JP3784956B2 - 排ガス浄化用素子および窒素酸化物の浄化方法 - Google Patents
排ガス浄化用素子および窒素酸化物の浄化方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3784956B2 JP3784956B2 JP06044798A JP6044798A JP3784956B2 JP 3784956 B2 JP3784956 B2 JP 3784956B2 JP 06044798 A JP06044798 A JP 06044798A JP 6044798 A JP6044798 A JP 6044798A JP 3784956 B2 JP3784956 B2 JP 3784956B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- exhaust gas
- oxide
- solid electrolyte
- oxygen
- stabilized zirconia
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Treating Waste Gases (AREA)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は排ガス浄化用素子および酸素を含む燃焼排ガスから大気汚染物質である窒素酸化物を効率的に除去する窒素酸化物の浄化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
環境保全の観点から、大気汚染物質の浄化は大きな社会的な課題である。とりわけ産業活動の拡大に伴う燃焼排ガスの浄化は現在緊急の課題である。
【0003】
固定発生源である工場や移動発生源である自動車から排出される燃焼排ガス中に含まれる窒素酸化物は、光化学スモッグの原因といわれ、また人体に有害なガスである。特に一酸化窒素(NO)は浄化が難しく、最も重要な検討課題となっている。これまでにも燃焼排ガス中の窒素酸化物を浄化するいくつかの方法が提案されている。例えば、アンモニア等の還元剤を用いて触媒上で窒素酸化物を窒素と水にして分解する方法である。しかしながら、この方法は還元剤を用いるためコストが高く、また還元剤の保管に関する安全性や未反応還元剤の回収漏れの対策が必要である。このようなことからこの方法は規模が大きな固定発生源については有効であるが、自動車のような移動発生源については適さない。これまで理論空然比付近で運転されるガソリンエンジンの排ガス浄化には貴金属系成分を活性成分とする三元触媒が一般に使用されている。しかしながら、これら触媒は過剰な酸素共存下では窒素酸化物を浄化できないのでディーゼルエンジンや希薄燃焼方式のガソリンエンジンの排ガス処理には用いることが出来ない。最近、炭化水素を還元剤として用いて新たな触媒で除去する方法が提案されているが、炭化水素を供給する設備が必要なこと、炭化水素の窒素酸化物接触還元による分解効果が低いことおよび触媒の耐久性が十分でないことなどの多くの問題を抱えている。このため新しい除去方法の開発が望まれている。
【0004】
一方、還元剤を用いずに窒素酸化物を直接に窒素と酸素に分解する方法は排ガスを触媒と接触させるだけで済み、理想的な方法である。しかし、これまで提案されている触媒では窒素酸化物の分解により生成した酸素が触媒表面から脱離しないため、触媒活性が失活していた。近年、酸素イオン導電性を有する固体電解質からなる素子を用いて窒素酸化物を電気化学的に分解除去する方法が、Journal of Electrochemical Society, 122, 896,(1975)に開示されている。酸化スカンジウム安定化ジルコニアの両側に多孔質のPt電極を被覆し、その一方側に酸素を含まない窒素酸化物を含有するガスを供給するとともに、この電極がカソード極になるように両電極に直流電圧を印加する。これにより電極上で窒素酸化物を窒素と酸素に分解し、生成した酸素をイオン化し、これを印加電圧を駆動力としてこの電極上から固体電解質を通して対極であるアノード極に移動させ、反応系から排除する(この際、酸素イオンが固体電解質中を流れることにより、素子内に電流が流れ、電気エネルギーが消費される)。この結果、窒素酸化物の分解を促進させることが出来ることを開示している。しかしながら、この開示された方法では、燃焼排ガスのように過剰の酸素が含まれている場合、窒素酸化物の分解反応は進行せず、過剰に共存している酸素のみがイオン化し、固体電解質中を流れてしまう問題があった。
【0005】
最近、Chemistry Letters p927(1994)に700℃で固体電解質の両側に多孔質のPd電極を形成させた素子を用い、メタンと酸素の存在下で窒素酸化物の分解除去が出来ることが開示された。メタンを共存させることにより窒素酸化物の分解を促進させようとする試みである。しかしながら、この方法では窒素酸化物を分解除去するには電流密度500mA/cm2以上の大きな電流を通電する必要があった。即ち、上記素子では窒素酸化物の分解除去がメタン、酸素存在下で可能であることを示したが、排ガス中に存在している酸素が同時に大量に固体電解質中をイオン化して流れるため、窒素酸化物を分解するには多量の電流を流す必要があった。つまり、素子中を流れる電流量に対する窒素酸化物の分解除去効率は極めて低いものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
かかる現状に対し、酸素過剰存在下でも効率よく窒素酸化物を分解できる装置の開発が望まれている。即ち、本発明の目的は酸素共存下で窒素酸化物分解反応を進行させ、分解生成した酸素をイオン化して固体電解質中を通過させるとともに、共存する酸素がイオン化して固体電解質中を通過することを抑制することで、少ない電流量で効率よく除去できる排ガス浄化用素子および窒素酸化物の浄化方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するためのものであり、本発明者らは酸素イオン導電性を有する固体電解質のカソード側にルテニウム酸化物及びタングステン酸化物と、銀、パラジウム、金、白金のうち少なくともいずれか1つの成分を担持させ、あるいは、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物及び銀を含む混合成分を担持させ、アノード側に銀、パラジウム、金、白金のうち少なくともいずれか1つの成分を担持させてなる排ガス浄化用素子に酸素と窒素酸化物を含む燃焼排ガスをカソード側に流し、電圧を印加することにより窒素酸化物を少ない電流量で効率よく除去出来ることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、酸素イオン導電性を有する固体電解質のカソード側に
