JP3784192B2 - 電子部品搭載用配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速で作動する半導体素子や光半導体素子等の電子部品を搭載するための配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高速で作動する半導体素子や光半導体素子等の電子部品を搭載するための配線基板においては、高速信号を正確かつ効率良く伝播させるために、高速信号が伝播する信号用配線導体のアイソレーションを高めたり特性インピーダンスの整合を図ったりすること等が重要である。
【0003】
このような配線基板として例えば特許第2796143 号公報には、信号が伝播する信号用配線導体(信号線)のアイソレーション値を高めたり特性インピーダンスの整合を図ったりするためのグランド導体層(グランド層)を基板の2つ以上の面に設けるとともに、これらのグランド層同士を信号用配線導体の近くにほぼ均等に幅広く分散されて設けた多数の貫通導体(ヴィアフィル)を介して接続して成る配線基板が示されている。
【0004】
この配線基板では、貫通導体の周りに隙間やクラックが発生したりすること等を防止するために貫通導体の直径を0.05〜0.15mmとしており、また貫通導体形成領域部分の横断面における貫通導体の面積比を3〜25%としている。そして、これらにより10GHz前後の高速信号を配線導体によって伝播させることができるというものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の配線基板は、貫通導体の直径が0.05〜0.15mmと小さいことから、貫通導体のインダクタンスが大きなものとなるとともに貫通導体とグランド層との接続信頼性が低いものとなり、このためグランド層と貫通導体とで安定したグランドネットワークを形成することができないという問題点があった。さらに、直径が0.05〜0.15mmの貫通導体間に多量の隙間が存在するため、信号用配線導体に例えば10GHzを超える高速の信号を伝播させると、信号用配線導体から発生する電磁波が前記隙間を通して外部に多量に漏れ出してしまうという問題点があった。したがって、安定したグランドと信号用配線導体の良好なアイソレーション特性とを得ることができずに、信号用配線導体に例えば10GHzを超える高速の信号を効率よく正確に伝播させることが困難であるという問題点を有していた。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、貫通導体により信号用配線導体のアイソレーションを良好に確保するとともに、グランド導体層と貫通導体とで安定したグランドネットワークを形成し、例えば10GHzを超える高速の信号を効率よく正確に伝播させることができる配線基板を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数の絶縁層が積層されて成り、上面に電子部品が搭載される凹部を有する絶縁基体と、該絶縁基体の前記上面に形成された高周波信号を伝播するための複数の信号用配線導体と、該信号用配線導体に対して前記絶縁層を介して対向するように前記絶縁基体の前記上面に配設された第1のグランド導体層と、前記複数の絶縁層間に形成された第2のグランド導体層と、前記信号用配線導体の両側に配設され、前記第1および第2のグランド導体層に接続された複数の貫通導体とを備え、前記貫通導体は、その横断面の前記信号用配線導体に沿った長さを直交する方向の長さよりも長く、かつ前記複数の信号用配線導体間に、平面的に分散されて配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の配線基板によれば、貫通導体がその横断面の信号用配線導体に沿った長さが直交する方向の長さよりも長い、例えば長円形や長方形等の形状であるので、たとえ貫通導体の幅(信号用配線導体に直交する方向の長さ)が0.05〜0.15mm程度の狭いものであったとしても貫通導体の断面積が大きなものとなり、その結果、貫通導体のインダクタンスを小さなものとすることができるとともに貫通導体とグランド導体層との接続信頼性を高いものとすることができ、貫通導体とグランド導体層とで安定したグランドネットワークを形成することができる。
【0009】
また、グランド導体層に接続された多数の貫通導体を信号用配線導体に沿って信号用配線導体の両側に少なくとも1列ずつ配設し、その横断面の信号用配線導体に沿った長さが直交する方向の長さより長いものとしたことから、信号用配線導体に沿って多数の貫通導体を密に設けることができ、その結果、貫通導体の間の隙間を少ないものとして配線導体から発生する電磁波が外部に多量に洩れ出ることを有効に防止することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を添付の図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す上面図であり、図2は図1のA−A線における断面図、図3は図1のB−B線における断面図である。
