JP3784685B2 - 複合断熱ボード - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅の壁等に施工される断熱ボードに係り、特に木造住宅の外張り断熱工法や空気循環工法での使用に適した複合断熱ボードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、住宅の外張り断熱工法に用いる断熱材(ボード状の断熱材。以下「断熱ボード」と称する場合がある)として、型発泡成形による一発成形品が幾つか提供されている。具体的には、例えば、ビーズ法ポリスチレンフォームの成形品が提供されている。
図12に示すように、この断熱ボード1は成形によって片面に凹凸が形成されており(具体的には突部2部分と、突部2が形成されていない部分とによって形成)、図13に示すように、建物に建て込んで柱、間柱、土台、桁等に対して前記凹凸が形成されている表面3を当接させても(図13は断熱ボード1を壁に建て込んだ状態であり、柱4に対する当接状態を示す)、これら柱、間柱、土台、桁等に対して気密に密着せず通気性を確保できるようになっている。つまり、凹凸の凹部(突部2が形成されていない部分)が通気路として機能するため、通気胴縁の設置等によって当接部分に通気用の隙間を確保しなくても、当接部分の通気性を確保できる等の利点がある。また、このビーズ法ポリスチレンフォーム製断熱ボードであれば、前記凹凸を簡単に形成できるなど、成形性に優れており、異形状の断熱材を容易に得られる。
なお、図13中、符号5は壁の外装材であり、断熱ボード1との間に確保した隙間によって、空気循環用の空気流路6を形成している。
【0003】
前述のビーズ法ポリスチレンフォーム製の断熱ボードとして多用されているもの(ポリスチレンフォームは3号)では熱伝導率が0.040w/(m・K)程度になっている。また、断熱性能の良いもので熱伝導率が0.034w/(m・K)程度(ポリスチレンフォームは特号)のものもあるが、押し出し成形品に比べてやや劣るといった欠点がある。このビーズ法ポリスチレンフォーム製断熱ボードの断熱性能は、原料ビーズとその発泡倍率によって決まるから、押し出し成形品と同等の性能を得ようとすると、厚さ寸法を大きくすることになり、建物の壁等の施工位置での納まりが悪くなったり、貫通固定用の釘等の部材の寸法を長くしなければならないなどの問題が生じる。また、サッシを納める枠材(断熱材と同じ厚み)や、サッシの取り付け後に施工する内装窓枠材等、この断熱ボードの施工位置付近あるいは周囲の部材の大型化、コスト上昇を招くといった問題もある。
【0004】
一方、外張り断熱工法にて広く用いられている押し出し成形品の断熱ボードは、発泡樹脂材料を押し出し成形によって平板状に成形したもの(以下「押し出し系発泡断熱ボード」と称する場合がある)である。押し出し系発泡断熱材は、断熱性能(熱伝導率)に優れたものが多い。また、この押し出し系発泡断熱ボードは方向性が無いため、施工上の使い勝手が良いといった利点がある。
しかしながら、この押し出し系発泡断熱ボードは、製法上、平板状のものを目的の厚さで連続成形することは容易であるものの、例えば、表面に凹凸を付ける等の異形状のものを成形することは困難であるといった欠点がある。したがい、この押し出し系発泡断熱ボードを建物に建て込んで、柱、間柱、土台、桁等に対する当接部分に通気性を確保するには、通気胴縁の設置等によって隙間を確保することになり、前述のビーズ法ポリスチレンフォーム製断熱ボードに比べて施工に手間が掛かるといった欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、成形性に優れたビーズ法ポリスチレンフォーム製断熱ボードは断熱性能に不満があり、断熱性能に優れる押し出し系発泡断熱ボードは成形性の点で劣るため、いずれにしても、断熱性能と成形性の二つの条件を同時に満たすことは出来ない。