JP3786301B2 - 5−アミノレブリン酸生産微生物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、5-アミノレブリン酸を高濃度で生産・蓄積することのできる微生物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
5-アミノレブリン酸は、テトラピロール化合物の前駆体として広く生物圏に存在し、生体中で重要な役割を果している化合物である。5-アミノレブリン酸は、除草剤、殺虫剤、植物成長調節剤、植物の光合成増強剤等として優れた作用を示し、しかも人畜に対して毒性を示さず、分解性が高いため環境への残留性もないなど、優れた特性を有する天然化合物である(特開昭61-502814号公報、特開平2-138201号公報等参照)。
【0003】
しかし、5-アミノレブリン酸は、生産コストが高く、上記用途に使用するには実用性に欠けるという問題がある(CHEMICAL WEEK/ OCTOBER, 29, 1984)。
【0004】
このため、多くの化学合成法が検討されている(例えば、特開平2-76841号公報参照)が、未だ十分な方法は開発されていない。
【0005】
一方、ロドバクテリウム(Rhodobacterium)属、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、メタノバクテリウム(Methanobacterium)属、メタノサルシナ(Methanosarcina)属等の微生物を用いた5-アミノレブリン酸の製造方法も検討されている。しかし、プロピオニバクテリウム属、メタノバクテリウム属、メタノサルシナ属等(特開平5-184376号等参照)を用いる方法では生産量が非常に低く、満足できるものではない。
【0006】
また、ロドバクテリウム属微生物の中には、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)等、5-アミノレブリン酸合成能力の高い微生物も存在するものの、合成された5-アミノレブリン酸はテトラピロール化合物に代謝されてしまい、望ましい量の5-アミノレブリン酸が蓄積されないという問題がある。微生物の5-アミノレブリン酸合成能力は、5-アミノレブリン酸を原料にして生成するテトラピロール化合物の合成能力と相関していると考えられており、これは一般に5-アミノレブリン酸生合成過程がテトラピロール生合成経路上の律速段階と考えられているためである。例えば、坪井は、ロドバクター・スフェロイデスの菌体から抽出した粗酵素液では、5-アミノレブリン酸合成酵素活性に比べて、その次の段階である5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性が5倍以上高いことを観察している(S. Tsuboi et al., ARCHIVES OF BIOCHEMISTRY AND BIOPHYSICS 130, 92-100(1969))。このため、5-アミノレブリン酸合成能力の高い微生物においても、5-アミノレブリン酸を蓄積せしめるためには、何らかの方法で5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性を低下させる必要がある。
【0007】
この目的に用いられる方法として、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤(例えば、レブリン酸、4,6-ジオキソヘプタン酸等)の添加がある。また更に、かかる5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤の添加効果を向上させるために、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼの阻害剤に対する阻害物質定数(Ki値)が減少した微生物を用いる方法も知られている(特開平8-173149号公報)。
【0008】
しかしながら、テトラピロール化合物は、クロロフィル、ヘム、ビタミンB12等、酵素の活性発現に必須の成分として生体内において極めて重要な成分であり、このため、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤を添加する方法においては、生理的なテトラピロール化合物合成調節とのバランスに留意する必要がある。すなわち、微生物に5-アミノレブリン酸を蓄積せしめるためには、5-アミノレブリン酸の代謝を抑制しつつも適切にテトラピロール化合物が合成される必要がある。
【0009】