(1)ルテニウム酸化物とタングステン酸化物をW/(Ru+W)の原子比で表して0を越えて、30%以下の割合で含む酸化物成分と
(2)銀、パラジウム、金、白金から選ばれた少なくとも1つの成分
を担持し、
酸素イオン導電性を有する固体電解質のアノード側に銀、パラジウム、金、白金から選ばれた少なくとも1つの成分を担持してなる排ガス浄化用素子、あるいは、
酸素イオン導電性を有する固体電解質のカソード側にルテニウム酸化物、タングステン酸化物及び銀を含む混合成分を担持し、酸素イオン導電性を有する固体電解質のアノード側に銀、パラジウム、金、白金から選ばれた少なくとも1つの成分を担持してなる排ガス浄化用素子に関するものであり、また、該排ガス浄化用素子に電圧を印加した状態で、カソード側に窒素酸化物を含むガスを流通させることを特徴とする窒素酸化物の浄化方法に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる酸素イオン導電性固体電解質は酸素イオン導電性を有する物質であればいずれでも用いることが出来る。酸素イオン導電性を有する固体電解質の例としては安定化ジルコニア、安定化酸化ビスマス、安定化セリアを挙げることができる。これらのうち高い導電性と成形体強度を有することが特に好ましく、安定化ジルコニアが好ましく用いられる。安定化ジルコニアの例としてはイットリア安定化ジルコニア、カルシア安定化ジルコニア、マグネシア安定化ジルコニア、サマリア安定化ジルコニア、酸化スカンジウム安定化ジルコニア等がある。これらいずれの安定化ジルコニアも本発明に利用できる。酸素イオン導電性の良い安定化ジルコニアの組成としては、一般に次のような組成のものが知られている。
(a)Y2O3安定化ZrO2(Y2O3濃度 3〜15モル%)
(b)CaO安定化ZrO2(CaO濃度 5〜10モル%)
(c)MgO安定化ZrO2(MgO濃度 5〜10モル%)
(d)Sm2O3安定化ZrO2(Sm2O3濃度 5〜35モル%)
(e)Sc203安定化ZrO2(Sc2O3濃度 5〜20モル%)
これら固体電解質のうち、特に、イットリア安定化ジルコニアが酸素イオン電導性および成形性の点から好ましい
【0010】
固体電解質の形状は特に限定されないが、通常、板状、管状あるいはハニカム状に成形されて用いられるが、特に、カソード電極、アノード電極の形成のし易さおよび排ガス浄化用素子としての使い良さの点から中空の管状が好ましい。固体電解質の厚みは薄い程、酸素イオン電導性が高くなり好ましいが、強度が弱くなるので1μmから5mm、好ましくは10μmから2mmである。
【0011】
カソード側に用いるルテニウム酸化物、タングステン酸化物を固体電解質に担持する方法としては、それらの前駆体である塩を水溶液にして固体電解質に塗布し、焼成することにより酸化物とする方法、これら酸化物を含むペーストを用いて塗布し、焼成する方法、これら酸化物をレーザー蒸着あるいはイオン注入させる方法等が例として挙げられるが、特にこれら酸化物を含むペーストを用いて塗布する方法が好ましい。焼成温度は担持する酸化物により最適温度が存在するので500から1400℃の適宜の温度を用いる。
【0012】
カソード側の酸化物成分としては、タングステン酸化物とルテニウム酸化物を同時に含むものが、NO分解率がより高まるため好ましく用いられる。両者の割合は、ルテニウム酸化物とタングステン酸化物をW/(Ru+W)の原子比で表して0を越えて、30%以下の割合で含むのが好ましい。タングステン酸化物が多すぎると分解率が下がる場合があり、タングステン酸化物の量は上記範囲内で用いるのが好ましい。
【0013】
カソード側に銀、パラジウム、金、白金を固体電解質に担持する方法としては、それらを含むペーストを用いて塗布し、焼成して担持する方法、無電解メッキ法などのメッキ法、レーザー蒸着法、イオン注入法が例示されるが、特にペーストを用いて担持する方法が好ましい。焼成温度は担持する成分により最適温度が存在するので500から1400℃の適宜の温度を用いる。また、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物の酸化物と銀、パラジウム、金、白金を混合してカソード側に塗布する場合には混合ペーストを用いる方法が均一に混合されるので好ましい。
【0014】
アノード側への銀、パラジウム、金、白金の担持はカソード側と同様の方法で行えばよい。
【0015】
このようにして作製された排ガス浄化用素子はカソード側とアノード側に電圧を印加できるように電源に接続し、カソード側に酸素と窒素酸化物を含む排ガスを流通させ、電圧印加により窒素酸化物を窒素と酸素に分解し、生成した酸素を電源より印加した電圧を駆動力にし、酸素イオンとしてカソード側から固体電解質を通してアノード側に移動させ、アノード側から酸素分子として気相へ排出させるものである。これにより、窒素酸化物の分解を促進しようとするものである。印加する電圧の範囲は0.05Vから50Vであり、好ましくは0.5Vから10Vである。印加する電圧は使用する固体電解質の厚さと関係し、固体電解質の厚さが薄くなれば、低電圧で酸素イオンを駆動できることは言うまでもない。印加電圧が低すぎると酸素イオンの移動が遅すぎ、窒素酸化物の分解速度が十分進行しない。一方、印加電圧が高くなると気相からの酸素の拡散が追いつかず、代わりに固体電解質自身の酸素が移動するため、最後には固体電解質が破壊される。 反応温度の範囲は200から1200℃で、好ましくは250から800℃である。200℃より低温では窒素酸化物の分解反応の速度が遅く、しかも固体電解質中の酸素イオン移動速度も小さいため、十分な窒素酸化物の分解除去は行えない。一方、1200℃を超えるとN2+O2→2NOの反応が起こり易くなり、カソード側で生成したN2が再びO2と反応して窒素酸化物に戻ってしまう。
