JP3786680B2 - 離型剤塗布ローラおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,回転体に離型剤を塗布する離型剤塗布ローラに関する。さらに詳細には,内側の保持層に離型剤を保持し,表層を介してその離型剤を回転体に塗布する離型剤塗布ローラおよびその製造方法に関するものである。例えば,トナーを用いる画像形成装置の定着装置に定着オイルを供給する用途に用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から,トナーを用いる画像形成装置では,用紙上のトナー像を用紙に定着させる定着装置を備えている。ここで,定着装置の定着ローラにトナーが付着するのを防ぐため,定着ローラに離型剤(定着オイルともいう)を供給する必要がある。特に,近年普及が進んでいるフルカラー画像形成装置でフルカラー画像を取り扱う際には,用紙上のトナー付着量が多いため,離型剤も多く必要とされる。このため離型剤供給装置には,必要十分な量の離型剤を長期間にわたり安定して供給できることが要求される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,従来の離型剤供給装置に用いられる離型剤塗布ローラは,次のような問題点があった。すなわち,離型剤の供給量を多めにしたものでも,連続するプリント動作中の初期における供給量ばかり多く,後が続かない傾向があった。また,プリント終了から次のプリントまでの間隔が長いと離型剤の漏れや浸み出しが発生する場合があった。このため,プリントの状況(多数枚連続か散発か)により離型剤の供給量も異なり,安定性に欠けていた。また,使用状況により寿命も大きく影響を受けていた。
【0004】
本発明は,前記した従来の離型剤塗布ローラが有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,必要十分な量の離型剤を動作の初期から安定して供給できるとともに,離型剤の漏れや浸み出しを起こしにくい離型剤塗布ローラを,その製造方法とともに提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の離型剤塗布ローラは,回転体にジメチルシリコーンオイルの離型剤を塗布するものであって,表面を構成する表層と,表層より内側に位置し,離型剤を保持する機能を有する保持層と,表層と保持層とを接着するとともに,保持層から表層への離型剤の移動経路をなす接着層とを有し,接着層が,シリコーンワニスとジメチルシリコーンオイルとの混合物で構成され,接着層の成分であるジメチルシリコーンオイルのピーク分子量と,離型剤のジメチルシリコーンオイルのピーク分子量とが異なり,表層が,表裏面で穴径の異なる有孔PTFEフィルムで構成され,穴径のより大きい方の面が外側に配置されているものである。
【0006】
この離型剤塗布ローラでは,使用状態においては,保持層に離型剤であるジメチルシリコーンオイルが保持されている。その離型剤は,保持層から接着層を経由して表層に浸透している。そして,表層に回転体が接しており離型剤塗布ローラと回転体とがともに回転していれば,表層により離型剤塗布ローラに離型剤が塗布される。塗布により表層の離型剤が減少した分は,保持層から補充される。ここで,シリコーンワニスとジメチルシリコーンオイルとの混合物で構成されている接着層のうち,ジメチルシリコーンオイルの分子が占めている箇所が離型剤の経路を構成している。
【0007】
このため,製造時のシリコーンワニスとジメチルシリコーンオイルとの混合比により,接着層における離型剤の透過性が調整される。すなわち,シリコーンワニスが多いと,離型剤の経路が少ないので透過性が低い。逆に,ジメチルシリコーンオイルが多いと,離型剤の経路が多いので透過性が高い。もちろん,透過性が低いと回転体への離型剤の供給量が少ない。透過性が高ければその逆である。その混合比の好ましい範囲は,重量比にして1/3〜3/1(より好ましくは1/2〜2/1)である。
【0008】