従って、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤の添加を必要とせずに、5-アミノレブリン酸の生産・蓄積が可能な微生物の提供が切望されている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において本発明者らは、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性が低下してもなお十分に育成能力を保持し得る変異株をスクリーニングすることができれば、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤を添加することなく5-アミノレブリン酸の生産が可能な微生物が得られるものと考え、鋭意研究を重ねた。その結果、ロドバクター・スフェロイデスが5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性が非常に高い理由として、テトラピロール合成調節が、ポルフィリン、クロロフィル等のテトラピロール化合物の蓄積、排出機構と密接に関係しているということに考え至り、つまり、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性が相当低下しても、呼吸やその他酵素活性に必要なテトラピロール化合物の合成を行うことは可能と推論した。そしてこれに基づき研究を更にすすめたところ、テトラピロール化合物の蓄積、排出が低下した変異株群の中に、5-アミノレブリン酸合成能力が高く、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性が顕著に低下した微生物が存在することを見いだし、このような微生物を育種することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性が0.4〜1.6nmol/min/mgタンパクであることを特徴とする5-アミノレブリン酸生産微生物を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の5-アミノレブリン酸生産微生物の作出及び5-アミノレブリン酸の製造方法の詳細を説明する。
【0013】
本発明の5-アミノレブリン酸生産微生物は、例えば、ロドバクテリウム(Rhodobacterium)属、ロドシュウドモナス(Rhodopseudomonas)属、その変異株等の微生物を親株として、これを変異処理後、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性が顕著に低下した株を選抜することにより得られる。
【0014】
まず、親株が増殖し得る液体培地を試験管に調製し、滅菌した後、親株を接種し、振とう培養する。そして増殖した菌体を緩衝液で洗浄後、変異操作を行う。
【0015】
この変異操作としては、通常の変異手段を用いることができる。例えば、紫外線、電離放射線等の物理的変異原を寒天培地上の親株に照射したり、エチルメタンスルホネート(EMS)、N-メチル-N′-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)、エチルニトロソ尿素(ENU)等のアルキル化剤、ブロモデオキシウリジン(BrdUrd)等の塩基アナログなどの化学的変異原を添加した緩衝液中で親株を培養する方法を用いることができる。
【0016】
上記のような変異手段によって処理した菌体を、更に緩衝液で洗浄し、寒天培地等に撒き、培養する。なお、この培養により生育した変異株の中から、上記の性質を示す菌株を選択するには、以下のような工程にて行う。
【0017】
得られた変異株群のなかから、バクテリオクロロフィル、ポルフィリン等のテトラピロール化合物の合成を示す緑や赤褐色の色素合成の弱い株を選抜する。この選抜は視覚的に行うことができ、また菌懸濁液を調製して分光光度計を用いることによってもよい。またこのとき、1〜5mMの5-アミノレブリン酸を培地中に添加しておけば、色素形成能力の強弱を区別しやすい。
【0018】
上記のように選抜した菌株を試験管等で培養し、菌体増殖後グリシンを添加する。グリシン添加後、培養液中の5-アミノレブリン酸蓄積量を測定して、5-アミノレブリン酸の生産性の高い株を選抜すればよい。この場合、より多くの微生物を評価するために、培養器としてマイクロタイタープレート等を用いることができる。ここで、選抜されるべき微生物の5-アミノレブリン酸の生産性の高さとしては、0.1mM以上、特に1mM以上であることが好ましい。
【0019】
以上のような工程で選ばれた菌株は、後述の実施例に示したごとく5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性が顕著に低下した微生物であり、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤を添加しなくとも菌体外に著量の5-アミノレブリン酸を蓄積し得る。また、0.1〜0.5mMと非常にわずかな5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤の添加を行うことにより生産性を更に向上させることもできる。なお、この低下した5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性は、微生物の呼吸やその他酵素活性に必要なテトラピロール化合物の合成を行える程度に残存していることが必要であり、この意味において、0.4nmol/min/mgタンパク以上の活性を有している必要がある。