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、厚さ寸法を増大させることなく断熱性能を向上させることができ、しかも、優れた成形性によって通気路形成用の突部等を容易に形成できる複合断熱ボードを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は、建物の壁、屋根、天井等に施工される複合断熱ボードであって、フェノールフォームとポリスチレンフォームとが積層され、前記ポリスチレンフォームの表面に突部が分散形成されていることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の複合断熱ボードにおいて、前記ポリスチレンフォームが、前記フェノールフォームの両面に設けられたシート状の皮材の一方に貼り合わせるようにして接合固定されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項3記載の複合断熱ボードにおいて、前記フェノールフォームの他方の皮材が防水性を有することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の複合断熱ボードにおいて、前記フェノールフォームの他方の皮材上に防水層が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の複合断熱ボードは、フェノールフォームの断熱性能によって優れた断熱性能が得られるため、所望の断熱性能を得るための厚さ寸法を薄くできる。しかも、ポリスチレンフォーム側では、該ポリスチレンフォームの成形性によって、通気路形成用の突部等を容易に形成できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の1実施の形態の複合断熱ボードを図面を参照して説明する。
図1(a)、(b)は本実施形態の複合断熱ボード10(以下「断熱ボード」と略称する場合がある)を示す図であって、(a)はポリスチレンフォーム11側から見た図(正面図)、(b)は側面図、図2は断熱ボード10を用いて施工された壁12を示す断面図、図3及び図4は建物における断熱ボード10の施工例を示す図であって、柱13等の壁12の構成部材に対する当接状態を示す平断面図、図5は断熱ボード10の柱13に対する固定構造を示す平断面図、図6はポリスチレンフォーム11に形成した補強ピース収納穴14付近を示す断面図、図7(a)、(b)は補強ピース15を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は補強ピース本体部内側に形成されるリブの別態様を示す図である。
【0010】
図1(a)、(b)〜図3に示すように、断熱ボード10は、発泡系押し出し断熱材としての板状のフェノールフォーム16と、板状に成形されたポリスチレンフォーム11とを接合固定して積層した概略構成になっている。
ポリスチレンフォーム11は、ビーズ法等の型発泡成形(ここではビーズ法を採用)による一発成形品であり、板状に形成されている。このポリスチレンフォーム11のフェノールフォーム16に対して接合固定されている側の面(以下「接合面11a」)は平坦になっているが、他方の面(請求項2の表面に相当。以下「当接面11b」)には多数の突部17が分散配置して形成されている。このポリスチレンフォーム11は成形性に優れており、型発泡成形時の金型形状によって前述の突部17を容易に成形できる。なお、突部17以外のもの、例えば、補強ピース収納穴14(図6参照)や、隣り合うようにして建て込まれた断熱ボード10間の継ぎ手等も容易に成形できる。
【0011】
前記フェノールフォーム16の両面にはシート状の皮材18a、18bが設けられており、前記ポリスチレンフォーム11は、前記接合面11aを一方の皮材18aに対して接着材によって接着して貼り合わせて固定されている。皮材18a、18bとしては、例えば、アルミニウム箔や不織布等が採用される。但し、フェノールフォーム16を介して前記一方の皮材18aに対向する他方の皮材18bとしては、この断熱ボード10の外面を形成することに鑑みて、破れや切り裂き等に対してある程度の強度(引っ張り強度等)を有するもの(例えば前述のアルミニウム箔や不織布等)を採用することが好ましい。
また、後述のように、この断熱ボード10を、皮材18bが外張り工法の外面側となるようにして使用する例では、皮材18bとして防水性を有するものを採用したり、皮材18b上に防水層26(図9参照)を形成したものを採用する。
【0012】
フェノールフォーム16の皮材18aとポリスチレンフォーム11との間を接着する接着材には特に限定は無く、ここではゴム系接着材を採用している。また、点圧をかけながら接着する酢酸ビニル系接着材も採用可能である。
【0013】