また,接着層の厚さも離型剤の透過性に影響することはもちろんである。すなわち,厚いと透過性が低く,薄いと透過性が高いのである。その好ましい範囲は,単位面積あたり重量にして,40〜200g/m2 (より好ましくは80〜150g/m2)である。
【0009】
また,接着層の成分としてのジメチルシリコーンオイルと,離型剤としてのジメチルシリコーンオイルとの間の分子量の関係も離型剤の透過性に影響する。すなわち,前者が後者に対して小さいと,透過経路が狭いことを意味するので透過性が低いのである。逆に後者が前者に対して小さいと,透過経路が広いことを意味するので透過性が高い。一般的には,後者のピーク分子量は5×103 〜1×104(粘度としては100〜300cSt) の範囲内にあるから,前者のピーク分子量を2×104〜1.5×105(粘度としては1,000〜200,000cSt) の範囲内とするとよい。好ましくは,前者のピーク分子量が後者のピーク分子量に対して8〜20倍の範囲内にあるとよい。この,両シリコーンオイル間の分子量の関係は,粘度の関係よりも重要である。一般的には分子量と粘度とは相関性があるが,粘度の異なる2種類のシリコーンオイルを混合することによってそれらの中間の粘度のシリコーンオイルを作り出すことができるからである。接着層における離型剤の透過性は,粘度の関係よりも分子量の関係に依存するのである。
【0010】
また,接着層の材料を調製するためにシリコーンワニスとジメチルシリコーンオイルとを混合する際,硬化触媒も混合される。この硬化触媒の混合量も離型剤の透過性に影響する。すなわち,硬化触媒が多いと透過性が低く,少ないと透過性が高いのである。その好ましい範囲は,接着層中のシリコーンワニスの含有量(固形分)に対する硬化触媒の重量比にして1/70〜10/70(より好ましくは2/70〜5/70)である。
【0011】
また,保持層としては,フェルト布を用いることが好ましく,その厚さが0.5〜5mmの範囲内にあり,密度が0.05〜1.0g/m3の範囲内にあり,繊維径が0.1〜20デシテックスの範囲内にあるとよりよい。
【0012】
また,表層としては,有孔PTFEフィルムを用いる。しかも穴径のより大きい方の面を外側に配置する。有孔PTFEフィルムは一般的に製造工程で2軸展伸を受けており,このために一面側で穴同士が連結して大きくなっている(穴の開口数はその分少ない)のである。この,穴径の大きい方の面はその反対側の面より光沢があるので肉眼でも簡単に識別できる。そして,このような穴の形状のために,フィルムの表から裏へと裏から表へとで離型剤の透過性が異なるものと考えられる。
【0013】
また,本発明の離型剤塗布ローラは,基本的に,ジメチルシリコーンオイルの離型剤を保持する機能を有する円筒形の保持層の外周に,表面を構成する表層を巻きつけて製造される。その際,表層として,表裏面で穴径の異なる有孔PTFEフィルムを使用し,穴径のより大きい方の面を外側に配置する。ここにおいて,ジメチルシリコーンオイルとシリコーンワニスと硬化触媒との混合物である接着剤を表層の裏面に塗布し,塗布の後1〜12時間(より好ましくは1〜4時間)の範囲内の待機時間を経てから接着剤の加熱硬化を開始することが望ましい。
【0014】
すなわち,塗布後加熱硬化の開始までの待機時間があまりに長いと,離型剤の透過性が安定しない傾向があるからである。その一方,あまりに短いと,接着力が安定しない傾向があるからである。なお,ここでいう待機時間は,厳密には,接着剤を裏面に塗布した表層を保持層の外周に巻きつけた時点から加熱硬化開始までの時間をいう。しかし現実の工程では,接着剤を表層の裏面に塗布するとすぐにその表層を保持層に巻きつけるのが普通である。このため,塗布した時点から起算してもほとんど差し支えない。
【0015】
また,ジメチルシリコーンオイルとシリコーンワニスと硬化触媒とを混合して接着剤とした後も,直ちにその接着剤を表層に塗布するのではなく,混合の後10〜60分(より好ましくは20〜40分)の範囲内の待機時間をおいた方がよい。
【0016】