【0012】
図において、1は絶縁基体、3は信号用配線導体、4a・4bはグランド導体層、5は貫通導体である。
【0013】
なお、図1において、貫通導体5はグランド導体層4bの下に位置しているため破線で示すべきであるが、作図の都合上、細い実線で示している。
【0014】
絶縁基体1は、図2に示すように、酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・炭化珪素質焼結体・窒化珪素質焼結体・ガラスセラミックス等の無機系絶縁材料、あるいはポリテトラフルオロエチレン・エポキシ・ポリイミド・ガラスエポキシ等の有機系絶縁材料、あるいはセラミックス粉末等の無機絶縁物粉末をエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂で結合して成る複合絶縁材料などの電気絶縁材料から成る複数の絶縁層を積層して成る。この例では平板状の絶縁層1aと枠状の絶縁層1bとが積層一体化されて成る。そして、その上面中央部には、半導体素子等の電子部品(図示せず)を収容するための電子部品搭載部としての凹部2が形成されている。
【0015】
絶縁基体1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化カルシウム・酸化マグネシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ・溶剤等を添加混合して泥漿状となすとともに、これを従来周知のドクタブレード法を採用してシート状となすことによって絶縁層1a・1bとなるセラミックグリーンシートを得、しかる後、これらのセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに上下に積層し、最後にこの積層体を還元雰囲気中、約1600℃の温度で焼成することによって製作される。
【0016】
絶縁層1aの上面には、ほぼその全面にわたってグランド導体層4aが配設されており、このグランド導体層4aの凹部2内に露出した部位に半導体素子等の電子部品が搭載される。
【0017】
さらに、絶縁層1bの上面には、図1に示すように、信号用配線導体3および信号用配線導体3間にグランド導体層4bが配設されており、信号用配線導体3およびグランド導体層4bの凹部2の周辺には半導体素子等の電子部品の各電極がボンディングワイヤ等を介して接続される。
【0018】
信号用配線導体3およびグランド導体層4a・4bは、タングステンやモリブデン・モリブデン−マンガン・銅・銀・銀−パラジウム等の金属粉末メタライズ、あるいは銅・銀・ニッケル・クロム・チタン・金やそれらの合金等の金属材料などから成る。例えばタングステンの金属粉末メタライズから成る場合であれば、タングステン粉末に適当な有機バインダ・溶剤を添加混合して得た金属ペーストを絶縁層1a・1bとなるセラミックグリーンシートに所定のパターンに印刷塗布し、これをセラミックグリーンシートの積層体とともに焼成することによって、絶縁層1a・1bの上面に配設される。
【0019】
また、グランド導体層4aと4bとは、図1・図3に示すように、絶縁層1bを貫通して設けられた多数の貫通導体5により電気的に接続されている。
【0020】
貫通導体5は、例えばその幅(信号用配線導体3に直交する方向の長さ)が0.03〜0.15mm、その長さ(信号用配線導体3に沿った長さ)が0.2 〜0.3 mm程度であり、横断面が例えば長円形や長方形等の形状に形成されており、信号用配線導体3に沿ってその両側に少なくとも1列ずつ、その横断面における長手方向が信号用配線導体3に沿って配向するようにして並べて配設されている。
【0021】
貫通導体5は、信号用配線導体3の両側を電磁的にシールドして信号用配線導体3のアイソレーションを高めるとともに信号用配線導体3の特性インピーダンスを整合させる作用をなし、信号用配線導体3に沿って長い横断面形状を有するものであるとともに信号用配線導体3に沿ってその両側に少なくとも1列ずつ、その横断面の長手方向が信号用配線導体3に沿って配向するようにして並べて配設されていることから、信号用配線導体3に沿って多数の貫通導体5を密に設けることができる。その結果、信号用配線導体3に対して直交する方向から見た貫通導体5の間の隙間を少ないものとすることができ、信号用配線導体3に例えば10GHzを超える高周波を伝播させたとしても、信号用配線導体3から発生する電磁波が貫通導体5の間の隙間を通って外部に大量に漏出することを有効に防止することができ、10GHzを超えるような高周波に対して高いシールド性を確保することができる。