フェノールフォーム16は押し出し成形によって、連続的に成形される。図8は、フェノールフォーム16の成形装置の概略を示す。つまり、一対の皮材18a、18bを押し出し金型19の入り口19aから出口19bへ図8中矢印Aの方向に連続的に送り出しつつ、前記押し出し金型19内にて前記皮材18a、18b間に、フェノール充填機19cから金型19に圧送されてくるフェノールを注入するとともに、この充填されたフェノールを加熱発泡させることで、一対の皮材18a、18b間に発泡フェノールを充填せしめた成形品が、押し出し金型19の出口19bから連続的に押し出されるようになっている。ここで押し出し金型19の出口19bから押し出される成形品は、両面に皮材18a,18bが固定された平板状のものである。押し出し金型19内では、フェノールが膨らみながら一対の皮材18a、18b間に充填されるが、押し出し金型19で押さえ付けられつつ膨らんで皮材18a、18b間の領域の隅々にまで充填され、押し出し金型19の内面形状により成形されることになる。皮材18a、18bとしては、フェノールの注入、膨張によって作用する圧力で容易に変形して押し出し金型19内面に馴染むようにして密着できるものを採用する。成形後は、フェノール自体の接着力によって、フェノールフォーム16と皮材18a、18bとが強固に接着、一体化される。
【0014】
また、皮材18a、18b間に充填したフェノールを発泡させるには、通常60℃以上に加熱する必要がある。よって、皮材18a、18bとしては耐熱性が必要となる。
【0015】
この複合断熱ボード10はフェノールフォーム16の厚さ寸法の調整によって断熱性能を簡単に調整できる。この場合、フェノールフォーム16は、製法上、厚さ寸法の調整が容易であり、目的厚さ寸法の平板状のフェノールフォーム16を連続的に成形できる利点がある。
この複合断熱ボード10を木造住宅の壁等に建て込んで施工する場合、例えば温暖な地域と寒冷地とでは要求される断熱性能が異なってくるが、気候等の条件に対応してフェノールフォーム16の厚さ寸法を調整することで、適切な断熱性能を有する複合断熱ボード10を提供できる。
【0016】
周知のようにフェノールフォームは優れた断熱性能を有しており、断熱性能は現存する建築用断熱材の中で最も優れた部類に属する。したがって、この断熱ボード10では、フェノールフォーム16とポリスチレンフォーム11とを含む全厚をポリスチレンフォームのみで形成した断熱ボードに比べて縮小できる。
フェノールフォーム16の熱伝導率は0.019〜0.020w/(m・K)であり、ビーズ法ポリスチレンフォーム製断熱ボードでは通常多用されているもので0.040w/(m・K)程度、断熱性能の良いもので0.034w/(m・K)程度であるから、フェノールフォーム16の断熱性能が非常に優れていることが判る。
【0017】
例えば
フェノールフォーム16:熱伝導率 0.020w/(m・K)、厚さ30mmポリスチレンフォーム11:3号。熱伝導率0.040w/(m・K)、厚さ8mm(図1(b)の寸法t。突部17を除く平板部分)
であり、断熱材部分(フェノールフォームとポリスチレンフォーム)の厚さ合計が38mmの断熱ボード10と同等の断熱性能を、ポリスチレンフォーム(3号)のみからなる断熱ボードによって得ようとすると、68mmの厚さ寸法が必要となる。
【0018】
このように、本発明に係る断熱ボード10であれば、ポリスチレンフォームのみからなる断熱ボードに比べて厚さ寸法を小さくできることが明らかである。厚さ寸法の縮小により、施工性の向上、この断熱ボード10の施工位置付近や周囲の部材のサイズの小型化や低コスト化、多数枚積み重ねたときの寸法の縮小による運搬コストの低コスト化(トラック等によって1度に運搬できる枚数が増大)等の効果が得られる。
例えば、壁への施工の場合は、壁厚の増大を防止することができ、壁に設けられる窓用サッシ等、壁の厚さ寸法に対応するサイズのものを使用する必要がある部材ではサイズの大型化の回避、小型化が可能になり、低コスト化できる。また、建物の柱、母屋等の各種構成部材に対して、断熱ボードを貫通させて打ち込み固定する釘等の固定部材についても、断熱ボードの厚さの縮小によって長さ等のサイズの小さい安価なものを使用でき、また、打ち込み深さの縮小によって施工性も向上する。
【0019】
図2、図3は、断熱ボード10を建物の壁12に建て込んだ状態を示す。断熱ボード10は、ポリスチレンフォーム11の当接面11bを柱13及び間柱(図示略)に当接させている。この断熱ボード10は、前記柱13や間柱を介して対向する側に設けられている内装材21との間に確保した隙間によって、通気路22(以下「内循環通気路22」と称する場合がある)を形成している。内循環通気路22は、建物の床下空間20と連通されている。