混合した直後の接着剤をすぐに表層に塗布すると,離型剤を付与する量の少ない離型剤塗布ローラができてしまうのである。この原因は,次のように考えられる。すなわち,混合した直後の接着剤は,硬化がほとんど進んでいないために粘度が低い。このため,表層の細孔に進入して塞いでしまうためである。また,接着力も弱い傾向がある。その一方で,あまりに長い待機時間をおくのもよくない。接着層における離型剤の透過性が安定性しない傾向があるからである。
【0017】
さらに,接着剤を混合した後の待機時間の間に,その接着剤を脱気処理することが好ましい。混合直後の接着剤は,細かな気泡を含んでいる。これをそのまま塗布すると接着層の品質が安定しないので,気泡を除去するべきである。脱気処理とは気泡を除去する処理のことである。単に待機時間をおくだけでもある程度は脱気するが,減圧雰囲気下に置くと効率的に脱気できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態は,トナーを用いる画像形成装置の定着装置において,定着ベルトに離型オイルを供給するオイル供給ローラとして本発明を具体化したものである。
【0019】
まず,画像形成装置の概略を説明する。本実施の形態に係る画像形成装置は,図1の概略断面図に示すように,4色それぞれの画像形成ステーション4C,4M,4Y,4Kを備えたタンデム式のフルカラープリンタである。すなわち,各画像形成ステーション4C,4M,4Y,4Kには,外部(パソコン等)から入力される画像データが,コントローラ7,プリントヘッドコントローラ8を介して入力されるようになっている。これにより各画像形成ステーション4C,4M,4Y,4Kは,それぞれ当該色のトナー像を作成するのである。各色のトナー像は,図1中矢印Aの向きに回転する転写ベルト6上に順次転写されて重ね合わせられる。
【0020】
そして,これと同期して用紙カセット1から1枚の印刷用紙が取り出され,給紙ローラ2を経て転写ローラ3と転写ベルト6とのニップ部へ送られる。そこで重ね合わせトナー画像は転写ベルト6から印刷用紙上へ転写される。重ね合わせトナー画像を受け取った印刷用紙は,ベルト定着方式の定着装置5を経由して排紙トレイ9上に排出されるのである。定着装置5では,重ね合わせトナー画像が加熱により溶融され,また加圧されて印刷用紙上にフルカラー画像として定着される。
【0021】
定着装置5は,図2に示すように,2つの張架ローラ15,16に巻き架けられ図2中矢印Aの向きに回転する定着ベルト10と,対向ローラ11とを有している。印刷用紙が通過するのは,定着ベルト10と対向ローラ11との間のニップ部である。張架ローラ15および対向ローラ11は,定着の熱源であるヒータを内蔵している。さらに,定着ベルト10に離型オイルを供給するオイル供給ローラ12を有している。オイル供給ローラ12は,ドナーローラ14を介して定着ベルト10に離型オイルを供給するようになっている。また,ドナーローラ14には,余分な離型オイルを拭き取るクリーニングローラ13が付設されている。
【0022】
離型オイルは,粘度100〜300cSt程度のジメチルシリコーンオイルである。一般的には,ピーク分子量が5×103〜1×104の範囲内のジメチルシリコーンオイルがこの程度の粘度を有する。例えば,信越化学工業(株)製の型式「KF−96SS−100CS」(粘度は100〜110cSt(25℃))が使用可能である。
【0023】
次に,オイル供給ローラ12について詳細に説明する。オイル供給ローラ12は,芯金21の他,基材22と,フェルト層23と,表層25との多層構造をなしている。なお,薄いため図2には現れていないが,フェルト層23と,表層25との間には接着層24(図3参照)がある。芯金21は,オイル供給ローラ12の回転軸をなすものであり,8mm程度の直径を有するメッキ処理した鉄製の棒(例えば、SUM22鋼材にESNi処理を施したもの等)である。また,芯金21として,ステンレス鋼製のものを用いることもできる。
【0024】