【0020】
このような変異株を得るために用いる親株としては、例えば、紅色非硫黄細菌の野生株あるいはその変異株を用いることができるが、ロドバクター・セファロイデスCR-386株(FERM P-13159)、同CR-450株(FERM P-14085)、CR-520株(FERM P-14672)等のように、セファロイデノン等の赤色のカロチノイド合成能が低下した株を用いるようにすれば、前述した視覚的な選抜が容易である。
【0021】
以上の変異・分離操作によって得られる好ましい菌株としてロドバクター・スフェロイデスCR-649-B株を挙げることができる。本菌株は実施例1に示したごとくロドバクター・スフェロイデスCR-520株(FERM P-14672)に対するNTG変異処理によって誘導されたものであり、親株とほぼ同じ菌学的性質を有し、工業技術院生命工学工業技術研究所に、生命研菌寄第15974号(FERM P-15974)として寄託されている。なお、このロドバクター・スフェロイデスCR-520株は、ロドバクター・スフェロイデスIFO12203株を起源菌株とし、IFO12203→CR-286(FERM P-12542)→CR-386(FERM P-13159)→CR-450(FERM P-14085)→CR-520(FERM P-14672)の経路で変異処理を経て得られたものである。すなわち、直接的には、ロドバクター・スフェロイデスCR-450株に対する阻害物質定数(Ki値)が減少したことを特徴に選抜された菌株である。
【0022】
ロドバクター・スフェロイデスCR-649-B株は、上記の通りロドバクター・スフェロイデスIFO12203株を起源として変異処理によって得られたものであるから、その菌学的性質の多くは、当該起源株と同様である。以下、ロドバクター・スフェロイデスCR-649-B株の菌学的性質について説明する。
【0023】
a.形態的特徴
細胞の大きさ・形 1×2〜3μmの桿菌。数個の細胞が長軸方向に連なる。
胞子の有無 なし
【0024】
b.寒天培地における生育状況
グルタメート・グルコース培地(表1)において、光沢があり白色から淡い黄褐色の円形のコロニーを形成する。
【0025】
c.生理学的性質
グラム染色性 −
硝酸塩の還元 +
オキシダーゼ +
グルコース発酵性 −
生育の範囲 pH5.0〜8.5,20〜40℃
亜テルル酸カリウムに対する耐性 +(10mg/l)
【0026】
d.化学分類的性質
DNAのG/C含量(mol%) 68
キノンタイプ Q-10
【0027】
e.その他生育条件など
光合成生育はグルタメート・グルコース培地(表1)において微弱。起源菌は代表的な光合成細菌であるが、CR-520株において光合成能が低下しており、本菌株においては更に低下している。
グルコースの資化性(好気的) +
酢酸ナトリウムの資化性(好気的) +
【0028】
以下、本発明の5-アミノレブリン酸生産微生物を用いた5-アミノレブリン酸の生産条件について、ロドバクター・スフェロイデスCR-649-B株を用いた場合を中心に説明する。5-アミノレブリン酸の生産条件については、通常の微生物培養条件を適用することができる。例えば、炭素源としてグルコース等の糖類、あるいは酢酸、リンゴ酸、コハク酸等の酸類を用いることができ、特に糖類が価格の面で有利である。また、窒素源として、グリシンを添加することが、5-アミノレブリン酸の生産を著しく向上させるため、望ましい。グリシンの添加量は、通常5〜100mMが効果的であり、特に10〜60mMが好ましい。補助成分として硫安、塩安等のアンモニア態窒素化合物、硝酸ナトリウム等の硝酸態窒素化合物等の無機窒素源、尿素、ポリペプトン、酵母エキス等の有機窒素化合物等を使用することができる。更に、無機塩類等の微量成分等を適宜添加することが望ましい。
【0029】
本発明の菌株は、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性が顕著に低下しているため、レブリン酸等の5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤を添加しなくとも5-アミノレブリン酸を菌体外に蓄積し得るが、わずかな量の阻害剤を添加すると5-アミノレブリン酸生産能の向上に効果的である。この場合、阻害剤はグリシンの添加とほぼ同時に少量添加することができ、その添加量は0.01〜10mM、特に0.1〜5mMの範囲が好ましい。培養条件としては、ロドバクター・スフェロイデスCR-649-B株が生育可能な条件はすべて用いることができるが、一般には、培養温度は10〜40℃、特に20〜35℃とするのが好ましく、培地のpHは4〜9、特に5〜8とすることが好ましい。