この断熱ボード10のフェノールフォーム16側の面23(以下「外面23」)は、通気路24(以下「外通気路24」と称する場合がある)を介して、壁12の外装材25(サイディング材)と対面されている。
【0020】
外通気路24は壁12の上下端部に開口部(下側の開口部に符号24aを付している)を有しており、外気が直接流入する。断熱ボード10の外面23側の皮材18bの形成素材としては不織布、アルミニウム箔等であるが、防水性を有するものを採用する。また、断熱ボード10同士間の接合部は、防水テープで塞ぐ等の防水処理を行って浸水を防止する。皮材18bとしては、耐候性、温度安定性等に優れたものを採用して、断熱ボード10の長寿命化を図ることが好ましい。
【0021】
図9は、皮材18b上に防水層26として表面材(以下、防水層26を「表面材26」と称する場合がある)を積層した例を示す。表面材26としては、ここでは皮材18bと同様の不織布やアルミニウム箔などの他、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)などの合成樹脂製の柔軟性を有するシート状の材料であるが、例えば、樹脂プレートやステンレス等の金属プレートなどの硬質の材料を採用することも可能である。この表面材26は、フェノールフォーム16の成形後に、接着材等によって皮材18bに貼り付けるようにして被着する。皮材18bは、フェノールフォーム16の成形に鑑みて容易に変形する材料を採用する必要があり、採用可能な材料に制約があるが、皮材18bに別途積層状態に設けられる表面材26であれば、材料選択の自由度が大きいため、この表面材26の被着によって、防水性や耐久性、耐候性等を容易に向上できる。表面材26によって防水性能が確保されるため、皮材18bとして必ずしも防水性を有するものを採用する必要が無くなり、皮材18bの素材の選択の幅が広がる。
防水層26が設けられた断熱ボード10では、建て込み時に隣り合う断熱ボード10の防水層26同士間の接合部を防水テープで塞ぐ等の防水処理を行って浸水を防止する。
なお、防水層26としては、前述したような、シート状あるいはプレート状の表面材に限定されず、例えばウレタン系樹脂塗膜等の防水塗膜などであっても良い。
【0022】
図3に示すように、断熱ボード10は、具体的には、柱13や間柱に対してポリスチレンフォーム11の成形によって当接面11b側に突設された突部17を当接させるので、断熱ボード10の当接面11b側にて突部17間に確保されている溝状の空間27が通気路として機能して通気性を確保できるため、これにより木部の腐朽防止等の効果が得られる。内循環通気路22では、胴縁等のスペーサを設置しなくても、断熱ボード10の突部17間の空間27によって、空気流通可能な通気路を充分に確保できる。また、胴縁等のスペーサを設置して通気性を確保した場合に比べて、壁12の厚さ寸法を縮小できるといった利点もある。
【0023】
なお、外通気路24では、該外通気路24に臨む断熱ボード10の外面23が平坦であるから、具体的には、例えば、図5に示すように断熱ボード10の外面23と外装材25との間に設置した胴縁30等のスペーサによって、外通気路24を確保する。
【0024】
図4は、柱13や間柱の外面側(外装材25の側)に固定されたボード状の中間材28に対して、当接面11b全体を当接させて、断熱ボード10を建て込んだ状態を示す。この場合も、図2、図3の場合と同様に、断熱ボード10の外面23と外装材25との間に確保した隙間によって、外通気路24が形成されており、外面23は外通気路24を介して外装材25と対面されている。
図4の場合も、当接面11b側にて突部17間に確保されている溝状の空間27が通気路として機能することによって、断熱ボード10と中間材28との当接領域の通気性が確保されて、木部の腐朽防止等の効果が得られる。
【0025】
図1(a)、(b)に例示した断熱ボード10は、突部17間に確保されている溝状の空間27が当接面11bの全面にわたって網目状に形成されている。しかも各溝状空間27は互いに連通されているため、断熱ボード10は、柱13や間柱、中間材28に対して当接面11bのどの位置を当接させても、柱13の両側の内循環通気路22間や、間柱の両側の内循環通気路22間を連通させる通気路を前記空間27によって形成することができる。