基材22は,離型オイルを含浸して蓄える機能を有する筒状のセラミックス部材である。例えば,ニチアス(株)製の品名「セラールAC」であって,大型気孔比率22〜24%,気孔率68〜72%,嵩密度0.78g/cm3程度のグレードのものが使用可能である。
【0025】
フェルト層23は,離型オイルを含浸するとともに,基材22に貯蔵されている離型オイルを接着層24および表層25へ移動させる機能を有している。例えば,日本フェルト工業(株)製の型式「OX−1070」が使用可能である。これは,2.2デシテックスのアラミド繊維と0.88デシテックスの繊維との混毛構成である。ここでは,厚さ2.8±0.2mm(限界は0.5〜5mm),目付け680±40g/m2のものを用いている。そして,この材料を幅30mmの帯状とし,これを螺旋状に基材22の側面に巻きつけてフェルト層23としている。基材22とフェルト層23とで離型オイルの保持層を形成している。
【0026】
表層25は,ドナーローラ14に直接に接する層である。例えば,住友電工ファインポリマー(株)製の品名「ポアフロンシート」,型式「WP−020−80」が使用可能である。これはPTFEの2軸展伸多孔質膜であり,厚みは70〜95μm,気孔率は70〜85%,透気度はガレー値で11±3秒程度である。この種のPTFEシートには,2軸展伸プロセスで製造されたものと,1軸展伸プロセスで製造されたものとがある。しかしながら1軸展伸ものを用いると,オイル供給ローラ12のオイル供給性が安定しない傾向がある。1軸展伸ものは,孔の形状および向きに偏りがあるためであると思われる。
【0027】
接着層24は,フェルト層23と表層25とを接着するとともに,フェルト層23から表層25への離型オイルの移動の度合を司る機能を有している。そして接着層24は,シリコーンワニスとジメチルシリコーンオイルとを混合した接着剤で構成されている。この接着剤にはさらに,シリコーンワニスの硬化触媒が配合されている。接着層24における離型オイルの透過性は,シリコーンワニスとジメチルシリコーンオイルとの混合比により左右される。すなわち,シリコーンワニスが多いと透過性が低く,ジメチルシリコーンオイルが多いと透過性が高い。このため,いかなる混合比で接着層24を形成するかにより,オイル供給ローラ12の塗布性を制御できるのである。
【0028】
まずシリコーンワニスについて説明する。シリコーンワニスは,接着剤の主剤である。例えば,信越化学工業(株)製の型式「KR−105」が使用可能である。そしてその硬化触媒としては,同社製の型式「T−12」が使用可能である。
【0029】
次にジメチルシリコーンオイルについて説明する。接着剤中に配合されるジメチルシリコーンオイルは,接着層24中に離型オイルの移動経路を確保する役割を有している。このため,離型オイルとしてのジメチルシリコーンオイルよりも分子量が大きいものを用いることが望ましい。分子量の小さいものでは,移動経路が狭く十分な透過性を発揮しないからである。すなわち粘度でいえば,離型オイルのジメチルシリコーンオイルよりも高粘度なものを用いるべきなのである。本実施の形態では前述のように離型オイルの粘度が100〜110cStであるから,接着剤のジメチルシリコーンオイルの粘度は1,000〜200,000cSt程度が好ましい。中でも,50,000〜150,000cStの範囲が,シリコーンワニスをよりよく分散させ,安定したオイル塗布性を実現する上で好ましい。一般的には,ピーク分子量が2×104〜1.5×105の範囲内のジメチルシリコーンオイルがこの程度の粘度を有する。例えば,信越化学工業(株)製の型式「KF−96H−10万CS」(粘度は95,000〜105,000cSt(25℃))が使用可能である。
【0030】
続いて,接着剤の調製およびその表層25への塗布について説明する。この一連の作業手順を図4に示す。なお,本出願においては,芯金21と基材22とフェルト層23との組立は別途すでになされているものとする。
【0031】
