JP3786616B2 - 多層回路基板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、配線回路の電気的接続が、半田製導電体が充填されたビアホールによってなされた多層回路基板及びその製造方法に関し、特に、高い接続信頼性を有する多層回路基板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、多層回路基板の電気的な層間接続法として、ビアホールを用いた層間接続法が種々知られている。より具体的には、銅粉末や銀粉末等の金属粉末を樹脂中に分散させたものをビアホール内に充填したり、銅メッキによってビアホール内を充填する方法が提案されている。このような背景下、例えば、特開2001−28481号公報に記載されているように、半田バンプから形成した半田製導電体をビアホールに充填することにより層間接続された多層回路基板も提案されている。
【0003】
しかしながら、前述した半田バンプから形成した半田製導電体をビアホールに充填した多層回路基板は、外部応力に対して弱いという欠点を有する。これは、ビアホール側壁と半田バンプから形成した半田製導電体との接合面が比較的平坦な形状となり、密着性が不十分であるため、外部応力が付与された場合に、半田製導電体がビアホール側壁から剥離し、電気的な層間接続が解除され易くなるためである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、高い接続信頼性を有する多層回路基板及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
斯かる課題を解決するべく、本発明は、請求項1に記載の如く、絶縁層の両面に配線回路を構成する導体層が形成された多層回路基板であって、前記両面にそれぞれ形成された各配線回路は、金属粉末と半田粉末とにより形成された半田製導電体が充填されたビアホールによって電気的に接続されており、前記ビアホールの側壁は、前記半田粉末によって形成された凹凸形状を有するとともに、前記半田製導電体は、金属粉末と半田粉末とが溶融一体化されていることを特徴とする多層回路基板を提供するものである。
【0006】
請求項1に係る発明によれば、ビアホール側壁が凹凸形状を有することにより、半田製導電体との接触面積が増加し、半田製導電体とビアホールとの間に、いわゆるアンカー効果が生じることになる。従って、外部応力が付与された場合にも半田製導電体がビアホール側壁から剥離し難く、高い接続信頼性を有する多層回路基板を得ることが可能である。
【0007】
好ましくは、請求項2に記載の如く、前記絶縁層は、熱硬化性樹脂から形成される。
【0008】
好ましくは、請求項3に記載の如く、前記半田製導電体は、半田粉末を含有するペーストの充填及び熱圧着によって形成される。
【0009】
好ましくは、請求項4に記載の如く、前記ペーストは、融点が150℃以上350℃以下の半田粉末を含有する。
【0010】
或いは、請求項5に記載の如く、前記ペーストは、融点が350℃以上の金属粉末と、融点が150℃以上350℃以下の半田粉末とを含有する。
【0011】
請求項5に係る発明によれば、柔らかい半田中に分散する硬い金属粉末により半田製導電体の塑性変形が防止され、強度向上を図ることが可能である。従って、温度サイクル試験に伴う半田製導電体の変形を抑制することができ、より一層信頼性の高い層間接続を得ることが可能である。
【0012】
好ましくは、請求項6に記載の如く、前記金属粉末は、Ni、Au、Ag、Cu、Fe、Al、Cr、Pd、Co及びRhから選ばれる少なくとも一種の金属か、若しくは、これらの金属の合金とされる。
【0013】
また、本発明は、請求項1から6のいずれかに記載の多層回路基板を製造する方法であって、
第1の導体層の上に開口部を有する熱硬化性接着剤層を形成する工程、或いは、第1の導体層の上に熱硬化性接着剤層を形成した後に開口部を形成する工程と、前記開口部に、半田粉末を5〜50℃で充填する工程と、前記半田粉末が溶融しない状態で、前記半田粉末が充填された前記開口部を含む前記熱硬化性接着剤層の上に第2の導体層を形成する工程と、前記半田粉末を加熱溶融一体化して、前記第1の導体層と前記第2の導体層とを電気的に接続する工程とを順次行うことを特徴とする多層回路基板の製造方法をも提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る多層回路基板の製造方法の一実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る多層回路基板の製造方法の一実施形態(本実施形態では両面回路基板の製造方法)を示す説明図であり、図1(a)〜(h)の各々は、各工程における部材の縦断面図を示す。