【0026】
但し、溝状の空間27の場合、形成ピッチが広いと前述の柱13や中間材28等の部材に対する当接領域の一部(つまり空間27の存在する箇所のみ)でしか通気性を確保できなくなるから、空間27の形成ピッチは細かくすることが好ましい。あるいは、図10(a)、(b)に示すように、ポリスチレンフォーム29の成形によって、図1(a)、(b)の突部17に比べてサイズの小さい突起状の突部29aを当接面29b側の全体にわたって多数分散配置した構成を採用すれば、前述の柱13等の部材に対する当接領域の全体にわたって均等に通気性を確保でき、実質的に、当接領域の全体にわたって通気層を形成できる。
【0027】
図5は、壁12を構成する部材に対する断熱ボード10の固定構造の一例を示す図であって、柱13に対する固定構造の一例を具体的に示す。
この固定構造では、まず、仮止め用の釘31を、外面23側から断熱ボード10を貫通させて柱13に打ち込んで、断熱ボード10を柱13に仮止めする。ここで、断熱ボード10に対する釘31の打ち込みは、柱13に当接する突部17を貫通させるようにする。なお、突部17の位置は、断熱ボード外面23側(皮材18b表面あるいは表面材26表面)に印刷等によって設けた表示等で判るようにしておくことが好ましい。
【0028】
釘31による断熱ボード10の仮止めが完了したら、断熱ボード外面23に胴縁30を配置し、この胴縁30から打ち込んで断熱ボード10を貫通させた固定用ビス32を柱13に食い込ませることで、胴縁30を介して断熱ボード10を柱13に固定する。ここで、固定用ビス32の打ち込み位置は、やはり柱13に当接している突部17を貫通させるようにする。断熱ボード23に対する胴縁30の設置位置は、突部30の存在位置に対応させる。
壁12の施工では、断熱ボード10の建て込み、固定後に外装材25を施工する。外装材25の施工では、断熱ボード10の複数箇所に設置された胴縁30を、外装材25の位置決めや固定に利用できる。例えば、前記胴縁30あるいは胴縁30外側に固定したスペーサ(図示略)に外装材25を当接させることで、外装材25を簡単に位置決めでき、外通気路24を確実に形成できる。
なお、この固定構造は、断熱ボード10の柱13に対する固定のみに限定されず、例えば前述の中間材28やその他の部材に対する固定にも同様に適用可能である。
【0029】
ところで、この実施の形態では、ポリスチレンフォーム11は、断熱性能及びコストの点から、発泡倍率50倍程度のものを採用している。しかしながら、このようなポリスチレンフォーム11には硬度が期待できないため、このままでは、固定用ビス32が胴縁30を止め付ける力によってポリスチレンフォーム11に潰れが生じることが予想される。特に、断熱ボード10の間柱に対する固定等では、壁の部材に対する断熱ボード10の当接領域(面積)を広く確保できないため、より潰れが生じやすくなることが予想される。一方、フェノールフォーム16はある程度の硬度を確保できるため、固定用ビス32の止め付け力による潰れの問題は無視できる。なお、フェノールフォーム16では、両面の皮材18a、18bとして不織布等の引っ張り強度に優れる素材を採用した場合には皮材18a、18bによって止め付け力がある程度分散されることによっても変形耐力が確保される。また、ここで採用可能な不織布等の中には、フェノールフォーム16との接着性に優れるものが多く、このような皮材18a、18bを採用することで、フェノールフォーム16と両側の皮材18a、18bとの間に接着強度が確保される結果、フェノールフォーム16の変形耐力が向上し、固定用ビス32の止め付け力による潰れが一層生じにくくなる。
【0030】
そこで、この断熱ボード10では、図5、図6に示すように、金属や硬質樹脂等の硬質材料からなる補強ピース15をポリスチレンフォーム11に挿入して、固定用ビス32の止め付け力によるポリスチレンフォーム11の潰れを防止している。具体的には、ポリスチレンフォーム11の突部17の位置にて、接合面11a側に開口させて形成された補強ピース収納穴14に補強ピース15を収納している。補強ピース15は、円筒状の本体部15aをポリスチレンフォーム11の接合面11a側から補強ピース収納穴14に挿入し、本体部15aの軸方向一端部の周囲に突設されているフランジ15bを、接合面11a側にて前記補強ピース収納穴14の周囲に形成された浅いザグリ部14aに収納することで、ポリスチレンフォーム11の当接面11b側に抜け出さないようにしてポリスチレンフォーム11に収納される。そして、この挿入作業の後、ポリスチレンフォーム11とフェノールフォーム16との接合固定によって、補強ピース15が補強ピース収納穴14から抜け出さないようになる。また、この補強ピース15は、接合面11a側への突出部分が無いので、ポリスチレンフォーム11とフェノールフォーム16との接合固定の支障にならない。