【0016】
【実施例】
以下、実施例に従って説明するが、実施例によって本発明を制約するものではない。
実施例1
8モル%イットリア安定化ジルコニアを中空の管状に成形し、1700℃で2時間焼結し、外径3.7mm、内径2.5mmφの安定化ジルコニア管を作製した。安定化ジルコニア管の内側にパラジウムペースト(大研化学(株)製)をテレビン油で適度な粘度になるように希釈し塗布し、1350℃で2時間焼成しアノード電極とした。次にアノード電極と対極するように安定化ジルコニア管の外側の中央部の外周25mmの長さにパラジウムペースト希釈液を均一に塗り、1350℃で2時間焼成し、カソード電極を形成した。このカソード電極上にルテニウム酸化物ペースト(大研化学(株))をテレビン油で適度な粘度になるように希釈して塗り、次いで780℃で2時間焼成した(電極面積3cm2)。カソード電極、アノード電極に白金線を各々リード線として固定し排ガス浄化用素子を作製した。この素子のカソード側にNO 1000ppm、O2 6%、Heバランスのモデル排ガス50ml/min.を流し、アノード側にはHe 50ml/min.を流した。カソード電極とアノード電極の間に2.5Vの直流電圧を印加し、反応温度700℃での窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果を表1に示す。
【0017】
実施例2
実施例1のアノード側のパラジウムペーストの代わりに金ペースト(大研化学(株))を用いてアノード電極を作製し、以下同様にして排ガス浄化用素子を作製した。実施例1と同じ条件で、窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果を表1に示す。
【0018】
実施例3
実施例1のアノード側のパラジウムペーストの代わりに白金ペースト(大研化学(株))を用いてアノード電極を作製し、以下同様にして排ガス浄化用素子を作製した。実施例1と同じ条件で、窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果を表1に示す。
【0019】
実施例4
実施例1に従って作製した安定化ジルコニア管の内側にパラジウムペースト希釈液を塗布し、1350℃で2時間焼成しアノード電極とした。次にアノード電極と対極するように安定化ジルコニア管の外側の中央部の外周25mmの長さにパラジウムペースト希釈液を均一に塗り、1350℃で焼成し、カソード電極を形成した。ルテニウム酸化物ペーストにタングステン酸ペーストを原子比(W/(Ru+W))で1.26%添加した混合ペーストをテレビン油で適度の粘度になるように希釈し、パラジウムカソード電極上に塗布し、780℃で2時間焼成した(電極面積3cm2)。カソード電極、アノード電極に白金線を各々リード線として固定し排ガス浄化用素子を作製した。実施例1と同じ反応条件で、窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果を表1に示す。
【0020】
実施例5
ルテニウム酸化物ペーストにタングステン酸ペーストを原子比(W/(Ru+W))で1.88%添加した混合ペーストを用いた以外実施例4と同様にして行った結果を表1に示す。
【0021】
実施例6
ルテニウム酸化物ペーストにタングステン酸ペーストを原子比(W/(Ru+W))で27.7%添加した混合ペーストを用いた以外実施例4と同様にして行った結果を表1に示す。
【0022】
比較例1
実施例1に従って作製した安定化ジルコニア管の内側にパラジウムペースト希釈液を塗布し、1350℃で2時間焼成しアノード電極とした。次にアノード電極と対極するように安定化ジルコニア管の外側の中央部の外周25mmの長さにパラジウムペースト希釈液を均一に塗り、1350℃で2時間焼成し、カソード電極(電極面積3cm2)を形成した。実施例1と同じ反応条件で、窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果を表1に示す。
【0023】
比較例2
比較例1と同じ素子を用いた。カソード側にNO 1000ppm、O2 6%、Heバランスのモデル排ガス50ml/min.を流し、アノード側にはHe 50ml/min.を流した。カソード電極とアノード電極の間に3.0Vの直流電圧を印加し、反応温度700℃での窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例1〜6および比較例1、2の結果から、本発明に基づく排ガス浄化用素子はNO分解率が高く、O2分解率が抑制され且つNO分解率に対する電流密度も小さいことがわかる。
【0026】
参考実施例7
実施例1に従って作製した安定化ジルコニア管の内側に銀ペースト(大研化学(株))をテレビン油で適当な粘度になるように希釈した後、塗布し780℃、2時間焼成しアノード電極を作製した。次にアノード電極と対極するように安定化ジルコニア管の外側の中央部の外周25mmの長さにテレビン油で適度な粘度に希釈した銀ペーストを塗布し、120℃で2時間乾燥させた。ルテニウム酸化物ペーストにモリブデン酸化物ペースト(大研化学(株))を原子比で10%添加し混合ペーストをとし、テレビン油で希釈した。カソード側に塗布した銀ペーストの上に、この混合ペーストを塗布し、ついで780℃で2時間焼成した(電極面積3cm2)。カソード電極、アノード電極に白金線を各々リード線として固定し排ガス浄化用素子を作製した。この素子のカソード側にNO 1000ppm、O2 6%、Heバランスのモデル排ガス50ml/min.を流し、アノード側にはHe 50ml/min.を流した。カソード電極とアノード電極の間に直流電圧3.0Vを印加し、反応温度550℃での窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果、NO分解率14.1%、O2分解率6.3%、電流密度30.6mA/cm2であった。この素子は反応温度550℃でもNO分解活性を示すことがわかる。
【0027】
実施例8
