JP3783347B2 - 透明ゲル状組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は透明ゲル状組成物に関し、より詳細には構成ポリグリセリン鎖の平均重合度が12未満であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する透明ゲル状組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゲル状組成物は、製麺製剤、保湿化粧料、浴用化粧料、クレンジング剤、マッサージ剤、パック化粧料、頭髪化粧料、医薬品基材などとして使用されているが、中でも意匠性、すなわち商品のイメージアップの観点から透明のゲル状組成物が注目されている。
【0003】
従来、透明ゲル状組成物の界面活性剤としてはアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩及びα−オレフィンスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤が広く使われている。しかし、これらアニオン界面活性剤は程度の差はあるが、いずれも皮膚刺激性を誘発するという欠点を有している。
【0004】
また同様に、透明ゲル状組成物の界面活性剤として用いられているポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤は、分子鎖中に親水性基としてエチレンオキシド鎖を有しているので、エチレンオキシド鎖が経時的に分解してゲル形成能が低下してしまうほか、エチレンオキシドの分解生成物であるホルマリンの溶出や、pHが低下するなどの危険があり、特に食品用途には安全性上の問題から、我国においては認可されておらず、用途に制約がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、ポリグリセリン脂肪酸エステルは食品添加物として認可されている界面活性剤であり、人体に対する安全性が高いことが確認されている。このようなことから、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた新規な透明ゲル状組成物の開発が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこのような現状に鑑み、ポリグリセリン脂肪酸エステルによる透明ゲル状組成物に関し鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の要旨は、構成ポリグリセリン鎖の平均重合度が12未満であるポリグリセリン脂肪酸エステル、液状油性物質、水、多価アルコールからなる透明ゲル状組成物に存する。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態としては、構成ポリグリセリン鎖の平均重合度が12未満であるポリグリセリン脂肪酸エステル10〜40重量%、液状油性物質40〜60重量%、水0.05〜20重量%、多価アルコール5〜40重量%からなり、かつ水に対する多価アルコールの重量比が1以上である透明ゲル状組成物、さらには構成ポリグリセリン鎖の平均重合度が12未満であるポリグリセリン脂肪酸エステル12〜38重量%、液状油性物質45〜55重量%、水0.06〜18重量%、多価アルコール6〜37重量%からなり、かつ水に対する多価アルコールの重量比が1以上である透明ゲル状組成物が挙げられる。
【0008】
なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルの(1)構成脂肪酸が炭素数12〜14の飽和脂肪酸であり、(2)構成ポリグリセリン鎖の平均重合度が6より大きく12未満であり、かつ(3)エステル化率が20%未満である上記透明ゲル状組成物、さらにはポリグリセリン脂肪酸エステルの(1)構成脂肪酸のうち70重量%以上が炭素数12〜14の飽和脂肪酸であり、(2)構成ポリグリセリン鎖の平均重合度が6より大きく12未満であり、かつ(3)エステル化率が20%未満である上記透明ゲル状組成物がより好ましい。
また、本発明の別の実施の形態としては、上記の透明ゲル状組成物を水に溶解してなる乳化組成物が挙げられる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルは、その構成脂肪酸が炭素数12〜14の飽和脂肪酸であることが好適である。構成脂肪酸の炭素数が12未満であると皮膚に対する刺激性が現れることがあり、また14を越えると常温において透明ゲル状組成物を得ることが困難になり、いずれも好ましくない。炭素数が12〜14の飽和脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸が挙げられ、これらは単独でも任意の比からなる混合物であってもよい。
【0010】
構成脂肪酸の炭素数12〜14の飽和脂肪酸の割合は、上記範囲の中でも70重量%以上、とりわけ90重量%以上が好適である。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は20%以下が好適である。構成脂肪酸の種類は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを製造する原料を選択する際に、脂肪酸の炭素数、飽和脂肪酸の割合などが上記範囲にあるものを選択すればよい。
【0011】
ポリグリセリンは一般に、グリセリンに対し少量の酸またはアルカリを触媒として添加し、常圧下もしくは減圧下、180℃以上の高温で加熱することによって得られる。必要であれば、反応終了後、中和、脱塩等の処理を行う。市場に流通しているポリグリセリンは、水酸基価より計算される平均重合度によって4量体ポリグリセリン、6量体ポリグリセリン、10量体ポリグリセリンとよばれている。しかし実際には重合度1から10以上までの種々のグリセリン重合物の混合物である。本発明で用いる構成ポリグリセリンは、平均重合度12未満が必須であり、またポリグリセリン鎖の平均重合度が6を越え12未満のポリグリセリンが好適である。平均重合度が6以下だと透明ゲル状組成物を得ることが困難な場合もある。また平均重合度が12を越えると粘度が上昇し、脂肪酸とのエステル化反応を進めることが困難になる。