【0016】
本実施形態に係る方法では、まず、図1(a)に示すように、第1の導体層1(本実施形態では銅箔とされており、以下、第1の銅箔1という)の上に、熱硬化性接着剤層2(以下、適宜熱硬化性接着剤2という)をBステージ状態(熱硬化性接着剤が所定の形状を保持できる程度まで硬化された硬化途中の状態)で形成した後、図1(b)に示すように、熱硬化性接着剤層2に開口部2aを形成する。
【0017】
熱硬化性接着剤2は、配線回路基板の接着剤層に通常使用され、Bステージ状態とすることができる限りにおいて、特に制限されるものではなく、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、アミドイミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、及び、これらの熱硬化性接着剤を混合したものが用いられる。なお、熱硬化性接着剤2は、その硬化温度が、100℃以上、好ましくは、125〜200℃のものが好ましく用いられる。
【0018】
前述のように、第1の銅箔1の上に、熱硬化性接着剤層2をBステージ状態で形成するには、例えば、熱硬化性接着剤を含む溶液を、第1の銅箔1の上に塗布した後、加熱して乾燥させると同時にBステージ状態とするか、或いは、予めBステージ状態とされた熱硬化性接着剤からなる接着シートを第1の銅箔1の上に、加熱及び/又は加圧することにより積層(仮接着)すれば良い。
【0019】
また、熱硬化性接着剤層2に開口部2aを形成するには、例えば、YAGレーザなどのレーザを用いて開口し形成すれば良い。開口部2aの大きさは、例えば、円形である場合には、その直径が50〜300μm、好ましくは、50〜200μmとされる。なお、第1の銅箔1の上に熱硬化性接着剤層2を形成した後に開口部2aを形成するのではなく、第1の銅箔1の上に予め開口部2aが形成された熱硬化性接着剤層2を形成するようにしても良い。この場合には、例えば、熱硬化性接着剤からなる接着シートに、ドリルやパンチなどを用いて予め開口部2aを開口し形成し、これを熱硬化性接着剤層2として第1の銅箔1の上に積層すれば良い。
【0020】
また、図1(a)に示す工程において、熱硬化性接着剤層2には、第1の銅箔1と接触している表面と反対側の表面に、後述する半田粉末3の充填工程において半田粉末3が不必要な部分に付着することを防止するべく、好ましくは、セパレータ4を積層する。
【0021】
セパレータ4としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂などの合成樹脂のフィルムが用いられ、その厚みは、7.5〜50μmとされる。なお、セパレータ4は、開口部2aが形成される前の熱硬化性接着剤層2の表面に貼着しておき、熱硬化性接着剤層2に開口部2aを形成する際に、当該開口部2aに相当する箇所が同時に開口されるようにすれば良い。
【0022】
次に、図1(c)に示すように、熱硬化性接着剤層2の開口部2aに、半田粉末3を5〜50℃で充填する。
【0023】
半田粉末3は、特に制限されるものでは無いが、例えば、Sn/Ag、Sn/Cu、Sn/Znなどからなる二元系組成や、Sn/Ag/Cu、Sn/Ag/Cu/Biなどからなる多元系組成のものを用いることができる。また、半田粉末4の平均粒子径としては、50μm以下、好ましくは、20μm以下のものが用いられる。
【0024】
熱硬化性接着剤層2の開口部2aに対して半田粉末3を充填するには、まず、半田粉末3を溶剤6に配合して半田ペースト5を調整し、セパレータ4をマスクとして、半田ペースト5を5〜50℃、好ましくは、10〜30℃、より具体的には、常温下において、開口部2aに対して適量(相当量程度)で印刷すればよい。なお、常温下とは、特に加熱しない室温雰囲気下のことを意味する。
【0025】