最初に,接着剤の原料の混合が行われる(#1)。このとき,シリコーンワニスとジメチルシリコーンオイルとの混合比を,重量比で1/3〜3/1(より好ましくは1/2〜2/1)の範囲内(ベストは1/1)とする。シリコーンワニスが多すぎると,接着層24中の離型オイルの移動経路が少ないこととなる。このため,オイル塗布性の低いオイル供給ローラ12ができてしまう。逆にジメチルシリコーンオイルが多すぎると,オイル塗布性が過大なオイル供給ローラ12ができてしまう。極端な場合には,接着剤の接着力が不足する。このようなことがなく良好なオイル供給ローラ12を得るためには,混合比が上記の範囲内であることが必要なのである。
【0032】
また,硬化触媒の添加量を,シリコーンワニスの固形分(前述のシリコーンワニスは,30重量%の溶剤を含んでいる)に対する重量比で1/70〜10/70(より好ましくは2/70〜5/70)の範囲内とする。硬化触媒が多すぎると,オイル塗布性の低いオイル供給ローラ12ができてしまう傾向がある。逆に硬化触媒が足りないと,接着剤の接着力が不足する。このようなことがなく良好なオイル供給ローラ12を得るためには,混合比が上記の範囲内であることが必要なのである。硬化触媒の添加量とオイル塗布性との関係を試験したところ,図5のグラフに示す結果が得られた。硬化触媒の添加量が1/70未満では,接着力が不足してオイル供給ローラ12の製造に不適であった。添加量が10/70を超えた場合には,オイル塗布量の著しく少ないものしかできなかった。添加量1/70〜10/70の範囲では実用可能なものが得られた。中でも,添加量2/70〜5/70の範囲では,A4サイズ1枚当たり3〜5mgという最適な塗布性のものが得られた。
【0033】
混合は具体的には,まずシリコーンワニスとジメチルシリコーンオイルとをミキサで5分間程度攪拌する。そして硬化触媒を添加してさらに5分間程度攪拌するのである。
【0034】
次に,混合した接着剤の脱気処理を行う(#2)。混合の際に不可避的に接着剤の中に気泡が取り込まれる。気泡を含んだままの接着剤をそのまま用いると,接着層24の接着力が不安定であったり,オイル塗布性が過大でかつ不安定となったりする。そこで,この気泡を除去するのである。このため,混合後の接着剤を容器ごと減圧槽に入れ,真空ポンプで減圧する。これにより接着在中の気泡が外部に脱出し,気泡を含まない接着剤が得られる。
【0035】
次に,脱気後の接着剤を表層25に塗布する(#3)。塗布するのはもちろん,フェルト層23に接する側の面(オイル供給ローラ12の完成品としてみれば裏面)である。表層25は前述のように2軸展伸の多孔質PTFEシートである。このシートは一般的に,表裏の光沢度に明確な差がある。接着剤は,非光沢面に塗布しなければならない。逆だとオイル塗布性の低いオイル供給ローラ12ができてしまうからである。したがって,オイル供給ローラ12の完成品としてみれば,表層25はその光沢面を表に向けている。
【0036】
この理由は次のように考えられる。2軸展伸の多孔質PTFEシートの孔の形状は,図6に示すように一方の面側で融合し,孔径が大きくなっていることがわかっている。大径の側が光沢面である。SEM観察では,大径側で3.5μm×0.7μm程度の長円形の穴が観察される。小径側では1μmφ程度の比較的円形の穴が観察される。これは,製造時に受ける応力のためと考えられる。そして大径の光沢面に接着剤を塗布すると,孔の中に接着剤が比較的大量に入り込んで塞いでしまうため,表層25のオイル透過性が低下してしまうと考えられる。
【0037】
接着剤の表層25への塗布は,混合(#1)後ある程度の時間をおいてから行う。その待機時間は,10〜60分(より好ましくは20〜40分)の範囲内がよい。前述の脱気処理(#2)の時間も,この中に含めてよい。混合した直後の接着剤は,硬化がほとんど進んでいないために粘度が低い。このため,これを表層25に塗布すると,孔に進入して塞いでしまう。よって,オイル塗布性の低いオイル供給ローラ12ができてしまうのである。逆に混合後60分より長く放置したものもよくない。硬化が進行しすぎているので,接着層24中のオイル経路が良好に形成されず透過性が安定性しないのである。混合後の待機時間とオイル塗布性との関係を試験したところ,図7のグラフに示す結果が得られた。待機時間が10〜60分の範囲内では,A4サイズ1枚当たり4mg程度の良好な値が得られたが,その範囲外では塗布性が低いという結果であった。