【0012】
本発明でのポリグリセリン脂肪酸エステルは、上記で規定した飽和脂肪酸とポリグリセリンとを反応器に仕込み、常圧〜数気圧下、150〜300℃の温度範囲で、触媒の存在下で反応させることによって製造することができる。使用できる触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ類が挙げられ、その使用量は、反応原料の総量に対して0.001〜0.025重量%の範囲で適宜選択することができる。
【0013】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は、最終組成物に対して10〜40重量%、好ましくは12〜38重量%である。10重量%未満或いは40重量%を越えると均一で安定な透明ゲル状組成物を得ることが困難となる。
本発明で使用される液状油性物質は常温で液状を呈する公知の液状物質であって、液状の高級脂肪族炭化水素類、動植物性油脂類、高級アルコール、高級脂肪酸、合成エステル油、グリコール高級脂肪酸エステル、シリコン油等である。例えば、流動パラフィン、スクワラン、菜種油、オリーブ油、ひまし油、ホホバ油、オクチルドデカノール、オクチルドデシルミリステート、2−エチルヘキサン酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、オレインアルコール、オレイン酸等を挙げることが出来る。これらの液状油性物質は1種又は2種以上組み合わせて用いる。
【0014】
液状油性物質の配合量は、最終組成物に対して40〜60重量%、好ましくは45〜55重量%である。40重量%未満或いは60重量%を越えると均一で安定な透明ゲル状組成物を得るのが困難である。
本発明で使用される多価アルコールは3価以上の多価アルコールであり、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等のポリグリセリン、ソルビトール、グルコース、マルトース、マルチトール、蔗糖、フラクトース、キシリトール、アラビトール、ラクチトール、ソルビタン、キシロース、アラビノース、マンノース、乳糖、砂糖、カップリングシュガー、ブドウ糖、酵素糖化水飴、酵糖化水飴、麦芽糖水飴、麦芽糖、異性化糖、果糖、還元麦芽糖水飴、蜂蜜等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いる。
【0015】
多価アルコールの配合量は、水の重量に対して1倍以上で且つ最終組成物に対して5〜40重量%、より好ましくは6〜37重量%である。5重量%未満又は40重量%を越えると透明ゲル状の組成物を得ることが困難になる。
また、水の配合量は、最終組成物に対して0.05〜20重量%、好ましくは0.006〜18重量%である。
【0016】
本発明の透明ゲル状組成物には、上述した成分を必須の構成成分とするが、当該組成物には、本発明の目的を達成する範囲で他の成分を適宜配合することができる。すなわち、製麺製剤、化粧料、医薬品などに一般に使用される薬剤、防腐剤、着色料、着香料、保湿剤、紫外線吸収剤、エッセンシャルオイル、ワックス、脂肪酸およびそのアルコールとのエステル、ビタミン類、抗酸化剤、飽和又は不飽和の高級アルコール、炭化水素類、保存料、殺菌料等を適宜配合することができる。
【0017】
本発明の透明ゲル状組成物は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、多価アルコール及び水を各所定量秤量し、加熱下撹拌混合し、これに液状油性物質を添加し、室温に冷却して容易に調製することができる。この際の撹拌は強力な機械撹拌を適用することは必須ではなく、振盪程度で十分である。ただし、強力な剪断力を適用する撹拌を全く排除するものではない。
本発明の透明ゲル状組成物は、化粧品、消臭剤、入浴剤、芳香剤、脱臭剤、食品、医薬などにおいて常温で透明ゲル状を呈する各種の用途がある。そして、これら製品は油溶性物質が分離したりすることなく、液状油性物質が水性媒体に安定に分散されている。
【0018】
【実施例】
以下本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
製造例1
脂肪酸/ポリグリセリン反応仕込モル比率を0.7/1とし、市販のデカグリセリン(ポリグリセリン#750;阪本薬品社製、平均重合度10.9)212.2g(0.2573モル)に対し、ラウリン酸(サンファット#12;ライオン社製、純度95%以上)及び10%水酸化ナトリウム水溶液を、水酸化ナトリウム量が0.0025重量%(対全量)となるように仕込み、窒素気流下、常圧、240℃で2.5時間反応させた。その後、260℃に昇温し4時間反応させ、ポリグリセリンラウリン酸エステル反応物を得た。このポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は18.2%であった。これをポリグリセリン脂肪酸エステルA(POGE−A)とする。
【0019】
製造例2
脂肪酸/ポリグリセリン反応仕込みモル比率を1/1とした以外は製造例1と同様にして、ポリグリセリンラウリン酸エステル反応物を得た。このポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は18.6%であった。これをポリグリセリン脂肪酸エステルB(POGE−B)とする。
【0020】
製造例3
使用する脂肪酸をミリスチン酸(サンファット#14;ライオン社製、純度95%以上)にした以外は製造例1と同様にして、ポリグリセリンミリスチン酸エステル反応物を得た。このポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は18.8%であった。これをポリグリセリン脂肪酸エステルC(POGE−C)とする。