溶剤6としては、特に制限はないが、後述する乾燥工程において、75〜200℃、好ましくは、75〜160℃の範囲で乾燥除去が可能な溶剤6を選択することが好ましい。75℃より低い温度で乾燥可能な溶剤6を選択すると、半田ペースト5の保存安定性や連続印刷性が低下する場合があり、200℃より高い温度で乾燥可能な溶剤6を選択すると、乾燥工程において熱硬化性接着剤層2の硬化が進み、後述する第2の導体層7(本実施形態では銅箔とされており、以下、第2の銅箔7という)との界面の接着強度が低下する場合があるからである。
【0026】
より具体的には、溶剤6として、例えば、脂肪族アルコールに、増粘効果を付与すべく、セルロース系樹脂を添加したもの等が好ましく用いられる。なお、セルロース系樹脂の添加量は、例えば、半田粉末3に対して、0.005〜5体積%程度とされる。半田ペースト5は、例えば、半田粉末3及び溶剤6を、その体積比が1:1程度となる割合で混合することにより調整することができる。
【0027】
なお、後述する半田製導電体の塑性変形を防止し、強度向上を図るべく、半田粉末3に対して所定量の金属粉末を混合することも可能である。金属粉末としては、Ni、Au、Ag、Cu、Fe、Al、Cr、Pd、Co及びRhから選ばれる少なくとも一種の金属か、若しくは、これらの金属の合金が好適に用いられる。また、金属粉末の平均粒子径としては、50μm以下、好ましくは、20μm以下のものが用いられる。
【0028】
また、半田粉末3に対する金属粉末の混合比は、0.1〜60重量%とするのが好ましい。この範囲より小さいと、開口部2a内において金属粉末の分散性が確保できず、前記範囲より大きいと、金属粉末同士の凝集が発生し、半田粉末3同士の溶融一体化を妨げるからである。
【0029】
次に、図1(d)に示すように、乾燥によって溶剤6を除去する。溶剤6の乾燥除去は、前述のように、75〜200℃、好ましくは、76〜160℃の範囲で所定時間加熱することにより実施される。乾燥時間は、開口部2aに対する半田ペースト5の充填量や、第1の銅箔1のサイズ等に応じて適宜決定される。一般的に、乾燥時間が短過ぎると、溶剤6が開口部2aに残存して、加熱によりアウトガスの発生を招き、導通不良の要因となる場合がある。また、逆に乾燥時間が長過ぎると、熱硬化性接着剤層2の硬化が進行し、後述する第2の銅箔7との界面の接着力が低下する場合がある。以上の観点より、乾燥時間としては、例えば1〜5分程度にするのが好ましい。斯かる乾燥工程を経て、図1(e)に示すように、セパレータ4を剥離する。
【0030】
次に、図1(f)に示すように、第2の銅箔7を別途用意し、当該第2の銅箔7を、半田粉末3が充填された開口部2aを含む熱硬化性接着剤層2の上に積層形成する。
【0031】
斯かる積層は、真空熱プレス装置などの加熱加圧装置を、第1の銅箔1及び第2の銅箔7の両側に配置して、加圧及び/又は加熱することにより実施すれば良い。加圧及び/又は加熱の条件は、第1の銅箔1や第2の銅箔7のサイズ等に応じて適宜決定すれば良いが、加圧条件としては、例えば、1〜10MPa、好ましくは、3〜5MPaとされ、また、加熱条件としては、半田粉末3が溶融しない温度とされ、例えば、160〜225℃、好ましくは、175〜200℃とされる。これにより、Bステージ状態である熱硬化性接着剤層2が硬化して、第2の銅箔7が熱硬化性接着剤層2を介して第1の銅箔1に接着積層される。
【0032】
次に、図1(g)に示すように、半田粉末3を加熱溶融して、互いに対向する第1の銅箔1と第2の銅箔7とを電気的に接続する半田製導電体8を形成する。ここで、半田粉末3の加熱溶融は、使用する半田粉末3の溶融温度以上に設定すれば良く、この加熱と共に、1〜10MPa、好ましくは、3〜5MPaで加圧することが好ましい。
【0033】
このように、半田粉末3が溶融しない状態で、第2の銅箔7を熱硬化性接着剤層2を介して第1の銅箔1に接着積層し、その後、半田粉末3を加熱溶融する製造方法であるため、接着積層の際に、熱硬化性接着剤層2の開口部2aの側壁が半田粉末3を押圧し、これにより、開口部2aの側壁には凹凸形状が生じると共に、熱硬化性接着剤層2の硬化により当該凹凸形状が保持されることになる。
【0034】
なお、以上に説明した熱硬化性接着剤層2の硬化、及び、半田粉末3の加熱溶融は、本実施形態のようにそれぞれ別工程として順次行っても良く、例えば、一定加圧条件下(1〜10MPa)で、160〜225℃の温度で接着積層した後、250℃以上に昇温することも可能である。
【0035】
