NMR(CDCl3 )により構造解析を行った。 1H−NMRスペクトルより、ケミカルシフト(ppm)δ=6.5〜7.5(m 42H 芳香環)、δ=5.0(s 6H トリアジン環)の存在が確認された。
以上、▲1▼〜▲3▼の結果により、前記化学式(化7)の構造が確認された。
【0028】
(3) 有機EL素子の作製
図1に本実施例の有機EL素子1の構造を示す。
ガラス基板2の上には、アノード3としてITO(Indium Tin Oxide)膜が形成されている。アノード3の上には、前記化学式(化7)で示す有機化合物を含む正孔注入層(バッファー層)4が形成されている。正孔注入層(バッファー層)4の上には、TPDからなる正孔輸送層5が形成されている。正孔輸送層5の上には、Alq3 からなる発光層6が形成されている。発光層6の上には、Al:Li合金からなるカソード7が形成されている。
【0029】
前述した構造の有機EL素子1の作成方法を説明する。
アノード3であるITO膜付きのガラス基板2を洗浄、乾燥後、真空蒸着装置にセットし、10-5torrの真空にした後、前記化学式(化7)で示す有機化合物を蒸着する。次に、TPDを20nmの膜厚に蒸着する。更にAlq3 を50nm蒸着する。一旦、真空を解除し、カソード7としてAl:Li合金を200nm蒸着する。
【0030】
このように構成された有機EL素子1のアノード3であるITO側にプラス、カソード7であるAl:Li合金側にマイナスの直流電圧をかけたところ、発光層6であるAlq3 からの緑色の発光を確認した。このEL素子1のEL効率は2.5cd/Aであった。
【0031】
前記化学式(化7)で示す有機化合物からなるバッファー層4を持たず、TPDの正孔輸送層とAlq3 の発光層を、本実施例と同一のカソード7とアノード3の間に設けた素子を作製して比較例1とした。本実施例の素子のEL効率は、この比較例1の1.2倍であった。また、本実施例の素子において、前記化学式(化7)で示す有機化合物の代わりにCu−フタロシアニンを用いた素子を作製して比較例2とした。本実施例の素子のEL効率は、この比較例2の1.2倍であった。
【0032】
EL効率とは、入力電流と出力される光度の比であり、バッファー層が有色である等のための光の吸収が大きいとEL効率は低下すると考えられる。前記化学式(化7)で示す有機化合物のバッファー層4は無色透明であり、上記の結果から前記化学式(化7)の有機化合物は、TPDやCu−フタロシアニンに比較して光を吸収しにくいことがわかる。
【0033】
また、EL素子は駆動時に発生する熱で温度が上昇すると各有機層が熱によって結晶化して欠陥が発生することがある。前記ガラス転移温度Tgはその耐熱性の目安となる。上述したように、本実施例でバッファー層4を構成する前記化学式(化7)の有機化合物のガラス転移温度Tgは86℃である。この値は、前述したDiamine 、TPD、スターバーストアミンのガラス転移温度Tgに比べて高く、この点から前記化学式(化7)の有機化合物は耐熱性に優れており、電圧上昇を抑えて素子を一定電流で駆動するバッファー層としての機能が安定しており、寿命が長いと考えられる。
【0034】
前記化学式(化7)の有機化合物は、分子の中心骨格のヘキサヒドロ−トリアジン環が親水性であるため基板との未着性が改善される。また、トリアジン環どうしが重なり合うため移動度が高くなり、よって移動度の異方性を生じる。
【0035】
以上説明した実施例では、前記化学式(化7)で示す有機化合物をバッファー層(正孔輸送層)として用いたが、イオン化ポテンシャル等の条件が適合すれば正孔輸送層としても使用できる。その場合には、発光層としては前述したAlq3 の代わりに、例えばZnq2 (Zn(OXZ))やMgq2 (Mg(OXZ))等を用いることができる。なお、前記化学式(化7)の有機化合物のイオン化ポテンシャルは5.15である。
【0036】
前記実施例のEL素子1において、前記カソード7と前記発光層6との間に、必要に応じて有機化合物からなる電子輸送層を設けてもよい。
【0037】
前記実施例では、前記化学式(化1)に示したヘキサヒドロ−1,3,5−トリフェニル−1,3,5−トリアジン誘導体の一例として、前記化学式(化1)においてR1 ,R2 がアリール基である有機化合物を説明した。しかしながら、前記化学式(化1)に示した有機化合物においては、R1 ,R2 は独立に水素、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基又はアラキル基となることができる。前記化学式(化1)の一般式で示した有機化合物の内、本実施例の有機化合物以外の物質は、それぞれ必要な原料を用いて本実施例の有機化合物に準じた手順で合成することができる。また、その得られた有機化合物によっても前記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0038】
【発明の効果】
本発明の化学式(化1)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料と、これを正孔注入層又は正孔輸送層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子によれば、次のような効果が得られる。
【0039】
(1) 本発明の有機EL素子は、定電流駆動での素子の破壊が起こりにくく、耐熱性に優れている。
【0040】
(2) 本発明の化学式(化1)の有機化合物は無色透明であるため、Cu−フタロシアニンや黒鉛をバッファー層に用いた時に生じるような発光の取り出し効率の低下がない。
【0041】
(3) 本発明の化学式(化1)の有機化合物は、分子の中心骨格のヘキサヒドロ−トリアジン環が親水性であるため基板との未着性が改善される。
【0042】
(4) 本発明の化学式(化1)の有機化合物は、トリアジン環どうしが重なり合うため移動度が高くなり、よって移動度の異方性を生じる。
【0043】
(5) 本発明の化学式(化1)の有機化合物のガラス転移温度は、TPDの65℃やm−MTDATAの76℃よりも高いので、素子の連続駆動時の発熱による劣化が抑えられる。
【0044】
(6) 本発明の化学式(化1)の有機化合物を正孔注入層に使用することで、素子の連続駆動時の電圧上昇が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の有機EL素子1の構造を示す断面図である。
【図2】有機EL素子の基本構成の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)
3 電極としてのアノード
4 正孔注入層(バッファー層)
5 正孔輸送層
6 発光層
7 電極としてのカソード
Claims (5)
- 正孔注入層又は正孔輸送層の少なくとも一方を構成する物質として使用される請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
- 少なくとも一方が透明である一対の電極間に有機化合物からなる正孔注入層と正孔輸送層と発光層が積層された有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔注入層が前記化学式(化1)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 少なくとも一方が透明である一対の電極間に有機化合物からなる正孔輸送層と発光層が積層された有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が前記化学式(化1)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記一対の電極の陰極と前記発光層との間に、有機化合物からなる電子輸送層が設けられたことを特徴とする請求項3又は4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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