【0038】
接着剤の塗布量は,単位面積あたり重量にして,40〜200g/m2(より好ましくは80〜150g/m2)の範囲内とする。厚すぎると透過性が低いし,薄すぎると接着力が弱くまた透過性が過大となってしまうからである。接着剤の塗布量とオイル塗布性との関係を試験したところ,図8のグラフに示す結果が得られた。
【0039】
表層25の非光沢面に接着剤を塗布したら,その表層25をフェルト層23に巻き付ける(#4)。この作業は,塗布に引き続いて直ちに行えばよい。
【0040】
巻き付け(#4)の後,直ちに硬化処理を行うのでなく,室温で1〜12時間(より好ましくは1〜4時間)の範囲内の待機時間をおく(#5)。直ちに硬化処理を行うと,接着力が安定しないからである。その一方,あまりに長時間放置してから硬化処理をしたのでは,オイル供給ローラ12のオイル塗布性がばらつく傾向がある。硬化処理が始まるまでに接着剤がフェルト層23に染み込んでしまうためと考えられる。染み込み具合はフェルト層23の個体差に左右されるからである。ここでの待機時間は,厳密には巻き付け終了から起算すべきである。しかし塗布した時点から起算しても事実上差し支えない。塗布後すぐに巻き付けが行われるのが普通だからである。
【0041】
待機時間が経過したら,加熱硬化を開始する(#6)。すなわち,オイル供給ローラ12を加熱炉に入れ,70℃5時間+170℃2時間の熱処理を行う。これにより,表層25がフェルト層23にしっかりと接着される。その後,内部の基材22およびフェルト層23に離型オイルを注入し,端部を封止処理すると,オイル供給ローラ12ができあがる。
【0042】
以上詳細に説明したように本実施の形態では,オイル供給ローラ12の表層25を2軸展伸PTFEシートで構成するとともに,その光沢面(孔径の大きい方の面)を外向きに配置している。また,表層25と,離型オイルの保持層の一部であるフェルト層23との間に,シリコーンワニスとジメチルシリコーンオイルとの混合接着剤による接着層24を設けている。そして,接着層24の性状および製造方法について前述のように種々の特性を規定している。これにより,定着ベルト10への離型オイルの供給特性が優れたオイル供給ローラ12が実現されている。すなわち,本実施の形態で規定した種々の特性に合わせたオイル供給ローラ12では,離型オイルの供給性が過剰でもなく不足でもない。このため,使用の初期から末期に至るまで,基材22およびフェルト層23に保持させた離型オイルを過不足なく安定して定着ベルト10に供給できる。すなわち,組み付け時や休止時等に離型オイルが漏れたり浸み出してべたつくようなことがなく,逆に連続プリント中に離型オイルが不足するようなこともない。またこれにより,プリントの状況(多数枚連続か散発か)によらず想定通りの寿命が発揮される。
【0043】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本実施の形態では,離型オイルの保持層を,セラミックの基材22と,その外側のフェルト層23との2層構成としているが,フェルト層23のみで構成することもできる。また,各部の使用原材料は,同等の機能を有する他のもので置き換えてもよい。また,ドナーローラ14を介さず直接に定着ベルト10に離型オイルを供給するものであってもよいし,ベルト定着方式以外の定着装置に適用してもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば,必要十分な量の離型剤を動作の初期から安定して供給できるとともに,離型剤の漏れや浸み出しを起こしにくい離型剤塗布ローラが,その製造方法とともに提供されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像形成装置の全体概略図である。
【図2】定着装置の概略構成図である。
【図3】オイル供給ローラの構造を示す断面概念図である。