【0031】
図7(a)に示す補強ピース15の本体部15a内側には十字状のリブ15cが設けられており、固定用ビス32は、打ち込み力によってこのリブ15cを破壊して補強ピース本体部15aに貫通されるようになっている。また、図7(b)に示す補強ピース15Aのように、本体部15aの内面の周方向に均等の4箇所に小突起状のリブ15dが突設された構造も採用可能である。この補強ピース15Aでは、リブ15dによって、本体部15aを貫通して壁12の部材(前述の柱13等)に打ち込まれていく固定用ビス32の方向性をより安定させることができる。
【0032】
図1(a)に示すように、この断熱ボード10では、補強ピース15は、ポリスチレンフォーム11の面方向の複数箇所に分散設置されており、これら補強ピース15を適宜利用して固定用ビス32を打ち込むことで、断熱ボード10を壁12の部材に対してしっかりと固定できる。
また、図4に例示したように、中間材28に貼り合わせるようにして断熱ボード10を固定する場合は、胴縁30から打ち込んだ固定用ビス32を断熱ボード10に貫通させて中間材28に食い込ませることで断熱ボード10を固定できるが、より確実な固定のためには固定用ビス32を中間材28を貫通させて柱13や間柱等に到達させ、食い込ませることが好ましい。
【0033】
優れた断熱性能が得られるポリスチレンフォームではその発泡倍率によって硬度が低くなるから、ポリスチレンフォームのみからなる断熱ボードは変形しやすく、建て込み位置への搬送等ではやや不便な面があるが、この断熱ボード10では、前述のようにある程度の強度を確保できるフェノールフォーム16とポリスチレンフォーム11とを接合固定した構成であるので形状が安定しており、施工性を向上できるといった利点もある。
また、フェノールフォーム16は、断熱性能のみならず、遮音性にも優れた性能を発揮するので、この断熱ボード10を壁12や天井、床等に用いた建物では、遮音性の面でも居住性を向上できる。
【0034】
(別の実施の形態)
図11は、断熱ボード10を図2、図3とは表裏逆向きにして建て込んで構成した壁12Aを示す。つまり、この壁12Aでは、断熱ボード10のフェノールフォーム16側の表面(皮材18b)を柱13や間柱に当接し、ポリスチレンフォーム11側の表面(当接面11b)を外側に向けて突部17に外装材25を当接させ、突部17間の空間によって外装材25との間に外通気路24Aを確保している。内循環通気路は形成しない。この場合、隣接する断熱ボード10のポリスチレンフォーム11同士間の接合部を防水テープ等で防水処理する。また、フェノールフォーム16とポリスチレンフォーム11との間の境界に位置する皮材18aを防水層として機能させることが好ましい。
図示していないが、断熱ボード10の柱13に対する固定構造としては、例えば、ポリスチレンフォーム11に埋設された補強ピースに直接打ち込んで断熱ボード10を貫通させた固定部ビスを柱13に到達させ、食い込ませた構成等が採用可能である。この場合、補強ピースのポリスチレンフォーム11表面側の端部に固定用ビスの頭部を収容するザグリ部を形成しておき、打ち込んだ固定用ビスがポリスチレンフォーム11側表面に突出しないようにすることが好ましい。
また、ポリスチレンフォーム11の突部17と外装材25との間に若干隙間を確保して、この隙間を利用して突部17に胴縁を配置し、図5に示したものと同様の構成の固定を行うことも可能である。つまり、突部17に配置した胴縁から打ち込んだ固定用ビスを断熱ボード10に貫通させ、柱13に到達させ、食い込ませる。但し、胴縁の設置位置は、ポリスチレンフォーム11に埋設された補強ピースに対応させ、前記固定用ビスを補強ピースに貫通させる。外装材25は胴縁に当接させる。
【0035】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されず、例えば、断熱ボード全体の外形、ポリスチレンフォームの当接面側の突部の形状、壁の部材に対する固定構造等は、適宜変更可能であることは言うまでも無い。