最後に、図1(h)に示すように、通常のエッチング法によって、第1の銅箔1及び第2の銅箔7に配線回路を形成することにより、両面の配線回路が、半田製導電体8が充填された開口部(ビアホール)2aによって電気的に接続された両面回路基板100を形成することができる。
【0036】
以上に説明した本実施形態に係る製造方法により得られた両面回路基板100の開口部(ビアホール)2aの側壁は、凹凸形状を有することにより、半田製導電体8との接触面積が増加し、半田製導電体8と開口部2aとの間に、いわゆるアンカー効果が生じることになる。従って、外部応力が付与された場合にも半田製導電体8が開口部2a側壁から剥離し難く、高い接続信頼性を有する。
【0037】
なお、本実施形態では、第1の銅箔1の上に第2の銅箔7を積層する態様として説明したが、その積層数などは何ら限定されず、例えば、予め配線回路が形成された2枚の両面回路基板を用意し、これらを積層すれば、4層回路基板を形成することができる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示すことにより、本発明の特徴とするところをより一層明らかにする。
【0039】
(実施例1)
本実施例では、2枚の銅箔9、10(厚み18μm)と、アミドイミド系接着剤からなる接着シート11(厚み50μm)とを用意した。
【0040】
図2(a)に示すように、銅箔9の上に、接着シート11を、更にその上に、厚み12μmのポリエチレンナフタレートフィルム12を、真空プレス装置を用いて、150℃、1.5MPa、3minの条件で仮接着した。
【0041】
次に、図2(b)に示すように、銅箔9の上に積層された接着シート11の所定箇所(図2(e)の半田製導電体15を充填する箇所)に、YAGレーザを用いて開口部11a(150μmφ)を形成した。
【0042】
次に、図2(c)に示すように、開口部11aに、ポリエチレンナフタレートフィルム12をマスクとし、スクリーン印刷によってSn/Ag系の半田ペースト13(平均粒子径10μm)を印刷した後、160℃で5分間乾燥し、半田ペースト13内に含まれる溶剤成分を除去した。ここで、半田ぺースト13としては、半田粉末としてのSn/Ag粉末、アルコール系溶剤及びエチルセルロースを、体積比50:49.5:0.5で配合したものを用いた。
【0043】
次に、図2(d)に示すように、ポリエチレンナフタレートフィルム12を剥離した後、開口部11aに半田粉末が充填された基材14上に、銅箔10を積層し、真空下(10mmHg以下)において、加熱加圧(200℃、3MPa、30分間)することにより、これらを一体化させた。なお、この状態において、接着シート11は、絶縁層(接着剤層)11bとなる。
【0044】
次に、図2(e)に示すように、真空加圧下(10mmHg以下、3MPa)において、半田粉末の溶融温度以上(250℃)に昇温し、溶融一体化された半田製導電体15を形成した。
【0045】
最後に、図2(f)に示すように、エッチング法によって、銅箔9、10に配線回路9a、10aを形成し、両面回路基板200を得た。
【0046】
(実施例2)
本実施例では、2枚の両面回路基材17、18(商品名「ESPANEX」、Cu/PI/Cu=18/13/18μm)と、アミドイミド系接着剤からなる接着シート19(厚み50μm)とを用意した。
【0047】
図3(a)に示すように、両面回路基材17の上に、接着シート19を、更にその上に、厚み12μmのポリエチレンナフタレートフィルム20を、真空プレス装置を用いて、150℃、1.5MPa、3minの条件で仮接着した。
【0048】
次に、図3(b)に示すように、両面回路基材17の配線回路17a上に積層された接着シート19の所定箇所(図3(e)の半田製導電体22を充填する箇所)に、YAGレーザを用いて開口部19a(150μmφ)を形成した。
【0049】
次に、図3(c)に示すように、開口部19aに、ポリエチレンナフタレートフィルム20をマスクとし、スクリーン印刷によってSn/Ag系の半田ペースト21(平均粒子径10μm)を印刷した後、160℃で5分間乾燥し、半田ペースト21内に含まれる溶剤成分を除去した。ここで、半田ペースト21としては、半田粉末としてのSn/Ag粉末、アルコール系溶剤及びエチルセルロースを、体積比50:49.5:0.5で配合したものを用いた。
【0050】