【0022】
また、貫通導体5は、その幅が0.03〜0.15mmと小さいものの、その長さが0.2 〜0.3 mmと大きいため、貫通導体5のインダクタンスが小さいものとなるとともにグランド導体層4a・4bとの接続信頼性が高いものとなり、グランド導体層4a・4bとともに安定したグランドネットワークを形成することができ、これによっても信号用配線導体3によって例えば10GHzを超える高速の信号を損失少なく、正確に伝達させることを可能とする。
【0023】
なお、貫通導体5は、その幅が0.03mm未満であると、貫通導体5自体を良好に形成することが困難となる傾向にある。一方、その幅が0.15mmを超えると、貫通導体5の隣接間隔d1を狭いものとして、例えば10GHzを超える高周波に対する高いシールド性を確保して良好なアイソレーションや特性インピーダンスの整合を得ることが困難となる傾向にある。したがって、貫通導体5の幅は、0.03〜0.15mmの範囲が好ましい。
【0024】
また、貫通導体5は、その長さが0.2 mm未満となると、貫通導体5を信号用配線導体3に沿って密に形成することが困難となる傾向にある。一方、その長さが0.3 mmを超えると、貫通導体5と絶縁層1bとの熱膨張量等の差が大きなものとなり、貫通導体5と絶縁層1bとの間に隙間が発生したり、絶縁層1bにクラックが発生しやすいものとなる傾向にある。したがって、貫通導体5の長さは0.2 〜0.3 mmの範囲が好ましい。
【0025】
貫通導体5はまた、その隣接間隔d1がその幅の2分の1未満となると、隣接する貫通導体5の間の絶縁層1bにクラックが発生し易いものとなる傾向にある。一方、その隣接間隔d1がその幅の5倍を超えると、信号用配線導体3の両側を良好にシールドすることが困難となる傾向にある。したがって、第1の貫通導体5の隣接間隔d1は、その直径の0.5 〜5倍の範囲が好ましい。
【0026】
なお、貫通導体5は、信号用配線導体3に沿って設けられた各貫通導体5の隣接間隔d1を信号用配線導体3に伝播される高周波信号の波長の4分の1以下、さらに好適には8分の1以下としておくと、信号用配線導体3のアイソレーションを極めて高いものとすることができる。したがって、信号用配線導体3に沿って設けられた各貫通導体5の隣接間隔d1は、信号用配線導体3に伝播される高周波信号の波長の4分の1以下、さらに好ましくは8分の1以下としておくことが望ましい。
【0027】
さらに、貫通導体5は、信号用配線導体3を挟んで対向する1列目同士の間隔d2を信号用配線導体3に伝播される高周波信号の波長の2分の1以下としておくと、信号用配線導体3を伝播する高周波信号の反射損を小さいものとすることができる。したがって、貫通導体5は、信号用配線導体3を挟んで対向する1列目同士の貫通導体5の間隔d2は、信号用配線導体3によって伝播させる高周波信号の2分の1以下としておくことが好ましい。
【0028】
またさらに、貫通導体5は、信号用配線導体3に沿ってその両側に少なくとも2列ずつ、その横断面の長手方向が信号用配線導体3に沿って配向するように、かつ信号用配線導体3に対して直交する方向から見て1列目の貫通導体5の隙間が2列目の貫通導体5に重なるように並べて配設すると、貫通導体5の間に信号用配線導体3に対して直交する方向に連なる隙間が形成されることがなく、このため例えば10GHzを超える高周波を信号用配線導体3によって伝播させたとしても、信号用配線導体3から発生する電磁波は1列目の貫通導体5と2列目の貫通導体5とでその漏出が有効に防止され、10GHzを超えるような高周波に対して高いシールド性を確保することができる。したがって、貫通導体5は、信号用配線導体3に沿ってその両側に少なくとも2列ずつ、その横断面の長手方向が信号用配線導体3に沿って配向するように、かつ信号用配線導体3に対して直交する方向から見て1列目の貫通導体5の隙間が2列目の貫通導体5に重なるように並べて配設することが好ましい。
【0029】
なお、貫通導体5は、タングステンやモリブデン・モリブデン−マンガン・銅・銀・銀−パラジウム等の金属粉末メタライズ、あるいは銅・銀・ニッケル・クロム・チタン・金やそれらの合金等の金属材料などから成る。例えばタングステンの金属粉末メタライズから成る場合であれば、絶縁層1bとなるセラミックグリーンシートのグランド導体層4bが配設される領域に、焼成後の幅が0.03〜0.15mmで長さが0.2 〜0.3 mmとなる貫通孔を設けるとともに、この貫通孔内にタングステン粉末を主成分とする導体ペーストを従来周知のスクリーン印刷法を採用して充填し、これを絶縁基体1となるセラミックグリーンシートの積層体とともに焼成することによって形成される。