実施例1に従って作製した安定化ジルコニア管の内側に希釈した銀ペーストを塗布し、780℃、2時間焼成しアノード電極を作製した。次にアノード電極と対極するように安定化ジルコニア管の外側の中央部の外周25mmの長さに希釈したルテニウム酸化物ペーストを塗布し、120℃で2時間乾燥後、希釈した銀ペーストを塗布し、次いで780℃で2時間焼成しカソード電極を作製した(電極面積3cm2)。カソード電極、アノード電極に白金線を各々リード線として固定し排ガス浄化用素子を作製した。このようにして作製した排ガス浄化用素子のカソード側にNO 1000ppm、O2 6%、Heバランスのモデル排ガス50ml/min.を流し、アノード側にはHe 50ml/min.を流した。カソード電極とアノード電極の間に1.5Vの直流電圧を印加し、反応温度550℃での窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率の経時的変化を調べた結果を図1に示す。この結果から、NO分解率が高く、O2分解率は小さいことがわかる。NO分解活性の経時的な劣化も小さいことがわかる。
【0028】
実施例9
実施例1に従って作製した安定化ジルコニア管の内側に希釈したパラジウムペースト塗布し、1350℃で2時間焼成しアノード電極を作製した。次にアノード電極と対極するように安定化ジルコニア管の外側の中央部の外周25mmの長さに銀とルテニウム酸化物を重量比で1:1の割合で含む混合ペースト(大研化学(株))をテレビン油で希釈して塗布し、780℃で2時間焼成しカソード電極を作製した(電極面積3cm2)。カソード電極、アノード電極に白金線を各々リード線として固定し排ガス浄化用素子を作製した。この素子のカソード側にNO 1000ppm、O2 6%、Heバランスのモデル排ガス50ml/min.を流し、アノード側にはHe 50ml/min.を流した。カソード電極とアノード電極の間に3.4Vの直流電圧を印加し、反応温度500℃での窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果、NO分解率40.7%、O2分解率6.0%、電流密度17.1mA/cm2であった。この素子は反応温度500℃でもNO分解活性を示すことがわかる。
【0029】
実施例10
カソード電極として銀、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物を重量比で1:1:0.0072含む混合ペースト(W/(Ru+W)原子比で1.26%)を用いた以外実施例9と同様にして排ガス浄化用素子を作製した。この素子のカソード側にNO 1000ppm、O2 6%、Heバランスのモデル排ガス50ml/min.を流し、アノード側にはHe 50ml/min.を流した。カソード電極とアノード電極の間に3.0Vの直流電圧を印加し、反応温度500℃での窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果、NO分解率60.8%、O2分解率3.8%、電流密度11.1mA/cm2であった。電流密が極めて小さくても、
高いNO分解率を示すことがわかる。
【0030】
【発明の効果】
本発明の素子を用いれば過剰の酸素を含む燃排ガスから窒素酸化物を効率よく除去できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例8の排ガス浄化用素子による窒素酸化物(NO)分解率と酸素(O2)分解率およびそれら分解率の経時的変化を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は排ガス浄化用素子および酸素を含む燃焼排ガスから大気汚染物質である窒素酸化物を効率的に除去する窒素酸化物の浄化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
環境保全の観点から、大気汚染物質の浄化は大きな社会的な課題である。とりわけ産業活動の拡大に伴う燃焼排ガスの浄化は現在緊急の課題である。
【0003】
固定発生源である工場や移動発生源である自動車から排出される燃焼排ガス中に含まれる窒素酸化物は、光化学スモッグの原因といわれ、また人体に有害なガスである。特に一酸化窒素(NO)は浄化が難しく、最も重要な検討課題となっている。これまでにも燃焼排ガス中の窒素酸化物を浄化するいくつかの方法が提案されている。例えば、アンモニア等の還元剤を用いて触媒上で窒素酸化物を窒素と水にして分解する方法である。しかしながら、この方法は還元剤を用いるためコストが高く、また還元剤の保管に関する安全性や未反応還元剤の回収漏れの対策が必要である。このようなことからこの方法は規模が大きな固定発生源については有効であるが、自動車のような移動発生源については適さない。これまで理論空然比付近で運転されるガソリンエンジンの排ガス浄化には貴金属系成分を活性成分とする三元触媒が一般に使用されている。しかしながら、これら触媒は過剰な酸素共存下では窒素酸化物を浄化できないのでディーゼルエンジンや希薄燃焼方式のガソリンエンジンの排ガス処理には用いることが出来ない。最近、炭化水素を還元剤として用いて新たな触媒で除去する方法が提案されているが、炭化水素を供給する設備が必要なこと、炭化水素の窒素酸化物接触還元による分解効果が低いことおよび触媒の耐久性が十分でないことなどの多くの問題を抱えている。このため新しい除去方法の開発が望まれている。
【0004】
一方、還元剤を用いずに窒素酸化物を直接に窒素と酸素に分解する方法は排ガスを触媒と接触させるだけで済み、理想的な方法である。しかし、これまで提案されている触媒では窒素酸化物の分解により生成した酸素が触媒表面から脱離しないため、触媒活性が失活していた。近年、酸素イオン導電性を有する固体電解質からなる素子を用いて窒素酸化物を電気化学的に分解除去する方法が、Journal of Electrochemical Society, 122, 896,(1975)に開示されている。酸化スカンジウム安定化ジルコニアの両側に多孔質のPt電極を被覆し、その一方側に酸素を含まない窒素酸化物を含有するガスを供給するとともに、この電極がカソード極になるように両電極に直流電圧を印加する。これにより電極上で窒素酸化物を窒素と酸素に分解し、生成した酸素をイオン化し、これを印加電圧を駆動力としてこの電極上から固体電解質を通して対極であるアノード極に移動させ、反応系から排除する(この際、酸素イオンが固体電解質中を流れることにより、素子内に電流が流れ、電気エネルギーが消費される)。この結果、窒素酸化物の分解を促進させることが出来ることを開示している。しかしながら、この開示された方法では、燃焼排ガスのように過剰の酸素が含まれている場合、窒素酸化物の分解反応は進行せず、過剰に共存している酸素のみがイオン化し、固体電解質中を流れてしまう問題があった。