次に、図3(d)に示すように、ポリエチレンナフタレートフィルム20を剥離した後、開口部19aに半田粉末が充填された両面回路基材17と、配線回路18aが形成された両面回路基材18とを、それぞれ位置合わせして積層し、真空下(10mmHg以下)で加熱加圧(200℃、3MPa、30分間)することにより、これらを一体化させた。なお、この状態では、接着シート19は、絶縁層(接着剤層)19bとなる。
【0051】
次に、図3(e)に示すように、真空加圧下(10mmHg以下、3MPa)において、半田粉末の溶融温度以上(250℃)に昇温し、溶融一体化された半田製導電体22を形成した。これにより、2枚の両面回路基材が積層一体化された4層回路基板23を得た。
【0052】
(比較例1)
本比較例では、2枚の銅箔24、25(厚み18μm)と、芳香族アミド系接着剤からなる接着シート26とを用意した。
【0053】
図4(a)に示すように、真空プレス装置を用いて、銅箔24の上に接着シート26を、150℃、1.5MPa、3minの条件で仮接着した。
【0054】
次に、図4(b)に示すように、基材27(銅箔24及び接着シート26)の所定箇所に、YAGレーザを用いて開口部26a(150μmφ)を形成した。
【0055】
次に、図4(c)に示すように、開口部26aに、メタルマスク28を用い、スクリーン印刷によってSn/Ag系の半田ペースト29を印刷した後、図4(d)に示すように、リフロー炉(最高到達温度250℃)によって半田バンプ30を形成し、水系洗浄剤によってフラックス残渣を洗浄した。
【0056】
次に、図4(e)に示すように、開口部26aに半田バンプ30が形成された基材27上に、銅箔25を積層し、真空下(10mmHg以下)で加熱加圧(150℃、30MPa、30分間)することにより、これらを一体化させた。なお、この状態において、接着シート26は、絶縁層26bとなる。
【0057】
さらに、図4(e)に示すように、真空加圧下(10mmHg以下、3MPa)において、半田バンプ30の溶融温度以上(250℃)に昇温し、溶融一体化された半田製導電体31を形成した。
【0058】
最後に、図4(f)に示すように、エッチング法によって、銅箔24、25に配線回路24a、25aを形成し、両面回路基板300を得た。
【0059】
(比較例2)
本比較例では、2枚の両面回路基材32、33(商品名「ESPANEX」、Cu/PI/Cu=18/13/18μm)と、芳香族アミド系接着剤からなる接着シート34とを用意した。
【0060】
図5(a)に示すように、真空プレス装置を用いて、両面回路基材32の上に接着シート34を、150℃、1.5MPa、3minの条件で仮接着した。
【0061】
次に、図5(b)に示すように、両面回路基材32の配線回路32a上に積層された接着シート34の所定箇所に、YAGレーザを用いて開口部34a(150μmφ)を形成した。
【0062】
次に、図5(c)に示すように、開口部34aに、メタルマスク35を用い、スクリーン印刷によってSn/Ag系の半田ペースト36を印刷した後、図5(d)に示すように、リフロー炉(最高到達温度250℃)によって半田バンプ37を形成し、水系洗浄剤によってフラックス残渣を洗浄した。
【0063】
次に、図5(e)に示すように、開口部34aに半田バンプ37が形成された両面回路基材32と、配線回路33aが形成された両面回路基材33とを、それぞれ位置合わせして積層し、真空下(10mmHg以下)で加熱加圧(150℃、5MPa、30分間)することにより、これらを一体化させた。なお、この状態では、接着シート34は、絶縁層38となる。
【0064】
さらに、図5(e)に示すように、真空加圧下(10mmHg以下、3MPa)において、半田バンプ37の溶融温度以上(250℃)に昇温し、溶融一体化された半田製導電体39を形成した。これにより、2枚の両面回路基材が積層一体化された4層回路基板400を得た。
【0065】
(評価)
図6は、実施例1によって得られた回路基板のビアホール断面写真を示す。また、図7は、比較例1によって得られた回路基板のビアホール断面写真を示す。
【0066】
図7に示すように、比較例1によって得られたビアホールの側壁は比較的平坦な形状となるのに対し、図6に示すように、実施例1によって得られたビアホールの側壁は凹凸形状を有することが観察できた。
【0067】
以上の結果を踏まえ、実施例1及び実施例2の回路基板、並びに、比較例1及び比較例2の回路基板を用いて、信頼性評価試験を行った。より具体的には、ビアホールにおける上側の導体層(銅箔)の剥離試験を実施した。