【0030】
5-アミノレブリン酸の生産は、微生物の増殖と同時に行うことができるが、独立しても行うことができる。この場合に使用する微生物は、増殖菌体、休止菌体のいずれでもよく、そのまま5-アミノレブリン酸の生産に使用できるが、遠心分離機等の装置により集菌し、培地やリン酸緩衝液等の適当な溶液に再懸濁させるなど、菌濃度を高くして用いることもできる。
【0031】
なお、微生物の培養時や5-アミノレブリン酸の生産時にpHが変化する場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ溶液や、塩酸、硫酸、燐酸等の酸でpHを調整することが望ましい。
【0032】
生産された5-アミノレブリン酸は、イオン交換法、クロマトグラフ法、抽出法等の情報によって必要に応じて分離・精製することができる。
【0033】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、これらは単に例示の目的で掲げるものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
実施例1
表1に示すグルタメート・グルコース培地(培地1)10mlを21mmφの試験管に分注して、121℃で15分間滅菌した後、放冷した。これにロドバクター・スフェロイデスCR-520株(FERM P-14672)の一白金耳を植菌後、30℃、暗所にて2日間振とう培養した。
【0035】
【表1】
【0036】
別の21mmφの試験管に培地1を10ml分注して、上記と同様にして滅菌した。これに、上記の培養液0.5mlを植え継ぎ、30℃の条件下暗所にて18時間振とう培養した。
この培養液を洗浄のため10,000rpmにて5分間遠心分離し、その上清を捨て、遠心分離前と同量のトリス・マレイン酸緩衝液(pH6.0)に懸濁させた。この洗浄操作を更に2度繰り返した。
この後、再び10,000rpmにて5分間遠心分離し、その上清を捨て、100μg/mlのNTGを含むトリス・マレイン酸(pH6.0)に懸濁させ、室温にて80分間静置培養した。
このようにして変異処理した菌を、上記と同様の方法で3回洗浄した後、滅菌した培地1を分注した試験管に植え継ぎ、暗所30℃にて2日間振とう培養した。培地1に寒天15g/lを添加し、121℃で15分間滅菌して調製した寒天プレートに、上記の培養液を希釈して塗布し、暗所にて30℃で4日間培養した。
これにより、約15000株のコロニーを得た。これらの変異株群を2mMの5-アミノレブリン酸を含むグルタメート・グルコース培地に爪楊枝を用いて植え継ぎ、生育してくるコロニーの色素形成を評価した。この結果、色素形成の弱い株約1,000株を得た。
【0037】
実施例2
滅菌済みの96穴マイクロプレートに1ウェル当たり0.2mlの滅菌済みの培地1を分注し、上記の約1,000株の変異株をそれぞれ植菌した。
これを、30℃、暗所にてマイクロプレートシェイカーを用いて振とう培養し、24時間後、各ウェルにグリシンが最終濃度それぞれ30mMとなるように添加した。更に24時間上記と同じ条件下で振とう培養し、各ウェルから培養液を採取しエイリッヒ反応により、553nmの吸光度が高い変異株6株を選抜した。
【0038】
実施例3
次に、500ml容振とうフラスコに200mlの培地1を調製した。これを121℃で15分間滅菌し、放冷した。
実施例2で得られたロドバクター・スフェロイデスCR-520株由来の各変異株を、10mlの培地1を分注して上記と同様にして滅菌した21mmφの試験管にて48時間、30℃にて振とう培養した。
この培養液を上記振とうフラスコに全量植菌し、48時間、30℃にて振とう培養した後、遠心分離により菌体を集めた。
集めた菌体をトリス−塩酸緩衝液(40mM,pH8.1)で洗浄後、同じ組成の緩衝液5mlに再懸濁し、常法により超音波破砕装置にて破砕し、10,000rpmで30分間遠心分離して得られた上清を、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ粗酵素液とした。
トリス−塩酸緩衝液(40mM,pH8.1)の1ml中に、塩化カリウム33mM及び塩化マグネシウム6.5mMを含み、更に上記の粗酵素液を蛋白量換算で1.0mg/mlとなるように加え、酵素反応液を調製した。これに5-アミノレブリン酸を6.5mMの濃度で含有するように加え、37℃でインキュベートした。60分後、5vol%トリクロロ酢酸を2ml加えて反応を停止させた。
これを3,500rpmで10分間遠心分離し、上清を1mlとり、エイリッヒの比色定量法によりポルフォビリノーゲンの生成量(a)を調べた。
更に、別の上清1mlをとり、SATTOの方法(J. Nutr. Sci. Vitaminol., 27, 439,(1981))により総ポルフィリン量(b)を調べた。