【0030】
この場合、貫通導体5となる導体ペースト中に含有される金属粉末の平均粒径を適当な範囲のものとするとともに、この導体ペースト中に絶縁基体1と略同一成分を絶縁基体1および貫通導体5の材料特性に応じて適量含有させておくと、貫通導体5の焼成収縮率や熱膨張係数を絶縁基体1の焼成収縮率や熱膨張係数に近似させることができ、これにより両者の焼成収縮率や熱膨張係数の相違に起因して貫通導体5と絶縁層1bとの間に隙間が発生したり、あるいは絶縁基体1にクラックが発生したりするのを有効に防止するとこができる。したがって、貫通導体5となる導体ペーストは、これに含有される金属粉末の粒径を適当な範囲のものとするとともに、この導体ペースト中に絶縁基体1と略同一成分を適量含有させておくことが好ましい。
【0031】
かくして、上述のような本発明の配線基板によれば、絶縁基体1の凹部2の底面に半導体素子等の電子部品を搭載するとともに、この電子部品の各電極を信号用配線導体3およびグランド導体層4bにボンディングワイヤ等を介して接続することにより、高速で作動する電子部品を搭載する配線基板として供される。
【0032】
なお、本発明は上述の実施の形態の一例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更が可能である。例えば、図4に要部拡大断面図で示すように、信号用配線導体13の上下に絶縁層11を介してグランド導体層14a・14bを設けるとともに、グランド導体層14aと14bとを信号用配線導体13に沿って信号用配線導体13の両側にその横断面の長手方向が信号用配線導体13に沿って配向するようにして並べて設けた多数の貫通導体15で接続して成る配線基板にも適用できる。
【0033】
【発明の効果】
本発明の配線基板によれば、グランド導体層に接続された多数の貫通導体がその横断面の信号用配線導体に沿った長さを直交する方向の長さよりも長くしてあるので、たとえ貫通導体の幅(信号用配線導体に直交する方向の長さ)が0.05〜0.15mm程度の狭いものであったとしても、貫通導体の横断面積が大きなものとなり、その結果、貫通導体のインダクタンスを小さなものとすることができるとともに貫通導体とグランド導体層との接続信頼性を高いものとすることができ、貫通導体とグランド導体層とで安定したグランドネットワークを形成することができる。
【0034】
また、本発明の配線基板によれば、グランド導体層に接続された多数の長円形の貫通導体を、信号用配線導体に沿って信号用配線導体の両側に少なくとも1列ずつ、その横断面の長手方向が信号用配線導体に沿って配向するようにして並べて設けたことから、信号用配線導体に沿って多数の貫通導体を密に設けることができ、その結果、貫通導体の間の隙間を少ないものとして信号用配線導体から発生する電磁波が外部に多量に洩れ出ることを有効に防止することができる。
【0035】
したがって、本発明の配線基板によれば、貫通導体とグランド導体層とで安定したグランドネットワークを形成するとともに信号用配線導体のアイソレーションおよび特性インピーダンスの整合を良好なものとして、10GHzを超えるような高速の信号を効率よく、かつ正確に伝播させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示す配線基板のA−A線における断面図である。
【図3】図1に示す配線基板のB−B線における断面図である。
【図4】本発明の配線基板の実施の形態の別の例を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・・・・・絶縁基体
1a、1b、11・・・・・・・絶縁層
3、13・・・・・・・・・・・信号用配線導体
4a、4b、14a、14b・・・グランド導体層
5、15・・・・・・・・・・・貫通導体
Claims (1)
- 複数の絶縁層が積層されて成り、上面に電子部品が搭載される凹部を有する絶縁基体と、
該絶縁基体の前記上面に形成された高周波信号を伝播するための複数の信号用配線導体と、
該複数の信号用配線導体に対して前記絶縁層を介して対向するように前記絶縁基体の前記上面に配設された第1のグランド導体層と、
前記複数の絶縁層間に形成された第2のグランド導体層と、
前記複数の信号用配線導体の両側に配設され、前記第1および第2のグランド導体層に接続された複数の貫通導体とを備え、
前記貫通導体は、その横断面の前記複数の信号用配線導体に沿った長さを直交する方向の長さよりも長く、かつ前記複数の信号用配線導体間に、平面的に分散されて配置されていることを特徴とする電子部品搭載用配線基板。
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