【0068】
上記試験の結果、実施例1の半田製導電体については、上側の導体層(銅箔)と半田製導電体との接合部において剥離が生じた。これに対し、比較例1の半田製導電体については、下側の導体層(銅箔)と半田製導電体との接合部において剥離が生じた。つまり、比較例1の半田製導電体については、図7に示すように、上面と比較して接合面積の小さい下面において剥離したのに対して、実施例1の半田製導電体については、図6に示すように、ビアホールの側壁に凹凸形状を有することにより、いわゆるアンカー効果が生じ、下面よりも接合面積が大きいにも関わらず、上面において剥離したことになる。これは、ビアホールの側壁を凹凸形状にすることにより、半田製導電体がビアホール側壁から剥離し難くなり、高い接続信頼性を得たことを意味するといえる。
【0069】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る多層回路基板は、ビアホール側壁が凹凸形状を有することにより、半田製導電体との接触面積が増加し、半田製導電体とビアホールとの間に、いわゆるアンカー効果が生じることになる。従って、外部応力が付与された場合にも半田製導電体がビアホール側壁から剥離し難く、高い接続信頼性を有するという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る多層回路基板の製造方法の一実施形態を示す説明図である。
【図2】 図2は、実施例1に係る多層回路基板の製造方法を示す説明図である。
【図3】 図3は、実施例2に係る多層回路基板の製造方法を示す説明図である。
【図4】 図4は、比較例1に係る多層回路基板の製造方法を示す説明図である。
【図5】 図5は、比較例2に係る多層回路基板の製造方法を示す説明図である。
【図6】 図6は、実施例1によって得られた回路基板のビアホール断面写真を示す。
【図7】 図7は、比較例1によって得られた回路基板のビアホール断面写真を示す。
【符号の説明】
1 ・・・ 第1の銅箔
2 ・・・ 熱硬化性接着剤層
2a ・・・ 開口部
3 ・・・ 半田粉末
4 ・・・ セパレータ
5 ・・・ 半田ペースト
6 ・・・ 溶剤
7 ・・・ 第2の銅箔
8 ・・・ 半田製導電体
100・・・ 両面回路基板
Claims (7)
- 絶縁層の両面に配線回路を構成する導体層が形成された多層回路基板であって、
前記両面にそれぞれ形成された各配線回路は、金属粉末と半田粉末とにより形成された半田製導電体が充填されたビアホールによって電気的に接続されており、
前記ビアホールの側壁は、前記半田粉末によって形成された凹凸形状を有するとともに、
前記半田製導電体は、金属粉末と半田粉末とが溶融一体化されていることを特徴とする多層回路基板。 - 前記絶縁層は、熱硬化性樹脂から形成されることを特徴とする請求項1に記載の多層回路基板。
- 前記半田製導電体は、半田粉末を含有するペーストの充填及び熱圧着によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層回路基板。
- 前記ペーストは、融点が150℃以上350℃以下の半田粉末を含有することを特徴とする請求項3に記載の多層回路基板。
- 前記ペーストは、融点が350℃以上の金属粉末と、融点が150℃以上350℃以下の半田粉末とを含有することを特徴とする請求項3に記載の多層回路基板。
- 前記金属粉末は、Ni、Au、Ag、Cu、Fe、Al、Cr、Pd、Co及びRhから選ばれる少なくとも一種の金属か、若しくは、これらの金属の合金であることを特徴とする請求項5に記載の多層回路基板。
- 請求項1から6のいずれかに記載の多層回路基板を製造する方法であって、
第1の導体層の上に開口部を有する熱硬化性接着剤層を形成する工程、或いは、第1の導体層の上に熱硬化性接着剤層を形成した後に開口部を形成する工程と、
前記開口部に、半田粉末を5〜50℃で充填する工程と、
前記半田粉末が溶融しない状態で、前記半田粉末が充填された前記開口部を含む前記熱硬化性接着剤層の上に第2の導体層を形成する工程と、
前記半田粉末を加熱溶融一体化して、
前記第1の導体層と前記第2の導体層とを電気的に接続する工程とを順次行うことを特徴とする多層回路基板の製造方法。
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