これらの量a及びbから、下記式によりポルフォビリノーゲン生成速度を求め、これを5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性とした。この結果を表2に示す。
【0039】
【数1】
【0040】
v:酵素活性(nmol/min/mgタンパク)
a:酵素反応液1mlに含まれるポルフォビリノーゲン(nmol)
b:酵素反応液1ml中に含まれるポルフィリン量
p:酵素反応液1ml中に含まれるタンパク量(=1mg)
t:反応時間(=60分)
【0041】
比較例1
用いる菌株をロドバクター・スフェロイデスIFO12203とした以外は、実施例3と同様の処理を行い、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性を求めた。この結果を表2に示す。
【0042】
比較例2
用いる菌株をロドバクター・スフェロイデスCR-520株とした以外は、実施例3と同様の処理を行い、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性を求めた。この結果を表2に示す。
【0043】
比較例3
用いる菌株を実施例1で色素形成の高い菌株ロドバクター・スフェロイデスCR-657株とする以外は、実施例3と同様の処理を行い、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性を求めた。この結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2から明らかなように、実施例3で得られた6株は、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性が顕著に減少していた。ここで得られた6株は、5-アミノレブリン酸合成能が高く、かつ色素形成の弱い株であり、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性が減少した菌株であるという意味において同一の形質を有している。実施例3において最も低い5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性を示したロドバクター・スフェロイデスCR-649-B株は、工業技術院生命工学工業技術研究所に生命研菌寄第15974号として寄託した。
【0046】
実施例4
2リットル容振とうフラスコに500mlの培地1を調製した。これを121℃で15分間滅菌し、冷却した。
実施例2で得られたCR-649-B株を、10mlの培地1を分注して上記と同様にして滅菌した21mmφの試験管にて48時間、30℃にて振とう培養した。
この培養液を上記振とうフラスコに全量植菌し、48時間、30℃にて振とう培養した後、遠心分離により菌体を集めた。
集めた菌体をあらかじめ滅菌しておいた培地1,150mlに湿菌体量約0.3g/10mlとなるように再懸濁し、これにグリシンを30mMとなるように加え、21mmφ試験管に10mlずつ分注した。それぞれレブリン酸添加濃度条件を変えて30℃にて振とう培養した。培養20時間後の培養液中の5-アミノレブリン酸を岡山らの方法(CLINICAL CHEMISTRY, Vol.36, No.8, p.1494, 1990)により定量した。この結果を表3に示す。
【0047】
比較例4
用いる菌株をロドバクター・スフェロイデスIFO12203株とし、加えるレブリン酸を表3に示す量とする以外は、実施例4と同様の処理を行い、培養20時間後の培養液中の5-アミノレブリン酸を定量した。この結果を表3に示す。
【0048】
比較例5
用いる菌株をロドバクター・スフェロイデスCR-520株とし、加えるレブリン酸を表3に示す量とする以外は、実施例4と同様の処理を行い、培養20時間後の培養液中の5-アミノレブリン酸を定量した。この結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3から明らかなように、本発明の微生物であるロドバクター・スフェロイデスCR-649-B株は、5-アミノレブリン酸の生産性に優れ、レブリン酸を添加しなくとも5-アミノレブリン酸を生産することができると共に、微量のレブリン酸を添加により生産性を更に向上することができる。
【0051】
【発明の効果】
本発明の微生物は、5-アミノレブリン酸デヒドラターゼ活性が非常に低下しているために、5-アミノレブリン酸の生産性に優れ、かつ生産のためにレブリン酸の添加を必要としない。また極めてわずかなレブリン酸の添加により、更に生産性を向上させることができる。
Claims (1)
- ロドバクター・スフェロイデス( Rhodobacter sphaeroides ) CR-649-B と命名され、 FERM P-15974 として寄託された5-アミノレブリン酸生産微生物。
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