【0005】
最近、Chemistry Letters p927(1994)に700℃で固体電解質の両側に多孔質のPd電極を形成させた素子を用い、メタンと酸素の存在下で窒素酸化物の分解除去が出来ることが開示された。メタンを共存させることにより窒素酸化物の分解を促進させようとする試みである。しかしながら、この方法では窒素酸化物を分解除去するには電流密度500mA/cm2以上の大きな電流を通電する必要があった。即ち、上記素子では窒素酸化物の分解除去がメタン、酸素存在下で可能であることを示したが、排ガス中に存在している酸素が同時に大量に固体電解質中をイオン化して流れるため、窒素酸化物を分解するには多量の電流を流す必要があった。つまり、素子中を流れる電流量に対する窒素酸化物の分解除去効率は極めて低いものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
かかる現状に対し、酸素過剰存在下でも効率よく窒素酸化物を分解できる装置の開発が望まれている。即ち、本発明の目的は酸素共存下で窒素酸化物分解反応を進行させ、分解生成した酸素をイオン化して固体電解質中を通過させるとともに、共存する酸素がイオン化して固体電解質中を通過することを抑制することで、少ない電流量で効率よく除去できる排ガス浄化用素子および窒素酸化物の浄化方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するためのものであり、本発明者らは酸素イオン導電性を有する固体電解質のカソード側にルテニウム酸化物及びタングステン酸化物と、銀、パラジウム、金、白金のうち少なくともいずれか1つの成分を担持させ、あるいは、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物及び銀を含む混合成分を担持させ、アノード側に銀、パラジウム、金、白金のうち少なくともいずれか1つの成分を担持させてなる排ガス浄化用素子に酸素と窒素酸化物を含む燃焼排ガスをカソード側に流し、電圧を印加することにより窒素酸化物を少ない電流量で効率よく除去出来ることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、酸素イオン導電性を有する固体電解質のカソード側に
(1)ルテニウム酸化物とタングステン酸化物をW/(Ru+W)の原子比で表して0を越えて、30%以下の割合で含む酸化物成分と
(2)銀、パラジウム、金、白金から選ばれた少なくとも1つの成分
を担持し、
酸素イオン導電性を有する固体電解質のアノード側に銀、パラジウム、金、白金から選ばれた少なくとも1つの成分を担持してなる排ガス浄化用素子、あるいは、
酸素イオン導電性を有する固体電解質のカソード側にルテニウム酸化物、タングステン酸化物及び銀を含む混合成分を担持し、酸素イオン導電性を有する固体電解質のアノード側に銀、パラジウム、金、白金から選ばれた少なくとも1つの成分を担持してなる排ガス浄化用素子に関するものであり、また、該排ガス浄化用素子に電圧を印加した状態で、カソード側に窒素酸化物を含むガスを流通させることを特徴とする窒素酸化物の浄化方法に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる酸素イオン導電性固体電解質は酸素イオン導電性を有する物質であればいずれでも用いることが出来る。酸素イオン導電性を有する固体電解質の例としては安定化ジルコニア、安定化酸化ビスマス、安定化セリアを挙げることができる。これらのうち高い導電性と成形体強度を有することが特に好ましく、安定化ジルコニアが好ましく用いられる。安定化ジルコニアの例としてはイットリア安定化ジルコニア、カルシア安定化ジルコニア、マグネシア安定化ジルコニア、サマリア安定化ジルコニア、酸化スカンジウム安定化ジルコニア等がある。これらいずれの安定化ジルコニアも本発明に利用できる。酸素イオン導電性の良い安定化ジルコニアの組成としては、一般に次のような組成のものが知られている。
(a)Y2O3安定化ZrO2(Y2O3濃度 3〜15モル%)
(b)CaO安定化ZrO2(CaO濃度 5〜10モル%)
(c)MgO安定化ZrO2(MgO濃度 5〜10モル%)
(d)Sm2O3安定化ZrO2(Sm2O3濃度 5〜35モル%)
(e)Sc203安定化ZrO2(Sc2O3濃度 5〜20モル%)
これら固体電解質のうち、特に、イットリア安定化ジルコニアが酸素イオン電導性および成形性の点から好ましい
【0010】
固体電解質の形状は特に限定されないが、通常、板状、管状あるいはハニカム状に成形されて用いられるが、特に、カソード電極、アノード電極の形成のし易さおよび排ガス浄化用素子としての使い良さの点から中空の管状が好ましい。固体電解質の厚みは薄い程、酸素イオン電導性が高くなり好ましいが、強度が弱くなるので1μmから5mm、好ましくは10μmから2mmである。
【0011】
カソード側に用いるルテニウム酸化物、タングステン酸化物を固体電解質に担持する方法としては、それらの前駆体である塩を水溶液にして固体電解質に塗布し、焼成することにより酸化物とする方法、これら酸化物を含むペーストを用いて塗布し、焼成する方法、これら酸化物をレーザー蒸着あるいはイオン注入させる方法等が例として挙げられるが、特にこれら酸化物を含むペーストを用いて塗布する方法が好ましい。焼成温度は担持する酸化物により最適温度が存在するので500から1400℃の適宜の温度を用いる。
【0012】
カソード側の酸化物成分としては、タングステン酸化物とルテニウム酸化物を同時に含むものが、NO分解率がより高まるため好ましく用いられる。両者の割合は、ルテニウム酸化物とタングステン酸化物をW/(Ru+W)の原子比で表して0を越えて、30%以下の割合で含むのが好ましい。タングステン酸化物が多すぎると分解率が下がる場合があり、タングステン酸化物の量は上記範囲内で用いるのが好ましい。
【0013】