請求項1に係る断熱ボードは、それぞれ板状に成形したフェノールフォームとポリスチレンフォームとの接合固定によって積層した構成に限定されず、例えば、板状に成形したフェノールフォームの片面側で直接ポリスチレンフォームを発泡させて形成し、一体化した構成等も採用可能である。この場合、フェノールフォームの片面側に、ポリスチレンフォームとの接着性に優れた皮材を設けることで、ポリスチレンフォームの接着強度を確保でき、接着材等による接合工程を省略できる。
この断熱ボードの適用対象は木造住宅の壁に限定されず、例えば、天井、屋根、床等であっても良い。天井、屋根、床への適用の場合も、図5に例示したものと同様の固定構造により、天井の部材、屋根の部材、床の部材に対して断熱ボードを固定すれば良い。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の複合断熱ボードによれば、断熱性能に優れたフェノールフォームによって優れた断熱性能を確保でき、ポリスチレンフォームを含めた全体の厚さ寸法を小さくできる。しかも、成形性に優れたポリスチレンフォームによって片面側に突部を容易に形成できるため、該複合断熱ボードを施工した建物の部材に対して当接した部分の通気性を確保するための通気路の確保等を容易に実現できるといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)、(b)は本実施形態の複合断熱ボードを示す図であって、(a)はポリスチレンフォーム11側から見た図(正面図)、(b)は側面図である。
【図2】 建物における断熱ボードの施工例を示す図であって、図1の断熱ボードを用いて施工した壁を示す断面図である。
【図3】 建物における断熱ボードの施工例を示す図であって、柱に対する断熱ボードの当接状態を示す平断面図である。
【図4】 建物における断熱ボードの施工例を示す図であって、壁の中間材に対する断熱ボードの当接状態を示す平断面図である。
【図5】 断熱ボードの柱に対する固定構造を示す平断面図である。
【図6】 ポリスチレンフォームに形成した補強ピース収納穴付近を示す断面図である。
【図7】 (a)、(b)は補強ピースを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は補強ピース本体部内側に形成されるリブの別態様を示す図である。
【図8】 フェノールフォームを押し出し成形する装置の概略を示す全体図である。
【図9】 断熱ボードの外面側の皮材に表面材を貼り合わせた構成を示す断面図である。
【図10】 突起状の突部が突設されたポリスチレンフォームを用いた断熱ボードを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
【図11】 本発明の断熱ボードを建て込んで施工した壁の他の例を示す平断面図である。
【図12】 従来例のポリスチレンフォームのみによって形成された断熱ボードを示す斜視図である。
【図13】 図12の断熱ボードの建物の柱に対する当接状態を示す平断面図である。
【符号の説明】
10…複合断熱ボード、11…ポリスチレンフォーム、11b…表面(当接面)、12…壁、12A…壁、16…フェノールフォーム、17…突部、18a,18b…皮材、24…外気通路、24A…外通気路、26…防水層(表面材)、27…空間、29…ポリスチレンフォーム、29a…突部、29b…表面(当接面)。

Claims (4)

  1. 建物の壁、屋根、天井等に施工される複合断熱ボードであって、フェノールフォームとポリスチレンフォームとが積層され、前記ポリスチレンフォームの表面に突部が分散形成されていることを特徴とする複合断熱ボード。
  2. 前記ポリスチレンフォームが、前記フェノールフォームの両面に設けられたシート状の皮材の一方に貼り合わせるようにして接合固定されていることを特徴とする請求項1記載の複合断熱ボード。
  3. 前記フェノールフォームの他方の皮材が防水性を有することを特徴とする請求項2記載の複合断熱ボード。
  4. 前記フェノールフォームの他方の皮材上に防水層が形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の複合断熱ボード。
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