【0021】
製造例4
脂肪酸/ポリグリセリン反応仕込みモル比率を2/1とした以外は製造例1と同様にして、ポリグリセリンラウリン酸エステル反応物を得た。このポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は23.1%であった。これをポリグリセリン脂肪酸エステルD(POGE−D)とする。
【0022】
製造例5
脂肪酸/ポリグリセリン反応仕込モル比率を1/1とし、市販のヘキサグリセリン(ポリグリセリン#500;阪本薬品社製、平均重合度5.9)を用いた以外は製造例1と同様にして、ポリグリセリンラウリン酸エステル反応物を得た。このポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は38.7%であった。これをポリグリセリン脂肪酸エステルE(POGE−E)とする。
表1に各ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率を示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003783347
【0024】
実施例1〜8、比較例1、2
表2に基ずく処方で透明ゲル状組成物を調製した(表2中の数値は重量%)。ポリグリセリン脂肪酸エステル、脱塩水及び多価アルコールを約80度にて攪拌混合し、均一に混合溶解した後、ラボミキサーで攪拌混合しながら液状油性成分を徐々に加え、25℃に冷却後、脱泡のため遠心分離(4000rpm,30min) を行って調製した。
【0025】
【表2】
Figure 0003783347
【0026】
実施例9、10
実施例2および4で得られた透明ゲル状組成物をそれぞれ脱塩水で10倍に希釈し、マグネチックスターラーで5min攪拌し、均一な乳化組成物を得た。またこの乳化組成物の粒度分布を測定した。結果を図1、2に示す。またこのときの各成分の組成を表3(表3中の数値は重量%)に示す。
【0027】
【表3】
Figure 0003783347
【0028】
比較例3、4
表3に示す組成で、POGE−A、多価アルコール、脱塩水を加熱混合後、菜種油を添加し、ヤヨイ式振とう器で260rpm,10min振とうし乳化物を調製したが、調製直後に分離した。またこの乳化組成物の粒度分布を測定した。結果を図3、4に示す。
【0029】
【発明の効果】
本発明により、安全性の高いポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた透明ゲル状組成物を提供することができる。また、この透明ゲル状組成物を水で希釈することにより分散性に優れ、簡単に水などで洗い流すことのできる乳化組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例9の乳化組成物の粒度分布を示す図である。
【図2】実施例10の乳化組成物の粒度分布を示す図である。
【図3】比較例3の乳化組成物の粒度分布を示す図である。
【図4】比較例4の乳化組成物の粒度分布を示す図である。

Claims (9)

  1. 構成ポリグリセリン鎖の平均重合度が6より大きく12未満であり、かつ構成脂肪酸の70重量%以上が炭素数12〜14の飽和脂肪酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル10〜40重量%、液状油性物質40〜60重量%、水0.05〜20重量%、及び3価以上の多価アルコール5〜40重量%からなり、かつ水に対する多価アルコールの重量比が1以上であって、水に分散して均一な乳化組成物を形成することのできる透明ゲル状組成物。
  2. 構成ポリグリセリン鎖の平均重合度が6より大きく12未満であり、かつ構成脂肪酸の70重量%以上が炭素数12〜14の飽和脂肪酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル12〜38重量%、液状油性物質45〜55重量%、水0.06〜18重量%、及び3価以上の多価アルコール6〜37重量%からなり、かつ水に対する多価アルコールの重量比が1以上であって、水に分散して均一な乳化組成物を形成することのできる透明ゲル状組成物。
  3. ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が20%未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明ゲル状組成物。
  4. 液状油性物質の少なくとも一部が動植物油脂類であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の透明ゲル状組成物。
  5. 多価アルコールの少なくとも一部がグリセリン及び/又はソルビトールであることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の透明ゲル状組成物。
  6. ポリグリセリン脂肪酸エステル、液状油性物質、水及び3価以上の多価アルコールを加熱下撹拌混合したのち冷却することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の透明ゲル状組成物の製造方法。
  7. ポリグリセリン脂肪酸エステル、水及び3価以上の多価アルコールを加熱下撹拌混合し、これに液状油性物質を添加したのち冷却することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の透明ゲル状組成物の製造方法。
  8. ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンと脂肪酸とをアルカリ触媒の存在下に180℃以上の高温で反応させた反応物であることを特徴とする請求項6又は7に記載の透明ゲル状組成物の製造方法。
  9. 請求項1ないし5のいずれかに記載の透明ゲル状組成物を水に溶解してなる乳化組成物。
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