【図4】オイル供給ローラの製造プロセスの一部を示すフローチャートである。
【図5】触媒添加量とオイル塗布性との関係を示すグラフである。
【図6】表層のPTFEシートにおける孔の形状を示す断面図である。
【図7】接着剤の混合後の待機時間とオイル塗布性との関係を示すグラフである。
【図8】接着剤量とオイル塗布性との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
12 オイル供給ローラ
23 フェルト層
24 接着層
25 表層
Claims (8)
- 回転体にジメチルシリコーンオイルの離型剤を塗布する離型剤塗布ローラにおいて,
表面を構成する表層と,
前記表層より内側に位置し,離型剤を保持する機能を有する保持層と,
前記表層と前記保持層とを接着するとともに,前記保持層から前記表層への離型剤の移動経路をなす接着層とを有し,
前記接着層は,
シリコーンワニスとジメチルシリコーンオイルとの混合物で構成され,
単位面積あたり重量が40〜200g/m2の範囲内にあり,
前記接着層の成分であるジメチルシリコーンオイルのピーク分子量と,離型剤のジメチルシリコーンオイルのピーク分子量とが異なり,
前記表層は,
表裏面で穴径の異なる有孔PTFEフィルムで構成され,
穴径のより大きい方の面が外側に配置されていることを特徴とする離型剤塗布ローラ。 - 請求項1に記載する離型剤塗布ローラにおいて,
前記接着層におけるシリコーンワニスとジメチルシリコーンオイルとの混合比が,1/3〜3/1(重量比)の範囲内にあることを特徴とする離型剤塗布ローラ。 - 請求項1に記載する離型剤塗布ローラにおいて,
前記接着層の成分であるジメチルシリコーンオイルのピーク分子量が2×104〜1.5×105の範囲内にあり,
離型剤のジメチルシリコーンオイルのピーク分子量が5×103〜1×104の範囲内にあることを特徴とする離型剤塗布ローラ。 - 請求項1に記載する離型剤塗布ローラにおいて,
前記接着層の成分であるジメチルシリコーンオイルのピーク分子量が,離型剤のジメチルシリコーンオイルのピーク分子量に対して8〜20倍の範囲内にあることを特徴とする離型剤塗布ローラ。 - 請求項1に記載する離型剤塗布ローラにおいて,
前記接着層に,シリコーンワニスの含有量に対して1/70〜10/70の範囲内の重量比の硬化触媒が配合されていることを特徴とする離型剤塗布ローラ。 - ジメチルシリコーンオイルの離型剤を保持する機能を有する円筒形の保持層の外周に,表面を構成する表層を巻きつけて離型剤塗布ローラを製造する方法において,
表層を表裏面で穴径の異なる有孔PTFEフィルムで構成するとともに,その穴径のより大きい方の面を外側に配置し,
ジメチルシリコーンオイルとシリコーンワニスと硬化触媒との混合物である接着剤を表層の裏面に塗布し,
塗布の後1〜12時間の範囲内の待機時間を経てから接着剤の加熱硬化を開始することを特徴とする離型剤塗布ローラの製造方法。 - ジメチルシリコーンオイルの離型剤を保持する機能を有する円筒形の保持層の外周に,表面を構成する表層を巻きつけて離型剤塗布ローラを製造する方法において,
表層を表裏面で穴径の異なる有孔PTFEフィルムで構成するとともに,その穴径のより大きい方の面を外側に配置し,
ジメチルシリコーンオイルとシリコーンワニスと硬化触媒とを混合して接着剤とし,
混合の後10〜60分の範囲内の待機時間を経てから接着剤を表層の裏面に塗布することを特徴とする離型剤塗布ローラの製造方法。 - ジメチルシリコーンオイルの離型剤を保持する機能を有する円筒形の保持層の外周に,表面を構成する表層を巻きつけて離型剤塗布ローラを製造する方法において,
表層を表裏面で穴径の異なる有孔PTFEフィルムで構成するとともに,その穴径のより大きい方の面を外側に配置し,
ジメチルシリコーンオイルとシリコーンワニスと硬化触媒とを混合して接着剤とし,
混合の後の接着剤を脱気処理してから表層の裏面に塗布することを特徴とする離型剤塗布ローラの製造方法。
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