カソード側に銀、パラジウム、金、白金を固体電解質に担持する方法としては、それらを含むペーストを用いて塗布し、焼成して担持する方法、無電解メッキ法などのメッキ法、レーザー蒸着法、イオン注入法が例示されるが、特にペーストを用いて担持する方法が好ましい。焼成温度は担持する成分により最適温度が存在するので500から1400℃の適宜の温度を用いる。また、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物の酸化物と銀、パラジウム、金、白金を混合してカソード側に塗布する場合には混合ペーストを用いる方法が均一に混合されるので好ましい。
【0014】
アノード側への銀、パラジウム、金、白金の担持はカソード側と同様の方法で行えばよい。
【0015】
このようにして作製された排ガス浄化用素子はカソード側とアノード側に電圧を印加できるように電源に接続し、カソード側に酸素と窒素酸化物を含む排ガスを流通させ、電圧印加により窒素酸化物を窒素と酸素に分解し、生成した酸素を電源より印加した電圧を駆動力にし、酸素イオンとしてカソード側から固体電解質を通してアノード側に移動させ、アノード側から酸素分子として気相へ排出させるものである。これにより、窒素酸化物の分解を促進しようとするものである。印加する電圧の範囲は0.05Vから50Vであり、好ましくは0.5Vから10Vである。印加する電圧は使用する固体電解質の厚さと関係し、固体電解質の厚さが薄くなれば、低電圧で酸素イオンを駆動できることは言うまでもない。印加電圧が低すぎると酸素イオンの移動が遅すぎ、窒素酸化物の分解速度が十分進行しない。一方、印加電圧が高くなると気相からの酸素の拡散が追いつかず、代わりに固体電解質自身の酸素が移動するため、最後には固体電解質が破壊される。 反応温度の範囲は200から1200℃で、好ましくは250から800℃である。200℃より低温では窒素酸化物の分解反応の速度が遅く、しかも固体電解質中の酸素イオン移動速度も小さいため、十分な窒素酸化物の分解除去は行えない。一方、1200℃を超えるとN2+O2→2NOの反応が起こり易くなり、カソード側で生成したN2が再びO2と反応して窒素酸化物に戻ってしまう。
【0016】
【実施例】
以下、実施例に従って説明するが、実施例によって本発明を制約するものではない。
実施例1
8モル%イットリア安定化ジルコニアを中空の管状に成形し、1700℃で2時間焼結し、外径3.7mm、内径2.5mmφの安定化ジルコニア管を作製した。安定化ジルコニア管の内側にパラジウムペースト(大研化学(株)製)をテレビン油で適度な粘度になるように希釈し塗布し、1350℃で2時間焼成しアノード電極とした。次にアノード電極と対極するように安定化ジルコニア管の外側の中央部の外周25mmの長さにパラジウムペースト希釈液を均一に塗り、1350℃で2時間焼成し、カソード電極を形成した。このカソード電極上にルテニウム酸化物ペースト(大研化学(株))をテレビン油で適度な粘度になるように希釈して塗り、次いで780℃で2時間焼成した(電極面積3cm2)。カソード電極、アノード電極に白金線を各々リード線として固定し排ガス浄化用素子を作製した。この素子のカソード側にNO 1000ppm、O2 6%、Heバランスのモデル排ガス50ml/min.を流し、アノード側にはHe 50ml/min.を流した。カソード電極とアノード電極の間に2.5Vの直流電圧を印加し、反応温度700℃での窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果を表1に示す。
【0017】
実施例2
実施例1のアノード側のパラジウムペーストの代わりに金ペースト(大研化学(株))を用いてアノード電極を作製し、以下同様にして排ガス浄化用素子を作製した。実施例1と同じ条件で、窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果を表1に示す。
【0018】
実施例3
実施例1のアノード側のパラジウムペーストの代わりに白金ペースト(大研化学(株))を用いてアノード電極を作製し、以下同様にして排ガス浄化用素子を作製した。実施例1と同じ条件で、窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果を表1に示す。
【0019】
実施例4
実施例1に従って作製した安定化ジルコニア管の内側にパラジウムペースト希釈液を塗布し、1350℃で2時間焼成しアノード電極とした。次にアノード電極と対極するように安定化ジルコニア管の外側の中央部の外周25mmの長さにパラジウムペースト希釈液を均一に塗り、1350℃で焼成し、カソード電極を形成した。ルテニウム酸化物ペーストにタングステン酸ペーストを原子比(W/(Ru+W))で1.26%添加した混合ペーストをテレビン油で適度の粘度になるように希釈し、パラジウムカソード電極上に塗布し、780℃で2時間焼成した(電極面積3cm2)。カソード電極、アノード電極に白金線を各々リード線として固定し排ガス浄化用素子を作製した。実施例1と同じ反応条件で、窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果を表1に示す。
【0020】
実施例5
ルテニウム酸化物ペーストにタングステン酸ペーストを原子比(W/(Ru+W))で1.88%添加した混合ペーストを用いた以外実施例4と同様にして行った結果を表1に示す。
【0021】
実施例6
ルテニウム酸化物ペーストにタングステン酸ペーストを原子比(W/(Ru+W))で27.7%添加した混合ペーストを用いた以外実施例4と同様にして行った結果を表1に示す。
【0022】
比較例1
実施例1に従って作製した安定化ジルコニア管の内側にパラジウムペースト希釈液を塗布し、1350℃で2時間焼成しアノード電極とした。次にアノード電極と対極するように安定化ジルコニア管の外側の中央部の外周25mmの長さにパラジウムペースト希釈液を均一に塗り、1350℃で2時間焼成し、カソード電極(電極面積3cm2)を形成した。実施例1と同じ反応条件で、窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果を表1に示す。
【0023】
比較例2
比較例1と同じ素子を用いた。カソード側にNO 1000ppm、O2 6%、Heバランスのモデル排ガス50ml/min.を流し、アノード側にはHe 50ml/min.を流した。カソード電極とアノード電極の間に3.0Vの直流電圧を印加し、反応温度700℃での窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例1〜6および比較例1、2の結果から、本発明に基づく排ガス浄化用素子はNO分解率が高く、O2分解率が抑制され且つNO分解率に対する電流密度も小さいことがわかる。
【0026】
参考実施例7
実施例1に従って作製した安定化ジルコニア管の内側に銀ペースト(大研化学(株))をテレビン油で適当な粘度になるように希釈した後、塗布し780℃、2時間焼成しアノード電極を作製した。次にアノード電極と対極するように安定化ジルコニア管の外側の中央部の外周25mmの長さにテレビン油で適度な粘度に希釈した銀ペーストを塗布し、120℃で2時間乾燥させた。ルテニウム酸化物ペーストにモリブデン酸化物ペースト(大研化学(株))を原子比で10%添加し混合ペーストをとし、テレビン油で希釈した。カソード側に塗布した銀ペーストの上に、この混合ペーストを塗布し、ついで780℃で2時間焼成した(電極面積3cm2)。カソード電極、アノード電極に白金線を各々リード線として固定し排ガス浄化用素子を作製した。この素子のカソード側にNO 1000ppm、O2 6%、Heバランスのモデル排ガス50ml/min.を流し、アノード側にはHe 50ml/min.を流した。カソード電極とアノード電極の間に直流電圧3.0Vを印加し、反応温度550℃での窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果、NO分解率14.1%、O2分解率6.3%、電流密度30.6mA/cm2であった。この素子は反応温度550℃でもNO分解活性を示すことがわかる。
【0027】
実施例8
実施例1に従って作製した安定化ジルコニア管の内側に希釈した銀ペーストを塗布し、780℃、2時間焼成しアノード電極を作製した。次にアノード電極と対極するように安定化ジルコニア管の外側の中央部の外周25mmの長さに希釈したルテニウム酸化物ペーストを塗布し、120℃で2時間乾燥後、希釈した銀ペーストを塗布し、次いで780℃で2時間焼成しカソード電極を作製した(電極面積3cm2)。カソード電極、アノード電極に白金線を各々リード線として固定し排ガス浄化用素子を作製した。このようにして作製した排ガス浄化用素子のカソード側にNO 1000ppm、O2 6%、Heバランスのモデル排ガス50ml/min.を流し、アノード側にはHe 50ml/min.を流した。カソード電極とアノード電極の間に1.5Vの直流電圧を印加し、反応温度550℃での窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率の経時的変化を調べた結果を図1に示す。この結果から、NO分解率が高く、O2分解率は小さいことがわかる。NO分解活性の経時的な劣化も小さいことがわかる。
【0028】
実施例9
実施例1に従って作製した安定化ジルコニア管の内側に希釈したパラジウムペースト塗布し、1350℃で2時間焼成しアノード電極を作製した。次にアノード電極と対極するように安定化ジルコニア管の外側の中央部の外周25mmの長さに銀とルテニウム酸化物を重量比で1:1の割合で含む混合ペースト(大研化学(株))をテレビン油で希釈して塗布し、780℃で2時間焼成しカソード電極を作製した(電極面積3cm2)。カソード電極、アノード電極に白金線を各々リード線として固定し排ガス浄化用素子を作製した。この素子のカソード側にNO 1000ppm、O2 6%、Heバランスのモデル排ガス50ml/min.を流し、アノード側にはHe 50ml/min.を流した。カソード電極とアノード電極の間に3.4Vの直流電圧を印加し、反応温度500℃での窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果、NO分解率40.7%、O2分解率6.0%、電流密度17.1mA/cm2であった。この素子は反応温度500℃でもNO分解活性を示すことがわかる。
【0029】
実施例10
カソード電極として銀、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物を重量比で1:1:0.0072含む混合ペースト(W/(Ru+W)原子比で1.26%)を用いた以外実施例9と同様にして排ガス浄化用素子を作製した。この素子のカソード側にNO 1000ppm、O2 6%、Heバランスのモデル排ガス50ml/min.を流し、アノード側にはHe 50ml/min.を流した。カソード電極とアノード電極の間に3.0Vの直流電圧を印加し、反応温度500℃での窒素酸化物(NO)分解率、酸素(O2)分解率、電流密度を調べた結果、NO分解率60.8%、O2分解率3.8%、電流密度11.1mA/cm2であった。電流密が極めて小さくても、
高いNO分解率を示すことがわかる。
【0030】
【発明の効果】
本発明の素子を用いれば過剰の酸素を含む燃排ガスから窒素酸化物を効率よく除去できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例8の排ガス浄化用素子による窒素酸化物(NO)分解率と酸素(O2)分解率およびそれら分解率の経時的変化を示す図である。
Claims (6)
- 酸素イオン導電性を有する固体電解質のカソード側に
(1)ルテニウム酸化物とタングステン酸化物をW/(Ru+W)の原子比で表して0を越えて、30%以下の割合で含む酸化物成分と
(2)銀、パラジウム、金、白金から選ばれた少なくとも1つの成分
を担持し、
酸素イオン導電性を有する固体電解質のアノード側に銀、パラジウム、金、白金から選ばれた少なくとも1つの成分を担持してなる排ガス浄化用素子。 - 酸素イオン導電性を有する固体電解質のカソード側にルテニウム酸化物、タングステン酸化物及び銀を含む混合成分を担持し、酸素イオン導電性を有する固体電解質のアノード側に銀、パラジウム、金、白金から選ばれた少なくとも1つの成分を担持してなる排ガス浄化用素子。
- 酸素イオン導電性を有する固体電解質が安定化ジルコニアであることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の排ガス浄化用素子。
- 安定化ジルコニアがイットリア安定化ジルコニアであることを特徴とする請求項3記載の排ガス浄化用素子。
- 酸素イオン導電性を有する固体電解質が中空の管状の形態であり、管の外側をカソードとし、管の内側をアノードとする請求項1〜4のいずれか1項記載の排ガス浄化用素子。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の排ガス浄化用素子に電圧を印加した状態で、カソード側に窒素酸化物を含むガスを流通させることを特徴とする窒素酸化物の浄化方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP06044798A JP3784956B2 (ja) | 1997-10-16 | 1998-02-25 | 排ガス浄化用素子および窒素酸化物の浄化方法 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9-299535 | 1997-10-16 | ||
JP29953597 | 1997-10-16 | ||
JP06044798A JP3784956B2 (ja) | 1997-10-16 | 1998-02-25 | 排ガス浄化用素子および窒素酸化物の浄化方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11179142A JPH11179142A (ja) | 1999-07-06 |
JP3784956B2 true JP3784956B2 (ja) | 2006-06-14 |
Family
ID=26401520
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP06044798A Expired - Fee Related JP3784956B2 (ja) | 1997-10-16 | 1998-02-25 | 排ガス浄化用素子および窒素酸化物の浄化方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3784956B2 (ja) |
-
1998
- 1998-02-25 JP JP06044798A patent/JP3784956B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11179142A (ja) | 1999-07-06 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
RU2009119358A (ru) | Безванадиевый катализатор для селективного каталитического восстановления и способ его приготовления | |
JP4217457B2 (ja) | 窒素酸化物分解素子およびこれを備えた窒素酸化物分解装置 | |
JPH0866621A (ja) | 窒素酸化物の除去方法 | |
EP1479430A1 (en) | An exhaust gas purifying apparatus and method of using the same | |
JP2003265926A (ja) | 窒素酸化物浄化用化学反応器及び窒素酸化物の浄化方法 | |
JP2003033646A (ja) | 化学反応器 | |
JP2003033648A (ja) | 化学反応器 | |
US20090241514A1 (en) | Catalytic converter for the treatment of combustion exhaust gases | |
JP3784956B2 (ja) | 排ガス浄化用素子および窒素酸化物の浄化方法 | |
JP2004188388A (ja) | ディーゼル排ガス浄化用フィルタおよびその製造方法 | |
JP2003047827A (ja) | 排ガス浄化用素子 | |
JP2000140566A (ja) | 気体浄化方法および気体浄化装置 | |
JPH09299749A (ja) | 排ガス浄化用素子、素子の製造方法および窒素酸化物の浄化方法 | |
JP6575924B2 (ja) | NOx浄化装置及びそれを用いたNOx浄化方法 | |
JP2006289214A (ja) | 排ガス浄化用素子 | |
JPH0999213A (ja) | 排ガス浄化用素子および窒素酸化物の浄化方法 | |
JP4201319B2 (ja) | 電気化学セル型化学反応システム | |
JP3285206B2 (ja) | 排ガス浄化用触媒およびその製造方法 | |
JP2004058029A (ja) | 省エネルギー型電気化学反応システム及びその活性化方法 | |
JP3243502B2 (ja) | 活性酸素の電気化学的生成とそれによるNOx選択還元反応の促進方法 | |
JPH0999212A (ja) | 排ガス浄化用素子、その製造方法および窒素酸化物の浄化方法 | |
JP2003181246A (ja) | 排気ガス浄化用リアクター | |
JPH09299748A (ja) | 排ガス浄化用素子、その製造方法および窒素酸化物の浄化方法 | |
JP4132893B2 (ja) | 化学反応器用電極材料 | |
JPH09299747A (ja) | 排ガス浄化用素子、その製造方法および窒素酸化物の浄化方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20051209 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060202 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20060228 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20060316 |
|
R150 | Certificate of patent (=grant) or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |